説明

通信媒体及び通信装置

【課題】情報処理効率に優れた通信媒体を提供すること。
【解決手段】通信媒体は、通信装置と通信する通信手段と、情報を記憶する記憶手段と、前記通信手段を介して受信された情報に基づく動作を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記通信手段による電磁波の受信に対応して活性化し、乱数を生成し、前記記憶手段へ前記乱数を記憶し、前記乱数を含む第1の応答情報を生成し、前記通信手段を介して前記第1の応答情報を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード等の通信媒体に関する。また、本発明は、通信端末等の通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な機能を備えたICカードが登場している。例えば、金属端子等により構成される接触インターフェースと電磁波を送受信するためのアンテナ等により構成される非接触インターフェースを備えたICカードが登場している。
【0003】
また、複数の通信プロトコルに対応可能なICカードも登場している。例えばTCP/IPとISO7816のどちらの通信プロトコルにも対応可能なICカードが提案されている。
【0004】
これらICカードの登場によりICカードの用途は広がり、例えば、ICカードは、クレジットカード、定期券、旅券、免許証、その他の商取引の決済に使われるだけでなく、社員証、会員証、保険証などのIDカードとしても様々な分野で使われるようになっている。
【0005】
ICカードを処理する通信端末は、ICカードとの間で必要な情報の送受信を重ねて、ICカードに対して目的の動作を実行させることができる(特許文献1参照)。例えば、通信端末は、ICカードのリセット状態の解除を指示し、ICカードからの応答を受信し、ICカードに対してアプリケーションを選択するためのSelectコマンドを送信し、ICカードからの応答を受信し、ICカードに対してGet Challengeコマンドを送信し、ICカードからの応答(乱数を含む応答)を受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−99740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、通信端末がICカードから乱数を取得するまでには、通信端末とICカードとの間で複数回の情報の送受信が必要であり、非効率である。
【0008】
本発明の目的は、情報処理効率に優れた通信媒体及び通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る通信媒体は、通信装置と通信する通信手段と、情報を記憶する記憶手段と、前記通信手段を介して受信された情報に基づく動作を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記通信手段による電磁波の受信に対応して活性化し、乱数を生成し、前記記憶手段へ前記乱数を記憶し、前記乱数を含む第1の応答情報(初期応答)を生成し、前記通信手段を介して前記第1の応答情報を送信する。
【0010】
本発明の一実施形態に係る通信装置は、通信媒体と通信する通信手段と、前記通信手段を介して電磁波を送信し、前記通信手段を介して前記通信媒体からの第1の応答情報を受信し、前記第1の応答情報に含まれた乱数に基づき、第1のアプリケーションによる処理を実行する処理手段と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、情報処理効率に優れた通信媒体及び通信装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るICカードシステムの一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るカードリーダ/ライタの一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るICカードの一例を示すブロック図である。
【図4】第1のICカード処理の一例を示すブロック図である。
【図5】第2のICカード処理の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るICカードシステム(別称、スマートカードシステム)の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、ICカードシステムは、端末1(通信装置)及びICカード2(通信媒体)により構成される。端末1は、本体(上位装置)11、ディスプレイ12、キーボード13、カードリーダ/ライタ14を備えている。端末1はICカード2と通信可能に構成されており、端末1はICカード2に対してデータを送信したり、ICカード2からのデータを受信したりする。
【0015】
本体11は、複数の通信方式及び複数のアプリケーションを選択的に実行することができる。ディスプレイ12は、ICカード2との通信結果及び認証結果等を表示する。キーボード13は、本体11に対して文字や数字等を入力する。カードリーダ/ライタ14は、ICカード2と通信する。
【0016】
なお、本実施形態では、ICカード2が、非接触式のカードであるケースについて説明するが、ICカード2は、非接触式及び接触式の両者をサポートするコンビ型のカードであってもよい。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態に係るカードリーダ/ライタ14の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、カードリーダ/ライタ14は、アンテナ141、通信I/F142、CPU143、データメモリ144、RAM145、ROM146を備えている。CPU143は、例えば制御手段及び処理手段として機能し、ICカード2に対する各種情報の送信を制御したり、受信したICカードからの応答を解析したり、この応答に含まれた乱数に基づき各種情報処理を実行したりする。また、データメモリ144は、上記した乱数を記憶する。
【0018】
図3は、本発明の一実施形態に係るICカードの概略構成を示すブロック図である。図3に示すように、携帯可能電子装置としてのICカード2は、例えばプラスチックカードであり、ICチップ20(ICモジュール)を備え、ICチップ20は、通信I/F201、CPU(制御素子)204、データメモリ(不揮発性メモリ)205、RAM206、ROM207を備えている。さらに、図3に示すように、ICカード2は、アンテナ21を備えている。CPU204は、例えば制御手段として機能し、端末1から送信される指示等を解釈し各種動作を実行したり、端末2に対する応答の返信を制御したりする。また、データメモリ205は、CPU204が生成した乱数等を記憶する。
【0019】
次に、図4を参照して、第1のICカード処理について説明する。
【0020】
例えば、端末1(アンテナ141、通信I/F142)が電磁波を送信(磁界を発生)すると(ST101)、端末1の通信エリア(磁界発生エリア)に位置するICカード2(アンテナ21)は電磁波を受信し、ICカード2(CPU204)は活性化する(ST102)。さらに、ICカード2(CPU204)は、活性化後に、初期応答(ATR(Answer To Reset))を生成し、アンテナ21を介して初期応答を送信する(ST103)。
【0021】
端末1(アンテナ141、通信I/F142)は初期応答を受信し、端末1(CPU143)は受信した初期応答を解釈し(ST104)、例えば第1のアプリケーションを選択するためのSELECTコマンドを送信する(ST105)。ICカード2(アンテナ21)はSELECTコマンドを受信し、ICカード2(CPU204)はSELECTコマンドを解釈し、第1のアプリケーションを選択する(ST106)。さらに、ICカード2(アンテナ21)は、SELECTコマンドに対する第2応答を送信する(ST107)。この第2応答は、FCI(File Control Information)とSW(Status Word)を含む。
【0022】
端末1(アンテナ141、通信I/F142)は第2応答を受信し、端末1(CPU143)は受信した第2応答を解釈し(ST108)、GET CHALLENGEコマンドを送信する(ST109)。ICカード2(アンテナ21)はGET CHALLENGEコマンドを受信し、ICカード2(CPU204)はGET CHALLENGEコマンドを解釈し、乱数を生成し、データメモリ205に乱数を記憶し、GET CHALLENGEコマンドに対する第3応答を生成し(ST110)、第3応答を送信する(ST111)。この第3応答は、乱数及びSWを含む。
【0023】
上記したように第1のICカード処理では、端末1は、ICカード2に対して活性化のための電磁波、SELECTコマンド、及びGET CHALLENGEコマンドを送信し、ICカード2は、端末1に対して初期応答、第2応答、及び第3応答を返信する。このような複数のコマンド及び複数の応答の送受信を経て、端末1は、ICカード2から乱数を取得する。例えば、乱数は、端末1とICカード2の認証処理等に利用される。
【0024】
次に、図5を参照して、第2のICカード処理について説明する。
【0025】
例えば、端末1(アンテナ141、通信I/F142)が電磁波を送信(磁界を発生)すると(ST201)、端末1の通信エリア(磁界発生エリア)に位置するICカード2(アンテナ21)は電磁波を受信し、ICカード2(CPU204)は活性化する(ST202)。さらに、ICカード2(CPU204)は、活性化後に、例えば第1のアプリケーションの実行を予定し、第1のアプリケーションで必要な乱数を生成し、データメモリ205に乱数を記憶し、初期応答を生成し、アンテナ21を介して初期応答を送信する(ST203)。この初期応答は、第1のアプリケーションに関する情報及び乱数を含む。
【0026】
端末1(アンテナ141、通信I/F142)は初期応答を受信し、端末1(CPU143)は受信した初期応答を解釈し(ST204)、初期応答に含まれた乱数を取得し、データメモリ144に記憶する。
【0027】
上記したように第2のICカード処理では、端末1は、ICカード2に対して活性化のための電磁波を送信するだけで、ICカード2は、端末1に対して、第1のアプリケーションに関する情報及び乱数を含む初期応答を返信する。端末1は、第1のICカード処理のような複数のコマンド及び複数の応答の送受信を必要とせずに、端末1は、ICカード2から乱数を取得することができる。このようにコマンドの送受信を減らすことができるため、取引全体の時間を短くすることができ、その結果、処理効率を高めることができる。
【0028】
例えば、ICカード2が、複数のアプリケーションに対応可能なカードである場合、ICカード2のデータメモリ144又はROM146には複数のアプリケーションに対応した複数のアプリケーションデータが記憶されている。また、ICカード2のデータメモリ144又はROM146は、活性化時に複数のアプリケーションのうちの第1のアプリケーションを実行候補とするための制御情報を記憶している。上記したように、ICカード2(CPU204)は、活性化時に、上記制御情報に基づき第1のアプリケーションを実行候補として設定し、第1のアプリケーションに関する情報及び第1のアプリケーションで必要な乱数を含む初期応答を返信する。
【0029】
初期応答を受信した端末1(CPU143)は、初期応答を解釈し、第1のアプリケーションの実行を必要とする場合には、第1のアプリケーションを選択するSELECTコマンドの送信を省略することができる。さらに、端末1(CPU143)は、第1のアプリケーションで必要な乱数を取得するためのGET CHALLENGEコマンドの送信を省略することもできる。端末1は、SELECTコマンド及びGET CHALLENGEコマンドの送信を省略し、受信した初期応答に含まれる乱数に基づき、第1のアプリケーションに対応した処理を実行することができる。
【0030】
また、初期応答を受信した端末1(CPU143)は、初期応答を解釈し、第1のアプリケーションと異なる第2のアプリケーションの実行を必要とする場合には、第2のアプリケーションを選択するためのSELECTコマンドを送信する。ICカード2は、ICカード2(アンテナ21)はSELECTコマンドを受信し、ICカード2(CPU204)はSELECTコマンドを解釈し、第2のアプリケーションを選択する。さらに、ICカード2(アンテナ21)は、SELECTコマンドに対する第2応答(第2のアプリケーションを実行予定とした情報を含む)を送信する。この第2応答は、FCI(File Control Information)とSW(Status Word)を含む。
【0031】
端末1(アンテナ141、通信I/F142)は第2応答を受信し、端末1(CPU143)は受信した第2応答を解釈し、GET CHALLENGEコマンドを送信する。ICカード2(アンテナ21)はGET CHALLENGEコマンドを受信し、ICカード2(CPU204)はGET CHALLENGEコマンドを解釈し、第2のアプリケーションで必要な乱数を生成し、データメモリ205に乱数を記憶し、GET CHALLENGEコマンドに対する第3応答を生成し、第3応答を送信する。この第3応答は、第2のアプリケーションで必要な乱数及びSWを含む。
【0032】
このように、端末1は、ICカード2を活性化するための電磁波を送信した後に、第1のアプリケーションを実行予定とする情報を含む初期応答を受信し、しかも第2のアプリケーションの実行を必要とする場合には、単純に、SELECTコマンド、GET CHALLENGEコマンドを送信するだけで、第2のアプリケーションに対応した処理を実行することができる。
【0033】
また、ICカード2は、アプリケーションの実行履歴情報に基づいて、上記した制御情報を更新することもできる。ICカード2(CPU204)は、上記した制御情報をデータメモリ144に記憶するようにして、アプリケーションの実行履歴情報に基づいて、この制御情報を更新する。例えば、ICカード2(CPU204)が第2のアプリケーションを実行した場合、データメモリ144には直前に第2のアプリケーションが実行されたことを示す実行履歴情報が記憶される。ICカード2(CPU204)は、この実行履歴情報に基づき、活性化時に第1のアプリケーションを実行候補とするための制御情報を、活性化時に第2のアプリケーションを実行候補とするための制御情報へ更新する。これにより、第2のアプリケーションが実行された後に、ICカード2が、端末1から電磁波を受信すると、ICカード2は、活性化するとともに、更新された制御情報に基づき第2のアプリケーションを実行候補として設定し、第2のアプリケーションに関する情報及び第2のアプリケーションで必要な乱数を含む初期応答を返信する。上記した本実施形態により、同じアプリケーションが連続して実行される場合、処理効率が向上する。
【0034】
或いは、ICカード2(CPU204)は、データメモリ144に記憶された実行履歴情報から、第3のアプリケーションの実行頻度が最も高いことを導き出した場合、活性化時に第1のアプリケーションを実行候補とするための制御情報を、活性化時に第3のアプリケーションを実行候補とするための制御情報へ更新する。これにより、ICカード2が、端末1から電磁波を受信すると、ICカード2は、活性化するとともに、更新された制御情報に基づき第3のアプリケーションを実行候補として設定し、第3のアプリケーションに関する情報及び第3のアプリケーションで必要な乱数を含む初期応答を返信する。上記した本実施形態により、特定のアプリケーションの実行頻度が高い場合、処理効率が向上する。
【0035】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0036】
1…端末、2…ICカード、3…ICカードホルダ、11…本体、12…ディスプレイ、13…キーボード、14…カードリーダ/ライタ、20…ICチップ、21…アンテナ、141…アンテナ、142…通信I/F、143…CPU、144…データメモリ、145…RAM、146…ROM、201…通信I/F、204…CPU、205…データメモリ、206…RAM、207…ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置と通信する通信手段と、
情報を記憶する記憶手段と、
前記通信手段を介して受信された情報に基づく動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記通信手段による電磁波の受信に対応して活性化し、乱数を生成し、前記記憶手段へ前記乱数を記憶し、前記乱数を含む第1の応答情報を生成し、前記通信手段を介して前記第1の応答情報を送信する、
ことを特徴とする通信媒体。
【請求項2】
前記制御手段は、前記活性化に対応して第1のアプリケーションの実行を予定し、前記第1のアプリケーションに関する情報を含む前記第1の応答情報を生成し、前記通信手段を介して前記第1の応答情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の通信媒体。
【請求項3】
前記制御手段は、前記活性化に対応して実行可能な複数のアプリケーションのうちの第1のアプリケーションの実行を予定し、前記第1のアプリケーションに関する情報を含む前記第1の応答情報を生成し、前記通信手段を介して前記第1の応答情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の通信媒体。
【請求項4】
前記制御手段は、前記通信手段を介した前記第1の応答情報の送信後に、前記通信手段を介してアプリケーションを選択する選択指示を受信しなくても、前記第1のアプリケーションを実行することを特徴とする請求項2に記載の通信媒体。
【請求項5】
前記制御手段は、前記通信手段を介した前記第1の応答情報の送信後に、前記通信手段を介して第2のアプリケーションを選択する選択指示を受信した場合には、前記第1のアプリケーションに替えて、前記第2のアプリケーションの実行を予定することを特徴とする請求項2に記載の通信媒体。
【請求項6】
前記制御手段は、前記通信手段を介した前記第1の応答情報の送信後に、前記通信手段を介して第2のアプリケーションを選択する選択指示を受信した場合には、前記第1のアプリケーションに替えて前記第2のアプリケーションの実行を予定し、前記第2のアプリケーションに関する情報を含む第2の応答情報を生成し、前記通信手段を介して前記第2の応答情報を送信することを特徴とする請求項2に記載の通信媒体。
【請求項7】
通信媒体と通信する通信手段と、
前記通信手段を介して電磁波を送信し、前記通信手段を介して前記通信媒体からの第1の応答情報を受信し、前記第1の応答情報に含まれた乱数に基づき、第1のアプリケーションに対応した処理を実行する処理手段と、
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項8】
前記処理手段は、第2のアプリケーションによる情報処理を実行する場合、前記第1の応答情報を受信後に、前記第2のアプリケーションを選択する選択指示を送信し、前記選択指示に対応した第2の応答情報を受信し、前記第2のアプリケーションによる情報処理を実行することを特徴とする請求項7に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−159177(P2011−159177A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21566(P2010−21566)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】