説明

通信環境に応じたグループ単位の通信デバイスに対するブロードキャスト配信方法及びシステム

【課題】グループ単位の通信デバイスに通信トリガ情報を配信する際に、通信環境に応じてネットワーク輻輳を低減させ、通信デバイスの処理負荷を低減させる方法を提供する。
【解決手段】移動管理設備装置は、ブロードキャスト配信要求を受信し(S31)、位置情報データベースを用いて通信デバイスの端末識別子を検索し(S32)、ポリシ情報記憶部を用いて、複数の通信デバイスを、位置範囲の最大割当数に応じて、サブグループに区分し(S33)、サブグループに属する端末識別子から、サブグループ識別子を生成し(S34)、サブグループ識別子を含む通信トリガ情報を、ブロードキャストで配信する(S35)。通信デバイスは、サブグループ識別子と自らの端末識別子とを比較することによって、通信トリガ情報が当該通信デバイスを対象とするものであるか否かを判定し(S36)、真と判定された際に、基地局に対して通信リンクを確立する(S37)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グループ単位の通信デバイスに対して、メッセージをブロードキャストで配信する技術に関する。通信デバイスは、例えばマシン間通信の対象となる装置であって、ネットワークを介して自動的に通信を開始するような装置である。
【背景技術】
【0002】
マシン間通信の用途として、例えばインフラ設備(電気、ガスや水道など)に基づく検針メータ装置を、「通信デバイス」とする技術がある。この技術によれば、検針メータ装置が、検針情報を、ネットワークを介して自動的に管理サーバへ送信することができる。このような通信は、常に発生しているわけではなく、定期的又は所定(任意)のタイミングで発生させれば十分である場合が多い。そのため、通信を要しない時間帯になると、検針メータ装置は、通信リンク(例えば無線リンク及びIP(Internet Protocol)リンク)を確立させることなく、最低限の消費電力で待機することができる。このとき、通信を要する時間帯になると、管理サーバが、検針メータ装置へ、検針情報等を通知するための通信開始を促すべき通信トリガ情報を送信する。それに応じて、検針メータ装置は、通信リンクを確立させ、検針情報を管理サーバへ送信することができる。
【0003】
ここで、膨大な数の検針メータ装置が広範囲に設置された場合、管理サーバは、ブロードキャストを用いて通信トリガ情報を効率良く配信することができる。一方で、一度に大量の検針メータ装置が、通信リンクを確立させ、管理サーバへ検針情報を送信することとなる。このような通信状況は、無線基地局などで輻輳を発生させるおそれがあると共に、膨大な数の検針情報の通信が、モバイルコアネットワーク及び管理サーバに一時的に高い負荷をかけることとなる。
【0004】
従来、3GPP(3rd Generation Partnership Project)で規定されたセルラ通信によれば、マシン間通信を効率良く実現させるために、通信が必要な時にのみ、「ページング」を用いて通信トリガ情報を送信する技術がある(例えば非特許文献1参照)。セルラ通信によれば、無線端末は、無線リンクが確立していない状態であっても、ペーンジングで用いられるページングチャネルを監視しており、ページングを契機に通信トリガ情報を受信することができる。
【0005】
また、3GPPで規定されたセルラ通信によれば、指定したエリアに在圏する無線端末に対して、同報的にメッセージを送信することができるセル・ブロードキャストサービスの技術がある(例えば非特許文献2参照)。この技術によれば、基地局配下のセル(無線到達範囲)を宛先とし、そのセルに在圏する全ての無線端末に対して、メッセージをブロードキャストで配信することができる。
【0006】
更に、データ配信対象となる多数の無線端末に対して、グループ単位でメッセージをブロードキャストで配信する技術もある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、無線端末やネットワーク設備装置で管理するグループ識別子は、固定的でなく、無線端末の移動によって在圏セルが変化しても、新しいグループ識別子が自動に付与される。これによって、最新のグループ識別子が、無線端末やネットワーク設備装置で管理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−238379号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】3GPP TR 23.888、「System Improvements forMachine-Type Communications」
【非特許文献2】3GPP TS 23.041、「Technical realization ofCell Broadcast Service (CBS)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1に記載された技術によれば、ネットワーク設備装置は、通信デバイスに対して、ページングを用いて通信トリガ情報を通知することができる。しかしながら、宛先の通信デバイスを指定し、その通信デバイスの端末識別子を用いて、端末識別子毎にページング処理を実行する必要がある。即ち、ネットワーク設備装置は、通信デバイスの数だけ、ページング処理を繰り返す必要がある。そのために、多数の通信デバイスに対してページング処理を実行する場合、結果的に、シグナリングの負荷が、無線リソースやモバイルコアネットワークのリソースを消費することとなる。
【0010】
また、非特許文献2に記載された技術によれば、セル・ブロードキャストを用いることによって、そのセルに在圏する多数の通信デバイスに対して、通信トリガ情報を同時に送信することができる。しかしながら、1つのセルの配下に、多数(例えば数百の数)の通信デバイスが在圏する場合、それら全ての通信デバイスが、通信トリガ情報を受信し、通信リンクを確立し、管理サーバへ情報を送信する。そのために、無線基地局やモバイルコアネットワークに対しては、シグナリングによって無線やネットワークのリソースが一度に大量に使用され、且つ、管理サーバに対しても、同時に多数の通信トランザクションが発生することとなる。
【0011】
更に、特許文献1に記載された技術によれば、ブロードキャストでメッセージを配信する無線端末をグループ単位で管理することができるために、一度に通信する通信デバイスの数を抑制することができる。但し、同時に通信する通信デバイスによるネットワークの輻輳を防ぐためには、ネットワークの混雑状況に合わせて動的に同時に通信する数、即ちグループに属する通信デバイスの数、を動的に変更することが望ましい。しかしながら、この技術によれば、通信デバイスの数を、動的に変更することはできない。また、通信デバイスは、必要性に拘わらず、当該通信デバイス自身が属するグループ識別子を常に管理する必要があり、通信デバイスの処理負荷につながる恐れもある。
【0012】
そこで、本発明は、グループ単位の通信デバイスに通信トリガ情報を配信する際に、通信環境に応じてシグナリング負荷やネットワーク輻輳を低減させると共に、通信デバイスの処理負荷を低減させることができるブロードキャスト配信方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、多数の通信デバイスと、基地局を配置した移動通信網を介して通信デバイスを管理する移動管理設備装置とを有するシステムについて、通信トリガ情報をブロードキャストで配信するブロードキャスト配信方法において、
通信デバイスには、端末識別子が付与されており、
移動管理設備装置は、通信デバイスの端末識別子に対応付けて位置情報を蓄積した位置情報データベースと、所定の位置範囲に対する通信デバイスの最大割当数を規定したポリシ情報記憶部とを有し、
移動管理設備装置が、他の外部の装置から、グループ化情報を含むブロードキャスト配信要求を受信する第1のステップと、
移動管理設備装置が、位置情報データベースを用いて、グループ化情報に属する通信デバイスの端末識別子を検索する第2のステップと、
移動管理設備装置が、ポリシ情報記憶部を用いて、検索された複数の通信デバイスを、位置範囲の最大割当数に応じて、サブグループに区分する第3のステップと、
移動管理設備装置が、サブグループに属する複数の通信デバイスの端末識別子から、サブグループ識別子を生成する第4のステップと、
移動管理設備装置が、サブグループ識別子を含む通信トリガ情報を、全ての通信デバイスへブロードキャストで配信する第5のステップと、
通信デバイスが、通信トリガ情報に含まれるサブグループ識別子と、当該通信デバイスの端末識別子とを比較することによって、通信トリガ情報が当該通信デバイスを対象とするものであるか否かを判定する第6のステップと、
通信デバイスは、第6のステップについて真と判定された際に、基地局に対して通信リンクを確立する第7のステップと
を有することを特徴とする。
【0014】
本発明のブロードキャスト配信方法における他の実施形態によれば、
移動管理設備装置は、移動管理装置とブロードキャストセンタとから構成されており、
移動管理装置は、位置情報データベースを有し、
ブロードキャストセンタは、ポリシ情報記憶部を有し、
第1のステップについて、ブロードキャストセンタが、他の外部の装置から、ブロードキャスト配信要求を受信し、移動管理装置へ、ブロードキャスト配信要求に含まれるグループ化情報を含む位置問合せ要求を送信し、
第2のステップについて、移動管理装置が、位置情報データベースを用いて、グループ化情報に属する通信デバイスを検索し、検索された複数の通信デバイスの端末識別子を含む位置問合せ応答を、ブロードキャストセンタへ返信し、
第3のステップについて、ブロードキャストセンタが、ポリシ情報記憶部を用いて、検索された複数の通信デバイスをサブグループに区分し、
第4のステップについて、ブロードキャストセンタが、サブグループ識別子を生成し、サブグループ識別子を含む通信トリガ情報を、移動管理装置へ送信し、
第5のステップについて、移動管理装置が、サブグループ識別子を含む通信トリガ情報を、全ての通信デバイスへブロードキャストで配信することも好ましい。
【0015】
本発明のブロードキャスト配信方法における他の実施形態によれば、
第4のステップについて、移動管理設備装置は、サブグループ識別子をBloom Filterを用いて生成すると共に、
第6のステップについて、通信デバイスは、通信トリガ情報のサブグループ識別子をBloom Filterを用いて判定することも好ましい。
【0016】
本発明のブロードキャスト配信方法における他の実施形態によれば、
ポリシ情報記憶部は、中間ノード装置に対する通信デバイスの最大割当数を更に規定しており、
第3のステップについて、移動管理設備装置は、ポリシ情報記憶部を用いて、検索された複数の通信デバイスの端末識別子を、更に中間ノード装置に対する最大割当数に応じて、サブグループに区分することも好ましい。
【0017】
本発明のブロードキャスト配信方法における他の実施形態によれば、
ポリシ情報記憶部は、サービス事業者のアプリケーションサーバの最大接続数を更に規定しており、
第3のステップについて、移動管理設備装置は、ポリシ情報記憶部を用いて、検索された複数の通信デバイスの端末識別子を、更にアプリケーションサーバに対する最大接続数に応じて、サブグループに区分することも好ましい。
【0018】
本発明のブロードキャスト配信方法における他の実施形態によれば、
ポリシ情報記憶部は、セル単位の混雑度(許容デバイス数に対する実在デバイス数)に応じた接続減数を更に規定しており、
第3のステップについて、移動管理設備装置は、サブグループの端末識別子の数を、ポリシ情報記憶部を用いて、更に混雑度に応じた接続減数だけ減算することも好ましい。
【0019】
本発明のブロードキャスト配信方法における他の実施形態によれば、
第5のステップについて、移動管理設備装置は、サブグループ識別子毎の通信トリガ情報を、所定の配信時間間隔を空けて、全ての通信デバイスへブロードキャストで配信することも好ましい。
【0020】
本発明によれば、多数の通信デバイスと、基地局を配置した移動通信網を介して通信デバイスを管理する移動管理設備装置とを有し、通信トリガ情報をブロードキャストで配信するブロードキャスト配信システムにおいて、
通信デバイスには、端末識別子が付与されており、
移動管理設備装置は、
通信デバイスの端末識別子に対応付けて位置情報を蓄積した位置情報データベースと、
所定の位置範囲に対する通信デバイスの最大割当数を規定したポリシ情報記憶部と、
他の外部の装置から、グループ化情報を含むブロードキャスト配信要求を受信するブロードキャスト配信要求受信手段と、
位置情報データベースを用いて、グループ化情報に属する通信デバイスの端末識別子を検索する通信デバイス検索手段と、
ポリシ情報記憶部を用いて、検索された複数の通信デバイスを、位置範囲の最大割当数に応じて、サブグループに区分するサブグループ生成手段と、
サブグループに属する複数の通信デバイスの端末識別子から、サブグループ識別子を生成するサブグループ識別子生成手段と、
サブグループ識別子を含む通信トリガ情報を、全ての通信デバイスへブロードキャストで配信するブロードキャスト配信手段と
を有し、
通信デバイスは、
通信トリガ情報に含まれるサブグループ識別子と、当該通信デバイスの端末識別子とを比較することによって、通信トリガ情報が当該通信デバイスを対象とするものであるか否かを判定する判定手段と、
判定手段について真と判定された際に、基地局に対して通信リンクを確立する通信リンク確立手段と
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のブロードキャスト配信方法及びシステムによれば、グループ単位の通信デバイスに通信トリガ情報を配信する際に、通信環境に応じてシグナリング負荷やネットワーク輻輳を低減させると共に、通信デバイスの処理負荷を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明における基本的なシステム構成図である。
【図2】本発明における一般的な規模のシステム構成図である。
【図3】本発明におけるシーケンス図である。
【図4】本発明のシステムにおける移動管理設備装置及び通信デバイスの機能構成図である。
【図5】移動管理設備装置を移動管理装置及びブロードキャストセンタに分離した機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明における基本的なシステム構成図である。
【0025】
図1によれば、基地局3配下のセルに、多数の通信デバイス2が在圏している。「セル」は、基地局配下における1つ以上の無線到達範囲をいう。基地局3は、移動管理設備装置1が設置されたモバイルコアネットワーク(移動通信網)に接続されている。通信デバイス2は、起動時又は移動時に、基地局3を介して移動管理設備装置1へ、端末識別子及びその位置情報を登録する。
【0026】
また、図1によれば、モバイルコアネットワークと相互接続するインターネットに、アプリケーションサーバ4が更に接続されている。アプリケーションサーバ4は、通信デバイスを管理するサービス事業者によって運用されるものである。例えば通信デバイスが電気の検針メータ装置である場合、そのアプリケーションサーバ4は、電力事業者によって運用されるものである。
【0027】
図1によれば、移動管理設備装置1は、通信デバイス2の位置情報を管理する移動管理装置(移動管理エンティティ)11と、通信トリガ情報を配信するブロードキャストセンタ(ブロードキャストセンタ)12とから構成されている。ブロードキャストセンタ12は、アプリケーションサーバ4からのブロードキャスト配信要求を受信し、そのブロードキャスト配信要求を移動管理装置11へ送信する。移動管理装置11は、基地局3を介して通信デバイス2へ、通信トリガ情報をブロードキャストで配信する。具体的には、通信トリガ情報は、ページングで配信される。
【0028】
これに対し、通信デバイス2は、受信した通信トリガ情報のページングが、当該通信デバイス自らを配信対象としたものであるか否かを判定する。自らを対象とする通信トリガ情報である場合、その内容情報に応じて通信リンクを確立し、所定の情報をアプリケーションサーバ4へ送信する。
【0029】
尚、以下では、移動管理設備装置1は、移動管理装置11及びブロードキャストセンタ12とから構成されたものとして説明する。
【0030】
図2は、本発明における一般的な規模のシステム構成図である。
【0031】
図2によれば、以下のように通信デバイスが配置されている。
基地局A->セルA1->通信デバイス1〜4
基地局B->セルB1->通信デバイス5〜8
セルB2->通信デバイス9〜12
図2によれば、移動管理装置11が複数の基地局3を管理しており、また、各基地局3も複数のセルを管理している。従って、移動管理装置11が管理すべき通信デバイス2の数は、膨大なものとなる。尚、図2によれば、説明を容易にするために、1つのセルに精々4個の通信デバイスがあるように記載している。しかしながら、現実的には1つのセルに数百個から数千個の通信デバイスが存在することを想定している。
【0032】
図3は、本発明におけるシーケンス図である。
【0033】
(S30)事前の動作として、各通信デバイス2は、起動時及び定期的に、基地局3からセルIDやトラッキングID(複数のセルによるエリア)の位置情報を受信する。そして、通信デバイス2は、その位置情報が、起動時や過去の位置情報と異なる場合、基地局3を介して移動管理装置11へ、端末識別子及び位置情報を登録する。移動管理装置11は、その端末識別子及び位置情報を、位置情報データベースに保持する。
【0034】
本発明によれば、通信デバイス2は、位置登録の処理が終了した後、通信リンク(無線リンクやIPリンク)を切断する。一般に、例えばマシン間通信に用いるような通信デバイスは、消費電力が限られている場合が多い。そのために、通信リンクを切断することによって、余分な電力消費を低減させる。
【0035】
(S31)ブロードキャストセンタ12は、「ブロードキャスト配信要求」を、外部の他の装置(アプリケーションサーバ4)から受信する。ブロードキャスト配信要求は、例えばアプリケーションサーバ4が、多数の通信デバイス2を起動させ、その通信デバイス2から情報を受信したい時に送信される。ここで、アプリケーションサーバ4から送信されるブロードキャスト配信要求には、例えば以下のようなグループ化情報が規定されている。
【0036】
[グループ識別子]
1つのグループ識別子に、グループ化された複数の端末識別子が対応付けられている。
【0037】
[通信トリガの内容情報]
通信トリガ情報を受信した通信デバイス2の動作内容が規定される。動作内容とは、例えば、ある特定のサーバ(例えばアプリケーションサーバ)と通信すべきとするものである。具体的には、宛先サーバのURL(Uniform Resource Locator)又はIPアドレスであってもよい。また、通信デバイス2が起動すべきアプリケーションを特定する内容が、規定されることも好ましい。
【0038】
[配信エリア]
配信エリア(例えば緯度経度によって指定された地理範囲)の情報が規定されてもよい。例えば、複数のセルIDを含むリストや、複数のトラッキングエリアIDを含むリスト、その他オペレータによって決められた地理情報に基づく配信エリアを規定してもよい。これによって、配信エリアに応じてサブグループを構成することができる。
【0039】
[配信緊急度]
配信情報の緊急度が規定されてもよい。例えば、通信トリガ情報に基づく処理が完了するまでの時間に基づくものであってもよい。アプリケーションサーバが、直ぐに所望の通信デバイスと通信したい場合には、例えば「30秒」と規定する。一方で、緊急性がなく、直ぐに通信を所望しない場合には、例えば「10分」や「1時間」と規定する。これによって、配信緊急度に応じてサブグループを構成することができる。
【0040】
[同時通信可能な通信デバイス数]
アプリケーションサーバ4にとって同時通信可能な通信デバイス数を規定してもよい。多数の通信デバイス2に対して通信トリガ情報がブロードキャストで配信されるために、アプリケーションサーバ4に同時に通信が集中するおそれがある。そのために、アプリケーションサーバ4の同時接続可能な通信デバイス数以下で、サブグループを構成することができる。
【0041】
(S32)ブロードキャストセンタ12は、ブロードキャスト配信要求に含まれるグループ化情報に基づいて、移動管理装置11へ、位置問合せ要求を送信する。位置問合せ要求は、前述したグループ化情報における「グループ識別子」「配信エリア」をそのまま含むものであってもよい。尚、複数の移動管理装置11が存在する場合、最初に、契約者情報を管理するHSS(Home Subscriber Server)に問い合わせ、その後、所定の移動管理装置へ位置問合せ要求を送信することも好ましい。グループ化情報に基づく端末識別子を検索する方法としては、様々実施形態が想定され、複数の移動管理装置11に対して、並列に又はシーケンシャルに問い合わせることもできる。
【0042】
移動管理装置11は、位置情報データベースを用いて、位置問合せ要求のグループ化情報に基づく通信デバイスの端末識別子を検索する。位置情報データベースは、通信デバイスの端末識別子に対応付けて位置情報を蓄積したものである。そして、移動管理装置11は、検索された通信デバイスの端末識別子を含む位置問合せ応答を、ブロードキャストセンタ12へ返信する。位置問合せ応答には、セルID毎に在圏する通信デバイスの端末識別子のリストが含まれる。
図1の構成によれば、セルIDに対応付けて、以下の通信デバイスの端末識別子が含まれる。
位置問合せ応答 <- セルA1:通信デバイス1,2,3,4
また、図2の構成によれば、セルIDに対応付けて、以下の通信デバイスの端末識別子が含まれる。
位置問合せ応答 <- セルA1:通信デバイス1,2,3,4
セルB1:通信デバイス5,6,7,8
セルB2:通信デバイス9,10,11,12
【0043】
他の実施形態として、位置問合せ応答に、セルID毎の混雑度(許容デバイス数に対する実在デバイス数)が含まれるものであってもよい。また、位置問合せ応答に、セルID毎の全ての通信デバイス数(配信対象以外の通信デバイス数の含む)が含まれるものであってもよい。これによって、混雑度を考慮して、サブグループを構成することができる。
【0044】
(S33)ブロードキャストセンタ12は、位置情報に対する通信デバイスの最大割当数を規定したポリシ情報記憶部を有する。ブロードキャストセンタ12は、ポリシ情報記憶部を用いて、検索された(グループに属する)複数の通信デバイスの端末識別子を、サブグループに区分する。例えば、以下のようなポリシを設定することができる。
【0045】
[ポリシ1]セル単位で、通信デバイスの最大割当数を規定する。具体的に、セル単位で最大2個の通信デバイスを割り当てることができるとする。
図1の構成によれば、以下のようにサブグループを構成する。
サブグループ1->デバイス1,2
サブグループ2->デバイス3,4
また、図2の構成によれば、以下のようにサブグループを構成する。
サブグループ1->デバイス1,2 5,6 9,10
サブグループ2->デバイス3,4 7,8 11,12
【0046】
[ポリシ2]ネットワークにおける中間ノード装置(基地局や中継装置)の最大割当数を規定する。具体的に、セル単位で最大2個の通信デバイスを割り当て、基地局単位で最大2個の通信デバイスを割り当てることができるとする。
図2の構成によれば、以下のようにサブグループを構成する。
サブグループ1->デバイス1,2 5,6
サブグループ2->デバイス3,4 7,8
サブグループ3->デバイス9,10
サブグループ4->デバイス11,12
【0047】
具体的に、セル単位で最大4個の通信デバイスを割り当て、基地局単位で最大4個の通信デバイスを割り当てることができるとする。
図2の構成によれば、以下のようにサブグループを構成する。
サブグループ1->デバイス1,2 3,4
サブグループ2->デバイス5,6 7,8
サブグループ3->デバイス9,10 11,12
尚、ポリシ2は、ポリシ1に加えて規定することも好ましい。
【0048】
[ポリシ3]サービス事業者のアプリケーションサーバの最大接続数を規定する。
具体的に、セル単位で最大4個の通信デバイスを割り当て、アプリケーションサーバの接続数が最大6個の通信デバイスを接続されることができるとする。
図2の構成によれば、以下のようにサブグループを構成する。
サブグループ1->デバイス1,2 3,4 5,6
サブグループ2->デバイス7,8 9,10 11,12
尚、ポリシ3は、ポリシ1又は2に加えて規定することも好ましい。
【0049】
[ポリシ4]ポリシ1に加えて、セル単位で、混雑度に応じた最大割当数を規定する。例えば、混雑度が所定閾値以上となった場合には、ポリシ1で決定されたてセル単位の最大割当数を減数することができる。具体的に、ポリシ1によってセル単位で最大2個の通信デバイスを割り当てることができる場合、ポリシ4によって最大1個に減数することができる。
【0050】
(S34)移動管理装置11は、サブグループに属する複数の通信デバイスの端末識別子から、サブグループ識別子を生成する。サブグループ識別子の生成には、具体的に「Bloom Filter」を用いる。これによって、通信デバイスは、自らの端末識別子のみを用いて、そのサブグループ識別子が、当該通信デバイスを配信対象としているか否かを判定することができる。
【0051】
「Bloom Filter」とは、空間効率のよいデータ構造であって、ある要素がグループのメンバーに属するか否かを判定するビットマッチング方式である。この方式によれば、グループに含まれていれば必ず判定できる(偽陰性(False Negative)はない)。また、稀にではあるが、グループに含まれていない要素もグループに含まれていると判定してしまう(偽陽性(False Positive)による誤検出の可能性はある)。しかしながら、メモリ量及び処理負荷を十分小さくできる上、シグナリング負荷やネットワーク輻輳を抑えるためには、判定誤りによる誤差は、十分許容することができる。
【0052】
Bloom Filterによれば、aビットのビット配列を用意し、b個のハッシュ関数を定義する。それぞれのハッシュ関数が与えられた入力である端末識別子を、aからなる配列位置のいずれかにマッピングするものとする。最初は、全て"0"のaビットのビット配列を用意する。要素として端末識別子を追加するときには、それをb個のハッシュ関数に入力し、b個の配列インデックスを作る。そして、それらの示す位置のビット列を、全て"1"とする。サブグループに属する通信デバイスの端末識別子について、これら処理を繰り返し、作成されたaビットのビット配列をサブグループ識別子とすればよい。
【0053】
具体例として、a=8ビット及びb=2個について説明する。初期値に0をセットした8ビットの配列00000000と、2個のハッシュ関数として2ビットチェックサム及び8ビットチェックサムとを用意する。そして、例えば端末識別子01及び04を含むサブグループ識別子は、以下のように算出される。
端末ID=01 (2ビットチェックサム) 00000001
(8ビットチェックサム) 00000001
端末ID=04 (2ビットチェックサム) 00000001
(8ビットチェックサム) 00000100
--------
論理和00000101 <-サブグループ識別子
【0054】
そして、ブロードキャストセンタ12は、ブロードキャスト配信要求を、移動管理装置11へ送信する。このブロードキャスト配信要求には、サブグループ識別子と、通信トリガ情報の内容情報とが含まれる。尚、ブロードキャストセンタ12は、配信すべき基地局3を既に認識している場合、その基地局3へ直接的に、サブグループ識別子を含む通信トリガ情報を送信するものであってもよい。
【0055】
(S35)移動管理装置11は、サブグループ識別子を含む通信トリガ情報を、全ての通信デバイスへブロードキャストで送信する。通信トリガ情報は、モバイルコアネットワークを介して1つ以上の基地局3へ転送される。そして、各基地局3は、その配下のセルへ、その通信トリガ情報をブロードキャストで配信する。通信トリガ情報は、具体的にはページングとして送信されることが好ましい。
【0056】
尚、移動管理装置11は、サブグループ識別子毎の通信トリガ情報をそれぞれ、所定の配信時間間隔を空けて配信することも好ましい。これによって、シグナリング負荷やネットワーク輻輳を低減させることができる。ここで、所定の配信時間間隔は、配信緊急度の時間を、サブグループの端末識別子の数で除算した時間であってもよい。
【0057】
また、移動管理装置11は、配信緊急度が高いサブグループ識別子の通信トリガ情報を、優先的に送信することも好ましい。また、配信緊急度に基づく時間を、サブグループの数で割った値が短くなる通信トリガ情報を、優先的に送信することも好ましい。
【0058】
(S36)通信デバイス2は、通信トリガ情報を基地局3を介して受信する。ここで、通信デバイス2は、セルラ通信の機能として、通信リンクを切断した状態にあっても、基地局から送信されるページングや位置情報を受信することはできる。ページングには、配信対象を表すサブグループ識別子が含まれる。通信デバイス2は、当該ページングのサブグループ識別子と、当該通信デバイスの端末識別子とを比較することによって、当該通信トリガ情報が当該通信デバイスを宛先するものであるか否かを判定する。
【0059】
通信デバイス2について、自らの端末識別子がサブグループに含まれているかを判定する際に、自らの端末識別子をb個のハッシュ関数に入力し、b個の配列インデックスを得る。得られた配列インデックスで"1"となった全てのビット群が、サブグループ識別子でも"1"である場合、サブグループに含まれると判定する。一方で、1つでも"1"ではない場合、サブグループに含まれないと判定する。
【0060】
例えば、前述した端末識別子01及び04の通信デバイスについて、サブグループ識別子である00000101は、ハッシュ関数で出力されるビット配列で1となった全てのビット列がサブグループ識別子でも全て1となるため、サブグループに含まれると判定される。
サブグループ識別子-> 論理和00000101
--------
端末ID=01 (2ビットチェックサム) 00000001
(8ビットチェックサム) 00000001
端末ID=01は、サブグループ識別子に含まれる。

サブグループ識別子-> 論理和00000101
--------
端末ID=04 (2ビットチェックサム) 00000001
(8ビットチェックサム) 00000100
端末ID=04は、サブグループ識別子に含まれる。

サブグループ識別子-> 論理和00000101
--------
端末ID=03 (2ビットチェックサム) 00000011
(8ビットチェックサム) 00000011
端末ID=03は、サブグループ識別子に含まれない。
端末識別子03の通信デバイスの場合、ビット列の7番目についてサブグループ識別子と異なるために、サブグループに含まれないと判定される。
【0061】
このようなBloom Filterを用いたサブグループ識別子によれば、グループに属する全ての端末識別子のリストを持つよりも、極めて少ないメモリ量及び処理量となる。また、通信デバイス2については、予めサブグループ識別子を保持する必要もなく、自身がサブグループに含まれるかを容易に判定することができる。これにより、通信デバイスに、予めサブグループ識別子を配布する必要もない。
【0062】
(S37)通信デバイス2は、S36について真と判定された際に、通信トリガ情報の処理内容を解析する。そして、通信デバイス2は、通信トリガの発生と認識し、基地局3に対して通信リンク(無線リンク及びIPリンク)を確立する。これによって、通信デバイス2は、通信リンクが確立していない状態であっても、少ない消費電力で、通信トリガを認識することができる。
【0063】
そして、通信デバイス2は、通信トリガ情報の処理内容に、アプリケーションサーバ4への情報の送信が記述されている場合、そのように動作する。例えば、通信デバイス2が検針メータ装置である場合、電力事業者のアプリケーションサーバ4へ、検針情報を自動的に送信する。
【0064】
他の実施形態として、オプション的に、通信トリガ情報の処理内容に、位置登録の処理を実行するべく記述されていることも好ましい。これによって、通信デバイス2は、通信トリガ情報を受信した際に、移動管理装置11に対して位置登録のシーケンスを実行し、端末識別子(又はサブグループ識別子)を移動管理装置11へ送信する。これによって、移動管理装置11は、通信デバイス2へ向けて送信した通信トリガ情報が、その通信デバイス2で受信されたことを確認することができる。最終的に、移動管理装置11は、配信対象の全ての通信デバイス2から位置登録を受け付けることによって、ブロードキャストセンタ12へブロードキャスト配信応答を返信することができる。
【0065】
また、ブロードキャストセンタ12は、ブロードキャスト配信応答を受信することによって、次のサブグループ識別子を含むブロードキャスト配信要求を、移動管理装置11へ送信することも好ましい。これによって、1つのブロードキャスト配信要求に関する処理が完全に終了するまで、次のブロードキャスト配信要求が送信されない。これによって、シグナリング負荷やネットワーク輻輳を抑制したブロードキャストの配信が可能となる。
【0066】
最終的に、S35へ戻り、全てのサブグループ識別子の通信トリガ情報を送信するまで繰り返される。
【0067】
尚、ブロードキャストセンタ12は、サブグループ識別子と、それに対応付けられた端末識別子とを、一時的に所定期間だけ記憶しておくことも好ましい。ブロードキャストセンタ12が、再度、同様の通信デバイスを配信対象としたブロードキャスト配信要求を受信した場合、通信デバイスの位置情報に変更がなければ、移動管理装置11へ位置情報を問い合わせることなく、直ぐにブロードキャスト配信要求を移動管理装置11へ送信することができる(S35)。
【0068】
また、ブロードキャストセンタ12は、サブグループ識別子を含むブロードキャスト配信要求を送信する際に、サブグループ識別子の有効期間も通知するものであってもよい。移動管理装置11は、通信トリガ情報に、その有効期間も含めて配信する。通信デバイス2は、その有効期限の間はサブグループ識別子をそのまま配信対象の判定に利用することできる。
【0069】
図4は、本発明のシステムにおける移動管理設備装置及び通信デバイスの機能構成図である。
【0070】
移動管理設備装置1は、位置情報データベース101と、ポリシ情報記憶部102と、ブロードキャスト配信要求受信部103と、通信デバイス検索部104と、サブグループ生成部105と、サブグループ識別子生成部106と、ブロードキャスト配信部107とを有する。これら機能構成部は、移動管理設備装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現できる。尚、図4によれば、移動管理装置11及びブロードキャストセンタ12の機能を一体的に、1つの移動管理設備装置1として表している。
【0071】
位置情報データベース101は、通信デバイスの端末識別子に対応付けて位置情報を蓄積する。
【0072】
ポリシ情報記憶部102は、所定の位置範囲に対する通信デバイスの最大割当数を規定する(前述した図3に基づくS33参照)。
【0073】
ブロードキャスト配信要求受信部103は、他の外部の装置から、グループ化情報を含むブロードキャスト配信要求を受信する(前述した図3のS31と同様)。グループ化情報としては、グループ識別子及び通信トリガの内容情報に限られず、配信エリア、配信緊急度、同時通信可能な通信デバイス数を含むことも好ましい。そのグループ化情報は、通信デバイス検索部104へ出力される。
【0074】
通信デバイス検索部104は、位置情報データベース101を用いて、グループ化情報に属する複数の通信デバイスの端末識別子を検索する(前述した図3のS32と同様)。検索された端末識別子は、サブグループ生成部105へ出力される。
【0075】
サブグループ生成部105は、ポリシ情報記憶部102を用いて、検索された複数の通信デバイスを、位置範囲の最大割当数に応じて、サブグループに区分する(前述した図3のS33と同様)。区分されたサブグループ単位の端末識別子が、サブグループ識別子生成部106へ出力される。
【0076】
サブグループ識別子生成部106は、サブグループに属する複数の通信デバイスの端末識別子から、サブグループ識別子を生成する(前述した図3のS34と同様)。具体的には「Bloom Filter」が用いられる。生成されたサブグループ識別子は、ブロードキャスト配信部107へ出力される。
【0077】
ブロードキャスト配信部107は、サブグループ識別子を含む通信トリガ情報を、全ての通信デバイスへブロードキャストで配信する(前述した図3のS35と同様)。
【0078】
通信デバイス2は、ページング受信部21と、判定部22と、通信リンク確立部23と、情報送信部24と、位置登録部25とを有する。これら機能構成部は、通信デバイスに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0079】
ページング受信部21は、通信トリガ情報のページングを、基地局3から受信する。受信されたページングのサブグループ識別子は、判定部22へ出力される。
【0080】
判定部22は、通信トリガ情報に含まれるサブグループ識別子と、当該通信デバイスの端末識別子とを比較することによって、通信トリガ情報が当該通信デバイスを対象とするものであるか否かを判定する(前述した図3のS36と同様)。
【0081】
通信リンク確立部23は、判定部22について真と判定された際に、基地局に対して通信リンク(無線リンク及びIPリンク)を確立する(前述した図3のS37と同様)。通信リンクが確立された旨は、情報送信部24へ出力される。
【0082】
情報送信部24は、通信トリガ情報の内容情報に応じて、所定のサーバへ情報を送信する。例えば、通信デバイス2が検針メータ装置である場合、電力事業者によって運用されるアプリケーションサーバ4へ、検針情報を送信する。
【0083】
位置登録部25は、端末識別子及び位置情報を、移動管理装置11に対して登録シーケンスを実行する。
【0084】
図5は、移動管理設備装置を移動管理装置及びブロードキャストセンタに分離した機能構成図である。
【0085】
図5によれば、移動管理装置11が位置情報データベース101を有し、ブロードキャストセンタ12がポリシ情報記憶部102を有する。そして、移動管理装置11は、位置問合せ要求受信部111と、通信デバイス検索部104と、位置問合せ応答送信部112と、通信トリガ情報配信部113とを有する。また、ブロードキャストセンタ12は、ブロードキャスト配信要求受信部103と、位置問合せ要求送信部121と、位置問合せ応答受信部122と、サブグループ生成部105と、サブグループ識別子生成部106と、ブロードキャスト配信部107とを有する。
【0086】
ここで、図5について、図4と相違する点のみを説明する。ブロードキャストセンタ12の位置問合せ要求送信部121は、グループ化情報を含む位置問合せ要求を、移動管理装置11へ送信する。これに対し、移動管理装置11の位置問合せ要求受信部111によって位置問合せ要求が受信され、そのグループ化情報が通信デバイス検索部104へ出力される。そして、移動管理装置11の位置問合せ応答送信部112は、通信デバイス検索部104によって検索された端末識別子のリストを含む位置問合せ応答を、ブロードキャストセンタ12へ送信する。これに対し、ブロードキャストセンタ12の位置問合せ応答受信部122は、位置問合せ応答を受信し、その端末識別子のリストをサブグループ生成部105へ出力する。
【0087】
以上、詳細に説明したように、本発明のブロードキャスト配信方法及びシステムによれば、グループ単位の通信デバイスに通信トリガ情報を配信する際に、通信環境に応じてシグナリング負荷やネットワーク輻輳を低減させると共に、通信デバイスの処理負荷を低減させることができる。
【0088】
特に、セル、基地局及び中間ノード装置を考慮して、サブグループ単位の通信デバイスへ通信トリガ情報を送信するために、シグナリング負荷やネットワーク輻輳が低減される。そのサブグループ単位の通信デバイス数も、通信環境に応じて変更される。また、そのサブグループ毎の通信トリガ情報を時間間隔を空けて配信することによって、更に、シグナリング負荷やネットワーク輻輳が低減される。また、通信リンクを確立していない通信デバイスに対して、ページングによって通信トリガ情報を配信するために、通信デバイスの消費電力を低減することができる。更に、通信デバイスは、通信トリガ情報のサブグループ識別子と自らの端末識別子とを比較するだけで、自らを配信対象とするか否かを判定することでき、メモリ量及び処理量を低減させることができる。
【0089】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、3GPPで標準化が議論されているマシンタイプ通信に利用できる。具体的には、電気・ガス・水道などのメータリングを想定し、多数の通信デバイスに対し、一斉に通信トリガを配信する。その際、本発明を適用することによって、ネットワークに負荷をかけることがなくなる。特に、WCDMA、CDMA2000やLTEなどに代表されるセルラー無線通信では、有線によるネットワークと比較して、通信デバイスを配置するだけでよい。特に、無線通信特有の、通信範囲の通信相手に対し一度にメッセージ配信するブロードキャスト機能は、一度に多数の通信デバイスの制御を実現することが期待できる。
【符号の説明】
【0091】
1 移動管理設備装置
11 移動管理装置
12 ブロードキャストセンタ
101 位置情報データベース
102 ポリシ情報記憶部
103 ブロードキャスト配信要求受信部
104 通信デバイス検索部
105 サブグループ生成部
106 サブグループ識別子生成部
107 ブロードキャスト配信部
111 位置問合せ要求受信部
112 位置問合せ応答送信部
113 通信トリガ情報配信部
121 位置問合せ要求送信部
122 位置問合せ応答受信部
2 通信デバイス
21 ページング受信部
22 判定部
23 通信リンク確立部
24 情報送信部
25 位置登録部
3 基地局
4 アプリケーションサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の通信デバイスと、基地局を配置した移動通信網を介して前記通信デバイスを管理する移動管理設備装置とを有するシステムについて、通信トリガ情報をブロードキャストで配信するブロードキャスト配信方法において、
前記通信デバイスには、端末識別子が付与されており、
前記移動管理設備装置は、前記通信デバイスの端末識別子に対応付けて位置情報を蓄積した位置情報データベースと、所定の位置範囲に対する通信デバイスの最大割当数を規定したポリシ情報記憶部とを有し、
前記移動管理設備装置が、他の外部の装置から、グループ化情報を含むブロードキャスト配信要求を受信する第1のステップと、
前記移動管理設備装置が、前記位置情報データベースを用いて、前記グループ化情報に属する通信デバイスの端末識別子を検索する第2のステップと、
前記移動管理設備装置が、前記ポリシ情報記憶部を用いて、検索された複数の通信デバイスを、前記位置範囲の最大割当数に応じて、サブグループに区分する第3のステップと、
前記移動管理設備装置が、前記サブグループに属する複数の通信デバイスの端末識別子から、サブグループ識別子を生成する第4のステップと、
前記移動管理設備装置が、前記サブグループ識別子を含む通信トリガ情報を、全ての通信デバイスへブロードキャストで配信する第5のステップと、
前記通信デバイスが、前記通信トリガ情報に含まれる前記サブグループ識別子と、当該通信デバイスの端末識別子とを比較することによって、前記通信トリガ情報が当該通信デバイスを対象とするものであるか否かを判定する第6のステップと、
前記通信デバイスは、第6のステップについて真と判定された際に、前記基地局に対して通信リンクを確立する第7のステップと
を有することを特徴とするブロードキャスト配信方法。
【請求項2】
前記移動管理設備装置は、移動管理装置とブロードキャストセンタとから構成されており、
前記移動管理装置は、前記位置情報データベースを有し、
前記ブロードキャストセンタは、前記ポリシ情報記憶部を有し、
第1のステップについて、前記ブロードキャストセンタが、他の外部の装置から、前記ブロードキャスト配信要求を受信し、前記移動管理装置へ、前記ブロードキャスト配信要求に含まれるグループ化情報を含む位置問合せ要求を送信し、
第2のステップについて、前記移動管理装置が、前記位置情報データベースを用いて、前記グループ化情報に属する通信デバイスを検索し、検索された複数の通信デバイスの端末識別子を含む位置問合せ応答を、前記ブロードキャストセンタへ返信し、
第3のステップについて、前記ブロードキャストセンタが、前記ポリシ情報記憶部を用いて、検索された複数の通信デバイスをサブグループに区分し、
第4のステップについて、前記ブロードキャストセンタが、前記サブグループ識別子を生成し、前記サブグループ識別子を含む通信トリガ情報を、前記移動管理装置へ送信し、
第5のステップについて、前記移動管理装置が、前記サブグループ識別子を含む通信トリガ情報を、全ての通信デバイスへブロードキャストで配信する
ことを特徴とする請求項1に記載のブロードキャスト配信方法。
【請求項3】
第4のステップについて、前記移動管理設備装置は、前記サブグループ識別子をBloom Filterを用いて生成すると共に、
第6のステップについて、前記通信デバイスは、前記通信トリガ情報の前記サブグループ識別子をBloom Filterを用いて判定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のブロードキャスト配信方法。
【請求項4】
前記ポリシ情報記憶部は、中間ノード装置に対する通信デバイスの最大割当数を更に規定しており、
第3のステップについて、前記移動管理設備装置は、前記ポリシ情報記憶部を用いて、検索された複数の通信デバイスの端末識別子を、更に前記中間ノード装置に対する最大割当数に応じて、サブグループに区分する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のブロードキャスト配信方法。
【請求項5】
前記ポリシ情報記憶部は、サービス事業者のアプリケーションサーバの最大接続数を更に規定しており、
第3のステップについて、前記移動管理設備装置は、前記ポリシ情報記憶部を用いて、検索された複数の通信デバイスの端末識別子を、更に前記アプリケーションサーバに対する最大接続数に応じて、サブグループに区分する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のブロードキャスト配信方法。
【請求項6】
前記ポリシ情報記憶部は、セル単位の混雑度(許容デバイス数に対する実在デバイス数)に応じた接続減数を更に規定しており、
第3のステップについて、前記移動管理設備装置は、サブグループの端末識別子の数を、前記ポリシ情報記憶部を用いて、更に前記混雑度に応じた接続減数だけ減算することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のブロードキャスト配信方法。
【請求項7】
第5のステップについて、前記移動管理設備装置は、前記サブグループ識別子毎の通信トリガ情報を、所定の配信時間間隔を空けて、全ての通信デバイスへブロードキャストで配信することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のブロードキャスト配信方法。
【請求項8】
多数の通信デバイスと、基地局を配置した移動通信網を介して前記通信デバイスを管理する移動管理設備装置とを有し、通信トリガ情報をブロードキャストで配信するブロードキャスト配信システムにおいて、
前記通信デバイスには、端末識別子が付与されており、
前記移動管理設備装置は、
前記通信デバイスの端末識別子に対応付けて位置情報を蓄積した位置情報データベースと、
所定の位置範囲に対する通信デバイスの最大割当数を規定したポリシ情報記憶部と、
他の外部の装置から、グループ化情報を含むブロードキャスト配信要求を受信するブロードキャスト配信要求受信手段と、
前記位置情報データベースを用いて、前記グループ化情報に属する通信デバイスの端末識別子を検索する通信デバイス検索手段と、
前記ポリシ情報記憶部を用いて、検索された複数の通信デバイスを、前記位置範囲の最大割当数に応じて、サブグループに区分するサブグループ生成手段と、
前記サブグループに属する複数の通信デバイスの端末識別子から、サブグループ識別子を生成するサブグループ識別子生成手段と、
前記サブグループ識別子を含む通信トリガ情報を、全ての通信デバイスへブロードキャストで配信するブロードキャスト配信手段と
を有し、
前記通信デバイスは、
前記通信トリガ情報に含まれる前記サブグループ識別子と、当該通信デバイスの端末識別子とを比較することによって、前記通信トリガ情報が当該通信デバイスを対象とするものであるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段について真と判定された際に、前記基地局に対して通信リンクを確立する通信リンク確立手段と
を有することを特徴とするブロードキャスト配信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−115677(P2013−115677A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261211(P2011−261211)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】