説明

通信方法、通信システム、無線端末、および基地局

【課題】音声データを合成するようなサーバを不要としつつ多者間通信を実現する。
【解決手段】通信方法は、第1の無線端末が、第2および第3の無線端末への接続を要求するステップと、第1の無線端末に対応する基地局が、第1の無線端末と第2の無線端末との通信に関連付けられた第1の接続と、第1の無線端末と第3の無線端末との通信に関連付けられた第1の接続とは異なる周波数の第2の接続とを確立するステップと、第1の無線端末が、第2の無線端末に対して第3の無線端末への接続を指示するステップと、第2の無線端末が、第1の無線端末からの指示に応答して、第3の無線端末への接続を要求するステップと、第2の無線端末に対応する基地局が、第2の無線端末と第1の無線端末との通信に関連付けられた第3の接続と、第2の無線端末と第3の無線端末との通信に関連付けられた第3の接続とは異なる周波数の第4の接続を確立するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多者間通信が可能な通信方法、通信システム、無線端末、および基地局に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、3GPP(Third Generation Partnership Project)は、次世代通信方式である、LTE(Long Term Evolution:(第3世代の)長期進化)について仕様化を進めている。さらに、LTEを発展させた規格であるLTE−A(LTE-Advanced)についても仕様化の検討が行われている。
【0003】
LTE−Aでは、LTEに比較してより高速かつ大容量の通信を実現することが要求されている。そのため、LTE−Aは、LTEに比較してより広帯域な周波数範囲をサポートすることとされている。現在までの検討によれば、LTEの最大送信帯域幅が20MHzであるのに対して、LTEの最大送信帯域幅を100MHzまで拡張されることとされている。
【0004】
しかしながら、世界各国の電波利用状況を鑑みると、連続した広域の周波数帯域をLTE−A用として確保することは容易ではない。また、LTEとのバックワード・コンパチビリィティ(後方互換性)を可能な限り維持する必要もある。そこで、キャリアアグリゲーション(Carrier Aggregation;CA)という無線通信技術の導入が検討されている。このキャリアアグリゲーションでは、LTEの最大送信帯域幅である20MHzに相当するキャリアを複数まとめて利用することで、最大送信帯域幅を100MHzまで拡張する。このような20MHzまでのキャリアは、コンポーネントキャリア(Component Career;CC)と称される。
【0005】
このようなキャリアアグリゲーションを用いることで、基地局と移動局(端末:User Equipment)との間で高速かつ大容量の通信を実現する。なお、このキャリアアグリゲーションについては、3GPP RAN1#53b会合にて合意された(非特許文献1の"5.5 Carrier Aggregation"など参照)。
【0006】
ところで、無線電話端末装置を用いて、1対Nのグループ通信を提供するPoC(Push-to-Talk over Cellular)というサービスが提案されている。このようなサービスでは、サーバ側から発言権を与えられた端末装置が音声データをサーバへ送信し、送信された音声データを接続された他の端末装置に対してほぼリアルタイムでサーバが配信する。このように、複数の無線端末の間でグループ通話(多者間通信)を実現する場合には、複数の無線端末が無線回線を介して接続されたサーバとそれぞれ通信を行なうことで、当該サーバと接続された他の無線端末に対して音声データなどを送信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−134989号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】3GPP Organizational Partners, "3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA) and Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network (E-UTRAN); Overall description; Stage 2 (Release 10)", 3GPP TS 36.300 V10.3.0 (2011-03)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したPoCのような発言権を与えられた無線端末のみが音声データを送信できるようなシステムではなく、電話会議システムのようなそれぞれの無線端末が任意のタイミングで音声データを送信できるようなシステムを考える。この場合、上述のようなシステムを発展させた形態として、それぞれの無線端末が接続されるサーバを設置し、対応する無線回線を介してそれぞれの無線端末から伝送された音声データを合成し、当該合成した音声データをそれぞれの無線端末へ配信するような構成が想定される。しかしながら、このような構成を採用した場合には、複数の無線端末からの音声データを順次合成して音声を生成する必要があり、サーバ内で処理による遅延が生じる。そのため、電話会議システムのような複数の無線端末のユーザが同時通話するようなシステムに不向きであり、また、処理能力の高いサーバを使用しなければならない。
【0010】
そこで、本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、音声データを合成するようなサーバを不要としつつ、多者間通信を実現する通信方法、通信システム、無線端末、および基地局を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある局面に従えば、複数の無線端末の間で多者間通信を行なうための通信方法を提供する。通信方法は、第1の無線端末が、第2および第3の無線端末への接続を要求するステップと、第1の無線端末に対応する基地局が、第1の無線端末と第2の無線端末との通信に関連付けられた第1の接続と、第1の無線端末と第3の無線端末との通信に関連付けられた第1の接続とは異なる周波数の第2の接続とを確立するステップと、第1の無線端末が、第2の無線端末に対して第3の無線端末への接続を指示するステップと、第2の無線端末が、第1の無線端末からの指示に応答して、第3の無線端末への接続を要求するステップと、第2の無線端末に対応する基地局が、第2の無線端末と第1の無線端末との通信に関連付けられた第3の接続と、第2の無線端末と第3の無線端末との通信に関連付けられた第3の接続とは異なる周波数の第4の接続を確立するステップとを含む。
【0012】
本発明の別の局面に従えば、多者間通信を行なう通信システムを提供する。通信システムは、複数の無線端末と、所定のセルエリアを提供する複数の基地局とを含む。無線端末は、複数の無線端末への接続を要求する手段と、接続を要求した複数の無線端末のうち1つの無線端末に対して、残りの無線端末への接続を指示する手段と、いずれかの無線端末への接続の指示に応答して、指示された無線端末への接続を要求する手段とを含む。基地局は、基地局が提供するセルエリアに存在する無線端末からの複数の無線端末への接続要求に応答して、周波数が互いに異なる複数の接続をそれぞれ確立する手段を含む。
【0013】
本発明のさらに別の局面に従えば、多者間通信が可能な無線端末を提供する。無線端末は、他の複数の無線端末への接続を要求する手段を含む。無線端末が存在するセルエリアを提供する基地局は複数の無線端末への接続要求に応答して、周波数が互いに異なる複数の接続をそれぞれ確立する。無線端末は、さらに、接続を要求した複数の無線端末のうち1つの無線端末に対して、残りの無線端末への接続を指示する手段と、いずれかの無線端末への接続の指示に応答して、指示された無線端末への接続を要求する手段とを含む。
【0014】
本発明のさらに別の局面に従えば、多者間通信が可能な基地局を提供する。基地局は、提供するセルエリアに存在する無線端末からの複数の無線端末への接続要求に応答して、周波数が互いに異なる複数の接続をそれぞれ確立する手段を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、音声データを合成するようなサーバを不要としつつ、多者間通信を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に従う通信システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に従う無線端末(UE)の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に従う基地局(BS)の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に従う通信システムで用いられるUEが提供するユーザインターフェイスの一例である。
【図5】図1に対応するコンポーネントキャリアの割り当て例を示す模式図である。
【図6】図5に示すコンポーネントキャリアの割り当てに係る処理を示すシーケンス図である。
【図7】図5に示すコンポーネントキャリアを用いたUE間の専用回線を示す模式図である。
【図8】本発明の実施の形態に従う通信システムにおける四者間通信を行なう場合の手順を示す模式図である。
【図9】図8に示す多者間通信に係る接続を確立するための手続きを示す主導者となるUEにおけるフローチャートである。
【図10】図8に示す多者間通信に係る接続を確立するための手続きを示す主導者となるUEにおけるフローチャートである。
【図11】図8に示す多者間通信に係る接続を確立するための手続きを示す主導者以外のUEにおけるフローチャートである。
【図12】応答の早かった順に接続処理を順次行なっていく処理において主導者となるUEにおけるフローチャートである。
【図13】応答の早かった順に接続処理を順次行なっていく処理において主導者以外のUEにおけるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施可能である。また、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
<1.システム構成>
まず、本発明の実施の形態に従う通信システムの典型的な構成について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に従う通信システム1の全体構成を示す模式図である。典型的な一例として、通信システム1は、LTE方式またはLTE−A方式に従う通信方式をサポートしているとする。
【0020】
図1を参照して、通信システム1は、移動局である無線端末(以下「UE(User Equipment)」とも称す。)100と、複数の基地局(Broadcast Station:以下「BS」とも称す。)200−1〜200−3と、制御装置であるモバイルマネージメント装置(Mobility Management Entity:以下「MME」とも称す。)300と、コアネットワーク400とを含む。
【0021】
UE100は、典型的には、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、データ通信端末などであり、いずれかのBSを介して相手先とデータを遣り取りする。
【0022】
BS200−1〜200−3(以下「BS200」とも総称する。)の各々は、周波数の異なる互いに独立した複数の無線信号を送受信可能となっている。すなわち、BS200は、キャリアアグリゲーションをサポートしているとし、後述するように、1つのUE100との間で複数のコンポーネントキャリアを用いてデータを遣り取りする。
【0023】
LTE方式またはLTE−A方式に従うキャリアアグリゲーションでは、一般的には、複数のコンポーネントキャリアを用いて一連のデータを送受信することが想定されている。本実施の形態に従う通信システムでは、単一のUE100に対して、各々が独立してデータを送受信するコンポーネントキャリアを割り当てる。このようなコンポーネントキャリアの割り当てを採用することで、単一のUE100から他の複数のUE100との間で、それぞれ並列的に通信を行なうことができる。
【0024】
図1に示す例では、BS200−1〜200−3は、それぞれセルエリアC201〜C203をカバーしており、セルエリアC201〜C203の各々において、複数のコンポーネントキャリアが用意されている。すなわち、BS200−1〜200−3の各々は、所定のセルエリアを提供する。そして、これらのコンポーネントキャリアがUE100に対して適宜割り当てられる。
【0025】
なお、周波数帯域が離散的に割り当てられている場合には、それぞれの周波数帯域にコンポーネントキャリアが割り当てられることになる。この場合には、例えば、第1の周波数帯域にあるコンポーネントキャリアと、第2の周波数帯域にあるコンポーネントキャリアとが単一のUE100に割り当てられる場合もある。
【0026】
BS200は、典型的には、発展型基地局(evolved Node B:eNB)や小型の発展型基地局(Home evolved Node B:HeNB)などからなる。
【0027】
MME300は、自局が管理するBS200によって提供するセルエリア内に存在するBS200のコアネットワーク400への接続を仲介するとともに、自局が提供するセルエリア内に存在するBS200のセル内に存在するUE100の位置情報などを管理する。基本的には、MME300には、複数のBS200が接続される。
【0028】
コアネットワーク400には、複数のMME300を介して、多数のBS200が接続されており、広域ネットワークを構成する。なお、LTE方式またはLTE−A方式では、コアネットワーク400は、すべての情報がパケット化されたネットワークとなることが想定されている。
【0029】
<2.概要>
本実施の形態に従う通信システム1は、複数のUE100の間での多者間通信を提供する。図1に示す例では、UE100−1〜UE100−3の間で三者間通信を行なう例を示す。
【0030】
本実施の形態に従う通信システム1では、このような多者間通信を実現する場合には、多者間通信に参加するUE100のうち、2つのUE100の組み合わせのすべての間でコンポーネントキャリアを用いた専用回線を確立する。例えば、図1に示すように、UE1とUE2との間に専用回線1が確立され、UE1とUE3との間に専用回線2が確立され、UE2とUE3との間に専用回線3が確立される。
【0031】
このような状態で、UE1のユーザが発した音声は、専用回線1および専用回線2を介して、それぞれUE2およびUE3へ送信される。専用回線1および専用回線2は互いに独立している。すなわち、UE1は、専用回線1および2を介してそれぞれ独立にUE2およびUE3へデータを送出する。同様に、UE2のユーザが発した音声は、専用回線1および3を介して、それぞれUE2およびUE3へ送信され、UE3のユーザが発した音声は、専用回線3および2を介して、それぞれUE1およびUE2へ送信される。
【0032】
そして、各UEでは、受信した他のUEからの音声を合成して出力する。例えば、UE1は、専用回線1および2を介してそれぞれ独立にUE2およびUE3から受信するデータを合成して出力する。この音声の合成は、典型的には、複数の音声信号を重畳して単一のスピーカに出力するだけで実現でき、音声合成に係る処理の負荷が大きくなることはない。
【0033】
このように、コンポーネントキャリアを用いて、複数のUEのそれぞれの間で専用回線を確立することで、処理負荷の高めることなく多者間通信を実現できる。本実施の形態に従う通信システム1において、n人で多者間通信を行なうためには、=n×(n−1)/2の専用回線が必要となる。このとき、各BS200は、対応するUEに対して、(n−1)回線分のコンポーネントキャリアを割り当てる。
【0034】
なお、専用回線の各々では、双方向通信を可能にする必要がある。このような双方向通信を実現する方法として、上りリンク用および下りリンク用のコンポーネントキャリアをそれぞれ割り当ててもよいし、1つのコンポーネントキャリアを所定周期毎に上りリンク用および下りリンク用に切り換えてもよい。すなわち、1つのコンポーネントキャリアを時分割方式で多重化してもよい。
【0035】
このように、本実施の形態に従う通信システム1では、n人で多者間通信を行なう場合、ユーザ1〜ユーザnが所持するUE1〜UEnの各々に、(n−1)回線分のコンポーネントキャリアを割り当て、各ユーザについて、すべての他のユーザそれぞれとの間にコンポーネットキャリアを用いた専用回線を確立する。なお、このようなユーザ間の専用回線は、MME300を介した経路となる。このように、ユーザ毎にすべての他のユーザとの間に専用回線を確立することで、音声データを集中管理するサーバなどを設置することなく多者間通信を実現できる。このように、サーバを設置せず、かつ、多者間通信に参加するユーザ間の音声データの合成処理なども行なう必要がないので、MME300での処理の負荷を増加させることがない。これによって、MME300での処理による遅延が発生しない。
【0036】
また、キャリアアグリゲーションを用いることで、ユーザ間の専用回線にそれぞれコンポーネントキャリアを割り当てるので、各ユーザ間においては、割り当てられた帯域を占有して通信を行なうことできる。このように、割り当てられた帯域を独占できるため、ユーザ間それぞれの通話に対して、求められるスループットを実現するとともに、端末能力に応じた最適な通信制御を行なうことができる。これによって、無線リソースを有効に利用できる。
【0037】
また、本実施の形態に従う通信システム1においては、ユーザ間に対応する専用回線ごとにコンポーネントキャリアを割り当てることから、多者間通信に参加するユーザの増減(追加または削除)があった場合であっても、コンポーネントキャリアの単位で個別に通信制御できるので、参加者の追加や削除をより柔軟に行なうことができる。
【0038】
<3.装置構成>
次に、図1に示す通信システム1を構成する各装置について説明する。
【0039】
(3−1:無線端末(UE)100の構成)
まず、本実施の形態に従う通信システム1において利用される無線端末100の構成について説明する。図2は、本発明の実施の形態に従う無線端末(UE)100の概略構成を示すブロック図である。
【0040】
図2を参照して、UE100は、キャリアアグリゲーションに対応した無線部として、利用可能なコンポーネントキャリアに相当する数の送受信回路を有する。図2に示す例では、2つのコンポーネントキャリアを利用可能な構成について説明する。すなわち、UE100は、それぞれのコンポーネントキャリアに対応した無線信号の送受信回路が複数実装されている。より具体的には、無線端末100は、無線信号を送信するための送信アンテナ114−1,114−2と、無線信号を受信するための受信アンテナ118−1,118−2とが設けられた筐体150を含む。筐体150は、制御部104と、信号処理部102と、送信部112−1,112−2と、受信部116−1,116−2とを含む。
【0041】
受信アンテナ118−1、受信部116−1、信号処理部102、送信部112−1、および、送信アンテナ114−1が第1番目のコンポーネントキャリアを送受信するための送受信回路に相当し、受信アンテナ118−2、受信部116−2、信号処理部102、送信部112−2、および、送信アンテナ114−2が第2番目のコンポーネントキャリアを送受信するための送受信回路に相当する。
【0042】
信号処理部102は、自装置が存在するセルエリアを管理するBS200との間で遣り取りされる無線信号を処理する。より具体的には、信号処理部102は、制御部104から与えられる内部指令に従って、BS200へ送信すべき情報を送信部112−1,112−2へ出力する。送信部112−1,112−2は、信号処理部102から受けた情報に対して、符号化処理、変調処理およびアップコンバートを行って、その結果得られる無線信号を対応する送信アンテナ114−1,114−2を介して外部へ放射する。また、受信部116−1,116−2は対応する受信アンテナ118−1,118−2を介して受信した無線信号に対して、ダウンコンバート、復調処理および復号処理を行って、その結果得られた情報を信号処理部102へ出力する。
【0043】
制御部104は、主たる構成要素として、プロセッサと、プロセッサで実行されるプログラムを保持するための不揮発性メモリと、ワークメモリとして機能する揮発性メモリとを含む。さらに、制御部104は、多者間通信ロジック105を含む。このロジックは、典型的には、制御部104が予め格納されているプログラムを実行することで提供される。例えば、多者間通信ロジック105に対応するモジュールが予め不揮発性メモリに記憶されており、制御部104がこれらのモジュールを読み出して実行することで多者間通信に係る機能が提供される。
【0044】
本実施の形態に従う多者間通信では、あるユーザが主導者になって、他のユーザに参加を通知する。そのため、多者間通信ロジック105は、(1)参加を通知する機能と、(2)参加を通知される機能とを提供する。いずれの場合も、多者間通信ロジック105は、対応するBS200との無線信号の遣り取りに用いられるコンポーネントキャリアの追加および削除に係る処理を行なう。
【0045】
より具体的には、多者間通信ロジック105は、(1)参加を通知する機能として、ユーザ操作によって指定されたUE100に対して、キャリアアグリゲーションを使った多者間通信であることを示す識別子を追加して通信を開始する機能を有する。このとき、多者間通信ロジック105は、複数のUE100への接続を要求する。
【0046】
また、多者間通信ロジック105は、参加者のUE100に対する発呼と同時に、当該UE100に対して、他の参加者のUE100に対して発呼するように指示する機能をも有する。より具体的には、多者間通信ロジック105は、接続を要求した複数のUE100のうち1つのUE100に対して、残りのUE100への接続を指示する。この機能により、主導者ではない参加者のUE100の間で専用回線が確立される。なお、多者間通信であることを示す識別子が着呼に追加されることで、通常の通信/通話とは処理が区別される。
【0047】
また、多者間通信ロジック105は、(2)参加を通知される機能として、他のUE100から他のUE100に対して発呼するように指示されると、当該指示に従って指定されたUE100に対して自動的に発呼する機能を有する。すなわち、多者間通信ロジック105は、いずれかのUE100への接続の指示に応答して、指示されたUE100への接続を要求する。
【0048】
なお、制御部104によって提供される機能の一部または全部を専用のハードウェア(集積回路)として実装してもよい。この場合には、制御部104によって提供される機能に加えて、信号処理部102、送信部112−1,112−2、および、受信部116−1,116−2によって提供される機能の全部または一部を含めて、1チップ化してもよい。さらに、プロセッサ、メモリ、周辺デバイス用のコントローラといった部品を1チップ化したSoCを利用することもできる。
【0049】
代替の構成として、制御部104、信号処理部102、送信部112−1,112−2、および、受信部116−1,116−2によって提供される機能の全部または一部をソフトウェアとして実装してもよい。この場合には、CPUやDSPといった演算装置(プロセッサ)が予めインストールされた命令セットを実行することになる。
【0050】
筐体150は、さらに、各種情報を表示するための表示部152と、ユーザの音声などを取得するためのマイク154と、受信した音声を再生するためのスピーカ156と、ユーザ操作を受け付けるための入力部158とを含む。
【0051】
表示部152は、多者間通信に参加するユーザ(UE100)に係る情報を表示する。そして、多者間通信の接続中および接続処理中において、参加するユーザ分に係る情報(電話番号、画像、文字情報データなど)を表示する。
【0052】
入力部158は、タッチパッド、十字キー、テンキーなどからなり、多者間通信に参加するユーザ(UE100)の指定を受け付ける。典型的には、ユーザが入力部158を操作して接続先の電話番号を複数選択する。多者間通信に係る専用回線を確立する手順としては、選択された複数のユーザ(UE100)に対して一斉に同時接続するようにしてもよいし、個別に接続するようにしてもよい。また。多者間通信を終了する際にも、一斉に回線を切断してもよいし、個々の回線を順番に切断してもよい。
【0053】
(3−2:基地局(BS)200の構成)
まず、本実施の形態に従う通信システム1において利用されるBS200の構成について説明する。図3は、本発明の実施の形態に従う基地局(BS)200の概略構成を示すブロック図である。
【0054】
図3を参照して、BS200は、基本的には、提供可能なコンポーネントキャリアに相当する数の送受信回路を有する。より具体的には、BS200は、制御部202−1〜202−nと、信号処理部210−1〜210−nと、送信部212−1〜212−nと、送信アンテナ214−1〜214−nと、受信部216−1〜216−nと、受信アンテナ218−1〜218−nとを含む。さらに、BS200は、中央処理部204と、上位ネットワークインターフェイス(I/F)206と、制御インターフェイス(I/F)208とを含む。
【0055】
BS200の送受信回路の各々は、割り当てられたコンポーネントキャリアを用いて、UE100との間でデータ(無線信号)を遣り取りする。すなわち、制御部202−1〜202−nの各々は、中央処理部204から与えられるユーザデータ、制御情報、および管理情報などを対応する信号処理部210−1〜210−nへ出力し、信号処理部210−1〜210−nで復号されたユーザデータなどを中央処理部204へ出力する。
【0056】
信号処理部210−1〜210−nは、対応するコンポーネントキャリアが到達するエリア内に存在するUE100との間で遣り取りされる無線信号を処理する。より具体的には、信号処理部210−1〜210−nは、対応する制御部202−1〜202−nから与えられるユーザデータ、制御情報、および管理情報などを受けて、UE100へ送信すべき情報を対応する送信部212−1〜212−nへ出力する。送信部212−1〜212−nは、対応する信号処理部210−1〜210−nから受けた情報に対して、符号化処理、変調処理およびアップコンバートを行って、その結果得られる無線信号を対応する送信アンテナ214−1〜214−nを介して外部へ放射する。また、受信部216−1〜216−nは、対応する受信アンテナ218−1〜218−nを介して受信した無線信号に対して、ダウンコンバート、復調処理および復号処理を行って、その結果得られた情報を対応する信号処理部210−1〜210−nへ出力する。
【0057】
中央処理部204は、主たる構成要素として、プロセッサと、プロセッサで実行されるプログラムを保持するための不揮発性メモリと、ワークメモリとして機能する揮発性メモリとを含む。さらに、中央処理部204は、多者間通信ロジック205を含む。この多者間通信ロジック205は、典型的には、中央処理部204が予め格納されているプログラムを実行することで提供される。例えば、多者間通信ロジック205に対応するモジュールが予め不揮発性メモリに記憶されており、中央処理部204がこれらのモジュールを読み出して実行することで後述するような機能が提供される。
【0058】
多者間通信ロジック205は、複数のUE100が関与する多者間通信を実現するために、コンポーネントキャリアの割り当てや各種の手続きを実行する。より具体的には、多者間通信ロジック205は、多者間通信であることを示す識別子を含む発呼を受けると、その識別子を含んだまま着呼側のUE100へ発呼を転送する。また、多者間通信ロジック205は、自局の管理するセルエリア内に存在するUE100からの発呼、または、他のBS200の管理するセルエリア内に存在するUE100からの発呼を受けた場合に、その発呼に多者間通信であることを示す識別子が含まれていれば、それぞれの発呼の別に、異なるコンポーネントキャリアを割り当てる。すなわち、多者間通信ロジック205は、自局が提供するセルエリアに存在するUE100からの他の複数のUE100への接続要求に応答して、周波数が互いに異なる複数の接続(コンポーネントキャリア)をそれぞれ確立する。
【0059】
また、多者間通信ロジック205は、自局の管理するセルエリア内に存在するUE100に対して、多者間通信であることを示す識別子を含む発呼が複数あった場合でも、通話中(ビジー)とはならず、いずれの発呼に対しても応答できる機能を提供する。
【0060】
なお、中央処理部204によって提供される機能の一部または全部を専用のハードウェア(集積回路)として実装してもよい。この場合には、中央処理部204によって提供される機能に加えて、制御部202−1〜202−n、信号処理部210−1〜210−n、送信部212−1〜212−n、および、受信部216−1〜216−nによって提供される機能の全部または一部を含めて、1チップ化してもよい。さらに、プロセッサ、メモリ、周辺デバイス用のコントローラといった部品を1チップ化したSoCを利用することもできる。
【0061】
代替の構成として、制御部202−1〜202−n、信号処理部210−1〜210−n、送信部212−1〜212−n、および、受信部216−1〜216−nによって提供される機能の全部または一部をソフトウェアとして実装してもよい。この場合には、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)といった演算装置(プロセッサ)が予めインストールされた命令セットを実行することになる。
【0062】
上位ネットワークインターフェイス206は、自局を管理するMME300との間で、ユーザデータ、制御情報、および管理情報などを遣り取りする。同様に、制御インターフェイス208は、他のBS200との間で制御情報を遣り取りする。
【0063】
<4.専用回線の確立>
次に、図1、図4〜図7を参照して、専用回線の確立処理について説明する。一例として、図1に示すように、ユーザ1〜ユーザ3がそれぞれ所持するUE1〜UE3の間で三者間通信を行なう場合について説明する。UE1〜UE3は、それぞれBS1〜BS3が提供するセルエリアC201〜C203に存在しているとする。すなわち、ユーザ1の所持するUE1は、BS1と無線信号を介して通信可能となっている。同様に、ユーザ2の所持するUE2は、BS2と無線信号を介して通信可能となっており、ユーザ3の所持するUE3は、BS3と無線信号を介して通信可能となっている。もちろん、同一のBS200に多者間通信に参加する複数のUE100が存在していてもよい。
【0064】
まず、多者間通信を開始するには、あるユーザが主導者になって、他のユーザに対して参加を通知する。
【0065】
図4は、本発明の実施の形態に従う通信システム1で用いられるUE100が提供するユーザインターフェイスの一例である。図4(A)に示すように、UE100の表示部152には、多者間通信への参加を通知可能なユーザが一覧表示される。ユーザは、UE100の入力部158を操作して、多者間通信に参加すべきユーザを選択する。表示部152には、4人のユーザ(Aさん、Bさん、Cさん、Dさん)が表示されており、図4(B)に示すように、UE1のユーザが2人のユーザ(AさんおよびBさん)を選択したとする。なお、AさんがUE2を所持するユーザ2であり、BさんがUE3を所持するユーザ3であるとする。そして、図4(C)に示すように、ユーザが「発信」を押下すると、UE1は、UE2およびUE3に対して並列的に発呼する。このとき、UE1は、UE2に対して、発呼とともに「UE3への発呼」を指示するパラメータを送信する。すなわち、UE1の主導によって、専用回線1および2を確立するとともに、UE1から指示を受けたUE2が専用回線3を確立する。
【0066】
図5は、図1に対応するコンポーネントキャリアの割り当て例を示す模式図であり、図6は、図5に示すコンポーネントキャリアの割り当てに係る処理を示すシーケンス図であり、図7は、図5に示すコンポーネントキャリアを用いたUE間の専用回線を示す模式図である。
【0067】
図5および図6を参照して、ユーザが多者間通信に参加するユーザを選択する(シーケンスSQ2)と、UE1は、UE2およびUE3へ発呼する(シーケンスSQ10)。すなわち、第1の無線端末であるUE1が、第2および第3の無線端末であるUE2およびUE3への接続を要求する。
【0068】
UE1からUE2およびUE3への発呼に応答して、UE1が存在するセルエリアを提供するBS1は、UE1とUE2との間の通信に対して、コンポーネントキャリア1Aを割り当てるとともに、UE1とUE3との間の通信に対して、コンポーネントキャリア1Bを割り当てる(シーケンスSQ12)。そして、UE1は、コンポーネントキャリア1Aを用いてBS1との間でUE2に関する無線通信を開始し、コンポーネントキャリア1Bを用いてBS1との間でUE3に関する無線通信を開始する。すなわち、第1の無線端末であるUE1に対応する基地局(BS1)が、UE1とUE2との通信に関連付けられた第1の接続(コンポーネントキャリア1A)と、UE1とUE3との通信に関連付けられた第1の接続(コンポーネントキャリア1A)とは異なる周波数の第2の接続(コンポーネントキャリア1B)とを確立する。
【0069】
このとき、BS1は、コンポーネントキャリア1Aおよび1Bのそれぞれにおいて要求されているスループット、および、UE1の能力に応じて、変調方式やMIMO(Multiple Input Multiple Output)方式などを制御する。
【0070】
このUE1からUE2への発呼には、UE2からUE3への発呼を指示するパラメータが含まれている。すなわち、UE1は、UE2に対してUE3への接続を指示する。
【0071】
続いて、BS1は、モバイルマネージメント装置(MME)300を介して、ユーザ2が所持するUE2が存在するセルエリアを提供するBS2に対して、UE1からUE2への発呼およびUE2からUE3への発呼を指示するパラメータを送信する(シーケンスSQ14)。また、BS1は、MME300を介して、ユーザ3が所持するUE3が存在するセルエリアを提供するBS3に対して、UE1からUE3への発呼を送信する(シーケンスSQ14)。この発呼には、キャリアアグリゲーションを使った多者間通信であることを示す識別子が含まれている。
【0072】
BS2は、MME300を介して、UE1からの多者間通信であることを示す識別子が含まれる着呼を受信すると、当該着呼をUE2へ送信する(シーケンスSQ20)。このとき、BS2は、この着呼を送信するためにコンポーネントキャリア2AをUE2に対して割り当てる(シーケンスSQ16)。BS2は、UE1とUE2との間の専用回線に含まれるコンポーネントキャリア1Aのスループットに適合するように、コンポーネントキャリア2Aの変調方式やMIMO方式などを制御する(シーケンスSQ18)。すなわち、UE1に対応するBS1とUE2に対応するBS2とは、コンポーネントキャリア1Aとコンポーネントキャリア2Aとの間で伝送性能が実質的に一致するように制御する。これにより、UE1とUE2との間の専用回線の伝送品質を均一化させる。そのため、BS1とBS2との間でネゴシエーションして、それぞれが割り当てたコンポーネントキャリアを最適化する。
【0073】
具体的な一例として、ユーザ2が所持するUE2に割り当てられたコンポーネントキャリア2Aのスペックや電波環境が、対応するコンポーネントキャリア1Aにおけるスループットを満たさない状況であれば、BS2は、通信レートを落としてコンポーネントキャリア1Aに割り当てるリソースを少なくするようにBS1に通知する。あるいは、BS1は、コンポーネントキャリア1Aのスループットを落とすように変調方式やMIMO方式を制御するよう通知する。BS1は、BS2からの通知に応答して、コンポーネントキャリア2Aによって実現できるスループットを超えないように、コンポーネントキャリア1Aに割り当てるリソースや、変調方式などを変更する。
【0074】
そして、ユーザ2がUE2を操作して、ユーザ1(UE1)からの発呼に応答することで、ユーザ1(UE1)とユーザ2(UE2)との間の専用回線が確立される。
【0075】
同様に、BS3は、MME300を介して、UE1からの多者間通信であることを示す識別子が含まれる着呼を受信すると、当該着呼をUE3へ送信する(シーケンスSQ30)。このとき、BS3は、この着呼を送信するためにコンポーネントキャリア3AをUE3に対して割り当てる(シーケンスSQ26)。上述と同様に、BS1およびBS3は、UE1とUE3との間の専用回線に含まれるコンポーネントキャリア1Bおよび3Aのそれぞれのスループットが互いに同等になるように、対応するコンポーネントキャリアの変調方式やMIMO方式などを制御する(シーケンスSQ30)。
【0076】
そして、ユーザ3がUE3を操作して、ユーザ1(UE1)からの発呼に応答することで、ユーザ1(UE1)とユーザ3(UE3)との間の専用回線が確立される。
【0077】
また、UE2は、UE1から「ユーザ3への発呼」を指示するパラメータを受信すると、キャリアアグリゲーションを使った多者間通信であることを示す識別子を追加した発呼をUE3へ自動的に送信する(シーケンスSQ40)。すなわち、UE2は、UE1からの指示に応答して、UE3への接続を要求する。
【0078】
UE2からUE3への発呼に応答して、UE2が存在するセルエリアを提供するBS2は、UE2とUE3との間の通信に対して、コンポーネントキャリア2Bを割り当てる。そして、UE2は、コンポーネントキャリア2Bを用いてBS2との間でUE3に関する無線通信を開始する。すなわち、UE2に対応するBS2は、UE2とUE1との通信に関連付けられた接続(コンポーネントキャリア2A)とは異なる周波数の、UE2とUE3との通信に関連付けられた接続(コンポーネントキャリア2B)を確立する。
【0079】
続いて、BS2は、MME300を介して、ユーザ3が所持するUE3が存在するセルエリアを提供するBS3に対して、UE2からUE3への発呼を送信する。この発呼には、キャリアアグリゲーションを使った多者間通信であることを示す識別子が含まれている。UE2からUE3への発呼に応答して、UE2が存在するセルエリアを提供するBS2は、UE2とUE3との間の通信に対して、コンポーネントキャリア2Bを割り当てる(シーケンスSQ42)。そして、UE2は、コンポーネントキャリア2Bを用いてBS2との間でUE3に関する無線通信を開始する。
【0080】
続いて、BS2は、300を介して、ユーザ3が所持するUE3が存在するセルエリアを提供するBS3に対して、UE2からUE3への発呼を送信する(シーケンスSQ44)。この発呼には、キャリアアグリゲーションを使った多者間通信であることを示す識別子が含まれている。
【0081】
BS3は、MME300を介して、UE2からの多者間通信であることを示す識別子が含まれる着呼を受信すると、当該着呼をUE3へ送信する(シーケンスSQ50)。このとき、BS3は、この着呼を送信するためにコンポーネントキャリア3BをUE3に対して割り当てる(シーケンスSQ46)。すなわち、UE3に対応するBS3は、UE3とUE1との通信に関連付けられた接続(コンポーネントキャリア3A)と、UE3とUE2との通信に関連付けられた、コンポーネントキャリア3Aとは異なる周波数の接続(コンポーネントキャリア3B)とを確立する。
【0082】
上述と同様に、BS2およびBS3は、UE2とUE3との間の専用回線に含まれるコンポーネントキャリア2Bおよび3Bのそれぞれのスループットが互いに同等になるように、対応するコンポーネントキャリアの変調方式やMIMO方式などを制御する(シーケンスSQ48)。
【0083】
そして、ユーザ3がUE3を操作して、ユーザ2(UE2)からの発呼に応答することで、ユーザ2(UE2)とユーザ3(UE3)との間の専用回線が確立される。
【0084】
図5に示すような三者での多者間通信を行なう場合に、専用回線が確立されたあとのUEと割り当てられたコンポーネントキャリアとの関係は、図7に示すようになる。多者間通信に参加するユーザがn人になった場合も、同様に、各ユーザに対してそれぞれ(n−1)個のコンポーネントキャリアを割り当て、他のすべてのユーザとの間にそれぞれ専用回線を確立することができる。
【0085】
<5.専用回線の確立の手続き(その1)>
次に、より多くの参加者が関与する多者間通信において、それぞれのユーザ間にキャリアアグリゲーションを使った専用回線を確立するための手続きについて説明する。以下に説明する多者間通信におけるUE100間の専用回線については、すべてのUE100の間でコンポーネントキャリアを割り当てることで確立されるものとする。また、BS200は、自局が管理するセルエリア内に存在するUE100から、多者間通信であることを示す識別子を含む発呼を受信すると、発呼先の別のそれぞれ異なるコンポーネントキャリアを割り当てることで、キャリアアグリゲーションを使った専用回線を確立する。
【0086】
一例として、ユーザ1〜ユーザ4(UE1〜UE4)の関与する四者間通信を行なう場合について説明する。この場合、ユーザ1が所持するUE1は、UE2、UE3、UE4の順番でシーケンシャルに発呼する。そして、UE2には、UE3およびUE4のうちUE1と接続できたものに対して発呼させるように指示する。これにより、主導者であるUE1以外のUE同士の接続を確立する。
【0087】
図8は、本発明の実施の形態に従う通信システム1における四者間通信を行なう場合の手順を示す模式図である。図8を参照して、UE1は、UE2、UE3、UE4の順番でシーケンシャルに発呼する。このとき、UE1が存在するセルエリアを提供するBSは、UE1から多者間通信であることを示す識別子を含む発呼を受けると、UE2、UE3、UE4に対するそれぞれの発呼について、互いに異なるコンポーネントキャリアを割り当てて、キャリアアグリゲーションを用いた専用回線を確立する。
【0088】
UE1は、UE3およびUE4からの応答の有無に応じて、UE2に対して、発呼を指示する。例えば、UE3およびUE4のいずれからも応答があれば、UE1は、UE2に対して、UE3およびUE4へそれぞれ発呼することを指示する。UE1から発呼の指示を受けたUE2は、UE1からの発呼への応答に続いて、指示されたUEに対して発呼する。このとき、UE2は、指示された発呼先のUEのうち任意の1台に対して、それ以外のUEに対する発呼指示についても送信する。この発呼の指示には、対象のUEの電話番号などが含まれる。このように、他のUEから発呼の指示を受けたUEは、さらに別のUEへの発呼を繰り返す。最終的に指示された発呼先が1つになれば、指定された複数のUEの間で必要な数の専用回線を確立することができる。
【0089】
図9および図10は、図8に示す多者間通信に係る接続を確立するための手続きを示す主導者となるUEにおけるフローチャートである。図11は、図8に示す多者間通信に係る接続を確立するための手続きを示す主導者以外のUEにおけるフローチャートである。なお、図9〜図11に示すフローチャートにおいて、UE1を所持するユーザ1が主導者になって、多者間通信を開始するものとする。
【0090】
(5.1:主導者となるUEにおける処理手順)
図9および図10を参照して、ユーザ1が自身の所持するUE1を操作して、多者間通信を行なうことを指定するとともに、それに参加するユーザ2〜4が所持するUE2〜UE4を選択する(ステップS102)。このユーザの選択方法としては、対応するUEの電話番号を入力するなどして行なう。
【0091】
すると、ユーザ1の所持するUE1は、選択されたUE2〜UE4に対して発呼する順番を決定し、最初の発呼先として決定された1つのUEに対して、発呼する(ステップS104)。この発呼する順番の決定方法としては、例えば、主導者であるユーザが他のユーザを選択するための電話番号を入力した順番などに応じて決定する方法が考えられる。ここでは、最初にUE2へ発呼する例を示す。
【0092】
このとき、UE1からUE2への発呼には、多者間通信であることを示す識別子が付加されている。また、ユーザ2〜4が必ずしも通話可能な状態であるとは限らないので、以下のような手続きにしたがって、順次通信を確立していく。
【0093】
UE1は、UE2への発呼後、UE2から応答があるか否かを判断する(ステップS110)。UE2からの応答があった場合(ステップS110においてYESの場合)には、UE1は、UE2との接続を確立する(ステップS112)。すなわち、UE1が存在するセルに対応するBSおよびUE2が存在するセルに対応するBSは、UE1とUE2との間で専用回線を確立するためのコンポーネントキャリアをUE1およびUE2にそれぞれ割り当てる。
【0094】
続いて、UE1は、次の順番に対応するUEに対して、発呼する。この例では、UE1は、次の発呼先であるUE3に対して、発呼する(ステップS114)。このUE1からUE3への発呼にも、多者間通信であることを示す識別子が付加されている。
【0095】
UE1は、UE3への発呼後、UE3から応答があるか否かを判断する(ステップS120)。UE3からの応答があった場合(ステップS120においてYESの場合)には、UE1は、UE3との接続を確立する(ステップS122)。すなわち、UE1が存在するセルに対応するBSおよびUE3が存在するセルに対応するBSは、UE1とUE3との間で専用回線を確立するためのコンポーネントキャリアをUE1およびUE3にそれぞれ割り当てる。
【0096】
続いて、UE1は、次の順番に対応するUEに対して、発呼する。この例では、UE1は、次の発呼先であるUE4に対して、発呼する(ステップS124)。このUE1からUE4への発呼にも、多者間通信であることを示す識別子が付加されている。
【0097】
UE1は、UE4への発呼後、UE4から応答があるか否かを判断する(ステップS130)。UE4からの応答があった場合(ステップS130においてYESの場合)には、UE1は、UE4との接続を確立する(ステップS132)。すなわち、UE1が存在するセルに対応するBSおよびUE4が存在するセルに対応するBSは、UE1とUE4との間で専用回線を確立するためのコンポーネントキャリアをUE1およびUE4にそれぞれ割り当てる。
【0098】
この場合には、UE1は、選択されたUE2〜UE4のすべてに接続可能であると判断する。続いて、UE1は、UE3およびUE4のそれぞれの識別情報(電話番号)をUE2へ通知するとともに、UE3およびUE4への発呼をUE2に指示する(ステップS134)。そして、UE1は、UE2,UE3,UE4のそれぞれとの間の通話を開始する(ステップS136)。
【0099】
さらに、UE1は、UE2,UE3,UE4と通話を開始した後も、新たなユーザからの応答を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS190)。
【0100】
これに対して、UE4からの応答がなかった場合(ステップS130においてNOの場合)には、UE1は、選択されたUE2〜UE4のうち、UE2およびUE3に接続可能であり、UE4には接続不可能であると判断する。続いて、UE1は、UE3の識別情報(電話番号)をUE2へ通知するとともに、UE3への発呼をUE2に指示する(ステップS138)。そして、UE1は、UE2およびUE3のそれぞれとの間の通話を開始する(ステップS140)。さらに、UE1は、新たなユーザからの応答を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS190)。
【0101】
また、UE3からの応答がなかった場合(ステップS120においてNOの場合)には、UE1は、UE3には接続不可能であると判断する。そして、UE1は、次の発呼先であるUE4に対して、発呼する(ステップS126)。
【0102】
続いて、UE1は、UE4への発呼後、UE4から応答があるか否かを判断する(ステップS150)。UE4からの応答があった場合(ステップS150においてYESの場合)には、UE1は、UE4との接続を確立する(ステップS152)。
【0103】
この場合には、UE1は、選択されたUE2〜UE4のうち、UE2およびUE4に接続可能であり、UE3には接続不可能であると判断する。続いて、UE1は、UE4の識別情報(電話番号)をUE2へ通知するとともに、UE4への発呼をUE2に指示する(ステップS154)。そして、UE1は、UE2およびUE4のそれぞれとの間の通話を開始する(ステップS156)。さらに、UE1は、新たなユーザからの応答を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS190)。
【0104】
これに対して、UE4からの応答がなかった場合(ステップS150においてNOの場合)には、UE1は、選択されたUE2〜UE4のうち、UE2のみが接続可能であると判断する。そして、UE1は、UE2との間の通話を開始する(ステップS158)。さらに、UE1は、新たなユーザからの応答を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS190)。
【0105】
また、UE2からの応答がなかった場合(ステップS110においてNOの場合)には、UE1は、UE2には接続不可能であると判断する。そして、UE1は、次の発呼先であるUE3に対して、発呼する(ステップS116)。
【0106】
続いて、UE1は、UE3への発呼後、UE3から応答があるか否かを判断する(ステップS160)。UE3からの応答があった場合(ステップS160においてYESの場合)には、UE1は、UE3との接続を確立する(ステップS162)。すなわち、UE1が存在するセルに対応するBSおよびUE3が存在するセルに対応するBSは、UE1とUE3との間で専用回線を確立するためのコンポーネントキャリアをUE1およびUE3にそれぞれ割り当てる。そして、UE1は、次の発呼先であるUE4に対して、発呼する(ステップS164)。
【0107】
続いて、UE1は、UE4への発呼後、UE4から応答があるか否かを判断する(ステップS170)。UE4からの応答があった場合(ステップS170においてYESの場合)には、UE1は、UE4との接続を確立する(ステップS172)。
【0108】
この場合には、UE1は、選択されたUE2〜UE4のうち、UE3およびUE4に接続可能であり、UE2には接続不可能であると判断する。続いて、UE1は、UE4の識別情報(電話番号)をUE3へ通知するとともに、UE4への発呼をUE3に指示する(ステップS174)。そして、UE1は、UE3およびUE4のそれぞれとの間の通話を開始する(ステップS176)。さらに、UE1は、新たなユーザからの応答を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS190)。
【0109】
これに対して、UE4からの応答がなかった場合(ステップS170においてNOの場合)には、UE1は、選択されたUE2〜UE4のうち、UE3のみが接続可能であると判断する。そして、UE1は、UE3との間の通話を開始する(ステップS178)。さらに、UE1は、新たなユーザからの応答を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS190)。
【0110】
また、UE3からの応答がなかった場合(ステップS160においてNOの場合)には、UE1は、UE3にも接続不可能であると判断する。そして、UE1は、次の発呼先であるUE4に対して、発呼する(ステップS166)。
【0111】
続いて、UE1は、UE4への発呼後、UE4から応答があるか否かを判断する(ステップS180)。UE4からの応答があった場合(ステップS180においてYESの場合)には、UE1は、UE4との接続を確立する(ステップS182)。このとき、UE1は、選択されたUE2〜UE4のうち、UE4のみが接続可能であると判断する。そして、UE1は、UE4との間の通話を開始する(ステップS184)。さらに、UE1は、新たなユーザからの応答を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS190)。
【0112】
これに対して、UE4からの応答がなかった場合(ステップS180においてNOの場合)には、UE1は、選択されたUE2〜UE4のうち、いずれのUEとも接続不可能であると判断する。そして、UE1は、回線を切断する(ステップS186)。
【0113】
上述したように、UE1は、UE2に対して、複数のUE(UE3およびUE4)への接続を指示する場合がある。このとき、UE1は、UE3およびUE4への接続の要求に応答して、UE3およびUE4からの応答があるか否かを判断し、UE3およびUE4からの応答があったことを条件に、UE2に対してUE3およびUE4への接続を指示する。そのため、UE1がUE2〜UE4への接続を要求する際には、UE2への接続を要求し、UE2からの応答があった後に、UE3およびUE4への接続を要求する。
【0114】
(5.2:主導者ではないUEにおける処理手順)
図11を参照して、主導者ではないUEは、他のUEから着呼を受信したか否かを判断する(ステップS200)。着呼を受信していない場合(ステップS200においてNOの場合)には、ステップS200の処理を繰り返す。
【0115】
着呼を受信した場合(ステップS200においてYESの場合)には、UEは、受信した着呼に多者間通信であることを示す識別子が含まれているか否かを判断する(ステップS202)。
【0116】
受信した着呼に多者間通信であることを示す識別子が含まれていない場合(ステップS202においてNOの場合)、UEは、受信した着呼に対して応答手続きを実行し、着呼の発信元のUEとの間で1対1通信を確立する(ステップS206)。そして、発信元のUEとの間で通話を開始する。
【0117】
受信した着呼に多者間通信であることを示す識別子が含まれている場合(ステップS202においてYESの場合)、UEは、受信した着呼に対して応答手続きを実行し、着呼の発信元のUEとの間で多者間通信としての接続を確立する(ステップS208)。そして、発信元のUEとの間で通話を開始する。続いて、UEは、受信した着呼に他のUEへの発呼の指示が含まれているか否かを判断する(ステップS210)。
【0118】
受信した着呼に他のUEへの発呼の指示が含まれていない場合(ステップS210においてNOの場合)、UEは、新たなユーザからの着呼を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS212)。
【0119】
受信した着呼に他のUEへの発呼の指示が含まれている場合(ステップS210においてYESの場合)、UEは、指示された発呼先が複数であるかを判断する(ステップS214)。
【0120】
指示された発呼先が1つである場合(ステップS214においてNOの場合)には、UE1は、指示された発呼先に対して発呼する(ステップS216)。その後、UEは、発呼先のUEからの応答を待って、発呼先との接続を確立する(ステップS218)。そして、UEは、発呼先のUEとの間の通話を開始する。上述したように、発呼先として指示されるUEは、いずれも主導者に対応するUE1によって接続可能と判断されている。そのため、基本的には、発呼先のUEからは応答が得られる。さらに、UEは、新たなユーザからの着呼を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS212)。
【0121】
これに対して、指示された発呼先が複数である場合(ステップS214においてYESの場合)には、UE1は、指示された複数の発呼先に対して一斉に発呼する(ステップS220)。続いて、UEは、指示された複数の発呼先のうち任意の1つのUEに対して、指示された発呼先のうち当該UE以外の他のUEの識別情報(電話番号)を通知するとともに、当該他のUEへの発呼を当該任意の1つのUEに指示する(ステップS222)。
【0122】
上述したように、本実施の形態に従う通信システムでは、多者間通信に参加する複数のUEのうち、任意の2つのUEの組み合わせのすべての間で専用回線を確立する必要がある。このステップS222の処理は、多者間通信に参加するUEの間で階層的に発呼を繰り返すための処理である。この処理が多者間通信に参加するUEの数に応じて順次実行されることで、すべてのUEの組み合わせについて専用回線が確立される。
【0123】
また、発呼先として指示されるUEは、いずれも主導者に対応するUE1によって接続可能と判断されているので、基本的には、この専用回線を確立する処理が途中で途切れることはない。
【0124】
その後、UEは、発呼先であるそれぞれのUEからの応答を待って、発呼先との接続をそれぞれ確立する(ステップS224)。そして、UEは、発呼先のUEとの間の通話を開始する。さらに、UEは、新たなユーザからの着呼を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS212)。
【0125】
主導者に対応するUEとそれ以外のUEとがそれぞれ上述したような処理を行なうことで、多者間通信を実現できる。
【0126】
このような手順によって、n人のユーザが参加するn者間通信における各UE間の専用回線の確立については、以下のように一般化できる。すなわち、ユーザiに対応するUEi(1≦i≦n)は、ユーザ(i+1)〜ユーザnに対応するUE(i+1)〜UEnに対してそれぞれ発呼する。この発呼と同時に、UEiは、UE(i+2)〜UEnへ発呼するように、UE(i+1)に対して指示する。この処理を、i=1〜n−1まで繰り返し行なうことで、各UE間の専用回線を確立できる。
【0127】
<6.専用回線の確立の手続き(その2)>
上述した専用回線の確立の手続きにおいては、主導者となるUEが参加者となる複数のUEに対して順次接続を試みる方法を採用した例を示した。この例では、優先順位の高いUEに対して、他のUEへの接続を指示するという処理を順次繰り返す。この方法では、接続を指示すべきUEが予め定まっているので、処理を簡素化できるという利点があるが、一方で、接続を指示したUEからの応答が得られなければ、それ以降の手続きの処理が中断してしまう可能性がある。
【0128】
そこで、多者間通信に参加する複数のユーザ(UE)に対して一斉に発呼するとともに、応答の早かった順に接続処理を順次行なっていく方法を採用してもよい。この方法によれば、各UEの状況に応じて、専用回線を接続する手順を動的に変更していくことができる。
【0129】
より具体的には、主導者であるUEが複数のUEに対して一斉に発呼し、そのうち最も早く応答したUEに対して、他のUEへの発呼の指示を与える。UE1がUE2〜UE4への接続を要求する場合に、UE2〜UE4への接続を一斉に要求する。例えば、上述したような四者間通信の場合、主導者であるUE1は、UE2、UE3、UE4に対して一斉に発呼する。UE1が存在するセルエリアを提供するBSは、UE1から多者間通信であることを示す識別子を含む発呼を受けると、UE2、UE3、UE4に対するそれぞれの発呼について、互いに異なるコンポーネントキャリアを割り当てて、キャリアアグリゲーションを用いた専用回線を確立する。
【0130】
UE1は、一斉に発呼したUE2、UE3、UE4のうち、UE1に対して最も早く応答したのがUE3であれば、UE3の応答を確認したのち、多者間通信に参加する他のすべてのUEのそれぞれの識別情報(電話番号)をUE3へ通知する。UE3は、多者間通信に参加する他のすべてのUEのうち、自端末との間に専用回線が確立されていないすべてのUE(この例では、UE2およびUE4)に対して発呼する。
【0131】
このような一連の操作を順次繰り返すことで、UE間の専用回線を確立する。
すなわち、UE3から一斉に発呼したUE2およびUE4のうち、UE3に対して最も早く応答したのがUE2であれば、UE3は、通話に参加する他のすべてのUEのそれぞれの識別情報(電話番号)をUE2へ通知する。UE2は、多者間通信に参加する他のすべてのUEのうち、自端末との間に専用回線が確立されていないすべてのUE(この例では、UE4)に対して発呼する。
【0132】
このような手続きによって、すべてのユーザ(UE)間に専用回線が確立される。
図12は、応答の早かった順に接続処理を順次行なっていく処理において主導者となるUEにおけるフローチャートである。図13は、応答の早かった順に接続処理を順次行なっていく処理において主導者以外のUEにおけるフローチャートである。なお、図9〜図11に示すフローチャートにおいて、UE1を所持するユーザ1が主導者になって、多者間通信を開始するものとする。
【0133】
(6.1:主導者となるUEにおける処理手順)
図12を参照して、ユーザ1が自身の所持するUE1を操作して、多者間通信を行なうことを指定するとともに、それに参加するユーザ2〜4の所持するUE2〜UE4を選択する(ステップS302)。このユーザの選択方法としては、対応するUEの電話番号を入力するなどして行なう。
【0134】
ユーザ1の所持するUE1は、選択されたUE2〜UE4に対して一斉に発呼する(ステップS304)。このとき、UE1からUE2〜UE4への発呼のそれぞれの信号には、多者間通信であることを示す識別子が付加されている。
【0135】
UE1は、UE2〜UE4への一斉発呼後、いずれかのUEから応答があるか否かを判断する(ステップS306)。いずれかのUEから応答があった場合(ステップS306においてYESの場合)には、UE1は、いずれのUEがもっとも早く発呼に応答したかを判断する(ステップS308)。
【0136】
UE2がもっとも早く発呼に応答した場合(ステップS308において「UE2」の場合)には、UE1は、UE2との接続を確立する(ステップS310)。すなわち、UE1が存在するセルに対応するBSおよびUE2が存在するセルに対応するBSは、UE1とUE2との間で専用回線を確立するためのコンポーネントキャリアをUE1およびUE2にそれぞれ割り当てる。
【0137】
続いて、UE1は、多者間通信について選択された複数のUEのうち、最も早く発呼に応答したUEを除く残りのUE(この例では、UE3およびUE4)それぞれの識別情報(電話番号)をUE2へ通知するとともに、それらのUE(UE3およびUE4)への発呼をUE2に指示する(ステップS312)。
【0138】
さらに、UE1は、UE2に引き続いて発呼に応答した他のUEとの接続を順次確立する(ステップS314)。そして、UE1は、接続を確立したUEのそれぞれとの間で通話を開始する(ステップS316)。
【0139】
その後、UE1は、いずれかのUEと通話を開始した後も、新たなユーザからの応答を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS318)。
【0140】
UE3がもっとも早く発呼に応答した場合(ステップS308において「UE3」の場合)には、UE1は、UE3との接続を確立する(ステップS320)。すなわち、UE1が存在するセルに対応するBSおよびUE3が存在するセルに対応するBSは、UE1とUE3との間で専用回線を確立するためのコンポーネントキャリアをUE1およびUE3にそれぞれ割り当てる。
【0141】
続いて、UE1は、多者間通信について選択された複数のUEのうち、最も早く発呼に応答したUEを除く残りのUE(この例では、UE2およびUE4)それぞれの識別情報(電話番号)をUE3へ通知するとともに、それらのUE(UE2およびUE4)への発呼をUE3に指示する(ステップS322)。
【0142】
さらに、UE1は、UE3に引き続いて発呼に応答した他のUEとの接続を順次確立する(ステップS324)。そして、UE1は、接続を確立したUEのそれぞれとの間で通話を開始する(ステップS326)。
【0143】
その後、UE1は、いずれかのUEと通話を開始した後も、新たなユーザからの応答を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS318)。
【0144】
UE4がもっとも早く発呼に応答した場合(ステップS308において「UE4」の場合)には、UE1は、UE4との接続を確立する(ステップS330)。すなわち、UE1が存在するセルに対応するBSおよびUE4が存在するセルに対応するBSは、UE1とUE4との間で専用回線を確立するためのコンポーネントキャリアをUE1およびUE4にそれぞれ割り当てる。
【0145】
続いて、UE1は、多者間通信について選択された複数のUEのうち、最も早く発呼に応答したUEを除く残りのUE(この例では、UE2およびUE3)それぞれの識別情報(電話番号)をUE4へ通知するとともに、それらのUE(UE2およびUE3)への発呼をUE4に指示する(ステップS332)。
【0146】
さらに、UE1は、UE4に引き続いて発呼に応答した他のUEとの接続を順次確立する(ステップS334)。そして、UE1は、接続を確立したUEのそれぞれとの間で通話を開始する(ステップS336)。
【0147】
その後、UE1は、いずれかのUEと通話を開始した後も、新たなユーザからの応答を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS318)。
【0148】
一方、いずれのUEからも応答がなかった場合(ステップS306においてNOの場合)には、UE1は、選択されたUE2〜UE4のうち、いずれのUEとも接続不可能であると判断する。そして、UE1は、回線を切断する(ステップS340)。
【0149】
(6.2:主導者ではないUEにおける処理手順)
図13を参照して、主導者ではないUE(この例では、UE2とする)は、他のUEから着呼を受信したか否かを判断する(ステップS400)。着呼を受信していない場合(ステップS400においてNOの場合)には、ステップS400の処理を繰り返す。
【0150】
着呼を受信した場合(ステップS400においてYESの場合)には、UE2は、受信した着呼に多者間通信であることを示す識別子が含まれているか否かを判断する(ステップS402)。
【0151】
受信した着呼に多者間通信であることを示す識別子が含まれていない場合(ステップS402においてNOの場合)、UE2は、受信した着呼に対して応答手続きを実行し、着呼の発信元のUEとの間で1対1通信を確立する(ステップS406)。そして、発信元のUEとの間で通話を開始する。
【0152】
受信した着呼に多者間通信であることを示す識別子が含まれている場合(ステップS402においてYESの場合)、UE2は、受信した着呼に対して応答手続きを実行し、着呼の発信元のUEとの間で多者間通信としての接続を確立する(ステップS408)。そして、発信元のUEとの間で通話を開始する。続いて、UE2は、受信した着呼に他のUEへの発呼の指示が含まれているか否かを判断する(ステップS410)。
【0153】
受信した着呼に他のUEへの発呼の指示が含まれていない場合(ステップS410においてNOの場合)、UE2は、新たなユーザからの着呼を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS412)。
【0154】
受信した着呼に他のUEへの発呼の指示が含まれている場合(ステップS410においてYESの場合)、UE2は、発呼を指示されたすべてのUE(この例では、UE3およびUE4)に対して一斉に発呼する(ステップS414)。この発呼にかかるそれぞれの信号にも、多者間通信であることを示す識別子が付加されている。
【0155】
UE2は、一斉発呼後、いずれかのUEから応答があるか否かを判断する(ステップS416)。いずれかのUEから応答があった場合(ステップS416においてYESの場合)には、UE2は、いずれのUEがもっとも早く発呼に応答したかを判断する(ステップS418)。
【0156】
UE3がもっとも早く発呼に応答した場合(ステップS418において「UE3」の場合)には、UE2は、UE3との接続を確立する(ステップS420)。すなわち、UE2が存在するセルに対応するBSおよびUE3が存在するセルに対応するBSは、UE2とUE3との間で専用回線を確立するためのコンポーネントキャリアをUE2およびUE3にそれぞれ割り当てる。
【0157】
続いて、UE2は、多者間通信について選択された複数のUEのうち、最も早く発呼に応答したUEを除く残りのUE(この例では、UE4)の識別情報(電話番号)をUE3へ通知するとともに、それらのUE(UE4)への発呼をUE3に指示する(ステップS422)。
【0158】
さらに、UE2は、UE3に引き続いて発呼に応答した他のUEとの接続を順次確立する(ステップS424)。そして、UE2は、接続を確立したUEのそれぞれとの間で通話を開始する(ステップS426)。
【0159】
その後、UE2は、新たなユーザからの着呼を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS412)。
【0160】
これに対して、UE4がもっとも早く発呼に応答した場合(ステップS418において「UE4」の場合)には、UE2は、UE4との接続を確立する(ステップS430)。すなわち、UE2が存在するセルに対応するBSおよびUE4が存在するセルに対応するBSは、UE2とUE4との間で専用回線を確立するためのコンポーネントキャリアをUE2およびUE4にそれぞれ割り当てる。
【0161】
続いて、UE2は、多者間通信について選択された複数のUEのうち、最も早く発呼に応答したUEを除く残りのUE(この例では、UE3)の識別情報(電話番号)をUE4へ通知するとともに、それらのUE(UE3)への発呼をUE4に指示する(ステップS432)。
【0162】
さらに、UE2は、UE4に引き続いて発呼に応答した他のUEとの接続を順次確立する(ステップS434)。そして、UE2は、接続を確立したUEのそれぞれとの間で通話を開始する(ステップS436)。
【0163】
その後、UE2は、新たなユーザからの着呼を受け付けられるように、他のUEからの着呼待ちの状態を維持する(ステップS412)。
【0164】
一方、いずれかのUEからも応答がなかった場合(ステップS416においてNOの場合)には、上述の処理はスキップされ、ステップS412の処理が実行される。
【0165】
<7.変形例>
上述の実施の形態においては、主として、UE100およびBS200が多者間通信に係る回線の確立処理を実行する例を示したが、MME300がこれらの処理の少なくとも一部を実行するようにしてもよい。さらに、多者間通信に係る接続処理を実行するための別の主体を設けてもよい。
【0166】
このように、本実施の形態に従う多者間通信に係る処理を実行する主体としては、通信システムのいずれかに存在すればよく、その実装形態は、システム規模、システムの階層構成、ネットワーク構成、他のシステムの連携形態などの種々の状況に応じて、適宜設計できる。
【0167】
<8.利点>
上述したように、本実施の形態に従う通信システムでは、多者間通信を行なう場合、各ユーザ(無線端末)間のそれぞれに対して専用回線を確立することで、サーバを設置することなく、多者間通信をほぼ遅延なくリアルタイムに実現できる。このように、キャリアアグリゲーションを用いてコンポーネントキャリアを割り当てることでユーザ間にそれぞれ最適な通信制御を選択することができる。
【0168】
このように、サーバを設置せず、かつ、多者間通信に参加するユーザ間の音声データの合成処理なども行なう必要がないので、MMEでの処理の負荷を増加させることがない。これによって、MMEでの処理による遅延が発生しない。
【0169】
上述したようなキャリアアグリゲーションを用いることにより、複数の帯域にわたってリソースブロックを割り当てることができる。
【0170】
また、キャリアアグリゲーションを用いることで、ユーザ間の専用回線にそれぞれコンポーネントキャリアを割り当てるので、各ユーザ間においては、割り当てられた帯域を占有して通信を行なうことできる。このように、割り当てられた帯域を独占できるため、ユーザ間それぞれの通話に対して、求められるスループットを実現するとともに、端末能力に応じた最適な通信制御(変調方式やMIMO方式)を行なうことができる。これによって、無線リソースを有効に利用できる。
【0171】
また、本実施の形態に従う通信システムにおいては、ユーザ間に対応する専用回線ごとにコンポーネントキャリアを割り当てることから、多者間通信に参加するユーザの増減(追加または削除)があった場合であっても、コンポーネントキャリアの単位で個別に通信制御できるので、参加者の追加や削除をより柔軟に行なうことができる。
【0172】
<9.その他の局面>
本発明のある局面に従う通信方法は、以下のようないくつかの好ましい形態を含む。
【0173】
好ましくは、第1の無線端末は、第1および第2の接続を介してそれぞれ独立に第2および第3の無線端末へデータを送出し、第1および第2の接続を介してそれぞれ独立に第2および第3の無線端末から受信するデータを合成して出力する。
【0174】
好ましくは、通信方法は、第3の無線端末に対応する基地局が、第3の無線端末と第1の無線端末との通信に関連付けられた第5の接続と、第3の無線端末と第2の無線端末との通信に関連付けられた第5の接続とは異なる周波数の第6の接続とを確立するステップをさらに含む。
【0175】
好ましくは、通信方法は、第1の無線端末に対応する基地局と第2の無線端末に対応する基地局とが、第1の接続と第3の接続との間で伝送性能が実質的に一致するように制御するステップをさらに含む。
【0176】
好ましくは、通信方法は、第1の無線端末が、第3の無線端末への接続の要求に対して、第3の無線端末からの応答があるか否かを判断するステップをさらに含み、第2の無線端末に対して第3の無線端末への接続を指示するステップは、第3の無線端末からの応答があったことを条件に実行される。
【0177】
好ましくは、第2の無線端末に対して第3の無線端末への接続を指示するステップは、複数の第3の無線端末への接続を指示するステップを含む。
【0178】
好ましくは、第1の無線端末が第2および第3の無線端末への接続を要求するステップは、第2の無線端末への接続を要求するステップと、第2の無線端末からの応答があった後に、第3の無線端末への接続を要求するステップとを含む。
【0179】
好ましくは、第1の無線端末が第2および第3の無線端末への接続を要求するステップは、第2および第3の無線端末への接続を一斉に要求するステップを含む。
【0180】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0181】
1 通信システム、100 無線端末(UE)、102,210 信号処理部、104,202 制御部、105,205 者間通信ロジック、112,212 送信部、114,214 送信アンテナ、116,216 受信部、118,218 受信アンテナ、150 筐体、152 表示部、154 マイク、156 スピーカ、158 入力部、200 基地局(BS)、204 中央処理部、206 上位ネットワークインターフェイス、208 制御インターフェイス、300 モバイルマネージメント装置(MME)、400 コアネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線端末の間で多者間通信を行なうための通信方法であって、
第1の無線端末が、第2および第3の無線端末への接続を要求するステップと、
前記第1の無線端末に対応する基地局が、前記第1の無線端末と前記第2の無線端末との通信に関連付けられた第1の接続と、前記第1の無線端末と前記第3の無線端末との通信に関連付けられた前記第1の接続とは異なる周波数の第2の接続とを確立するステップと、
前記第1の無線端末が、前記第2の無線端末に対して前記第3の無線端末への接続を指示するステップと、
前記第2の無線端末が、前記第1の無線端末からの指示に応答して、前記第3の無線端末への接続を要求するステップと、
前記第2の無線端末に対応する基地局が、前記第2の無線端末と前記第1の無線端末との通信に関連付けられた第3の接続と、前記第2の無線端末と前記第3の無線端末との通信に関連付けられた前記第3の接続とは異なる周波数の第4の接続を確立するステップとを備える、通信方法。
【請求項2】
多者間通信を行なう通信システムであって、
複数の無線端末と、
所定のセルエリアを提供する複数の基地局とを備え、
前記無線端末は、
複数の無線端末への接続を要求する手段と、
前記接続を要求した複数の無線端末のうち1つの無線端末に対して、残りの無線端末への接続を指示する手段と、
いずれかの無線端末への接続の指示に応答して、指示された無線端末への接続を要求する手段とを含み、
前記基地局は、
前記基地局が提供するセルエリアに存在する無線端末からの複数の無線端末への接続要求に応答して、周波数が互いに異なる複数の接続をそれぞれ確立する手段を含む、通信システム。
【請求項3】
多者間通信が可能な無線端末であって、
他の複数の無線端末への接続を要求する手段を備え、前記無線端末が存在するセルエリアを提供する基地局は前記複数の無線端末への接続要求に応答して、周波数が互いに異なる複数の接続をそれぞれ確立し、
前記接続を要求した複数の無線端末のうち1つの無線端末に対して、残りの無線端末への接続を指示する手段と、
いずれかの無線端末への接続の指示に応答して、指示された無線端末への接続を要求する手段とを備える、無線端末。
【請求項4】
多者間通信が可能な基地局であって、
提供するセルエリアに存在する無線端末からの複数の無線端末への接続要求に応答して、周波数が互いに異なる複数の接続をそれぞれ確立する手段を含む、基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−26889(P2013−26889A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160862(P2011−160862)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】