説明

通信端末及び情報提供方法

【課題】緊急警報情報を受信したユーザがその後どのように行動すべきかを速やかに判断できるようにすること。
【解決手段】通信端末は、緊急警報情報を含む通信信号を受信する受信部と、ユーザの現在地の情報を取得する現在地情報取得部と、ユーザ又は通信システムが指定した登録地点の情報を保存する保存部と、受信部が通知信号を受信したことに応答して、現在地及び登録地点の間の距離を算出する処理部と、少なくとも距離を含む提供情報を前記ユーザに提供する情報提供部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信端末及び情報提供方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
近年、国内外において未曾有の自然災害が発生しており、災害対策への関心が以前にも増して高まっている。そのような災害による被害を少しでも軽減するため、多くの通信システムは、緊急警報情報を一斉に同報配信することで、多数のユーザに緊急事態を速やかに通知している。このような同報配信サービスについては、非特許文献1に記載されている。
【0003】
緊急警報情報の典型例は気象庁から発せられた緊急地震速報であり、震源地や地震の大きさ等を示す情報が含まれている。このような緊急警報情報は重要な情報ではあるが、多数のユーザ全員に関連する一般的な情報である。
【0004】
しかしながら、ユーザは通信システムの様々な場所に在圏しているので、緊急警報情報を受信した後、ユーザ各自がどのように行動すべきかは同じではない。例えば、緊急地震速報を受信したユーザがどのように避難すべきかは、全てのユーザにとって同じではない。
【0005】
ユーザ各々に対する避難誘導に関し、特許文献1に記載の発明では、緊急情報通知装置が緊急時に緊急情報通知用Java(登録商標)アプリケーションプログラムを携帯電話端末へ基地局を介して配信する。携帯電話端末はそれをダウンロードして起動し、位置情報を緊急情報通知装置に返す。緊急情報通知装置は受信した位置情報に基づいて避難場所及び避難経路を含む地図情報を作成し、携帯電話端末へ送信する。これにより避難経路を知らないユーザにも避難経路を案内することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-242580号公報(要約、請求項1、段落[0045])
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】NTT DoCoMo テクニカル・ジャーナルVol.15,No.4, 2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の発明では、ユーザが避難経路の地図情報を取得するまでの間に、緊急情報通知用Java(登録商標)アプリケーションプログラムのダウンロード、携帯電話端末の位置情報の取得・報告、及び緊急情報通知装置における地図情報の作成・配信、といういくつもの手順を必要とする。従って、緊急警報情報を受信したユーザが、地図情報を取得して実際に避難することを判断するまでの間に、かなり長い時間を費やしてしまうことが懸念される。
【0009】
本発明の課題は、緊急警報情報を受信したユーザがその後どのように行動すべきかを速やかに判断できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施例による通信端末は、
緊急警報情報を含む通信信号を受信する受信部と、
ユーザの現在地の情報を取得する現在地情報取得部と、
前記ユーザ又は通信システムが指定した登録地点の情報を保存する保存部と、
前記受信部が前記通知信号を受信したことに応答して、前記現在地及び前記登録地点の間の距離を算出する処理部と、
少なくとも前記距離を含む提供情報を前記ユーザに提供する情報提供部と
を有する通信端末である。
【発明の効果】
【0011】
一実施例によれば、緊急警報情報を受信したユーザがその後どのように行動すべきかを速やかに判断できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例で使用可能な通信システムの概略図。
【図2A】通信端末の機能ブロック図。
【図2B】災害モード保存部に災害モードの情報が保存されている様子を示す図。
【図3】基本動作例を示すフローチャート。
【図4】災害モードを自動的に登録する動作例を示すフローチャート。
【図5】変形例において使用される通信端末の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
緊急地震速報等のような緊急警報情報を含むメッセージを受信したユーザの通信端末は、現在地及び所定の登録地点の間の距離を算出し、少なくともその距離を含む提供情報をユーザに提供する。所定の登録地点は、災害が生じる危険性が高い場所である。予め登録した登録地点から現在地までの距離等を含む情報が、提供情報としてユーザに提供されるので、ユーザは、災害に対してどの程度警戒すればよいか(現在地から速やかに離れて高所へ避難すべきか否か等)を迅速に判断することができる。
【0014】
以下、添付図面を参照しながら実施例を説明する。図中、同様な要素には同じ参照番号又は参照符号が付されている。実施例は次の観点から説明される。
【0015】
1.通信システム
2.通信端末
3.基本動作例
4.災害モードを登録する動作例
5.変形例
【実施例1】
【0016】
<1.通信システム>
図1は、実施例で使用可能な通信システムの概略図を示す。図1には通信システムに備わる様々なノード、要素及び処理部の内、実施例に特に関連するものが示されている。図示されているように、地震のような緊急事態が発生した場合、気象庁は緊急地震速報の情報を通信システムのオペレータに配信する。メール配信センタとして示されている通信システムは、気象庁から受信した情報に基づいて、緊急警報情報のメッセージを作成し、配信エリアを特定し、配信する。一例として、メール配信センタは、セルブロードキャストサービス(CBS)における同報配信装置又はセルブロードキャストセンタ(CBC)である。同報配信装置CBCは、交換局及び基地局等を経由して、緊急警報情報のメッセージをユーザの通信端末に一斉に配信する。そのようなメッセージは、適切な如何なる移動通信システムを経由して配信されてもよい。移動通信システムの具体例は、第3世代方式(W-CDMA方式、GSM方式等)の移動通信システム、LTE方式の移動通信システム、LTE-Advanced方式及び将来規定される方式の移動通信システム等であるが、これらに限定されない。緊急警報情報のメッセージは一例として電子メールとして配信されてもよい。説明の便宜上、気象庁が地震を観測した場合を説明しているが、気象庁に限らず、例えば自治体のような何らかの権限を有する組織や機関が情報を配信してもよい。また、緊急地震速報だけでなく、警報を促す任意の警報情報が配信されてもよい。例えば、津波警報、高潮警報、洪水警報、火山現象警報等の情報が配信されてもよい。更に、自然災害に起因する情報だけでなく、国際紛争等のような人災に起因する情報が配信されてもよい。
【0017】
後述するように、緊急警報情報を含むメッセージを受信したユーザの通信端末は、現在地及び所定の登録地点の間の距離を算出し、少なくともその距離を含む提供情報をユーザに提供する。所定の登録地点は、災害が生じる危険性が高い場所であり、具体的には、海岸の場所、土砂災害が起こりやすい場所、危険物を取り扱う場所(例えば、有毒ガス等の危険物施設、原子力発電所)等である。災害が生じる危険性が高い場所が現在地と近いか否かを速やかに知ることで、ユーザはどのように行動すべきかを迅速に判断することができる。
【0018】
<2.通信端末>
図2Aは、図1に示す通信システムにおいて使用可能な第1の形態における通信端末の機能ブロック図を示す。図2Aには通信端末に備わる様々な処理部又は機能部のうち実施例に特に関連するものが示されている。通信端末は、緊急警報情報を受信しかつ現在地の情報を取得すること等が可能な適切な如何なるユーザ装置でもよい。通信端末は典型的には携帯電話であるが、他の装置でもよい。例えば、通信端末は、情報端末、高機能携帯電話、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、パーソナルディジタルアシスタント、携帯用パーソナルコンピュータ、パームトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ等であるが、これらに限定されない。通信端末は、第1の受信部201、緊急メッセージ取得203、表示部205、スピーカ207、第2の受信部209、位置情報取得部211、位置情報保存部213、災害モード保存部215、判定部217及び提供情報生成部219を少なくとも有する。
【0019】
第1の受信部201は、通信システムにおける無線信号をセルラ基地局を通じて受信する。図示の簡明化のため詳細には図示されていないが、受信部201には、周波数フィルタ、増幅部、周波数変換部等の機能部が存在する。特に、第1の受信部201は、緊急地震速報等のような緊急警報情報を含む通知信号を受信する。
【0020】
緊急メッセージ取得203は、第1の受信部201により受信された信号に緊急警報情報を含むメッセージが含まれているか否かを判定し、含まれていた場合にはメッセージをユーザインタフェース部(205、207)及び判定部217に通知する。
【0021】
表示部205は、ユーザに情報を視覚的に出力する視覚的なインタフェースである。具体的には、表示部205は、ディスプレイ、キーパッドを備えた制御パネル、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELパネル、タッチスクリーン等であるが、これらに限定されない。本実施例において、表示部205は、接触感知式の透明パネルでカバーされており、通信端末の動作を制御するためのユーザの指の動きを検知することができる。
【0022】
スピーカ207は、ユーザに情報を音声で出力する聴覚的なインタフェースである。
【0023】
表示部205及びスピーカ207は通信端末に備わるユーザインタフェースの一例にすぎず、通信端末には他のユーザインタフェースが備わっていてもよい。例えば、ユーザが喋った操作を実行できるように、マイクロフォンのような音声入力インタフェースの機能が備わっていてもよい。
【0024】
第2の受信部209は、通信端末の位置情報を取得するための無線信号を受信する。そのような無線信号は、例えば、グローバルポジショニングシステム(GPS)における人工衛星から取得した無線信号である。或いは、「5.変形例」で説明するように、セルラ基地局からの制御信号が、通信端末の位置情報を取得するための無線信号として使用されてもよい。
【0025】
位置情報取得部211は、第2の受信部209で受信した無線信号から位置情報を取得する。GPS方式の無線信号の場合、その無線信号から通信端末の緯度、経度及び海抜高度の情報が位置情報として取得される。或いは、セルラ基地局の位置が通信端末の位置情報として使用されもよい。位置情報は、適切な如何なるタイミングで取得されてもよい。一例として、位置情報は、定期的に取得されてもよい。或いは、位置情報は、ユーザ又は通信システムからの要求に応じて取得されてもよい。
【0026】
位置情報保存部213は、位置情報取得部211で取得又は算出された位置情報を保存し、判定部217に適宜通知する。
【0027】
災害モード保存部215は、災害モード毎に又は災害種別毎に登録地点の位置情報を保存する。言い換えれば、災害モード保存部215は、1つ以上の災害モードの各々について、登録地点の位置情報を保存する。登録地点とは、災害が生じるおそれがある場所として、ユーザ又は通信システムが指定した場所である。従って、登録地点はユーザが主観的に指定する場所であってもよいし、後述するように何らかの基準に基づいて客観的に決定された場所でも良い。1つの災害モードについて、少なくとも1つの登録地点が存在する。災害モードとは、災害に対する対応策を促す情報(典型的には、災害が生じるおそれがある場所から現在地が近いか遠いかを示す情報)をユーザに提供する動作モード又はサービスである。災害モードは、災害種別毎に規定される。例えば、津波対策用の災害モード、放射能対策用の災害モード、土砂災害対策用の災害モード等が考えられる。これらの災害モード又は災害種別は単なる一例に過ぎず、本発明は任意の災害モード(又は災害種別)に適用可能である。津波対策用の災害モードの場合、「災害が生じるおそれがある場所」は、海岸である。放射能対策用の災害モードの場合、「災害が生じるおそれがある場所」は、原子力発電所の場所である。土砂災害対策用の災害モードの場合、「災害が生じるおそれがある場所」は、崖等の場所である。災害モード保存部215に保存される内容は、不変に維持されてもよいし、適宜変更又は更新されてもよい。
【0028】
図2Bは、災害モード保存部215に災害モード及び登録地点(災害が生じるおそれがある場所)が保存されている様子を一覧表の形式で示す。図示の例の場合、3つの災害モード1、2及び3が登録されている。災害モード1については3つの登録地点11、12及び13が登録されている。災害モード2については1つの登録地点21が登録されている。災害モード3については2つの登録地点31及び32が登録されている。このように、災害モード及び登録地点を災害モード保存部215に登録することは、ユーザがユーザインタフェース(205等)を通じて行ってもよい。或いは、「4.災害モードを登録する動作例」において説明するように、予め定められた手順に従って、それらの登録が自動的に行われてもよい。
【0029】
図2Aの判定部217は、緊急警報情報を含むメッセージが受信されたことに応答して、位置情報保存部213から通信端末の現在地の位置情報を取得し、保存されている災害モード各々について、現在地が登録場所からどの程度離れた距離にあるかを算出する。災害モードが複数個登録されていた場合、現在地と登録場所との間の距離は、災害モード毎に算出される。1つの災害モードの中で複数の登録地点が登録されていた場合は、登録地点毎に現在地との距離が算出される。例えば、土砂災害対策用の災害モードが、複数の崖に対応する複数の登録地点と共に登録されている場合、複数の崖の各々と現在地との間の距離が算出される。
【0030】
判定部217は、算出した距離を提供情報生成部219に出力する。位置情報保存部213が保存している現在地の位置情報が、海抜高度のような高さの情報を含んでいた場合、判定部217は距離とともに海抜高度の情報も提供情報生成部219に出力する。登録地点毎に算出された距離が複数個存在する場合、距離の短い順に優先順位が付与されてもよい。或いは、複数の災害モード又は災害種別に対して、優先順位が予め決められていてもよい。例えば、優先順位の高い順に、津波対策用、土砂災害対策用及び放射能対策用の災害モードの優先順位が予め決められていてもよい。
【0031】
判定部217は、算出した距離及び災害モードの情報を全て提供情報生成部219に出力してもよいし、あるいは災害種別毎に予め規定されている適用範囲にユーザの現在地が属していた場合に限って、算出した距離等の情報を提供情報生成部219に提供してもよい。例えば、津波対策用の災害モードの適用範囲は、ユーザの現在地が登録地点の海岸から500メートル以内であってもよい。放射能対策用の災害モードの適用範囲は、ユーザの現在地が登録地点の原子力発電所から20キロメートル以内であってもよい。土砂災害対策用の災害モードの適用範囲は、ユーザの現在地がハザードマップで示されている地域であってもよい。ハザードマップは、政府、自治体その他の権限ある機関が提供しているものを利用することができる。
【0032】
提供情報生成部219は、判定部217で算出された距離及び場合によっては海抜高度を含む情報から、ユーザに提供するための提供情報を作成し、表示部205及びスピーカ207に与える。提供情報は、表示部205により表示される、あるいはスピーカ207により音声で出力される。
【0033】
<3.基本動作例>
図3は、図2Aに示す通信端末において行われる基本動作例を示すフローチャートである。フローはステップS301から始まり、ステップS303に進む。
【0034】
ステップS303において、災害モードが登録地点とともに通信端末に登録される。登録は、ユーザにより手動で行われてもよいし、通信端末により自動的に行われてもよい。ユーザが手動で行う場合において、災害モード及び登録地点の入力又は登録は、適切な如何なる方法で行われてもよい。例えば、通信端末は災害モードの選択肢をユーザに提示することで、災害モードの指定を促してもよい。次に、ユーザが選択した災害モード(津波対策用、放射能対策用、土砂災害対策用等)について、登録地点の入力が促されてもよい。この場合、登録地点についても予め用意された選択肢の中からユーザが選択してもよい。あるいはユーザが地図上の位置を指定することで登録地点が入力されてもよい。更に、ユーザが発声又は発音した災害モードの名称及び地名に基づいて、災害モード及び登録地点が登録されてもよい。自動的に行う場合の動作例については、「4.災害モードを自動的に登録する動作例」において説明する。
【0035】
ステップS305において、地震のような緊急事態が発生し、通信端末は、緊急地震速報(緊急警報情報)を含むメッセージを受信したとする。一例として、このようなメッセージはセルブロードキャストサービス(CBS)方式により行われてもよい。
【0036】
ステップS307において、通信端末の判定部217(図2A)は、災害モード保存部215に保存されている災害モード及び登録地点の情報を取得すると共に、位置情報保存部213に保存されている現在地の位置情報を取得する。災害モード保存部には、1つ以上の災害モード及び1つ以上の登録地点が保存されている。図3に示す例の場合、n個の登録地点の位置情報が判定部217により取得される。
【0037】
ステップS309において、通信端末は、現在地と登録地点iとの間の距離Liを算出する(i=1,...,n)。
【0038】
ステップS311において、通信端末は、n個の登録地点各々に優先順位を設定又は付与する。優先順位は、適切な如何なる方法で設定されてもよい。一例として、距離Liが短いほど高い優先順位が設定されてもよい。「災害が生じるおそれがある場所」である登録地点との距離が短いほど、ユーザにとってその場所が重要だからである。或いは、優先順位をその都度変更する代わりに、予め定められた優先順位が一律に使用されてもよい。例えば、優先順位の高い順に、津波対策用、土砂災害対策用及び放射能対策用の災害モードの優先順位が予め固定的に決められていてもよい。また、予め固定的に定められた優先順位と、距離に応じた優先順位とを組み合わせることで、優先順位が決定されてもよい。例えば、予め固定的に定められた優先順位で複数の災害モードに優先順位を定め、個々の災害モードに関する複数の登録地点については現在地との距離に応じた優先順位を付けることが考えられる。
【0039】
ステップS313において、優先順位を指定するパラメータr(順位r)が1に設定される。
【0040】
ステップS315において、通信端末は、優先順位がrである災害モード又は登録地点に関する提供情報を作成する。
【0041】
ステップS317において、通信端末は、優先順位がrである災害モード又は登録地点に関する提供情報を、表示部及び/又はスピーカから出力する。例えば、津波対策用の災害モードの場合、登録地点の海岸から現在地までの距離と、現在地の海抜高度(標高)とが表示部に表示される。これにより、ユーザは、津波に対してどの程度警戒すればよいか(現在地から速やかに離れて高所へ避難すべきか否か)を迅速に判断することができる。放射能対策用の災害モードの場合、原子力発電所から現在地までの距離が表示部に表示される。土砂災害対策用の災害モードの場合、登録地点の崖等から現在地までの距離が表示部に表示される。表示部及び/又はスピーカから距離の情報を出力する場合において、距離の具体的な数値をそのまま出力することに加えて又はその代わりに、登録地点との距離が極めて近いか否かの情報や、現在地から離れるべきか否か等の情報が、表示部及び/又はスピーカから出力されてもよい。ステップS317による提供情報の出力は、ステップS305において受信した緊急警報情報の出力と共に又はその直後に行うことが望ましい。あるいは、ステップS315において作成される提供情報が、ステップS305で受信した緊急警報情報と、ステップS309等において算出した距離に関する情報とを含むように作成され、出力されてもよい。
【0042】
ステップS319において、一定時間が経過したか否かが判定される。一定時間が経過していなければ、フローはステップS317に戻り、引き続き同じ提供情報が出力される。一定時間が経過した場合、フローはステップS321に進む。
【0043】
ステップS321では、優先順位のパラメータrが1つインクリメントされる。
【0044】
ステップS323において、優先順位のパラメータrが、登録地点の総数nより大きいか否かが判定される。優先順位のパラメータrが、登録地点の総数nより大きくなかった場合、フローはステップS315に進み、次に優先順位が高い登録値点又は災害モードの提供情報が作成される。以後、説明済みの処理が反覆される。なお、図示の便宜上、ステップS315により提供情報を作成する処理と、提供情報を表示部等に出力する処理とが交互に行われているが、このことは本実施例に必須ではない。ステップS315の処理の代わりに、ステップS311とS313の間で、n個の登録地点各々に対する提供情報の作成の処理(ステップS315’)が行われてもよい。
【0045】
ステップS323において、優先順位のパラメータrが、登録地点の総数nより大きくなった場合(r=n+1となった場合)、フローはステップS313に進み、優先順位のパラメータrが1にリセットされる。その後、説明済みの処理が反覆される。すなわち、n個の提供情報が、優先順位に従って一定期間毎に順番に出力され、n個全ての提供情報が出力されると、最優先の提供情報が再び出力される処理が反覆される。
【0046】
本実施例によれば、予め登録した登録地点から現在地までの距離等を含む情報が、提供情報としてユーザに提供されるので、ユーザは、災害に対してどの程度警戒すればよいか(現在地から速やかに離れて高所へ避難すべきか否か等)を迅速に判断することができる。
【0047】
<4.災害モードを登録する動作例>
上述したように、災害モード及び登録地点は、ユーザにより手動で登録されてもよいし、通信端末において自動的に行われてもよい。
【0048】
図4は、災害モードの登録を自動的に行う動作例のフローチャートである。図示の動作例は図3のステップS303及びS305の代わりに使用可能である。フローはステップS401から始まり、ステップS403に進む。
【0049】
ステップS403において、通信端末は、現在地の位置情報を取得する。位置情報は、当該技術分野で既知の適切な如何なる方法で取得されてもよい。一例として、GPS衛星からの電波を利用して位置情報が取得されてもよい。位置情報は周期的に又は必要に応じて取得されてもよい。
【0050】
ステップS405において、災害モードが登録されているか否かが判定される。上述したように、「災害モード」とは、災害に対する対応策を促す情報をユーザに提供する動作モード又はサービスである。図4の説明において、多数の災害モードの内、「登録されている災害モード」は、災害に対する対応策を促す情報をユーザに実際に提供するように決定されたものである。ステップS405では、そのような災害モードが通信端末に登録されているか否かを判定し、登録されていた場合、フローはステップS409に進む。
【0051】
ステップS409において、通信端末は、現在位置が、登録されている災害モードのエリア内にあるか否かを判定する。登録されている1つ以上の災害モード各々について1つ以上の登録地点も指定されている。この登録地点に基づいて災害モードのエリア、適用エリア又は適用範囲が規定される。例えば、津波対策用の災害モードの場合、エリアは、海岸から500メートル以内の範囲として規定されてもよい。土砂災害対策用の災害モードの場合、エリアは、ハザードマップで示されている範囲として規定されてもよい。ハザードマップは、例えば、政府、自治体その他の権限ある機関が提供しているものを利用することができる。一例として国土交通省が提供しているハザードマップの情報を利用することが可能である。放射能対策用の災害モードの場合、エリアは、原子力発電所から20キロメートル以内の範囲として規定されてもよい。他の災害種別の災害モードについても何らかのエリアを設定しておくことが考えられる。いずれにせよ、エリアは、緊急警報情報が発せられた場合に、災害に対する対応策を促す提供情報がユーザに実際に提供されるべき程度に、現在地が登録地点と近いか否かの観点から決定される。本説明で示した具体的な数値は単なる例示に過ぎず、適切な如何なる数値が使用されてもよい。
【0052】
このように、ステップS409では、通信端末の現在地が、登録地点に基づくエリア内にあるか否かが判定される。1つの災害モードについて登録地点が複数個存在していた場合、複数の登録地点の各々についてエリアが規定され、通信端末の現在地がそれら複数のエリア内にあるか否かが判定される。現在地がエリア内にあると判定された場合、フローはステップS415に進む。
【0053】
ステップS409において、通信端末の現在地が災害モードのエリア内にはないと判定された場合、フローはステップS413に進む。例えば、津波対策用の災害モードに関し、前回測位された位置は登録地点の海岸から僅か100メートルの距離であったが、車等による移動により今回測位された現在地は登録地点の海岸から何十キロメートルも離れていたとする。この場合、津波対策用の災害モードによる提供情報をユーザに提供する実益は乏しい。このため、ステップS409において現在地がエリア内ではないと判断された災害モードは、ステップS413において通信端末から削除される。
【0054】
なお、ステップS409におけるエリア内であるか否かの判断、S413による災害モードの削除は、ステップS403で現在の位置情報を取得する度に(現在の位置情報が更新される毎に)行われる。
【0055】
ステップS405において通信端末に災害モードが登録されていなかった場合、ステップS409において現在地がエリア内であった場合、及びステップS413の後に、フローはステップS415に進む。
【0056】
ステップS415において、通信システムで設定されている災害モードの情報が取得される。この情報は、災害種別、登録地点及びエリア(適用範囲)等の情報を含み、通信端末の災害モード保存部に予め保存されていてもよいし、適宜更新されるように周期的に又は必要に応じてネットワークを通じて通信端末に取り込まれてもよい。
【0057】
ステップS419において、通信端末の現在地が、通信システムで設定されている災害モードのエリア内にあるか否かが判定される。通信システムで設定されている1つ以上の災害モード各々について1つ以上の登録地点も指定されている。この登録地点に基づいて災害モードのエリアが規定される。すなわち、エリアは災害モード毎に又は災害種別毎に予め決定されている。なお、ステップS419によるエリア内であるか否かの判断は、ステップS403で現在地の位置情報を取得する度に行われる。
【0058】
ステップS419において現在地がエリア内にあると判定された場合、ステップS421において、その災害モードが通信端末に登録される。
【0059】
ステップS421において災害モードが登録された後、及びステップS419において現在地がエリア内にはないと判定された場合、フローはステップS425に進む。
【0060】
ステップS425において、通信端末は、緊急地震速報(緊急警報情報)を含むメッセージを受信したか否かを判定する。そのようなメッセージを受信していなかった場合、フローはステップS403に戻り、説明済みの処理を行うことで、災害モードの登録状態を最新の状態に更新する。
【0061】
ステップS425において、通信端末が、緊急地震速報(緊急警報情報)を含むメッセージを受信した場合、フローはステップS427へ進み、通信端末に災害モードが登録されているか否かを判断する。登録されていなかった場合、フローはステップS403に戻り、説明済みの処理を行うことで、災害モードの登録状態を最新の状態に更新する。
【0062】
ステップS427において、通信端末に災害モードが登録されていた場合、フローは図3のステップS307に進み、説明済みの処理が行われる。
【0063】
図4に示すような動作を行うことで、通信システムで設定されている様々な災害モードの内、通信端末の現在地に相応しいものがステップS421において登録され、かつ通信端末の現在地に相応しくないものがステップS413において削除される。これにより、ユーザがマニュアルで登録地点を事前に入力していなかったとしても、ユーザの現在地に相応しい災害モードを通信端末に登録することができる。これは、ユーザが出張等により遠方へ出かけているような場合に特に有利である。
【0064】
<5.変形例>
上述したように、通信端末が現在地の位置情報を取得する場合に、GPS方式における電波から位置情報が取得されてもよいし、別の方法により位置情報が取得されてもよい。例えば、通信端末が携帯電話として機能する場合、通信端末は在圏セルの基地局が何であるかを知ることができるので、在圏セルの基地局の位置が、通信端末の現在地として代用されてもよい。
【0065】
図5は、在圏セルの基地局の位置を、通信端末の現在地として代用する場合の変形例を示す。概して、図5に示す通信端末は図2Aに示す通信端末と同様であるが、図2Aに示す通信端末においては、第2の受信部209を備えていなければならないのに対して、図5に示す通信端末においては、GPS受信機が省略されてもよい点が大きく異なる。図5に示す例の場合、受信部201は、無線基地局から受信した制御信号を位置情報取得部211に通知する。位置情報取得部211は制御信号から基地局の識別情報を抽出し、基地局の位置情報を取得する。どの基地局がどの場所に存在するかについての情報は、通信端末が事前に取得することが可能な情報である。基地局の位置から判定された位置情報は、位置情報保存部213に保存され、必要に応じて判定部217に提供される。
【0066】
本変形例による通信端末は、現在地の精度が図2Aに示すものより劣ってしまうが、通信端末の簡易化を図ることができる等の観点から好ましい。
【0067】
以上本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、それらは単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。例えば、本発明は、緊急警報情報を含むメッセージを配信する適切な如何なる移動通信システムに適用されてもよい。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。実施例又は項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある項目に記載された事項が、別の項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。機能ブロック図における機能部又は処理部の境界は必ずしも物理的な部品の境界に対応するとは限らない。複数の機能部の動作が物理的には1つの部品で行われてもよいし、あるいは1つの機能部の動作が物理的には複数の部品により行われてもよい。説明の便宜上、本発明の実施例に係る装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウェアで、ソフトウェアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。ソフトウェアは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、EPROM、EEPROM、レジスタ、ハードディスク(HDD)、リムーバブルディスク、CD−ROM、データベース、サーバその他の適切な如何なる記憶媒体に用意されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【符号の説明】
【0068】
201 第1の受信部
203 緊急メッセージ取得
205 表示部
207 スピーカ
209 第2の受信部
211 位置情報取得部
213 位置情報保存部
215 災害モード保存部
217 判定部
219 提供情報生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急警報情報を含む通信信号を受信する受信部と、
ユーザの現在地の情報を取得する現在地情報取得部と、
前記ユーザ又は通信システムが指定した登録地点の情報を保存する保存部と、
前記受信部が前記通知信号を受信したことに応答して、前記現在地及び前記登録地点の間の距離を算出する処理部と、
少なくとも前記距離を含む提供情報を前記ユーザに提供する情報提供部と
を有する通信端末。
【請求項2】
前記保存部は、前記ユーザ又は前記通信システムが指定した登録地点の情報を、災害種別毎に保存する、請求項1記載の通信端末。
【請求項3】
前記情報提供部が、少なくとも前記距離を含む提供情報を、前記災害種別毎に前記ユーザに提供する、請求項2記載の通信端末。
【請求項4】
前記情報提供部が、少なくとも前記距離を含む提供情報を、前記距離が短いほど高い優先順位に従って、前記災害種別毎に前記ユーザに提供する、請求項3記載の通信端末。
【請求項5】
前記受信部が前記通知信号を受信する前に予め決まっている災害種別の優先順位に従って、前記情報提供部が、少なくとも前記距離を含む提供情報を、前記災害種別毎に前記ユーザに提供する、請求項3記載の通信端末。
【請求項6】
前記ユーザの現在地が、前記災害種別毎に予め規定されている適用範囲に属していた場合に、前記情報提供部は、少なくとも前記距離を含む提供情報を前記ユーザに提供する、請求項2ないし5の何れか1項に記載の通信端末。
【請求項7】
前記現在地情報取得部は、GPS受信機により受信した無線信号に基づいて、前記ユーザの現在地の情報を取得する、請求項1ないし6の何れか1項に記載の通信端末。
【請求項8】
前記現在地情報取得部は、セルラ無線基地局の場所に基づいて、前記ユーザの現在地の情報を取得する、請求項1ないし6の何れか1項に記載の通信端末。
【請求項9】
ユーザの現在地の情報を取得し、
緊急警報情報を含む通信信号を受信したことに応答して、前記ユーザ又は通信システムが指定した登録地点の情報を保存部から抽出し、前記現在地及び前記登録地点の間の距離を算出し、
少なくとも前記距離を含む提供情報を前記ユーザに提供するステップ
を有する情報提供方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−20448(P2013−20448A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153295(P2011−153295)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】