説明

通信制御装置、通信制御方法、及び通信制御プログラム

【課題】適切な緊急呼通信台に緊急通報を転送することができる通信制御装置、通信制御方法、及び通信制御プログラムを提供する。
【解決手段】通信システム1は、通信制御装置11、緊急呼通信台12、デジタル通信端末13、アナログ通信端末14、18を備える。通信制御装置11は、モジュラーケーブル17を介して接続したアナログ通信端末14から、緊急呼通信台12との間のセッションの確立要求を受信した場合、緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間のセッションを確立させるための通信を行う。これによって、アナログ通信端末14を使用して緊急通報を緊急呼通信台12に発信することができる。一方、IP網16を介して接続したデジタル通信端末13から、緊急呼通信台12との間のセッションの確立要求を受信した場合、緊急呼通信台12とデジタル通信端末13との間のセッションを確立させるための通信を行わず、セッションを確立させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末間の通信を制御する通信制御装置、通信制御方法、及び通信制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
Internet Protocol(IP)網とPublic Switched Telephone Networks(PSTN)網との間に介在し、両網間の通信を仲介する通信制御装置が知られている。該当する通信制御装置として、Voice over IP(VoIP)ゲートウェイ等が挙げられる。通信制御装置は、PSTN網をSession Initiation Protocol User Agent(SIP UA)と仮想的に認識することによって、IP網に接続する他のSIP UAから、PSTN網に接続する通信端末とのセッションの確立要求を受け付ける。通信制御装置は、IP網から受信した確立要求に基づき、PSTN網に接続する通信端末との間でセッションを確立させる。これによって、IP網に接続する通信端末と、PSTN網に接続する通信端末との間で通信が可能となる。例えば特許文献1では、IP網に接続する通信端末から、PSTN網に接続する緊急呼通信台に対する緊急通報(110、119番通報など)を受け付ける通信制御装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−87973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された通信制御装置は、IP網に接続する通信端末から緊急通報を受け付けた場合、PSTN網を介して直接接続する緊急呼通信台に緊急通報を転送する。ここで一般的に、通信制御装置は、緊急通報を発信した通信端末の所在地を正確に把握することができない。緊急通報には、通信端末の所在地を示す情報が付加されないためである。このため、緊急通報を発信した通信端末が、通信制御装置から遠く離れた位置からIP網に接続している場合、通信制御装置は、発信元の通信端末から離れた場所にある緊急呼通信台に緊急通報を転送することになる。このように通信制御装置は、受け付けた緊急通報を、適切な緊急呼通信台に転送することができない場合があるという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、適切な緊急呼通信台に緊急通報を転送することができる通信制御装置、通信制御方法、及び通信制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る通信制御装置は、IP網に接続するデジタル通信端末と、PSTN網に接続する緊急呼通信台との間の通信を仲介し、前記IP網及び前記PSTN網に接続可能に構成される通信制御装置において、アナログ通信端末と通信するために前記アナログ通信端末と接続する接続手段と、前記接続手段によって接続された前記アナログ通信端末から、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を要求する第一確立要求を受信する第一受信手段と、前記第一受信手段によって前記第一確立要求が受信された場合に、前記PSTN網を介して前記緊急呼通信台と前記アナログ通信端末との間のセッションを確立させるために、前記緊急呼通信台と通信を行う通信手段と、前記デジタル通信端末から、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を要求する第二確立要求を、前記IP網を介して受信する第二受信手段と、前記第二受信手段によって前記第二確立要求が受信された場合に、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を拒否する拒否手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、通信制御装置は、アナログ通信端末と接続するための接続手段を備えている。アナログ通信端末は通信制御装置に直接接続された状態となるため、通信制御装置の近傍に配置されることになる。アナログ通信端末から確立要求を受信した場合、通信制御装置は、PSTN網を介して直接接続する緊急呼通信台とアナログ通信端末との間のセッションを確立させる。このためアナログ通信端末は、近傍に配置する緊急呼通信台との間でセッションを確立させることができる。緊急呼通信台のオペレータは、アナログ通信端末から発信された緊急通報等に適切に対応することができる。
【0008】
一方、通信制御装置は、デジタル通信端末から確立要求を受信した場合、デジタル通信端末の所在が不定であるので、緊急呼通信台とデジタル通信端末との間のセッションを確立させない。このようにして通信制御装置は、互いに離れて配置されている可能性のあるデジタル通信端末と緊急呼通信台との間のセッションの確立を拒否することによって、適切でない緊急呼通信台とデジタル通信端末との間の通信を抑止することができる。
【0009】
第一態様において、前記アナログ通信端末と前記緊急呼通信台との間のセッションが確立した状態で、前記アナログ通信端末から、前記緊急呼通信台との間のセッションの切断を要求する切断要求を受信する第三受信手段と、前記第三受信手段によって前記切断要求が受信された場合に、前記アナログ通信端末と前記緊急呼通信台との間のセッションを維持する維持手段とを備えていてもよい。これによって緊急呼通信台は、維持された状態のセッションを介して逆信を実行することができる。
【0010】
第一態様において、前記維持手段によって前記アナログ通信端末と前記緊急呼通信台との間で維持されているセッションを介し、前記緊急呼通信台から前記アナログ通信端末に対する信号を受信したか否かを判断する判断手段と、前記判断手段によって、前記緊急呼通信台から前記アナログ通信端末に対する信号を受信したと判断された場合に、前記アナログ通信端末のユーザに対する着信通知を前記アナログ通信端末に送信する第一送信手段とを備えていてもよい。これによって通信制御装置は、アナログ通信端末のユーザに対して、緊急呼通信台において逆信が実行された旨を通知することができる。アナログ通信端末のユーザは、緊急呼通信台において逆信が実行された旨を認識し、緊急呼通信台との間の通信を再開することができる。
【0011】
第一態様において、前記判断手段によって、前記緊急呼通信台から前記アナログ通信端末に対する信号を受信していないと判断され、且つ、前記第三受信手段によって前記アナログ通信端末から前記切断要求が受信されてからの経過時間が所定時間以上となった場合に、前記アナログ通信端末のユーザに対する着信通知を前記アナログ通信端末に送信する第二送信手段を備えていてもよい。通信制御装置は、アナログ通信端末から切断要求を受信した後、維持されたセッションを介して逆信が所定時間以上実行されない場合、アナログ通信端末に着信通知を送信する。アナログ通信端末のユーザは、着信通知に基づいて、緊急呼通信台との間の通信を再開することができる。このようにして通信制御装置は、緊急呼通信台からの逆信が所定時間以上実行されない場合に、アナログ通信端末と緊急呼通信台との間の通信の再開をユーザに促すことができる。
【0012】
第一態様において、前記アナログ通信端末と前記緊急呼通信台との間のセッションが確立した状態で、前記緊急呼通信台から、通話の終了を通知する終了通知を受信する第四受信手段と、前記第四受信手段によって前記終了通知が受信された場合に、前記アナログ通信端末と前記緊急呼通信台との間で確立したセッションを切断させるために、前記緊急呼通信台との間のセッションの切断を要求する切断要求を、前記アナログ通信端末に対して送信する第三送信手段とを備えていてもよい。緊急呼通信台においてアナログ通信端末との間の通信を終了させる操作が実行された場合に、通信制御装置は、緊急呼通信台とアナログ通信端末との間のセッションを終了させることができる。
【0013】
本発明の第二態様に係る通信制御方法は、IP網に接続するデジタル通信端末と、PSTN網に接続する緊急呼通信台との間の通信を仲介する通信制御方法であって、接続手段を介して接続したアナログ通信端末から、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を要求する第一確立要求を受信する第一受信ステップと、前記第一受信ステップによって前記第一確立要求が受信された場合に、前記PSTN網を介して前記緊急呼通信台と前記アナログ通信端末との間のセッションを確立させるために、前記緊急呼通信台と通信を行う通信ステップと、前記デジタル通信端末から、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を要求する第二確立要求を、前記IP網を介して受信する第二受信ステップと、前記第二受信ステップによって前記第二確立要求が受信された場合に、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を拒否する拒否ステップとを備えている。第二態様によれば、第一態様と同様の効果を奏することができる。
【0014】
本発明の第三態様に係る通信制御プログラムは、接続手段を介して接続したアナログ通信端末から、PSTN網に接続する緊急呼通信台との間のセッションの確立を要求する第一確立要求を受信する第一受信ステップと、前記第一受信ステップによって前記第一確立要求が受信された場合に、前記PSTN網を介して前記緊急呼通信台と前記アナログ通信端末との間のセッションを確立させるために、前記緊急呼通信台と通信を行う通信ステップと、IP網に接続するデジタル通信端末から、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を要求する第二確立要求を受信する第二受信ステップと、前記第二受信ステップによって前記第二確立要求が受信された場合に、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を拒否する拒否ステップとをコンピュータに実行させる。第三態様によれば、第一態様と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】通信システム1の概要、および通信制御装置11の機能ブロックを示す図である。
【図2】通信制御装置11の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】第一IP制御処理を示すフローチャートである。
【図4】第一アナログ制御処理を示すフローチャートである。
【図5】第二アナログ制御処理を示すフローチャートである。
【図6】PSTN制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。記載されている装置の構成、各種処理のフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0017】
図1を参照し、通信システム1について説明する。通信システム1は、通信制御装置11、緊急呼通信台12、デジタル通信端末13、およびアナログ通信端末14、18を備えている。緊急呼通信台12は、Public Switched Telephone Networks(PSTN)網15に接続している。緊急呼通信台12は、PSTN網15を介して緊急通報(110、119、118等)を受け付ける受付台である。緊急呼通信台12は、警察機関(110)、消防機関(119)、および海上保安機関(118)等に設置される。デジタル通信端末13は、Internet Protocol(IP)網16に接続している。デジタル通信端末13は、デジタル通信を行うことによってユーザに通話サービスを提供する通信端末である。デジタル通信端末13は、後述する通信制御装置11との間で、Session Initiation Protocol(SIP)に基づいた通信を行う。デジタル通信端末13として、周知のIP電話を使用することができる。アナログ通信端末14は、後述する通信制御装置11と、モジュラーケーブル17を介して直接接続している。アナログ通信端末18は、PSTN網15に接続している。アナログ通信端末14、18は、アナログ通信を行うことによってユーザに通話サービスを提供する通信端末である。アナログ通信端末14、18として、周知のアナログ電話を使用することができる。
【0018】
通信制御装置11は、PSTN15網およびIP網16に接続している。また通信制御装置11は、モジュラーケーブル17を介してアナログ通信端末14と接続している。通信制御装置11は、PSTN網15を介して接続した緊急呼通信台12およびアナログ通信端末18、IP網16を介して接続したデジタル通信端末13、および、モジュラーケーブル17を介して接続したアナログ通信端末18間の通信を仲介する処理を実行する。
【0019】
通信制御装置11が備える機能ブロックについて説明する。通信制御装置11は、PSTN制御部111、アナログ制御部112、第一IP制御部113、および第二IP制御部114を機能ブロックとして備えている。其々の機能ブロックは、通信制御装置11のCPU21(図2参照)において実行される処理の基本単位を示している。其々の機能ブロックによって実現される通信制御装置11の動作概要について、以下に説明する。
【0020】
第一IP制御部113は、IP網16に接続したデジタル通信端末13から、PSTN網15に接続した緊急呼通信台12およびアナログ通信端末18宛の通信を受け付け、通信を仲介するための機能ブロックである。第一IP制御部113は以下の機能を実現する。
【0021】
通信制御装置11が、IP網16を介してデジタル通信端末13から、アナログ通信端末18との間のセッションの確立を要求するINVITEを受信したとする。第一IP制御部113は、PSTN網15を宛先のSession Initiation Protocol User Agent(SIP UA)として定義する。第一IP制御部113は、定義した宛先のSIP UAとデジタル通信端末13との間で、IP網16を介したセッションを確立させるための確立通信を実行する。次に第一IP制御部113は、アナログ通信端末18との間でPSTN網15を介したセッションを確立させるために、PSTN制御部111に確立通信の実行を要求する。なお、要求を受けたPSTN制御部111では、アナログ通信端末18との間のセッションを確立させるための確立通信が実行される。これによって、デジタル通信端末13とアナログ通信端末18との間でセッションが確立され、通話を行うことが可能な状態になる。
【0022】
一方、通信制御装置11が、IP網16を介してデジタル通信端末13から、緊急呼通信台12との間のセッションの確立を要求するINVITEを受信したとする。第一IP制御部113は、上述の場合とは異なり、セッションを確立させるための確立通信を実行せず、デジタル通信端末13と緊急呼通信台12との間のセッションの確立を拒否する。理由は次の通りである。デジタル通信端末13はIP網16に接続しており、具体的な所在地が不定である。デジタル通信端末13が、通信制御装置11から遠く離れた位置からIP網16に接続している場合、通信制御装置11は、INVITEの発信元の通信端末13から離れた場所にある緊急呼通信台12とのセッションを確立することになる。このような場合、デジタル通信端末13を使用してユーザが緊急通報を行うと、離れた場所にある緊急呼通信台12につながってしまう。この結果、緊急呼通信台12のオペレータは、緊急呼通信台から遠く離れた位置のデジタル通信端末13のユーザからの通報であるため、この通報に適切に対処できない恐れがある。そこで通信制御装置11は、デジタル通信端末13から緊急通報を受け付けた場合、デジタル通信端末13と緊急呼通信台12との間のセッションの確立を拒否することで、上述した弊害を予防する。
【0023】
なお第一IP制御部113は、上述した機能の他に、アナログ通信端末18からの要求に応じ、アナログ通信端末18とアナログ通信端末14との間のセッションを確立させるための処理や、確立されたセッションを切断させるための処理も実行する。
【0024】
アナログ制御部112は、モジュラーケーブル17を介して接続したアナログ通信端末14から、PSTN網15に接続した緊急呼通信台12およびアナログ通信端末18宛の通信を受け付け、通信を仲介するための機能ブロックである。アナログ制御部112は以下の機能を実現する。
【0025】
通信制御装置11が、モジュラーケーブル17を介してアナログ通信端末14から、アナログ通信端末18との間のセッションの確立を要求する確立要求を受信したとする。アナログ制御部112は、アナログ通信端末14を送信元のSIP UAとして定義する。アナログ制御部112は、アナログ通信端末18との間のセッションを確立させることを、第二IP制御部114を介して第一IP制御部113に要求する。具体的には、定義した送信元のSIP UAからのINVITEをアナログ制御部112が第二IP制御部114を介して仮想的に第一IP制御部113に送信することで、第一IP制御部113にセッションの確立を要求する。なお、要求を受けた第一IP制御部113は、PSTN網15を宛先のSIP UAとして定義する。第一IP制御部113は、送信元のSIP UA(アナログ通信端末14)と宛先のSIP UA(PSTN網15)との間のセッションを確立させる。次に第一IP制御部113は、アナログ通信端末18との間でPSTN網15を介したセッションを確立させるために、PSTN制御部111に確立通信の実行を要求する。なお要求を受けたPSTN制御部111では、アナログ通信端末18との間のセッションを確立させるための確立通信が実行される。これによって、アナログ通信端末14、18間でセッションが確立され、通話を行うことが可能な状態になる。
【0026】
通信制御装置11が、モジュラーケーブル17を介してアナログ通信端末14から、緊急呼通信台12との間のセッションの確立を要求する確立要求を受信したとする。アナログ制御部112は、緊急呼通信台12との間でPSTN網15を介したセッションを確立させるために、PSTN制御部111に確立通信の実行を要求する。アナログ通信端末14からアナログ通信端末18との間のセッションの確立を要求する確立要求を受信した上述の場合と異なり、第一IP制御部113および第二IP制御部114を介することなく、PSTN制御部111に対して確立通信の実行が直接要求される。なお、要求を受けたPSTN制御部111では、緊急呼通信台12との間のセッションを確立させるための確立通信が実行される。これによって、アナログ通信端末14と緊急呼通信台12との間でセッションが確立される。アナログ通信端末14のユーザは、緊急呼通信台12に緊急通報を行うことができるようになる。ここでアナログ通信端末14は、モジュラーケーブル17を介して通信制御装置11に直接接続しており、具体的な所在地が明確である。このため通信制御装置11は、通信制御装置11の近傍に設置された緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間のセッションを確立させることによって、アナログ通信端末14からの緊急通報を、アナログ通信端末14に対して近い位置に設置された緊急呼通信台12に転送することができる。これによって緊急呼通信台12のオペレータは、アナログ通信端末14から発信された緊急通報に適切に対処することができる。
【0027】
なおアナログ制御部112は、上述した機能の他に、アナログ通信端末14又はデジタル通信端末13からの要求に応じ、アナログ通信端末14とデジタル通信端末13との間のセッションを確立させるための確立通信を、第二IP制御部114を介して実行する。これによって、アナログ通信端末14とデジタル通信端末13との間で通話を行うことが可能な状態になる。またアナログ制御部112は、アナログ通信端末18からの要求に応じ、アナログ通信端末14、18間のセッションを確立させるための確立通信を実行する。これによって、アナログ通信端末14、18間で通話を行うことが可能な状態になる。
【0028】
PSTN制御部111は、アナログ制御部112および第一IP制御部113からの要求に応じ、緊急呼通信台12およびアナログ通信端末18との間でPSTN網15を介したセッションを確立させるための確立通信を実行する機能ブロックである。またPSTN制御部111は、緊急呼通信台12が提供する保留機能および逆信機能も実現するように制御する。保留機能は、緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間のセッションが確立され、アナログ通信端末14から緊急通報を受け付けた場合、アナログ通信端末14側からセッションの切断が要求された場合でも、緊急呼通信台12側からセッションの切断が要求されない限り、セッションを維持する機能である。逆信機能は、維持されたセッションを介して、緊急呼通信台12からアナログ通信端末14を呼び出す機能である。なお、保留機能および逆信機能は、周知の緊急呼通信台12が通常備える機能である。
【0029】
第二IP制御部114は、IP網16に接続したデジタル通信端末13と、モジュラーケーブル17を介して接続したアナログ通信端末14との間の通信を仲介するための機能ブロックである。第二IP制御部114は、デジタル通信端末13又はアナログ通信端末14からの要求に応じ、アナログ通信端末14とデジタル通信端末13との間のセッションを確立させるための確立通信を実行する。また第二IP制御部114は、PSTN網15に接続したアナログ通信端末18と、モジュラーケーブル17を介して接続したアナログ通信端末14との間の通信も仲介する。
【0030】
図2を参照し、通信制御装置11の電気的構成について説明する。通信制御装置11は、通信制御装置11の制御を司るCPU21を備えている。CPU21は、ROM22、RAM23、FROM24、CODEC25、26、Foreign eXchange Officeインタフェース(以下、FXO I/Fという。)27、Foreign eXchange Stationインタフェース(以下、FXS I/Fという。)28、およびイーサネット(登録商標)インタフェース(以下、イーサネットI/Fという。)29と電気的に接続している。ROM22は、書き換え可能な不揮発性メモリである。ROM22には、ブートプログラム、BIOS、OS等が記憶される。RAM23には、タイマやカウンタ、一時的なデータが記憶される。FROM24には、CPU21の制御プログラムが記憶される。CODEC25、26は、音声信号の符号化および復号化を行うデバイスである。FXO I/F27は、PSTN網15を介して緊急呼通信台12およびアナログ通信端末18と通信を行うためのインタフェースである。FXS I/F28は、モジュラーケーブル17を介してアナログ通信端末14と接続し、通信を行うためのインタフェースである。イーサネットI/F29は、IP網16を介してデジタル通信端末13と通信を行うためのインタフェースである。
【0031】
図3から図6を参照し、通信制御装置11が実行する処理について説明する。第一IP制御処理(図3参照)、第一アナログ制御処理(図4参照)、第二アナログ制御処理(図5参照)、およびPSTN制御処理(図6参照)は、FROM24に記憶されている通信制御プログラムに従って、通信制御装置11のCPU21が実行する。CPU21は、通信制御装置11の電源がONされると、第一IP制御処理、第一アナログ制御処理、およびPSTN制御処理を開始する。またCPU21は、緊急呼通信台12、アナログ通信端末18、およびデジタル通信端末13とアナログ通信端末14との間のセッションが確立した場合、第二アナログ制御処理を開始する。CPU21は、其々の処理を並行して実行することができる。
【0032】
なおCPU21は、第一IP制御処理を実行することによって、第一IP制御部113(図1参照)の機能を実現する。CPU21は、第一アナログ制御処理および第二アナログ制御処理を実行することによって、アナログ制御部112(図1参照)および第二IP制御部114(図1参照)の機能を実現する。CPU21は、PSTN制御処理を実行することによって、PSTN制御部111(図1参照)の機能を実現する。
【0033】
図3を参照し、第一IP制御処理について説明する。はじめにCPU21は、通信制御装置11の電源がOFFされたかを判断する(S11)。通信制御装置11の電源がOFFされた場合(S11:YES)、第一IP制御処理は終了する。一方、通信制御装置11の電源がOFFされていない場合(S11:NO)、CPU21は、PSTN網15に接続した緊急呼通信台12又はアナログ通信端末18との間のセッションの確立を要求するINVITEを受信したかを判断する(S13)。
【0034】
なおINVITEは、デジタル通信端末13から受信するか、または、アナログ通信端末14のSIP UAから仮想的に受信する。デジタル通信端末13から受信するINVITEは、緊急呼通信台12との間のセッションの確立を要求する信号である場合と、アナログ通信端末18との間のセッションの確立を要求する信号である場合とがある。一方、アナログ通信端末14のSIP UAから仮想的に受信するINVITEは、アナログ通信端末18との間のセッションの確立を要求する信号である場合のみである。アナログ通信端末14と緊急呼通信台12との間のセッションが確立される場合、第一アナログ制御処理(図4参照)およびPSTN制御処理(図6参照)を介して処理が実行されるためである。CPU21がINVITEを受信していない場合(S13:NO)、処理はS11に戻る。
【0035】
INVITEを受信した場合(S13:YES)、CPU21は、PSTN網15が使用中であるかを判断する(S15)。PSTN網15を介した他のセッションが既に確立されている場合、PSTN網15を介して新たなセッションを確立させることができない。この場合CPU21は、PSTN網15が使用中であると判断する(S15:YES)。CPU21は、デジタル通信端末13に対してBUSYを送信することによって、セッションの確立を拒否する(S21)。処理はS11に戻る。
【0036】
PSTN網15が使用中でない場合(S15:NO)、CPU21は、S13でデジタル通信端末13からINVITEを受信しており、且つ、緊急呼通信台12との間のセッションの確立を要求するINVITEであるかを判断する(S17)。緊急呼通信台12との間のセッションの確立を要求するINVITEである場合(S17:YES)、デジタル通信端末13と緊急呼通信台12との間のセッションの確立を拒否するために、CPU21は、デジタル通信端末13に対してBUSYを送信する(S21)。これによって、ユーザがデジタル通信端末13を使用して緊急通報を行った場合には、デジタル通信端末13は緊急呼通信台12につながらない。処理はS11に戻る。
【0037】
S13で受信したINVITEが、アナログ通信端末18との間のセッションの確立を要求する信号である場合(S17:NO)、デジタル通信端末13またはアナログ通信端末14が、アナログ通信端末18との間のセッションの確立を要求していることになる。以下、デジタル通信端末13またはアナログ通信端末14のうち、アナログ通信端末18との間のセッションの確立を要求している通信端末を、要求端末という。CPU21は、要求端末とアナログ通信端末18と間のセッションを確立させるために、PSTN制御処理(図6参照)に確立通信の実行を要求する(S19)。なお、要求された確立通信は、PSTN制御処理(図6参照)のS85(図6参照)で実行される。詳細は後述する。これによって、要求端末とアナログ通信端末18との間のセッションが確立される。要求端末とアナログ通信端末18との間で通話を実行することが可能な状態になる。
【0038】
CPU21は、アナログ通信端末18との間のセッションが確立した要求端末がデジタル通信端末13である場合に、デジタル通信端末13がオンフックしたかを判断する(S23)。デジタル通信端末13がオンフックしていない場合(S23:NO)、処理はS27に進む。一方、デジタル通信端末13がオンフックした場合(S23:YES)、デジタル通信端末13のユーザは、アナログ通信端末18との間のセッションを切断して通話を終了させようとしている。CPU21は、デジタル通信端末13とアナログ通信端末18との間で確立した状態のセッションを切断させるために、PSTN制御処理(図6参照)に切断通信の実行を要求する(S25)。なお、要求された切断通信は、PSTN制御処理(図6参照)のS91(図6参照)で実行される。デジタル通信端末13とアナログ通信端末18との間のセッションは切断される。処理はS11に戻る。
【0039】
CPU21は、PSTN制御処理(図6参照)のS103(図6参照)で、アナログ通信端末18と要求端末との間で確立した状態のセッションを切断させるための切断通信の実行の要求がされたかが判断される(S27)。切断通信の実行の要求がされていない場合(S27:NO)、処理はS23に戻る。一方、切断通信の実行の要求がされた場合(S27:YES)、CPU21は、アナログ通信端末18と要求端末との間で確立した状態のセッションを切断させるための切断通信を、要求端末との間で実行する(S29)。具体的には、CPU21は、要求端末に対して切断要求を送信する。アナログ通信端末18と要求端末との間のセッションは切断される。処理はS11に戻る。
【0040】
図4を参照し、第一アナログ制御処理について説明する。はじめにCPU21は、通信制御装置11の電源がOFFされたかを判断する(S31)。通信制御装置11の電源がOFFされた場合(S31:YES)、第一アナログ制御処理は終了する。一方、通信制御装置11の電源がOFFされていない場合(S31:NO)、CPU21は、モジュラーケーブル17を介してアナログ通信端末14から、PSTN網15に接続した緊急呼通信台12またはアナログ通信端末18との間のセッションの確立を要求する確立要求を受信したかを判断する(S33)。なお実際には、アナログ通信端末14から、デジタル通信端末13との間のセッションの確立を要求する確立要求を受信する場合もあるが、以下ではこの場合を省略している。確立要求を受信していない場合(S33:NO)、処理はS31に戻る。
【0041】
アナログ通信端末14から確立要求を受信した場合(S33:YES)、CPU21は、S33で受信した確立要求が、緊急呼通信台12との間のセッションの確立を要求する信号であるかを判断する(S37)。緊急呼通信台12との間のセッションの確立を要求する信号である場合(S37:YES)、CPU21は、緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間のセッションを確立させるために、PSTN制御処理(図6参照)に確立通信の実行を要求する(S39)。なお、要求された確立通信は、PSTN制御処理(図6参照)のS85(図6参照)で実行される。詳細は後述する。処理はS31に戻る。
【0042】
一方、S33で受信した確立要求が、緊急呼通信台12との間のセッションの確立を要求する信号でない場合(S37:NO)、アナログ通信端末18との間のセッションの確立を要求する信号であることになる。CPU21は、アナログ通信端末14、18間でセッションを確立させるために、第一IP制御処理(図3参照)に確立通信の実行を要求する(S41)。具体的には、CPU21は、アナログ通信端末18との間のセッションの確立を要求するINVITEであって、アナログ通信端末14のSIP UAから仮想的に送信されたINVITEが、第一IP制御処理(図3参照)のS13(図3参照)で受信されるように、INVITEの受信イベントを発行する。第一IP制御処理では、発行された受信イベントに基づき、アナログ通信端末14のSIP UAから仮想的に送信されたINVITEを受信する処理が実行される。なお、アナログ通信端末18との間のセッションの確立を要求するINVITEを第一IP制御処理で受信させる上述の処理は、第二IP制御部114(図1参照)の機能に相当する。処理はS31に戻る。
【0043】
図5を参照し、第二アナログ制御処理について説明する。CPU21は、緊急呼通信台12、アナログ通信端末18、およびデジタル通信端末13とアナログ通信端末14との間のセッションが確立した場合、第二アナログ制御処理を開始する。はじめにCPU21は、アナログ通信端末14がオンフックしたかを判断する(S51)。CPU21は、アナログ通信端末14がオンフックした場合にアナログ通信端末14から送信される切断要求を受信した場合に、アナログ通信端末14がオンフックしたと判断する。一方、CPU21は、アナログ通信端末14から切断要求を受信しない場合、アナログ通信端末14はオンフックしていないと判断する。アナログ通信端末14がオンフックしていない場合(S51:NO)、CPU21は、PSTN制御処理(図6参照)のS101(図6参照)で、緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間で確立した状態のセッションを切断させるための切断通信の実行の要求がされているか、または、S103(図6参照)で、アナログ通信端末14、18間で確立した状態のセッションを切断させるための切断通信の実行の要求がされているかを判断する(S73)。切断通信の実行の要求がされていない場合(S73:NO)、処理はS51に戻る。一方、切断通信の実行の要求がされた場合(S73:YES)、CPU21は、確立した状態のセッションを切断させるための切断通信を、アナログ通信端末14との間で実行する(S75)。具体的には、CPU21は、アナログ通信端末14に対して切断要求を送信する。緊急呼通信台12またはアナログ通信端末18とアナログ通信端末14との間のセッションは切断される。処理はS51に戻る。
【0044】
一方、アナログ通信端末14がオンフックした場合(S51:YES)、CPU21は、緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間でセッションが確立されているかを判断する(S53)。緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間でセッションが確立されていない場合(S53:NO)。アナログ通信端末14、18間でセッションが確立されていることになる。アナログ通信端末14のユーザは、アナログ通信端末18との間のセッションを切断して通話を終了させようとしている。CPU21は、確立中のセッションを切断させるために、PSTN制御処理(図6参照)に切断通信の実行を要求する(S55)。なお、要求された切断通信は、PSTN制御処理(図6参照)のS91(図6参照)で実行される。アナログ通信端末14、18間のセッションは切断される。第二アナログ制御処理は終了する。
【0045】
一方、緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間でセッションが確立されている場合(S53:YES)、CPU21は、アナログ通信端末14のユーザがセッションを切断して通話を終了させようとしているのに対し、緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間のセッションを切断することなくそのまま維持する(S56)。これによって緊急呼通信台12は、維持されたセッションを介して逆信を容易に実行することができる。すなわち、緊急呼通信台12は、逆信を実行するためにセッションを再度確立させる必要がない。
【0046】
CPU21は、アナログ通信端末14がオンフックしてからの経過時間の計測を開始する(S57)。CPU21は、緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間のセッションを介し、緊急呼通信台12からアナログ通信端末14に対して逆信が実行された旨の通知を、PSTN制御処理(S95、図6参照)から受け付けたかを判断する(S59)。逆信が実行された旨の通知を受け付けた場合(S59:YES)、CPU21は、アナログ通信端末14の呼び出し音を鳴動させて逆信が実行された旨をユーザに通知するために、アナログ通信端末14に対して着信通知を送信する(S63)。処理はS65に進む。
【0047】
アナログ通信端末14は、通信制御装置11から着信通知を受信した場合、呼び出し音を鳴動させ、緊急呼通信台12から逆信が実行された旨をユーザに通知する。緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間のセッションは確立された状態で維持されている(S56)ので、アナログ通信端末14のユーザは、呼び出し音に応じてアナログ通信端末14をオフフックすることで、緊急呼通信台12において実行された逆信に応じ、緊急呼通信台12との間で通話を再開することができる。
【0048】
一方、逆信が実行された旨の通知を受け付けない場合(S59:NO)、CPU21は、アナログ通信端末14がオンフックしてから所定時間が経過したかを、S57で開始した経過時間の計測の結果に基づいて判断する(S61)。経過時間が所定時間未満である場合(S61:NO)、処理はS65に進む。一方、経過時間が所定時間以上となった場合(S61:YES)、CPU21は、アナログ通信端末14の呼び出し音を鳴動させてユーザへの通知を行うために、アナログ通信端末14に対して着信通知を送信する(S63)。
【0049】
アナログ通信端末14は、通信制御装置11から着信通知を受信した場合、呼び出し音を鳴動させることによってユーザへの通知を行う。ユーザは、呼び出し音に応じてアナログ通信端末14をオフフックすることで、緊急呼通信台12との通話を再開することができる。このように通信制御装置11は、アナログ通信端末14がオンフックした後、維持されたセッションを介して緊急呼通信台12が逆信を所定時間以上実行しない場合、緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間の通信の再開をユーザに促すことができる。処理はS65に進む。
【0050】
CPU21は、アナログ通信端末14がオフフックしたかを判断する(S65)。アナログ通信端末14がオフフックした場合(S65:YES)、緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間で維持された状態のセッションを介し、緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間で通話が再開される(S67)。処理はS51に戻る。
【0051】
一方、アナログ通信端末14がオフフックしない場合(S65:NO)、CPU21は、PSTN制御処理(図6参照)のS101(図6参照)で、緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間で確立した状態のセッションを切断させるための切断通信の実行の要求がされているかを判断する(S69)。切断通信の実行の要求がされていない場合(S69:NO)、処理はS59に戻る。一方、切断通信の実行の要求がされた場合(S69:YES)、CPU21は、確立した状態のセッションを切断させるための切断通信を、アナログ通信端末14との間で実行する(S71)。具体的には、CPU21は、アナログ通信端末14に対して切断要求を送信する。緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間のセッションは切断される。第二アナログ制御処理は終了する。
【0052】
図6を参照し、PSTN制御処理について説明する。はじめにCPU21は、通信制御装置11の電源がOFFされたかを判断する(S81)。通信制御装置11の電源がOFFされた場合(S81:YES)、PSTN制御処理は終了する。一方、通信制御装置11の電源がOFFされていない場合(S81:NO)、PSTN網15に接続した緊急呼通信台12またはアナログ通信端末18との間のセッションを確立させるための確立通信の実行が要求されているかを判断する(S83)。確立通信の実行が要求される場合として、次の二つの場合がある。第一の場合は、第一IP制御処理(図3参照)のS19(図3参照)で、デジタル通信端末13またはアナログ通信端末14とアナログ通信端末18との間のセッションを確立させるための確立通信の実行が要求される場合である。第二の場合は、第一アナログ制御処理(図4参照)のS39(図4参照)で、アナログ通信端末14と緊急呼通信台12との間のセッションを確立させるための確立通信の実行が要求される場合である。いずれの場合にも該当しない場合(S83:NO)、処理はS81に戻る。
【0053】
一方、セッションを確立させるための確立通信の実行が要求されている場合(S83:YES)、CPU21は、上述の第一の場合には、デジタル通信端末13またはアナログ通信端末14とアナログ通信端末18との間のセッションを確立させるための確立通信を、PSTN網15を介してアナログ通信端末18との間で実行する(S85)。これによってセッションが確立され(S85)、通話が可能になる。一方、上述の第二の場合には、CPU21は、通信制御装置11と緊急呼通信台12との間のセッションを確立させるための確立通信を、PSTN網15を介して緊急呼通信台12との間で実行する(S85)。これによってセッションが確立され(S85)、通話が可能になる。
【0054】
CPU21は、S85で確立されたセッションを切断させるための切断通信の実行が要求されているかを判断する(S87)。切断通信の実行が要求される場合として、次の二つの場合がある。第一の場合は、第一IP制御処理(図3参照)のS25(図3参照)で、デジタル通信端末13とアナログ通信端末18との間のセッションを切断させるための切断通信の実行が要求される場合である。第二の場合は、第二アナログ制御処理(図5参照)のS55(図5参照)で、アナログ通信端末14、18間のセッションを切断させるための切断通信の実行が要求される場合である。なお、緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間でセッションが確立された状態で、アナログ通信端末14がオンフックした場合(S51、図5参照)には、第二アナログ制御処理(図5参照)のS56(図5参照)で、確立中のセッションは維持され、PSTN制御処理に対して切断通信の実行は要求されない。
【0055】
切断通信の実行が要求されている場合(S87:YES)、CPU21は、確立した状態のセッションを切断させるための切断通信を、アナログ通信端末18との間で実行する(S91)。具体的には、CPU21は、アナログ通信端末18に対して切断要求を送信する。PSTN網15は開放される(S91)。処理はS81に戻る。
【0056】
一方、切断通信の実行が要求されていない場合(S87:NO)、CPU21は、緊急呼通信台12において実行された逆信を検出したかを判断する(S93)。逆信を検出しない場合(S93:NO)、処理はS97に進む。逆信を検出した場合(S93:YES)、CPU21は、緊急呼通信台12において逆信が実行された旨を、第二アナログ制御処理(図5参照)に対して通知する(S95)。なお、第二アナログ制御処理(図5参照)では、逆進が実行された旨の通知を受けた場合、アナログ通信端末14に対して着信通知が送信される(S63、図5参照)。処理はS97に進む。
【0057】
CPU21は、緊急呼通信台12またはアナログ通信端末18から出力されるビジートーン(BT)を検出したかを判断する(S97)。CPU21は、緊急呼通信台12またはアナログ通信端末18からビジートーンが検出されない場合(S97:NO)、処理はS87に戻る。一方、緊急呼通信台12またはアナログ通信端末18からビジートーンが検出された場合(S97:YES)、ビジートーンを発信している緊急呼通信台12またはアナログ通信端末18はオンフックしており、確立中のセッションを切断させようとしていることになる。
【0058】
CPU21は、緊急呼通信台12からビジートーンが検出されたかを判断する(S99)。緊急呼通信台12からビジートーンを検出した場合(S99:YES)、CPU21は、緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間で確立された状態のセッションを切断させるために、第二アナログ制御処理(図5参照)に対して切断通信の実行を要求する(S101)。なお、要求された切断通信は、第二アナログ制御処理(図5参照)のS71、75(図6参照)で実行される。PSTN網15は開放される(S105)。処理はS81に戻る。以上のように、緊急呼通信台12においてアナログ通信端末14との間の通信を終了させる処理が実行された場合、通信制御装置11は、緊急呼通信台12とアナログ通信端末14との間のセッションを終了させることができる。
【0059】
一方、緊急呼通信台12からビジートーンを検出していない場合(S99:NO)、アナログ通信端末18からビジートーンを検出していることになる。CPU21は、アナログ通信端末14、18間で確立された状態のセッションを切断させるために、第二アナログ制御処理(図5参照)に対して切断通信の実行を要求する(S103)。なお、要求された切断通信は、第二アナログ制御処理(図5参照)のS71、75(図6参照)で実行される。PSTN網15は開放される(S105)。処理はS81に戻る。
【0060】
以上説明したように、通信制御装置11は、PSTN網15とIP網16との間の通信を仲介する周知の機器、例えばVoIPゲートウェイが、アナログ通信端末14と直接接続するためのFXS I/F28を備えた構成を有している。アナログ通信端末14は通信制御装置11に直接接続された状態となるため、通信制御装置11の近傍に配置される。アナログ通信端末14を使用してユーザが緊急通報を行ったとする。通信制御装置11は、PSTN網15を介して接続する緊急呼通信台12と、アナログ通信端末14との間のセッションを確立させるための確立通信を実行する。アナログ通信端末14を使用して行われた緊急通報は、近傍に配置される緊急呼通信台12につながる。このためアナログ通信端末14のユーザは、適切な緊急呼通信台12と通話をおこなうことができる。
【0061】
一方、デジタル通信端末13を使用してユーザが緊急通報を行ったとする。アナログ通信端末14とは異なり、デジタル通信端末13の所在が不定であり、緊急呼通信台12に対してデジタル通信端末が離れた場所に配置されている可能性がある。従って通信制御装置11は、緊急呼通信台12とデジタル通信端末13との間のセッションは確立させない。このようにして通信制御装置11は、互いに離れて配置されている可能性のあるデジタル通信端末13と緊急呼通信台12との間のセッションの確立を拒否することによって、適切でない緊急呼通信台12とデジタル通信端末13との間の通信を抑止することができる。
【0062】
なお、FXS I/F28が本発明の「接続手段」に相当する。S33の処理を行うCPU21が本発明の「第一受信手段」に相当する。S85の処理を行うCPU21が本発明の「通信手段」に相当する。S13の処理を行うCPU21が本発明の「第二受信手段」に相当する。S21の処理を行うCPU21が本発明の「拒否手段」に相当する。S51の処理を行うCPU21が本発明の「第三受信手段」に相当する。S56の処理を行うCPU21が本発明の「維持手段」に相当する。S93の処理を行うCPU21が本発明の「判断手段」に相当する。S63の処理を行うCPU21が本発明の「第一送信手段」「第二送信手段」に相当する。S97の処理を行うCPU21が本発明の「第四受信手段」に相当する。S71、S75の処理を行うCPU21が本発明の「第三送信手段」に相当する。S33の処理が本発明の「第一受信ステップ」に相当する。S85の処理が本発明の「通信ステップ」に相当する。S13の処理が本発明の「第二受信ステップ」に相当する。S21の処理が本発明の「拒否ステップ」に相当する。
【0063】
本発明は上述の実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。上述の実施形態では、通信制御装置11とアナログ通信端末13との間はモジュラーケーブル17によって接続されていた。通信制御装置11とアナログ通信端末13との間は、他の通信媒体によって接続されてもよい。例えば、アナログ通信端末14は、構内PSTN網を介して通信制御装置11と接続してもよい。通信制御装置11と直接接続するアナログ通信端末14は、二台以上であってもよい。上述の実施形態では、アナログ通信端末14と緊急呼通信台12との間のセッションが確立した後、アナログ通信端末14がオンフックすることによってセッションの切断が要求された場合、アナログ通信端末14と緊急呼通信台12との間のセッションは維持されていた。通信制御装置11は、アナログ通信端末14がオンフックした場合、アナログ通信端末14と緊急呼通信台12との間のセッションを切断してもよい。上述の実施形態では、アナログ通信端末14と緊急呼通信台12との間で維持されたセッションを介し、緊急呼通信台12が逆信を実行した場合、通信制御装置11は、アナログ通信端末14に対して着信通知を送信していた。通信制御装置11は、着信通知を行う代わりに、別の通知方法によってアナログ通信端末14のユーザに逆信が実行された旨を通知してもよい。例えば、通信制御装置11に設けたスピーカやLEDなどを駆動することによって、アナログ通信端末14のユーザに逆信が実行された旨を直接通知してもよい。上述の実施形態では、アナログ通信端末14と緊急呼通信台12との間のセッションが確立された状態で、アナログ通信端末14がオンフックした場合、オンフックしてから所定時間が経過した場合には、緊急呼通信台12によって逆信が実行されていない場合でも、アナログ通信端末14に対して着信通知が送信されていた。通信制御装置11は、所定時間が経過した場合、緊急呼通信台12に警告信号を送信し、逆信の実行を促してもよい。上述の実施形態では、アナログ通信端末14と緊急呼通信台12との間のセッションが確立された状態で、緊急呼通信台12からビジートーンが検出された場合、アナログ通信端末14と緊急呼通信台12との間のセッションを切断していた。例えば緊急呼通信台12は、セッションを切断させるための所定のトーン信号を、接続された状態のセッションを介して発信してもよい。通信制御装置11は、所定のトーン信号を受信した場合に、アナログ通信端末14と緊急呼通信台12との間のセッションを切断しても良い。通信制御装置11は、アナログ通信端末14と緊急呼通信台12との間のセッションが所定時間以上連続して確立された状態になっている場合に、強制的にセッションを切断してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 通信システム
11 通信制御装置
12 緊急呼通信台
13 デジタル通信端末
14 アナログ通信端末
15 PSTN網
16 IP網
21 CPU
28 FXS I/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP網に接続するデジタル通信端末と、PSTN網に接続する緊急呼通信台との間の通信を仲介し、前記IP網及び前記PSTN網に接続可能に構成される通信制御装置において、
アナログ通信端末と通信するために前記アナログ通信端末と接続する接続手段と、
前記接続手段によって接続された前記アナログ通信端末から、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を要求する第一確立要求を受信する第一受信手段と、
前記第一受信手段によって前記第一確立要求が受信された場合に、前記PSTN網を介して前記緊急呼通信台と前記アナログ通信端末との間のセッションを確立させるために、前記緊急呼通信台と確立通信を行う通信手段と、
前記デジタル通信端末から、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を要求する第二確立要求を、前記IP網を介して受信する第二受信手段と、
前記第二受信手段によって前記第二確立要求が受信された場合に、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を拒否する拒否手段と
を備えたことを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記アナログ通信端末と前記緊急呼通信台との間のセッションが確立した状態で、前記アナログ通信端末から、前記緊急呼通信台との間のセッションの切断を要求する切断要求を受信する第三受信手段と、
前記第三受信手段によって前記切断要求が受信された場合に、前記アナログ通信端末と前記緊急呼通信台との間のセッションを維持する維持手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記維持手段によって前記アナログ通信端末と前記緊急呼通信台との間で維持されているセッションを介し、前記緊急呼通信台から前記アナログ通信端末に対する信号を受信したか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段によって、前記緊急呼通信台から前記アナログ通信端末に対する信号を受信したと判断された場合に、前記アナログ通信端末のユーザに対する着信通知を前記アナログ通信端末に送信する第一送信手段と
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記判断手段によって、前記緊急呼通信台から前記アナログ通信端末に対する信号を受信していないと判断され、且つ、前記第三受信手段によって前記アナログ通信端末から前記切断要求が受信されてからの経過時間が所定時間以上となった場合に、前記アナログ通信端末のユーザに対する着信通知を前記アナログ通信端末に送信する第二送信手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記アナログ通信端末と前記緊急呼通信台との間のセッションが確立した状態で、前記緊急呼通信台から、通話の終了を通知する終了通知を受信する第四受信手段と、
前記第四受信手段によって前記終了通知が受信された場合に、前記アナログ通信端末と前記緊急呼通信台との間で確立したセッションを切断させるために、前記緊急呼通信台との間のセッションの切断を要求する切断要求を、前記アナログ通信端末に対して送信する第三送信手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項6】
IP網に接続するデジタル通信端末と、PSTN網に接続する緊急呼通信台との間の通信を仲介する通信制御方法であって、
接続手段を介して接続したアナログ通信端末から、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を要求する第一確立要求を受信する第一受信ステップと、
前記第一受信ステップによって前記第一確立要求が受信された場合に、前記PSTN網を介して前記緊急呼通信台と前記アナログ通信端末との間のセッションを確立させるために、前記緊急呼通信台と確立通信を行う通信ステップと、
前記デジタル通信端末から、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を要求する第二確立要求を、前記IP網を介して受信する第二受信ステップと、
前記第二受信ステップによって前記第二確立要求が受信された場合に、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を拒否する拒否ステップと
を備えたことを特徴とする通信制御方法。
【請求項7】
接続手段を介して接続したアナログ通信端末から、PSTN網に接続する緊急呼通信台との間のセッションの確立を要求する第一確立要求を受信する第一受信ステップと、
前記第一受信ステップによって前記第一確立要求が受信された場合に、前記PSTN網を介して前記緊急呼通信台と前記アナログ通信端末との間のセッションを確立させるために、前記緊急呼通信台と確立通信を行う通信ステップと、
IP網に接続するデジタル通信端末から、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を要求する第二確立要求を受信する第二受信ステップと、
前記第二受信ステップによって前記第二確立要求が受信された場合に、前記緊急呼通信台との間のセッションの確立を拒否する拒否ステップと
をコンピュータに実行させるための通信制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−46083(P2013−46083A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180173(P2011−180173)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】