説明

通信装置、自動料金収受システムおよび自動料金収受方法

【課題】非通信エリアの端末との誤ったリンク確立を回避し、信頼性の高い装置を得る。
【解決手段】端末からの信号を受信する複数の素子アンテナ21−1〜21−Nからなるアレーアンテナ2と、所定の励振係数値を用いて素子アンテナ21−1〜21−Nからの受信信号の励振振幅位相値を調整して、合成するビーム形成手段3と、アレーアンテナ2が端末からのリンク確立要求信号を受信する度に、当該アレーアンテナ2により形成されるアンテナパターンの非通信エリアにおけるレベル低減方向を変えるように励振係数値の設定変更を行う制御手段4と、ビーム形成手段3からの出力信号に基づいて、端末との通信リンク確立の可否を判定する通信処理手段6とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、端末と通信を行う基地局に適用され、非通信エリアの端末との誤ったリンク確立を回避する通信装置に関するものである。また、特に、料金所に設置された路側機(基地局)と自動料金収受機能を有する端末を搭載した車両との間で、道路を走行する車両を一時停止させることなく、料金を自動的に収受する自動料金収受システムおよび自動料金収受方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動料金収受システムでは、車両に、無線通信装置(車載機)とICカードなどの電子支払い手段とを搭載している。また、有料道路の料金所に、自動料金徴収の専用レーンまたは一般車両との混在レーンを設置し、車両に搭載された車載機と通信するための無線通信装置(路側機)を設けている。
しかしながら、上記自動料金収受システムでは、自動料金収受システムに対応した車載機を搭載しない走行車両の見逃しや、レーン変更に伴う走行車両の追従失敗などによって、正常な料金の収受ができないという懸念があった。そこで、対策のひとつとして、複数の素子アンテナを配置したアレーアンテナを路側機に設置するなどして、車載機からの無線通信信号から車両の走行方向を推定する技術がある(例えば特許文献1,2参照)。これにより、車載機を搭載する走行車両との収受処理を確実に行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−34799号公報
【特許文献2】特開2002−243825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の普及により、対応車載機を搭載した車両が急速に増加しており、あらゆる場所で当該システムが利用されるようになってきている。このような状況では、複数の有料道路が隣接するエリアにおいて、複数の自動料金収受システムが稼働する可能性が高まる。そして、そのようなエリア付近は、一般的に、構造物が多数配置された複雑な伝搬環境となっている。そのため、併走する隣接道路を走行する車両に搭載された車載機からの無線通信信号が、路側帯あるいは高架橋などを飛び越えて路側機に到来するような状況が発生する。したがって、非通信エリアの車両からの無線通信信号を誤って検出してしまうことになり、正常な料金の収受処理が為されない恐れがあるという課題があった。
例えば、複数の有料道路が交差するジャンクションなど複雑な道路環境においては、マルチパスが多数到来する。そのため、従来のように無線通信信号の瞬時の方向推定値を用いる手法では、その推定値への信頼性は著しく低下し、実際の環境では適用できない可能性がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、端末から到来する通信リンクの確立を要求する信号をそれぞれ異なるアンテナパターンで複数回受信した結果から通信リンク確立の可否を判定する機能を備えることで、非通信エリアの端末との誤ったリンク確立を回避することが可能な信頼性の高い通信装置、また、これを適用した信頼性の高い自動料金収受システムおよび自動料金収受方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る通信装置は、端末からの信号を受信する複数の素子アンテナからなるアレーアンテナと、所定の励振係数値を用いて素子アンテナからの受信信号の励振振幅位相値を調整して、合成するビーム形成手段と、アレーアンテナが端末からのリンク確立要求信号を受信する度に、当該アレーアンテナにより形成されるアンテナパターンの非通信エリアにおけるレベル低減方向を変えるように励振係数値の設定変更を行う制御手段と、ビーム形成手段からの出力信号に基づいて、端末との通信リンク確立の可否を判定する通信処理手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、上記のように構成したので、非通信エリアの端末との誤ったリンク確立を回避することが可能な信頼性の高い通信装置を得ることができる。また、これを適用した信頼性の高い自動料金収受システムおよび自動料金収受方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る通信装置の構成例を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるビーム形成部の構成例を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるアンテナパターンの計算例および最小利得値(最小受信感度)を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるアンテナパターンの制御例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る通信装置を適用した自動料金収受システムの構成例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る自動料金収受システムで用いるフレーム構成例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る自動料金収受システムの判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る通信装置1の構成例を示す図である。なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
通信装置1は、図1に示すように、N個の素子アンテナ21−1〜21−Nからなるアレーアンテナ2、ビーム形成部(ビーム形成手段)3、制御部(制御手段)4、励振係数格納部(励振係数格納手段)5、通信処理部(通信処理手段)6および収受処理部(収受処理手段)7から構成されている。
【0010】
アレーアンテナ2は、各素子アンテナ21−1〜21−Nを所定の振幅位相値で励振することで、所定のアンテナパターンを形成し、外部の端末からの無線通信信号を受信するものである。この各素子アンテナ21−1〜21−Nによる受信信号はビーム形成部3に出力される。
【0011】
ビーム形成部3は、制御部4からの励振係数値を用いて、各素子アンテナ21−1〜21−Nからの受信信号の励振振幅位相値を調整した上で、合成するものである。このビーム形成部3の内部構成については後述する。このビーム形成部3により合成された信号はアンテナ出力信号として通信処理部6に出力される。
【0012】
制御部4は、通信処理部6から励振係数値の変更指示を受ける度に、各素子アンテナ21−1〜21−Nで用いる励振係数値を設定変更するものである。ここで、制御部4は、励振係数格納部5から所定の励振係数値を取得することで設定変更を行う。
【0013】
励振係数格納部5は、予め、複数の励振係数値を格納するものである。なお、励振係数格納部5が格納する各励振係数値は、アレーアンテナ2により形成されるアンテナパターンの非通信エリアにおける零点の方向がそれぞれ異なるように設定された値であり、設置環境やアンテナ諸元に基づいて、事前あるいは現地調整の段階で予め求めておけばよい。ここで、励振係数格納部5は、通信処理部6から励振係数値の変更指示を受ける度に、異なる励振係数値を制御部4に出力する。
【0014】
通信処理部6は、ビーム形成部3からのアンテナ出力信号に基づいて、通信リンクの確立を要求してきた端末との通信リンク確立の可否を判断し、各種通信処理を実施するものである。また、通信処理部6は、アンテナ出力信号が端末からのリンク確立要求信号である場合に、これに同期して、制御部4および励振係数格納部5に対して励振係数値の変更指示を行う。なお、端末からのリンク確立要求信号は、確実性を高めるために複数回送信される。
収受処理部7は、通信処理部6により通信リンク確立が許可され、各種通信処理が実施された端末との間で、ビーム形成部3からのアンテナ出力信号を用いて課金などの具体的な処理を実施するものである。
【0015】
次に、ビーム形成部3の構成について説明する。図2はこの発明の実施の形態1におけるビーム形成部3の構成例を示す図である。
ビーム形成部3は、N個の乗算器31−1〜31−Nおよび合成器32から構成されている。
【0016】
乗算器31−1〜31−Nは、制御部4からの励振係数値を用いて、対応する素子アンテナ21−1〜21−Nからの受信信号に対して複素乗算を行うことで受信信号の励振振幅位相値を調整する演算回路である。この乗算器31−1〜31−Nは、アナログ装置の場合には可変減衰器および可変移相器によって実現可能である。この各乗算器31−1〜31−Nにより複素乗算された信号は合成器32に出力される。
合成器32は、各乗算器31−1〜31−Nからの信号を合成するものである。この合成器32により合成された信号はアンテナ出力信号として通信処理部6に出力される。
【0017】
次に、上記のように構成された通信装置1の具体的な処理について説明する。
上記通信装置1を適用した基地局では、通信エリアに適したアンテナパターンを形成する必要がある。そして、図1に示すような複数の素子アンテナ21−1〜21−Nからなるアレーアンテナ2においては、各素子アンテナ21−1〜21−Nを励振する振幅位相値を適切に設定することで自由にアンテナパターンを変更することができる。この際、通信エリア内が一定の電界レベルとなるようにアンテナ利得を保持するのはもちろん、隣接エリア(非通信エリア)への不要な放射(与干渉)を避けるため、サイドローブレベルをできるだけ低減する必要がある。
【0018】
例えば、図3(a)に、8素子の無指向性のリニアアレーを用いた場合でのアンテナパターンの計算例を示す。図3(a)では、Beam1〜4の4つのアンテナパターンを示しており、通信エリアである±30度内のアンテナ利得をできるだけ一定にしている。また、各アンテナパターン計算値のサイドローブレベルは−20〜−25dB程度となっているが、十分とは言えない。しかしながら、限られた設置場所などの制約からアンテナサイズあるいは素子アンテナ数には限りがあるため、ある特定の時間(瞬時)に、全ての方向でサイドローブレベルを十分に低減することは困難である。この場合、周辺の構造物などの影響により隣接レーンあるいは隣接道路などの車載端末からの信号を誤って検出し、通信処理を実施してしまう恐れがある。実際には、ネットワーク側でこのような誤通信を検知して、最終的な処理を中止することは可能であるが、通信リンクを確立している以上、余計なリソースを浪費することになり、通信トラフィックの低下などにつながる。
【0019】
一方、図3(b)は、図3(a)に示す4つのアンテナパターンの最小利得値(最小受信感度)をプロットしたものである。図3(b)に示すように、最小受信感度では、±30内の通信エリアの利得を保持しながら、非通信エリア方向の受信レベルが大幅に低減されていることがわかる。
【0020】
以上の原理を利用して、実施の形態1に係る通信装置1では、非通信エリアの端末との通信リンクをそもそも確立しないようにアンテナパターンを制御する特徴を有する。
すなわち、制御部4にて、アレーアンテナ2が端末からリンク確立要求信号を受信する度に、乗算器31−1〜31−Nで用いる励振係数値を設定変更する。この際、アンテナパターンの非通信エリアにおけるレベル低減方向を変えるように(サイドローブの零点方向やレベルを移動させるように)励振係数値を設定変更する。例えば、図4(a)〜(d)に示すように、アンテナパターンを図3(a)に示すBeam1から順にBeam4まで変化させることで、アンテナパターンの零点を内側から外側へずらす。これにより、非通信エリアからの端末信号の受信レベルを時分割で低減させ、結果として図3(b)に示すような最小受信感度での受信信号(最小受信レベル)を得ることができる。
なお、アンテナパターンの零点をずらす順序は、図4に示す例に限るものではない。
【0021】
そして、通信処理部6にて、最小受信感度に基づいた判定を行うことで、非通信エリアの端末と通信リンク確立を行ってしまう確率(誤判定確率)を大幅に低減することができる。この際、例えば、各リンク確立要求信号のうちの最小受信レベルが所定の閾値以上である場合に、端末とのリンク確立を許可するようにする。また、各受信レベルのうち、閾値以上である回数が設定値以上である場合に、端末との通信リンク確立を許可するようにしてもよい。
その後、収受処理部7にて、通信処理部6により通信エリアの端末であると判定された端末との間で課金などの具体的な処理を実施することになる。
【0022】
以上のように、この実施の形態1によれば、端末から複数回送信されるリンク確立要求信号を受信する度に励振係数値を設定変更し、この値を用いて各素子アンテナ21−1〜21−Nからの受信信号の励振振幅位相値を調整して合成した信号に基づいて、端末との通信リンク確立の可否を判断するように構成したので、時分割でサイドローブレベルの低減を実現でき、非通信エリアの端末との誤ったリンク確立を回避することが可能な信頼性の高い通信装置1を得ることができる。そして、既存の通信システムに適用することで、マルチパス波などの複雑な伝搬環境においても高精度なリンク確立処理を実現することができるとともに、基地局単独で通信処理を完結するシステムを実現することができる。
【0023】
なお、実施の形態1では、全ての素子アンテナ21−1〜21−Nからの受信信号の励振振幅位相値を調整する構成としたが、これに限るものではなく、その一部、特にアンテナ開口端部に位置する素子アンテナからの受信信号の励振振幅位相値のみを調整することでアンテナパターン形状の変更を行うことも可能である。この場合、調整する数を削減できるため、演算規模の低減が可能である。
【0024】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2に係る通信装置1を適用した自動料金収受システムの構成例を示す図である。なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
自動料金収受システムは、図5に示すように、道路51を走行する車両52に搭載された端末53と、道路51の路側に設置された基地局54とから構成されている。なお、基地局54は、無線通信信号を受信するアレーアンテナ2など、図1に示す通信装置1と同等の構成を備えている。
この端末53と基地局54は、通信エリア55内において、マイクロ波帯の周波数を用いた無線通信信号(アップリンク60、ダウンリンク61)によって、料金の収受処理など各種サービスを実施する。
【0025】
次に、上記のように構成された自動料金収受システムの具体的な処理について、以下に説明する。
基地局54は、アレーアンテナ2を介して端末53と無線通信信号60,61を送受信し、道路利用料金の収受処理を行う。一方、周辺環境として、隣接道路56では、端末57が搭載された車両58が走行している。そして、周囲の電波伝搬環境によっては、端末57からの無線通信信号62が、道路51,56間に存在する路側帯59を飛び越えて基地局54に到来する可能性がある。この際、基地局54では、誤って端末57と収受処理を行わないように走行車両の判別を行う必要がある。
【0026】
ここで、図5に示すような各車載端末53,57からの直接波(無線通信信号60,62)のみの環境であれば、既存の方向推定手法などにより識別が可能である。しかしながら、路側帯59や高架橋、基地局54を支えるゲートなど、電波を反射、散乱させる構造物が多数存在する環境では、通常は多数のマルチパス波が到来するため、その方向推定値はばらつくことが予想される。つまり、瞬時の方向推定値の精度はあまり当てにならないことになる。また、アレーアンテナ2のサイドローブレベルを十分に低減することが考えられるが、設置スペースや製造性など考慮すると限界があり、ある固定のアンテナパターンだけで対応することは困難である。
【0027】
そこで、自動料金収受システムにおける通信リンク確立の手順に、実施の形態1のアンテナパターン制御を適合させることで非通信エリアの端末57との通信リンク確立を回避する。
【0028】
図6はこの発明の実施の形態2に係る自動料金収受システムで用いるフレーム構成例を示した図である。
図6に示すように、基地局54から端末への下りリンクでは、スロット割付情報やフレーム制御情報などを端末に通知するフレームコントロールメッセージスロット(FCMS)が先頭に位置し、その後にメッセージデータスロット(MDS)が端末数分多重される。なお、図6では、端末数が3の場合を示している。
【0029】
一方、端末から基地局54への上りリンクでは、MDSの後に、端末が基地局54の通信リンクに登録するためのアクティベーションスロット(ACTS)が配置される。このACTSはアクティベーションチャネル(ACTC)用のウィンドウを6チャネル分配置しており、リンク確立フェーズ時に端末53が、これらのうち1個のウィンドウを選択し、ACTCを基地局54に送信する。なお、上りと下りのチャネルは異なる周波数を使うことで多重される。
【0030】
通常、ACTCとして6チャネル(最大6つの端末と通信可能)送信され、基地局54では、それらの信号の受信レベルを基に通信リンク確立の可否を判定している。したがって、本実施の形態2に係る自動料金収受システムでは、図1の通信装置1におけるアンテナパターンを例えばACTC毎やACTS毎に変更することで、非通信エリアから到来する端末信号の受信レベルを低減する。
【0031】
次に、基地局54による料金収受対象車の具体的な判定処理について説明する。図7はこの発明の実施の形態2に係る自動料金収受システムの判定処理を示すフローチャートである。
図7に示すように、まず、基地局54は、端末に対して、FCMSによりメッセージ通知を行う(ステップST71)。
次いで、このメッセージを受信した端末では、定められた基準によりACTCを選択し、そのウィンドウにてリンク確立要求信号(例えばACTC)を送信する(ステップST72)。
【0032】
一方、基地局54の制御部4にて、素子アンテナ21−1〜21−Nからの受信信号の励振振幅位相値を調整する励振係数値を設定する(ステップST73、制御ステップ)。次いで、端末からのリンク確立要求信号を受信し、ビーム形成部3にて、設定された励振係数値を用いて各受信信号の励振振幅位相値を調整した上で、合成する(ステップST74、受信ステップ,ビーム形成ステップ)。なお、この送受信処理を複数回(図7ではN回)実施する(ステップST75〜ST77)。
【0033】
その後、基地局54の通信処理部6にて、各受信信号のうちの最小受信レベルがある閾値以上であるかを判定する(ステップST78、通信処理ステップ)。なお、閾値の決め方については、実際の現場にて事前に電波測定をして目安を求めてもよいし、シミュレーションにより解析的に求めてもよい。また、運用していくなかで適切な値に調整していくことも可能である。
【0034】
ここで、通信処理部6は、最小受信レベルが閾値より小さいと判定した場合には、非通信エリアに存在する端末からの信号であると判断して、通信処理を中止する(ステップST79)。すなわち、例えば、隣接道路56を走行する車両58の端末57からの無線通信信号62では、その最小受信レベルが閾値より小さくなり、非通信エリアに存在する端末であると判断される。
【0035】
一方、通信処理部6は、最小受信レベルが閾値以上であると判定した場合には、通信エリア55の端末からの信号であると判断し、当該端末に対してリンク確立通知を行う(ステップST80)。すなわち、例えば、道路51を走行する車両52の端末53からの無線通信信号60では、その最小受信レベルが閾値以上となり、通信エリア55に存在する端末であると判断される。なお、通信処理部6は、各受信レベルのうち、閾値以上である回数が設定値以上である場合に、端末との通信リンク確立を許可するようにしてもよい。
その後、基地局54は、端末との通信を開始し(ステップST81)、基地局54の収受処理部7にて、課金などの収受処理を行い、処理を完了する(ステップST82,ST83、収受処理ステップ)。
【0036】
以上のように、この実施の形態2によれば、車両52などの移動体に搭載された端末と、端末53と通信を行って料金を自動的に収受する基地局54とを備えた自動料金収受システムにおいて、基地局54は、端末から複数回送信されるACTCを受信する度に励振係数値を設定変更し、この値を用いて各素子アンテナ21−1〜21−Nからの受信信号の励振振幅位相値を調整して合成した信号に基づいて、端末との通信リンク確立の可否を判断するように構成したので、非通信エリアの端末57との誤ったリンク確立を回避することが可能な信頼性の高い自動料金収受システムを得ることができる。そして、大型アンテナや高精度な方向探知装置などシステムの複雑化を生じずに、基地局単独で収受処理を効率よく完結するシステムを実現することができる。
【0037】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 通信装置、2 アレーアンテナ、3 ビーム形成部(ビーム形成手段)、4 制御部(制御手段)、5 励振係数格納部(励振係数格納手段)、6 通信処理部(通信処理手段)、7 収受処理部(収受処理手段)、21−1〜21−N 素子アンテナ、31−1〜31−N 乗算器、32 合成器、51 道路、52,58 車両、53,57 端末、54 基地局、55 通信エリア、56 隣接道路、59 路側帯、60 アップリンク、61 ダウンリンク、62,63 無線通信信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末からの信号を受信する複数の素子アンテナからなるアレーアンテナと、
所定の励振係数値を用いて前記素子アンテナからの受信信号の励振振幅位相値を調整して、合成するビーム形成手段と、
前記アレーアンテナが前記端末からのリンク確立要求信号を受信する度に、当該アレーアンテナにより形成されるアンテナパターンの非通信エリアにおけるレベル低減方向を変えるように前記励振係数値の設定変更を行う制御手段と、
前記ビーム形成手段からの出力信号に基づいて、前記端末との通信リンク確立の可否を判定する通信処理手段と
を備えた通信装置。
【請求項2】
前記通信処理手段は、前記各リンク確立要求信号の受信レベルに基づいて、前記端末との通信リンク確立の可否を判定する
ことを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信処理手段は、前記受信レベルが閾値以上である回数が設定値以上である場合に、前記端末との通信リンク確立を許可する
ことを特徴とする請求項2記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信処理手段は、前記各受信レベルのうちの最小値が閾値以上である場合に、前記端末との通信リンク確立を許可する
ことを特徴とする請求項2記載の通信装置。
【請求項5】
前記アレーアンテナにより形成されるアンテナパターンの非通信エリアにおける零点がそれぞれ異なる方向となる励振係数値を複数格納する励振係数格納手段を備え、
前記制御手段は、前記励振係数格納手段に格納された所定の励振係数値を取得することで設定変更を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の通信装置。
【請求項6】
前記ビーム形成手段は、アンテナ開口端部に位置する前記素子アンテナからの受信信号の励振振幅位相値を調整する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の通信装置。
【請求項7】
移動体に搭載された端末と、前記端末と通信を行って料金を自動的に収受する基地局とを備えた自動料金収受システムにおいて、
前記基地局は、
端末からの信号を受信する複数の素子アンテナからなるアレーアンテナと、
所定の励振係数値を用いて前記素子アンテナからの受信信号の励振振幅位相値を調整して、合成するビーム形成手段と、
前記アレーアンテナが前記端末からのリンク確立要求信号を受信する度に、当該アレーアンテナにより形成されるアンテナパターンの非通信エリアにおけるレベル低減方向を変えるように前記励振係数値の設定変更を行う制御手段と、
前記ビーム形成手段からの出力信号に基づいて、前記端末との通信リンク確立の可否を判断する通信処理手段と、
前記通信処理手段により通信リンク確立が許可された端末との間で、前記ビーム形成手段からの出力信号を用いて料金収受を行う収受処理手段とを備えた
ことを特徴とする自動料金収受システム。
【請求項8】
前記リンク確立要求信号は、アクティベーションチャネルまたはアクティベーションスロットである
ことを特徴とする請求項7記載の自動料金収受システム。
【請求項9】
前記通信処理手段は、前記各リンク確立要求信号の受信レベルに基づいて、前記端末との通信リンク確立の可否を判定する
ことを特徴とする請求項7記載の自動料金収受システム。
【請求項10】
前記通信処理手段は、前記受信レベルが閾値以上である回数が設定値以上である場合に、前記端末との通信リンク確立を許可する
ことを特徴とする請求項9記載の自動料金収受システム。
【請求項11】
前記通信処理手段は、前記各受信レベルのうちの最小値が閾値以上である場合に、前記端末との通信リンク確立を許可する
ことを特徴とする請求項9記載の自動料金収受システム。
【請求項12】
前記アレーアンテナにより形成されるアンテナパターンの非通信エリアにおける零点がそれぞれ異なる方向となる励振係数値を複数格納する励振係数格納手段を備え、
前記制御手段は、前記励振係数格納手段に格納された所定の励振係数値を取得することで設定変更を行う
ことを特徴とする請求項7から請求項11のうちのいずれか1項記載の自動料金収受システム。
【請求項13】
前記ビーム形成手段は、アンテナ開口端部に位置する前記素子アンテナからの受信信号の励振振幅位相値を調整する
ことを特徴とする請求項7から請求項12のうちのいずれか1項記載の自動料金収受システム。
【請求項14】
移動体に搭載された端末と、前記端末と通信を行って料金を自動的に収受する基地局とを備えた自動料金収受システムによる自動料金収受方法において、
前記基地局は、
アレーアンテナを構成する複数の素子アンテナによって端末からの信号を受信する受信ステップと、
所定の励振係数値を用いて前記素子アンテナからの受信信号の励振振幅位相値を調整して、合成するビーム形成ステップと、
前記アレーアンテナが前記端末からのリンク確立要求信号を受信する度に、当該アレーアンテナにより形成されるアンテナパターンの非通信エリアにおけるレベル低減方向を変えるように前記励振係数値の設定変更を行う制御ステップと、
前記ビーム形成ステップにおける出力信号に基づいて、前記端末との通信リンク確立の可否を判断する通信処理ステップと、
前記通信処理ステップにおいて通信リンク確立を許可した端末との間で、前記ビーム形成ステップにおける出力信号を用いて料金収受を行う収受処理ステップとを有する
ことを特徴とする自動料金収受方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−98772(P2013−98772A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240266(P2011−240266)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】