説明

通信制御装置、通信制御プログラム、及び通信制御方法

【課題】複数の通信領域を移動する通信端末において、それぞれの通信領域を即座に切り換えることができる技術を提供する。
【解決手段】現在位置情報を取得し、所定時間後における予測位置情報を取得し、前記現在位置情報及び前記予測位置情報に基づいて、現在通信領域及び予測通信領域を特定し、所定の通信領域において通信可能な第1の通信手段及び第2の通信手段のうち、前記現在通信領域と通信していない通信手段について、前記予測通信領域を含む他の通信領域と通信するための接続処理を行い、前記現在位置情報及び前記予測位置情報に基づいて、前記現在位置が予測通信領域の範囲内に入る場合には前記予測通信領域に接続する通信手段を通信に用い、前記現在位置が予測通信領域の範囲内にない場合には前記現在通信領域と通信を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信端末における通信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両などにおいて移動中に通信する移動通信端末がある。このような移動通信端末のうち、無線LAN(Local Area Network)などの狭い通信領域による通信方式を用いる場合には、移動中に通信領域を切り換える必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、無線LANによる通信において、移動中に通信領域を切り換える場合には、通信を途絶することなく即座に切り換えることが困難であった。具体的には、移動中に通信領域を切り換える場合に、それぞれの通信領域が異なる無線LAN事業者であるために、接続時の認証方式が異なる場合があった。
【0004】
本発明は上記事項に鑑みて為されたものである。すなわち、本発明は、複数の通信領域を移動する通信端末において、それぞれの通信領域を即座に切り換えることができる技術を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
すなわち、本発明は、現在位置情報を取得するステップと、所定時間後における予測位置情報を取得するステップと、前記現在位置情報及び前記予測位置情報に基づいて、現在通信領域及び予測通信領域を特定するステップと、所定の通信領域において通信可能な第1の通信手段及び第2の通信手段のうち、前記現在通信領域と通信していない通信手段について、前記予測通信領域を含む他の通信領域と通信するための接続処理を行うステップと、前記現在位置情報及び前記予測位置情報に基づいて、前記現在位置が予測通信領域の範囲内に入る場合には前記予測通信領域に接続する通信手段を通信に用い、前記現在位置が予測通信領域の範囲内にない場合には前記現在通信領域と通信を継続するステップと、を備える。
【0006】
本発明では、現在位置情報と予測位置情報とに基づいて、移動する通信端末の所定時間後の通信範囲を予測して、複数ある通信手段を用いて、一方を実際の通信に用い、他方を通信範囲が変わった場合に切り換えるための準備に用いる。
【0007】
従って、本発明によれば、複数の通信領域を移動する通信端末において、それぞれの通信領域を即座に切り換えることができる技術を提供することができる。
また、本発明は、前記予測位置情報が前記予測通信領域の範囲内に入った場合には、前記現在通信領域と通信していない通信手段を用いて前記予測通信領域と接続を行うステップをさらに実行させる、ことを特徴とする。
【0008】
本発明では、利用していない通信手段を用いて接続の準備を行う。従って、本発明によれば、複数の通信領域を移動する通信端末において、それぞれの通信領域を即座に切り換えることができる技術を提供することができる。
【0009】
また、本発明は、移動速度を測定して予測通信領域を特定するステップをさらに実行させる、ことを特徴とする。
本発明では、複数の通信手段を切り換えて通信を行う場合に、端末の移動速度に基づいて切り換える予定の通信手段の通信範囲を特定する。
従って、本発明によれば、複数の通信領域を移動する通信端末において、移動中の通信端末であっても、その移動速度を考慮してそれぞれの通信領域を即座に切り換えることができる技術を提供することができる。
【0010】
また、本発明は、移動速度が所定の速度を超えた場合には、前記現在位置が前記予測通信領域の範囲内に入った場合であっても現在通信領域との通信を継続するステップをさらに実行させる、ことを特徴とする。
【0011】
本発明では、複数の通信範囲を移動する複数の通信手段を有する通信端末において、例えばある通信領域から別の通信領域を通過した後に元の通信領域に戻るような移動区間の場合に、移動速度が高速になると無駄な切り換えになるような切り換え処理を行わない。
【0012】
従って、本発明によれば、複数の通信手段を有する通信端末において、不必要な通信手段の切り換え処理を行うことなく快適に利用することができる。
【0013】
また、本発明は、前記予測通信領域に接続する通信手段が当該予測通信領域で使用できないと判断される場合には、当該通信手段への切り換えを行わなくてもよい。
【0014】
なお、本発明は、以上の何れかの機能を実現させるプログラムであってもよい。また、本発明は、そのようなプログラムをコンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録してもよい。また、本発明は、以上の何れかの機能を実現する装置であってもよい。さらに、本発明は、以上の何れかの機能を実現する通信端末であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の通信領域を移動する通信端末において、それぞれの通信領域を即座に切り換えることができる技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態に係る通信制御装置の一例として、コンピュータに接続するモバイルルータ(以下、モバイルルータ100という)を、図面に基づいて説明する。本実施の形態において、モバイルルータ100は、コンピュータにプログラムを実行させることによって、本発明に係る通信制御方法を実行する。
【0017】
〈システム構成〉
図1は、モバイルルータ100が制御する通信端末が接続するネットワークの概略図である。モバイルルータ100は、車両200などの移動体に搭載される。モバイルルータ100には、無線LAN端末A101,無線LAN端末B102が接続する。また、モバイルルータ100は、車両200に搭載されたコンピュータ500が接続する。そして、モバイルルータ100は、コンピュータ500がネットワーク300を介して外部と通信する際に、無線LAN端末A101,無線LAN端末B102を介して基地局400と接続する。モバイルルータ100は、上述のようにネットワーク300を介して通信する際に、基地局400と接続する無線LAN端末A101,無線LAN端末B102の二つの通信手段を制御して、移動中であっても良好な通信状態を維持する。
【0018】
〈装置構成〉
図2は、モバイルルータ100が実現する機能を表した機能ブロック図である。モバイルルータ100は、無線LAN端末A101,無線LAN端末B102,位置/車速情報エンジン103,EV-DO(Evolution Data Only)モデム情報報告エンジン104,メディ
ア切換制御プログラム実行部105,無線LANサービス検索エンジン106,接続切換スクリプト107,メディア切換制御設定ファイル108,無線LANサービスデータベース109,無線LANサービス設定ファイル110を備える。
【0019】
無線LAN端末A101,無線LAN端末B102は、無線LANによるネットワーク接続技術を用いて、コンピュータ500をネットワーク300に接続する。
位置/車速情報エンジン103は、車両200の車内LANと接続し、位置/車速情報エンコーダ112と接続する。位置/車速情報エンコーダ112は、車両200に備えられるGPSカーナビゲーションシステムから車両の現在位置情報を取得する。また、位置/車速情報エンコーダ112は、車両200の制御用に取り出される車速情報を取得する。そして、位置/車速情報エンジン103は、位置/車速情報エンコーダ112から、位置情報及び車速情報を取得する。位置/車速情報エンジン103は、位置情報及び車速情報から、車両200の現在位置情報及び所定時間後の予測位置情報を算出する。
【0020】
EV-DOモデム情報報告エンジン104は、EV-DOモデム情報取得エンジン113を介して、車両200に備えられる携帯電話型データ通信端末の一例であるEV-DO端末115〜の
情報を取得する。そして、EV-DOモデム情報報告エンジン104は、無線LAN端末A1
01,無線LAN端末B102による無線LANサービスの通信状況を判断して、携帯電話によるデータ通信サービスを併用する。
【0021】
メディア切換制御プログラム実行部105は、接続切換スクリプト107とメディア切換制御設定ファイル108とを用いて、移動中の現在位置情報及び予測位置情報を取得する。また、メディア切換制御プログラム実行部105は、無線LANサービスの通信領域の分布状況を後述の無線LANサービス検索エンジン106から取得する。そして、メディア切換制御プログラム実行部105は、これらの情報と接続切換スクリプト107とメディア切換制御設定ファイル108を参照して、2つの無線LAN端末A101,無線LAN端末B102のいずれを用いて通信するのかを切り換える。
【0022】
また、メディア切換制御プログラム実行部105は、メディア切換制御/ステータス情報提供エンジン111と接続する。メディア切換制御/ステータス情報提供エンジン111は、車両200のコンピュータ500で実行される車内アプリ114を介して無線LANサービスの切換状況などのステータスをユーザに通知する。
【0023】
無線LANサービス検索エンジン106は、無線LANサービスデータベース109及び無線LANサービス設定ファイル110を参照して、メディア切換制御プログラム実行部105が切り換える無線LAN端末A101,無線LAN端末B102に関する情報を検索する。このとき、無線LANサービス検索エンジン106が検索する情報は、例えば、現在位置情報及び予測位置情報に基づいて求められる、予測通信領域の範囲内の無線LAN端末A101,無線LAN端末B102が通信可能な無線LANサービスに関する情報である。すなわち、無線LANサービスに関する情報とは、無線LANサービスの通信領域、無線LANサービスの接続に必要な設定情報などである。無線LANサービス検索エンジン106は、これらの情報をメディア切換制御プログラム実行部105に提供する。
【0024】
なお、上述のモバイルルータ100の機能ブロックは、本発明の通信制御装置の手段とは以下のように対応する。すなわち、モバイルルータ100の無線LAN端末A101及び無線LAN端末B102は、本発明の通信制御装置における第1の通信手段及び第2の通信手段に対応する。また、モバイルルータ100の位置/車速情報エンジン103は、現在位置情報取得手段及び予測位置情報取得手段と対応する。また、メディア切換制御プログラム実行部105及び無線LANサービス検索エンジン106は、予測通信領域接続
手段,通信切換手段と対応する。
【0025】
〈モバイルルータによる通信制御方法の概要〉
図3は、モバイルルータ100によって通信制御される無線LANサービスの通信領域の範囲を示す図である。図3において、無線LANサービスの通信領域の範囲を示す無線LANAと無線LANBは、それぞれ別の基地局によって提供される通信領域である。この無線LANA,無線LANBを提供する基地局は、それぞれ接続に必要な設定情報(例えば、無線LAN方式の違い、使用チャンネル、認証方式、運営する事業者、その他認証に必要な情報)が異なっている。また、無線LANA及び無線LANBは、それぞれの通信領域が重なっていることがわかる。
【0026】
図4は、図3に示した無線LANサービスの通信領域上に、無線LANサービスを利用する車両200が走行する経路がある場合の一例を示す。上記通信領域上には、経路1及び経路2の2つの経路がある。経路1は、図4の点Sを出発して、無線LANAの通信領域から中心部の無線LANBの通信領域と重なる部分にある点Tを経て、再度無線LANAの通信領域にある点Uへと向かう。また、経路2は、点Sを出発して、点Tから無線LANBの通信領域上にある点Vへと向かう。
【0027】
経路1は、無線LANAの通信領域から一度無線LANBの通信領域に入るものの、再度無線LANAの通信領域に入るため、通信に用いる無線LAN端末を切り換える必要がない。また、経路2は、無線LANAの通信領域から無線LANBの通信領域へと移動するため、通信に用いる無線LAN端末を切り換える必要がある。
【0028】
図5は、図3に示した無線LANサービスの通信領域上、無線LANサービスを利用する車両200が走行する経路がある場合の他の一例を示す。図5の経路3は、点Sを出発して点T及び点Xを経由して点Vへと向かう。すなわち、経路3を通る場合、モバイルルータ100は、最終的に到達する点Vが無線LANBの通信領域上にある。また、経路3は、途中にある点Xにおいて予想される経路(直進した場合に考えられる経路)に点Vがあるため、無線LANAから無線LANBへの切換が必要になる。
【0029】
これに対して、経路4は、点Sを出発して点T点Xを経由して点Wへと向かう。すなわち、経路4は、経路3とは異なり、点Xにおいて予想される経路ではない点Wに到達するため、無線LANBの通信領域上を通過するものの、到達する点Wは無線LANAの通信領域上にあるため、実際には無線LAN端末の切換は必要ない。
【0030】
以上のように、モバイルルータ100は、複数の無線LANサービスの通信領域があるところにおいて、移動しながら通信を行う場合に、現在位置情報及び移動速度から算出される予測位置情報と無線LANサービスの通信領域の情報に基づいて、現在位置の通信領域と予測位置の通信領域とが異なるか否かという情報を算出する。そして、モバイルルータ100は、通信に用いる無線LAN端末の種類を切り換える必要があるか否かを判断して、複数の無線LAN端末の一方から他方に切り換えるための処理を行う。また、モバイルルータ100は、通信に用いる無線LAN端末を切り換える前に、実際の通信に用いる無線LAN端末とは別の無線LAN端末を用いて、切り換える予定の無線LANサービスの通信領域を提供する基地局との接続作業を予め行う。このため、モバイルルータ100によれば、複数の無線LANサービスの通信領域を移動する際に、迅速かつ的確に通信に用いる無線LANサービスを切り換えることができる。
【0031】
〈処理フローチャート〉
図6は、モバイルルータ100による無線LAN端末切換制御プログラムのメインループ処理を示すフローチャートである。以下の処理では、無線LAN端末、携帯電話等のよ
うな通信手段(通信媒体にアクセスする機器)をメディアと呼ぶ。例えば、無線LAN端末2台を利用する場合には、個々の端末を各々異なるメディアとして取り扱う。ここでは、すでに、現在時点情報、走行情報等からモバイルルータ100によってメディアの切り換えが必要性と判断された場合を想定し、その判断の後の次に接続すべきメディアへのメディア切り換え処理を説明する。
また、各メディアの状態をS0、S1、S2、およびS3の各ステータスで管理する。
ここで、S0は、メディアの初期状態であり、まだ、メディアが通信サービス(無線LANによる通信サービス、携帯電話による通信サービス等)へ接続操作未着手の状態であることを示す。
また、S1は、メディアが通信サービスに接続作業中であるであることを示す。接続作業では、ユーザ認証等がなされるため、一般的には、接続作業には、数秒を要することが多い。
また、S2は、Ready、すなわち、接続作業完了(例えば、無線LANでの認証完了)を示し、ユーザは、そのメディアによっていつでも通信できる状態にあることを示す。
また、S3は、利用中、例えば、モバイルIPv6により通信中であることを示す。
【0032】
メインループが開始すると、モバイルルータ100は、処理開始前の時間情報をコンピュータのクロックなどから取得する(S101)。モバイルルータ100は、複数の無線LAN端末(本実施の形態では2つの無線LAN端末)について、それぞれの端末を使用する際の予め定められた優先順位(優先度)に基づいて、現在使用している無線LAN端末を除いて優先度の一番高い無線LAN端末(メディア)を端末切り換えの候補として設定する(S102)。
【0033】
モバイルルータ100は、切り換え後に使用する候補になっているメディアのチェックを行う(S103)。そのために、モバイルルータ100は、メディア候補の切り換えチェックのサブループを実行する。
【0034】
図7は、メディア候補の切り換えチェックの処理を示したフローチャートである。モバイルルータ100は、車両200側の位置/車速情報エンコーダ112から車両200の現在位置情報及び車速情報を取得する(S201)。
【0035】
モバイルルータ100は、取得した車速情報から、車両200の車速が所定の車速(速度判定限界値)以上であるか否かを判定する(S202)。車速が速度判定限界値を超えた場合には、仮にモバイルルータ100がメディアの切り換えを行ったとしても、通信の断絶などの影響を与えることなく切り換えることが困難である。そのため、モバイルルータ100は、S202のような判定を行って、所定の車速以上の場合にはメディアの切り換えを行わないようにする。
【0036】
S202において、車速が速度判定限界値を超えている場合には、モバイルルータ100は、メディアの切り換えを行うのは不適切であると判定する(S210)。
S202において、車速が速度判定限界値を超えていない場合には、モバイルルータ100は、メディア切り換え制御/ステータス情報提供エンジン111からの情報に基づいて、そのメディアが現在利用中のステータス(S3ステータス)のメディアであるか否かを判定する(S203)。上述のように、利用中のステータスとは、実際に通信中の状態であることを指す。そして、モバイルルータ100は、切り換えの候補のメディアが利用中のステータスにある場合はS204に、そうでない場合にはS206に進む。
【0037】
切り換えの候補のメディアが現在利用中のステータスにある場合には、モバイルルータ100は、メディア切り換え制御/ステータス情報提供エンジン111からメディアの電
界強度を取得する(S204)。
【0038】
モバイルルータ100は、取得したメディアの電界強度から、その電界強度が所定の限界値より上であるか否かを判定する(S205)。このとき、メディアの電界強度が限界値以下である場合には、モバイルルータ100は、この利用中のメディアによって通信を継続することが難しいと判断し、次の候補を選択させるため(図6の処理でS106へ進ませるため)、切り換えは不適切との判断結果とともにリターンする(S210)。
【0039】
メディアの電界強度が限界値以上である場合には、モバイルルータ100は、切り換えの候補のメディアが、通信領域(エリア)をチェックする必要があるか否かを判断する(S206)。エリアチェックの必要があるか否かは、そのメディアに使用可能な地域を示すエリア地図が規定されているか否かによる。例えば、無線LAN等の使用可能な領域は、限定されており、各地点ごとのエリア地図が設けられている。一方、本実施形態では、携帯電話の場合には、走行するどの地点でも使用可能であるとして取り扱い、エリアチェックの必要ないメディアとする。このチェックによって、切り換え候補のメディアがエリアのチェックをする必要がないメディアであれば、モバイルルータ100は、切り換えが適切であることを決定して、その判定結果とともに元のメインループにリターンする(S217)。
【0040】
エリアのチェックを行う場合には、モバイルルータ100は、現在位置情報に基づいたサービスエリアの情報(例えば、どの地域が通信領域にあるかなど)を取得する(S207)。各地点近傍のサービスエリアの情報は、図2に示した無線LANサービスデータベース109に格納しておき、現在位置情報に基づいて検索すればよい。
その後、モバイルルータ100は、車速情報に基づいて、現在位置から所定時間(例えばN秒後)移動した場合の位置情報(予測位置情報)におけるサービスエリアの情報を無線LANサービスデータベース109から取得する(S208)。
【0041】
モバイルルータ100は、N秒後の予測位置が切り換えの候補のメディアのサービスエリアの範囲内にあるか否かを判定する(S209)。ここで、Nは、本切り換えチェック処理のために設定されるパラメータであり、基本的には、メディアへの接続作業時間(通信メディア接続スクリプトの処理に要する時間)以内の時間が設定されている。切り換えの候補のメディアが予測位置に基づくサービスエリア内で利用できない場合には、モバイルルータ100は、メディアの切り換えは不適切と判断する(S210)。
【0042】
モバイルルータ100は、切り換えの候補のメディアが現在利用中のステータスにあるか否かを判定する(S211)。切り換えの候補のメディアが現在利用中のステータスにない場合には、モバイルルータ100は、切り換えの候補のメディアへの切り換えが適切であるとの判定結果をもってメインループにリターンする。また、このとき、モバイルルータ100は、予測位置情報から算出されたN秒後のサービスエリアの情報をメインループにリターンする。さらに、モバイルルータ100は、切り換えた対象となるサービスエリアに到着するまでの予測時間c秒を計算する(S212)。
【0043】
S211において、切り換えの候補のメディアが現在利用中のステータスにある場合には、モバイルルータ100は、現在位置情報及び無線LANのサービスエリアの情報に基づいて、現在位置における無線LANのサービスエリアが前回のチェックのループでも同じであったか否かを判定する(S213)。前回のチェックのループとは、図6のS101から待機に至る一連の処理(メインループと呼ぶ)をいう。本実施形態では、このメインループは、1秒間に1回実行される。
【0044】
現在位置におけるサービスエリアが前回のチェックとは異なる場合には、モバイルルー
タ100は、切り換えの候補のメディアへの切り換えが適切であると判断してメインループにリターンする。このとき、モバイルルータ100は、メインループに対して現在位置のサービスエリアの情報も返す(S214)。
このような処理が実行されるのは、例えば、エリア境界に平行に走っていて急にエリアの外に向かって曲がった場合、または、 位置情報の測定に誤差が入ったような場合であ
る。このような場合、以下のような状態が発生し得る。
t=Tの時、 無線LAN(サービスX)を使用中で、N秒後も無線LAN(サービスX)のエリア内と判定された。
t=T+1の時、無線LAN(サービスX)を使用中で, N秒後も無線LAN(サービス
X)のエリア内と判定された。
t=T+2の時、無線LAN(サービスX)を使用中のはずであるのに、現在位置についても, N秒後についても無線LAN(サービスY)のエリア内と判定された。
このような場合、S211の判定で、切り換え候補のメディアが現在利用中のステータスにあると判定され、かつ、S213の判定で、現在位置における無線LANのサービスエリアが前回のチェックのループのサービスエリアとは、異なるものとなる。この場合には、制御がS214に進み、サービスYに切り換わるべきという結果を持ってS103へリターンする。
【0045】
現在位置におけるサービスエリアが前回のチェックと同じである場合には、モバイルルータ100は、N秒後の予測位置におけるサービスエリアが前回のチェックと同じであるか否かをチェックする(S215)。チェックの結果、前回のチェックと同じではないと判定された場合には、モバイルルータ100は、S212のリターンをメインループに対して行う。
【0046】
S215のチェックの結果、前回のチェックと同じであると判定された場合には、モバイルルータ100は、現在使用しているメディアを継続して、切り換えの必要はないと判定してメインループにリターンする(S216)。
【0047】
上述のメディアの切り換えチェックループが終了すると、モバイルルータ100は、この切り換えチェックループからリターンした結果に基づいて、現状のメディアの使用を継続するか否かを判定する(S104)。現在使用しているメディアを継続する場合には、モバイルルータ100はS115の処理を実行する。
【0048】
現在使用しているメディアを継続しないと判定された場合には、モバイルルータ100は、切り換えが適切であるか否かを判定する(S105)。切り換えが適切であると判定された場合には、S108の処理に移行する。
【0049】
切り換えが適切ではないと判定された場合には、モバイルルータ100は、次の優先度の切り換え候補のメディアを選択して設定する(S106)。その後、モバイルルータ100は、この設定したメディアの優先度が最低の優先度のメディアであるか否かを判定する(S107)。このとき、最低の優先度のメディアである場合には、ほかに選択するメディアがないと判断して、S108の処理に移行する。本処理は、すでに、モバイルルータ100によるメディア切り換えの必要性が判断された後の処理を想定しているからである。また、最低の優先度のメディアではないと判定された場合には、モバイルルータ100は、この選択されたメディアについてメディア候補の切り換えチェックを行う。
【0050】
メディアの切り換えを行うことが適切であると判定された場合には、モバイルルータ100は、その切り換えの候補のメディアの状態を示すステータスが接続作業中(S1ステータス)であるか否かを判定する(S108)。この処理は、切り換えの候補としてあげられたメディアに対して予め接続処理が行なわれているか、すなわち、既に接続処理起動
済み(接続スクリプト起動済み)であるか否かを判定する。そして、モバイルルータ100は、その場合には改めて接続処理の起動を行わない。そして、モバイルルータ100は、切り換えの候補のメディアのステータスが接続作業中である場合には、S115の処理に移行する。
【0051】
切り換えの候補のメディアのステータスが接続作業中ではないと判定された場合には、モバイルルータ100は、そのステータスが接続作業完了を示す「Ready」(S2ステー
タス)であるか否かを判定する(S109)。そして、このメディアのステータスがReadyである場合には、モバイルルータ100は、通信メディアの切り換えスクリプトを実行
して、切り換えの候補のメディアによる通信を実現する(S110)。このとき、ステータスが利用中(S3ステータス)に設定される。その後、モバイルルータ100は、S115の処理に移行する。
【0052】
切り換えの候補のメディアのステータスがReadyではないと判定された場合には、モバ
イルルータ100は、通信メディアのステータスを確認して、既に他のメディアが接続作業中であるか否か、または切り換えの候補のメディアが他のサービスで接続作業中であるか否かを判定する(S111)。このように判定されるのは、前回ループ以前の処理で、他のメディアによる接続または他のサービスエリアへの接続が切り換え適切と判定され、接続スクリプトが起動されたが未だ接続完了していない状態で、今回のループで、接続候補のメディアまたは接続先のサービスが前回のループとは異なるメディアまたはサービスに変更になった場合である。
そして、メディアのステータスが上記のいずれかである場合には、モバイルルータ100は、起動している接続スクリプトを強制的に終了する(S112)。接続スクリプト終了後、モバイルルータ100は、現在切り換え適切と判定されたメディアについて通信メディアの接続スクリプトを実行する(S113)。その後、モバイルルータ100は、S115の処理に移行する。
【0053】
既に他のメディアが接続作業中でなく、かつ、切り換えの候補のメディアが他のサービスで接続作業中ではないと判定された場合には、モバイルルータ100は、S113の接続スクリプトを実行する。接続スクリプトの実行により、ステータスは接続作業中(S1ステータス)に設定される。なお、接続スクリプトによる接続作業完了時にステータスはReady(S2ステータス)に設定される。
【0054】
上述の処理により、切り換えの候補のメディアによってネットワークに接続した場合には、モバイルルータ100は、処理後の時間情報をクロックなどから取得して記録する(S115)。そして、モバイルルータ100は、次のループを実行するまでの待機時間を、所定の1秒以内の時間tから上記メインループの処理時間(処理後の時間から処理前の時間を引いた時間)を引いて算出する(S116)。そして、モバイルルータ100は、算出された待機時間時間だけ待機した後、S101に戻りループを繰り返す。これにより、図6に示したS101から待機に至る一連の処理は、各ステップの処理時間に拘わらず、概ねt秒でループすることになる。
【0055】
〈本実施の形態の効果〉
以上のように、本実施の形態に係るモバイルルータ100によれば、移動中の通信端末に複数の通信手段を備えている場合に、通信範囲に応じて適切に通信手段を切り換えることができる。すなわち、モバイルルータ100によれば、現在位置情報と移動中の車速情報に基づいて算出される予測位置情報とから、現在使用している通信領域と予測される所定時間後の通信領域とを算出することができる。このため、モバイルルータ100によれば、現在使用しているメディアとは別のメディアによって、所定時間後の通信領域への接続を行うことができる。また、モバイルルータ100によれば、移動中に複数の通信範囲
を移動する場合に、即座に通信端末を切り換えて通信が断絶するようなことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】モバイルルータが制御する通信端末が接続するネットワークの概略図である。
【図2】モバイルルータが実現する機能を表した機能ブロック図である。
【図3】モバイルルータによって通信制御される無線LANサービスの通信領域の範囲を示す図である。
【図4】図3に示した無線LANサービスの通信領域上に、無線LANサービスを利用する車両が走行する経路がある場合の一例を示す図である。
【図5】図3に示した無線LANサービスの通信領域上、無線LANサービスを利用する車両が走行する経路がある場合の他の一例を示す図である。
【図6】モバイルルータによる無線LAN端末切換制御プログラムのメインループ処理を示すフローチャートである。
【図7】メディア候補の切り換えチェックの処理を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
100モバイルルータ
101無線LAN端末A
102無線LAN端末B
103位置/車速情報エンジン
104EV-DOモデム情報報告エンジン
105メディア切換制御プログラム実行部
106無線LANサービス検索エンジン
107接続切換スクリプト
108メディア切換制御設定ファイル
109無線LANサービスデータベース
110無線LANサービス設定ファイル
111メディア切り換え制御/ステータス情報提供エンジン
112位置/車速情報エンコーダ
113EV-DOモデム情報取得エンジン
114車内アプリ
115EV-DO端末
200車両
300ネットワーク
400基地局
500コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の通信領域において通信可能な第1の通信手段及び第2の通信手段と、
現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、
所定時間後における予測位置情報を取得する予測位置情報取得手段と、
前記現在位置情報及び前記予測位置情報に基づいて、現在通信領域及び予測通信領域を特定する通信領域特定手段と、
前記第1の通信手段及び第2の通信手段のうち、前記現在通信領域と通信していない通信手段について、前記予測通信領域を含む他の通信領域と通信するための接続処理を行う、予測通信領域接続手段と、
前記現在位置情報及び前記予測位置情報に基づいて、前記現在位置が予測通信領域の範囲内に入る場合には前記予測通信領域に接続する通信手段を通信に用い、前記現在位置が予測通信領域の範囲内にない場合には前記現在通信領域と通信を継続する通信切換手段と、を備える通信制御装置。
【請求項2】
前記予測通信領域接続手段が、
前記予測位置情報が前記予測通信領域の範囲内に入った場合には、前記現在通信領域と通信していない通信手段を用いて前記予測通信領域と接続を行う、請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記通信領域特定手段が、
移動速度を測定して予測通信領域を特定する、請求項1または2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記通信切換手段が、
移動速度が所定の速度を超えた場合には、前記現在位置が前記予測通信領域の範囲内に入った場合であっても現在通信領域との通信を継続する、請求項1から3のいずれかに記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記通信切換手段が、
前記予測通信領域に接続する通信手段が当該予測通信領域で使用できないと判断される場合には、当該通信手段への切り換えを行わない、請求項1から4のいずれかに記載の通信制御装置。
【請求項6】
現在位置情報を取得するステップと、
所定時間後における予測位置情報を取得するステップと、
前記現在位置情報及び前記予測位置情報に基づいて、現在通信領域及び予測通信領域を特定するステップと、
所定の通信領域において通信可能な第1の通信手段及び第2の通信手段のうち、前記現在通信領域と通信していない通信手段について、前記予測通信領域を含む他の通信領域と通信するための接続処理を行うステップと、
前記現在位置情報及び前記予測位置情報に基づいて、前記現在位置が予測通信領域の範囲内に入る場合には前記予測通信領域に接続する通信手段を通信に用い、前記現在位置が予測通信領域の範囲内にない場合には前記現在通信領域と通信を継続するステップと、をコンピュータに実行させる、通信制御プログラム。
【請求項7】
前記予測位置情報が前記予測通信領域の範囲内に入った場合には、前記現在通信領域と通信していない通信手段を用いて前記予測通信領域と接続を行うステップをさらに実行させる、請求項6に記載の通信制御プログラム。
【請求項8】
移動速度を測定して予測通信領域を特定するステップをさらに実行させる、請求項6または7に記載の通信制御プログラム。
【請求項9】
移動速度が所定の速度を超えた場合には、前記現在位置が前記予測通信領域の範囲内に入った場合であっても現在通信領域との通信を継続するステップをさらに実行させる、請求項6から8のいずれかに記載の通信制御プログラム。
【請求項10】
前記予測通信領域に接続する通信手段が当該予測通信領域で使用できないと判断される場合には、当該通信手段への切り換えを行わないステップをさらに実行させる、請求項6から9のいずれかに記載の通信制御プログラム。
【請求項11】
現在位置情報を取得するステップと、
所定時間後における予測位置情報を取得するステップと、
前記現在位置情報及び前記予測位置情報に基づいて、現在通信領域及び予測通信領域を特定するステップと、
所定の通信領域において通信可能な第1の通信手段及び第2の通信手段のうち、前記現在通信領域と通信していない通信手段について、前記予測通信領域を含む他の通信領域と通信するための接続処理を行うステップと、
前記現在位置情報及び前記予測位置情報に基づいて、前記現在位置が予測通信領域の範囲内に入る場合には前記予測通信領域に接続する通信手段を通信に用い、前記現在位置が予測通信領域の範囲内にない場合には前記現在通信領域と通信を継続するステップと、をコンピュータが実行する、通信制御方法。
【請求項12】
前記予測位置情報が前記予測通信領域の範囲内に入った場合には、前記現在通信領域と通信していない通信手段を用いて前記予測通信領域と接続を行うステップをさらに実行する、請求項11に記載の通信制御方法。
【請求項13】
移動速度を測定して予測通信領域を特定するステップをさらに実行する、請求項11または12に記載の通信制御方法。
【請求項14】
移動速度が所定の速度を超えた場合には、前記現在位置が前記予測通信領域の範囲内に入った場合であっても現在通信領域との通信を継続するステップをさらに実行する、請求項11から13のいずれかに記載の通信制御方法。
【請求項15】
前記予測通信領域に接続する通信手段が当該予測通信領域で使用できないと判断される場合には、当該通信手段への切り換えを行わないステップをさらに実行する、請求項11から14のいずれかに記載の通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−41955(P2006−41955A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219272(P2004−219272)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【Fターム(参考)】