説明

通信用回路保持体

【課題】 インレットを別体として用意する必要が無く、また、隠蔽情報の閲覧操作に伴い、インレットが自動的に使用可能となる通信用回路保持体を提供することを目的とする。
【解決手段】 順に連接する第一の領域21、第二の領域22、第三の領域23及び第四の領域24を有する基材2と、基材2の同じ一面2aにおいて、第三の領域23に配置されるスパイラル状のアンテナ3、アンテナ3にそれぞれ一端が接続され他端33a、34aがそれぞれ伸びる第一導電部33及び第二導電部34、並びにアンテナ3と直列に接続されたICチップ10と、第一の領域21に配置されるアンテナ3の内周端31及び外周端32とそれぞれを電気的に接続するための両端部41、42を備えた配線部4、並びに第一の穴部9aと、第二の領域22に配置される第二の穴部9bと、第四の領域24に配置される短絡部5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信用回路保持体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)と称される非接触型メディア(非接触型ICカード等)に関する技術が急速に進歩してきており、その使用も多岐にわたっている。
【0003】
この種のRFIDは、基材にアンテナをパターン形成して、ICチップを搭載したインレットと称されるものを他の基材に貼着して作製される。このようなインレットは、基材に紙材やフィルムを使用するものも多く、インレットに、各種情報が印刷された紙基材やフィルムを接着剤等で接着している。
また、紙材やフィルムなどをベース基材としたインレットにおいては、通信のためのアンテナのパターンを、例えば複数巻き回してスパイラル状の回路に形成するのが一般的であり、パターンの両端の接点間を、導通部材を用いて電気的に導通させることによって通信を可能としている。また、前記回路にICチップを搭載した構成とすることにより、各種機能を持たせることができる。
【0004】
このようなインレットを、ミシン目線からカード形状に切り取り可能な構成で、3つの連接したはがき部からなる郵便はがきに装着したものであって、前記3つの連接したはがき部を折り畳んで接着した際、第一はがき部と第二はがき部との各々全面が剥離可能に接着され、第二はがき部と第三はがき部との各々全面が剥離不可能に強接着され、インレットが第二はがき部又は第三はがき部に装着された通信用回路保持体が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
特許文献1に記載の通信用回路保持体は、上述の構成により、第二はがき部および第三はがき部に設けたカード形状のミシン目線からインレットを取り外して使用可能な状態とされ、また、第一はがき部と第二はがき部とを剥離して見開くことにより、剥離面に表示された隠蔽情報を閲覧することができるものである。
【0006】
また、インレットを、3つの連接した帳票片をZ状に折り曲げ、縁部を接着してなる封書に装着したものであって、該封書の所定の3辺をミシン目から切り取ることにより、3つの帳票片を見開いて内部情報を閲覧することが可能に構成され、見開いた封書の中心の帳票片に、インレットがカード形状に切り取り可能に装着された通信用回路保持体が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
特許文献2に記載の通信用回路保持体は、上述の構成により、封書の3辺をミシン目線から切り取って開封し、中央の帳票片に装着されたインレットをミシン目線でカード形状に切り取り、また、封書内部の各帳票片に印刷された情報を閲覧することができるというものである。
【特許文献1】特開2003−141492号公報
【特許文献2】特開2003−141493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の通信用回路保持体では、基材とは別体をなすインレットを、予め印刷されたフィルムや紙製の基材に接着剤で接着するものであり、インレット及び上下基材の3つの層で構成されるため、工程が多く、材料コストも高くなる。
また、特許文献1及び特許文献2の通信用回路保持体の構成では、インレットとして形成された回路は常に導通、作動状態にあり、必要な時にのみ、インレットを作動させることが出来なかった。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、インレットを別体として用意する必要が無く、また、隠蔽情報の閲覧操作に伴い、インレットが自動的に使用可能となる通信用回路保持体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、順に連接する第一、第二、第三及び第四の領域を有する基材と、前記基材の同じ一面において、前記第三の領域に配置される、スパイラル状の回路、前記回路にそれぞれ一端が接続され、他端がそれぞれ伸びる第一導電部及び第二導電部、並びに前記回路と直列に接続されたICチップと、前記第一の領域に配置される、前記回路の内周端及び外周端とそれぞれを電気的に接続するための両端部を備えた配線部、並びに第一の穴部と、前記第二の領域に配置される、第二の穴部と、前記第四の領域に配置される、短絡部とを備えている通信用回路保持体であって、前記基材を折り曲げることにより、前記第一の領域と前記第二の領域の一面同士を前記第一の穴部と前記第二の穴部とが一致するように重ね合わせ、次いでこの重ね合わせた状態にある第一領域の他面を前記第三の領域の一面に重ね合わせた状態において、該第三の領域に配した前記第一導電部と前記第二導電部の他端のみが露出するとともに、前記第三の領域に配したICチップが前記第一の穴部と前記第二の穴部を通して露出しており、さらに、前記第一〜前記第三の領域が重なった状態にある前記第二の領域の他面に前記第四の領域の一面を重ね合わせた状態において、該第四の領域に配した短絡部が、前記第一導電部と前記第二導電部の他端からなる露出部に電気的に接続するように構成され、前記基材を折り曲げた際には、前記第一の領域の一面と前記第二の領域の一面との間、及び前記第一の領域の他面と前記第三の領域の一面との間には強接着部が、前記第二の領域の他面と前記第四の領域の一面との間には弱接着部が、それぞれ設けられ、前記第二の領域の他面と前記第四の領域の一面は、折り曲げて互いを重ね合わせる前に、隠蔽情報を記入可能とされていることを特徴とする通信用回路保持体を提供する。
【0011】
かかる構成によれば、基材を折り曲げることで複数の領域を重ね合わせることにより、回路の両端部が電気的に接続され、重ね合わせ面に配されたインレットを簡便な構成で設けることができる。
また、導電性部材を塗布する面が一方の面のみであり、回路、第一導電部、第二導電部、配線部、短絡部の形成を、1度の工程処理で行うことができる。
また、ICチップが第一の穴部と第二の穴部を通して露出することにより、接着の際にICチップの高さ方向から加わる圧力からICチップを保護することができる。
また、強接着部及び弱接着部の接着時の、各々の押圧力を設定することにより、1種類の接着剤のみで剥離不可能な強接着部と剥離可能な弱接着部を形成することができ、弱接着部で接着される前記第二の領域の他面と前記第四の領域の一面には、剥離した際に使用者が各種情報を閲覧可能となるように隠蔽情報を設けることができる。
【0012】
本発明は、前記弱接着部を介してなる前記第二の領域の他面と前記第四の領域の一面は互いに剥離することが可能であり、該剥離をした際に、前記第四の領域に配した短絡部が、前記第三の領域に配した第一導電部と第二導電部の他端からなる露出部から離され、前記第三の領域に配した回路が使用可能な状態になることを特徴とする請求項1に記載の通信用回路保持体を提供する。
【0013】
かかる構成によれば、導電性部材を塗布する工程が1度の工程処理でありながら、回路の第一導電部及び第二導電部の他端を、露出させる構成とすることができる。これにより、剥離可能領域の開封とともに、インレットが使用可能となる。
また、弱接着部で接着される前記第四の領域の短絡部が設けられた領域と、前記第三の領域に配した第一導電部と第二導電部の他端からなる露出部が設けられた領域とが、押圧によって剥離可能に接着されることにより、第一導電部と第二導電部の電気的接続及び遮断を、簡便な構成で行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る通信用回路保持体によれば、基材を折り曲げることで複数の領域を重ね合わせることにより、回路の両端部が電気的に接続され、重ね合わせ面に配されたインレットを簡便な構成で設けることができる。
また、導電性部材を塗布する面が一方の面のみであり、回路、第一導電部、第二導電部、配線部、短絡部の形成を、1度の工程処理で行うことができる。
また、ICチップが第一の穴部と第二の穴部を通して露出することにより、接着の際にICチップの高さ方向から加わる圧力からICチップを保護することができる。
また、強接着部及び弱接着部の接着時の、各々の押圧力を設定することにより、1種類の接着剤のみで剥離不可能な強接着部と剥離可能な弱接着部を形成することができ、弱接着部で接着される前記第二の領域の他面と前記第四の領域の一面には、剥離した際に使用者が各種情報を閲覧可能となるように隠蔽情報を設けることができる。
また、本発明の通信用回路保持体によれば、導電性部材を塗布する工程が1度の工程処理でありながら、回路の第一導電部及び第二導電部の他端を、露出させる構成とすることができる。これにより、剥離可能領域の開封とともに、インレットが使用可能となる。
また、弱接着部で接着される前記第四の領域の短絡部が設けられた領域と、前記第三の領域に配した第一導電部と第二導電部の他端からなる露出部が設けられた領域とが、押圧によって剥離可能に接着されることにより、第一導電部と第二導電部の電気的接続及び遮断を、簡便な構成で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る通信用回路保持体の実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1、図2、図3及び図4は、本実施形態の通信用回路保持体を示す図であり、この通信用回路保持体1は、順に連接する第一の領域21、第二の領域22、第三の領域23及び第四の領域24を有する基材2と、基材2の同じ一面2aにおいて、第三の領域23に配置されるスパイラル状のアンテナ(回路)3、アンテナ3にそれぞれ一端が接続され他端33a、34aがそれぞれ伸びる第一導電部33及び第二導電部34、並びにアンテナ3と直列に接続されたICチップ10と、第一の領域21に配置されるアンテナ3の内周端31及び外周端32とそれぞれを電気的に接続するための両端部41、42を備えた配線部4、並びに第一の穴部9aと、第二の領域22に配置される第二の穴部9bと、第四の領域24に配置される短絡部5とを備えて概略構成されている。
この通信用回路保持体1は、基材2を折り曲げることにより、第一の領域21と第二の領域22の一面2a同士を第一の穴部9aと第二の穴部9bとが一致するように重ね合わせ、次いでこの重ね合わせた状態にある第一領域21の他面2bを第三の領域23の一面2aに重ね合わせた状態において、第三の領域23に配した第一導電部33と第二導電部34の他端33a、34aのみが露出するとともに、第三の領域23に配したICチップ10が第一の穴部9aと第二の穴部9bを通して露出しており、さらに、第一〜第三の領域21、22、23が重なった状態にある第二の領域22の他面2bに第四の領域24の一面2aを重ね合わせた状態において、第四の領域24に配した短絡部5が、第一導電部33と第二導電部34の他端33a、34aからなる露出部に電気的に接続するように構成され、基材2を折り曲げた際には、第一の領域21の一面2aと第二の領域22の一面2aとの間、及び第一の領域21の他面2bと第三の領域23の一面2aとの間には強接着部2cが、第二の領域22の他面2bと第四の領域24の一面2aとの間には弱接着部2dがそれぞれ設けられ、第二の領域22の他面2bと第四の領域24の一面2aは、折り曲げて互いを重ね合わせる前に、隠蔽情報6を記入可能とされていることを特徴とする。
また、通信用回路保持体1は、弱接着部2dを介してなる第二の領域22の他面2bと第四の領域24の一面2aは互いに剥離することが可能であり、剥離をした際に、第四の領域24に配した短絡部5が、第三の領域23に配した第一導電部33と第二導電部34の他端33a、34aからなる露出部から離され、第三の領域23に配したアンテナ3が使用可能な状態になることを特徴とする。
【0016】
基材2は、折線26を境界として第一の領域21と第二の領域22とが連接し、折線27を境界として第二の領域22と第三の領域23とが連接し、折線28を境界として第三の領域23と第四の領域24とが連接してなる。また、各領域21、22、23、24は、一面2a及び他面2bを有し、上述したアンテナ3、第一導電部33及び第二導電部34、ICチップ10、内周端31及び外周端32、配線部4及び短絡部5が、それぞれ基材2の同じ面である一面2aに配されている。
【0017】
第一の領域21の一面2aには、第三の領域23に設けられたアンテナ3の内周端31及び外周端32とそれぞれを電気的に接続するための両端部41、42を備えた配線部4が設けられている。
配線部4は、第一の領域21と第二の領域22の一面2aを、折線26を境として重ね合わせ、領域21の他面2bに第三の領域23の一面2aを重ね合わせた時に、第三の領域23に設けられたアンテナ3の内周端31と外周端32を電気的に接続するように配設されている。
また、第一の領域21には、基材2を貫通して第一の穴部9aが設けられている。
【0018】
第二の領域22の一面2aには、基材2を貫通して第二の穴部9bが設けられており、第一の領域21と第二の領域22とを、折線26を境に重ね合わせた際に、第一の穴部9aと第二の穴部9bとが重なり合う位置に配されている。
重なり合った第一の穴部9a及び第二の穴部9bの内部には、ICチップ10が収容されるように構成されているが、詳細については後述する。
【0019】
第三の領域23の一面2aには、スパイラル状のアンテナ3が設けられており、該アンテナ3にそれぞれ一端が接続され他端33a、34aがそれぞれ伸びる第一導電部33及び第二導電部34、並びにアンテナ3と直列に接続されたICチップ10と、アンテナ3の内周端31及び外周端32とが配設されている。
内周端31と外周端32とは、第一の領域21と第二の領域22の一面2aを、折線26を境として重ね合わせ、領域21の他面2bに第三の領域23の一面2aを重ね合わせた時に、第一の領域21に設けられた配線部4によって電気的に接続される。
また、この時、アンテナ3の内周端31及び外周端32は、重ね合わせられた第一の領域21及び第二の領域22によって隠蔽されるが、第一導電部33及び第二導電部34は第二領域22(第一領域21)と折線28の間で露出するように構成されている。
【0020】
第四の領域24の一面2aには、短絡部5が設けられている。
短絡部5は、第一の領域21と第二の領域22の一面2aを、折線26を境として重ね合わせ、領域21の他面2bに第三の領域23の一面2aを重ね合わせ、第二の領域22の他面2bに第四の領域24の一面2aを重ね合わせた時に、第三の領域23の一面2aに設けられ、重ね合わせられた第二領域22(第一領域21)と折線28の間で露出して設けられた第一導電部33及び第二導電部34を電気的に接続するように配設されている。
【0021】
図3に示す例においては、基板2の各領域を重ね合わせた通信用回路保持体1は、縦長板状に構成される。
【0022】
基材2の材質としては、特に限定されず、例えば紙材、樹脂材等、絶縁性の高い材料を用いれば良く、適宜選択して採用すれば良い。
【0023】
アンテナ3は、導電性ペーストからなる膜等の導電体である。
アンテナ3の材質である導電性ペーストとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム、ロジウムなどの粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子を樹脂組成物に配合したもの等を用いることができる。導電性ペーストをなす樹脂組成物としては、熱硬化型樹脂組成物、光硬化型樹脂組成物、浸透乾燥型樹脂組成物、溶剤揮発型樹脂組成物が挙げられるが、アンテナ3の材質は、適宜決定すれば良い。
また、アンテナ3の厚みは、特に限定されないが、アンテナ3に接続されるICチップ10等の寸法に応じて適宜決定すれば良い。
【0024】
上述したような、導電微粒子を樹脂組成物に配合した導電性ペーストとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみか、或いは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂とを配合した樹脂組成物(特にポリエステルポリオールとイソシアネートによる架橋性樹脂など)に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型かあるいは架橋/熱可塑併用型(ただし熱可塑型が50質量%以上である)のもの等が好適に用いられる。
【0025】
また、通信用回路保持体1において、高い耐折り曲げ性が要求される場合には、導電性ペーストに可撓性付与剤を配合することが好ましい。可撓性付与剤としては、例えば、ポリエステル系可撓性付与剤、アクリル系可撓性付与剤、ウレタン系可撓性付与剤、ポリ酢酸ビニル系可撓性付与剤、熱可塑性エラストマー系可撓性付与剤、天然ゴム系可撓性付与剤、合成ゴム系可撓性付与剤などが挙げられる。本発明の通信用回路保持体においては、これらの可撓性付与剤を単独か、或いは2種以上を組み合わせられて用いることができる。
【0026】
導通部4、及び、配線部4は、アンテナ3と同一の材料で構成されている。
【0027】
なお、本実施形態においては、回路としてアンテナ3を例示しているが、本発明の通信用回路保持体はこれに限定されない。本発明の通信用回路保持体にあっては、回路は通信機能を有さない電気回路であってもよい。また、アンテナ3として、コイルアンテナを例示しているが、本発明の通信用回路保持体はこれに限定されない。本発明の通信用回路保持体にあっては、電磁誘導、マイクロ波電波方式を採用しても良く、また、ポールアンテナ、折り曲げポールアンテナループアンテナ、ループアンテナ方式等を採用しても良い。本発明の通信用回路保持体のアンテナは、起電力が得られれば、アンテナの形状については、適宜選択して採用することができる。
【0028】
図2に示すように、本実施形態の通信用回路保持体1では、第二の領域22の他面2b及び第四の領域24の一面2aに隠蔽情報6が設けられている。
隠蔽情報6は、連絡や宣伝、通達等の内容が、印刷や貼付等によって表示される情報であり、例えば、コンサート等の催事概要、宣伝商品の概要等が挙げられる。
なお、図示例では、隠蔽情報6を、第二の領域22の他面2b及び第四の領域24の一面2aにのみ設けているが、その他の領域や面に隠蔽情報6を設けた構成としても良い。
【0029】
通信用回路保持体1は、第一の領域21と第二の領域22の一面2aとが重ね合わせられ、後述する接着剤によって強接着部2cで剥離不可能に接着され、第一の領域21の他面2bと第三の領域23の一面2aとが重ね合わせられ、接着剤によって強接着部2cで剥離不可能に接着される(図4参照)。図3に示すように、この時、第二の領域22と折線28との間で、第一導電部33及び第二導電部34の他端33a、34aが露出している。そして、第二の領域22の他面2b及び第四の領域24の一面2aに隠蔽情報6を設け、第四の領域24の一面2aを、第二の領域22の他面2b及び第三の領域23の露出部25に、後述する接着剤によって、弱接着部2dで剥離可能に接着される(図4参照)。
図4に示すように、この時、第一導電部33及び第二導電部34の他端33a、34aは、短絡部5によって電気的に接続される。
【0030】
強接着部2cは、接着することによって接着面が剥離困難または剥離不可能な状態にされる感圧接着剤からなる。このような感圧接着剤としては、従来の感圧接着剤として慣用されているものが用いられ、この中でも、220gf/25mm以上の剥離力を有するように接着剤を圧着させることが必要とされる。このような感圧接着剤としては、例えば、圧力が加わると接着性が現れる天然ゴム系接着剤やアクリル樹脂系等の合成ゴム系接着剤や酢酸ビニル系接着剤等の接着剤に、小麦澱粉やシリカ等の接着調整剤を充填させた感圧接着剤等が挙げられる。また、天然ゴムに、スチレンとメタクリル酸メチルとをグラフト共重合させて得られた天然ゴムラテックスが挙げられる。
弱接着部2dは、接着後において接着面を剥離することが可能な感圧接着剤からなる。このような感圧接着剤としては、従来の感圧接着剤として慣用されているものが用いられ、この中でも、220gf/25mm以下の剥離力を有するように接着剤を圧着させることが必要とされる。このような感圧接着剤としては、例えば、圧力が加わると接着性が現れる天然ゴム系接着剤やアクリル樹脂系等の合成ゴム系接着剤や酢酸ビニル系接着剤等の接着剤に、小麦澱粉やシリカ等の接着調整剤を充填させた感圧接着剤等が挙げられる。また、天然ゴムに、スチレンとメタクリル酸メチルとをグラフト共重合させて得られた天然ゴムラテックスが挙げられる。
【0031】
各領域を重ね合わせて強接着部2cで接着するためには、少なくとも重ね合わせられる何れかの領域に上記のような感圧接着剤を塗布しておけば良い。その後、一方の領域と他方の領域を重ね合わせ、220gf/25mm超の剥離力を有するように接着剤を圧着させると良い。また、重ね合わされる面の両方に上記のような感圧接着剤を塗布しておいても良い。すなわち両方の領域に上記のような感圧接着剤を塗布しておいても良い。
また、各領域を重ね合わせて弱接着部2dで接着するためには、少なくとも重ね合わせられる何れかの領域に上記のような感圧接着剤を塗布しておけば良い。その後、一方の領域と他方の領域を重ね合わせ、220gf/25mm以下の剥離力を有するように接着剤を圧着させると良い。また、重ね合わされる面の両方に上記のような感圧接着剤を塗布しておいても良い。すなわち両方の領域に上記のような感圧接着剤を塗布しておいても良い。
基材2に強接着部2c及び弱接着部2dを設けるためには、基材2に感圧接着剤を塗付して複数の領域を重ね合わせる。そして、剥離不可能強接着部8を220gf/25mm超の剥離力を有するように接着し、その後、剥離可能接着部7を220gf/25mm以下の剥離力を有するように接着すると良い。
【0032】
なお、本実施形態の通信用回路保持体1では、各領域を、各折線を境にして順に折り合わせる形態としているが、これには限定されない。
例えば、各領域をZ字状に折り曲げて重ね合わせる等、他の重ね合わせ形態であっても良く、領域の重ね合わせの形態や貼着面については、適宜決定すれば良い。
【0033】
また、本実施形態の通信用回路保持体1では、基材2に4つの領域21、22、23、24を設けているが、これには限定されず、領域の数や重ね合わせの形態については、適宜決定して採用すれば良い。
【0034】
また、図1に示す例においては、各領域21、22、23、24がそれぞれの長辺で連続してなる矩形状の基材2を例に説明しているが、本発明の通信用回路保持体はこれに限定されない。
例えば、基材が各領域の短辺で連続してなる矩形状や、基材が各領域の短辺または長辺で連続してなるL字状等であっても良く、適宜決定すれば良い。
【0035】
以上、説明したように、本実施形態の通信用回路保持体1によれば、基材を折り曲げることで複数の領域を重ね合わせることにより、回路の両端部が電気的に接続され、重ね合わせ面に配されたインレットを簡便な構成で設けることができる。
また、導電性部材を塗布する面が一方の面のみであり、回路、第一導電部、第二導電部、配線部、短絡部の形成を、1度の工程処理で行うことができる。
また、ICチップが第一の穴部と第二の穴部を通して露出することにより、接着の際にICチップの高さ方向から加わる圧力からICチップを保護することができる。
また、強接着部及び弱接着部の接着時の、各々の押圧力を設定することにより、1種類の接着剤のみで剥離不可能な強接着部と剥離可能な弱接着部を形成することができ、弱接着部で接着される前記第二の領域の他面と前記第四の領域の一面には、剥離した際に使用者が各種情報を閲覧可能となるように隠蔽情報を設けることができる。
また、本発明の通信用回路保持体によれば、導電性部材を塗布する工程が1度の工程処理でありながら、回路の第一導電部及び第二導電部の他端を、露出させる構成とすることができる。これにより、剥離可能領域の開封とともに、インレットが使用可能となる。
また、弱接着部で接着される前記第四の領域の短絡部が設けられた領域と、前記第三の領域に配した第一導電部と第二導電部の他端からなる露出部が設けられた領域とが、押圧によって剥離可能に接着されることにより、第一導電部と第二導電部の電気的接続及び遮断を、簡便な構成で行うことができる。
【0036】
以下に、本発明に係る通信用保持体の製造方法の一例を、図5を参照しながら説明する。
以下の説明においては、図1〜図4に示す通信用保持体1を製造する場合の方法について、同じ図面と符号を用いて説明し、その詳細を省略する。
【0037】
まず、図示略の基材の原反から基材を引き出し(図5のA)、基材2を形成して各種穴加工を行い)、ここでは、第一の穴部9a、第二の穴部9b、貫通孔4aを設ける(図5のb)。
なお、基材の原反の一方の面(本実施形態では基材2の一面2a側の面)には、予め感圧接着剤が塗布された状態となっている。
【0038】
次いで、導電性ペーストからなるアンテナ3(内周端31、外周端32、第一導電部33及び第二導電部34を含む)、配線部4、短絡部5を印刷するとともに、隠蔽情報6等の可視情報を印刷や貼着等によって設ける(図5のC)。なお、導電性ペーストの印刷と、隠蔽情報6の印字又は貼着は、別工程としても良い(図5のD)。
【0039】
次いで、アンテナ3にICチップを搭載し(図5のE)、第一の領域21と第二の領域22の一面2aをC字形状に折り曲げるようにして重ね合わせ、さらに、第一の領域21の他面2bに第三の領域の一面2aを重ね合わせる(図5のF)。
【0040】
次いで、重ね合わせた第一の領域21、第二の領域22及び第三の領域23に所定の圧力を加え、重ね合わせ面を剥離不可能な強接着部2cとして接着する(図5のG)。この時、通信用回路保持体1は、図2に示すような片面に2領域を有する状態となる。
また、この時、アンテナ3の内周端31、外周端32及び配線部4に圧力が加わることにより、内周端31、外周端32、或いは配線部4をなす導電性ペースト等の導電性部材が、基材2を貫いて配線部4の位置に形成された貫通穴4aに圧入される。これにより、内周端31及び外周端32と配線部4とが、貫通穴4a内に圧入された導電性部材によって、電気的に接続される。
【0041】
次いで、ICチップ10にデータ書き込みを行う(図5のH)。
【0042】
次いで、第二の領域22の他面2b及び第三の領域の露出部25と、第四の領域24の一面2aとを重ね合わせ(図5のI)、所定の圧力を加えて剥離可能な弱接着部2dとして接着する(図5のJ)。この時、通信用回路保持体1は、図3に示す出荷可能な状態となる(図5のK)。
【0043】
通信用回路保持体1を、例えばはがき状のダイレクトメール等として受け取ったユーザは、剥離可能に接着された第二の領域22の他面2b及び第三の領域の露出部25と、第四の領域24の一面2aとを剥離、開封する(図5のL)。
この時、ユーザは、第二の領域22の他面2b及び第四の領域24の一面2aに設けられた隠蔽情報6を閲覧することができる状態となる(図2参照)。
また、第四の領域24に設けられた短絡部5によって電気的に接続されていたアンテナ3に接続された第一導電部33及び第二導電部34の他端33a、34aの間が開放され、通信用回路保持体1内に形成されたインレットが通信可能な状態となる(図5のM)。これにより、ユーザは、通信用回路保持体1を、インレットとして、各種目的に応じて使用することができる。
【0044】
上述した通信用回路保持体の製造方法によれば、複雑な機構の製造装置を用いること無く、容易、且つ、低コストで通信用回路保持体を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の通信用回路保持体は、主として各種パンフレットやダイレクトメール等のはがき、封書等として使用され、通信用回路保持体内にインレットを構成しているため、そのまま非接触型ICカードとして使用することができ、また、前記インレットの格納情報と関連した隠蔽情報を閲覧することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の通信用回路保持体の一例を説明する概略図である。
【図2】本発明の通信用回路保持体の一例を説明する概略図である。
【図3】本発明の通信用回路保持体の一例を説明する概略図である。
【図4】本発明の通信用回路保持体の一例を説明する図であり、図3のIV−IV断面図である。
【図5】本発明の通信用回路の製造方法の一例を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
1…通信用回路保持体、2…基材、2a…一面、2b…他面、2c…強接着部、2d…弱接着部、21…第一の領域、22…第二の領域、23…第三の領域、24…第四の領域、3…アンテナ(回路)、31…内周端、32…外周端、33…第一導電部、34…第二導電部、33a、34a…他端、4…配線部、41、42…両端部、5…短絡部、6…隠蔽情報、9a…第一の穴部、9b…第二の穴部、10…ICチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に連接する第一、第二、第三及び第四の領域を有する基材と、前記基材の同じ一面において、前記第三の領域に配置される、スパイラル状の回路、前記回路にそれぞれ一端が接続され、他端がそれぞれ伸びる第一導電部及び第二導電部、並びに前記回路と直列に接続されたICチップと、前記第一の領域に配置される、前記回路の内周端及び外周端とそれぞれを電気的に接続するための両端部を備えた配線部、並びに第一の穴部と、前記第二の領域に配置される第二の穴部と、前記第四の領域に配置される短絡部とを備えている通信用回路保持体であって、
前記基材を折り曲げることにより、前記第一の領域と前記第二の領域の一面同士を前記第一の穴部と前記第二の穴部とが一致するように重ね合わせ、次いでこの重ね合わせた状態にある第一領域の他面を前記第三の領域の一面に重ね合わせた状態において、該第三の領域に配した前記第一導電部と前記第二導電部の他端のみが露出するとともに、前記第三の領域に配したICチップが前記第一の穴部と前記第二の穴部を通して露出しており、
さらに、前記第一〜前記第三の領域が重なった状態にある前記第二の領域の他面に前記第四の領域の一面を重ね合わせた状態において、該第四の領域に配した短絡部が、前記第一導電部と前記第二導電部の他端からなる露出部に電気的に接続するように構成され、
前記基材を折り曲げた際には、前記第一の領域の一面と前記第二の領域の一面との間、及び前記第一の領域の他面と前記第三の領域の一面との間には強接着部が、前記第二の領域の他面と前記第四の領域の一面との間には弱接着部が、それぞれ設けられ、
前記第二の領域の他面と前記第四の領域の一面は、折り曲げて互いを重ね合わせる前に、隠蔽情報を記入可能とされていることを特徴とする通信用回路保持体。
【請求項2】
前記弱接着部を介してなる前記第二の領域の他面と前記第四の領域の一面は互いに剥離することが可能であり、該剥離をした際に、前記第四の領域に配した短絡部が、前記第三の領域に配した第一導電部と第二導電部の他端からなる露出部から離され、前記第三の領域に配した回路が使用可能な状態になることを特徴とする請求項1に記載の通信用回路保持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−239875(P2006−239875A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54542(P2005−54542)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】