説明

通信端末、経路案内装置、経路案内システムおよび経路案内方法

【課題】災害発生時のように通信が集中するときであっても特に通信ネットワークに負担を掛けずに目標となる場所への案内を行う通信端末、経路案内装置、経路案内システムおよび経路案内方法を得る。
【解決手段】たとえば地震が発生して歩行で長距離を帰宅する者は、予め経路案内サービスを契約しておき、出発地点と目標地点を結ぶ歩行ルートの地図を通信端末にダウンロードしておく。そして、現在位置を取得すると共に経路案内装置に最新の歩行ルートと目標地点までの距離や残り時間等のデータを時間間隔を置いて要求し(ステップS266、S263)、これらを受信するたびにその表示部に地図や現在位置と共に表示する(ステップS265)。地図データを災害発生前に取得するので、通信ネットワークの過負荷を避けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時に帰宅したり特定の場所に避難するような場合に有用な通信端末、経路案内装置、経路案内システムおよび経路案内方法に係わり、特に地震等の大規模災害の発生時に好適な通信端末、経路案内装置、経路案内システムおよび経路案内方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大地震のように交通機関が大規模に遮断されるような災害が発生すると、多くの人は勤務場所のような災害発生時にいる場所から自宅等の特定の場所に自分の足で到達する必要がある。通常の生活で電車やバスといった交通機関を利用している者にとって、災害時に道に迷わず、かつ途中で必要な物を入手したり、トイレを適宜使用しながら確実に目標地点に到達できるようにすることは非常に大変なことである。
【0003】
そこで、帰宅のための代表的な歩行ルートや各種の施設を地図上に記した帰宅支援用の書籍が発売されている。このような書籍は職場で数冊ずつ揃えていても、現実に必要になった場合には一部の者しか使用できないという問題がある。各個人がこのような書籍を常に携帯していることが理想であるが、現実には仕事で飛び歩いているような場合にはその場で必要とされる物の所持が最優先にされてしまい、常に持ち歩くことは困難である。したがって、このような書籍が実際に必要とされる事態が発生した場合には、自分の帰宅支援用の書籍を保管している場所を忘れてしまっていたり、本棚や机の周りの事務用品が災害によって散乱してしまい、見つけ出すことができない状態となることも多いと想定される。
【0004】
この点で、携帯電話機、PHS(Personal Handy-phone System)あるいはPDA(Personal Digital Assistant)のような携帯型の通信端末は、多くの人が常に携行している可能性が高い。そこで、災害の発生時にユーザの通信端末に対して目標地点へ辿り行くための地図を配信するサービスが第1の提案として提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
この第1の提案では、GPS(Global Positioning System)機能を備えた無線通信端末が災害時に避難場所への誘導の要求とその所在地の位置情報とをホストに送信するようになっている。ホストは位置情報に基づいて地図データベースを検索し、要求を行った無線通信端末の所在地の地図情報を読み出す。また、災害関連情報データベースを参照して、この無線通信端末の近辺の避難場所や避難場所周辺の危険情報を読み出す。そして、読み出した地図情報の上に避難場所への安全な避難経路を示した避難誘導地図情報を生成して、この避難誘導地図情報をネットワークを介して無線通信端末に送信する。無線通信端末は、その表示部に避難誘導地図情報を表示し、これを基にしてユーザを避難場所へ案内することができる。
【0006】
また、コンピュータが避難対象地域の避難案内情報を作成しておいて、災害が発生したら、そのコンピュータが所定の地域内の携帯端末を呼び出して避難案内情報を送信することも第2の提案として提案されている(たとえば特許文献2参照)。この第2の提案では、地震等の災害が発生すると、気象庁や官庁あるいは電話会社が避難対象地域を設定して、その避難案内情報を作成する。そして、予め作成したリストを基にして、コンピュータが避難案内対象地域に存在するすべての携帯端末や固定電話に電話を掛けて、この避難案内情報を送信するようになっている。
【特許文献1】特開2005−17027号公報(第0009段落、図1)
【特許文献2】特開2004−070595号公報(第0041段落〜第0043段落、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような第1および第2の提案では、前記したように携帯電話機等の携帯型の通信端末を利用するので、ユーザが常に携帯している可能性が高い。しかしながら、災害時には安否を確認する等の各種のトラフィックで通信がほとんどできなくなる輻輳状態となる可能性が高い。このような状況で、第1の提案のように避難誘導地図情報を要求しても、大容量の地図情報を短時間に多くの相手に送信することは現実的ではない。第2の提案でも避難案内情報を一斉に送信するので、同様の問題がある。
【0008】
更に、このような提案では、携帯電話機等の通信端末が災害時に壊れていなくても、これに情報を送信する通信システムの本拠となる施設および基地局等の通信設備に障害が発生した場合には通信が不可能になる場合が多い。また、情報を提供するシステムの管理者側では、短時間に集中してデータ処理を行う必要がある。このため、設備を災害に耐えうるようにするだけでなく、大規模かつ高性能なものとする必要があって、そのための費用が嵩むという問題がある。
【0009】
そこで本発明の目的は、災害発生時のように通信が集中するときであっても特に通信ネットワークに負担を掛けずに目標となる場所への歩行による案内を行うことのできる通信端末、経路案内装置、経路案内システムおよび経路案内方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、(イ)出発地点と目標地点を指定してこれらの2地点の間を歩行ルートに沿って歩いて移動するための地図を表示するデータとしての地図データを少なくとも経路案内サービスの契約時に契約先から通信ネットワークを介して取得する地図データ取得手段と、(ロ)この地図データ取得手段によって取得した地図データを格納しておく地図データ格納手段と、(ハ)出発地点から目標地点に歩行ルートに沿って歩行する際にその案内を行うモードとしての経路案内モードに設定する経路案内モード設定手段と、(ニ)この経路案内モード設定手段によって経路案内モードに設定された状態で歩行により変化する現在位置を時間間隔を置いて取得する現在位置取得手段と、(ホ)この現在位置取得手段によって取得した現在位置を地図データ格納手段に格納された地図データの表わす地図上にマッピングするマッピング手段と、(へ)このマッピング手段で現在位置をマッピングした後の地図を経路案内用の情報として表示する表示手段とを通信端末に具備させる。
【0011】
すなわち本発明では、出発地点と目標地点を指定してこれらの2地点の間を歩行ルートに沿って歩いて移動するための地図データを少なくとも経路案内サービスの契約時に契約先から取得するようにしている。これにより、たとえば災害時には地図データが既に利用者側に用意されていることになるので、通信ネットワークに負荷を掛けることがない。また、歩行ルートに沿った歩行を行うときの進行状態を見るための現在位置に関する情報の取得は、時間間隔を置いて行われる。したがって、通信端末のこのための電力消費を抑えることができる。更に本発明では、歩行ルートを辿る時点で通信端末と無線通信を行う無線基地局に障害が発生していても地図や現在位置の表示が可能である。
【0012】
更に地図データ格納手段に格納された地図データを時間を置いて更新するようにすれば、地図の内容を簡単に最新の内容に保つことができる。また、受信した地図データの表わす地図上に歩行ルートに沿って幾つかの経路ポイントを設定できるようにしておけば、これらの経路ポイントを途中の歩行進度の確認や休憩地として利用することができる。また、経路ポイントの近くで契約先との通信を開始し、目標地点へ歩行によって到達する際に有益な予め定めた情報を取得することで、効率的な情報管理と通信端末の節電を図ることができる。
【0013】
請求項5記載の発明では、(イ)各場所の地図を表示するデータの集合としての地図データベースを最新の状態で保持する地図データベース格納手段と、(ロ)出発地点と目標地点を指定してこれらの2地点の間を歩行によって移動するための地図を要求されたときこれらの2地点の間を歩行によって移動する歩行ルートを設定する歩行ルート設定手段と、(ハ)この歩行ルート設定手段によって設定された歩行ルートをすべて地図で表示することのできる地理的範囲の地図データを地図データベース格納手段から選択して要求側に送信する地図データ送信手段と、(ニ)地図データ送信手段で地図データを送信した要求側に時間間隔を置いて地図データの最新版のダウンロードを電子メールの送信によって催促する更新催促手段と、(ホ)要求側から少なくとも現在地点を示す情報が送られてきたとき、その現在地点から目標地点へ歩行によって到達する際に有益な予め定めた情報をこの要求側に通知する情報通知手段とを経路案内装置に具備させる。
【0014】
すなわち本発明では、経路案内装置が地図データベースを備えており、2地点を結ぶ歩行ルートの地図データが要求されたとき歩行ルートを設定して、その要求側としての通信端末に必要な地理的範囲の地図データを送信する。したがって、通信端末がたとえば災害が発生する前に地図データの要求を行っておくことで、ユーザは災害時に通信ネットワークに負担を掛けることなく地図を利用して目標地点まで辿り着くことができる。また、地図データを更新させるための更新催促手段を備えているので、これを基にして要求側としての通信端末が経路案内装置にアクセスすることで地図の内容や歩行ルートを新しい状態に保つことができる。
【0015】
また、経路案内装置は緊急事項通知手段を備えることで、要求側に津波の予測のような緊急に通知すべき事項を通知することが可能になる。
【0016】
請求項7記載の発明では、(イ)位置測定用人工衛星と、(ロ)出発地点と目標地点を指定してこれらの2地点の間を歩行ルートに沿って歩いて移動するための地図を表示するデータとしての地図データを少なくとも経路案内サービスの契約時に契約先から通信ネットワークを介して取得する地図データ取得手段と、この地図データ取得手段によって取得した地図データを常時格納しておく地図データ格納手段と、出発地点から目標地点に歩行ルートに沿って歩行する際にその案内を行うモードとしての経路案内モードに設定する経路案内モード設定手段と、この経路案内モード設定手段によって経路案内モードに設定された状態で位置測定用人工衛星から得られた情報を基にして歩行により変化する現在位置を時間間隔を置いて取得する現在位置取得手段と、この現在位置取得手段によって取得した現在位置を地図データ格納手段に格納された地図データの表わす地図上にマッピングするマッピング手段と、このマッピング手段で現在位置をマッピングした後の地図を経路案内用の情報として表示する表示手段とを具備する通信端末と、(ハ)各場所の地図を表示するデータの集合としての地図データベースを最新の状態で保持する地図データベース格納手段と、出発地点と目標地点を指定してこれらの2地点の間を歩行によって移動するための地図を無線によって接続された通信端末から要求されたとき歩行ルートを設定する歩行ルート設定手段と、この歩行ルート設定手段によって設定された歩行ルートをすべて地図で表示することのできる地理的範囲の地図データを地図データベース格納手段から選択して通信端末に送信する地図データ送信手段と、地図データ送信手段で地図データを送信した要求側に時間間隔を置いて地図データの最新版のダウンロードを電子メールの送信によって催促する更新催促手段と、通信端末から少なくとも現在地点を示す情報が送られてきたとき、その現在地点から目標地点へ歩行によって到達する際に有益な予め定めた情報をこの通信端末に通知する情報通知手段とを具備する経路案内装置とを経路案内システムに具備させる。
【0017】
すなわち本発明では、請求項1記載の発明による通信端末と、請求項5記載の発明による経路案内装置と、通信端末に現在位置を測定させるための位置測定用人工衛星とによって経路案内システムを構成している。このうちの経路案内装置は災害時に機能しなくても、それ以前に通信端末に地図データを提供していれば、通信端末はこの地図データと位置測定用人工衛星を用いた現在位置の測定によって歩行ルートに沿った経路の進行が可能になる。
【0018】
請求項8記載の発明では、(イ)出発地点と目標地点を指定してこれらの2地点の間を歩行ルートに沿って歩いて移動するための地図を表示するデータとしての地図データを経路案内サービスのサービス提供者側装置から契約成立時にダウンロードする地図データダウンロードステップと、(ロ)この地図データダウンロードステップでダウンロードした地図を所定の地図データ格納手段に格納する地図データ格納ステップと、(ハ)出発地点から目標地点に歩行ルートに沿って契約者が歩行する際にその案内を行うモードとしての経路案内モードに設定する経路案内モード設定ステップと、(ニ)この経路案内モード設定ステップで経路案内モードに設定された状態で位置測定用人工衛星から取得したデータを用いて現在位置を間隔を置いて取得する現在位置取得ステップと、(ホ)この現在位置取得ステップで取得した現在位置を地図データ格納手段に格納された地図データの表わす地図上にマッピングするマッピングステップと、(へ)このマッピングステップで現在位置をマッピングした後の地図を経路案内用の情報として表示する表示ステップとを経路案内方法に具備させる。
【0019】
すなわち本発明では、通信端末がサービス提供者側装置から契約成立時に地図データをダウンロードしこれを保存しておくので、災害時等の利用時に経路案内モードに設定して現在位置を時間を置いて確認していくことで、この通信端末を所持する契約者が歩行ルートに沿って歩行することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、災害発生前のように地図データのダウンロードのためのアクセスが集中する前に地図データを通信端末にダウンロードするので、災害時の安否トラフィックのように輻輳が生じている状態でも、普段から携行しているその通信端末を使用して目標地点までの地図を表示しこれに歩行ルートと現在位置を示すことができる。したがって、帰宅案内用の地図や地図を示した書籍を常に持ち歩く手間を省くことができるだけでなく、地図データを適宜更新することで、より短く安全な歩行ルートを用いることができ、かつ経済的である。しかも、通信端末なので、地震や津波の発生の予告といった緊急に通知すべき事項にも通信によって対応することができる。
【0021】
また、現在位置の確認は時間を置いて行うので、目標地点に至る距離が長い場合でも通信端末の電池の消耗を抑えた経路案内が可能になる。更に、経路案内装置が歩行ルートを歩行の途中で示すようにすれば、たとえば災害や新しい道の開通といった原因による歩行ルートの変更があったときに直ちに対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下実施例につき本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の一実施例における携帯電話機を通信端末として使用した経路案内システムの概要を表わしたものである。この経路案内システム100で、携帯電話機の通信サービスを行うネットワークサービス運営会社(キャリア)の無線ネットワーク制御装置101は、多数の無線基地局102、……102によるセル103、……103の集合によって携帯電話システム104を形成している。無線ネットワーク制御装置101は、パケット網105を介して、本実施例のサービスプロバイダの帰宅経路案内装置106に接続されている。帰宅経路案内装置106はたとえばインターネット上に存在している。帰宅経路案内装置106は、地図データベース107を備えている。また、携帯電話システム104によって通信を可能にする携帯電話機108は、GPS(Global Positioning System)用の複数の位置測定用人工衛星109(図では1つを表示。)から時間信号を受信して現在位置を判別することができるようになっている。
【0024】
図2は、地図データベースを接続した状態の本実施例の帰宅経路案内装置の構成を表わしたものである。帰宅経路案内装置106は、CPU(Central Processing Unit)121と、図示しない半導体メモリや磁気ディスク等の記憶媒体から構成される主制御部メモリ122を備えた主制御部123を備えている。ここで主制御部メモリ122には、CPU121が実行する制御プログラムが格納されていると共に、CPU121が制御プログラムを実行する際に必要な各種データを一時的に格納する作業用メモリとしての領域が備えられている。
【0025】
主制御部123は、データバス等の通信手段124を介して地図データベース107の他に、各部と接続されている。このうち、通信制御部125は、図1に示す携帯電話システム104の個々の携帯電話機108と通信を行うと共に、地図データベース107を最新の状態に保つための各種のデータを受信するようになっている。操作部126は図示しないキーボードやマウス等の入力デバイスから構成されている。オペレータはこの操作部126を用いることで、手動で地図データベース107の改定を行うこともできる。表示部127は、同じく図示しない液晶ディスプレイを備えており視覚的に各種のデータを表示するようになっている。ユーザ情報格納部128は、帰宅経路案内の契約を行ったユーザに関する情報を格納する。たとえばユーザの電話番号、ユーザから要求のあった出発地点と目標地点に関する情報や課金管理情報が格納されている。地図更新制御部129は、地図データベース107の更新に合わせて、あるいは定期的にユーザ側の地図データを更新するための時間管理を行うようになっている。ユーザ案内情報作成部130は、ユーザから要求があったときに、送られてきた位置情報を基にして、目標地点までの距離と到着予想時刻を編集したユーザ案内情報を作成するようになっている。
【0026】
図3は、本実施例の携帯電話機の構成を表わしたものである。この携帯電話機108はCPU141と主制御部メモリ142を備えた主制御部143を備えている。主制御部メモリ142に格納された帰宅経路案内サービス実行用のアプリケーションプログラムをCPU141が実行することで、携帯電話機108は本実施例の帰宅経路案内サービスを実行することができる。主制御部143は、データバス等のバスを通じて装置内の各部と接続されている。このうち、通信制御部144は、図1に示した無線基地局102と通信を行う他に、位置測定用人工衛星109の時間信号を受信できるようになっている。操作部145は、図示しないがダイヤルキーやファンクションキー等の入力デバイスから構成されている。表示部146は同じく図示しない液晶ディスプレイあるいは有機EL(organic electroluminescence)ディスプレイからなり、地図等の所定の視覚的なデータを表示するようになっている。音声入出力部147は主として通話のための音声を入出力する部分であり、図示しないマイクロフォンおよびスピーカから構成されている。
【0027】
地図格納部148は、図1に示した帰宅経路案内装置106からダウンロードした地図を格納するようになっている。地図格納部148は主制御部メモリ142と共通の記憶媒体によって構成されていてもよい。地図格納部148に格納される地図には、長距離を歩行して帰宅する際に便利なように歩行ルートと、その歩行ルートに沿った売店やトイレ、警察署、避難場所、野宿が可能な公園等の情報が付加されている。地図格納部148に格納された地図は、店舗等の設備や歩行ルートの変更があったときに対応できるように、適宜更新されるようになっている。タイマ149は、ユーザが歩行ルートに沿って帰宅するときに、一定の時間間隔で位置情報を取得したり、取得した位置情報を基にして現在位置を地図上に表示させるための計時制御を行うためのものである。一定の時間間隔で位置情報を取得したり現在位置の更新を行うようにしたのは、電池の寿命を保つためと、災害時における通信ネットワークおよび図1に示した帰宅経路案内装置106への負担を軽減するためである。もちろん、ユーザが必要に応じて位置情報を取得したり現在位置の更新を要求することは可能である。
【0028】
このように本実施例の携帯電話機108は、市販されている通常の携帯電話機であるが、その実行するアプリケーションプログラムによって帰宅経路案内サービスを実行できるような機能を実現している。
【0029】
図4は、携帯電話機のユーザが本実施例の帰宅経路案内サービスを受けるための契約処理の流れの概要を表わしたものである。図1および図3と共に説明する。まず、ユーザは自分の携帯電話機108を用いて帰宅経路案内装置106にアクセスする(ステップS201)。帰宅経路案内装置106がインターネット上にあれば、これに接続し、ウエブ画面を表示することになる。ユーザは帰宅経路案内装置106と接続されたら、災害時に勤務先から帰宅する場合のように徒歩による出発地点と目標地点を設定し、自己の電子メールのアドレスも示して帰宅経路案内サービスの契約を行う(ステップS202)。電子メールのアドレスは帰宅経路案内装置106がユーザに必要な情報を提供する際に使用される。たとえば地図データを更新する催促や、台風情報のように災害に関する情報がその例である。
【0030】
出発地点と目標地点は、経緯度によって具体的に指定してもよいし、住所や郵便番号、駅名を入力してその付近の地図を帰宅経路案内装置106で暫定的に表示させ、これを基にしてユーザ側が正確な地点を後に指定してもよい。更に、出発地点が大企業の本社あるいはデパートのような場合、その名称を入力することで地点を確定させてもよい。目標地点が広域避難所の場合にも同様に名称の入力で地点を確定させることができる場合が多い。
【0031】
出発地点と目標地点のペアは複数設定することができる。契約は、月極めのように期間を定めた課金方式であってもよいし、帰宅経路案内装置106へのアクセスのたびにその時間に応じて料金が発生する逐次課金方式であってもよい。契約が行われると、期間を定めた課金方式の場合には料金がクレジットカード等の公知の手法で徴収される。アクセスのたびに課金される方式でも入会金や基本料金が必要とされる場合には、これらの料金が契約時点で徴収される。
【0032】
契約が完了すると帰宅経路案内装置106は出発地点と目標地点のペアに対応したダウンロード可能な地図データのファイルを作成し、これをダウンロードさせる(ステップS203)。携帯電話機108はダウンロードしたこれら地図データのファイルを地図格納部148に格納する(ステップS204)。
【0033】
図5は、ユーザが出発地点と目標地点を指定して地図データをダウンロードする様子の一例を表わしたものである。図1に示した帰宅経路案内装置106は出発地点としてのA地点を含む単位地図データ161Aと、目標地点としてのB点を含む単位地図データ161Bと、これらを結ぶ歩行ルートを含む任意の枚数の単位地図データ161Xを地図データベース107(図1)から選び出して、これらを図3に示す要求のあった携帯電話機108の地図格納部148に格納するようになっている。
【0034】
それぞれの単位地図データ161A、161B、161Xは、図5に示したような大まかな表示内容から住宅や道路が詳細に配置された拡大された表示内容までの複数層の表示内容を含む視覚的データと地図上でのそれぞれの位置を表わす経緯度データで構成されている。携帯電話機108では、位置測定用人工衛星109(図1)を用いた位置測定の結果得られた経緯度情報を基にして、所望の縮倍率で地図データ上の地図を切り取ってその表示部146(図3)に表示することになる。
【0035】
ところで、図4で説明した各処理は、それぞれのユーザの契約時に行われる。したがって、ダウンロードの対象となる地図データのファイルが大容量であっても、災害時以外に契約が行われることが多いので、通信ネットワークに過大な負荷を掛けることはない。また、災害時の契約では地図データの簡易版のみをダウンロードさせるようにダウンロードの容量を制限することもできる。したがって、災害時に地図を適宜ダウンロードする形式と比較すると、通信ネットワークに地図データのダウンロードによる負荷が掛かることは特にない。
【0036】
図6は、地図編集モードにおける地図の任意の位置への経路ポイントの登録処理の様子を表わしたものである。図1および図3と共に説明する。ユーザは携帯電話機108を操作して地図編集モードに設定する。地図編集モードは、帰宅経路案内サービス実行用のアプリケーションプログラムが携帯電話機108にインストールされていることで実現する。地図編集モードになると、そのモードで作業を行うためのメニュー画面が表示され(ステップS221)、ユーザは帰宅のための歩行ルート上におけるポイントとなる学校等の目印となる位置を経路ポイントとして登録したり削除することができる(ステップS222、ステップS223)。
【0037】
メニュー画面で「登録」を選択すると(ステップS222:Y)、登録を行うためのメニュー画面が表示される(ステップS224)。この表示状態でユーザは登録の手法の種類または登録の処理自体の終了を選択することができる(ステップS225〜ステップS227)。ユーザが「GPSによる登録」を選択した場合(ステップS225:Y)、位置測定用人工衛星109を使用した登録の処理が行われる。このために、まず、位置測定用人工衛星109を使用して現在位置の測定が行われる(ステップS228)。次に、地図上のその現在位置にマークを記す場合のそのマークの選択のための選択肢や、その現在位置に文字を表示する場合の文字の入力枠の表示が行われる。たとえばユーザが歩行ルートの途中の小学校にいて、その場所をたとえば宿泊や休憩のための経路ポイントとして登録しようとしている場合、学校のマークを選択し、必要な場合にはそのマークの傍に表示される「休憩所」というような文字を入力する。これらの処理の完了したことが操作部145の所定のキーの操作によって主制御部143に入力されると(ステップS230:Y)、該当位置としての現在位置の経緯度情報に該当のマークや文字が対応付けられて地図格納部148の図示しない経路ポイントデータ領域に登録される(ステップS231)。
【0038】
一方、ユーザは、地図上の現在の位置以外の位置を経路ポイントとして指定してマークを付けたり文字を表示するために入力しようとする場合(ステップS225:N)、「経緯度入力」を選択する(ステップS226:Y)。この場合、ユーザは該当位置の経緯度を具体的に入力することで指定する(ステップS232)。これ以後は、ステップS229以降の処理に進む。ユーザが以上と異なり登録処理を断念するときには(ステップS226:N)、「終了」が操作部145から指定される(ステップS227:Y)。この場合、主制御部143は地図編集モードを終了させる(エンド)。
【0039】
地図データには、予めコンビニエンスストア等の店舗やトイレ等の施設についての表示データが組み込まれている。ユーザは、これ以外に、あるいはこれらの施設のうちの歩く上で大きな目標となるものを経路ポイントとして独自の観点で登録することができることになる。各経路ポイントはステップS231の処理で説明したように本実施例では地図格納部148の前記した経路ポイントデータ領域に登録される。本実施例の場合には、地図がまったく新しいデータ形式のものに将来変更された場合にも登録した経路ポイントをそのまま適用できるように、これらの経路ポイントに関するデータを地図データとは別に格納するようにしている。そして、表示部146に地図を表示するときに地図データの該当する経緯度の位置にマークや文字を重ね合わせるように表示する。これとは異なり、これらの経路ポイントに関するデータを地図データに組み込んで記憶するようにしてもよい。
【0040】
ステップS221で表示したメニュー画面からユーザが登録後の内容を変更したり削除するモードを選択した場合(ステップS222:N、ステップS223:Y)、表示部146には変更や削除を行う項目の一覧が表示される(ステップS223)。ここで、ユーザはすでに登録された各位置のマークや文字のうちの処理対象のものを選択して、これらを変更するか削除するかを選択することができる。ユーザが所望の項目を選択すると(ステップS234:Y)、選択された項目のデータが変更されたり削除される(ステップS235)。ユーザはこのような処理を行わずに「終了」を選択して(ステップS234:N、ステップS236:Y)、地図編集モードを終了させることもできる(エンド)。
【0041】
ところで地図データは契約時に契約先の携帯電話機108に帰宅経路案内装置106からダウンロードされるが、時間の経過によりその内容が古くなる。そこで、帰宅経路案内装置106は、たとえば3ヶ月置きといったように定期的に契約先のユーザに電子メールを送り、地図データのダウンロードを薦める。地震や新しい道路の完成等によって契約者の地図データに大きな変更が生じたときも帰宅経路案内装置106は該当するユーザに随時電子メールを送って地図データのダウンロードを薦めることができる。もちろん契約者としてのユーザは、何らかの理由によって地図データが破損したりしたような場合、あるいは電子メールによる通知が来ない場合でも地図データを新しくしたい場合、地図更新モードに設定して地図データを帰宅経路案内装置106からダウンロードすることができる。ただし、災害が発生した直後のように帰宅経路案内装置106の負担が大きいときには地図更新モードにおける地図データのダウンロードが制限されることがある。
【0042】
図7は、地図更新モードにおける携帯電話機の処理の流れを示したものである。図1および図3と共に説明する。ユーザは帰宅経路案内サービスのプログラムを起動させて地図更新モードに設定する。このようなプログラムは、図1に示したネットワークサービス運営会社の無線ネットワーク制御装置101から、あるいは帰宅経路案内装置106から携帯電話機108にダウンロードしておく。携帯電話機108は地図更新モードに設定されると、帰宅経路案内装置106にアクセスする(ステップS241)。そして、契約事項を自動的に送信して(ステップS242)、正当な契約者であることが帰宅経路案内装置106から承認されるとダウンロードできる項目やダウンロードに要する時間等の内容を示したダウンロード事項が携帯電話機108に送られてくる。携帯電話機108はこのダウンロード事項を受信すると(ステップS243:Y)、表示部146にこれを表示する(ステップS244)。
【0043】
ユーザが操作部145を操作してダウンロードする項目の全部または一部を指定してダウンロードの実行を指示すると(ステップS245:Y)、該当する項目の地図データがダウンロードされ(ステップS246)、地図格納部148に格納されている地図データが更新される(ステップS247)。
【0044】
これに対して、表示されたダウンロード事項として「地図データの変更はありません。」という表示が行われているときや、ダウンロードする容量が大きくて時間的な余裕がなくて今回はダウンロードをキャンセルしたいと思ったような場合、ユーザは操作部145を操作してダウンロードの中止を選択する(ステップS245:N、ステップS248:Y)。この場合には地図更新モードが直ちに終了する(エンド)。なお、地図データの全部または一部を紛失して再度ダウンロードするような場合、「地図データの変更はありません。」という表示にかかわらずダウンロードを行えばよい。
【0045】
次に、災害が発生した場合のように帰宅経路案内サービスを受けて帰宅しようとするような場合を説明する。ユーザは実際に徒歩で目標地点に向かう場合、帰宅経路案内サービスのプログラムを起動させ、操作部145(図3)を操作して案内実行モードに設定する。
【0046】
図8は、案内実行モードにおける携帯電話機の位置表示処理の内容を表わしたものである。図1および図3と共に説明する。帰宅経路案内サービスの制御プログラムが起動されて案内実行モードになると、主制御部143は通信制御部144を制御して複数の位置測定用人工衛星109から時間信号を受信させ、現在位置(経緯度)を取得する(ステップS261)。そして、地図格納部148に格納された地図データファイルの中の現在位置に対応するエリアの地図を抜き出して表示部146に表示させる(ステップS262)。ユーザは操作部146を操作して、表示する地図のエリアや縮尺を変更することができる。
【0047】
次に主制御部143は、現在の位置(経緯度)とユーザの採る目標地点を帰宅経路案内装置106に送出して、目標地点までの歩行ルートの提示と歩行距離、到着予想時刻および残り時間の算出を要求する(ステップS263)。帰宅経路案内装置106は、地図データベース107に最新の地図データを格納するようにしているので、地震等の異変による歩行ルートの変更にも対応することができる。たとえば、地震の前に想定されていた歩行ルートと交わる高速道路が崩壊して、その歩行ルートを採ることができなくなったような場合、地図データベース107が変更される。これにより、帰宅経路案内装置106は迂回ルートを作成する。したがって、ユーザ側の携帯電話機108に格納されている地図データが最新のものでなくても、帰宅経路案内装置106はユーザに最新の歩行ルートを提供することができる。
【0048】
帰宅経路案内装置106は携帯電話機108から送られてきた現在の位置と目標地点の2点から定まる歩行ルートを基にして、現在まで歩いた道のりに沿った歩行距離、現在の位置から目標地点までの歩行距離、目標地点までの到着予想時刻および到達までの残り時間をそれぞれ算出し、携帯電話機108に通知する。到着予想時刻および到達までの残り時間は、周囲の状況や本人の歩く速度によって変動する。そこで出発地点の近傍では基準の速度(たとえば1時間当たり4キロメートル)を基にして算出し、ある程度ユーザが移動したら、その時々の位置と到達時刻との関係で実際の移動速度を算出し、これを基にした到着予想時刻や残り時間を通知するようにしている。したがって、ユーザが疲れて休憩しがちになれば、到着予想時刻が遅れ、また残り時間が長くなる。
【0049】
携帯電話機108は算出結果を受信すると(ステップS264:Y)、ステップ242で表示した地図にユーザの現在位置を表示すると共に、目標地点までの最新の歩行ルートを表示する。また、出発地点からの歩行距離や目標地点までの歩行距離と到着予想時刻および残り時間のうち、ユーザが設定した内容を表示部146に表示する(ステップS265)。なお、携帯電話機108は位置測定用人工衛星109から得られたデータをそのまま帰宅経路案内装置106に送って、現在の位置(経緯度)を自装置で演算するのを省略することも可能である。
【0050】
携帯電話機108は帰宅経路案内装置106との間のこのような通信を常に行うのではなく、次の位置取得要求が発生するまで帰宅経路案内装置106との通信は停止され、待機(パーソナルコンピュータにおけるスタンバイ)状態あるいは通信制御部144の電源がオフされた状態となる(ステップS266:N、ステップS267:N)。この間にユーザが案内実行モード自体を解除したり携帯電話機108の電源をソフトウェア的に切断した場合には(ステップS267:Y)、案内実行モードが終了する。
【0051】
このように携帯電話機108と帰宅経路案内装置106の通信は連続して行われるのではなく、タイマ149(図3)を用いてユーザが予め設定した時間間隔(たとえば5分とか10分)あるいはユーザによる所定のキー操作によって断続的に発生し、それ以外の時間帯では両者の通信は停止している。位置取得要求が新たに発生すると(ステップS266:Y)、携帯電話機108はステップS261に処理が戻り、すでに説明した一連の処理が再開する。それまでは携帯電話機108の表示部146に前回の結果が地図データと共に表示されることになる。この表示も、バックライトの節約のために、ユーザがキー操作を1分等の所定の時間行わないときは消灯するようになっていてもよい。このように携帯電話機108と帰宅経路案内装置106の通信が断続的に行われても、案内実行モードが終了していない限り、表示部146はバックライトが点灯した時点でユーザの歩行を案内する地図を表示する。
【0052】
なお、携帯電話機108によっては予め設定した時間間隔で携帯電話機108と帰宅経路案内装置106が通信を行うのではなく、目標地点までの歩行ルート上に既に説明したような幾つかの経路ポイントを配置したとき、これらの経路ポイントに到着する少し前の時点を時間的に予測して、この時間に通信を開始するようにしてもよい。この場合、位置測定用人工衛星109を使用して位置を監視し、経路ポイントの手前に到達した時点で携帯電話機108と帰宅経路案内装置106が通信を再開するようにしてもよい。
【0053】
経路ポイントに到着する少し前の時点を予測するには、ユーザの移動速度から導かれる経路ポイントへの到着時刻に所定の補正値(時間)を差し引くようにすることで実現することができる。たとえば位置測定用人工衛星109からの電波を受信するための電源を時間間隔を置いてオンするようにして、それぞれの時に得られる位置と経路ポイントの位置との差からユーザの推定移動速度を算出し、これを基にして次の経路ポイントに到達する時刻を予想する。
【0054】
このような経路ポイントを基準とした現在位置の測定の他に、ユーザの設定によって、たとえば10分置きといった定期的に位置測定用人工衛星109から電波を受信して位置の測定を行ってもよいことはもちろんである。
【0055】
なお、携帯電話機108はその電源がオフにされない限り、帰宅経路案内サービスが実行されているときでも着信があった場合に通話を行うことができる。通話のための発信および電子メールの送受信についても同様である。
【0056】
図9は、案内実行モードで携帯電話機の表示部に表示された内容の一例を表わしたものである。表示部146には、ユーザの現在位置171を記した地図データが表示される。地図データは、表示部146を水平にしたとしたときユーザの進行する方向と一致するように表示される。図では表示部146が縦長に配置されているので、長手方向が進行方向となる。地図データには、矢印の間隔が100メートルを示すようにして進行ルートに沿って矢印が複数表示されている。また、帰宅までの距離と時間が表示されると共に、歩行者にとって必要な地図上の施設が表示される。図9では、コンビニエンスストア(コンビニ)が前方に存在し、トイレを使用できることと、水を補給できることが示されている。なお、地図データは任意の方向にスクロールすることができる。また、地図の縮倍率を変更することもできる。
【0057】
図10は、帰宅経路案内装置の処理の内容を示したものである。図1および図2と共に説明する。帰宅経路案内装置106は、契約を行った携帯電話機108のいずれかから地図データのダウンロードを要求されるか(ステップS281)、図8のステップS263で説明した歩行ルートの提示や距離の算出等の要求の受信があるか(ステップS282)、あるいはメールの送信要求が発生したか(ステップS283)の監視を行っている。ここで、ステップS281とステップS282の処理は、ユーザの携帯電話機108が帰宅経路案内装置106にアクセスしている状態で行われる。
【0058】
地図データのダウンロード要求があると(ステップS281:Y)、ユーザの出発地点と目標地点の2点を結ぶ歩行ルートの全部を含む地図データを該当する携帯電話機108に配信する(ステップS284)。このような地図データの送信は、契約が成立した場合と、ステップS283でユーザの携帯電話機108にたとえば3カ月置きにダウンロードの催促を行うメールを送信し、これに応える形でそのユーザの携帯電話機108が帰宅経路案内装置106にアクセスして地図データのダウンロードを要求してきた場合の2通りが存在する。道路が開通したり、災害の発生で道路が長期間不通になるような大きな地図上の変更が生じた場合にも、該当する携帯電話機108に対して地図データを更新するように電子メールが送信される(ステップS283:Y、ステップS285)。
【0059】
図8のステップS263で説明した歩行ルートの提示や距離の算出等の要求が携帯電話機106から送られてきた場合(ステップS282:Y)、主制御部143は、送られてきたデータに含まれる現在位置(経緯度)を基にして目標地点までの歩行距離、到着予想時刻および残り時間の算出を行う(ステップS286)。そして、その算出結果と目標地点までの歩行ルートを該当する携帯電話機108に送信することになる(ステップS287)。
【0060】
以上説明した本実施例の帰宅経路案内サービスによれば、災害の影響が及ばない位置測定用人工衛星109や、インターネット等の通信ネットワークに接続された帰宅経路案内装置106を使用するので、既存の携帯電話会社の屋内機器や屋外機器が倒壊してこれらのサービスが停止した状態でも帰宅帰路地図を表示し、活用することができる。特に、インターネットへの接続に障害が発生した場合であっても、地図データは契約者の携帯電話機にダウンロードされているので、これを活用することができる。更に位置測定用人工衛星109を使用してその地図データにより表示される地図上に現在位置を表示しながら目標地点に移動することができる。
【0061】
また、地図データは定期的あるいは自主的にその内容を簡易な手順で更新することができるので、地図の表示された帰宅用の書籍を購入した場合のように内容が陳腐化するおそれもない。更に、地図およびこれに付帯する施設等のデータは災害時以前からダウンロードできるため、災害時のトラフィック輻輳を起こさないだけでなく、輻輳状態のときにダウンロードを強行する必要もない。
【0062】
また、実施例の帰宅経路案内サービスは災害が生じる前に、休日や空いている時間を利用して実際に帰宅訓練を行うことができる。ダウンロードした地図データは携帯電話機に格納されるので、帰宅帰路をすべて、あるいは部分的に何度も事前に表示することができ、実際に帰宅路を携帯電話に表示しながら一度に、あるいは日を改めてスケジュールを分割して、徒歩帰宅を実際に体験できるからである。
【0063】
更に本実施例の帰宅経路案内サービスでは、数時間あるいは10時間以上にも及ぶ徒歩による帰宅時に帰宅経路案内装置へのアクセスを間隔を置いて行うようにし、また、位置測定用人工衛星からの電波の受信時や携帯電話機の表示部の表示時における電源の消費を抑えるようにしたので、携帯電話機を長時間使用することができる。
【0064】
<発明の変形可能性>
【0065】
本発明は、以上説明した実施例に限定されるものではない。たとえば、実施例では携帯電話機をサービスの対象としたが、PHS(Personal Handy-phone System)、無線通信機能を備えたPDA(Personal Digital Assistant)や小型のパーソナルコンピュータのような無線端末でGPSを用いて現在位置の測定を行うことのできるものに対して本発明を同様に適用することができる。
【0066】
また、帰宅経路案内サービスでの帰宅経路案内装置あるいは位置測定用人工衛星との通信を行っているときに、着信呼に対応することのできない回路構成の通信端末では、着信呼に備えて通信機能を自動的にオフにしたり、ユーザが手動でオフにできるような機能を付加してもよい。
【0067】
更に、災害が発生した場合のような状況で通信端末が無線基地局からの電波を受信することができなくなった場合、携帯電話システムが正常であることを前提に通信を繰り返し試みることは電力を消耗することになる。したがって、たとえば帰宅経路案内サービスが起動している災害等の状況下では、無線基地局からの電波を受信することができない場合には、無線基地局との通信を少なくとも一定時間オフにする機能が通信端末に付加されていてもよい。
【0068】
また、実施例では帰宅経路案内装置が緊急事態を電子メールで契約者に通知することにしたが、たとえば地震や津波が予知された場合には、契約者の通信端末にこれを合成音声で電話することも可能である。
【0069】
更に実施例では歩行ルートを最新の歩行ルートとして帰宅経路案内装置が携帯電話機に通知する構成としたが、地図データのダウンロード時あるいは更新時に示した歩行ルートを携帯電話機が活用できることは当然である。すなわち、災害が生じて無線基地局が携帯電話機と通信できない状態では、地図データのダウンロード時あるいは更新時に示した歩行ルートを大まかな案内路として活用することができる。この場合であっても、地図データのダウンロードをその指示に応じて繰り返していれば、会社や自宅に購入している帰宅支援用の書籍に掲載されている帰宅用の歩行ルートよりも内容が新しい可能性が高い。
【0070】
また、通信端末の節電の態様も実施例で示した以外に各種の態様を採ることができる。そのうちの2つの例を次に説明する。
【0071】
図11は、災害の発生時を起点として比較的短い一定時間だけ携帯電話機を表示状態とし、その後、比較的長い時間を休眠状態とする時間設定を繰り返すようにした第1の例を示している。図1および図3と共に説明する。時刻t1に災害が発生したとする。これを基にしてユーザが時刻t2に帰宅経路案内サービス実行用のアプリケーションプログラムを起動したとする。このときから携帯電話機108は比較的短い第1の時間T1(たとえば1分)だけ帰宅案内用の表示を行い、それから時刻t3で比較的長い第2の時間T2(たとえば10分)は表示部146の表示をオフにして休眠状態(スタンバイ)となる。
【0072】
この後は、第2の時間T2が経過した時刻t4に休眠状態(スタンバイ)から復帰して、位置測定用人工衛星109の時間信号を受信して位置を測定し、これを繰り返す。その後時刻tn+1のように帰宅経路案内サービス実行用のアプリケーションプログラムを起動したときには、第1の時間T1だけ表示部146に表示された地図に現在位置を表示する。この後も同様の時間間隔で休眠状態と位置測定および地図の表示を繰り返す。
【0073】
図12は、第1の例と同様の制御を行う一方で歩行ルートの分岐点の手前で比較的短い一定時間だけ携帯電話機を表示状態とする第2の例を示している。図1および図3と共に説明する。この第2の例で、携帯電話機108は時刻t3以後に表示部146を消灯した後も、第2の時間T2(たとえば10分)の周期で休眠するが、その後も歩行ルートの分岐点の手前に到達するまで表示がオフの状態を保っている。この間も第2の時間T2の終了するときに位置測定用人工衛星109の時間信号を受信して位置を測定し、予め設定しておいた歩行ルートの分岐点の手前に到達する時刻を予測している。
【0074】
その結果、たとえば時刻t5に分岐点の近傍に到達すると、この時点で携帯電話機を表示状態とし、第1の時間T1だけユーザが進むべき方向を地図で確認できるようにしている。この後は同様の制御を繰り返す。これにより、たとえばその後の時刻tmに次の歩行ルートの分岐点の手前に到達した時点で第1の時間T1だけ表示部146が地図を表示し、進むべき方向を確認させることになる。
【0075】
この第2の例では、携帯電話機108が分岐点以外の場所で表示部146を消灯状態にするので、節電効果を高めることができる。しかも、第1の例と共に、最悪の場合には帰宅経路案内装置106になんら頼ることなく、帰宅の案内を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施例における携帯電話機を通信端末として使用した経路案内システムの概要を表わしたシステム構成図である。
【図2】地図データベースを接続した状態の本実施例の帰宅経路案内装置の構成を表わしたブロック図である。
【図3】本実施例の携帯電話機の構成を表わしたブロック図である。
【図4】携帯電話機のユーザが本実施例の帰宅経路案内サービスを受けるための契約処理の概要を表わした流れ図である。
【図5】本実施例でユーザが出発地点と目標地点を指定して地図データをダウンロードする様子の一例を表わした流れ図である。
【図6】本実施例で地図編集モードにおける地図の任意の位置への経路ポイントの登録処理の様子を表わした流れ図である。
【図7】本実施例で地図更新モードにおける携帯電話機の処理の流れを示した流れ図である。
【図8】本実施例で案内実行モードにおける携帯電話機の位置表示処理の内容を表わした流れ図である。
【図9】本実施例で案内実行モードで携帯電話機の表示部に表示された内容の一例を示す平面図である。
【図10】本実施例で帰宅経路案内装置の処理の内容を示した流れ図である。
【図11】本発明の変形例として通信端末の節電の第1の例を示した説明図である。
【図12】本発明の変形例として通信端末の節電の第2の例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0077】
100 経路案内システム
101 無線ネットワーク制御装置
102 無線基地局
104 携帯電話システム
106 帰宅経路案内装置
107 地図データベース
108 携帯電話機
109 位置測定用人工衛星
121、141 CPU
122、142 主制御部メモリ
123、143 主制御部
125、145 通信制御部
129 地図更新制御部
130 ユーザ案内情報作成部
146 表示部
148 地図格納部
149 タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地点と目標地点を指定してこれらの2地点の間を歩行ルートに沿って歩いて移動するための地図を表示するデータとしての地図データを少なくとも経路案内サービスの契約時に契約先から通信ネットワークを介して取得する地図データ取得手段と、
この地図データ取得手段によって取得した地図データを格納しておく地図データ格納手段と、
前記出発地点から目標地点に前記歩行ルートに沿って歩行する際にその案内を行うモードとしての経路案内モードに設定する経路案内モード設定手段と、
この経路案内モード設定手段によって経路案内モードに設定された状態で歩行により変化する現在位置を時間間隔を置いて取得する現在位置取得手段と、
この現在位置取得手段によって取得した現在位置を前記地図データ格納手段に格納された地図データの表わす地図上にマッピングするマッピング手段と、
このマッピング手段で現在位置をマッピングした後の地図を経路案内用の情報として表示する表示手段
とを具備することを特徴とする通信端末。
【請求項2】
前記地図データ格納手段に格納された地図データを時間を置いて更新する地図データ更新手段
を具備することを特徴とする請求項1記載の通信端末。
【請求項3】
前記地図データ格納手段に格納された地図データの表わす地図上に歩行ルートに沿って、ポイントとなる幾つかの経路ポイントを予め設定しておく経路ポイント設定手段を具備することを特徴とする請求項1記載の通信端末。
【請求項4】
現在位置が前記経路ポイントの近くに到達したことを判別する経路ポイント手前到達時期判別手段と、
この経路ポイント手前到達時期判別手段が前記経路ポイントの近くに到達したことを判別したとき前記契約先との通信を開始し、前記目標地点へ歩行によって到達する際に有益な予め定めた情報の提供を要求する情報提供要求手段を具備することを特徴とする請求項3記載の通信端末。
【請求項5】
各場所の地図を表示するデータの集合としての地図データベースを最新の状態で保持する地図データベース格納手段と、
出発地点と目標地点を指定してこれらの2地点の間を歩行によって移動するための地図を要求されたときこれらの2地点の間を歩行によって移動する歩行ルートを設定する歩行ルート設定手段と、
この歩行ルート設定手段によって設定された前記歩行ルートをすべて地図で表示することのできる地理的範囲の地図データを前記地図データベース格納手段から選択して要求側に送信する地図データ送信手段と、
前記地図データ送信手段で地図データを送信した前記要求側に時間間隔を置いて地図データの最新版のダウンロードを電子メールの送信によって催促する更新催促手段と、
前記要求側から少なくとも現在地点を示す情報が送られてきたとき、その現在地点から前記目標地点へ歩行によって到達する際に有益な予め定めた情報をこの要求側に通知する情報通知手段
とを具備することを特徴とする経路案内装置。
【請求項6】
前記要求側に緊急に通知すべき事項を通知する緊急事項通知手段を具備することを特徴とする請求項5記載の経路案内装置。
【請求項7】
位置測定用人工衛星と、
出発地点と目標地点を指定してこれらの2地点の間を歩行ルートに沿って歩いて移動するための地図を表示するデータとしての地図データを少なくとも経路案内サービスの契約時に契約先から通信ネットワークを介して取得する地図データ取得手段と、この地図データ取得手段によって取得した地図データを常時格納しておく地図データ格納手段と、前記出発地点から目標地点に歩行ルートに沿って歩行する際にその案内を行うモードとしての経路案内モードに設定する経路案内モード設定手段と、この経路案内モード設定手段によって経路案内モードに設定された状態で前記位置測定用人工衛星から得られた情報を基にして歩行により変化する現在位置を時間間隔を置いて取得する現在位置取得手段と、この現在位置取得手段によって取得した現在位置を前記地図データ格納手段に格納された地図データの表わす地図上にマッピングするマッピング手段と、このマッピング手段で現在位置をマッピングした後の地図を経路案内用の情報として表示する表示手段とを具備する通信端末と、
各場所の地図を表示するデータの集合としての地図データベースを最新の状態で保持する地図データベース格納手段と、出発地点と目標地点を指定してこれらの2地点の間を歩行によって移動するための地図を無線によって接続された通信端末から要求されたとき前記歩行ルートを設定する歩行ルート設定手段と、この歩行ルート設定手段によって設定された前記歩行ルートをすべて地図で表示することのできる地理的範囲の地図データを前記地図データベース格納手段から選択して前記通信端末に送信する地図データ送信手段と、前記地図データ送信手段で地図データを送信した前記要求側に時間間隔を置いて地図データの最新版のダウンロードを電子メールの送信によって催促する更新催促手段と、前記通信端末から少なくとも現在地点を示す情報が送られてきたとき、その現在地点から前記目標地点へ歩行によって到達する際に有益な予め定めた情報をこの通信端末に通知する情報通知手段とを具備する経路案内装置
とを具備することを特徴とする経路案内システム。
【請求項8】
出発地点と目標地点を指定してこれらの2地点の間を歩行ルートに沿って歩いて移動するための地図を表示するデータとしての地図データを経路案内サービスのサービス提供者側装置から契約成立時にダウンロードする地図データダウンロードステップと、
この地図データダウンロードステップでダウンロードした地図を所定の地図データ格納手段に格納する地図データ格納ステップと、
前記出発地点から目標地点に歩行ルートに沿って契約者が歩行する際にその案内を行うモードとしての経路案内モードに設定する経路案内モード設定ステップと、
この経路案内モード設定ステップで経路案内モードに設定された状態で位置測定用人工衛星から取得したデータを用いて現在位置を間隔を置いて取得する現在位置取得ステップと、
この現在位置取得ステップで取得した現在位置を前記地図データ格納手段に格納された地図データの表わす地図上にマッピングするマッピングステップと、
このマッピングステップで現在位置をマッピングした後の地図を経路案内用の情報として表示する表示ステップ
とを具備することを特徴とする経路案内方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−101970(P2008−101970A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283604(P2006−283604)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】