説明

通信端末装置

【課題】コイルに磁性体を設けることにより磁界放射型アンテナの小型化および通信距離の向上を図ると共に、電界放射型アンテナから放射される電磁波が磁性体により熱となって損失するのを防止して、磁界放射型アンテナおよび電界放射型アンテナを近接配置することができる技術を提供する。
【解決手段】コイル42に磁性体シート43が設けられることにより磁界放射型アンテナ4の小型化および周波数特性の改善が図られているが、放射板44の他片44bが、磁界放射型アンテナ4の磁性体シート43と電界放射型アンテナ3との間に配置されることにより、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波から磁性体シート43が遮蔽される。したがって、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波が磁性体シート43により損失するのを防止することができるので、磁界界放射型アンテナ4および電界放射型アンテナ3を近接配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界放射型アンテナおよび電界放射型アンテナを備える通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォン、携帯情報端末などの通信端末装置の多機能化が進んでおり、RFID(Radio Frequency IDentification System)やGPS(Global Positioning System)、ワンセグ、Bluetooth(登録商標)、WiFi等の無線LAN、GSM(Global System for Mobile Communications)規格やCDMA(Code Division Multiple Access)規格等の通信規格による通話機能など、複数の機能を備える通信端末装置が提供されている。
【0003】
上記したような多機能な通信端末装置には、GPSやワンセグ、Bluetooth、無線線LAN、GSM規格やCDMA規格等による通信により使用される複数の電界放射型アンテナが設けられている。また、通信端末装置は、NFC(Near Field Communication)やFelica(ソニー株式会社の登録商標)などの近距離通信規格を利用した電子マネーの決済等に使用されることも多く、そのための近距離通信用アンテナが搭載されている。そして、近距離通信用アンテナが搭載された通信端末装置が、コンビニエンスストアに設置されたリーダ・ライタ装置や、自動改札機に搭載されたリーダ・ライタ装置に近付けられることで通信端末装置とリーダ・ライタ装置とが有する近距離通信用アンテナ間での通信が行われる。
【0004】
ここで、近距離通信規格に則って通信を行う場合は、その周波数は13.56MHzのHF帯を利用し、電磁誘導方式による磁界の放射により通信が行われる。このため、近距離通信用アンテナは磁界放射型アンテナが通信端末装置に搭載される。
【0005】
ところで、近年、通信端末装置の小型化が進み、例えば図12に示すように、磁界放射型アンテナ500および電界放射型アンテナ501を近接配置することが要求されているが、近接配置された磁界放射型アンテナ500および電界放射型アンテナ501が互いに干渉することが問題となっている。すなわち、磁界放射型アンテナ500において使用される周波数帯はHF帯(13.56MHz)であり、電界放射型アンテナ501において使用される周波数帯は約450MHz〜約2.5GHzであるが、磁界放射型アンテナ500は、HF帯以外に、低次および高次に周期的に副次共振点を有している。したがって、磁界放射型アンテナ500の高次の共振点が電界放射型アンテナ501の使用周波数帯と重なると、電界放射型アンテナ501の利得が低下する。
【0006】
そこで、磁界放射型アンテナ500の高次共振点における周波数成分を低減させる磁性体(フェライト)502を、磁界放射型アンテナ501のコイルパターン500aに設けることにより、磁界放射型アンテナ500の有する高次共振点による電界放射型アンテナ501への干渉を防ぎ、電界放射型アンテナ501の利得低下を防止する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。具体的には、図12に示すように、電界放射型アンテナ501の周波数特性を調整するために、磁界放射型アンテナ500のコイルパターン500aの一辺が最も電界放射型アンテナ501に接近する部分、すなわち、磁界放射型アンテナ500と電界放射型アンテナ501との干渉が最も生じやすい部位に磁性体502が設けられている。
【0007】
このようにすれば、磁性体502は高周波数帯域においてインピーダンスが大きく、磁界放射型アンテナ500の高次共振点における周波数成分が低減されるため、電界放射型アンテナ501の使用周波数帯域(高周波数帯域)における磁界放射型アンテナ500の高次共振点による影響が低減される。なお、図12は従来の磁界放射型アンテナおよび電界放射型アンテナの構成の一例を示す図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2008/056200号(段落0041〜0053、図7など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、磁界放射型アンテナ500のコイルパターン500aに磁性体502を設けることにより、磁界放射型アンテナ500の周波数特性を改善することができる。また、コイルパターン500aに磁性体を設けることにより、コイルパターン500aの巻数を少なくしても大きなインダクタンスを得ることができるため、磁界放射型アンテナ500の小型化を図ることができる。
【0010】
ところで、磁界放射型アンテナ500に磁性体502を設けることで、磁界放射型アンテナ500の周波数特性の改善を図り、磁界放射型アンテナ500および電界放射型アンテナ501が近接配置されたときの、電界放射型アンテナ501の使用周波数帯域における磁界放射型アンテナ500の高次共振点による影響を低減することができる一方で、次のような問題があった。すなわち、磁性体502は、電界放射型アンテナ501の使用周波数帯域において電磁界エネルギーの損失が大きくなり、磁界放射型アンテナ500および電界放射型アンテナ501が近接配置されて、電界放射型アンテナ501および磁性体502が結合することにより、電界放射型アンテナ501から放射される電磁波の一部が磁性体502に吸収されてしまい、熱となって損失する。このため、電界放射型アンテナ501を使用する通信の通信特性が劣化するという問題があった。
【0011】
この発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、コイルに磁性体を設けることにより磁界放射型アンテナの小型化および通信距離の向上を図ると共に、電界放射型アンテナから放射される電磁波が磁性体により熱となって損失するのを防止して、磁界放射型アンテナおよび電界放射型アンテナを近接配置することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、本発明の通信端末装置は、磁性体が設けられたコイルを有する磁界放射型アンテナと、電界放射型アンテナと、非磁性の導電性材料により形成され、前記磁界放射型アンテナの前記磁性体と前記電界放射型アンテナとの間に配置されて前記電界放射型アンテナから放射される電磁波から前記磁性体を遮蔽する遮蔽板とを備えたことを特徴としている(請求項1)。
【0013】
また、前記磁界放射型アンテナは、前記コイルと磁気結合して磁界を放射する放射板をさらに備え、前記放射板は、その一部が折り曲げられて前記磁性体と前記電界放射型アンテナとの間に配置されており、前記遮蔽板は、前記磁性体と前記電界放射型アンテナとの間に配置される前記放射板の一部により形成されているとよい(請求項2)。
【0014】
また、前記放射板がコイル状を成してもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、コイルに磁性体が設けられることにより磁界放射型アンテナの小型化および通信距離の向上が図られ、非磁性の導電性材料により形成され遮蔽板が、磁界放射型アンテナの磁性体と電界放射型アンテナとの間に配置されることにより、電界放射型アンテナから放射される電磁波から磁性体が遮蔽されるため、電界放射型アンテナおよび磁性体が結合するのを防止することができ、電界放射型アンテナから放射される電磁波が磁性体により熱となって損失するのを防止することができるので、磁界放射型アンテナおよび電界放射型アンテナを近接配置することができる。したがって、磁界放射型アンテナおよび電界放射型アンテナを近接配置することができるので、磁界放射型アンテナおよび電界放射型アンテナの配設位置の設計の自由度を高めることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、磁界放射型アンテナは、コイルと磁気結合して磁界を放射する放射板をさらに備えているため、コイルから発生する磁界を受けてコイルより大きい面積を有する放射板の端縁に沿って誘導電流が発生することにより、放射される磁界のループがより大きくなるので、コイルを小型化しても磁界放射型アンテナを使用する通信の通信特性が劣化するのを防止して、通信距離を伸ばすことができる。
【0017】
また、放射板は、その一部が折り曲げられて磁性体と電界放射型アンテナとの間に配置されており、遮蔽板が、磁性体と電界放射型アンテナとの間に配置される放射板の一部により形成されることにより、部品の数が削減されるため、磁性体と電界放射型アンテナとが結合するのを防止することができる簡素な構成の通信端末装置を提供することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、放射板がコイル状であるため、より効率よくコイルに発生する磁界を大きくして増幅することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる通信端末装置を示す図である。
【図2】図1の通信端末装置の要部拡大図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図3】図1の通信端末装置の動作を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は切断側面図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかる通信端末装置の要部拡大図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図5】本発明の第3実施形態にかかる通信端末装置の要部拡大図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図6】本発明の第4実施形態にかかる通信端末装置の制御基板の平面図である。
【図7】本発明の第5実施形態にかかる通信端末装置の制御基板の切断側面図である。
【図8】本発明の第6実施形態にかかる通信端末装置の要部拡大図であって、(a)は斜視図、(b)は放射板に折り曲げ加工される前の板状部材を示す図である。
【図9】本発明の第7実施形態にかかる通信端末装置の要部拡大図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は放射板に折り曲げ加工される前の板状部材を示す図である。
【図10】本発明の第8実施形態にかかる通信端末装置の制御基板の切断側面図である。
【図11】本発明の通信端末装置の変形例を示す図である。
【図12】従来の磁界放射型アンテナおよび電界放射型アンテナの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
本発明の通信端末装置の第1実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。図1は本発明の第1実施形態にかかる通信端末装置を示す図である。図2は図1の通信端末装置の要部拡大図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図である。図3は図1の通信端末装置の動作を説明するための要部拡大図であって、(a)は斜視図、(b)は切断側面図である。なお、図1〜図3では、説明を容易なものとするため、本発明にかかる主要な構成のみが図示されており、その他の構成については図示省略されている。また、後の説明で用いられる図4〜図10においても図1〜図3と同様に本発明にかかる主要な構成のみが図示されており、以下ではその説明は省略する。
【0021】
(構成)
図1に示す通信端末装置1は、900MHz帯や、1.8GHz帯および2GHz帯の周波数を利用するGSM規格やCDMA規格などの通信規格に基づく通信機能と、HF帯の周波数を利用するNFC規格による通信機能とを有し、筐体1a内に配設された制御基板2を備えている。制御基板2には、各種のプログラムが格納されたメモリ(図示省略)と、メモリに格納されたプログラムを実行することにより各種の制御を行うCPU(図示省略)が搭載されている。また、制御基板2には、900MHz帯の周波数を利用する通信規格による通信の際に使用される電界放射型アンテナ3と、HF帯の周波数を利用するRFID(NFC規格)による近距離通信の際に使用される磁界放射型アンテナ4とが設けられている。
【0022】
そして、制御基板2に搭載されたCPUは、通信端末装置1が備える図示省略された押ボタンやタッチパネルなどの操作手段が操作されると、当該操作内容に基づいてメモリに格納された所定のプログラムを実行することにより、LCDや有機ELなどにより形成されて通信端末装置1に設けられたフラットパネルディスプレイ(図示省略)に所定の表示を行ったり、電界放射型アンテナ3による通話やメールなどの機能を実行したり、磁界放射型アンテナ4による近距離通信を実行したりする。
【0023】
また、通信端末装置1に対して外部から信号が送信されたことが検出されると、CPUは、受信された信号に基づいてメモリに格納された所定のプログラムを実行することにより、フラットパネルディスプレイに所定の表示を行ったり、電界放射型アンテナ3による通話やメールなどの機能を実行したり、磁界放射型アンテナ4による近距離通信を実行したりする。以下では、通信端末装置1が有するRFIDによる通信機能を中心に説明を行う。
【0024】
電界放射型アンテナ3は、図2(a)に示すように、角柱状の絶縁性基材31の表面に、2GHzの周波数帯での通信に使用されるアンテナとして機能する導電性のアンテナパターン32aと、800MHzの周波数帯での通信に使用されるアンテナとして機能する導電性のアンテナパターン32bと、制御基板2のアンテナ入力端子に接続される導電性の端子パターン32cとを有する導電性のアンテナパターン32が設けられることにより形成されている。なお、電界放射型アンテナ3は、長手方向を有する制御基板2の短辺方向とほぼ平行にかつ制御基板2の短辺方向に沿う端縁に隣接して制御基板2に配置されていることが好ましい。
【0025】
磁界放射型アンテナ4は、矩形の板状のベース基材41と、ベース基材41の一方の主面に設けられたコイル42と、コイル42に設けられた矩形の板状の磁性体シート43と、非磁性の導電性材料により形成された放射板44とを備えている。そして、磁界放射型アンテナ4は、電界放射型アンテナ3の隣に近接配置されて制御基板2に設けられている。なお、本実施形態では磁界放射型アンテナ4は矩形状に形成されているが、磁界放射型アンテナ4の形状は特に矩形状に限るものではない。
【0026】
ベース基材41は、ポリイミドやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などにより形成されるフレキシブル基板により形成されている。なお、ベース基材41を、ガラスエポキシ基板などにより形成してもよい。
【0027】
コイル42は、CuやAlなどの金属導体によりベース基材41の一方の主面に形成された渦巻状の配線パターンにより形成されている。なお、渦巻状の配線パターンは、例えばベース基材41に金属導体の薄膜を形成し、フォトリソグラフィにより形成することができる。なお、コイル42は、ベース基材41の複数層に渡ってヘリカル状に形成した配線パターンにより構成してもよい。
【0028】
磁性体シート43は、フェライトなどの磁性体がシート状に形成された部材の一部がほぼ直角に折り曲げ加工されることにより断面略L字状に形成される。また、磁性体シート43は、ベース基材41の両主面のうち、近距離通信において通信端末装置1の通信相手が配置される側とは反対側の制御基板2側の主面に、折り曲げ部分が制御基板2を向くように配置されてコイル42に設けられている。本実施形態においては、磁性体シート43がほぼ直角に折り曲げられ加工されるものであるが、特にこの形態に限定するものではない。また、磁性体シート43を放射板44に沿って曲げて形成する場合であっても、曲折だけでなく磁性体シート43を湾曲させるようなものであってもよい。
【0029】
放射板44は、AlやCu、ITO(Indium
Tin Oxide)、Cなどの非磁性の導電性材料から成る板状部材の一部がほぼ直角に折り曲げ加工されることにより断面略L字状に形成されており、コイル42と磁気結合することにより、コイル42に発生する磁界よりも大きな磁界を放射する。また、断面略L字状の放射板44の大面積側の一片44aには、ベース基材41に形成された渦巻状のコイル42の巻回中心の開口部42aとほぼ同じ大きさの矩形状の貫通穴45と、貫通孔45から放射板44の端縁まで連通するスリット46とが形成されている。なお、コイル42のL値ばらつきを小さくできることから、放射板44に形成された貫通孔45の大きさをコイル42の巻回中心の開口部42aの大きさとほぼ同じ、もしくは小さくする方が好ましい。
【0030】
また、放射板44は、その面積がコイル42が形成された領域の面積よりも大きく形成されている。また、図1に示すように、断面略L字状の放射板44の小面積側の他片44bは、その断面における折り曲げ位置からの長さが、磁性体シート43の折り曲げ部分の長さよりも長くなるように形成されている。
【0031】
そして、放射板44は、ベース基材41の両主面のうち、RFIDによる通信において通信端末装置1の通信相手が配置される側と同側の筐体1a側の主面に、貫通穴45とコイル42の開口部42aとが上面視において重なり、他片44bが磁性シート43と電界放射型アンテナ3との間に配置されるように、他片44bを制御基板2に向けて配置されてコイル42に設けられている。
【0032】
このように構成すると、放射板44の折り曲げ位置からの他片44bの長さが磁性体シート43の折り曲げ部分の長さよりも形成されているため、電界放射型アンテナ3から見て、磁性体シート43は放射板44の他片44bにより見えない状態となる。したがって、放射板44は、非磁性の導電性材料により形成されていることから、放射板44は、電界放射型アンテナから放射される電磁波から磁性体シート43を遮蔽しており、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波は、磁性体シート43に到達する前に放射板44の他片44bにより遮断される。以上のように、この実施形態では他片44bが、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波が磁性体シート43に至らないように遮蔽する本発明の「遮蔽板」として機能している。なお、本実施形態においては、放射板44の一部がほぼ直角に折り曲げ加工されているが、特にこの形態に限定するものではない。例えば、放射板44の一部を磁性シート43と電界放射型アンテナ3との間に配置することができれば、放射板44の一部を湾曲するように折り曲げてもよい。
【0033】
(磁界放射型アンテナの動作)
次に、磁界放射型アンテナ4の動作について説明する。なお、この実施形態では、通信端末装置1は、磁界放射型アンテナ4および磁界放射型アンテナ4に接続された半導体により形成されたRFIC47を備えており、磁界放射型アンテナ4と通信相手のリーダ・ラソ'43タ装置との間で近距離通信が行われる。また、図1に示すように、RFIC47は制御基板2に実装されており、接続ピン48を介して、コイル42とRFIC47とがDC接続されている。
【0034】
通信相手のリーダ・ライタ装置の磁界放射型アンテナから発生した磁界により、磁界放射型アンテナ4のコイル42に誘導電流が流れると、この誘導電流により生成される磁束の増加を妨げるように放射板44の貫通穴45の端縁部分に電流が流れる。そして、図3(a)中の矢印で示すように、貫通穴45の端縁部分に流れた電流は、スリット46の周縁を通り、放射板44の一片44aおよび他片44bの外縁部分を、コイル42に流れる誘導電流と同じ向きに流れる。したがって、図3(b)に示すように、放射板44の面積がコイル42が形成された領域の面積よりも大きく形成されているため、コイル42に発生する磁界よりも大きい磁界MFが放射板44の外縁部分を流れる電流により生成される。換言すれば、コイル42に発生する磁界が大きく増幅された磁界MFが放射板44の外縁部分を流れる電流により生成される。
【0035】
このとき、図3(b)中の矢印で示すように、放射板44の一部がほぼ直角に折り曲げ加工されて形成された他片44bの外縁部分に、一片44aの外縁部分を流れる電流とほぼ直交する方向に電流が流れるため、当該他片44b側に指向性を有する磁界MFが磁界放射型アンテナ4に生じる。したがって、放射板44の折り曲げ角度や折り曲げる位置を適宜調整することにより、磁界放射型アンテナ4に生じる磁界MFの指向性を調整することができる。
【0036】
また、コイル42に磁性体シート43が設けられることにより、コイル42のインダクタンスが増大するため、コイル42の小型化および通信距離の向上を図ることができる。また、図3(b)中の破線で示すように、コイル42の下方に制御基板2に対向して磁性体シート43が設けられているため、磁性体シート43が磁路となって磁界放射型アンテナ4に生じた磁界MFが放射板44の面方向に偏向されるので、磁界MFが制御基板2に設けられた各種の電子部品や配線パターンに干渉するのを防止することができる。
【0037】
なお、この実施形態では、磁界放射型アンテナ4によりアクティブタイプの近距離通信用アンテナが形成されている例を示しているが、磁界放射型アンテナ4によりパッシブタイプの近距離通信用アンテナを形成してもよい。
【0038】
以上のように、この実施形態では、コイル42に磁性体シート43が設けられることにより磁界放射型アンテナ4の小型化および通信距離の向上が図られている。また、非磁性の導電性材料により形成され放射板44の他片44bが、磁界放射型アンテナ4の磁性体シート43と電界放射型アンテナ3との間に配置されることにより、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波から磁性体シート43が遮蔽されるため、電界放射型アンテナ3および磁性体シート43が結合するのを防止することができる。
【0039】
したがって、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波が磁性体シート43により熱となって損失するのを防止することができるので、磁界放射型アンテナ4および電界放射型アンテナ3を近接配置することができる。したがって、磁界放射型アンテナ4および電界放射型アンテナ3を近接配置することができるので、磁界放射型アンテナ4および電界放射型アンテナ3の配設位置の設計の自由度を高めることができる。
【0040】
ところで、電界放射型アンテナ3の近傍に金属などの導電性材料により形成された部材が配置されると、導電性の部材と電界放射型アンテナ3が結合することで、電界放射型アンテナ3の放射抵抗が小さくなってアンテナの放射特性が変化したり、電界放射型アンテナ3と導電性部材との間で静電容量が形成され、電界エネルギーが放射され難くなったりするため、従来では、できるだけ、電界放射型アンテナ3の近傍に導電性材料により形成された部材が配置されないように各種の部品のレイアウトが決定されていた。
【0041】
しかしながら、電界放射型アンテナ3から放射された電磁波は、放射板44によりある程度は放射損失するが、その損失の大きさは、放射板44の導電率が非常に高いことから磁性体シート43による電磁波の損失と比較すると非常に小さく、電界放射型アンテナ3を使用する通信の通信特性を大きく劣化させることがない。そこで、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波が磁性体シート43により損失することで、電界放射型アンテナ3を使用する通信の通信特性が大きく劣化することに着目して、アンテナ特性を変化させるおそれのある放射板44(遮蔽板)を、磁性体シート43と電界放射型アンテナ3との間に配置したことが、この実施形態として例示される本発明の最も大きな特徴である。
【0042】
したがって、導電性の放射板44と電界放射型アンテナ3とが近接配置された状態で、電界放射型アンテナ3が所定のアンテナ特性を有するように、電界放射型アンテナ3および放射板44を設計するとよい。このように構成すると、放射板44と近接配置された状態で所定のアンテナ特性を有する電界放射型アンテナ3を使用することができると共に、磁性体による損失により電界放射型アンテナ3の通信特性が劣化するのが防止された状態で、より高精度な通信を行うことができる。これにより、磁界放射型アンテナ4の設計および電界放射型アンテナ3の設計が個別に行えるようになり、双方のアンテナを最適に設計することができる。
【0043】
また、磁界放射型アンテナ4は、コイル42と磁気結合して磁界MFを放射する放射板44をさらに備えているため、コイル42から発生する磁界を受けてコイル42より大きい面積を有する放射板44の端縁に沿って誘導電流が発生することにより、放射される磁界MFのループがより大きくなるので、コイル42を小型化しても磁界放射型アンテナ4を使用する通信の通信特性が劣化するのを防止して、通信距離を伸ばすことができる。
【0044】
また、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波から磁性体シート43を遮蔽する遮蔽板が、放射板44の一部が折り曲げ加工されて形成される他片44bにより放射板44に一体に形成されることにより、簡素な構成で磁性体シート43と電界放射型アンテナ3とが結合するのを防止できる通信端末装置1を提供することができる。
【0045】
<第2実施形態>
本発明の通信端末装置の第2実施形態について、図4を参照して説明する。図4は本発明の第2実施形態にかかる通信端末装置の要部拡大図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図である。この実施形態が上記した第1実施形態と異なるのは、図4(a),(b)に示すように、磁性体シート43の面積が放射板44の一片44aの面積よりも小さく形成されており、放射板44の他片44bに切欠きが形成されている点である。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0046】
このように構成しても、磁性体シート43は、放射板44の他片44bにより電界放射型アンテナ3から放射される電磁波から遮蔽されているため、上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。以上のように、電界放射型アンテナ3から見て、磁性体シート43が放射板44の他片44b(遮蔽板)により遮蔽されて見えなければ、放射板44にどのように切欠きを形成して他片44bを構成してもよく、放射板44をどのように折り曲げ加工して他片44bを構成してもよい。
【0047】
<第3実施形態>
本発明の通信端末装置の第3実施形態について、図5を参照して説明する。図5は本発明の第3実施形態にかかる通信端末装置の要部拡大図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図である。この実施形態が上記した第1実施形態と異なるのは、通信端末装置1がLTE(Long Term Evolution)規格の通信機能を備えており、図5(a),(b)に示すように、制御基板2の両側にそれぞれ電界放射型アンテナ3が設けられている点である。また、放射板44の両端がそれぞれ折り曲げ加工されることにより、各電界放射型アンテナ3に対応して、放射板44の他片44bがそれぞれ形成されている。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。なお、本実施形態においては、LTE規格を例に挙げて説明したが、これに限らず他の通信規格を備えるものであってもよい。
【0048】
このように構成すると、磁性体シート43は、放射板44の両端にそれぞれ形成された他片44bにより、各電界放射型アンテナ3から放射される電磁波から遮蔽されているため、上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0049】
<第4実施形態>
本発明の通信端末装置の第4実施形態について、図6を参照して説明する。図6は本発明の第4実施形態にかかる通信端末装置の制御基板の平面図である。この実施形態が上記した第1実施形態と異なるのは、通信端末装置1が、GPSやBlutoothなどの他の通信機能をさらに備えており、図6に示すように、制御基板2には、他の通信機能による通信により使用される電界放射型アンテナ103が制御基板2の長辺に隣接して設けられている点である。また、放射板44が折り曲げ加工されることにより、電界放射型アンテナ3,103と磁性体シート43との間に配置される他片44bが形成されている。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0050】
このように構成すると、磁性体シート43は、放射板44に形成された他片44bにより、各電界放射型アンテナ3,103から放射される電磁波から遮蔽されているため、上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0051】
以上のように、複数の電界放射型アンテナが磁界放射型アンテナに近接配置されている場合には、各電界放射型アンテナと磁界放射型アンテナが備える磁性体との間に、本発明の「遮蔽板」が配置されるようにすればよい。
【0052】
<第5実施形態>
本発明の通信端末装置の第5実施形態について、図7を参照して説明する。図7は本発明の第5実施形態にかかる通信端末装置の制御基板の切断側面図である。この実施形態が上記した第1実施形態と異なるのは、図7に示すように、放射板44の他片44bが階段状に折り曲げ加工されている点である。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0053】
このように構成しても、磁性体シート43は、放射板44に階段状に形成された他片44bにより、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波から遮蔽されているため、上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0054】
<第6実施形態>
本発明の通信端末装置の第6実施形態について、図8を参照して説明する。図8は本発明の第6実施形態にかかる通信端末装置の要部拡大図であって、(a)は斜視図、(b)は放射板に折り曲げ加工される前の板状部材を示す図である。この実施形態が上記した第1実施形態と異なるのは、図8(a),(b)に示すように、放射板44の他片44bに貫通窓44cが形成されている点である。放射板44は、図8(b)に示すように、貫通窓44cが形成された板状部材が折り曲げ線CLに沿って折り曲げ加工されることにより形成される。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0055】
このように構成すると、放射板44の他片44bに貫通窓44cが形成されているため、電界放射型アンテナ3から貫通窓44cを介して磁性体シート43の幅方向中央部分が見える状態であるが、電界放射型アンテナ3から放射される高周波帯の電磁波は、電界放射型アンテナ3の両端から放射されることになるため、磁性体シート43は、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波から放射板44の他片44bにより実質的に遮蔽される。したがって、上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0056】
以上のように、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波が高周波帯のものである場合には、遮蔽板として機能する放射板44の他片44bに形成された貫通窓44cの端縁が閉じた状態であれば、磁性体シート43を、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波から貫通窓44cが形成された他片44bにより遮蔽することができる。また、図8(b)に示すように、板状部材に貫通窓44cを形成することにより、折り曲げ線CLに沿って板状部材を容易に折り曲げ加工することができる。
【0057】
<第7実施形態>
本発明の通信端末装置の第7実施形態について、図9を参照して説明する。図9は本発明の第7実施形態にかかる通信端末装置の要部拡大図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は放射板に折り曲げ加工される前の板状部材を示す図である。この実施形態が上記した第1実施形態と異なるのは、図9(a)〜(c)に示すように、放射板144がコイル状を成す点である。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0058】
放射板144は、図9(c)に示すように、一片144a側が渦巻状のコイル形状に加工された板状部材が折り曲げ線CLに沿ってほぼ直角に折り曲げ加工されることにより形成される。また、渦巻状のコイル形状に加工された放射板144の一片144a側の両端144a1,144a2には、コイル形状を成す一片側144aの共振周波数が、コイル42の共振周波数とほぼ一致するようにキャパシタンス(図示省略)が設けられている。そして、図9(a),(b)に示すように、放射板144の他片144bが、磁性体シート43と電界放射型アンテナ3との間に配置されるように、放射板144が制御基板2に設けられている。なお、コイル形状に加工された放射板144は、その一片側144aの両端144a1,144a2にキャパシタンスが設けられるようなものだけでなく、絶縁体基材の両面にコイルパターンを形成し、この両面のコイルパターンが絶縁体基材を介して容量結合しているものも含む。
【0059】
このように構成すると、磁性体シート43は、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波から放射板144の他片144bにより遮蔽されため、上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、放射板144がコイル状であるため、より効率よくコイル42に発生する磁界を大きくして増幅することができる。また、コイル形状を成す放射板144の一片144aの共振周波数が、コイル42の共振周波数、すなわち、RFIDによる通信に使用されるHF帯の周波数にほぼ一致するように放射板144にキャパシタンスが設けられているため、より効率よくコイル42に発生する磁界を大きくして増幅することができる。
【0060】
<第8実施形態>
本発明の通信端末装置の第8実施形態について、図10を参照して説明する。図10は本発明の第8実施形態にかかる通信端末装置の制御基板の切断側面図である。この実施形態が上記した第1実施形態と異なるのは、図10に示すように、放射板が設けられておらず、コイル142の一部により遮蔽板142aが形成されている点である。そして、遮蔽板142aが、磁性体シート43と電界放射型アンテナ3との間に配置されることにより、磁性体シート43は、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波から遮蔽板142aにより遮蔽される。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0061】
このように構成すると、磁性体シート43は、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波から遮蔽板142aにより遮蔽されるため、上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0062】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。例えば、上記した第1〜第7実施形態では、放射板44,144と一体的に形成された他片44b,144bにより本発明の「遮蔽板」が形成されており、上記した第8実施形態では、遮蔽板142aはコイル142と一体的に形成されているが、遮蔽板を放射板やコイルと別体に形成してもよい。すなわち、磁性体シート43と電界放射型アンテナ3との間に遮蔽板が配置されることにより、電界放射型アンテナ3から放射される電磁波から磁性体シート43を遮蔽することができれば、本発明の「遮蔽板」をどのように構成してもよい。
【0063】
また、上記した第1〜第7実施形態では、コイル42(磁性体シート43)および放射板44,144が制御基板2に設けられているが、近年、通信端末装置1の薄型化が進み、制御基板2は筐体1aの内壁に近接配置されているため、コイル42(磁性体シート43)を制御基板2に設けた状態で放射板44,144を筐体1aの内壁に設けてもよいし、放射板44,144を制御基板2に設けた状態でコイル42(磁性体シート43)を筐体1aの内壁に設けてもよい。また、放射板は、筐体1aにAlなどの非磁性の金属を蒸着させたりすることにより形成してもよい。
【0064】
例えば、図11に示すように、ベース基材41にコイル42(磁性体シート43)が設けられることにより、放射板を用いずに形成された磁界放射型アンテナ104のベース基材41を、筐体1aの内壁に接着剤等で貼着してもよい。この場合、電界放射型アンテナ3と磁界放射型アンテナ4(磁性体シート43)との間に、衝立状の遮蔽板10を配置するとよい。なお、図11は本発明の通信端末装置の変形例を示す図である。
【0065】
また、通信端末装置1が備える通信機能は上記した例に限られるものではなく、ワンセグ、WiFi等の無線LANなど、種々の通信機能を通信端末装置1に搭載してもよい。また、磁性体は、高周波領域においてインピーダンスが増大する特性を有しており、特に、磁性体による電磁波の損失量は高周波帯において増大するので、電界放射型アンテナが高周波帯(約400MHz〜)を用いた通信に使用される際に、上記した効果を特に顕著に奏することができる。
【0066】
また、従来、電磁波を遮蔽する遮蔽板は、電磁波を劣化(遮断)させることにより、電子部品に対する電磁波の影響を除去したり、電子部品から放射される電磁波が他の部品に干渉するのを防止するために用いられるが、上記した実施形態で用いられる遮蔽板は、電界放射型アンテナから放射される電磁波が劣化するのを防止するという従来とは異なる着想に基づいて使用されることを最大の特徴としている。
【0067】
そして、磁性体が設けられたコイルを有する磁界放射型アンテナと、電界放射型アンテナとを備える通信端末装置に本発明を広く適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 通信端末装置
3,103 電界放射型アンテナ
4,104 磁界放射型アンテナ
10 遮蔽板
42,142 コイル
43 磁性体シート
44,144 放射板
44b,144b 他片(遮蔽板)
142a 遮蔽板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体が設けられたコイルを有する磁界放射型アンテナと、
電界放射型アンテナと、
非磁性の導電性材料により形成され、前記磁界放射型アンテナの前記磁性体と前記電界放射型アンテナとの間に配置されて前記電界放射型アンテナから放射される電磁波から前記磁性体を遮蔽する遮蔽板と
を備えたことを特徴とする通信端末装置。
【請求項2】
前記磁界放射型アンテナは、前記コイルと磁気結合して磁界を放射する放射板をさらに備え、前記放射板は、その一部が折り曲げられて前記磁性体と前記電界放射型アンテナとの間に配置されており、
前記遮蔽板は、前記磁性体と前記電界放射型アンテナとの間に配置される前記放射板の一部により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。
【請求項3】
前記放射板がコイル状を成すことを特徴とする請求項2または3に記載の通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−74617(P2013−74617A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214754(P2011−214754)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】