説明

通信装置、プログラム及び通信方法

【課題】適切なタイムアウト時間を定めることで、効率的にネットワークを監視する。
【解決手段】管理端末201は、ネットワーク2を通じて複数の電子機器A1(31)〜電子機器E2(72)に対して個別にステータス要求を送信する。複数の電子機器A1(31)〜電子機器E2(72)は、予めグループA〜Eに区分されて管理端末201に認識されている。このとき、ステータス要求に対して個別に応答が返信されるまで待機するタイムアウト時間は、各電子機器が属するグループA〜Eによって予め既定とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークに接続された電子機器と通信を行う通信機器、この通信機器のコンピュータにより実行されるプログラム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の通信機器等に関する先行技術として、多数のプリンタが接続された大規模ネットワークの環境下で使用されるプリンタ管理システムが知られている(特許文献1参照)。この先行技術は、ネットワーク管理者の使用するパーソナルコンピュータで管理用のプログラムを実行することにより、ネットワーク上にある多数のプリンタのステータスをそこで集中管理するものである。
【0003】
特に先行技術では、管理対象となる各プリンタについて、管理コンピュータとの間の物理的な距離やトラフィック密度を考慮した上で、管理コンピュータからのステータス要求に対するタイムアウト時間を1台ずつ個別に設定するものとしている。このため先行技術によれば、管理コンピュータからの距離が遠いため、常に応答が遅くなるプリンタについては、比較的長めのタイムアウト時間を設定するといったネットワークの実情に合わせた対応が可能になると考えられる。
【特許文献1】特開平11−53141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、先行技術では実際に最低1回は管理コンピュータが各プリンタと通信を行ってみなければ、果たしてその応答が早いか遅いかを知ることができない。このため先行技術では、管理コンピュータがいざステータス要求を送信しようとする前に、ひとまずタイムアウト時間を設定するための準備として1台ずつ通信を試みておく必要があり、その手間と時間が膨大である。
【0005】
また先行技術では、実際には物理的な距離が極めて近い所に存在するにもかかわらず、たまたまそのプリンタの動作上の都合で管理コンピュータへの応答が遅れた場合であっても、応答が遅かったという表面的な理由でタイムアウト時間が無用に長く設定されてしまうという不具合がある。このような状況にあっては、かえって実情に合わない長めのタイムアウト時間が設定されてしまうため、タイムアウトを発生させるまでに無駄な時間を要してしまう。
【0006】
そこで本発明は、ネットワーク上の機器との間で効率的に通信を行うことができる技術の提供を課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は第1に通信機器を提供する。また本発明は、第2にプログラムを提供する。さらに本発明は、第3に通信方法を提供する。
【0008】
第1の発明は、複数の電子機器が相互に通信可能に接続されたネットワークに接続される通信機器である。本発明の通信機器は、ネットワークを通じて複数の電子機器に対して個別に応答要求を送信するとともに、その送信先である電子機器から応答要求に対して個別に返信される応答を受信する通信機能を備える。そして本発明の通信機器は、その応答要求に対して電子機器から個別に応答が返信されるまで待機すべき待機時間(タイムアウト時間)を、複数の電子機器について予め区分されたグループごとに既定としている。
【0009】
ここで区分けされるグループには、ネットワーク通信上の特性がある程度共通している電子機器がまとまって所属する態様が自然である。例えば、通信機器との間の通信速度や、伝送距離等を基準として複数の電子機器をいくつかのグループに区分けすることができる。
【0010】
いずれにしても、同じグループに属する電子機器は、互いに通信上の特性について何らかの共通性ないし関連性があることを前提としている。その上で本発明は、電子機器が属するグループに応じて待機時間を予め既定とすることで上記の課題を解決している。すなわち、通信機器が通信を行う相手先の電子機器について、その属するグループが予め既知であれば、それよって既定の待機時間を用いて通信を行うことができる。このため、わざわざ電子機器ごとに通信を試みて応答時間を計測し、1台ずつ記憶するといった手間は必要にならない。また、ある1つの電子機器について、何らかの事情でたまたま応答時間が長くかかったとしても、それによって無用に長い待機時間が設定されてしまうこともない。
【0011】
より実用的には、本発明では以下の考え方を採用する。
すなわち、ネットワークに接続された電子機器との通信に要する時間の長さは、基本的に伝送経路の長さ(伝送距離)に比例する傾向がある。この傾向は、ネットワークの規模が大きくなればなるほど顕著に現れる。例えば、同じネットワーク内であっても、通信機器から地域的に大きくかけ離れた場所に設置されている電子機器との通信では、同じ構内(例えばすぐ隣など)に設置されている電子機器との通信に比較して長時間を要することは明らかである。
【0012】
そこで本発明では、このような通信に要する時間の長さが通信機器に相対する電子機器の設置場所によって異なる点に着目し、複数の電子機器について、その設置場所を基準として予めグループを区分けするものとする。電子機器は、その設置場所によって通信機器との通信に要する時間の長さがある程度は既知であることから、これを基準にグループを分け、それぞれグループごとに待機時間を予め既定としておくことができる。
【0013】
また本発明では、通信機器に相対する設置場所を基準としてグループを区分けする考え方の他に、通信機器との間でネットワークを介してみた距離の長さに応じてグループを区分けする考え方も取り得る。この場合、互いに別々の場所に設置されている電子機器同士であっても、ネットワークを介してみた伝送経路の長さが近いもの同士は、同じグループに属することがある。
【0014】
第2の発明はプログラムである。本発明のプロクラムは、通信機器のコンピュータに以下の手順を実行させるものである。1つの手順は、通信機器がネットワークを通じて複数の電子機器と個別に通信を行うに際し、予め区分されたグループに応じて既定の待機時間を抽出するものである。なお、グループごとに既定である待機時間は、予め通信機器の記憶装置等に記録されている。したがってこの手順では、そこから通信対象となる電子機器の種類に応じて待機時間を抽出するのである。次の手順は、通信機器からネットワークを通じて複数の電子機器に対して個別に応答要求を送信するものである。そして次の手順は、応答要求の送信後、少なくとも先に抽出しておいた待機時間が経過するまで応答要求の送信先である電子機器から個別に返信される応答を待ち受けるものである。
【0015】
本発明のプログラムには、複数の電子機器について、これらを個々の設置場所に基づいて複数のグループに区分し、そのグループごとに待機時間を既定とする手順が追加される。あるいは、複数の電子機器について、これらを個々にネットワークを介してみた距離の長さに応じて複数のグループに区分し、そのグループごとに待機時間を規定とする手順が追加される。
【0016】
第3の発明は通信方法である。本発明は、複数の電子機器が相互に通信可能に接続されたネットワークに接続される通信機器によって実行される通信方法である。この通信方法は、ネットワークを通じて複数の電子機器と通信を行うに際し、これらについて予め区分されたグループごとに既定の待機時間を抽出するステップを有する。また本発明の通信方法は、ネットワークを通じて複数の電子機器に対して個別に応答要求を送信するステップと、ここでの応答要求の送信後、少なくとも先のステップで抽出した待機時間が経過するまで応答要求の送信先である電子機器から個別に返信される応答を待ち受けるステップとを有する。
【0017】
本発明の通信方法においても、複数の電子機器について、これらを設置場所又はネットワークを介してみた距離の長さでグループ分けし、そのグループごとに待機時間を既定とするステップをさらに有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、相手先との通信を開始するに際して、適切な待機時間が既定として与えられているため、わざわざタイムアウト時間の設定のために通信を試みる必要がなく、それだけ無駄な手間を省くことができる。
【0019】
また、偶発的な要因でタイムアウト時間の設定が無用に長くなってしまうことがないため、多数の電子機器をネットワークで管理する作業をより効率化することができる。
【0020】
さらに、ネットワーク内に新規な電子機器を追加して接続する場合は、その追加する電子機器の設置場所や通信経路の長さに応じてどのグループに属するかを容易に選定することができる。このため、新規に追加する電子機器についても、最初から所属のグループによって待機時間(タイムアウト時間)を規定とすることができるため、個別に応答時間を計測して待機時間を設定する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信機器が接続されたネットワーク環境の概略構成図である。本発明のプログラムは、一実施形態に係る通信機器のコンピュータにより実行される。また本発明の通信方法は、通信機器のコンピュータによるプログラムの実行に伴って使用することができる。
【0022】
本実施形態で扱うネットワーク2は、例えばインターネット、イントラネット、LAN(Local Area Network)等を構成するインフラである。このようなネットワーク2には、多数のネットワーク対応機器(電子機器)が接続されている。電子機器は、例えばプリンタ、ファクシミリ、複写機、複合機等の画像形成装置であったり、スキャナであったり、パーソナルコンピュータやサーバ等であったりする。
【0023】
ネットワーク2が構築される範囲は、同一のフロア内や建物構内だけに限らず、ときには地域的な距離を隔てて拡がることもある。例えば、複数の都道府県ないし市町村にまたがって広域にネットワーク2が構築される場合もあり得る。本実施形態ではこのような大規模ネットワーク環境をも想定しているものとする。
【0024】
ネットワーク2上にはルータA21及びルータB22が組み込まれており、例えばルータA21は東京都内の事業所にあり、ルータB22は大阪府内の事業所にあるといった態様が考えられる。あるいは、ルータA21があるフロア内にあり、ルータB22は別のフロア内にあるといった態様もあり得る。またネットワーク2は、途中でその伝送路が有線から無線に姿を変えることもあり得るし、その逆もあり得る。このように、本実施形態で扱うネットワーク環境は多種多様である。
【0025】
ネットワーク2には、本実施形態に係る通信機器の一例として管理端末201が接続されている。管理端末201は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)としての構成を有するものである。この管理端末201は、ネットワーク2に接続されることを前提としているが、その設置場所は特に限定されていない。したがって、管理端末201はどこの都市にあって、どの建物構内にあり、どのフロア内のどの位置に設置されていなければならないといった制約はない。
【0026】
以上のような前提で、ネットワーク2に接続された多数の電子機器について、これらは予めいくつかのグループに区分けされている。多数の電子機器は、その属するグループと、グループ内での序列を識別するため記号(例えばA1等)を付して呼称されている。以下、電子機器についての記述の煩雑化を防止するため、図中の参照符号については適宜括弧書きとする。
【0027】
図1の例では、電子機器A1(31)及び電子機器A2(32)がグループAに区分けされている。同様に、電子機器B1(41)及び電子機器B2(42)がグループBに、電子機器C1(51)〜電子機器C3(53)がグループCに、電子機器D1(61)〜電子機器D3(63)がグループDに、そして電子機器E1(71)及び電子機器E2(72)がグループEにそれぞれ区分けされている。
【0028】
グループの区分けは、例えば個々の電子機器の設置場所を基準として行うことができる。この場合、同一の建物構内に設置されたものを1つのグループに区分したり、あるいは、同一の建物構内でもフロア別のグループに区分したり、さらには、同一フロア内でも設置場所別のグループに区分したりすることができる。より大きくは、地域的な隔たりを基準にグループを区分するという考え方もある。
【0029】
上記とは別の考え方として、管理端末201からネットワーク2を介してみた距離の長さを基準としてグループを区分するものもあり得る。この場合の距離は、単純な直線距離というよりは、むしろネットワーク2を通じた伝送経路長といえるものである。したがって、例えば2つの電子機器があり、これらは見かけ上、管理端末201に相対して単純な直線距離が同じであっても、ネットワーク2を介してみた距離が異なっていれば、それによって異なるグループに区分されていることもあり得る。
【0030】
いずれにしても、多数の電子機器について、これらにどのような基準を当てはめ、どのようにグループ分けするかは、本実施形態を利用する管理者(ユーザ)が予め任意に決めておくことができる。
【0031】
次に図2は、代表例としての電子機器A1(31)及び管理端末201の構成をより具体的に示したブロック図である。ここでは便宜上、多数の電子機器の中から代表して電子機器A1(31)が1つのブロック要素により代表して示されている。以下の説明は代表例としての電子機器A1(31)だけに限らず、その他の電子機器についても同様に当てはめることができる。
【0032】
先ず、代表例としての電子機器A1(31)の構成について説明する。
ここで電子機器A1(31)は、例えばネットワークプリンタの機能を有したネットワーク対応の機器であるとする。プリンタとして機能するため、電子機器A1(31)は図示しないプリントエンジンを内蔵している。プリントエンジンには、図示しない感光体ドラム(像担持体)や帯電器、露光ユニット、トナー現像ユニット等が含まれる。また電子機器A1(31)がフルカラータイプのプリンタである場合には、プリントエンジンにはマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの各色別の感光体ドラム、帯電器、露光ユニット、トナー現像ユニットの他、トナー画像を1次転写する中間転写ベルトがさらに含まれる。
【0033】
また電子機器A1(31)には、図示しない給紙装置や画像定着装置、排紙装置等が付属する。給紙装置は枚葉の用紙を1枚ずつ繰り出して画像転写部に供給するものである。画像転写部では、上記の感光体ドラム又は中間転写ベルトに形成されたトナー画像が用紙に転写される。また画像定着装置は、トナー画像が転写された用紙を転写ローラ対の間のニップに通し、この間にトナー画像を用紙に定着させるものである。そして排紙装置は、画像が定着された用紙を機器の外部に排紙するものである。このような構成についてはいずれも公知のものを適用できるため、ここでは図示とともにその詳細な説明を省略する。
【0034】
なお、ここではネットワークプリンタを例に挙げているが、電子機器A1(31)はネットワーク対応のデジタル複合機であってもよい。この場合、電子機器A1(31)はさらに画像読取部を備える。画像読取部には、例えばスキャナランプ及びミラーが搭載された走査光学系のほか、集光レンズ及びCCD等の光学素子が内蔵される。また画像読取部に付属して、原稿自動搬送機構(ADF)が装備される態様であってもよい。
【0035】
電子機器A1(31)は、ネットワーク2を通じて通信を行うための構成として、通信インタフェース102や制御部103を備えている。通信インタフェース102は、ネットワーク2に接続するための通信アダプタであり、そのドライバは例えば制御部103にインストールされている。制御部103はコンピュータとして機能する要素であり、例えばプロセッサ(CPU)やメモリ(ROM、RAM等)を実装した電子回路基板の形態で電子機器A1(31)に内蔵されている。この制御部103は、通信インタフェース102による通信を制御するだけでなく、電子機器A1(31)が行う各種の処理や動作を制御する機能を有している。
【0036】
次に、管理端末201の構成を説明する。
本実施形態の通信機器となる管理端末201には、一般に普及しているデスクトップ型PCやノートブック型PCを適用することができる。管理端末201の一般的な構成例として、プロセッサ(CPU)202や通信インタフェース203、記憶装置204等を備えたものが挙げられる。この他に管理端末201は、例えば図示しない表示制御部や入力制御部等を備えている。また管理端末201には、図示しない表示装置や入力装置が接続されている。
【0037】
上記の記憶装置204は、内蔵のハードディスクやメモリ等の記録デバイスである。また通信インタフェース203は、ネットワーク2に接続するための通信アダプタである。その他、表示装置はいわゆるディスプレイ、モニタに相当するハードウエアであり、表示制御部はディスプレイアダプタである。また入力装置はキーボード、ポインティングデバイス等に相当するハードウエアであり、入力制御部はそのアダプタである。これらの構成にはいずれも公知のものを適用することができる。
【0038】
以上がネットワーク2に接続された代表例としての電子機器A1(31)及び管理端末201の基本的な構成である。加えて本実施形態では、管理端末201がそれ自身にインストールされたプログラム(ソフトウェアアプリケーション)を実行することで、ネットワーク2を通じて電子機器A1(31)をはじめ、全てのグループに属する電子機器(記号及び符号は特定しない)との間で通信を行うことができる。以下、上記のプログラムの実行に伴って行われる通信処理の詳細を説明する。また以下の説明により、管理端末201により実行されるプログラムの手順やネットワーク2を通じて行われる通信方法の詳細が明らかとなる。
【0039】
図3は、管理端末201において実行されるプログラムの手順例を示したフローチャートである。以下、ステップS2〜ステップS12の内容について、順を追って説明する。
【0040】
ステップS2:例えば、ユーザがプログラム(アプリケーション)を起動する操作を行うと、管理端末201において通信処理が開始される。またプログラムの起動に伴い、管理端末201の表示装置にはプログラムの進行状況や操作メニュー、操作結果等の各種情報が表示される。
【0041】
ステップS4:管理端末201において通信処理が開始されると、プログラムの実行に伴い通信情報の確認が行われる。この手順では、例えばネットワーク2を通じて通信が可能であるか否かの確認(通信プロトコル、ネットワークアドレスの確認)や通信ポートの確認等が行われる。
【0042】
ステップS6:次に管理端末201は、通信対象となる電子機器A1(31)に関するグループ情報を保有しているか否かの判断を行う。本実施形態の場合、ここで判断される情報は、例えば電子機器A1(31)が上記のグループA〜Eのいずれに属しているかを識別するためのものである。
【0043】
このようなグループ情報は、例えば管理端末201の記憶装置204に予め登録しておくことができる。このためプログラムには、ネットワーク2に接続された全ての電子機器(記号及び符号は特定しない)に関するグループ情報を記憶装置204に登録する機能が付属している。この付属機能を用いることで、例えば管理端末201の表示装置に全ての電子機器(記号及び符号は特定しない)に関する情報(装置名称、識別記号等)がリスト形式で表示されるとともに、各電子機器について、グループA〜Eのいずれに属するかをユーザがマウス操作等によって選択的に登録することができる。
【0044】
図4は、グループA〜Eごとに予め決められたタイムアウト時間に関する情報を示したテーブルである。このテーブルは、全ての電子機器(記号及び符号は特定しない)について予め区分されたグループA〜Eごとにデフォルトのタイムアウト時間を定めた場合の一例を示したものである。記憶装置204には、図4に示されるテーブル情報が記録されている。
【0045】
図4に示されているように、本実施形態では各グループA,B,C,D,Eについて、それぞれデフォルトのタイムアウト時間が5秒、20秒、30秒、100秒、180秒として与えられている。
【0046】
ステップS6において、ここで通信対象となる特定の電子機器A1(31)についてグループ情報が登録されていれば(Yes)、管理端末201は次にステップS8〜ステップS10を実行する。なお、ここでは管理端末201が対象を特定して通信を行うため、電子機器A1(31)は代表例としての位置付けではない。
【0047】
ステップS8:管理端末201は、ここで通信対象となる特定の電子機器A1(31)について、予め登録されたグループ情報に基づいてデフォルトタイムアウト時間を取得、つまり記憶装置204から抽出する。本実施形態の場合、電子機器A1(31)はグループAに属しているため、管理端末201が電子機器A1(31)を通信対象として指定した場合、グループAに固有のデフォルトタイムアウト時間として「5秒」が取得される。これは、同じグループAに属する電子機器A2(32)についても同様である。なお、ここでは管理端末201が対象を特定して通信を行うため、電子機器A1(31)、電子機器A2(32)等は代表例としての位置付けではない。
【0048】
したがって、別の電子機器B1(41)及び電子機器B(42)はグループBに属しているため、管理端末201が電子機器B1(41)又は電子機器B(42)を通信対象として指定した場合、グループBに固有のデフォルトタイムアウト時間として「20秒」が取得される。また、別の電子機器C1(51)〜電子機器C3(53)はグループCに属しているため、管理端末201が電子機器C1(51)〜電子機器C3(53)のいずれかを通信対象として指定した場合、グループCに固有のデフォルトタイムアウト時間として「30秒」が取得される。同様に、管理端末201が電子機器D1(61)〜電子機器D3(63)のいずれかを通信対象として指定した場合、グループDに固有のデフォルトタイムアウト時間として「100秒」が取得される。そして、管理端末201が電子機器E1(71)又は電子機器E2(72)を通信対象として指定した場合、グループEに固有のデフォルトタイムアウト時間として「180秒」が取得されることになる。
【0049】
ステップS10:管理端末201は、先のステップS8で取得したデフォルトタイムアウト時間を用いて通信処理を行う。この通信処理は、管理端末201がそのときの通信対象である電子機器(記号及び符号は特定されない)に対してステータスの通知を要求する目的で行われる。各電子機器のステータスは、例えばプリンタであれば現在のジョブ進行状況、トナー残量、用紙残量、固有設定値等を表す機器情報である。各電子機器(記号及び符号は特定されない)は、管理端末201からネットワーク2を通じてステータスの要求(応答要求)を受けると、その通信機能を用いて管理端末201に自己のステータスを返信する機能を有している。
【0050】
このとき、通信対象である特定の電子機器A1(31)から速やかに応答(ステータスの通知)があれば、管理端末201は受け取った通知に基づいて管理動作を行う。管理動作は、例えばプログラム上で電子機器A1(31)のステータス情報を収集し、これらを表示装置において一覧表示する目的で行われる。ユーザはこの一覧表示を確認し、現状、ネットワーク2上で稼働している電子機器A1(31)のステータスを管理端末201において把握することができる。
【0051】
一方、管理端末201は、そのときの通信対象である電子機器A1(31)に対してステータス要求を送信してから、それが属するグループAに固有のデフォルトタイムアウト時間が経過するまで待機しても応答がなければ、そこで通信処理を終了、つまりタイムアウトする。
【0052】
ここで、管理端末201からのステータス要求(応答要求)に対して各電子機器から応答が戻ってくるまでの時間は、ネットワーク2を通じた伝送距離によって異なってくる。通常、伝送距離が短ければ、それだけ応答時間が短くなる傾向にあり、逆に伝送距離が長ければ、それだけ応答時間が長くなる傾向にある。したがって、本実施形態において電子機器を設置場所や伝送経路の長さによってグループ分けし、グループによってデフォルトタイムアウト時間の長さを既定としていることについては合理的な理由がある。
【0053】
このように本実施形態では、予め登録されたグループ情報に基づいて電子機器の属するグループごとにデフォルトタイムアウト時間が既定となっているため、管理端末201は、通信対象の属するグループに合わせて最適なタイムアウト時間を使用しながらすぐさま通信処理に取りかかることができる。
【0054】
この点について、本発明の発明者は以下の知見を有している。すなわち、従来例として、管理端末201に相当する機器から通信対象となる機器に対してひとまず通信を試みておき、その間の通信に要した時間を統計して機器ごとにタイムアウト時間を記憶するという技術がある。この従来技術では、全ての機器について、最初の通信開始時点でタイムアウト時間が未知であるため、機器ごとに必ず1回は通信処理を試みる必要がある。これに対し、本実施形態では通信対象の属するグループに応じてタイムアウト時間が既知であるため、はじめから適切なタイムアウト時間を用いて通信処理を行うことができる点で従来例より優位である。
【0055】
ただし本実施形態では、上述のように大規模なネットワーク2上に極めて多数の電子機器が接続されることを想定している。このため、常時全ての電子機器ついて、個々のグループ情報を管理端末201に登録しておくことができるとは限らない。したがって、このとき通信対象となる特定の電子機器A1(31)について予めグループ情報が明らかでない場合、本実施形態ではユーザが別に設定したデフォルトのタイムアウト時間を使用することができるものとなっている。
【0056】
したがって、管理端末201において通信対象となる電子機器A1(31)のグループ情報が登録されていなかった場合(ステップS6=No)、管理端末201は次にステップS12に続いてステップS10を実行する。
【0057】
ステップS12:管理端末201は、ユーザの設定したデフォルトタイムアウト時間を取得する。ユーザ設定のデフォルトタイムアウト時間は、その都度、プログラム上でユーザに入力を求める形式であってもよいし、あるいは、プログラムの初期設定で入力を求める形式であってもよい(ただし下限値と上限値は決められている。)。あるいは、プログラムにおいて既定のユーザタイムアウト時間を予め設けておき、これをユーザが承認又は変更する形式であってもよい。
【0058】
ステップS10:この場合、管理端末201はユーザ設定のデフォルトタイムアウト時間を用いて上記の通信処理を行う。管理端末201は、ユーザ設定のデフォルトタイムアウト時間内に電子機器A1(31)からステータスの通知(応答)があれば、上記と同様にステータスを収集して一覧表示する。一方、タイムアウト時間内にステータスの通知がなければ、通信処理を終了(タイムアウト)する。
【0059】
本実施形態の場合、ネットワーク2に新たな電子機器を接続しようとする場合において、以下の利点が生じる。すなわち、新規に追加される電子機器について、その設置場所や通信経路の長さが分かっていれば、それによって新規の電子機器がグループA〜Eのいずれに所属するべきかを容易に決めることができる。したがって、例えば新規の電子機器がグループAに所属することになれば、最初からデフォルトタイムアウト時間は「5秒」に決まっているので、新規に電子機器を追加するたびに一々タイムアウト時間を設定する必要がなく、それだけユーザの管理負担が軽減されることになる。
【0060】
本発明は上述した一実施形態に制約されることなく、各種の変形や置換を伴って実施することができる。一実施形態では、ネットワークに接続された電子機器としてプリンタやファクシミリ、複写機等の画像形成装置を例に挙げているが、ネットワーク通信が可能な機器であれば、画像形成装置に限る必要はない。例えば、ネットワークスキャナ、モデム、ルータ、サーバ等の電子機器について本発明の技術を適用することが可能である。
【0061】
図4に示されるテーブルはあくまで一例にすぎない。このため本発明の実施に際して、より適当と考えられるデフォルトタイムアウト時間を設定したテーブルを使用することができることはいうまでもない。
【0062】
またグループ情報は、予め管理端末201の記憶装置204に登録しておく態様だけでなく、各電子機器から定期的又は適時に管理端末201に向けてグループ情報が通知される態様であってもよい。この場合、管理端末201は各電子機器から通知されたグループ情報を記憶装置204に適宜登録しておくことができる。
【0063】
また、一実施形態で挙げた電子機器A1(31)や管理端末201の構成はいずれも好ましい例示であり、これらを適宜変形して実施可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る通信機器が接続されたネットワーク環境の概略構成図である。
【図2】代表例としての電子機器A1及び管理端末の構成をより具体的に示したブロック図である。
【図3】管理端末において実行されるプログラムの手順例を示したフローチャートである。
【図4】電子機器のグループごとに予め決められたタイムアウト時間に関する情報を示したテーブルである。
【符号の説明】
【0065】
2 ネットワーク
31 電子機器A1
41 電子機器B1
51 電子機器C1
61 電子機器D1
71 電子機器E1
102 通信インタフェース
103 制御部
201 管理端末
202 プロセッサ
203 通信インタフェース
204 記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子機器が相互に通信可能に接続されたネットワークに接続される通信機器において、
前記ネットワークを通じて複数の前記電子機器に対して個別に応答要求を送信するとともに、その送信先である前記電子機器から前記応答要求に対して個別に返信される応答を受信する通信手段と、
前記応答要求に対して前記電子機器から個別に応答が返信されるまで前記通信手段が待機すべき待機時間を、複数の前記電子機器について予め区分されたグループごとに既定とする待機時間既定手段と
を備えたことを特徴とする通信機器。
【請求項2】
請求項1に記載の通信機器において、
前記待機時間既定手段は、
複数の前記電子機器について、これらを個々の設置場所に基づいて複数のグループに区分し、そのグループごとに前記待機時間を既定とすることを特徴とする通信機器。
【請求項3】
請求項1に記載の通信機器において、
前記待機時間既定手段は、
複数の前記電子機器について、これらを個々にネットワークを介してみた距離の長さに応じて複数のグループに区分し、そのグループごとに前記待機時間を既定とすることを特徴とする通信機器。
【請求項4】
複数の電子機器が相互に通信可能に接続されたネットワークに接続される通信機器のコンピュータに、
前記ネットワークを通じて複数の前記電子機器と個別に通信を行うに際し、前記電子機器について予め区分されたグループに応じて既定の待機時間を抽出する手順と、
前記ネットワークを通じて複数の前記電子機器に対して個別に応答要求を送信する手順と、
前記応答要求の送信後、少なくとも前記抽出した待機時間が経過するまで前記応答要求の送信先である前記電子機器から個別に返信される応答を待ち受ける手順と
を実行させるプログラム。
【請求項5】
請求項4に記載のプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
複数の前記電子機器について、これらを個々の設置場所に基づいて複数のグループに区分し、そのグループごとに前記待機時間を既定とする手順をさらに実行させるプログラム。
【請求項6】
請求項4に記載のプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
複数の前記電子機器について、これらを個々にネットワークを介してみた距離の長さに応じて複数のグループに区分し、そのグループごとに前記待機時間を既定とする手順をさらに実行させるプログラム。
【請求項7】
複数の電子機器が相互に通信可能に接続されたネットワークに接続される通信機器により実行される通信方法において、
前記ネットワークを通じて複数の前記電子機器と個別に通信を行うに際し、前記電子機器について予め区分されたグループに応じて既定の待機時間を抽出するステップと、
前記ネットワークを通じて複数の前記電子機器に対して個別に応答要求を送信するステップと、
前記応答要求の送信後、少なくとも前記抽出した待機時間が経過するまで前記応答要求の送信先である前記電子機器から個別に返信される応答を待ち受けるステップと
から構成される通信方法。
【請求項8】
請求項7に記載の通信方法において、
複数の前記電子機器について、これらを個々の設置場所に基づいて複数のグループに区分し、そのグループごとに前記待機時間を既定とするステップをさらに有する通信方法。
【請求項9】
請求項7に記載の通信方法において、
複数の前記電子機器について、これらを個々にネットワークを介してみた距離の長さに応じて複数のグループに区分し、そのグループごとに前記待機時間を既定とするステップをさらに有する通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−65406(P2008−65406A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239735(P2006−239735)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】