説明

通信端末装置、および、プログラム

【課題】PCとしても使用できる携帯電話で電子メールの利便性向上を図る。
【解決手段】携帯電話に固有のプロトコルで送受信されるショートメッセージと、汎用的なプロトコルで送受信されるPCメールの双方を扱うことのできる移動体通信端末100において、PCメールを送受信するPCメーラが実行されている場合、PCメーラで受信操作がなされると、携帯アプリ領域171に格納されているショートメッセージを取得して、記憶部170とは分離されたメモリ部150に一時的に構築した仮想ドライブに保存される。また、PCメーラでショートメッセージの送信操作がなされると、自己を宛先とした仮想的な送信動作がおこなわれ、実際の送信は、ショートメッセージ用のアプリケーションによって実行される。PCメーラは、仮想ドライブ上のメッセージを参照することで履歴管理をおこない、PCメーラの終了とともに仮想ドライブのデータが消去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末装置、および、プログラムに関し、特に、複数種類の電子メールに対応可能な携帯電話に好適な通信端末装置、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの移動体通信端末では、多機能化が進み種々のアプリケーションなどが搭載されている。また、パーソナルコンピュータなどで採用されている、例えば、Linux(商標)などのOS(Operating System)によって動作する携帯電話も実現されつつあり、これまでパーソナルコンピュータなどでおこなっていたような処理が携帯電話でも実行可能になってきている。
【0003】
さらに、例えば、MicroUSB(USB3.0)などのような、携帯電話でも採用可能な汎用インタフェースが普及しつつあり、携帯電話においても高速なデータ転送で外部装置と接続できる環境が整いつつある。このため、汎用装置として提供されている表示装置や入力装置(例えば、フルサイズのキーボードやポインティングデバイスなど)を携帯電話に接続することで、パーソナルコンピュータと同等の操作性で使用することができる。
【0004】
これにより、従来あったパーソナルコンピュータと携帯電話との間の使い分けがなくなり、携帯電話を1台所有しているだけで、パーソナルコンピュータとしても利用することが可能となる。すなわち、移動体通信端末を単体で使用する際は、従来と同様の携帯性を活かした携帯電話としての利用形態となり、家庭やオフィスなどでは種々の外部装置を接続することで、パーソナルコンピュータとしての利用形態を実現することができる。
【0005】
このような移動体通信端末では、携帯電話として利用する際のアプリケーション(以下、「携帯アプリ」とする)と、パーソナルコンピュータとして利用する際のアプリケーション(以下、「PCアプリ」とする)が混在することになる。このうち、例えば、電子メールやSMS(Short Messaging Service)などのようなメッセージ送受信機能(以下、「メール機能」とする)については、同様の機能ではあるが、携帯電話とパーソナルコンピュータのそれぞれに異なる方式で用意されている機能となる。
【0006】
つまり、携帯電話においては、特に、SMSなどでは通信キャリア毎に提供されているネットワーク(いわゆる、セルラ網)を介した伝送となる一方、パーソナルコンピュータを用いたメール機能(以下、「PCメール」とする)では、通常、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)ベースのオープンネットワークを介して伝送されるという違いがある。すなわち、SMSは通信キャリア毎に特有のプロトコルで動作しているので、汎用的なプロトコルで動作するPCメールとは仕様が異なる。
【0007】
このような仕様上の違いがあるため、携帯アプリのメーラ(特にSMS用のアプリケーション)とPCアプリのメーラとの間には互換性がない場合が多い。よって、1台の移動体通信端末で携帯電話とパーソナルコンピュータの双方の利用形態が得られても、メール機能などについては別々に取り扱わなければならず、利便性を阻害してしまうおそれがある。
【0008】
このような実状から、パーソナルコンピュータ等で受信した電子メールを携帯電話に転送する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−256340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の技術では、いずれかの方式で受信したメッセージを他の方式のメーラで受信できるよう転送するものであり、1つのアプリケーション(メーラ)で双方を取り扱えるものではなかった。また、携帯電話とパーソナルコンピュータの双方の利用形態をもつ移動体通信端末にこの技術を適用した場合、移動体通信端末内のそれぞれのメーラで同じ内容のメッセージを重複して持つことになり、格納領域の容量を必要以上に圧迫する上、場合によっては課金対象となる不必要な送受信動作が発生するなどの不都合がある。
【0011】
また、メール機能における方式の違いは、上述したようなデメリットがある反面、セキュリティの観点からはメリットとなる場合もある。つまり、メッセージの容量や添付ファイルなどに制限があり、セルラ網を介して伝送されるSMSなどは、迷惑メールやウィルスメールなどの被害を受ける可能性が比較的低いが、PCメールでは、迷惑メールやウィルスメールを含んでいることが多い。このため、セキュリティの点からSMSとPCメールを意図的に使い分ける形態も考えられる。
【0012】
このような場合に、PCアプリのメーラと携帯アプリのSMSメーラとを単に統合させただけでは、PCメールに混入したウィルスメールに含まれているマルウェアなどにより、SMS用のアドレス情報などが不正に取得されるなどの危険性が考えられる。
【0013】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、セキュリティを確保しつつ通信端末装置におけるメール利用の利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる通信端末装置は、
電子メールを送受信可能な通信端末装置であって、
第1の電子メール形式による電子メールの送受信動作をおこなう第1のアプリケーション手段と、
前記第1の電子メール形式とは異なる第2の電子メール形式による電子メールの送受信動作をおこなう第2のアプリケーション手段と、
前記第1のアプリケーション手段によって送受信された第1の電子メールデータを格納し、前記第2のアプリケーション手段からのアクセスが禁止されている第1のメモリ手段と、
前記第1のメモリ手段とは分離され、仮想的なファイルシステムが構成される第2のメモリ手段と、
前記第1のメモリ手段に格納されている第1の電子メールデータと、前記第2のアプリケーション手段によって送受信された第2の電子メールデータとを前記第2のメモリ手段に格納するメモリ制御手段と、を備え、
前記第2のアプリケーション手段は、前記第2のメモリ手段にアクセスして、前記第1のメールデータと前記第2のメールデータを取得する、
ことを特徴とする。
【0015】
上記通信端末装置において、
前記メモリ制御手段は、前記第2のアプリケーション手段による受信動作を契機に、前記第1のアプリケーション手段によって受信され前記第1のメモリ手段に格納された第1の電子メールデータを、前記第2の電子メール形式に変換して前記第2のメモリ手段に格納することが望ましい。
【0016】
上記通信端末装置は、
前記第2のアプリケーション手段が前記第1の電子メール形式で送信をおこなう際に、仮想的な送信動作をおこなう仮想通信手段をさらに備えていることが望ましく、この場合、
前記仮想通信手段は、前記第2のアプリケーション手段に、当該仮想通信手段をメールサーバとした送信動作をおこなわせるとともに、実質的な送信を前記第1のアプリケーション手段におこなわせ、
前記第2のアプリケーション手段は、前記仮想通信手段に送信した電子メールを前記第2のメモリ手段に格納し、
前記メモリ制御手段は、前記第2のアプリケーション手段によって前記第2のメモリ手段に格納された電子メールを、前記第1の電子メール形式に変換して前記第1のメモリ手段に格納することが望ましい。
【0017】
上記通信端末装置において、
前記第2のアプリケーション手段は、前記第2のメモリ手段に格納されている電子メールデータに基づいて、前記第1の電子メール形式による電子メールと前記第2の電子メール形式による電子メール双方の送受信履歴を管理することが望ましい。
【0018】
上記通信端末装置において、
前記メモリ制御手段は、前記第2のアプリケーション手段の終了を契機に、前記第2のメモリ手段に格納されている電子メールデータを消去することが望ましい。
【0019】
上記通信端末装置は、携帯電話端末であることが望ましく、この場合、
前記第1の電子メール形式は、当該携帯電話端末にかかる通信キャリアによって規定される電子メール形式であり、
前記第2の電子メール形式は、汎用的な電子メール形式であることが望ましい。
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点にかかるプログラムは、
電子メールを送受信可能な通信端末装置を制御するコンピュータに、
第1の電子メール形式による電子メールの送受信動作をおこなう第1のアプリケーション機能と、
前記第1の電子メール形式とは異なる第2の電子メール形式による電子メールの送受信動作をおこなう第2のアプリケーション機能と、
前記第1のアプリケーション機能によって送受信された第1の電子メールデータを第1のメモリ手段に格納し、前記第2のアプリケーション機能からのアクセスを禁止する第1のメモリ機能と、
前記第1のメモリ手段とは分離された第2のメモリ手段に、仮想的なファイルシステムを構成する第2のメモリ機能と、
前記第1のアプリケーション機能によって前記第1のメモリ手段に格納された第1の電子メールデータと、前記第2のアプリケーション機能によって送受信された第2の電子メールデータとを前記第2のメモリ手段に格納するメモリ制御機能と、
前記第2のアプリケーション機能に、前記第2のメモリ手段にアクセスして、前記第1の電子メールデータと前記第2の電子メールデータを取得させる機能と、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、セキュリティを維持しつつ、電子メール利用時の利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明にかかる通信端末装置として実現される移動体通信端末と、移動体通信端末に接続されるクレードル、外部表示装置、外部入力装置を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す移動体通信端末の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す制御部によって実現される機能構成を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる「メール統合処理」を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4に示す「メール統合処理」において実行される「仮想化変換処理」を説明するためのフローチャートである。
【図6】図4に示す「メール統合処理」において実行される「受信処理」を説明するためのフローチャートである。
【図7】図4に示す「メール統合処理」において実行される「仮想送信処理」を説明するためのフローチャートである。
【図8】図4に示す「メール統合処理」において実行される「通常化変換処理」を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明にかかる実施形態を説明する。本実施形態では、携帯電話やPHS(Personal Handyphone System)に用いられる通信端末装置としての移動体通信端末に本発明を適用した場合を説明する。
【0024】
本実施形態にかかる移動体通信端末100は、例えば、図1に示すような、表示部132を有する移動体通信端末であるものとする。また、移動体通信端末100の動作電源となるバッテリを充電する場合や、商用電源によって移動体通信端末100を駆動させる場合などのために、所定の充電台(クレードル、スタンド、など。以下、「クレードル200」とする)が用いられるものとする。本実施形態では、図1に示すようなクレードル200に移動体通信端末100を載置して充電等をおこなう。
【0025】
本実施形態にかかる移動体通信端末100は、例えば、2軸ヒンジなどを用いた折り畳み型であるものとし、クレードル200に載置される際には、図1に示すように、表示画面(表示部132)が露出するように移動体通信端末100が折り畳まれるとともに、表示画面(表示部132)がクレードル200の正面側を向くよう載置されるものとする。
【0026】
この場合、移動体通信端末100とクレードル200とを接続するコネクタは、移動体通信端末100側では移動体通信端末100の側面部に配置される。そして、クレードル200側では、クレードル200の載置面上にコネクタが配置され、移動体通信端末100をクレードル200上に載置した際にそれぞれのコネクタが係合されることとなる。
【0027】
このような移動体通信端末100の内部構成を、図2を参照して説明する。図2は移動体通信端末100の構成を示すブロック図である。図示するように、移動体通信端末100は、制御部110、通信制御部120、出力部130、入力部140、メモリ部150、コネクタ部160、記憶部170、などから構成される。
【0028】
制御部110は、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)などの演算処理回路や各種ドライバなどから構成され、移動体通信端末100の各部を制御するとともに、記憶部170に格納されている所定の動作プログラムに基づいて後述する各処理を実行する。なお、後述する移動体通信端末100の各構成はそれぞれ制御部110と接続されており、各構成間でのデータ授受などは制御部110を介しておこなわれるものとする。
【0029】
通信制御部120は、例えば、セルラ通信用の無線通信回路などから構成され、アンテナ部123を介した無線通信をおこなう。通信制御部120はさらに、音声通信部121、データ通信部122、などを有する。
【0030】
音声通信部121は、移動体通信端末100の音声通話機能にかかる通信を制御する。ここでは、例えば、アンテナ部123を制御して、移動体通信網(セルラ網)などの電話回線網を介した音声通話のための無線通信をおこなうとともに、音声の符号化処理や復号処理などをおこなう。
【0031】
データ通信部122は、移動体通信端末100のデータ通信機能にかかる通信を制御する。本実施形態では、例えば、移動体通信端末100に移動体通信端末通信サービスを提供する事業体(通信キャリア)によって用意されている通信ネットワーク(セルラ網)などを介したデータ通信をおこなうものとし、データ通信部122がアンテナ部123を制御することで、無線接続やデータ送受信がおこなわれる。
【0032】
なお、音声通信部121およびデータ通信部122は、移動体通信端末100に移動体通信サービスを提供する通信キャリアによって設置・運用されている基地局との間の無線通信をおこなう。
【0033】
出力部130は、音声出力部131、表示部132、などから構成され、移動体通信端末100による種々の情報出力動作をおこなう。
【0034】
音声出力部131は、例えば、スピーカなどから構成され、音声通話時の着信音や受話音声などを出力する。
【0035】
表示部132は、例えば、液晶表示装置などから構成され、移動体通信端末100の機能にかかる種々の画面を表示する。
【0036】
入力部140は、操作部141や音声入力部142などから構成され、移動体通信端末100に対するユーザ入力のためのインタフェースとして機能する。
【0037】
操作部141は、ユーザによって操作されるキーパッド(文字キー(テンキー)、十字キーなど)や機能ボタンなどから構成され、ユーザ操作に応じた入力信号を生成して制御部110に入力する。
【0038】
音声入力部142は、例えば、マイクロフォンなどから構成され、音声通話時のユーザ発話音声を入力する。
【0039】
メモリ部150は、いわゆるRAM(Random Access Memory)であり、制御部110が実行するプログラムがロードされる他、各種演算処理のワークエリアとして用いられる。また、本実施形態では、図3に示すように、メール機能にかかるバッファメモリとして機能する他、いわゆるRAMディスクと呼ばれる仮想的なファイルシステム(仮想ドライブ)がメモリ部150に構築される。この場合において、バッファメモリに用いられる記憶領域(以下、「バッファ領域BF」とする)と、仮想ドライブに用いられる記憶領域(以下、「仮想ドライブRD」とする)とは、同じ記憶装置(記憶素子)内のアドレス指定によって区分けされていてもよいが、物理的に異なる記憶装置(記憶素子)によって区分けされていることが望ましい。
【0040】
コネクタ部160は、クレードル200との接続用のコネクタであり、クレードル200に接続されている商用電源を受電する他、クレードル200を介して接続される外部装置との信号送受をおこなう。この場合、コネクタ部160は、例えば、MicroUSB(USB3.0)に準拠したコネクタなどによって構成されるものとする。
【0041】
この場合、MicroUSB(USB3.0)などの外部インタフェース手段により、図1に示すような外部表示装置300や外部入力装置400などの外部装置が、クレードル200を介して移動体通信端末100に接続されるものとする。本実施形態では、クレードル200に接続ポートが備えられ、この接続ポートに接続された外部装置との信号授受がコネクタ部160を介しておこなわれるものとする。
【0042】
クレードル200を介して接続される外部装置として、本実施形態では、図1に示すような外部表示装置300と外部入力装置400を想定する。
【0043】
外部表示装置300は、例えば、液晶表示装置などであり、コネクタ部160が採用している外部インタフェース規格(例えば、MicroUSB(USB3.0)など)によって伝送される画像信号を表示可能な表示装置であるものとする。
【0044】
外部入力装置400は、例えば、キーボードなどの文字入力装置であるものとし、コネクタ部160が採用している外部インタフェース規格(例えば、MicroUSB(USB3.0)など)によって入力信号を出力可能な入力装置であるものとする。
【0045】
記憶部170は、例えば、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどといった所定の記憶装置から構成され、制御部110が実行する動作プログラム(アプリケーション)の他、各処理の実行に必要なデータや各処理の実行によって生成されたデータなどを格納する。
【0046】
記憶部170に格納される動作プログラムは、移動体通信端末100の基本動作を司る任意の基本プログラム(すなわち、OS(Operating System))などの他に、後述する各処理を実現するための動作プログラム(アプリケーションプログラムなど)が格納されている。後述する移動体通信端末100による処理は、制御部110がこれらの動作プログラムを実行することで実現される。
【0047】
本実施形態にかかる移動体通信端末100では、例えば、Linux(商標)などのような、パーソナルコンピュータなどでも採用されるOS(以下、「PC用OS」とする)が用いられるものとする。
【0048】
また、記憶部170に格納されている動作プログラムを実行することで、制御部110は、図3に示すような構成として機能する。図示するように、制御部110は、アプリケーション実行部111、メモリ制御部112、仮想通信部113、などとして機能する。
【0049】
アプリケーション実行部111は、記憶部170に格納されている種々のアプリケーションプログラムを実行する。本実施形態では、例えば、電子メールやSMS(Short Messaging Service)などのようなメッセージ送受信機能(メール機能)にかかるアプリケーションがアプリケーション実行部111によって実行される。
【0050】
また、本実施形態にかかる移動体通信端末100は、上述したようにPC用OSによって動作しているため、携帯電話として利用できるだけでなく、パーソナルコンピュータ(PC)としても利用できるものとする。すなわち、移動体通信端末100を単体で使用する際は携帯電話としての利用形態で使用されることになり、クレードル200を介するなどして外部表示装置300や外部入力装置400が接続された場合には、PCとしての利用形態で使用されることになる。
【0051】
この場合において、移動体通信端末100で利用可能なSMSは、例えば、携帯電話としての固有の識別情報(電話番号など)をアドレス情報とするものであり、通信キャリアの提供するセルラ網を使った送受信をおこなうものとする。すなわち、携帯電話としての利用形態に固有の方式(プロトコル)を用いるものであり、このようなSMSで通信をおこなう際に実行されるアプリケーション(メーラ)は、携帯電話としての利用形態に固有のアプリケーション(携帯アプリ)である。
【0052】
一方、移動体通信端末100をPCとして利用する際の電子メール(PCメール)は、汎用のメーラ(アプリケーション)を任意に用いることができるものとし、TCP/IPベースのオープンネットワーク(インターネットなど)を介して送受信されるものとする。すなわち、SMSとは異なる汎用的なプロトコルによって動作し、PCメールの送受信をおこなう際に実行されるアプリケーション(メーラ)は、PC用のアプリケーション(PCアプリ)である。
【0053】
すなわち、移動体通信端末100には、携帯電話としての利用形態の際に使用される携帯アプリと、PCとしての利用形態の際に使用されるPCアプリとが混在している。とりわけ、上述したようなメール機能に関しては、実質的には同じ機能内容であるが、携帯電話とPCとで異なるアプリケーションが用意されていることになる。アプリケーション実行部111は、これらのアプリケーションを選択的に実行する。なお、本実施形態では、セキュリティ上の観点から、SMSとPCメールとを使い分けて使用されている場合を想定する。
【0054】
なお、記憶部170においては、図2に示すように、携帯アプリについてのプログラムやデータが格納される携帯アプリ領域171と、PCアプリについてのプログラムやデータが格納されるPCアプリ領域172とが用意されているものとし、それぞれが別々に管理されているものとする。ここで、携帯アプリ領域171とPCアプリ領域172とは、同一の記憶装置内の異なる領域(ディレクトリなど)に作成されることで区分されるようにしてもよいが、セキュリティ上の理由でSMSとPCメールとを使い分けているため、物理的に異なる記憶装置によって分けられていることが望ましい。また、少なくとも、携帯アプリ領域171にアクセスできるアプリケーションが制限されるアクセス制限が施されているものとする。
【0055】
メモリ制御部112は、メモリ部150や記憶部170のファイルシステムにかかる制御をおこなうものであり、メモリ部150に仮想ドライブRD(RAMディスク)を構築する動作や、仮想ドライブRDへのデータの入出力にかかる制御をおこなう。本実施形態では、一例として、アプリケーション実行部111がPCアプリのメーラ(以下、「PCメーラ」とする)を実行した際に、携帯アプリのSMS用メーラ(以下、「SMSメーラ」とする)が用いるファイルシステムを管理し、仮想ドライブRDを構築する動作をおこなうものとする。このような動作は、メモリ制御部112が実行するファイルイメージ生成アプリケーション(以下、「イメージ生成アプリ」とする)によって実現される。
【0056】
この場合において、メモリ制御部112は、PCメールとSMSとの間にあるメッセージ形式の変換などもおこなう。なお、仮想ドライブRDの構築やメッセージの変換にかかる動作は、既知の技術が用いられるものとし、メモリ制御部112により実行されるイメージ生成アプリによって実現される。また、携帯アプリ領域171に施されているアクセス制限により、SMSメーラとイメージ生成アプリのみが、携帯アプリ領域171へのアクセスを許可されているものとする。
【0057】
仮想通信部113は、例えば、ミドルウェアとして移動体通信端末100の各種ドライバと協働することにより、PCメーラによってSMSのメッセージ(すなわち、ショートメッセージ)が送信される際に、仮想的なメールサーバ(ダミー通信ミドル)として機能する。この場合、仮想通信部113はPCメーラからの送信先として機能することになるが、移動体通信端末100へのループバックアドレスが仮想通信部113に設定されることで、PCメーラから外部へのショートメッセージの送信はおこなわれない。つまり、PCメーラからは仮想的な送信動作がおこなわれる。この場合、仮想通信部113は、通信制御部120を制御することで、PCメーラから仮想的に送信されたショートメッセージをSMS用のプロトコルを用いて送信することで実質的な送信動作がおこなわれる。
【0058】
制御部110によって実現される上記の各機能は、例えば、API(Application Programming Interface)などのような既知の技術を用いることで、移動体通信端末100に搭載されているアプリケーションの実行時に必要となるファイル制御や通信制御などを、OSやミドルウェア、ドライバなどといった移動体通信端末100に構成されている共有モジュールとの協働によって実現する。
【0059】
本実施形態では、制御部110によって上記機能構成が論理的に実現されるものとするが、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)などの専用回路によって構成することで、これらの機能を物理的な構成によって実現してもよい。
【0060】
以上説明した移動体通信端末100の各構成は、本発明を実現するために必要な構成であり、移動体通信端末としての基本機能に必要なその他の構成や、種々の付加機能に必要な構成などは、必要に応じて備えられているものとする。
【0061】
以上のような構成を有する移動体通信端末100等による動作を以下に説明する。ここでは、移動体通信端末100に外部表示装置300と外部入力装置400を接続してPCとして利用する場合(以下、「PCモード」とする)を想定する。また、移動体通信端末100の携帯アプリとしてのSMSメーラがショートメッセージの送受信動作をおこない、PCアプリとしてのメーラ(PCメーラ)がPCメールの送受信動作をおこなうものとする。
【0062】
この場合において、通常は、SMSメーラとPCメーラとが独立してそれぞれのメッセージ送受信動作をおこなうが、本実施形態では、PCモードの際に、PCメーラによってショートメッセージの送受信や履歴管理をおこなうことができる「メール統合モード」が用意されているものとする。この「メール統合モード」は、移動体通信端末100のユーザにより、有効とするか無効とするかが任意に設定されるものとし、設定されたモードがいずれであるかを示す設定情報が、例えば、PCアプリ領域172に格納されているものとする。
【0063】
ここで、「メール統合モード」を「有効」とする旨の設定情報には、仮想通信部113による仮想通信で使用されるメールサーバ情報が含まれているものとする。すなわち、メール統合モード下での送信動作の際に使用される、通常とは異なるポートやアドレスなどを示す情報がメールサーバ情報として含まれ、アプリケーション実行部111によって実現されるメーラ(PCメーラなど)が送受信動作をおこなう際に、当該メールサーバ情報に基づいて送受信をおこなう。
【0064】
このような移動体通信端末100でPCメーラを利用する際に実行される「メール統合処理」を、図4に示すフローチャートを参照して説明する。この「メール統合処理」は、アプリケーション実行部111によっていずれかのメーラ(SMSメーラまたはPCメーラ)が起動されたことを契機に開始される。
【0065】
起動したメーラがPCメーラである場合(ステップS101:Yes)、アプリケーション実行部111は、PCアプリ領域172に格納されている設定情報を参照することで、「メール統合モード」が有効となっているか否かを判別する(ステップS102)。
【0066】
ここで、「メール統合モード」が有効となっている場合(ステップS102:Yes)、アプリケーション実行部111はその旨をメモリ制御部112に通知する。アプリケーション実行部111からの通知に応じて、メモリ制御部112が「仮想化変換処理」を実行する(ステップS200)。ここでは、メモリ制御部112がイメージ生成アプリを実行することで、「仮想化変換処理」がおこなわれる。この「仮想化変換処理」を、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0067】
処理が開始されると、メモリ制御部112は、記憶部170のPCアプリ領域172にアクセスし、PCメーラによってこれまで蓄積された送受信メールなど(以下、「PCメールデータ」とする)を取得し、メモリ部150のバッファ領域BFに展開する(ステップS201)。
【0068】
PCメールデータをバッファ領域BFに展開すると、メモリ制御部112は、記憶部170の携帯アプリ領域171にアクセスし、SMSメーラによってこれまで蓄積されたショートメッセージの送受信メッセージ(以下、「ショートメッセージデータ」)を取得する(ステップS202)。ここで取得するショートメッセージデータは、送受信メッセージのみとし、携帯アプリ領域171に格納されているSMS用のアドレス帳データなどは取得されないものとする。
【0069】
メモリ制御部112は、取得したショートメッセージデータをPCメールに変換した上で、メモリ部150のバッファ領域BFに展開されているPCメールデータに追加する(ステップS203)。この場合、バッファ上では、例えば、送受信日時順にソートされるとともに、PCメールであるかショートメッセージであるかを峻別するための識別情報(例えば、フラグ)が、各メッセージに付されるものとする。
【0070】
メモリ制御部112は、メモリ部150に仮想ドライブRD(RAMディスク)を新規に構築し、バッファにあるショートメッセージとPCメールとが統合されたデータ(以下、「統合メールデータ」とする)を、仮想ドライブRDに保存する(ステップS204)。仮想ドライブRDに統合メールデータを保存すると、メモリ制御部112は、その旨をアプリケーション実行部111(PCメーラ)に通知する。
【0071】
アプリケーション実行部111(PCメーラ)は、仮想ドライブRDに保存されている統合メッセージデータを、これまでの送受信メールとしてPCメーラの表示画面上に表示し(ステップS205)、「メール統合処理」(図4)のフローに戻る。
【0072】
以上のような「仮想化変換処理」により、異なるプロトコルのため別々に扱わなければならなかったショートメッセージなどの送受信履歴を、PCメーラ上でPCメールと同様に管理することができる。この場合において、PCメーラが直接参照しているファイルシステムは、メモリ部150に一時的に構築された仮想ドライブRD(RAMディスク)上にあるため、例えば、ウィルスなどの不正なプログラムにPCメーラが制御される事態が生じても、ショートメッセージのオリジナルデータが格納されている携帯アプリ領域171はアクセスされない。このため、SMS用のアドレス帳データなどが不正にアクセスされる可能性を低くすることができ、セキュリティ上の理由でSMSとPCメールを使い分けている場合のセキュリティレベルを維持することができる。
【0073】
このような状態において、PCメーラで受信動作がおこなわれると(ステップS103:Yes)、アプリケーション実行部111(PCメーラ)が「受信処理」を実行する(ステップS300)。この「受信処理」を、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0074】
メール統合モード下において、PCメーラでの受信動作(手動もしくは所定時間毎の自動受信)が発生すると、アプリケーション実行部111(PCメーラ)は、仮想通信部113によって実現されるダミー通信ミドルとの通信をおこなう(ステップS301)。つまり、仮想的なメールサーバであるダミー通信ミドルに対し、受信要求のための通信をおこなう。
【0075】
この場合、ダミー通信ミドル(仮想通信部113)によってメモリ制御部112が励起され、記憶部170のPCアプリ領域172からPCメールデータを取得して、メモリ部150のバッファ領域BFに展開する(ステップS302)。
【0076】
続いてメモリ制御部112は、記憶部170の携帯アプリ領域171にアクセスして、ショートメッセージデータを取得し、バッファ上でPCメールデータに追加する(ステップS303)。すなわち、「仮想化変換処理」(図5)のステップS201〜ステップS203と同様の動作により、バッファ領域BFに統合メールデータが展開された状態となる。
【0077】
次にメモリ制御部112は、メモリ部150の仮想ドライブRDに格納されている、既存の統合メールデータを取得し(ステップS304)、バッファに展開されている統合メールデータと比較する(ステップS305)。
【0078】
メモリ制御部112は、比較の結果、差分があるか否かを判別する(ステップS306)。ここではPCメーラを実行しているが、SMSの受信動作はSMSメーラによってバックグラウンドでおこなわれているものとする。この場合において、上述した「仮想化変換処理」の後、本処理(受信処理)がおこなわれるまでにショートメッセージの着信があると、ステップS303で取得したショートメッセージデータには、新たに受信されたメッセージ(新着メッセージ)が含まれることになる。
【0079】
この場合、バッファに展開した統合メールデータのデータ量の方が、仮想ドライブRDにある既存の統合メールデータよりも大きいものとなり差分が生じる。この場合(ステップS306:Yes)、メモリ制御部112は、バッファ上に展開している統合メールデータの各メッセージに付された識別情報(フラグ)に基づいて、差分となっているメッセージ(新着メッセージ)がショートメッセージであるか否かを判別する(ステップS307)。
【0080】
新着メッセージがショートメッセージである場合(ステップS307:Yes)、メモリ制御部112は、その旨を仮想通信部113(ダミー通信ミドル)に通知する。メモリ制御部112からの通知に応じて、仮想通信部113(ダミー通信ミドル)は、アプリケーション実行部111(PCメーラ)に対して、新着メッセージを仮想的に送信する(ステップS308)。これにより、PCメーラ(アプリケーション実行部111)は、実際にはSMSメーラによって受信されたショートメッセージを、仮想的に受信する。
【0081】
このとき、仮想通信部113(ダミー通信ミドル)は、SMSメーラ(アプリケーション実行部111)を起動し、当該新着メッセージに既読マークを付与させる(ステップS309)。
【0082】
新着のショートメッセージを仮想的に受信したPCメーラ(アプリケーション実行部111)は、当該新着メッセージを、仮想ドライブRD(メモリ部150)上のファイルシステム内に保存し(ステップS310)、仮想ドライブRD内のデータを表示出力する(ステップS311)。これにより、PCメーラ内の新着メッセージとして、ショートメッセージも表示されることになる。このとき、例えば、新着メッセージの本文を自動的に表示させれば既読状態となるので、SMSメーラ上で付与した既読マークと整合することになる。
【0083】
このような動作により、PCメーラでの受信操作によってショートメッセージの受信も実質的におこなえることになるが、実際の受信動作はSMSメーラがおこなっているので、PCメーラは仮想的な受信動作によってショートメッセージの受信をおこなったことになる。すなわち、PCメーラは実際のショートメッセージ受信には関与せず、また、新着のショートメッセージについては、メモリ部150に一時的に構築されている仮想ディスク上で参照しているので、セキュリティ上の独立性を維持したまま、PCメーラでもショートメッセージなどのような携帯電話に固有のメッセージ形式を扱うことができる。
【0084】
なお、PCメーラの受信動作によって取得された統合メールデータと、仮想ドライブRDにある既存の統合メールデータに差分がない、すなわち、新着メッセージの受信がない場合(ステップS306:No)は、仮想ドライブRDの統合メールデータの書き換えをおこなわない。この場合は、受信動作前と同じ状態がPCメーラによって表示されることになる(ステップS311)。
【0085】
また、新着メッセージがPCメールである場合(ステップS307:No)は、PCメーラ(アプリケーション実行部111)により、通常の受信動作がおこなわれるが、ここでは、受信したPCメールをPCアプリ領域172に格納するだけでなく、仮想ドライブRDの統合メールデータにも保存するよう動作する(ステップS310)。この場合、PCメーラ(アプリケーション実行部111)は、仮想ドライブRDの統合メールデータを表示する(ステップS311)。
【0086】
以上のような動作の後、「受信処理」を終了し、「メール統合処理」(図4)のフローに戻る。なお、PCメーラでの受信操作がなければ(ステップS103:No)、「受信処理」(ステップS300)は実行されない。
【0087】
また、PCメーラを使ってショートメッセージの送信操作がおこなわれた場合(ステップS104:Yes)は、「仮想送信処理」が実行される(ステップS400)。この「仮想送信処理」を、図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0088】
ショートメッセージの送信操作がなされると、PCメーラ(アプリケーション実行部111)は、送信メッセージを、メモリ部150の仮想ドライブRD(RAMディスク)に書き込んで(ステップS401)送信動作をおこなうが、ここでは、メール統合モードの設定情報に含まれているメールサーバ情報に基づいた送信となる。ここで、メールサーバ情報には、ダミー通信ミドル(仮想通信部113)が宛先となるポート番号やアドレスが記されているものとする。よって、PCメーラ(アプリケーション実行部111)による送信動作は、ダミー通信ミドル(仮想通信部113)宛となり(ステップS402)、実際には移動体通信端末100の外部には送信されない。
【0089】
ダミー通信ミドル(仮想通信部113)は、PCメーラ(アプリケーション実行部111)から仮想的に送信されたショートメッセージを受信すると、メモリ制御部112を起動し、ステップS401で仮想ドライブRDに書き込まれた送信メッセージを携帯アプリ領域171に格納させる(ステップS403)。ここでは、PCメールの形式で仮想ドライブRDに書き込まれているので、メモリ制御部112は、ショートメッセージの形式に変換して携帯アプリ領域171に格納する。
【0090】
これと同時に、仮想通信部113は、SMSメーラ(アプリケーション実行部111)を起動し、ステップS403で携帯アプリ領域171に格納した送信メッセージの実質的な送信を実行させる(ステップS404)。すなわち、SMSメーラ(アプリケーション実行部111)が通信制御部120を制御することで、SMSのプロトコルによる送信動作がおこなわれる。
【0091】
送信が完了すると、SMSメーラ(アプリケーション実行部111)は、送信完了通知をダミー通信ミドル(仮想通信部113)に返信する(ステップS405)。この場合、ダミー通信ミドル(仮想通信部113)は、送信完了通知をPCメーラ(アプリケーション実行部111)に通知する(ステップS406)。
【0092】
PCメーラ(アプリケーション実行部111)は、ダミー通信ミドル(仮想通信部113)からの送信完了通知に基づき、仮想ディスク(メモリ部150)に書き込んだ送信メールを送信済とする記録をおこなって(ステップS407)、「メール統合処理」(図4)のフローに戻る。
【0093】
なお、PCメーラ(アプリケーション実行部111)によってPCメールの送信操作がおこなわれた場合(ステップS105:Yes)は、PCメーラによって通常の送信動作がおこなわれるが、送信したメールについては、仮想ドライブRD(メモリ部150)に保存される(ステップS106)。
【0094】
以上のような動作を、PCメーラの終了が指示されるまで繰り返しおこなう(ステップS107:No)。そして、PCメーラの終了が指示されると(ステップS107:Yes)、アプリケーション実行部111はその旨をメモリ制御部112に通知する。アプリケーション実行部111からの通知に応じて、メモリ制御部112は、仮想ドライブRD(メモリ部150)にある統合メールデータ、すなわち、仮想化されたメッセージデータを、メッセージ機能毎(PCメールと携帯メール(SMS))の所定の格納領域に戻すための「通常化変換処理」を実行する(ステップS500)。この「通常化変換処理」を、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0095】
メモリ制御部112は、メモリ部150に構築した仮想ドライブRD(RAMディスク)にアクセスし、格納されている統合メールデータからPCメールを抽出する(ステップS501)。
【0096】
メモリ制御部112は、抽出したPCメールを、記憶部170のPCアプリ領域172に格納すると(ステップS502)、仮想ドライブRDのデータを消去して(ステップS503)、処理を終了する。
【0097】
このような処理により、PCメールが実行されている間のみ仮想ドライブRD(RAMディスク)がメモリ部150に構築され、本来はSMSメーラによって送受信されるショートメッセージが格納される。そして、PCメーラは、仮想ドライブRDに存在するショートメッセージのみにアクセスできるように動作し、PCメーラの終了とともに仮想ドライブRD内のデータは消去されるので、セキュリティを維持することができる。
【0098】
「通常化変換処理」が終了すると、「メール統合処理」(図4)のフローに戻り、そのまま処理を終了する。
【0099】
なお、「メール統合処理」のフローにおいて、実行されたメーラがSMSメーラである場合(ステップS101:No)は、そのまま処理を終了し、SMSメーラによる通常の動作がおこなわれる。すなわち、SMSメーラがショートメッセージなどの携帯メールのみを扱う動作がおこなわれる。
【0100】
また、メール統合モードが設定されていない場合(ステップS102:No)、起動したのがPCメーラであっても(ステップS101:Yes)、そのまま処理を終了する。この場合、PCメーラによる通常の動作がおこなわれる。すなわち、PCメールのみを扱う動作がおこなわれ、上述したような、ショートメッセージを統合して扱う処理はおこなわれない。
【0101】
以上説明したように、本発明を上記実施形態の如く適用することにより、異なる方式の電子メール(例えば、携帯電話に固有のSMSと汎用の電子メール、など)を、セキュリティを維持しつつ、1つのアプリケーションで扱うことができ、PCとしても機能させることができる携帯電話端末などの利便性を向上させることができる。
【0102】
上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0103】
例えば、上記実施形態では、外部表示装置300や外部入力装置400がクレードル200を介して移動体通信端末100に接続されるものとしたが、移動体通信端末100に直接接続される構成としてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、SMSメーラによって受信されたメールに既読マークを付与し、当該受信メールをPCメーラが自動的に表示させることで、既読状態の整合を図る例を示したが、送受信した電子メールの状態管理をおこなう方法は、これに限られず任意である。例えば、PCメーラ起動中にSMSメーラが受信したメールは未読状態としておき、PCメーラにて当該受信メールが開封された際に、仮想通信部113などを介して状態情報を送信するなどして、SMSメーラが既読状態に変更するようにしてもよい。
【0105】
なお、上記実施形態では、PCメーラが実行されている状態での送受信動作の例を示したが、例えば、APIによるアプリケーション間の連携などの技術を適用することにより、PCメーラが起動されていない状態でSMSメーラがショートメッセージを受信した際に自動的にPCメーラが起動して、受信したショートメッセージを扱えるようにしてもよい。また、移動体通信端末100がPCモードとなっている場合に、このような動作をするようにしてもよい。
【0106】
上記実施形態では、携帯電話に固有のプロトコルを用いる電子メールとしてSMSを例示したが、汎用的な形式の電子メールと異なる形式であればこれに限られず、携帯電話の通信キャリアがサービスを提供している電子メールであってもよい。また、3種類以上の電子メールを送受信できる移動体通信端末100に本発明を適用してもよく、この中に同種の形式の電子メールが2以上含まれていてもよい。
【0107】
上記実施形態では、電子メールの送受信にかかるアプリケーションの制御に本発明を適用した場合を例示したが、電子メール以外のアプリケーションなどに本発明を応用して適用してもよい。すなわち、一方のアプリケーションが用いるメモリ領域にアクセス制限をおこない、他方のアプリケーションは仮想ドライブなどの一時的かつ分離されたメモリ領域を用いるよう制御することで、セキュアなファイルシステムを実現することができる。
【0108】
例えば、上記実施形態では、本発明にかかる通信端末装置を移動体通信端末(携帯電話)によって実現した場合を例示したが、移動体通信端末に限られず、種々の通信端末装置に本発明を適用することができる。
【0109】
また、本発明にかかる構成を予め備えた通信端末装置だけでなく、既存の通信端末装置にプログラムを適用することで、本発明にかかる通信端末装置として機能させることができる。すなわち、上記実施形態で例示した制御部110が実行するプログラムと同様のプログラムを既存の通信端末装置に適用し、当該通信端末装置のコンピュータがプログラムを実行することで、上記制御部110と同様の機能が実現され、本発明にかかる通信端末装置として機能させることができる。
【0110】
このようなプログラムの適用方法は任意であり、例えば、CD−ROMやメモリカードなどの記憶媒体に格納して適用できる他、例えば、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。
【符号の説明】
【0111】
100…移動体通信端末、110…制御部、111…アプリケーション実行部、112…メモリ制御部、113…仮想通信部、120…通信制御部、121…音声通信部、122…データ通信部、130…出力部、131…音声出力部、132…表示部、140…入力部、141…操作部、142…音声入力部、150…メモリ部、BF…バッファ領域、RD…仮想ドライブ(RAMディスク)、160…コネクタ部、170…記憶部、171…携帯アプリ領域、172…PCアプリ領域、200…クレードル、300…外部表示装置、400…外部入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子メールを送受信可能な通信端末装置であって、
第1の電子メール形式による電子メールの送受信動作をおこなう第1のアプリケーション手段と、
前記第1の電子メール形式とは異なる第2の電子メール形式による電子メールの送受信動作をおこなう第2のアプリケーション手段と、
前記第1のアプリケーション手段によって送受信された第1の電子メールデータを格納し、前記第2のアプリケーション手段からのアクセスが禁止されている第1のメモリ手段と、
前記第1のメモリ手段とは分離され、仮想的なファイルシステムが構成される第2のメモリ手段と、
前記第1のメモリ手段に格納されている第1の電子メールデータと、前記第2のアプリケーション手段によって送受信された第2の電子メールデータとを前記第2のメモリ手段に格納するメモリ制御手段と、を備え、
前記第2のアプリケーション手段は、前記第2のメモリ手段にアクセスして、前記第1のメールデータと前記第2のメールデータを取得する、
ことを特徴とする通信端末装置。
【請求項2】
前記メモリ制御手段は、前記第2のアプリケーション手段による受信動作を契機に、前記第1のアプリケーション手段によって受信され前記第1のメモリ手段に格納された第1の電子メールデータを、前記第2の電子メール形式に変換して前記第2のメモリ手段に格納する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。
【請求項3】
前記第2のアプリケーション手段が前記第1の電子メール形式で送信をおこなう際に、仮想的な送信動作をおこなう仮想通信手段をさらに備え、
前記仮想通信手段は、前記第2のアプリケーション手段に、当該仮想通信手段をメールサーバとした送信動作をおこなわせるとともに、実質的な送信を前記第1のアプリケーション手段におこなわせ、
前記第2のアプリケーション手段は、前記仮想通信手段に送信した電子メールを前記第2のメモリ手段に格納し、
前記メモリ制御手段は、前記第2のアプリケーション手段によって前記第2のメモリ手段に格納された電子メールを、前記第1の電子メール形式に変換して前記第1のメモリ手段に格納する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の通信端末装置。
【請求項4】
前記第2のアプリケーション手段は、前記第2のメモリ手段に格納されている電子メールデータに基づいて、前記第1の電子メール形式による電子メールと前記第2の電子メール形式による電子メール双方の送受信履歴を管理する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の通信端末装置。
【請求項5】
前記メモリ制御手段は、前記第2のアプリケーション手段の終了を契機に、前記第2のメモリ手段に格納されている電子メールデータを消去する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信端末装置。
【請求項6】
前記通信端末装置は、携帯電話端末であり、
前記第1の電子メール形式は、当該携帯電話端末にかかる通信キャリアによって規定される電子メール形式であり、
前記第2の電子メール形式は、汎用的な電子メール形式である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の通信端末装置。
【請求項7】
電子メールを送受信可能な通信端末装置を制御するコンピュータに、
第1の電子メール形式による電子メールの送受信動作をおこなう第1のアプリケーション機能と、
前記第1の電子メール形式とは異なる第2の電子メール形式による電子メールの送受信動作をおこなう第2のアプリケーション機能と、
前記第1のアプリケーション機能によって送受信された第1の電子メールデータを第1のメモリ手段に格納し、前記第2のアプリケーション機能からのアクセスを禁止する第1のメモリ機能と、
前記第1のメモリ手段とは分離された第2のメモリ手段に、仮想的なファイルシステムを構成する第2のメモリ機能と、
前記第1のアプリケーション機能によって前記第1のメモリ手段に格納された第1の電子メールデータと、前記第2のアプリケーション機能によって送受信された第2の電子メールデータとを前記第2のメモリ手段に格納するメモリ制御機能と、
前記第2のアプリケーション機能に、前記第2のメモリ手段にアクセスして、前記第1の電子メールデータと前記第2の電子メールデータを取得させる機能と、
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−48690(P2011−48690A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197369(P2009−197369)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】