通信方式
【目的】 移動体通信に代表されるような通信品質の不安定な回線を用いた通信方式において、自動的に適切な状態を選んで通信を開始し、効率よく通信処理を進め、そして、確実に通信を完了させ得るようにする。
【構成】 リジューム機能制御部12が、全データの送受信が完了するまで既に送受信したデータを保持すると共に、全体のどの箇所のデータまでを送受信したかを数えており、通信途中で電波状態の悪化などにより回線断が生じた場合、再接続後、回線が切断された個所のデータからデータ通信を再開する。また、電波強度検出部13が、電波強度を監視して通信可能か否かを判断し、リジューム機能制御部12からデータ通信の開始依頼が来たとき、通信不能であれば通信可能になるまで待ってから発呼命令を発する。さらに、速度制御部14が、電波強度検出部13からの電波強度の値に基づいて、最適なデータ伝送速度を決定する。
【構成】 リジューム機能制御部12が、全データの送受信が完了するまで既に送受信したデータを保持すると共に、全体のどの箇所のデータまでを送受信したかを数えており、通信途中で電波状態の悪化などにより回線断が生じた場合、再接続後、回線が切断された個所のデータからデータ通信を再開する。また、電波強度検出部13が、電波強度を監視して通信可能か否かを判断し、リジューム機能制御部12からデータ通信の開始依頼が来たとき、通信不能であれば通信可能になるまで待ってから発呼命令を発する。さらに、速度制御部14が、電波強度検出部13からの電波強度の値に基づいて、最適なデータ伝送速度を決定する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、通信品質の安定しない回線を用いる通信方式(例えば、回線の瞬断やノイズ混入が頻繁に発生する移動体通信)に好適な通信方式の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】移動体を用いた通信では、無線回線を用いること、通信局が移動することなどの事情から、有線回線では考慮する必要のない制約が存在する。例えば、通信が行えるエリア内にいるか、電波の受信状態は良好かなど、充分な通信品質を得るために多くの制約が存在する。
【0003】しかし、従来の移動体通信では基本的に、品質の安定した有線回線と同様の通信処理が行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このため、従来の移動体通信では以下の問題がある。
【0005】(1) 通信主体の居場所や電波状態などの通信条件によって、通信中に回線断が起きたり、通信しようとしても通信自体が行えないなどの障害が発生することがある。
【0006】(2) コンピュータ間でデータ通信を行っているような場合、通信途中で回線が切断されると、再度最初のデータから通信処理をやり直す必要があるので、切断前までの通信が無駄になる。
【0007】(3) 回線断後に通信の再処理を行う場合、接続してみない限り回線状態が接続可能かどうか分らないため、接続をトライしてみるしか対応方法がない。
【0008】(4) 通信条件の良し悪しや変化を常に人間が監視していなければ、通信ができる契機を見極めることができない。つまり、通信条件の良い場所、時間を自動的に選んで通信を行うことができない。
【0009】(5) また、移動体通信に関する従来の技術として、通信中にそのビットエラー率を監視し、ビットエラー率が高くなると伝送速度を落とし、低くなると伝送速度を上げるプロトコル(MNPクラス10)が良く知られている。しかし、ビットエラー率を監視して伝送速度を決定するため、通信効率が悪い。
【0010】本発明はこのような背景に基づいてなされたものであり、その目的は、移動体通信に代表されるような通信品質の不安定な回線を用いた通信方式において、自動的に適切な状態を選んで通信を開始し、効率よく通信処理を進め、そして、確実に通信を完了させるための新規な改良を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の側面に従う通信方式は、自局と相手局との間で行われるべき一連の通信処理のうち、どの処理段階まで自局にて実行済みであるかを認識する手段と、一連の通信処理の途中で通信回線が断たれた後再接続したとき、認識している処理段階を相手局に通知し、かつ相手局が認識している処理段階を相手局から通知されることにより、自局と相手局での認識している処理段階を一致させる手段と、この一致させた処理段階の後続の処理段階から通信処理を再開する手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】本発明の第2の側面に従う無線通信回線を用いた通信方式は、無線通信回線の電波強度を監視して、通信可能か否かを判断する手段と、通信開始の依頼を受け、この依頼を受けた時点で前記判断の結果が通信可能であれば直ちに、また、通信不能であれば前記判断結果が通信可能に変わるまで待ってから、通信を開始する手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】本発明の第3の側面に従う無線通信回線を用いた通信方式は、無線通信回線の電波強度を測定する手段と、測定された電波強度に応じて、通信のデータ転送速度を制御する手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】本発明の第4の側面に従う無線通信回線を用いた通信方式は、一連の通信処理の途中で通信回線が断たれた後再接続したとき、既に実行済みの処理段階から通信処理を再開するリジューム機能手段と、無線通信回線通信の電波強度を監視して、通信可能か否かを判断すると共に、通信可能なときの電波強度を測定する手段と、通信開始の依頼を受け、この依頼を受けた時点で前記判断の結果が通信可能であれば直ちに、また、通信不能であれば前記判断結果が通信可能に変わるまで待ってから、通信を開始する自動通信開始手段と、測定された電波強度に応じて、通信のデータ転送速度を制御する転送速度制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
【作用】本発明の第1の側面に従う通信方式においては、一連の通信処理のどの段階まで自局が実行したかを認識している。例えば、好適な実施例では、自局からのデータ送信と相手局からのデータ受信とを一つの処理段階とみなして、実行した処理段階の数を数えて記憶している。このように、実行済みの処理段階を常に認識しつつ、通信処理の途中で回線が切断された場合には、回線再接続後、その時点で自局が認識している処理段階を相手局に通知する。このとき、相手局でも同様にどの処理段階まで実行したかを認識しているから、これを相手局から自局へも通知してもらう。これにより、自局と相手局との実行済み処理段階を互いに同じ段階に合せることが出来る。例えば、双方の処理段階が異なっていた場合、遅れている方の段階に合せるようにする。こうして、自局と相手局との処理段階を一致させた後、この処理段階の後続の処理段階から通信処理を再開する。
【0016】以上のようにして、通信が途中で中断した場合その中断箇所から通信を再開するリジューム通信機能が実現する。これにより、最初から通信処理をやり直す必要が無くなり、効率的な通信が可能となる。
【0017】本発明の第2の側面に従う無線通信回線を用いた通信方式においては、回線の電波強度を監視して通信可能か否かを判断し、通信可能のときには、通信開始依頼が入れば直ちに通信を開始するが、通信不可能のときには、通信開始依頼が入ると、通信可能な電波状態になるまで待ってから自動的に通信を開始する。これにより、ユーザは通信可能か否かを意識せずに任意のときに通信開始依頼さえ発しておけば、自動的に通信可能な電波状態のときが選択されて通信が確実に実行されることになる。
【0018】また、この自動通信開始機能と上記のリジューム通信機能と組合せることにより、電波状態の悪化などにより通信途中で回線断が生じても、電波状態が通信可能な状態になったときに自動的に通信が再開されて、未実行の通信処理が実行されるため、通信が確実に最後まで完了されることになる。
【0019】本発明の第3の側面に従う無線通信回線を用いた通信方式においては、回線の電波強度に応じて適切なデータ転送速度が選択されることになる。この方式によれば、従来のビットエラー率を測って転送速度を制御する方式に比較し、電波状態の変化に即応できるため、効率的な通信が可能となる。
【0020】本発明の第4の側面に従う無線通信回線を用いた通信方式においては、上記のリジューム通信機能と自動通信開始機能と転送速度制御機能とを備えるため、実質的にエラーフリーの通信が可能となる。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0022】図1は本発明の一実施例に係る移動体通信システムの全体構成図である。
【0023】この図に示す通信システムは、移動局としての端末(パソコンや携帯端末など)1と、固定局(移動局でもよい)としてのサーバ2と、移動局用の無線回線網を少なくとも一部に有した通信回線網3とを含む。端末1とサーバ2とは、回線網3を介して接続されることによりデータ通信を行うことができる。端末1及びサーバ2は、回線網3との間の通信インタフェースとしての通信装置4、5をそれぞれ備えている。
【0024】通信装置4、5は、例えば端末1やサーバ2のRS232C端子又はI/O端子に接続されたモデムと、モデムに接続された無線送受信機とで構成されている。無線送受信機には、例えば、携帯電話やPHS(簡易型携帯電話)などが利用できる。
【0025】尚、本実施例では、専ら移動局たる端末1のみが発呼機能を持ち、サーバ2は着呼機能のみを有し発呼機能は持たないものとして説明するが、当業者は本実施例の説明に基づいて、端末1及びサーバ2の双方が発呼機能を持つ実施態様についても容易に理解できる筈である。
【0026】図2は端末1のブロック構成図である。
【0027】端末1は、通信制御部11、リジューム機能制御部12、電波強度検出部13、速度制御部14及びアプリケーション部15を備えている。
【0028】通信制御部11は、通信装置4を制御してサーバ2に対するデータの送受信を行うものである。アプリケーション部15は、この端末1が受け持つ業務のためのデータ処理を実行するものである。
【0029】リジューム機能制御部12は、通信制御部11とアプリケーション部15との間に介在して両者間で受け渡しされる送受信データaを管理することにより、リジューム通信機能、つまり中断した通信を再開する際その中断位置から通信を開始できる機能を実現するものである。リジューム通信機能を実現するために、リジューム機能制御部12は、1つの通信において送受信したデータaをその通信が完了するまで保持しておく機能や、通信が中断した場合、その後にその通信を再開するために自動的に発呼要求dを出す(又はアプリケーション部15からの発呼要求bに応答して発呼要求dを出す)機能などを有している。このリジューム機能制御部12の動作の詳細は後に説明する。
【0030】電波強度検出部13は、通信制御部11から受信電波の強度(受信感度)を示す信号cを受け、波の状態を監視して通信可能か不可能かの判断を行うことにより、電波監視自動発呼機能、つまり電波状態が通信可能な時を自動的に選んで発呼を行う機能を実現するものである。より詳細に説明すれば、電波強度検出部13は、受信電波の状態から通信可能か否かを周期的に判断しており、リジューム通信制御部12から発呼要求dが来ると、通信可能であれば直ちに、一方、通信不可能であれば通信可能になるまで待ってから、その発呼要求dに応答して発行命令eを通信制御部11に送って発呼を行わせる。
【0031】また、電波強度検出部13は、通信可能の場合にはその電波強度を細い段階分け(例えば5段階)で評価して、その段階値fを速度制御部14に通知する機能も有している。
【0032】速度制御部14は、電波強度検出部13からの電波強度の段階値fに応じ、適切なデータ転送速度を選択し、その転送速度hを通信制御部11に設定することにより、電波強度に応じた転送速度制御機能を実現する。
【0033】図3はサーバ2のブロック構成図である。
【0034】サーバ2は、通信制御部21、リジューム機能制御部22、速度制御部23及びアプリケーション部24を備えている。
【0035】通信制御部21は、通信装置5を制御して端末1に対するデータの送受信を行うものである。アプリケーション部24は、このサーバ2が受け持つ業務のためのデータ処理を実行するものである。
【0036】リジューム機能制御部22は、通信制御部21とアプリケーション部24との間に介在して両者間で受け渡しされる送受信データgを管理することにより、リジューム通信機能を実現するものである。リジューム通信機能を実現するために、リジューム機能制御部22は、1つの通信において送受信したデータgをその通信が完了するまで保持しておく機能などを有している。このリジューム機能制御部22の動作の詳細は後に説明する。
【0037】速度制御部23は、端末1から通信制御部21を通じて与えられる端末1での電波強度の段階値fに応じて適切な転送速度を選択し、この転送速度jを通線制御部21に設定することにより、電波強度に応じた転送速度制御機能を実現するものである。
【0038】以上の構成の下で、次に、リジューム通信機能、電波監視自動発信機能及び転送速度制御機能について詳細に説明する。
【0039】まず、リジューム通信機能について説明する。リジューム通信機能とは、通信の途中で回線品質が悪くなり回線切断された場合、または接続者自らが通信を意図的に中断した場合などに、再接続後、回線が切断された個所からデータ通信を開始する機能を言う。
【0040】例えば、図4に示すようにデータの送受信を繰り返す通信処理の流れの中で、途中の処理段階(a)で通信品質が悪くなり回線が切断された場合、その後に端末1とサーバ2の再接続を行うと、その中断した段階(a)から通信が再開され、通信の継続性が維持されることになる。また接続者が自らある段階(b)で通信を中断した場合にも、再接続を行うと、段階(b)から通信が再開されることになる。尚、コネクション型の通信(電話回線、TCP/IPなど)の場合は、通信を再開する前にコネクションの確立をやり直す必要があることは言うまでもない。
【0041】図5はこのリジューム通信機能を実現する5ための端末1及びサーバ2のリジューム機能制御部12及び22の処理フローを示す。
【0042】まず、端末1の通信制御部11から発呼が行われ、サーバ2の通信制御部21が着呼に応答すると、両者間に回線が接続される。この回線接続後、まず、発呼側のリジューム機能制御部12(以下、単に「発呼側」という)が自己のリジューム処理データAを着呼側のリジューム機能制御部22(以下、単に「着呼側」という)に送信する(S1)。
【0043】ここで、リジューム処理データとは、通信を開始する際に発呼側と着呼側との通信処理段階を同期させるために用いる制御データであり、回線接続後に発呼側が着呼側とどの様な通信処理を行う予定であるかを記述したものである。具体的には、図6に示すように、項番1の通信処理データID、項番2の処理数、項番3の処理ナンバー、及び項番4のFCS(フレームチェックシーケンス)などから構成されている。
【0044】項番1の通信処理データIDは、端末1とサーバ2が互いに同一のリジューム処理データを認識するようにするために、リジューム処理データを発呼側が生成した時に付与したユニークな番号である。項番2の処理数は、発呼側からのデータ送信及び着呼側からのデータ送信を一つの処理段階と定義した場合の、通信処理全体に含まれる処理段階の数を示す。項番3の処理ナンバーは、項番2で示した処理数の内、既にどの処理段階までが終わっているかを記述したもので、最初に通信を開始する場合にはゼロに、また、、中断した通信を再開する場合には中断時点での処理済の段階数に設定されている。
【0045】このリジューム処理データは、最初は発呼側で生成されて発呼側の消去可能な不揮発性メモリに保存されると共に、上記ステップS1のように着呼側に送信され、そして、以下に述べるように、着呼側の消去可能な不揮発性メモリに保存される。
【0046】さて、再び図5を参照して、着呼側では、発呼側からリジューム処理データAを受信(S2)すると、まず、自己の保持するリジュム処理データBがあるか否かチェックする(S3)。尚、着呼側にリジューム処理データBがある場合とは、一旦中断してまだ再開していない通信がある場合のみであり、まだ通信を1回も行っていない場合や過去の通信が全て完了している場合は、このステップS3の段階では着呼側にリジューム処理データBは存在しない。
【0047】ステップS3のチェックの結果、着呼側にリジューム処理データBがない場合には、着呼側は受信したリジューム処理データAをそのまま着呼側のリジューム処理データBとしてコピーし保存した上で、そのリジューム処理データBを発呼側に返信する(S5)。
【0048】一方、ステップS3の結果、着呼側にリジューム処理データBがあった場合には、次に、リジューム処理データAとBの通信処理データIDが一致するか否かをチェックする(S4)。その結果、一致するIDが存在しない場合には、着呼側は受信したリジューム処理データAをそのまま受信側のリジューム処理データBとしてコピーし保存した上で、そのリジューム処理データBをそのまま発呼側に返信する(S5)。
【0049】また、ステップS4の結果、一致するIDのリジューム処理データBが存在する場合は、受信したリジューム処理データAと存在するリジューム処理データBとの処理ナンバーを比較し(S6)、いずれか処理ナンバーの小さい方のリジューム処理データを着呼側のリジューム処理データBとして保存し(S7)、それを発呼側に返信する。
【0050】発呼側は、着呼側からのリジューム処理データBを受信し(S8)、両リジューム処理データA、BのIDが一致していることを確認した上で(S9)、次に、両リジューム処理データA、Bの処理ナンバーを比較し(S10)、リジューム処理データBの処理ナンバーの方がリジューム処理データAの処理ナンバーより小さい場合には、リジューム処理データBを発呼側のリジューム処理データAとしてコピーし保存する(S11)。尚、リジューム処理データBの処理ナンバーの方がリジューム処理データAの処理ナンバーより大きい場合は、エラーとみなす。
【0051】以上の処理により、発呼側(端末1)と着呼側(サーバ2)が共に、処理進行の遅れている側の処理段階に処理ナンバーを同期させることになる。
【0052】こうして処理ナンバーを一致させた上で、その処理ナンバーから正味の通信データの送受信を開始する。以後は、発呼側からの送信と着呼側からの送信からなる通信の1処理段階を終える度に、発呼側及び着呼側はそれぞれリジューム処理データの処理ナンバーを1つ増加させる。
【0053】また、発呼側及び着呼側は共に、図7に示すように、その通信において既に送受信を完了したデータの内容を全て、消去可能な不揮発性メモリに保存しておく。この保存したデータ内容は、その後に通信が中断してその通信を再開する場合に、上述したステップS1〜S11により処理段階を一致させるために処理ナンバーを遅れた側の値に戻す必要が生じたとき(例えばS7、S11)、その戻った処理ナンバーからデータを送り直すために利用される。
【0054】以上のようにして、通信が中断しても、その中断位置から再び通信を継続することが可能となる。そして、図6の項番2の処理数分の送受信が全て完了すると、発呼側及び着呼側で保存されていた当該通信に関する図6及び図7に示したデータは全て消去される。
【0055】図8は以上のリジューム通信機能により行われる通信の態様を示すもので、処理段階T0の各送信データn01、n02は、図6に示したリジューム処理データの送受信による同期処理を示しており、処理段階T1、T2…の各送信データn11、n12、n21、n22…は正味の通信データの送受信を示している。
【0056】ここで、正味のデータを送る処理段階T1、T2…では、個々のデータn11、n12、n21、n22…は各々単一のファイルとして、端末1及びサーバ2において用意され、送信されるようになっている。単一のファイルの送信におけるリジューム機能は、現在パソコン通信でよく利用されているZMODEM、QUICK−VANプロトコル等によってサポートされている。そのため、上記のように個々の送信データを単一ファイルとして送信するようにすれば、あるファイル(データ)の送信途中で回線断などが生じた場合、上記公知のプロトコルのリジューム機能を流用することにより、そのファイルの中断箇所からそのファイルの残り部分を送信できると共に、後続の未送信ファイルについては図5で詳述したリジューム機能により引続いて送信することができる。
【0057】次に、本実施例の電波監視自動発信通信機能について説明する。
【0058】電波監視自動発信通信機能とは、移動局がデータ通信できない場所に居るときでも、データ通信処理の依頼を発しておけば、通信ができる環境に移ったところでデータ通信を自動的に開始し、完了する機能を言う。
【0059】例えば、図9に示すように、エリアBでは電波が届かずにデータ通信できないとする。端末1がこのエリアBにいるとき、図2に示すアプリケーション部15がデータ通信の依頼(発呼要求b)を発したとすると、この発呼要求bを受けたリジューム機能制御部12が発呼要求dを電波強度検出部13に送る。しかし、電波強度検出部dは、通信不可能と判断してその発呼要求dを待機させる。その後、端末1が移動して十分な強度の電波の届くエリアAに入ると、電波強度検出部13が通信可能を認識して、待機させていた発呼要求dを受け付け発呼命令eを通信制御部11に発する。以後は、既に述べたようにリジューム機能制御部12が作動してデータ通信を実行する。
【0060】また、図10(a)に示すように、通信可能エリアAとBとCの間に通信不可能エリアXとYがあり、端末1が通信可能エリアAからCへ移動している間において、通信可能エリアA内にて発呼要求が出されたとする。
【0061】この場合には、図2に示す電波強度検出部13が、通信可能エリアAにて発呼要求dを受けて直ちに発呼命令eを発し、データ通信が開始される。その後、端末1が通信不可能エリアXに入ると、通信は中断される。すると、リジューム機能値制御部12が自動的に発呼要求dを再び発し、これを受けた電波強度検出部13が、次の通信可能エリアBに端末1が入るまで待ってから発呼命令eを発し、これにより通信が再開される。この通信再開に当たっては、既に述べたようにリジューム機能制御部12が働いて中断箇所からデータ通信を開始する。
【0062】このようにして、図10(b)に示すように、通信可能エリアA、B、Cにいるときだけが自動的に選ばれて通信が実行される。
【0063】次に、本実施例における電波強度による転送速度制御機能について説明する。
【0064】図11は、端末1とサーバ2の速度制御部14、23にそれぞれ設けられる電波強度とデータ転送速度の対応テーブルの一例を示す。
【0065】図11に示すように、電波強度は1〜5の5段階に分類されており、強度段階が1の時は転送速度が300bps、2の時は1200bps、3の時は2400bps、4の時は4800bps、5の時は9600pbsというようにデータ転送速度が決められている。
【0066】端末1の速度制御部14は、電波強度が通信可能な状態にあるとき、電波強度検出部13より周期的に電波強度の段階値fを受取り、図11に示すテーブルより対応するデータ転送速度を選択して、通信制御部11に設定する。通信制御部11は、発呼する際、現在設定されているデータ転送速度に対応する電波強度段階値をサーバ2に通知する。
【0067】サーバ2では、着呼の際、端末1から通知された電波強度段階値iを速度制御部23が受取り、図11に示すテーブルから対応するデータ転送速度を選択し、通信制御部21に設定する。
【0068】以上のようにして端末1とサーバ2の通信制御部11、21に、移動局たる端末1における電波強度に適したデータ転送速度が設定された後、両通信制御部11、21はそのデータ転送速度でデータ通信を開始する。
【0069】データ通信を行っている間に、端末1の移動などによって電波強度段階が変化したときには、端末1の速度制御部14が新たなデータ転送速度を選んで通信制御部11に設定し、かつ、その新たなデータ転送速度に対応する電波強度段階値がサーバ2に通知される。サーバ2では、通知された段階値に基づいて速度制御部23が新たなデータ転送速度を通信制御部21に設定する。こうして、端末1及びサーバ2の双方に新たな転送速度が設定された後、両者はその新たな転送速度で後続のデータ通信を実行する。
【0070】このように電波強度に応じて転送速度を制御することにより、従来のようにビットエラー率を測定して転送速度を制御する場合に比較し、電波状態の変化に即応して適切な転送速度が得られるので、全体として高い通信効率が得られる。
【0071】また、電波強度により転送速度を制御するのに加え、ビットエラー率も測定して転送速度を更に調整することにより、一層最適な転送速度が得られるようにすることもできる。
【0072】以上のリジューム通信機能と電波強度監視自動発呼機能と電波強度による転送速度制御機能とにより、実質的にエラーフリーの移動体通信が可能となる。
【0073】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、リジュー通信機能によって効率よく通信処理を進め、かつ、確実に通信を完了させることができる。また、電波監視自動発呼機能によって、自動的に適切な状態を選んで通信を開始することができる。また、電波強度による転送速度制御機能により効率良く通信処理を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る移動体通信システムの構成図である。
【図2】図1に示す端末のブロック構成図である。
【図3】図1に示すサーバのブロック構成図である。
【図4】リジューム通信機能の説明図である。
【図5】リジューム通信機能を実現する処理フローチャートである。
【図6】リジューム通信処理データのフォーマットの一例を示す説明図である。
【図7】通信データを保存する態様例を示す説明図である。
【図8】リジューム通信処理例を示す説明図である。
【図9】通信不可能エリアから通信可能エリアに移動する場合の電波監視自動発信通信機能の説明図である。
【図10】通信可能エリアと通信不可能エリアを交互に移動する場合の電波監視自動発信通信機能の説明図である。
【図11】電波強度と転送速度の対応テーブルを示す説明図である。
【符号の説明】
1 端末
2 サーバ
3 回線網
4、5 通信装置
11 通信制御部
12、22 リジューム機能制御部
13 電波強度検出部
14、23 速度制御部
15、24 アプリケーション部
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、通信品質の安定しない回線を用いる通信方式(例えば、回線の瞬断やノイズ混入が頻繁に発生する移動体通信)に好適な通信方式の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】移動体を用いた通信では、無線回線を用いること、通信局が移動することなどの事情から、有線回線では考慮する必要のない制約が存在する。例えば、通信が行えるエリア内にいるか、電波の受信状態は良好かなど、充分な通信品質を得るために多くの制約が存在する。
【0003】しかし、従来の移動体通信では基本的に、品質の安定した有線回線と同様の通信処理が行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このため、従来の移動体通信では以下の問題がある。
【0005】(1) 通信主体の居場所や電波状態などの通信条件によって、通信中に回線断が起きたり、通信しようとしても通信自体が行えないなどの障害が発生することがある。
【0006】(2) コンピュータ間でデータ通信を行っているような場合、通信途中で回線が切断されると、再度最初のデータから通信処理をやり直す必要があるので、切断前までの通信が無駄になる。
【0007】(3) 回線断後に通信の再処理を行う場合、接続してみない限り回線状態が接続可能かどうか分らないため、接続をトライしてみるしか対応方法がない。
【0008】(4) 通信条件の良し悪しや変化を常に人間が監視していなければ、通信ができる契機を見極めることができない。つまり、通信条件の良い場所、時間を自動的に選んで通信を行うことができない。
【0009】(5) また、移動体通信に関する従来の技術として、通信中にそのビットエラー率を監視し、ビットエラー率が高くなると伝送速度を落とし、低くなると伝送速度を上げるプロトコル(MNPクラス10)が良く知られている。しかし、ビットエラー率を監視して伝送速度を決定するため、通信効率が悪い。
【0010】本発明はこのような背景に基づいてなされたものであり、その目的は、移動体通信に代表されるような通信品質の不安定な回線を用いた通信方式において、自動的に適切な状態を選んで通信を開始し、効率よく通信処理を進め、そして、確実に通信を完了させるための新規な改良を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の側面に従う通信方式は、自局と相手局との間で行われるべき一連の通信処理のうち、どの処理段階まで自局にて実行済みであるかを認識する手段と、一連の通信処理の途中で通信回線が断たれた後再接続したとき、認識している処理段階を相手局に通知し、かつ相手局が認識している処理段階を相手局から通知されることにより、自局と相手局での認識している処理段階を一致させる手段と、この一致させた処理段階の後続の処理段階から通信処理を再開する手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】本発明の第2の側面に従う無線通信回線を用いた通信方式は、無線通信回線の電波強度を監視して、通信可能か否かを判断する手段と、通信開始の依頼を受け、この依頼を受けた時点で前記判断の結果が通信可能であれば直ちに、また、通信不能であれば前記判断結果が通信可能に変わるまで待ってから、通信を開始する手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】本発明の第3の側面に従う無線通信回線を用いた通信方式は、無線通信回線の電波強度を測定する手段と、測定された電波強度に応じて、通信のデータ転送速度を制御する手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】本発明の第4の側面に従う無線通信回線を用いた通信方式は、一連の通信処理の途中で通信回線が断たれた後再接続したとき、既に実行済みの処理段階から通信処理を再開するリジューム機能手段と、無線通信回線通信の電波強度を監視して、通信可能か否かを判断すると共に、通信可能なときの電波強度を測定する手段と、通信開始の依頼を受け、この依頼を受けた時点で前記判断の結果が通信可能であれば直ちに、また、通信不能であれば前記判断結果が通信可能に変わるまで待ってから、通信を開始する自動通信開始手段と、測定された電波強度に応じて、通信のデータ転送速度を制御する転送速度制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
【作用】本発明の第1の側面に従う通信方式においては、一連の通信処理のどの段階まで自局が実行したかを認識している。例えば、好適な実施例では、自局からのデータ送信と相手局からのデータ受信とを一つの処理段階とみなして、実行した処理段階の数を数えて記憶している。このように、実行済みの処理段階を常に認識しつつ、通信処理の途中で回線が切断された場合には、回線再接続後、その時点で自局が認識している処理段階を相手局に通知する。このとき、相手局でも同様にどの処理段階まで実行したかを認識しているから、これを相手局から自局へも通知してもらう。これにより、自局と相手局との実行済み処理段階を互いに同じ段階に合せることが出来る。例えば、双方の処理段階が異なっていた場合、遅れている方の段階に合せるようにする。こうして、自局と相手局との処理段階を一致させた後、この処理段階の後続の処理段階から通信処理を再開する。
【0016】以上のようにして、通信が途中で中断した場合その中断箇所から通信を再開するリジューム通信機能が実現する。これにより、最初から通信処理をやり直す必要が無くなり、効率的な通信が可能となる。
【0017】本発明の第2の側面に従う無線通信回線を用いた通信方式においては、回線の電波強度を監視して通信可能か否かを判断し、通信可能のときには、通信開始依頼が入れば直ちに通信を開始するが、通信不可能のときには、通信開始依頼が入ると、通信可能な電波状態になるまで待ってから自動的に通信を開始する。これにより、ユーザは通信可能か否かを意識せずに任意のときに通信開始依頼さえ発しておけば、自動的に通信可能な電波状態のときが選択されて通信が確実に実行されることになる。
【0018】また、この自動通信開始機能と上記のリジューム通信機能と組合せることにより、電波状態の悪化などにより通信途中で回線断が生じても、電波状態が通信可能な状態になったときに自動的に通信が再開されて、未実行の通信処理が実行されるため、通信が確実に最後まで完了されることになる。
【0019】本発明の第3の側面に従う無線通信回線を用いた通信方式においては、回線の電波強度に応じて適切なデータ転送速度が選択されることになる。この方式によれば、従来のビットエラー率を測って転送速度を制御する方式に比較し、電波状態の変化に即応できるため、効率的な通信が可能となる。
【0020】本発明の第4の側面に従う無線通信回線を用いた通信方式においては、上記のリジューム通信機能と自動通信開始機能と転送速度制御機能とを備えるため、実質的にエラーフリーの通信が可能となる。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0022】図1は本発明の一実施例に係る移動体通信システムの全体構成図である。
【0023】この図に示す通信システムは、移動局としての端末(パソコンや携帯端末など)1と、固定局(移動局でもよい)としてのサーバ2と、移動局用の無線回線網を少なくとも一部に有した通信回線網3とを含む。端末1とサーバ2とは、回線網3を介して接続されることによりデータ通信を行うことができる。端末1及びサーバ2は、回線網3との間の通信インタフェースとしての通信装置4、5をそれぞれ備えている。
【0024】通信装置4、5は、例えば端末1やサーバ2のRS232C端子又はI/O端子に接続されたモデムと、モデムに接続された無線送受信機とで構成されている。無線送受信機には、例えば、携帯電話やPHS(簡易型携帯電話)などが利用できる。
【0025】尚、本実施例では、専ら移動局たる端末1のみが発呼機能を持ち、サーバ2は着呼機能のみを有し発呼機能は持たないものとして説明するが、当業者は本実施例の説明に基づいて、端末1及びサーバ2の双方が発呼機能を持つ実施態様についても容易に理解できる筈である。
【0026】図2は端末1のブロック構成図である。
【0027】端末1は、通信制御部11、リジューム機能制御部12、電波強度検出部13、速度制御部14及びアプリケーション部15を備えている。
【0028】通信制御部11は、通信装置4を制御してサーバ2に対するデータの送受信を行うものである。アプリケーション部15は、この端末1が受け持つ業務のためのデータ処理を実行するものである。
【0029】リジューム機能制御部12は、通信制御部11とアプリケーション部15との間に介在して両者間で受け渡しされる送受信データaを管理することにより、リジューム通信機能、つまり中断した通信を再開する際その中断位置から通信を開始できる機能を実現するものである。リジューム通信機能を実現するために、リジューム機能制御部12は、1つの通信において送受信したデータaをその通信が完了するまで保持しておく機能や、通信が中断した場合、その後にその通信を再開するために自動的に発呼要求dを出す(又はアプリケーション部15からの発呼要求bに応答して発呼要求dを出す)機能などを有している。このリジューム機能制御部12の動作の詳細は後に説明する。
【0030】電波強度検出部13は、通信制御部11から受信電波の強度(受信感度)を示す信号cを受け、波の状態を監視して通信可能か不可能かの判断を行うことにより、電波監視自動発呼機能、つまり電波状態が通信可能な時を自動的に選んで発呼を行う機能を実現するものである。より詳細に説明すれば、電波強度検出部13は、受信電波の状態から通信可能か否かを周期的に判断しており、リジューム通信制御部12から発呼要求dが来ると、通信可能であれば直ちに、一方、通信不可能であれば通信可能になるまで待ってから、その発呼要求dに応答して発行命令eを通信制御部11に送って発呼を行わせる。
【0031】また、電波強度検出部13は、通信可能の場合にはその電波強度を細い段階分け(例えば5段階)で評価して、その段階値fを速度制御部14に通知する機能も有している。
【0032】速度制御部14は、電波強度検出部13からの電波強度の段階値fに応じ、適切なデータ転送速度を選択し、その転送速度hを通信制御部11に設定することにより、電波強度に応じた転送速度制御機能を実現する。
【0033】図3はサーバ2のブロック構成図である。
【0034】サーバ2は、通信制御部21、リジューム機能制御部22、速度制御部23及びアプリケーション部24を備えている。
【0035】通信制御部21は、通信装置5を制御して端末1に対するデータの送受信を行うものである。アプリケーション部24は、このサーバ2が受け持つ業務のためのデータ処理を実行するものである。
【0036】リジューム機能制御部22は、通信制御部21とアプリケーション部24との間に介在して両者間で受け渡しされる送受信データgを管理することにより、リジューム通信機能を実現するものである。リジューム通信機能を実現するために、リジューム機能制御部22は、1つの通信において送受信したデータgをその通信が完了するまで保持しておく機能などを有している。このリジューム機能制御部22の動作の詳細は後に説明する。
【0037】速度制御部23は、端末1から通信制御部21を通じて与えられる端末1での電波強度の段階値fに応じて適切な転送速度を選択し、この転送速度jを通線制御部21に設定することにより、電波強度に応じた転送速度制御機能を実現するものである。
【0038】以上の構成の下で、次に、リジューム通信機能、電波監視自動発信機能及び転送速度制御機能について詳細に説明する。
【0039】まず、リジューム通信機能について説明する。リジューム通信機能とは、通信の途中で回線品質が悪くなり回線切断された場合、または接続者自らが通信を意図的に中断した場合などに、再接続後、回線が切断された個所からデータ通信を開始する機能を言う。
【0040】例えば、図4に示すようにデータの送受信を繰り返す通信処理の流れの中で、途中の処理段階(a)で通信品質が悪くなり回線が切断された場合、その後に端末1とサーバ2の再接続を行うと、その中断した段階(a)から通信が再開され、通信の継続性が維持されることになる。また接続者が自らある段階(b)で通信を中断した場合にも、再接続を行うと、段階(b)から通信が再開されることになる。尚、コネクション型の通信(電話回線、TCP/IPなど)の場合は、通信を再開する前にコネクションの確立をやり直す必要があることは言うまでもない。
【0041】図5はこのリジューム通信機能を実現する5ための端末1及びサーバ2のリジューム機能制御部12及び22の処理フローを示す。
【0042】まず、端末1の通信制御部11から発呼が行われ、サーバ2の通信制御部21が着呼に応答すると、両者間に回線が接続される。この回線接続後、まず、発呼側のリジューム機能制御部12(以下、単に「発呼側」という)が自己のリジューム処理データAを着呼側のリジューム機能制御部22(以下、単に「着呼側」という)に送信する(S1)。
【0043】ここで、リジューム処理データとは、通信を開始する際に発呼側と着呼側との通信処理段階を同期させるために用いる制御データであり、回線接続後に発呼側が着呼側とどの様な通信処理を行う予定であるかを記述したものである。具体的には、図6に示すように、項番1の通信処理データID、項番2の処理数、項番3の処理ナンバー、及び項番4のFCS(フレームチェックシーケンス)などから構成されている。
【0044】項番1の通信処理データIDは、端末1とサーバ2が互いに同一のリジューム処理データを認識するようにするために、リジューム処理データを発呼側が生成した時に付与したユニークな番号である。項番2の処理数は、発呼側からのデータ送信及び着呼側からのデータ送信を一つの処理段階と定義した場合の、通信処理全体に含まれる処理段階の数を示す。項番3の処理ナンバーは、項番2で示した処理数の内、既にどの処理段階までが終わっているかを記述したもので、最初に通信を開始する場合にはゼロに、また、、中断した通信を再開する場合には中断時点での処理済の段階数に設定されている。
【0045】このリジューム処理データは、最初は発呼側で生成されて発呼側の消去可能な不揮発性メモリに保存されると共に、上記ステップS1のように着呼側に送信され、そして、以下に述べるように、着呼側の消去可能な不揮発性メモリに保存される。
【0046】さて、再び図5を参照して、着呼側では、発呼側からリジューム処理データAを受信(S2)すると、まず、自己の保持するリジュム処理データBがあるか否かチェックする(S3)。尚、着呼側にリジューム処理データBがある場合とは、一旦中断してまだ再開していない通信がある場合のみであり、まだ通信を1回も行っていない場合や過去の通信が全て完了している場合は、このステップS3の段階では着呼側にリジューム処理データBは存在しない。
【0047】ステップS3のチェックの結果、着呼側にリジューム処理データBがない場合には、着呼側は受信したリジューム処理データAをそのまま着呼側のリジューム処理データBとしてコピーし保存した上で、そのリジューム処理データBを発呼側に返信する(S5)。
【0048】一方、ステップS3の結果、着呼側にリジューム処理データBがあった場合には、次に、リジューム処理データAとBの通信処理データIDが一致するか否かをチェックする(S4)。その結果、一致するIDが存在しない場合には、着呼側は受信したリジューム処理データAをそのまま受信側のリジューム処理データBとしてコピーし保存した上で、そのリジューム処理データBをそのまま発呼側に返信する(S5)。
【0049】また、ステップS4の結果、一致するIDのリジューム処理データBが存在する場合は、受信したリジューム処理データAと存在するリジューム処理データBとの処理ナンバーを比較し(S6)、いずれか処理ナンバーの小さい方のリジューム処理データを着呼側のリジューム処理データBとして保存し(S7)、それを発呼側に返信する。
【0050】発呼側は、着呼側からのリジューム処理データBを受信し(S8)、両リジューム処理データA、BのIDが一致していることを確認した上で(S9)、次に、両リジューム処理データA、Bの処理ナンバーを比較し(S10)、リジューム処理データBの処理ナンバーの方がリジューム処理データAの処理ナンバーより小さい場合には、リジューム処理データBを発呼側のリジューム処理データAとしてコピーし保存する(S11)。尚、リジューム処理データBの処理ナンバーの方がリジューム処理データAの処理ナンバーより大きい場合は、エラーとみなす。
【0051】以上の処理により、発呼側(端末1)と着呼側(サーバ2)が共に、処理進行の遅れている側の処理段階に処理ナンバーを同期させることになる。
【0052】こうして処理ナンバーを一致させた上で、その処理ナンバーから正味の通信データの送受信を開始する。以後は、発呼側からの送信と着呼側からの送信からなる通信の1処理段階を終える度に、発呼側及び着呼側はそれぞれリジューム処理データの処理ナンバーを1つ増加させる。
【0053】また、発呼側及び着呼側は共に、図7に示すように、その通信において既に送受信を完了したデータの内容を全て、消去可能な不揮発性メモリに保存しておく。この保存したデータ内容は、その後に通信が中断してその通信を再開する場合に、上述したステップS1〜S11により処理段階を一致させるために処理ナンバーを遅れた側の値に戻す必要が生じたとき(例えばS7、S11)、その戻った処理ナンバーからデータを送り直すために利用される。
【0054】以上のようにして、通信が中断しても、その中断位置から再び通信を継続することが可能となる。そして、図6の項番2の処理数分の送受信が全て完了すると、発呼側及び着呼側で保存されていた当該通信に関する図6及び図7に示したデータは全て消去される。
【0055】図8は以上のリジューム通信機能により行われる通信の態様を示すもので、処理段階T0の各送信データn01、n02は、図6に示したリジューム処理データの送受信による同期処理を示しており、処理段階T1、T2…の各送信データn11、n12、n21、n22…は正味の通信データの送受信を示している。
【0056】ここで、正味のデータを送る処理段階T1、T2…では、個々のデータn11、n12、n21、n22…は各々単一のファイルとして、端末1及びサーバ2において用意され、送信されるようになっている。単一のファイルの送信におけるリジューム機能は、現在パソコン通信でよく利用されているZMODEM、QUICK−VANプロトコル等によってサポートされている。そのため、上記のように個々の送信データを単一ファイルとして送信するようにすれば、あるファイル(データ)の送信途中で回線断などが生じた場合、上記公知のプロトコルのリジューム機能を流用することにより、そのファイルの中断箇所からそのファイルの残り部分を送信できると共に、後続の未送信ファイルについては図5で詳述したリジューム機能により引続いて送信することができる。
【0057】次に、本実施例の電波監視自動発信通信機能について説明する。
【0058】電波監視自動発信通信機能とは、移動局がデータ通信できない場所に居るときでも、データ通信処理の依頼を発しておけば、通信ができる環境に移ったところでデータ通信を自動的に開始し、完了する機能を言う。
【0059】例えば、図9に示すように、エリアBでは電波が届かずにデータ通信できないとする。端末1がこのエリアBにいるとき、図2に示すアプリケーション部15がデータ通信の依頼(発呼要求b)を発したとすると、この発呼要求bを受けたリジューム機能制御部12が発呼要求dを電波強度検出部13に送る。しかし、電波強度検出部dは、通信不可能と判断してその発呼要求dを待機させる。その後、端末1が移動して十分な強度の電波の届くエリアAに入ると、電波強度検出部13が通信可能を認識して、待機させていた発呼要求dを受け付け発呼命令eを通信制御部11に発する。以後は、既に述べたようにリジューム機能制御部12が作動してデータ通信を実行する。
【0060】また、図10(a)に示すように、通信可能エリアAとBとCの間に通信不可能エリアXとYがあり、端末1が通信可能エリアAからCへ移動している間において、通信可能エリアA内にて発呼要求が出されたとする。
【0061】この場合には、図2に示す電波強度検出部13が、通信可能エリアAにて発呼要求dを受けて直ちに発呼命令eを発し、データ通信が開始される。その後、端末1が通信不可能エリアXに入ると、通信は中断される。すると、リジューム機能値制御部12が自動的に発呼要求dを再び発し、これを受けた電波強度検出部13が、次の通信可能エリアBに端末1が入るまで待ってから発呼命令eを発し、これにより通信が再開される。この通信再開に当たっては、既に述べたようにリジューム機能制御部12が働いて中断箇所からデータ通信を開始する。
【0062】このようにして、図10(b)に示すように、通信可能エリアA、B、Cにいるときだけが自動的に選ばれて通信が実行される。
【0063】次に、本実施例における電波強度による転送速度制御機能について説明する。
【0064】図11は、端末1とサーバ2の速度制御部14、23にそれぞれ設けられる電波強度とデータ転送速度の対応テーブルの一例を示す。
【0065】図11に示すように、電波強度は1〜5の5段階に分類されており、強度段階が1の時は転送速度が300bps、2の時は1200bps、3の時は2400bps、4の時は4800bps、5の時は9600pbsというようにデータ転送速度が決められている。
【0066】端末1の速度制御部14は、電波強度が通信可能な状態にあるとき、電波強度検出部13より周期的に電波強度の段階値fを受取り、図11に示すテーブルより対応するデータ転送速度を選択して、通信制御部11に設定する。通信制御部11は、発呼する際、現在設定されているデータ転送速度に対応する電波強度段階値をサーバ2に通知する。
【0067】サーバ2では、着呼の際、端末1から通知された電波強度段階値iを速度制御部23が受取り、図11に示すテーブルから対応するデータ転送速度を選択し、通信制御部21に設定する。
【0068】以上のようにして端末1とサーバ2の通信制御部11、21に、移動局たる端末1における電波強度に適したデータ転送速度が設定された後、両通信制御部11、21はそのデータ転送速度でデータ通信を開始する。
【0069】データ通信を行っている間に、端末1の移動などによって電波強度段階が変化したときには、端末1の速度制御部14が新たなデータ転送速度を選んで通信制御部11に設定し、かつ、その新たなデータ転送速度に対応する電波強度段階値がサーバ2に通知される。サーバ2では、通知された段階値に基づいて速度制御部23が新たなデータ転送速度を通信制御部21に設定する。こうして、端末1及びサーバ2の双方に新たな転送速度が設定された後、両者はその新たな転送速度で後続のデータ通信を実行する。
【0070】このように電波強度に応じて転送速度を制御することにより、従来のようにビットエラー率を測定して転送速度を制御する場合に比較し、電波状態の変化に即応して適切な転送速度が得られるので、全体として高い通信効率が得られる。
【0071】また、電波強度により転送速度を制御するのに加え、ビットエラー率も測定して転送速度を更に調整することにより、一層最適な転送速度が得られるようにすることもできる。
【0072】以上のリジューム通信機能と電波強度監視自動発呼機能と電波強度による転送速度制御機能とにより、実質的にエラーフリーの移動体通信が可能となる。
【0073】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、リジュー通信機能によって効率よく通信処理を進め、かつ、確実に通信を完了させることができる。また、電波監視自動発呼機能によって、自動的に適切な状態を選んで通信を開始することができる。また、電波強度による転送速度制御機能により効率良く通信処理を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る移動体通信システムの構成図である。
【図2】図1に示す端末のブロック構成図である。
【図3】図1に示すサーバのブロック構成図である。
【図4】リジューム通信機能の説明図である。
【図5】リジューム通信機能を実現する処理フローチャートである。
【図6】リジューム通信処理データのフォーマットの一例を示す説明図である。
【図7】通信データを保存する態様例を示す説明図である。
【図8】リジューム通信処理例を示す説明図である。
【図9】通信不可能エリアから通信可能エリアに移動する場合の電波監視自動発信通信機能の説明図である。
【図10】通信可能エリアと通信不可能エリアを交互に移動する場合の電波監視自動発信通信機能の説明図である。
【図11】電波強度と転送速度の対応テーブルを示す説明図である。
【符号の説明】
1 端末
2 サーバ
3 回線網
4、5 通信装置
11 通信制御部
12、22 リジューム機能制御部
13 電波強度検出部
14、23 速度制御部
15、24 アプリケーション部
【特許請求の範囲】
【請求項1】 自局と相手局との間で行われるべき一連の通信処理のうち、どの処理段階まで自局にて実行済みであるかを認識する手段と、前記一連の通信処理の途中で通信回線が断たれた後再接続したとき、認識している処理段階を相手局に通知し、かつ相手局が認識している処理段階を相手局から通知されることにより、自局と相手局での認識している処理段階を一致させる手段と、前記一致させた処理段階の後続の処理段階から、通信処理を再開する手段と、を備えたことを特徴とする通信方式。
【請求項2】 無線通信回線の電波強度を監視して、通信可能か否かを判断する手段と、通信開始の依頼を受け、この依頼を受けた時点で前記判断の結果が通信可能であれば直ちに、また、通信不能であれば前記判断結果が通信可能に変わるまで待ってから、通信を開始する手段と、を備えたことを特徴とする無線通信回線を用いた通信方式。
【請求項3】 無線通信回線の電波強度を測定する手段と、前記測定された電波強度に応じて、通信のデータ転送速度を制御する手段と、を備えたことを特徴とする無線通信回線を用いた通信方式。
【請求項4】 一連の通信処理の途中で回線が断たれた後再接続したとき、既に実行済みの処理段階から通信処理を再開するリジューム機能手段と、無線通信回線通信の電波強度を監視して、通信可能か否かを判断すると共に、通信可能なときの電波強度を測定する手段と、通信開始の依頼を受け、この依頼を受けた時点で前記判断の結果が通信可能であれば直ちに、また、通信不能であれば前記判断結果が通信可能に変わるまで待ってから、通信を開始する自動通信開始手段と、前記測定された電波強度に応じて、通信のデータ転送速度を制御する転送速度制御手段と、を備えたことを特徴とする無線通信回線を用いた通信方式。
【請求項1】 自局と相手局との間で行われるべき一連の通信処理のうち、どの処理段階まで自局にて実行済みであるかを認識する手段と、前記一連の通信処理の途中で通信回線が断たれた後再接続したとき、認識している処理段階を相手局に通知し、かつ相手局が認識している処理段階を相手局から通知されることにより、自局と相手局での認識している処理段階を一致させる手段と、前記一致させた処理段階の後続の処理段階から、通信処理を再開する手段と、を備えたことを特徴とする通信方式。
【請求項2】 無線通信回線の電波強度を監視して、通信可能か否かを判断する手段と、通信開始の依頼を受け、この依頼を受けた時点で前記判断の結果が通信可能であれば直ちに、また、通信不能であれば前記判断結果が通信可能に変わるまで待ってから、通信を開始する手段と、を備えたことを特徴とする無線通信回線を用いた通信方式。
【請求項3】 無線通信回線の電波強度を測定する手段と、前記測定された電波強度に応じて、通信のデータ転送速度を制御する手段と、を備えたことを特徴とする無線通信回線を用いた通信方式。
【請求項4】 一連の通信処理の途中で回線が断たれた後再接続したとき、既に実行済みの処理段階から通信処理を再開するリジューム機能手段と、無線通信回線通信の電波強度を監視して、通信可能か否かを判断すると共に、通信可能なときの電波強度を測定する手段と、通信開始の依頼を受け、この依頼を受けた時点で前記判断の結果が通信可能であれば直ちに、また、通信不能であれば前記判断結果が通信可能に変わるまで待ってから、通信を開始する自動通信開始手段と、前記測定された電波強度に応じて、通信のデータ転送速度を制御する転送速度制御手段と、を備えたことを特徴とする無線通信回線を用いた通信方式。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図11】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図11】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開平8−340308
【公開日】平成8年(1996)12月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−169202
【出願日】平成7年(1995)6月12日
【出願人】(000102728)エヌ・ティ・ティ・データ通信株式会社 (438)
【公開日】平成8年(1996)12月24日
【国際特許分類】
【出願日】平成7年(1995)6月12日
【出願人】(000102728)エヌ・ティ・ティ・データ通信株式会社 (438)
[ Back to top ]