説明

通信端末装置

【課題】電子マネーが保持された非接触記憶媒体を収納し、人体通信により外部と通信をすることで決済処理が可能な通信端末装置において、非接触記憶媒体からの二重引き去りを防止する通信端末装置を提供することを目的とする。
【解決手段】前記通信端末装置は、外部磁界を検出する外部磁界検出手段を備え、外部磁界が無いと判別したら、非接触通信手段を介して前記収納された非接触記憶媒体と通信し、外部磁界有りと判別したら、非接触通信用アンテナから非接触通信を阻止する妨害磁界を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカードの非接触記憶媒体を収納した状態で、該非接触記憶媒体から電子マネーの金額情報を取得し、人体通信を介して外部の決済装置と電子マネーの決済をすることができる通信端末装置に関し、特に良好な決済を可能とする通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の消費社会では、非接触ICカードを用いた電子マネーの決済システムが一般的なものになっている。また、人体に誘導される静電界を用いる通信方式である人体通信の利用が徐々に高まってきている。これらを背景として、電子マネー決済システムにも人体通信を利用し、利用者が非接触ICカードを取り出して決済装置にかざさなくても決済を可能にする決済システムが考えられている。例えば、本出願人は特許文献1で、非接触ICカードを入れた携帯用非接触ICカード入れを用いた決済システムを提案している。
【0003】
この携帯用非接触ICカード入れを用いて、人体通信による決済処理を可能にする決済システムは、電子マネーによる決済を行う決済装置と、当該決済に用いられる決済情報を記憶した非接触ICカードを収納する携帯用非接触ICカード入れとを備えていて、前記携帯用非接触ICカード入れは、収納された非接触ICカードと通信可能な非接触通信用アンテナと、前記決済装置と通信可能な人体通信用アンテナと、前記収納された非接触ICカードから読み出した前記決済情報を前記決済装置に送信する制御手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2010/134135
【0005】
この決済システムにおける決済方法は、電子マネーの決済の都度、収納されている非接触ICカードから、非接触通信用アンテナを介して読み出した決済情報を、更に人体通信用アンテナを介して決済装置に送信して電子マネーの決済をする、というものである。従って、非接触ICカードをかざして決済を行う従来の方法に比べて、非接触通信用アンテナを介して読み出した決済情報を人体通信用アンテナを介して決済装置に送信するという処理が増えることによる通信時間が増し、システム上であらかじめ決められた非接触ICカードとの通信時間を超過するタイムアウトが生じて、決済ができなくなるという不具合が考えられる。
【0006】
上記の不具合を解消するためには、非接触ICカードに保持された電子マネーの金額情報を一時的に記憶し、この記憶した電子マネーの金額情報に基づいて人体通信による決済を行い、決済後に、非接触ICカードの電子マネーの残金を書き替えるという方法が考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記した非接触ICカードを入れた携帯用非接触ICカード入れは、決済装置側の構成によって、決済装置との非接触通信による決済と、決済装置との人体通信による決済の両方が可能なようにすることができる。すなわち、上記の非接触ICカードを入れた携帯用非接触ICカード入れを非接触通信機能のみを備える決済装置にかざすことで非接触通信による決済を行え、人体通信機能まで備える上述した決済装置に対しては、該携帯用非接触ICカード入れを携帯した者が決済装置に触れることで人体通信による決済を行うことができる。
【0008】
ここで、上記の非接触通信機能と人体通信機能まで備える決済装置では、上記した携帯用非接触ICカード入れの特許文献1に示す構成と同様に、非接触通信用アンテナと人体通信用アンテナとを一体的に構成することが考えられる。
【0009】
非接触通信用アンテナと人体通信用アンテナとを一体的に構成した決済装置と、非接触ICカードを入れた携帯用非接触ICカード入れを用いた決済システムとを用いて、上記した非接触ICカードに保持された電子マネーの金額情報を一時的に記憶し、この記憶した電子マネーの金額情報に基づいて人体通信による決済を行った場合、非接触通信用と人体通信用の決済アプリケーションの両方を常時起動させておくことで、ユーザは、非接触通信による決済を希望する場合は、非接触ICカードを決済装置にかざし、人体通信による決済を希望する場合は決済装置に触れることで、いずれも即時に決済処理ができるようになる。
【0010】
しかしながら、非接触通信用と人体通信用の決済アプリケーションの両方を常時起動させると、上述の非接触ICカードに保持された電子マネーの金額情報を一時的に記憶し、この記憶した電子マネーの金額情報に基づいて人体通信による決済の場合に、人体通信によって、非接触ICカードに通信することなく、記憶した金額情報から目的の金額を差し引くことで決済処理ができ、非接触通信によって、非接触ICカードに保持されている金額情報から目的の金額を差し引くことで決済処理ができ、その後、非接触ICカードの金額情報を差し引いた後の金額情報に更新することになり、非接触ICカードから二重に代金を差し引くことになる。これを代金の二重引き去りという。
【0011】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、電子マネーが保持された非接触媒体を収納し、収納した非接触記憶媒体と非接触通信をし、更に人体通信により外部の決済装置と通信をすることで決済処理を行う通信端末装置において、非接触記憶媒体との非接触通信と人体通信の両方による決済が可能な決済装置との決済処理時に、非接触通信による決済処理と人体通信の決済処理の両方の決済処理の発生を防止して非接触記憶媒体から二重に代金が引かれる二重引き去りを防止する通信端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、
電子マネーを保持した非接触記憶媒体を収納し、該非接触記憶媒体と通信するアンテナを含む非接触通信手段を備えるとともに、人体通信をする人体通信手段を備え、前記非接触記憶媒体が記憶する電子マネーに基づいて前記人体通信を介して外部の決済装置との間で決済処理を行い、該決済処理結果に基づいて非接触記憶媒体の情報を更新する通信端末装置であって、前記通信端末装置は、前記非接触通信手段の前記アンテナを介して受信した外部磁界を検出する外部磁界検出手段と外部磁界の有無を判別する制御部をさらに備え、前記制御部は、前記外部磁界検出手段の検出結果に基づいて外部磁界の有無を判別し、外部磁界が無いと判断したら、非接触通信手段を介して前記収納された非接触記憶媒体と通信し、外部磁界有りと判別したら、前記アンテナに、非接触記憶媒体の非接触通信を妨害する妨害磁界を発生させることを特徴としている。
【0013】
請求項2記載の発明は、
前記請求項1記載の前記妨害磁界は、決済装置が発生する誘導磁界と逆位相の誘導磁界であることを特徴としている。
【0014】
請求項3記載の発明は、
前記妨害磁界は、前記非接触記憶媒体が認識不能な情報が重畳された誘導磁界であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子マネーが保持された非接触記憶媒体を収納した通信端末装置と、非接触通信および人体通信での両方の決済処理が可能な決済装置との間で電子マネーの決済を行う場合であっても、通信端末装置が、外部磁界の有無を判別し、外部磁界有りと判別したら、通信端末装置に収納した非接触記憶媒体と外部の決済装置が非接触通信をすることを妨害する妨害磁界を発生するようにしたので、外部の決済装置が通信端末装置に収納された非接触記憶媒体と直接通信することを阻止することができ、二重引き去りを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信端末装置の外観構造を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る無線端末装置の電気系の内部構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す非接触通信モジュールの回路構成とその周辺部の構成を示すブロック図である。
【図4】自動販売機に設置された決済装置の電気系の内部構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る通信端末装置の基本動作を示すフローチャートである。
【図6】図5に示す妨害磁界生成処理の詳細手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための実施の形態(以下、単に本実施形態という)について詳細に説明する。
【0018】
(実施形態の構成)
図1に、本実施形態に係る通信端末装置10の外観を示す。
通信端末装置10は、非接触ICカードを収納した状態でユーザによって携帯される装置であって、スリム筐体1の中に、後述する制御基板11等が実装されており、カード挿入口2から、電子マネーが保持された非接触ICカードが挿入されることで、自動販売機等に設置される後述する決済装置20との間で人体通信による電子マネーの決済を可能とするものである。
【0019】
非接触ICカードがカード挿入口2に挿入されると、非接触ICカードは、不図示のロック/アンロック機構により通信端末装置10の内部に保持され、ユーザがカード保持用スナップ3を操作することでポップアップされ排出される。なお、決済処理中、非接触ICカードの排出は禁止されるように構成されている。
【0020】
ユーザは、上記した非接触ICカードが収納された通信端末装置10をポケット等に入れて携帯し、決済装置20のタッチ面に触れることで、人体通信による決済が可能になり、また、決済装置20に非接触ICカードかざすことにより非接触通信による決済処理が可能になる。
【0021】
図2に、本実施形態に係る通信端末装置の電気系の内部構成を示す。
図2に示す通信端末装置10は、制御基板11と、非接触通信用アンテナ12と、人体通信用アンテナ13と、により構成されている。
【0022】
制御基板11は、制御部110と、記憶部111と、非接触通信モジュール112と、人体通信モジュール113とを含む。制御部110は、制御基板11に実装される各構成部品の制御中枢となり、例えば、CPUで構成される。
【0023】
非接触通信モジュール112は、非接触ICカード30との間で非接触通信用アンテナ12を介して非接触通信を行なう機能を有し、図3にその回路構成を示すように、データ変調回路112aと、データ復調回路112bと、増幅器112c、112dと、外部磁界検出回路112eと、により構成される。
【0024】
データ変調回路112aは、制御部110により生成されるデータを高周波(RF)信号で変調し、増幅器112cで増幅したデータを非接触通信用アンテナ12経由で非接触ICカード30へ送信する。データ復調回路112bは、非接触ICカード30から送信されるRF信号を非接触通信用アンテナ12を介して受信し、増幅器112dにより増幅したRF信号を復調して制御部110に送る。外部磁界検出回路112eは、非接触通信用アンテナ12の電圧を測定する。
【0025】
人体通信モジュール113は、決済装置20との間で人体通信用アンテナ23を介した人体通信を行う。
【0026】
人体通信モジュール113は、AD/DA変換部、データ変調回路、データ復調回路等から構成され人体通信の技術方式の規格に基づく通信を可能とするものであって、人体通信によって送られてきた暗号化された情報を復号化する処理や、制御部110からの指令に基づいて情報を暗号化して送信する機能を備える。
【0027】
記憶部111は、非接触ICカードから読み出した情報や、外部から人体通信を介して送られてきた情報等を記憶するものである。
【0028】
このように構成された、通信端末装置10の制御部110は、非接触ICカードが装置に挿入されると、非接触通信用アンテナ12を介して非接触ICカードに記憶された電子決済に用いる各種情報を読み込んで、記憶部111に記憶する。
【0029】
そして通信端末装置10を所持するユーザが、後述する決済装置20のタッチ面24に触れた時、決済装置20からの人体通信によって発信された決済に係る指令を、人体通信用アンテナ23を介して受信し前記記憶部111に記憶した電子マネーを用いて決済を行う(代金を決済装置20へ支払う)。
【0030】
更に、通信端末装置10の制御部110は、決済装置20との決済処理が終わった後で、記憶部111に記憶された電子マネーの残金を非接触通信用アンテナ12を介して非接触ICカードに書き込む処理を実行する。これにより非接触ICカードに記憶された電子マネーの残金は、決済前の金額情報から更新され減額となる。
【0031】
また、非接触通信モジュール112は、上述したように通信端末装置10に収納された非接触ICカードと非接触通信をする機能と、外部の装置から非接触ICカードに対して発せられる、非接触ICカードと通信する為の誘導磁界(以下外部磁界と云う)を受けていることを検出する機能の他に、非接触通信用アンテナ12が通信端末装置10以外の外部からの非接触通信によって通信をしないように妨害磁界を発生する機能を備える。
【0032】
非接触通信モジュール112と非接触通信用アンテナ12は、制御部110からの制御に基づいて、非接触通信と、妨害磁界の発生を行う。
【0033】
制御部110は、非接触通信モジュール112と非接触通信用アンテナ12に外部磁界を受信させている際に、外部磁界検出回路112eから外部磁界を受けていることを示す信号を受けると、外部磁界有りと判定し、非接触通信モジュール112が非接触通信用アンテナ12から妨害磁界を発生するように制御する。
【0034】
具体的に、外部磁界の有無の判定は、非接触通信モジュール12に内蔵された外部磁界検出回路112eが、外部磁界により非接触通信用アンテナ12に発生する誘起電圧を測定して制御部110へ出力し、制御部110が、予め用意された閾値と比較し、その誘起電圧が閾値以上の場合に「外部磁界あり」、閾値未満の場合に「外部磁界無し」と判定する。
【0035】
ここで、妨害磁界とは、外部の装置から発せられる非接触ICカードに対して通信するための誘導磁界とは逆位相の誘導磁界のことをいい、または、非接触ICカード30が認識不能な情報が重畳された誘導磁界のことをいう。
認識不能なデータとは、同じ数字の連続等意味を持たないデータである。
【0036】
図4を用いて、決済装置20の電気系の内部構成を説明する。
図4に示す決済装置20は、自動販売機100の主制御部50に接続され、自動販売機の商品を電子マネーによって決済する。
【0037】
決済装置20は、電子マネーを記憶した非接触記憶媒体と非接触通信を行う機能と、人体通信を行う機能の両方を備えており、電子マネーを記憶した非接触記憶媒体と直接、非接触通信をして電子マネーの決済処理を行うことができるとともに、非接触ICカードを収納した通信端末装置10と人体通信にて通信し通信端末装置10との間で電子マネーの決済処理を行うこともできる装置である。また非接触通信用と人体通信用の決済アプリケーションの両方を常時起動させている。
【0038】
決済装置20は、制御基板21と、非接触通信用アンテナ22と、人体通信用アンテナ23とを含み、構成される。
【0039】
非接触通信用アンテナ22と人体通信用アンテナ23は、自動販売機の前面に設けられたタッチ面24に両方が設けられている。
【0040】
制御基板21は、制御部210と、記憶部211と、非接触通信モジュール212と、人体通信モジュール213とを含む。
【0041】
制御部210は、制御基板21に実装される構成部品の制御中枢になる。記憶部211には、電子マネー決済の履歴情報等の各種データが記憶される。
【0042】
非接触通信モジュール212は、非接触ICカード30と非接触通信用アンテナ22を介して非接触通信を行ない、人体通信モジュール213は、通信端末装置10との間で人体通信用アンテナ23を介した人体通信を行う。なお、制御部210と記憶部211は、アドレス、データ、コントロールのためのラインが複数本で構成される内部バス経由で自動販売機100の主制御部50に接続されている。
【0043】
このように構成された決済装置20は、自動販売機100の主制御部50から送られてくる商品販売の代金の要求指令に基づいて、非接触ICカードや通信端末装置10との決済処理をする。
【0044】
具体的には、決済装置20は、外部に対して非接触通信用アンテナ22を介して非接触ICカードと通信できるか否かの問い合わせ信号を送信し、非接触ICカードからの応答を待っている。また、人体通信用アンテナ23からは人体通信に基づく通信ができるか否かの問い合わせ信号を送信し、通信端末装置10からの応答を待っている。ここで、非接触ICカード30が収納された通信端末装置10を所持した顧客がタッチ面24に触れると、決済装置20からの問い合わせ信号を受けた通信端末装置10からの応答を受信して、人体通信による決済処理を開始する。また、非接触ICカード30がタッチ面に実装された非接触通信用アンテナ22上にかざされると、決済装置20からの問い合わせ信号を受けた非接触ICカード30からの応答を受信して、非接触ICカード30との間で非接触通信による決済処理を開始する。
【0045】
(実施形態の動作)
以下、図5と図6のフローチャートを参照しながら、図1〜図3に示す本実施形態に係る通信端末装置10の動作について詳細に説明する。
【0046】
図5において、通信端末装置10のカード挿入口2に非接触ICカード30が挿入され、装置電源が投入されると、制御部110は、通信端末装置10以外の周知の電子マネー決済装置や決済装置20等の非接触ICカードリーダライタが発生する決済装置外部磁界の有無を判定する(ステップS101)。ここで、外部磁界の有無は、制御部110が、待機状態にある非接触通信用アンテナ12を受信側に切替え、非接触通信モジュール112により測定される非接触通信用アンテナ12に誘起される電圧を閾値と比較することにより判定される。
【0047】
具体的に、非接触通信モジュール12に内蔵された外部磁界検出回路112eが決済装置からの外部磁界により非接触通信用アンテナ12にかかる誘起電圧を測定して制御部110へ出力し、制御部110が、予め用意された閾値と比較し、その誘起電圧が閾値以上の場合に「外部磁界あり」、閾値未満の場合に「外部磁界無し」と判定する。
【0048】
ステップS101の外部磁界判定処理では「外部磁界無し」と判定されるまでループし、「外部磁界無し」と判定されたことを契機に(ステップS101“YES”)、制御部110は、非接触ICカード30に保持された電子マネーの金額情報等のデータの一括読み込みを行う(ステップS102)。ここで一括読み込みを行う理由は、逐次読み込みを行った場合、人体通信による通信経路の増加により通信時間が増し、非接触ICカード30内部で最悪タイムアウトが生じて決済が出来ない場合が考えられるためである。
【0049】
続いて制御部110は、非接触通信モジュール112を介して非接触通信用アンテナ12を制御することにより妨害磁界を発生させ、外部磁界が検出されなくなると妨害磁界の発生を停止する妨害磁界生成処理の実行を開始する(ステップS103)。
【0050】
妨害磁界生成処理の詳細手順を図6に示す。
図6によれば、制御部110は、まず、非接触通信用アンテナ12を介して決済装置20からの外部磁界の有無を判定する(ステップS201)。外部磁界は、図5のステップS101の外部磁界判定処理と同様、非接触通信用アンテナ12の誘起電圧を測定することにより判定される。ここで、「外部磁界あり」と判定されると(ステップS201“YES”)、制御部110は、非接触通信モジュール112を制御することにより、非接触通信用アンテナ12から妨害磁界を発生させる(ステップS202)。尚、ステップ202による妨害磁界の発生時間は、あらかじめ定められており、本実施例では、人体通信を開始する前の妨害磁界生成処理における妨害磁界発生時間をたとえば5秒とする。ステップS201において「外部磁界なし」と判定されると、S201に戻る。またS202が終わると、S201に戻る。以後妨害磁界生成処理のルーチンは後述するS107の妨害磁界生成処理の停止まで繰り返される。
【0051】
尚、人体通信や非接触ICカードの決済処理にかかる時間は1秒以下なので、上記の5秒間の妨害磁界の発生中に、人体通信の決済処理は完了する。
【0052】
ここでいう妨害磁界とは、決済装置20により生成される誘導磁界とは逆位相の誘導磁界のことである。この場合、外部から発せられる誘導磁界と妨害磁界とが打ち消し合うため、非接触ICカード30が外部から受ける外磁界によって非接触通信をすることを阻止できる。なお、妨害磁界の代わりに、非接触ICカード30が認識不能なデータが重畳された誘導磁界としても良い。この場合、制御部110により生成される非接触ICカード30が認識不能なデータは、非接触通信モジュール112が内蔵するデータ復調回路112aで変調され、増幅器112cで増幅され、ここで増幅された信号を非接触通信用アンテナ12に印加することで妨害用の誘導磁界が生成される。
【0053】
説明を図5に戻す。
ステップS103で妨害磁界の生成を開始した後、制御部110は、人体通信による決済開始の有無を判定する(ステップS104)。人体通信による決済開始の有無は、ユーザが決済装置20のタッチ面24に触れたことにより決済装置20の人体通信用アンテナ23から送信される決済を要求する信号を、人体通信用アンテナ13経由で受信することにより判定される。ここで、人体通信による決済開始有りと判定すると、決済装置20での人体通信による決済処理が開始され(ステップS105)、人体通信による決済処理が終了すると(ステップS106“YES”)、制御部110は、図6に示した妨害磁界生成処理を停止させる(ステップS107)。この時、上記した妨害磁界生成処理の妨害磁界発生時間とした5秒間に満たないで終了すれば、その終了時点で妨害磁界生成処理を停止させる。すなわち、制御部110は、人体通信モジュール113の人体通信による決済処理中、図6に示す妨害磁界生成処理により妨害磁界の発生を継続させることにより、決済装置20が発生する外部磁界によって非接触ICカード10が決済装置20と通信して決済処理をすることを阻止する。
【0054】
続いて制御部110は、外部磁界の有無を判定し(ステップS108)、「外部磁界無し」と判定された場合(ステップS108“YES”)、記憶部111に記憶された人体通信による決済結果を、非接触ICカード30に保持された電子マネーの金額情報に反映させるように書き込み、電子マネーの更新を行う(言い換えると決済処理結果に基づいて非接触記憶媒体の情報を更新する。)(ステップS109)。なお、ステップS108で「外部磁界あり」と判定された場合(ステップS108“NO”)、制御部110は、図6に示す妨害磁界生成処理を実行する(ステップS110)。この時の妨害磁界生成処理における妨害磁界発生時間を人体通信が終了したことを契機に、人体通信開始前に設定した5秒間から1秒へ設定変更し、この1秒間が経過して妨害磁界の発生が停止したら、ステップS108の外部磁界有無判定処理に戻る。
【0055】
(実施形態の効果)
以上説明したように本実施形態に係る通信端末装置10によれば、電子マネーを保持した非接触記憶媒体(非接触ICカード30)を収納し、該非接触記憶媒体と通信するアンテナ(非接触通信用アンテナ22)を含む非接触記憶媒体通信手段(非接触通信用アンテナ22と非接触通信モジュール112)を備えるとともに人体通信をする人体通信手段(人体通信用アンテナ23と人体通信モジュール113)を備え、前記非接触記憶媒体が記憶する電子マネーに基づいて前記人体通信を介して外部の人体通信による決済装置との間で決済処理(決済装置20)を行って、決済処理結果に基づいて非接触記憶媒体の情報を更新する通信端末装置10であって、前記通信端末装置は、前記アンテナを介して受信した外部磁界を検出する外部磁界検出手段(外部磁界検出回路112e)と外部磁界の有無を判別する制御部110をさらに備え、前記制御部は、前記外部磁界検出手段の検出結果に基づいて外部磁界の有無を判別し、外部磁界が無いと判別したら、非接触記憶媒体通信手段を介して前記収納された非接触記憶媒体と通信して、非接触記憶媒体から電子マネー等の情報を読み取る処理や、人体通信による決済処理結果にもとづいて非接触記憶媒体に記憶された情報を更新(非接触記憶媒体に記憶された電子マネーの残高の減額)し、外部磁界の有りと判別したら、前記アンテナに、非接触記憶媒体の非接触通信を妨害する妨害磁界を発生させて、非接触記憶媒体が決済装置と非接触通信によって決済処理を行うことを阻止する。これによって、決済装置に通信端末をかざしたときに、二重に決済されることを阻止するので、非接触記憶媒体からの二重引き去りは発生しない。
【0056】
尚、前記妨害磁界を、決済装置が発生する誘導磁界と逆位相の誘導磁界とすることで、決済装置の誘導磁界と妨害磁界が打ち消しあうので、非接触記憶媒体は決済装置と通信することが阻止(妨害)される。
【0057】
また前記妨害磁界を、前記非接触記憶媒体が認識不能な情報が重畳された誘導磁界とすることで、非接触記憶媒体はその認識不能な情報を受けて、外部磁界による通信が困難となり、非接触記憶媒体が決済装置と通信することが阻止(妨害)できる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0059】
1…スリム筐体、2…カード挿入口、3…カード保持用スナップ、10…通信端末装置、11、21…制御基板、12、22…非接触通信用アンテナ、13、23…人体通信用アンテナ、24…タッチ面、20…決済装置、30…非接触ICカード、50…主制御部、100…自動販売機、110…制御部、111…記憶部、112…非接触通信モジュール、112a…データ変調回路、112b…データ復調回路、112c、112d…増幅器、112e…外部磁界検出回路、113…人体通信モジュール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子マネーを保持した非接触記憶媒体を収納し、該非接触記憶媒体と通信するアンテナを含む非接触通信手段を備えるとともに、人体通信をする人体通信手段を備え、前記非接触記憶媒体が記憶する電子マネーに基づいて前記人体通信を介して外部の決済装置との間で決済処理を行い、該決済処理結果に基づいて非接触記憶媒体の情報を更新する通信端末装置であって、
前記通信端末装置は、前記非接触通信手段の前記アンテナを介して受信した外部磁界を検出する外部磁界検出手段と外部磁界の有無を判別する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記外部磁界検出手段の検出結果に基づいて外部磁界の有無を判別し、外部磁界が無いと判断したら、非接触通信手段を介して前記収納された非接触記憶媒体と通信し、
外部磁界有りと判別したら、前記アンテナに、非接触記憶媒体の非接触通信を妨害する妨害磁界を発生させることを特徴とする通信端末装置。
【請求項2】
前記妨害磁界は、決済装置が発生する誘導磁界と逆位相の誘導磁界であることを特徴とする請求項1記載の通信端末装置。
【請求項3】
前記妨害磁界は、前記非接触記憶媒体が認識不能な情報が重畳された誘導磁界であることを特徴とする請求項1記載の通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−12123(P2013−12123A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145531(P2011−145531)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】