説明

通信妨害装置および通信妨害方法

【課題】通信を効率よく妨害すること。
【解決手段】通信妨害装置110は、受信部112と、判定部113と、生成部114と、送信部115と、を備えている。受信部112は、無線通信機101〜103の間で無線により送信される通信波を受信する。判定部113は、受信部112によって受信された通信波の帯域を判定する。生成部114は、判定部113によって判定された帯域の少なくとも一部を含む帯域の妨害波を生成する。送信部115は、生成部114によって生成された妨害波を無線により送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信妨害装置および通信妨害方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の通信妨害の例として、通信妨害対象の無線通信機が使用する可能性のある帯域内に均一に分散された妨害電波を出力し、帯域内の通信妨害を行うパワー妨害がある。また、通信妨害対象の無線通信機が送信する通信同期コードを傍受して記憶し、記憶した通信同期コードを妨害波として送信し、受信側通信機に擬似同期させることにより通信を妨害する同期コード妨害が知られている(たとえば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−91088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、通信を効率よく妨害することができないという問題がある。たとえば、パワー妨害では、通信妨害対象の無線通信機が使用する可能性のある帯域を包含する広い帯域に対して妨害波を発生させるため、消費電力が大きくなる。
【0005】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、通信を効率よく妨害することができる通信妨害装置および通信妨害方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の一側面によれば、他の通信機の間で無線により送信される通信波を受信し、前記受信した通信波の帯域を判定し、判定した帯域の少なくとも一部を含む帯域の妨害波を生成し、生成した妨害波を無線により送信する通信妨害装置および通信妨害方法が提案される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一側面によれば、通信を効率よく妨害することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる通信システムの一例を示す図である。
【図2】図2は、通信波および妨害波の一例を示す図である。
【図3−1】図3−1は、実施の形態1にかかる通信妨害装置の構成例を示す図である。
【図3−2】図3−2は、図3−1に示したデジタル処理部の構成例を示す図である。
【図4−1】図4−1は、通信妨害装置による通信妨害の一例を示す図である。
【図4−2】図4−2は、通信波および妨害波の各帯域の一例を示す図である。
【図5】図5は、通信妨害装置による通信波の受信動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、通信妨害装置による妨害波の送信動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、周波数ホッピングする通信の妨害の例を示す図である。
【図8−1】図8−1は、実施の形態2にかかる通信妨害装置の構成例を示す図である。
【図8−2】図8−2は、図8−1に示したデジタル処理部の構成例を示す図である。
【図9−1】図9−1は、通信妨害装置による通信妨害の一例を示す図である。
【図9−2】図9−2は、図9−1に示した通信波および妨害波の一部を拡大して示す図である。
【図10】図10は、通信妨害装置による通信波の受信動作の一例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、通信妨害装置による妨害波の送信動作の一例を示すフローチャートである。
【図12】図12は、周波数ホッピングする通信の妨害の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる通信妨害装置および通信妨害方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる通信システムの一例を示す図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる通信システム100は、無線通信機101〜103と、通信妨害装置110と、を備えている。無線通信機101〜103は、互いに無線によって通信波を送受信している。たとえば、無線通信機101〜103は、マルチキャリア通信方式の一種であるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiple:直交周波数分割多重)方式の通信波によって通信を行っている。
【0011】
具体的には、無線通信機101〜103は、通信すべきデータを、互いに直交する複数のサブキャリアに分割して送信する。これにより、サブキャリア間の干渉をなくしてサブキャリアの周波数間隔を狭め、無線周波数の利用効率を高くする。OFDM方式の通信波を受信する無線通信機は、たとえば離散フーリエ変換を用いて、サブキャリア間の直交性を利用して各サブキャリアを分離することによってデータの復調を行う。
【0012】
通信妨害装置110は、たとえば、無線通信機101〜103の通信を妨害する。具体的には、通信妨害装置110は、受信アンテナ111と、受信部112と、判定部113と、生成部114と、送信部115と、送信アンテナ116と、を備えている。受信部112は、無線通信機101〜103の間で無線送信される通信波を、受信アンテナ111を介して受信する。受信波121〜123は、受信部112が受信する通信波を示している。受信部112は、受信した通信波を判定部113へ出力する。
【0013】
判定部113は、受信部112から出力された通信波の帯域(周波数帯域)を判定する。判定部113は、判定した帯域を生成部114へ通知する。生成部114は、判定部113から通知された帯域に少なくとも一部が重なる帯域(たとえば同一の帯域)の妨害波を生成する。また、生成部114は、OFDMによって妨害波を生成してもよい。生成部114は、生成した妨害波を送信部115へ出力する。
【0014】
送信部115は、生成部114から出力された妨害波を、送信アンテナ116を介して無線送信する。妨害波131〜133は、送信部115が送信する妨害波を示している。なお、受信アンテナ111および送信アンテナ116は一つのアンテナによって実現することも可能である。
【0015】
通信妨害装置110が妨害波を送信することにより、無線通信機101〜103のうちの受信側の無線通信機において、通信のために受信すべき通信波と、通信妨害装置110によって送信された妨害波と、が合波されて受信される。これにより、通信波の復調が困難になり、無線通信機101〜103の間で行われる通信を妨害することができる。
【0016】
また、受信した通信波の帯域に合わせて妨害波の帯域を限定することで、通信を妨害しつつ、妨害波の送信のための消費電力を抑えることができる。したがって、通信妨害装置110によれば、通信を効率よく妨害することができる。また、消費電力を抑えることで、設備の巨大化および高額化を抑えることも可能である。また、妨害対象の通信波の帯域に合わせて妨害波の帯域を限定することで、妨害対象となっていない他の周波数帯への影響を回避することも可能である。
【0017】
また、通信妨害装置110の判定部113は、受信部112によって受信される通信波の帯域を周期的に判定し、生成部114は、判定部113によって周期的に判定される帯域に基づいて妨害波の帯域を周期的に調整してもよい。これにより、たとえば周波数ホッピングなどによって通信波の帯域が変化しても、通信波の帯域の変化に追従して通信を妨害することができる。このため、たとえば変化する可能性のある周波数を含む広い帯域に対して妨害波を発生させる場合に比べて、妨害波の送信のための消費電力を抑えることができる。したがって、通信を効率よく妨害することができる。
【0018】
また、通信妨害装置110は、受信部112による通信波の受信と、送信部115による妨害波の送信と、を交互に実行させる制御部を備えていてもよい。これにより、送信部115によって送信される妨害波が受信部112に回り込んで受信されることを回避することができる。このため、たとえば、妨害対象の通信波の帯域が変化した後も、自身で送信した妨害波に基づく妨害波を送信し続けることを回避することができる。
【0019】
また、受信部112による通信波の受信と、送信部115による妨害波の送信と、を交互に実行させる場合において、受信部112による通信波の受信の期間は、判定部113において通信波の帯域を判定するために十分な長さであればよい。したがって、たとえば、同期コードを確実に含む程度に長い期間にわたり通信波を受信する技術に比べて、受信部112による通信波の受信の期間を短くすることが可能である。これにより、送信部115による妨害波の送信の期間を長くすることができるため、通信波の復調をより困難にすることができる。このため、通信を効果的に妨害することができる。
【0020】
また、たとえば同期コードを妨害波として用いる技術のように、長期間にわたり受信した通信波をメモリに記憶しておかなくても通信を妨害することができる。このため、メモリの使用量を低減することができる。したがって、回路規模を小さくすることも可能である。たとえば、通信妨害装置110によれば、判定部113によって判定された帯域を示す情報を記憶すれば通信を妨害することができる。したがって、通信妨害装置110によれば、通信を効率よく妨害することができる。
【0021】
図2は、通信波および妨害波の一例を示す図である。図2においては、無線通信機101(送信側)から無線通信機102(受信側)への通信を通信妨害装置110が妨害する例について説明する。図2に示すグラフ210,220,230において、横軸は周波数を示し、縦軸は電力を示している。
【0022】
グラフ210の通信波211は、送信側の無線通信機101が受信側の無線通信機102へ無線送信するOFDMの通信波である。通信波211は、互いに直交する複数のサブキャリア212を含んでいる。グラフ220の妨害波221は、通信妨害装置110が送信するOFDMの妨害波である。妨害波221は、互いに直交する複数のサブキャリア222を含んでいる。通信妨害装置110は、通信波211を受信し、受信した通信波211の帯域の少なくとも一部に重なる帯域の妨害波221を送信する。
【0023】
グラフ230は、受信側の無線通信機102が受信する電波を示している。グラフ230に示すように、無線通信機102は、通信波211と妨害波221とが合波された電波を受信する。これにより、通信波211のサブキャリア212の直交性が崩れるため、無線通信機102において通信波211のサブキャリア212の分割が困難になる。このため、無線通信機102において通信波211の復調が困難になり、無線通信機101から無線通信機102への通信を妨害することができる。
【0024】
なお、妨害波221のサブキャリア数やサブキャリア間隔は、通信波211に関わらず任意に設定することができる。また、通信波211の変調に用いる伝送データには、たとえばPN(Pseudo random Noise:擬似ランダム雑音)パターンなどのランダムに生成したランダムデータや、所定の変化を有するパターンデータなどを用いることができる。
【0025】
また、OFDMの妨害波221を用いることで、妨害波221の電力が低くても、通信波211のサブキャリア212の直交性を崩すことで通信を妨害することができる。たとえば、妨害波221の電力が通信波211と同程度、あるいは通信波211よりも低くても通信の妨害が可能である。このため、たとえば通信波211よりも電力が高いノイズによって通信を妨害するパワー妨害に比べて消費電力を抑えることができる。したがって、通信妨害装置110によれば、通信を効率よく妨害することができる。
【0026】
図3−1は、実施の形態1にかかる通信妨害装置の構成例を示す図である。図3−2は、図3−1に示したデジタル処理部の構成例を示す図である。図3−1に示す通信妨害装置300は、図1に示した通信妨害装置110の構成例である。図3−1に示すように、通信妨害装置300は、受信アンテナ311と、受信側スイッチ312と、局部信号発生器313と、周波数変換器314と、バンドパスフィルタ315と、A/D変換器316と、デジタル処理部320と、D/A変換器331と、局部信号発生器332と、周波数変換器333と、送信側スイッチ334と、送信アンテナ335と、送受信切替制御部340と、を備えている。
【0027】
図1に示した受信アンテナ111は、たとえば受信アンテナ311によって実現することができる。受信アンテナ311は、空中からのRF信号(高周波信号)を受信し、受信したRF信号を受信側スイッチ312へ出力する。受信側スイッチ312(SW)は、送受信切替制御部340の制御により、RF信号(通信波)の受信処理のオン/オフを切り替える。具体的には、受信側スイッチ312は、オンのときは受信アンテナ311からのRF信号を周波数変換器314へ出力する。また、受信側スイッチ312は、オフのときは受信アンテナ311からのRF信号を周波数変換器314へ出力しない。
【0028】
図1に示した受信部112は、たとえば局部信号発生器313、周波数変換器314、バンドパスフィルタ315およびA/D変換器316によって実現することができる。局部信号発生器313は、局部信号(ローカル信号)を生成する。局部信号発生器313は、生成した局部信号を周波数変換器314へ出力する。
【0029】
周波数変換器314は、受信側スイッチ312から出力されたRF信号を、局部信号発生器313から出力された局部信号とミキシング(混合)することでIF帯(中間周波数帯)の周波数に変換する。周波数変換器314は、IF帯に変換したIF信号をバンドパスフィルタ315へ出力する。なお、局部信号発生器313の局部信号の周波数(すなわち変換するIF帯)は、あらかじめユーザによって設定しておくことができる。
【0030】
バンドパスフィルタ315(BPF:Band Pass Filter)は、周波数変換器314から出力されたIF信号のうちの、通信妨害の対象の帯域(妨害対象帯域)のIF信号を抽出して通過させる。これにより、通信妨害の対象の帯域を限定することができる。バンドパスフィルタ315を通過したIF信号は、A/D変換器316へ出力される。なお、バンドパスフィルタ315が抽出する帯域は、あらかじめユーザによって設定しておくことができる。また、バンドパスフィルタ315を省いた構成としてもよい。
【0031】
A/D変換器316(Analog/Digital)は、バンドパスフィルタ315から出力されたIF信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。A/D変換器316は、デジタル信号に変換した信号をデジタル処理部320へ出力する。
【0032】
デジタル処理部320は、周波数分析部321と、メモリ322と、周波数設定部323と、数値制御発振部324と、ベースバンドOFDM信号生成部325と、周波数変換部326と、を備えている。デジタル処理部320はたとえばFPGA(Field Programmable Gate Array)などの演算手段によって実現することができる。なお、メモリ322はデジタル処理部320の外部に設けられていてもよい。
【0033】
図1に示した判定部113は、たとえば周波数分析部321によって実現することができる。周波数分析部321は、A/D変換器316から出力された信号の周波数成分の分析を行う。たとえば、周波数分析部321は、A/D変換器316から出力された信号をフーリエ変換し、フーリエ変換により得られた周波数領域の信号に基づいて帯域を判定する。周波数分析部321が判定する信号の帯域は、たとえば、信号の基本周波数および帯域幅である。周波数分析部321は、分析結果をメモリ322へ記憶する。周波数分析部321は、たとえばFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)を用いて実現することができる。
【0034】
図1に示した生成部114は、たとえば周波数設定部323、数値制御発振部324、ベースバンドOFDM信号生成部325および周波数変換部326によって実現することができる。周波数設定部323は、周波数分析部321によってメモリ322に記憶された周波数の分析結果に基づいて、数値制御発振部324に基本周波数を設定する。たとえば、周波数設定部323は、メモリ322に記憶された基本周波数(すなわち受信信号の基本周波数)を数値制御発振部324の基本周波数として設定する。
【0035】
数値制御発振部324(NCO:Numerically Controlled Oscillator)は、周波数設定部323によって設定された基本周波数の周期的な信号を発振し、発振した信号を周波数変換部326へ出力する。
【0036】
ベースバンドOFDM信号生成部325は、OFDM方式の妨害信号を生成する。具体的には、ベースバンドOFDM信号生成部325は、データ生成部325aと、シンボルマッピング部325bと、逆離散フーリエ変換部325cと、を備えている。
【0037】
データ生成部325aは、伝送データを生成する。データ生成部325aが生成する伝送データは、たとえば、PNパターンなどのランダムに生成したランダムデータや、所定の変化を有するパターンデータである。データ生成部325aは、生成した伝送データをシンボルマッピング部325bへ出力する。
【0038】
シンボルマッピング部325bは、データ生成部325aから出力された伝送データをサブキャリアの本数分にマッピングを行う。ここでは、シンボルマッピング部325bによって伝送データがN本(N=1,2,3,…)のサブキャリア(Bank_1〜Bank_N)にマッピングされるとする。
【0039】
逆離散フーリエ変換部325cは、シンボルマッピング部325bによってマッピングされた各サブキャリアを逆離散フーリエ変換する。逆離散フーリエ変換部325cは、逆離散フーリエ変換により得られたベースバンドOFDM信号のI成分およびQ成分(I data,Q data)を周波数変換部326へ出力する。逆離散フーリエ変換部325cは、たとえばIFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)によって実現することができる。
【0040】
周波数変換部326は、ベースバンドOFDM信号生成部325から出力されたベースバンドOFDM信号をIF帯の信号に変換する。具体的には、周波数変換部326は、位相シフタ326aと、ミキサ326b,326cと、加算部326dと、を備えている。位相シフタ326aは、数値制御発振部324から出力された信号を90[°]遅延させ、遅延させた信号をミキサ326cへ出力する。
【0041】
ミキサ326bは、ベースバンドOFDM信号生成部325から出力されたベースバンドOFDM信号のI成分と、数値制御発振部324から出力された信号と、をミキシングし、ミキシングにより得られたIF信号を加算部326dへ出力する。ミキサ326cは、ベースバンドOFDM信号生成部325から出力されたベースバンドOFDM信号のQ成分と、位相シフタ326aから出力された信号と、をミキシングし、ミキシングにより得られたIF信号を加算部326dへ出力する。加算部326dは、ミキサ326bから出力されたIF信号と、ミキサ326cから出力されたIF信号と、を加算し、加算結果のIF信号をD/A変換器331へ出力する。
【0042】
図1に示した送信部115は、たとえばD/A変換器331、局部信号発生器332および周波数変換器333によって実現することができる。D/A変換器331(Digital/Analog)は、デジタル処理部320から出力されたIF信号をデジタル信号からアナログ信号に変換する。D/A変換器331は、アナログ信号に変換したIF信号を周波数変換器333へ出力する。
【0043】
局部信号発生器332は、局部信号(ローカル信号)を生成する。局部信号発生器332は、生成した局部信号を周波数変換器333へ出力する。周波数変換器333は、D/A変換器331から出力されたIF信号を、局部信号発生器332から出力された局部信号とミキシングすることでRF帯(高周波数帯)に変換する。周波数変換器333は、RF帯に変換したRF信号を送信側スイッチ334へ出力する。
【0044】
送信側スイッチ334(SW)は、送受信切替制御部340の制御により、RF信号(妨害波)の送信のオン/オフを切り替える。具体的には、送信側スイッチ334は、オンのときは周波数変換器333からのRF信号を送信アンテナ335へ出力する。また、送信側スイッチ334は、オフのときは周波数変換器333からのRF信号を送信アンテナ335へ出力しない。図1に示した送信アンテナ116は、たとえば送信アンテナ335によって実現することができる。送信アンテナ335は、送信側スイッチ334から出力されたRF信号を妨害波として空中へ送信する。
【0045】
送受信切替制御部340は、通信波の受信と、妨害波の送信と、を交互に実行させる制御部である。具体的には、送受信切替制御部340は、受信側スイッチ312をオンにするとともに送信側スイッチ334をオフにすることで、通信波の受信を実行させる。また、送受信切替制御部340は、受信側スイッチ312をオフにするとともに送信側スイッチ334をオンにすることで、妨害波の送信を実行させる。
【0046】
たとえば、送受信切替制御部340は、通信波の受信と妨害波の送信とを周期的に切り替える。送受信切替制御部340は、たとえばFPGAなどの演算手段によって実現することができる。また、送受信切替制御部340は、たとえばデジタル処理部320に組み込まれていてもよい。
【0047】
図4−1は、通信妨害装置による通信妨害の一例を示す図である。図4−1において、横軸は時間を示している。通信波411は、妨害対象の無線通信機によって送信される通信波である。妨害波412は、通信妨害装置300が送信する妨害波である。通信妨害装置300は、通信波411のうちの所定の分析期間における通信波411aを受信し、受信した通信波411aの帯域に基づいて妨害波412を送信する。
【0048】
通信妨害装置300は、通信波411の帯域を判定するために十分な期間の通信波411aを受信すればよいため、通信波411を受信する期間は短くてもよい。たとえば、周波数分析部321におけるFFTのサンプリング周波数を2[G]とすると1つのサンプリングの期間は0.5[ns]となる。FFTの解像度(バンク数)を1024[ポイント]とすると、0.5[ns]×1024[ポイント]=512[ns]以上の期間だけ通信波411aを受信することで、通信波411の帯域を判定することができる。したがって、通信妨害装置300は、妨害波412を送信する期間を長く確保することができる。これにより、通信波411に対して妨害波412が合成される期間が長くなり、通信波411の復調を困難にすることができる。
【0049】
図4−2は、通信波および妨害波の各帯域の一例を示す図である。図4−2において、横軸は周波数を示している。また、図4−2の縦方向は信号の電力を示している。通信波スペクトル421は、通信妨害装置300が受信した通信波411aの周波数の周波数分析部321による分析結果を示している。たとえば、通信波スペクトル421は、図4−1に示した通信波411aをフーリエ変換し、強度が閾値以下の成分を除去することによって得ることができる。
【0050】
周波数分析部321は、たとえば、通信波スペクトル421の最小の周波数f0および最大の周波数f1を判定する。そして、周波数分析部321は、判定した周波数f0を通信波411aの基本周波数としてメモリ322に記憶する。また、周波数分析部321は、判定した周波数f0および周波数f1の差(f1−f0)を通信波411aの帯域幅422としてメモリ322に記憶する。これにより、通信波411aの帯域を判定し、判定結果をメモリ322に記憶することができる。
【0051】
ただし、通信波411aの帯域の判定はこれに限らない。たとえば、周波数分析部321は、通信波スペクトル421の最小の周波数f0を判定し、判定した周波数f0を通信波411aの基本周波数としてメモリ322に記憶する。そして、帯域幅については、あらかじめ定められた帯域幅を通信波411aの帯域幅422とみなしてもよい。
【0052】
妨害波スペクトル423は、通信妨害装置300が送信する妨害波のスペクトルである。周波数設定部323は、たとえば、周波数分析部321によってメモリ322に記憶された基本周波数(f0)より所定の周波数Δfだけ低い周波数f0−Δfを数値制御発振部324の基本周波数として設定する。
【0053】
また、妨害波スペクトル423の帯域幅424は、たとえば通信波スペクトル421の帯域幅422より広くなるように調整する。妨害波スペクトル423の帯域幅424は、たとえば、シンボルマッピング部325bによるマッピング数やマッピング間隔により調整することができる。これにより、図4−2に示すように、妨害波スペクトル423の帯域が、通信波スペクトル421の帯域を覆うようにすることができる。
【0054】
ただし、妨害波スペクトル423の帯域が通信波スペクトル421の帯域を覆うようにする構成に限らない。たとえば、妨害波スペクトル423の帯域は、通信波スペクトル421の帯域の一部(たとえば半分程度)と重なるようにしてもよい。また、数値制御発振部324の基本周波数についても、周波数f0−Δfに限らず、たとえば周波数f1より低い範囲に設定することができる。
【0055】
図5は、通信妨害装置による通信波の受信動作の一例を示すフローチャートである。通信妨害装置300は、通信波の受信動作の一例として、たとえば図5に示す各ステップを実行する。また、通信妨害装置300は、たとえば起動時に図5に示す各ステップを実行する。まず、送受信切替制御部340が、送信側スイッチ334をオフにする(ステップS501)。これにより、妨害波の送信が停止される。なお、送信側スイッチ334がすでにオフになっている場合はステップS501を省いてもよい。
【0056】
つぎに、送受信切替制御部340が、受信側スイッチ312をオンにする(ステップS502)。これにより、通信波の受信が可能になる。つぎに、送受信切替制御部340が、通信波を受信する期間を計時する受信タイマを起動する(ステップS503)。つぎに、送受信切替制御部340が、ステップS503によって起動された受信タイマが満了したか否かを判断する(ステップS504)。
【0057】
ステップS504において、受信タイマが満了していない場合(ステップS504:No)は、受信アンテナ311が、他の無線通信機の間で無線送信された通信波を受信する(ステップS505)。つぎに、周波数変換器314が、ステップS505によって受信された通信波の周波数をIF帯に変換する(ステップS506)。つぎに、バンドパスフィルタ315が、ステップS506によって周波数がIF帯に変換された信号のうちの、妨害対象帯域の信号を抽出する(ステップS507)。
【0058】
つぎに、A/D変換器316が、ステップS507によって抽出された信号をデジタル信号に変換する(ステップS508)。つぎに、周波数分析部321が、ステップS508によってデジタル信号に変換された信号の周波数を分析する(ステップS509)。つぎに、周波数分析部321が、ステップS509による周波数の分析結果をメモリ322に記憶させ(ステップS510)、ステップS504へ戻る。
【0059】
ステップS504において、受信タイマが満了した場合(ステップS504:Yes)は、通信妨害装置300は、妨害波の送信動作を開始し(ステップS511)、一連の動作を終了する。妨害波の送信動作については、たとえば図6において説明する。以上の各ステップにより、通信妨害装置300は、他の無線通信機の間で無線送信される通信波の帯域を判定し、判定結果をメモリ322に記憶することができる。
【0060】
図6は、通信妨害装置による妨害波の送信動作の一例を示すフローチャートである。通信妨害装置300は、妨害波の送信動作の一例として、たとえば図6に示す各ステップを実行する。まず、送受信切替制御部340が、受信側スイッチ312をオフにする(ステップS601)。これにより、通信波の受信動作が停止される。なお、受信側スイッチ312がすでにオフになっている場合はステップS601を省いてもよい。
【0061】
つぎに、送受信切替制御部340が、送信側スイッチ334をオンにする(ステップS602)。これにより、妨害波の送信動作が可能になる。つぎに、送受信切替制御部340が、妨害波を送信する期間を計時する送信タイマを起動する(ステップS603)。つぎに、送受信切替制御部340が、ステップS603によって起動された送信タイマが満了したか否かを判断する(ステップS604)。
【0062】
ステップS604において、送信タイマが満了していない場合(ステップS604:No)は、周波数設定部323が、図5に示したステップS510によってメモリ322に記憶された周波数の分析結果を読み出す(ステップS605)。つぎに、周波数設定部323が、ステップS605によって読み出した分析結果に基づいて数値制御発振部324の基本周波数を設定する(ステップS606)。
【0063】
つぎに、数値制御発振部324が、ステップS606によって設定された基本周波数の信号を発振する(ステップS607)。つぎに、ベースバンドOFDM信号生成部325が、ベースバンドOFDM信号を生成する(ステップS608)。つぎに、周波数変換部326が、ステップS608により生成されたベースバンドOFDM信号の周波数を、ステップS607により発振された信号を用いてIF帯に変換する(ステップS609)。
【0064】
つぎに、D/A変換器331が、ステップS609によってIF帯に変換された信号をアナログ信号に変換する(ステップS610)。つぎに、周波数変換器333が、ステップS610によってアナログ信号に変換された信号の周波数をRF帯に変換する(ステップS611)。つぎに、送信アンテナ335が、ステップS611によってRF帯に変換された信号を妨害波として送信し(ステップS612)、ステップS604へ戻る。
【0065】
ステップS604において、送信タイマが満了した場合(ステップS604:Yes)は、通信妨害装置300は、通信波の受信動作を開始し(ステップS613)、一連の動作を終了する。通信波の受信動作は、たとえば図5に示した動作である。以上の各ステップにより、通信妨害装置300は、図5に示した各ステップによってメモリ322に記憶された通信波の帯域に応じた帯域の妨害波を送信することができる。
【0066】
図7は、周波数ホッピングする通信の妨害の例を示す図である。図7において、各タイムチャートの横軸は共通の時間を示している。タイムチャート710は、妨害対象の送信側通信機によって送信されるOFDM通信波711〜714を示している。タイムチャート710に示すように、妨害対象の送信側通信機は、一定周期ごとに周波数を切り替える周波数ホッピングによってOFDM通信波を送信している。図7に示す例では、OFDM通信波711〜714の周波数はそれぞれf1,f3,f2,f4となっている。
【0067】
タイムチャート720は、OFDM通信波711〜714のうちの通信妨害装置300によって受信される受信波721〜730を示している。タイムチャート740は、通信妨害装置300によって送信される妨害波741〜749を示している。タイムチャート740に示すように、通信妨害装置300は、受信波721〜730に基づいてそれぞれ妨害波741〜749を送信する。
【0068】
タイムチャート750は、妨害対象の受信側通信機によって受信されるOFDM通信波751〜754を示している。OFDM通信波751〜754は、OFDM通信波711〜714と、妨害波741〜749と、が合成された電波である。OFDM通信波751〜754のうち妨害波741〜749とタイミングが重なる部分(図の塗りつぶし部分)は、妨害波741〜749によって直交性が崩れ、サブキャリア分割が困難になる。このため、OFDM通信波751〜754の復調を困難にし、通信を妨害することができる。
【0069】
また、タイムチャート720,740に示すように、妨害波741〜749を送信する各期間は、受信波721〜730を受信する各期間より長く設定されている。これにより、OFDM通信波751〜754に対して妨害波741〜749が重なる期間が長くなり、OFDM通信波751〜754の復調をより困難にすることができる。このため、通信をより効果的に妨害することができる。また、受信波721〜730によって周波数を分析できればよいため、たとえば受信波721〜730の同期コードを受信する場合に比べて、受信波721〜730を受信する各期間は短くてもよい。
【0070】
また、タイムチャート720に示すように、通信妨害装置300が通信波の帯域を判定する周期は、たとえばOFDM通信波711〜714の周波数ホッピングの周期よりも短く設定する。これにより、周波数ホッピングするOFDM通信波711〜714の帯域を追従して判定することができる。これにより、妨害波741〜749の帯域をOFDM通信波711〜714に追従させることが可能になる。このため、OFDM通信波711〜714が周波数ホッピングしていても通信を妨害することができる。
【0071】
このように、実施の形態1にかかる通信妨害装置110,300によれば、他の無線通信機の間で無線送信される通信波の帯域を判定し、判定した帯域の少なくとも一部が重なる妨害波を無線送信することで、通信波の復調を困難にすることができる。また、受信した通信波の帯域に合わせて妨害波の帯域を限定することで、通信を妨害しつつ、妨害波の送信のための消費電力を抑えることができる。このため、他の無線通信機の間の通信を効率よく妨害することができる。
【0072】
また、妨害対象の通信波はOFDMの通信波である場合に、OFDMによって妨害波を生成して送信してもよい。これにより、通信波に含まれる各サブキャリアの直交性を崩し、サブキャリア分割を困難にすることができる。これにより、たとえば妨害波の電力が低くても通信波の復調を困難にし、通信を効率よく妨害することができる。
【0073】
(実施の形態2)
図8−1は、実施の形態2にかかる通信妨害装置の構成例を示す図である。図8−2は、図8−1に示したデジタル処理部の構成例を示す図である。図8−1および図8−2において、図3−1および図3−2に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
実施の形態2にかかる通信妨害装置300は、複数のユーザ(チャンネル)の通信の妨害を行う。図8−1および図8−2に示すように、実施の形態2にかかる通信妨害装置300のデジタル処理部320は、図3−1および図3−2に示した数値制御発振部324および周波数変換部326に代えて、数値制御発振部811〜81Mと、周波数変換部821〜82Mと、加算部830と、を備えている。
【0075】
受信アンテナ311によって複数のチャンネルの通信波が受信される場合は、複数のチャンネルを含む信号が周波数分析部321へ入力される。周波数分析部321は、入力された信号に含まれる複数のチャンネルの各帯域を判定する。周波数分析部321は、判定した各帯域をメモリ322に記憶する。
【0076】
周波数設定部323、数値制御発振部811〜81Mおよび周波数変換部821〜82Mは、メモリ322に記憶された各帯域とそれぞれ少なくとも一部が重なる帯域の妨害波を生成する生成部である。具体的には、周波数設定部323は、周波数分析部321によってメモリ322に記憶されたチャンネルごとの帯域に基づいて、それぞれ数値制御発振部811〜81Mに基本周波数を設定する。たとえば、周波数設定部323は、メモリ322に記憶されたチャンネル(Mチャンネルとする)ごとの基本周波数をそれぞれ数値制御発振部811〜81Mに設定する。
【0077】
数値制御発振部811〜81M(NCO)のそれぞれは、周波数設定部323によって設定された基本周波数の周期的な信号を発振し、発振した信号をそれぞれ周波数変換部821〜82Mへ出力する。
【0078】
周波数変換部821〜82Mのそれぞれは、ベースバンドOFDM信号生成部325から出力されたベースバンドOFDM信号をIF帯の信号に変換する。具体的には、周波数変換部821〜82Mのそれぞれは、たとえば図3−2に示した周波数変換部326と同様の構成を備えている。周波数変換部821〜82Mのそれぞれは、ベースバンドOFDM信号を、それぞれ数値制御発振部811〜81Mから出力された信号とミキシングすることによってIF帯の信号に変換する。
【0079】
周波数変換部821〜82Mのそれぞれは、IF帯に変換した信号を加算部830へ出力する。加算部830は、周波数変換部821〜82Mのそれぞれから出力された信号を加算する。加算部830は、加算により得られたIF信号をD/A変換器331へ出力する。これにより、周波数分析部321によって判定されたチャンネルごとの帯域に応じた各帯域を含む妨害波を送信アンテナ335から送信することができる。
【0080】
また、妨害波をOFDM信号とすることで、妨害波のサブキャリア数やサブキャリア間隔は各チャンネルのデータ(コード)に依存しないため、共通のベースバンドOFDM信号を用いても各チャンネルの通信を妨害することができる。このため、図8−2に示すように、ベースバンドOFDM信号生成部325についてはチャンネルごとに設けなくてもよいため、デジタル処理部320における処理量を低減することができる。このため、各チャンネルの通信を効率よく妨害することができる。
【0081】
図9−1は、通信妨害装置による通信妨害の一例を示す図である。図9−1において、横軸は周波数を示している。通信波スペクトル911〜91Mは、周波数分析部321によって分析された周波数成分を示している。通信波スペクトル911〜91Mは、通信妨害装置300が受信した通信波には周波数f1〜fMのM個のチャンネルが含まれていたことを示している。妨害波スペクトル921〜92Mは、通信妨害装置300が送信する妨害波の周波数成分を示している。
【0082】
妨害波スペクトル921〜92Mに示すように、通信妨害装置300は、通信波スペクトル911〜91Mが示すM個のチャンネルの周波数f1〜fMにそれぞれ対応した各帯域を含む妨害波を送信する。これにより、通信波スペクトル911〜91Mのそれぞれにおいて各サブキャリアの直交性が崩れ、サブキャリア分割が困難になる。このため、M個のチャンネルのそれぞれについて復調を困難にし、通信を妨害することができる。
【0083】
図9−2は、図9−1に示した通信波および妨害波の一部を拡大して示す図である。図9−2に示すように、通信妨害装置300は、通信波スペクトル911,912のそれぞれを覆うように妨害波スペクトル921,922の帯域を設定する。ただし、妨害波スペクトル921,922の帯域はこれに限らず、通信波スペクトル911,912の帯域の少なくとも一部と重なるようにすればよい。
【0084】
図10は、通信妨害装置による通信波の受信動作の一例を示すフローチャートである。実施の形態2にかかる通信妨害装置300は、通信波の受信動作の一例として、たとえば図10に示す各ステップを実行する。図10に示すステップS1001〜S1008,S1011は、図5に示したステップS501〜S508,S511と同様である。ステップS1008のつぎに、周波数分析部321が、ステップS1008によってデジタル信号に変換された信号の周波数をチャンネルごとに分析する(ステップS1009)。
【0085】
つぎに、周波数分析部321が、ステップS1009によるチャンネルごとの周波数の分析結果をメモリ322に記憶させ(ステップS1010)、ステップS1004へ戻る。以上の各ステップにより、通信妨害装置300は、他の無線通信機の間で無線送信される複数のチャンネルの通信波の各帯域を判定し、チャンネルごとの帯域の判定結果をメモリ322に記憶することができる。
【0086】
図11は、通信妨害装置による妨害波の送信動作の一例を示すフローチャートである。実施の形態2にかかる通信妨害装置300は、妨害波の送信動作の一例として、たとえば図11に示す各ステップを実行する。図11に示すステップS1101〜S1104は、図6に示したステップS601〜S604と同様である。
【0087】
ステップS1104において、送信タイマが満了していない場合(ステップS1104:No)は、周波数設定部323が、図10に示したステップS1010によってメモリ322に記憶されたチャンネルごとの分析結果を読み出す(ステップS1105)。つぎに、周波数設定部323が、ステップS1105によって読み出したチャンネルごとの分析結果に基づいてチャンネルごとの数値制御発振部811〜81Mの基本周波数を設定する(ステップS1106)。
【0088】
つぎに、数値制御発振部811〜81Mが、チャンネルごとに、ステップS1106によって設定された基本周波数の信号を発振する(ステップS1107)。つぎに、ベースバンドOFDM信号生成部325が、ベースバンドOFDM信号を生成する(ステップS1108)。つぎに、周波数変換部326が、ステップS1108によって生成されたベースバンドOFDM信号の周波数を、ステップS1107によって発振された信号を用いてチャンネルごとにIF帯に変換する(ステップS1109)。
【0089】
つぎに、加算部830が、ステップS1109によってIF帯に変換されたチャンネルごとの信号を加算する(ステップS1110)。つぎに、D/A変換器331が、ステップS1110によって加算された信号をアナログ信号に変換する(ステップS1111)。つぎに、周波数変換器333が、ステップS1111によってアナログ信号に変換された信号の周波数をRF帯に変換する(ステップS1112)。つぎに、送信アンテナ335が、ステップS1112によってRF帯に変換された信号を妨害波として送信し(ステップS1113)、ステップS1104へ戻る。
【0090】
ステップS1104において、送信タイマが満了した場合(ステップS1104:Yes)は、通信妨害装置300は、通信波の受信動作を開始し(ステップS1114)、一連の動作を終了する。以上の各ステップにより、通信妨害装置300は、図11に示した各ステップによってメモリ322に記憶されたチャンネルごとの通信波の帯域に応じた各帯域を含む妨害波を送信することができる。
【0091】
図12は、周波数ホッピングする通信の妨害の例を示す図である。図12においては、通信妨害装置300がチャンネル1〜3の3チャンネルの各通信を妨害する場合について説明する。図12において、各タイムチャートの横軸は共通の時間を示している。タイムチャート1210は、それぞれチャンネル1〜3の送信側通信機によって送信されるOFDM通信波1211〜1213を示している。
【0092】
タイムチャート1210に示すように、チャンネル1〜3において、一定周期ごとに周波数を切り替える周波数ホッピングによってそれぞれOFDM通信波1211〜1213が送信されている。図12に示す例では、たとえばチャンネル1において送信されるOFDM通信波1211は、周波数がf1,f3,f2,f4に切り替わっている。また、チャンネル2において送信されるOFDM通信波1212は、周波数がf5,f2,f4,f5に切り替わっている。また、チャンネル3において送信されるOFDM通信波1213は、周波数がf3,f4,f5,f1,f3,f2に切り替わっている。
【0093】
なお、OFDM通信波1211〜1213の周波数が切り替わるタイミングは一致していなくてもよい。ただし、OFDM通信波1211〜1213は、同一の時刻に周波数が重複しないようにする。
【0094】
タイムチャート1220は、OFDM通信波1211〜1213のうちの通信妨害装置300によって受信される受信波1221〜1230を示している。タイムチャート1240は、通信妨害装置300によって送信される各周波数(f1〜f5)の妨害波を示している。タイムチャート1240に示すように、通信妨害装置300は、受信波1221〜1230に基づいてそれぞれ妨害波1241〜1249を送信する。
【0095】
たとえば、受信波1221にはチャンネル1における周波数f1のOFDM通信波1211が含まれているため、受信波1221に基づいて送信される妨害波1241には周波数f1が含まれる。また、受信波1222にはチャンネル1〜3におけるそれぞれ周波数f1,f5,f3のOFDM通信波1211〜1213が含まれているため、受信波1222に基づいて送信される妨害波1242には周波数f1,f5,f3が含まれる。妨害波1243〜1249についても同様に、それぞれ受信波1223〜1229に含まれる通信波の帯域に対応する帯域が含まれる。
【0096】
タイムチャート1250は、チャンネル1〜3の受信側通信機によって受信されるOFDM通信波1251〜1253を示している。OFDM通信波1251〜1253のうち、妨害波1241〜1249とタイミングが重なる部分(図の塗りつぶし部分)は、妨害波1241〜1249によって直交性が崩れ、サブキャリア分割が困難になる。このため、OFDM通信波1251〜1253の復調を困難にし、通信を妨害することができる。
【0097】
タイムチャート1220に示すように、通信妨害装置300がOFDM通信波を受信する期間の周期を十分に短くすることで、妨害波1241〜1249の帯域をOFDM通信波1211〜1213の各帯域に追従させることが可能になる。このため、チャンネル1〜3のそれぞれにおいてOFDM通信波1211〜1213が周波数ホッピングしていても通信を妨害することができる。
【0098】
このように、実施の形態2にかかる通信妨害装置300によれば、通信波に含まれる複数のチャンネルの各帯域を判定し、判定した各帯域に対応する各帯域を含む妨害波を送信することができる。すなわち、判定した各帯域のそれぞれの少なくとも一部を含む各帯域の妨害波を送信することができる。これにより、実施の形態1にかかる通信妨害装置300と同様の効果を奏するとともに、複数のチャンネルの通信を妨害することができる。
【0099】
ここで、妨害波に載せる伝送データは妨害対象の通信波に依存しないため、妨害波に含まれる各帯域に共通の伝送データを用いることもできる(図8−2参照)。これにより、複数の帯域を含む妨害波を少ない処理量で生成することができる。このため、複数のチャンネルの通信を効率よく妨害することができる。
【0100】
以上説明したように、通信妨害装置および通信妨害方法によれば、通信を効率よく妨害することができる。
【0101】
なお、上述した各実施の形態においてはOFDMの通信波を妨害対象とする場合について説明したが、OFDM以外の各種方式の通信波を妨害対象とすることも可能である。また、OFDMの妨害波を用いる場合について説明したが、OFDM以外の各種方式の妨害波(たとえばパワー雑音)を用いることも可能である。このような場合でも、他の無線通信機の間で無線送信される通信波を受信し、受信した通信波と帯域の少なくとも一部が重なる妨害波を無線送信することで、通信波の復調を困難にすることができる。また、受信した通信波の帯域に合わせて妨害波の帯域を限定することで、通信を妨害しつつ、妨害波の送信のための消費電力を抑えることができる。このため、他の無線通信機の間の通信を効率よく妨害することができる。
【0102】
上述した各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0103】
(付記1)他の通信機の間で無線により送信される通信波を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された通信波の帯域を判定する判定部と、
前記判定部によって判定された帯域の少なくとも一部を含む帯域の妨害波を生成する生成部と、
前記生成部によって生成された妨害波を無線により送信する送信部と、
を備えることを特徴とする通信妨害装置。
【0104】
(付記2)前記生成部は、直交周波数分割多重によって前記妨害波を生成することを特徴とする付記1に記載の通信妨害装置。
【0105】
(付記3)前記判定部は、前記通信波の帯域を周期的に判定し、
前記生成部は、前記判定部によって周期的に判定される帯域に基づいて前記妨害波の帯域を周期的に調整することを特徴とする付記1または2に記載の通信妨害装置。
【0106】
(付記4)前記受信部による前記通信波の受信と、前記送信部による前記妨害波の送信と、を交互に実行させる制御部を備えることを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の通信妨害装置。
【0107】
(付記5)前記判定部による判定結果を記憶するメモリを備え、
前記生成部は、前記メモリに記憶された判定結果に基づいて前記妨害波を生成することを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の通信妨害装置。
【0108】
(付記6)前記判定部は、前記受信部によって受信された通信波に含まれる複数のチャンネルの各帯域を判定し、
前記生成部は、前記判定部によって判定された各帯域に対応する各帯域を含む妨害波を生成することを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載の通信妨害装置。
【0109】
(付記7)前記生成部は、前記対応する各帯域に共通の伝送データを用いて前記妨害波を生成することを特徴とする付記6に記載の通信妨害装置。
【0110】
(付記8)他の通信機の間で無線により送信される通信波を受信し、
前記受信した通信波の帯域を判定し、
判定した帯域の少なくとも一部を含む帯域の妨害波を生成し、
生成した妨害波を無線により送信する、
ことを特徴とする通信妨害方法。
【符号の説明】
【0111】
100 通信システム
111,311 受信アンテナ
116,335 送信アンテナ
121〜123,721〜730,1221〜1230 受信波
131〜133,221,412,741〜749,1241〜1249 妨害波
211,411,411a 通信波
212,222 サブキャリア
312 受信側スイッチ
315 バンドパスフィルタ
324,811〜81M 数値制御発振部
326a 位相シフタ
326b,326c ミキサ
326d,830 加算部
334 送信側スイッチ
421,911,912,911〜91M 通信波スペクトル
422,424 帯域幅
423,921,922,921〜92M 妨害波スペクトル
711〜714,751〜754,1211〜1213,1251〜1253 OFDM通信波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の通信機の間で無線により送信される通信波を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された通信波の帯域を判定する判定部と、
前記判定部によって判定された帯域の少なくとも一部を含む帯域の妨害波を生成する生成部と、
前記生成部によって生成された妨害波を無線により送信する送信部と、
を備えることを特徴とする通信妨害装置。
【請求項2】
前記生成部は、直交周波数分割多重によって前記妨害波を生成することを特徴とする請求項1に記載の通信妨害装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記通信波の帯域を周期的に判定し、
前記生成部は、前記判定部によって周期的に判定される帯域に基づいて前記妨害波の帯域を周期的に調整することを特徴とする請求項1または2に記載の通信妨害装置。
【請求項4】
前記受信部による前記通信波の受信と、前記送信部による前記妨害波の送信と、を交互に実行させる制御部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の通信妨害装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記受信部によって受信された通信波に含まれる複数のチャンネルの各帯域を判定し、
前記生成部は、前記判定部によって判定された各帯域に対応する各帯域を含む妨害波を生成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の通信妨害装置。
【請求項6】
他の通信機の間で無線により送信される通信波を受信し、
前記受信した通信波の帯域を判定し、
判定した帯域の少なくとも一部を含む帯域の妨害波を生成し、
生成した妨害波を無線により送信する、
ことを特徴とする通信妨害方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−178704(P2012−178704A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40417(P2011−40417)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】