説明

通信測定装置

【課題】ユーザーが必要とするアラームおよびエラーの測定項目の測定データのみを的確に取り込むことができ、伝送品質や伝送特性などをより正確に効率よく測定できる通信測定装置を提供すること。
【解決手段】測定対象に試験用信号を出力する信号発生手段と、測定対象から試験用信号に対応して出力される応答信号と前記試験用信号に基づいて解析結果として前記測定対象のアラームデータおよびエラーデータを出力する測定解析手段と、これらアラームデータおよびエラーデータをそれぞれログファイルとして格納する解析結果格納手段を有する通信測定装置において、前記ログファイルとして格納するアラームデータおよびエラーデータの格納条件を設定入力する格納条件設定入力手段と、設定入力された格納条件を格納する格納条件管理手段、を設けたことを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信測定装置に関し、詳しくは、高速大容量デジタル通信網における測定データの管理に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高速大容量デジタル通信網の拡大普及に伴い、伝送品質や伝送特性などをより正確に効率よく測定できる通信測定装置として、たとえば非特許文献1や非特許文献2に記載されているような通信測定装置が実用化されている。
【0003】
図5は、従来の通信測定装置の一例を示すブロック図である。図5において、通信測定装置10から伝送装置などの測定対象(DUT)20に対して試験目的に応じた所定の試験用信号が出力され、測定対象20から通信測定装置10に対して試験用信号に対応した応答信号が出力される。通信測定装置10は、これら試験用信号および応答信号に基づいて、測定対象20の伝送品質や伝送特性などを測定する。
【0004】
通信測定装置10において、信号発生部11は、試験目的に応じた試験用信号として所定のパルスパターン信号を測定対象20に出力する。測定対象20は、パルスパターン信号に対応した応答信号を測定解析部12に入力する。
【0005】
測定解析部12は、信号発生部11から入力される試験用信号と測定対象20から入力される応答信号に基づいて測定データを生成する測定データ生成部12aと、測定データの解析結果としてたとえばアラームデータとエラーデータを出力する測定データ解析部12bとで構成されていて、これらの解析結果を解析結果処理格納部13に入力する。
【0006】
解析結果処理格納部13は、アラームデータについてはアラームデータ処理部13aで処理を行って処理結果をテキスト化されたログファイルとしてアラームデータ格納部13cに格納し、エラーデータについてはエラーデータ処理部13bで処理を行って処理結果をテキスト化されたログファイルとしてエラーデータ格納部13dに格納する。
【0007】
ログファイルとして保存対象となる測定データの項目は、たとえば非特許文献1や非特許文献2に記載されている装置では、アラームについては約300項目、エラーは約100項目存在する。
【0008】
測定中にアラームやエラーが発生すると、それらのアラームやエラーの該当する項目の全測定データがアラームデータ処理部13aおよびエラーデータ処理部13bで処理抽出され、抽出された測定データはそれぞれテキスト化されたログファイルとしてアラームデータ格納部13cおよびエラーデータ格納部13dに格納される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】柳澤 幸樹、外3名、「40 Gbit/s次世代光IPトランスポートアナライザNX4000」、横河技報、横河電機株式会社、2007年10月22日、Vol.51 No.4(2007) p.33−36
【非特許文献2】大利 賢治、外3名、「40 GbpsトランスポートアナライザNX4000の測定アプリケーション」、横河技報、横河電機株式会社、2008年7月25日、Vol.52 No.3(2008) p.13−16
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来の装置では、アラームおよびエラーの全項目を対象としてそれらの測定データをログファイルとしてアラームデータ格納部13cおよびエラーデータ格納部13dに格納するように構成されているので、アラームやエラーが発生すると、アラームデータ格納部13cおよびエラーデータ格納部13dには膨大な量の測定データが格納されることになる。
【0011】
すなわち、アラームやエラーが発生すると、ユーザーにとっては重要視しないような不要な測定項目もログファイルとして格納されることになる。したがって、ユーザーは、特に重要視する測定項目やチェックしたい測定項目をログファイル内から探し出さなければならず、相当の工数が必要になる。
【0012】
また、アラームデータ格納部13cおよびエラーデータ格納部13dには、最大量の測定データを格納するための領域を確保しておかなければならない。たとえば、従来の装置では、1ファイルあたり100Kバイトのファイルをアラームとエラーを合わせて最大500個が格納できるように構成されている。
【0013】
本発明は、このような課題を解決するもので、その目的は、ユーザーが必要とするアラームおよびエラーの測定項目の測定データのみを的確に取り込むことができ、伝送品質や伝送特性などをより正確に効率よく測定できる通信測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
測定対象に試験用信号を出力する信号発生手段と、測定対象から試験用信号に対応して出力される応答信号と前記試験用信号に基づいて解析結果として前記測定対象のアラームデータおよびエラーデータを出力する測定解析手段と、これらアラームデータおよびエラーデータをそれぞれログファイルとして格納する解析結果格納手段を有する通信測定装置において、
前記ログファイルとして格納するアラームデータおよびエラーデータの格納条件を設定入力する格納条件設定入力手段と、
設定入力された格納条件を格納する格納条件管理手段、
を設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の通信測定装置において、
前記格納条件設定入力手段はGUI画面であることを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明は、
請求項1または請求項2記載の通信測定装置において、
前記格納条件は、アラームデータおよびエラーデータの項目と各項目のデータ数を個別に設定する閾値を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
これらにより、ユーザーが必要とするアラームおよびエラーの測定項目の測定データのみを取り込むことができ、伝送品質や伝送特性などをより正確に効率よく測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】格納条件設定部14による設定入力動作の流れを説明するフローチャートである。
【図3】アラームデータ格納条件管理部15aに設定入力されたアラームデータ格納条件に基づくファイル保存の処理の流れを説明するフローチャートである。
【図4】エラーデータ格納条件管理部15bに設定入力されたエラーデータ格納条件に基づくファイル保存の処理の流れを説明するフローチャートである。
【図5】従来の通信測定装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、図5と共通する部分には同一の符号を付けている。図1と図5の相違点は、図1には、格納条件設定部14と、格納条件管理部15と、解析結果処理格納部13にアラームデータ格納制御部13eとエラーデータ格納制御部13fが設けられていることである。
【0020】
格納条件設定部14は、たとえばGUIの表示画面上から操作入力できるように構成されていて、測定開始から測定終了までの測定中に発生するアラームやエラーについて、ログファイルとしてアラームデータ格納部13cに格納すべきアラーム項目とアラーム項目別に格納すべきアラーム数の閾値と、ログファイルとしてエラーデータ格納部13dに格納すべきエラー項目とエラー項目別に格納すべきエラー数の閾値を、格納条件管理部15のアラームデータ格納条件管理部15aとエラーデータ格納条件管理部15bにそれぞれ設定入力する。
【0021】
たとえば前述の非特許文献1や非特許文献2に記載されている装置に適用する場合には、アラームについての約300項目とエラーについての約100項目の中からユーザーが注目する項目を選択して設定入力するとともに、それらの各項目について格納すべきアラームやエラーの数を閾値として0〜200まで1刻みで設定入力する。
【0022】
アラームデータ格納条件管理部15aに設定入力されたアラーム項目とアラーム項目別に格納すべきアラーム数の閾値はアラームデータ格納制御部13eに転送コピーされ、エラーデータ格納条件管理部15bに設定入力されたエラー項目とエラー項目別に格納すべきエラー数の閾値はエラーデータ格納制御部13fに転送コピーされる。
【0023】
アラームデータ格納条件管理部15aは、アラームデータ処理部13aから処理出力されるアラームデータの中から、アラームデータ格納条件管理部15aから転送コピーされたアラーム項目に該当するものを選択してアラームデータ格納部13cに格納するとともに、アラームデータ格納条件管理部15aから転送コピーされたアラーム項目別に格納すべきアラーム数の閾値に基づき、アラームデータ格納部13cに格納されるアラーム項目別のアラーム数を制限管理する。
【0024】
エラーデータ格納条件管理部15bは、エラーデータ処理部13bから処理出力されるエラーデータの中から、エラーデータ格納条件管理部15bから転送コピーされたエラー項目に該当するものを選択してエラーデータ格納部13dに格納するとともに、エラーデータ格納条件管理部15bから転送コピーされたエラー項目別に格納すべきエラー数の閾値に基づき、エラーデータ格納部13dに格納されるエラー項目別のエラー数を制限管理する。
【0025】
図2は、格納条件設定部14による設定入力動作の流れを説明するフローチャートである。
【0026】
はじめに、全アラーム項目に対する格納の要否情報をたとえばON/OFFでアラームデータ格納条件管理部15aに送信する(ステップS1)。
【0027】
続いて、格納したいアラーム項目に対して、格納すべきアラームの最大カウント数を閾値として1刻みでアラームデータ格納条件管理部15aに送信する(ステップS2)。
【0028】
次に、全エラー項目に対する格納の要否情報をたとえばON/OFFでエラーデータ格納条件管理部15bに送信する(ステップS3)。
【0029】
続いて、格納したいエラー項目に対して、格納すべきエラーの最大カウント数を閾値として1刻みでエラーデータ格納条件管理部15bに送信する(ステップS4)。
【0030】
なお、これら一連の設定入力動作は、ユーザーが、たとえばGUI画面に表示される全項目それぞれのON/OFFボタンを選択指定したり、格納したい項目の閾値設定カウンタの設定値を1刻みで加減調整することにより、容易に行える。
【0031】
図3はアラームデータ格納条件管理部15aに設定入力されたアラームデータ格納条件に基づくファイル保存の処理の流れを説明するフローチャート、図4はエラーデータ格納条件管理部15bに設定入力されたエラーデータ格納条件に基づくファイル保存の処理の流れを説明するフローチャートである。なお、以下の説明では、アラームの設定項目数は50(Alarm[50])とし、エラーの設定項目数は20(Error[20])とする。
【0032】
図3において、ファイル保存が開始されると、はじめにアラーム(Alarm)ファイル出力処理に関わる配列インデックス(Index)変数Kを0にする(ステップS1)。
【0033】
次に、解析結果処理格納部13のアラームデータ格納制御部13eは、アラームデータ格納条件管理部15aからアラームデータ格納部13cに格納すべきアラーム項目情報Alarm[K]を取得し、変数レジスタAlmRec[K]に保持する(ステップS2)。
【0034】
続いて、解析結果処理格納部13のアラームデータ格納制御部13eは、測定データ解析部13からアラームデータ格納部13cに格納すべきアラーム項目情報Alarm[K]に該当する測定データ数を表すAlarm[K]カウント数を取得し、変数レジスタAlmCnt[K]に保持する(ステップS3)。
【0035】
次に、解析結果処理格納部13のアラームデータ格納制御部13eは、アラームデータ格納条件管理部15aからアラームデータ格納部13cに格納すべきアラーム項目情報Alarm[K]のカウント数の最大値を表す閾値情報を取得し、変数レジスタAlmThr[K]に保持する(ステップS4)。
【0036】
続いて、変数レジスタAlmRec[K]の情報がONか否かを判断し(ステップS5)、ONであれば変数レジスタAlmCnt[K]の値と変数レジスタAlmThr[K]の値がAlmCnt[K]>AlmThr[K]であるか否かを判断する(ステップS6)。AlmCnt[K]>AlmThr[K]であれば、変数レジスタAlmCnt[K]に格納されているアラームカウント数Alarm[K]が閾値AlmThr[K]よりも大きいので、その変数レジスタAlmCnt[K]に格納されているアラームカウント数Alarm[K]をファイルとして出力する(ステップS7)。
【0037】
その後、アラームの項目数についてK>50か否かを判断し(ステップS8)、K>50であればアラームの全項目について一連の処理が終わったことになるので図4に示すエラー項目の処理に移行する。K>50でなければ、Kを+1して(ステップS9)、K>50になるまでステップS2以降の処理を繰り返して実行する。
【0038】
なお、ステップS5において変数レジスタAlmRec[K]の情報がONでない場合およびステップS6においてAlmCnt[K]>AlmThr[K]でない場合には、ステップS8の処理にジャンプする。
【0039】
図4において、エラー項目の処理を実行するのにあたり、はじめにエラー(Error)ファイル出力処理に関わる配列インデックス(Index)変数Kを0にする(ステップS10)。
【0040】
次に、解析結果処理格納部13のエラーデータ格納制御部13fは、エラーデータ格納条件管理部15bからエラーデータ格納部13dに格納すべきエラー項目情報Error[K]を取得し、変数レジスタErrRec[K]に保持する(ステップS11)。
【0041】
続いて、解析結果処理格納部13のエラーデータ格納制御部13fは、測定データ解析部13からエラーデータ格納部13dに格納すべきエラー項目情報Error[K]に該当する測定データ数を表すError[K]カウント数を取得し、変数レジスタErrCnt[K]に保持する(ステップS12)。
【0042】
次に、解析結果処理格納部13のエラーデータ格納制御部13fは、エラーデータ格納条件管理部15bからエラーデータ格納部13dに格納すべきエラー項目情報Error[K]のカウント数の最大値を表す閾値情報を取得し、変数レジスタErrThr[K]に保持する(ステップS13)。
【0043】
続いて、変数レジスタErrRec[K]の情報がONか否かを判断し(ステップS14)、ONであれば変数レジスタErrCnt[K]の値と変数レジスタErrThr[K]の値がErrCnt[K]>ErrThr[K]であるか否かを判断する(ステップS15)。ErrCnt[K]>ErrThr[K]であれば、変数レジスタErrCnt[K]に格納されているエラーカウント数Error[K]が閾値ErrThr[K]よりも大きいので、その変数レジスタErrCnt[K]に格納されているエラーカウント数Error[K]をファイルとして出力する(ステップS16)。
【0044】
その後、エラーの項目数についてK>20か否かを判断し(ステップS17)、K>20であればエラーの全項目について一連の処理が終わったことになり、一連のファイル保存処理を終了する。K>20でなければ、Kを+1して(ステップS18)、K>20になるまでステップS11以降の処理を繰り返して実行する。
【0045】
なお、ステップS14において変数レジスタErrRec[K]の情報がONでない場合およびステップS15においてErrCnt[K]>ErrThr[K]でない場合には、ステップS17の処理にジャンプする。
【0046】
ユーザーがGUI画面から測定STOPイベントを入力することで測定処理が終了するが、図3および図4に示す一連の処理が実行されるまでは測定終了処理の実行は保留される。このような一連の処理が実行されると、ユーザーにより設定入力されたアラーム項目とエラー項目の測定開始時からの全アラームと全エラーの累積カウント数がアラームデータ格納部13cおよびエラーデータ格納部13dにそれぞれ格納されるが、これら格納された累積カウント数はGUI上に表示されているアラーム数およびエラー数と同期して一致することになる。
【0047】
このように構成することにより、ユーザーが指定した必要な測定結果のみがログファイルとして保存されることになり、ファイルサイズを大幅に小さくできる。
【0048】
また、ユーザーにとって必要な測定結果のみログファイルとして保存することで、ファイル内に不要な測定データが保存されることはなく、効率よく測定作業が行える。
【0049】
さらに、測定データファイルへのアクセス回数を軽減でき、ソフトウェアの処理速度の高速化が図れる。
【0050】
なお、格納条件管理部15に格納する情報を増やすことで、さらにユーザーに使いやすい測定データファイル保存機能を実現できる。たとえば、連続で同じアラームやエラーが発生した場合にはそれらの格納を省略する機能を実装することにより、ファイルの可読性を高めることができる。
【0051】
また、本発明の機能は、必要に応じて、ハードウェアでも実現できるし、ソフトウェアでも実現できる。
【0052】
以上説明したように、本発明によれば、ユーザーが必要とするアラームおよびエラーの測定項目の測定データのみを取り込むことができ、伝送品質や伝送特性などをより正確に効率よく測定できる通信測定装置が実現できる。
【符号の説明】
【0053】
10 通信測定装置
11 信号発生部
12 測定部
13 測定データ解析部
14 解析結果処理格納部
13a アラームデータ処理部
13b エラーデータ処理部
13c アラームデータ格納部
13d エラーデータ格納部
13e アラームデータ格納制御部
13f エラーデータ格納制御部
14 格納条件設定部
15 格納条件管理部
15a アラームデータ格納条件管理部
15b エラーデータ格納条件管理部
20 測定対象(DUT)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に試験用信号を出力する信号発生手段と、測定対象から試験用信号に対応して出力される応答信号と前記試験用信号に基づいて解析結果として前記測定対象のアラームデータおよびエラーデータを出力する測定解析手段と、これらアラームデータおよびエラーデータをそれぞれログファイルとして格納する解析結果格納手段を有する通信測定装置において、
前記ログファイルとして格納するアラームデータおよびエラーデータの格納条件を設定入力する格納条件設定入力手段と、
設定入力された格納条件を格納する格納条件管理手段、
を設けたことを特徴とする通信測定装置。
【請求項2】
前記格納条件設定入力手段はGUI画面であることを特徴とする請求項1記載の通信測定装置。
【請求項3】
前記格納条件は、アラームデータおよびエラーデータの項目と各項目のデータ数を個別に設定する閾値を含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の通信測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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