説明

通信装置、通信システムおよび通信方法

【課題】
本発明は、IP回線を介したIP通信から適切な回線を介した通信へ確実に切り替え、IP通信中に通信品質が著しく低下したり、通信が切断されてしまうことを避けることが可能な通信装置、通信システムおよび通信方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の通信装置10は、IP網を経由してIP通信を行うIP通信手段11、公衆交換電話網を経由して公衆交換電話通信を行う公衆交換電話通信手段12、IP通信の品質が劣化する可能性が高い特定事象を検出する特定事象検出手段13、および、IP通信中に特定事象が検出された場合、IP通信から公衆交換電話通信へ変更する制御手段14を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VoIP通信を行う通信装置、通信システムおよび通信方法に関し、特に、IP網を経由したVoIP通信と公衆交換電話網を経由した公衆交換電話通信とが可能で、通常はVoIP通信を行う、通信装置、通信システムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パケット交換方式に基づくVoIP(Voice over Internet Protocol:ボイス オーバーインターネットプロトコル)通信が拡大しつつある。しかし、VoIP通信は、IP網におけるトラフィックの増加や一部経路の障害等によってトラフィック輻輳が発生すると、音声パケットの遅延や消失が起こる。この場合、VoIP通信の通信品質が劣化して音声が聞き取りにくくなったり通話が途切れたりする。最近では、IP回線の大容量化や音声圧縮技術の進歩により、このような欠点が逐次解消されつつある。しかし、トラフィック輻輳に起因する音声パケットの遅延や消失がすべて解決されているとは言えない。
【0003】
そこで、IP網を経由したVoIP通信中にIP通信品質を監視し、IP通信品質が予め設定した品質基準よりも劣化した場合はIP網を経由した通話からPSTN(Public Switched Telephone Network:公衆交換電話網)を経由する通話へ切り替えるIP電話が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、内線電話間でIP網を経由した音声通信を行っている時に、発呼側IP Gatewayから着呼側IP Gatewayへ特定のデータを送信して該送信した特定のデータに対する応答の有無を監視し、一定期間応答がない場合はIP通信品質が劣化したと判断して、IP網を経由した音声通信からPSTNを経由した音声通信に切り替える技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2のVoIP通信装置は、互いのIP電話番号とPSTN電話番号とを予め取得しておく。その後、着信側のVoIP通信装置は、VoIP通信中に、音声パケットを含むIPフレームの通信品質を監視し、IP通信品質が予め設定した通信品質基準より低下した場合、PSTNを経由した通話への切り替えを要求する要求フレームを生成してIP網経由で発信側のVoIP通信装置へ送信する。発信側のVoIP通信装置は、切り替え要求のIPフレームを受信した場合、取得してあったPSTN電話番号を用いてPSTN経由の発呼を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−354071号公報
【特許文献2】特開2008−160308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2において、IP網を経由した通話からPSTNを経由する通話への切り替え要求および切り替え処理は、IP通信品質が劣化した後に行われる。この場合、IP通信品質が急激に劣化した場合は、切り替え要求および切り替え処理そのものが適切に実施できない可能性が高い。切り替え要求および切り替え処理そのものが適切に実施されない場合は、音声が聞き取りにくくなったり通話が途切れたりする。
【0008】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、IP回線を介したIP通信から適切な回線を介した通信へ確実に切り替え、IP通信中に通信品質が著しく低下したり、通信が切断されてしまうことを避けることが可能な通信装置、通信システムおよび通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係る通信装置は、IP網を経由してIP通信を行うIP通信手段と、公衆交換電話網を経由して公衆交換電話通信を行う公衆交換電話通信手段と、IP通信の品質が劣化する可能性が高い特定事象を検出する特定事象検出手段と、IP通信中に特定事象が検出された場合、IP通信から公衆交換電話通信へ変更する制御手段と、を備える。
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係る通信システムは、IP網を経由したIP通信と、公衆交換電話網を経由した公衆交換電話通信と、が可能な発呼側通信装置および着呼側通信装置を備え、発呼側通信装置および着呼側通信装置は、IP通信中にIP通信の品質が劣化する可能性が高い特定事象が検出された場合、IP通信から公衆交換電話通信へ変更することを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するために本発明に係る通信方法は、IP網を経由してIP通信を行うIP通信手段と、公衆交換電話網を経由して公衆交換電話通信を行う公衆交換電話通信手段と、を備えた通信装置を用いた通信方法であって、IP通信の品質が劣化する可能性が高い特定事象の発生を監視し、IP通信中に特定事象が発生した場合、IP通信から公衆交換電話通信へ変更する。
【発明の効果】
【0012】
上記構成とすることにより、本発明に係る通信装置、通信システムおよび通信方法は、IP回線を介したIP通信から適切な回線を介した通信へ確実に切り替え、IP通信中に通信品質が著しく低下したり、通信が切断されてしまうことを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る通信装置10のブロック構成図の一例である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る通信装置20のブロック構成図の一例である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る記憶手段25に登録されている情報の一例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の変形例に係る通信装置20Bのブロック構成図の一例である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る通信システム100のシステム構成図の一例である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るVoIP通信装置200のブロック構成図の一例である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る記憶部207に登録されている情報の一例を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る通信システム100の動作フロー図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。本実施形態に係る通信装置のブロック構成図の一例を図1に示す。図1において、通信装置10は、IP通信手段11、公衆交換電話通信手段12、特定事象検出手段13および制御手段14を備える。
【0015】
IP通信手段11は、IP網を経由したIP通信を行う。公衆交換電話通信手段12は、公衆交換電話網を経由した公衆交換電話通信を行う。
【0016】
特定事象検出手段13は、IP通信品質が劣化する可能性が高い特定事象の発生を常時監視している。そして、特定事象の発生を検出した場合、検出した特定事象についての発生情報を生成して制御手段14へ出力する。例えば、特定事象検出手段13は、外部サーバから気象情報を受信し、受信した気象情報に大雨警報や緊急地震速報等のIP通信品質が劣化する可能性が高い事象が含まれていた場合、該特定事象についての発生情報を生成して制御手段14へ出力する。
【0017】
制御手段14は、通信装置10内の各部を制御する。また、制御手段14は、IP通信中に特定事象検出手段13から発生情報が入力した場合、IP通信手段11を用いたIP通信から公衆交換電話通信手段12を用いた公衆交換電話通信へ切り替える。
【0018】
本実施形態に係る通信装置10は、大雨警報や緊急地震速報等のIP通信品質が劣化する可能性が高い特定事象の発生を監視し、該特定事象が検出された場合はIP通信から公衆交換電話通信へ切り替える。従って、IP通信品質が劣化する前にIP通信から公衆交換電話通信へ確実に切り替えることができ、IP通信中に通信品質が著しく低下したり、通信が切断されてしまうことを避けることができる。
【0019】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る通信装置のブロック構成図の一例を図2に示す。図2において、通信装置20は、IP通信手段21、公衆交換電話通信手段22、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)通信手段23、特定事象検出手段24、記憶手段25および制御手段26を備える。
【0020】
IP通信手段21は、IP網を経由したIP通信を行う。公衆交換電話通信手段22は、公衆交換電話網を経由した公衆交換電話通信を行う。WiMAX通信手段23は、WiMAX網を経由したWiMAX通信を行う。
【0021】
特定事象検出手段24は、IP通信品質が劣化する可能性が高い特定事象の発生を常時監視している。そして、特定事象の発生を検出した場合、検出した特定事象についての発生情報を生成して制御手段26へ出力する。例えば、特定事象検出手段24は、外部サーバから気象情報を受信し、受信した気象情報に大雨警報や緊急地震速報等のIP通信品質が劣化する可能性が高い事象が含まれていた場合、該特定事象についての発生情報を生成して制御手段26へ出力する。
【0022】
記憶手段25には通信装置20のIP通信時に使用するIP電話番号、公衆交換電話通信時に使用する固定電話番号およびWiMAX通信時に使用するWiMAX電話番号が登録されている。また、記憶手段25には、IP通信時に、通信相手のIP電話番号、固定電話番号およびWiMAX電話番号が一時的に登録される。本実施形態において、記憶手段25にはさらに、予め複数の処理情報がそれぞれ特定事象に対応付けられて登録されている。記憶手段25に登録されている処理情報の一例を図3に示す。図3において、記憶手段25には、大雨警報が発令された場合はWiMAX通信へ切り替えること、緊急地震速報が発表された場合は公衆交換電話通信へ切り替えること、が登録されている。
【0023】
制御手段26は、通信装置20内の各部を制御する。また、本実施形態において、制御手段26は、IP通信中に特定事象検出手段24から発生情報が入力した場合、該発生情報に係る特定事象に対応する処理情報を記憶手段25から抽出する。そして、制御手段26は、抽出した処理情報に基づいて処理を行う。例えば、制御手段26は、図3に示した処理情報に基づいて、大雨警報発令に関する発生情報が入力した場合はIP通信からWiMAX通信へ切り替え、緊急地震速報発表に関する発生情報が入力した場合はIP通信から公衆交換電話通信へ切り替える。
【0024】
ここで、IP通信からWiMAX通信または公衆交換電話通信へ切り替える方法は、例えば、以下のような方法がある。IP通信開始時に、発呼側の通信装置および着呼側の通信装置間で、IP電話番号、固定電話番号およびWiMAX電話番号を交換する。そして、IP通信から別の通信に切り替える時は、交換した固定電話番号またはWiMAX電話番号を用いて発呼側通信装置から新たな発呼を行い、着呼側通信装置は新たな発呼に用いられている電話番号を、交換した電話番号を用いて認証し、電話番号が認証できた時に通信中のIP通信から新たな発呼に基づく通信へ切り替える。
【0025】
WiMAX通信へ切り替える場合、切り替えによって課金が発生することを避けることができる。一方、公衆交換電話通信へ切り替える場合、切り替えによって課金が発生するものの、安定的に通信を継続することができる。
【0026】
(第2の実施形態の変形例)
第2の実施形態の変形例について説明する。本実施形態に係る通信装置のブロック構成図の一例を図4に示す。図4において、通信装置20Bは、IP通信手段21、公衆交換電話通信手段22、WiMAX通信手段23、特定事象検出手段24、入力手段27および制御手段26Bを備える。
【0027】
IP通信手段21、公衆交換電話通信手段22、WiMAX通信手段23および特定事象検出手段24は、第2の実施形態で説明したものと同様であり、詳細な説明は省略する。
【0028】
入力手段27は、ユーザから各種情報の入力を受け付ける。制御手段26Bは、IP通信中に特定事象検出手段24から発生情報が入力した場合、ユーザへ特定事象が発生したことを報知すると共に、ユーザに、IP通信をそのまま継続するか、WiMAX通信または公衆交換電話通信へ切り替えるかについての処理情報の入力を促す。ユーザが入力手段27を用いて処理情報を入力した後、制御手段26Bは、ユーザが指定した処理情報に従って処理を行う。
【0029】
例えば、ユーザがWiMAX通信への切り替えを指定した場合はIP通信からWiMAX通信へ切り替え、ユーザが公衆交換電話通信への切り替えを指定した場合はIP通信から公衆交換電話通信切り替える。
【0030】
本実施形態に係る通信装置20Bは、ユーザが、特定事象が発生した時の状況に応じて、IP通信をそのまま継続するか、WiMAX通信または公衆交換電話通信へ切り替えるか指定できることから、より状況に即した処理を行うことができる。
【0031】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る通信システムのシステム構成図の一例を図5に示す。図5において、本実施形態に係る通信システム100は、複数のVoIP通信装置200A、200B、…、IP網300、WiMAX網400、PSTN500、天気情報提供サーバ610、地震情報提供サーバ620、IP回線710、WiMAX回線720およびPSTN730を備える。なお、便宜上、図5には2つのVoIP通信装置200A、200Bのみを記載する。
【0032】
VoIP通信装置200A、200B、…、はそれぞれ、IP回線710を介してIP網300と、WiMAX回線720を介してWiMAX網400と、PSTN回線730を介してPSTN500と接続されている。本実施形態においてVoIP通信装置200A、200B、…、は、通常は、IP回線710およびIP網300を経緯したVoIP通信を行う。
【0033】
天気情報提供サーバ610および地震情報提供サーバ620はIP網300に接続され、天気情報提供サーバ610には天気に関する最新の情報が、地震情報提供サーバ620には地震に関する最新の情報が登録される。
【0034】
VoIP通信装置200A、200B、…、について詳細に説明する。ここで、VoIP通信装置200A、200B、…、はほぼ同じ機能を備えるため、以下、VoIP通信装置200A、200B、…、を区別する必要がない場合、簡単にVoIP通信装置200と記載する。
【0035】
本実施形態に係るVoIP通信装置200のブロック構成図の一例を図6に示す。図6において、VoIP通信装置200は、IP網インターフェース部201、WiMAX網インターフェース部202、PSTNインターフェース部203、IP網送受信回路部204、WiMAX網送受信回路部205、PSTN周辺回路部206、記憶部207および主制御部208を備える。
【0036】
IP網インターフェース部201はIP回線710と接続され、VoIP通信装置200は、IP網インターフェース部201およびIP回線710を介してIP網300にアクセスする。WiMAX網インターフェース部202はWiMAX回線720と接続され、VoIP通信装置200は、WiMAX網インターフェース部202およびWiMAX回線720を介してWiMAX網400にアクセスする。PSTNインターフェース部203はPSTN回線730と接続され、VoIP通信装置200は、PSTNインターフェース部203およびPSTN回線730を介してPSTN500にアクセスする。なお、VoIP通信装置200に、図示しない固定電話機と接続するための電話機インターフェース部を設けることもできる。
【0037】
IP網送受信回路部204は、IP網インターフェース部201に接続され、IPフレームを送受信する。WiMAX網送受信回路部205は、WiMAX網インターフェース部202に接続され、WiMAXフレームを送受信する。PSTN周辺回路部206は、PSTNインターフェース部203に接続され、PSTN発呼する。
【0038】
記憶部207は各種情報を記憶する。また、記憶部207には、IP通話開始時に受信した相手側装置のIP電話番号、WiMAX電話番号およびPSTN用の固定電話番号が一時的に記憶される。さらに、本実施形態において、記憶部207には、IP通話中にIP通話品質が劣化する可能性が高い事象が発生した場合に参照される処理情報が予め登録されている。記憶部207に登録されている処理情報の一例を図7に示す。
【0039】
図7において、記憶部207には、特定事象として、大雨警報発令時、緊急地震速報発表時および通信混雑時間帯突入時の3つが設定されている。さらに図7において、3つの特定事象に対応して、IP通話を継続するか切断するか、継続する場合は回線を切り替えるか否か、回線を切り替える場合はどの回線に切り替えるか、が処理情報として登録されている。
【0040】
なお、特定事象は上記の3つに限定されない。例えば、降水確率や降水量が所定のしきい値を超えた場合や、所望の時間帯に突入した場合を特定事象とすることもできる。さらに、電話番号や通話エリアごとに、異なる特定事象および処理情報を設定することもできる。
【0041】
主制御部208は、VoIP通信装置200内の各部を制御する。主制御部208は、VoIP通信中に、特定事象が発生した場合、記憶部207に登録されている処理情報に従って所定の処理を行う。
【0042】
次に本実施形態に係る通信システム100の動作について説明する。本実施形態に係る通信システム100の動作フローの一例を図8に示す。以下、IP電話番号が111A、WiMAX電話番号が222Aおよび固定電話番号が333AであるVoIP通信装置200Aが、IP電話番号が111B、WiMAX電話番号が222Bおよび固定電話番号が333BであるVoIP通信装置200Bに対して発呼する場合について説明する。
【0043】
図8において、VoIP通信装置200AがIP電話番号111Bを用いてVoIP通信装置200Bへ発呼することにより、VoIP通信装置200AとVoIP通信装置200BとがIP網300を介したIP通話を開始する(S101)。
【0044】
IP通話を開始した時、発呼側のVoIP通信装置200Aは、自装置のIP電話番号111A、WiMAX電話番号222A、固定電話番号333AをIPフレームに付与して着呼側のVoIP通信装置200Bに送信する。着呼側のVoIP通信装置200Bは、電話番号が付与されたIPフレームを受信すると、発呼側VoIP通信装置200Aの電話番号111A、222A、333Aを、自装置の記憶部207Bへ記憶する。さらに、着呼側のVoIP通信装置200Bは、自装置のIP電話番号111B、WiMAX電話番号222B、固定電話番号333BをIPフレームに付与して、発呼側のVoIP通信装置200Aへ送信する。VoIP通信装置200Aは、受信した電話番号111B、222B、333Bを自装置の記憶部207Aへ記憶する(S102)。
【0045】
その後、例えば、IP通話中に着呼側のVoIP通信装置200Bを使用している地域で緊急地震速報が発表された場合、地震情報提供サーバ620が緊急地震速報フレームを対象地域に位置するVoIP通信装置へ送信する。VoIP通信装置200Bが対象地域に位置していた場合、VoIP通信装置200Bの主制御部208Bは、緊急地震速報フレームを受信し(S103)、緊急地震速報発表に対応する処理情報を記憶部207Bから抽出する(S104の緊急地震速報発表)。
【0046】
そして、抽出した処理情報に基づき(図7において、継続・する・PSTN)、VoIP通信装置200Bの主制御部208Bは、IP通話を継続し、IP通話からPSTN通話へ切り替える。すなわち、本実施形態においてVoIP通信装置200Bは、PSTN500経由の発呼を行うように要求する要求フレームを、IP網300経由で発呼側のVoIP通信装置200Aへ送信する(S105)。
【0047】
発呼側のVoIP通信装置200Aの主制御部208Aは、IP通話相手からPSTN発呼の要求フレームを受信した場合、PSTN周辺回路部206AにPSTN発呼を指示する。すなわち、PSTN周辺回路部206Aは、記憶部207AからIP通話相手(着呼側のVoIP通信装置200B)の固定電話番号333Bを読み出し、該固定電話番号333Bを用いてPSTNインターフェース部203A、PSTN回線730およびPSTN500経由のPSTN発呼を行う(S106)。
【0048】
VoIP通信装置200Bは、PSTNインターフェース部203BにおいてPSTN発呼を受けた場合、発呼に用いられた固定電話番号333Aと、自装置の記憶部207Bに記憶されているIP通話相手(発呼側のVoIP通信装置200A)の固定電話番号333Aと、を照合し(S107)、両者が一致した場合(S107のYES)、IP通話からPSTN通話へ切り替える(S108)。一方、両者が一致しない場合(S107のNO)、IP通話相手からの発呼ではないと判断して該PSTN発呼に切断処理や割込処理等の通話中処理を行う(S109)。
【0049】
一方、IP通話中に着呼側のVoIP通信装置200Bを使用している地域で大雨警報が発令された場合、天気情報提供サーバ610が大雨警報フレームを対象地域に位置するVoIP通信装置200Bへ送信する。VoIP通信装置200Bの主制御部208Bは、大雨警報フレームを受信した場合(S103)、大雨警報発令に対応する処理情報を記憶部207Bから抽出する(S104の大雨警報発令)。そして、抽出した処理情報に基づき(図7において、継続・しない)、VoIP通信装置200Bの主制御部208Bは、IP通話をそのまま継続する(S110)。
【0050】
さらに、IP通話中にVoIP通信装置200Bの主制御部208BがIP通信混雑時間帯に突入したことを検出した場合(S103)、主制御部208Bは通信混雑時間帯突入時の処理情報を記憶部207Bから抽出する(S104の通信混雑時間帯突入)。例えば、21時〜翌2時までがIP通信混雑時間帯として設定されている場合、主制御部208Bは21時になった時、処理情報を抽出する。
【0051】
そして、VoIP通信装置200Bの主制御部208Bは、記憶部207Bから抽出した処理情報(図7において、継続・する・WiMAX)に基づいて処理を行う。すなわち、主制御部208Bは、WiMAX網400経由の発呼を行うように要求する要求フレームを、IP網300経由で発呼側のVoIP通信装置200Aへ送信する(S111)。
【0052】
発呼側のVoIP通信装置200Aの主制御部208Aは、IP通話相手からWiMAX発呼の要求フレームを受信した場合、WiMAX網送受信回路部205AにWiMAX発呼を指示する。WiMAX網送受信回路部205Aは、記憶部207AからIP通話相手(着呼側のVoIP通信装置200B)のWiMAX電話番号222Bを読み出し、該WiMAX電話番号222Bを用いてWiMAX網インターフェース部202A、WiMAX回線720およびWiMAX網400経由のWiMAX発呼を行う(S112)。
【0053】
VoIP通信装置200Bは、WiMAX網インターフェース部202BにおいてWiMAX発呼を受けた場合、発呼に用いられたWiMAX電話番号222Aと、自装置の記憶部207Bに記憶されているIP通話相手(発呼側のVoIP通信装置200A)のWiMAX電話番号222Aと、を照合する(S113)。そして、両者が一致した場合(S113のYES)、IP通話からWiMAX通話へ切り替え(S114)、両者が一致しない場合(S113のNO)、IP通話相手からの発呼ではないと判断して、該WiMAX発呼に切断処理や割込処理等の通話中処理を行う(S115)。
【0054】
ここで、IP通信混雑時間帯を抜けたとき、すなわち2時になった時、着呼側のVoIP通信装置200Bの主制御部208BがWiMAX通話をIP通話へ戻すことを要求するIP発呼の要求フレームをWiMAX網400経由で発呼側のVoIP通信装置200Aへ送信するように構成することもできる。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る通信システム100は、IP通話中にIP通話品質が劣化する可能性が高い事象が発生した場合、事前に登録した処理情報に基づいて対応する。ユーザが他の回線へ切り替えることを指示している場合、IP通話品質が劣化する前に他の回線に切り替えられ、IP通話中に音声が聞き取りにくくなったり通話が途切れたりすることを避けることができる。また、回線切替先としてユーザがWiMAX回線720を指定した場合、発呼側ユーザへ意図しない課金が発生することを避けることができる。一方、回線切替先としてPSTN回線730を指定した場合、発呼側ユーザへ課金が発生するものの、安定的に通話を継続することができる。
【0056】
なお、上記では、IP通話中に着呼側のVoIP通信装置200B側でIP通話品質が劣化する可能性が高い事象が発生したことを検出した場合について説明したが、発呼側のVoIP通信装置200AでIP通話品質が劣化する可能性が高い事象を検出した場合、発呼側のVoIP通信装置200Aの記憶部207Aに登録されている処理情報に基づいた処理がされる。なお、回線を切り替える場合、発呼側のVoIP通信装置200Aは、着呼側のVoIP通信装置200Bへ要求フレームを送信することなしに、WiMAX電話番号222Bを用いたWiMAX発呼、または、固定電話番号333Bを用いたPSTN発呼を行う。
【0057】
ここで、発呼側のVoIP通信装置200AがPSTN発呼またはWiMAX発呼を行うことを要求する要求フレームを受信した場合、該要求フレームを受信したことをユーザへ報知し、発呼側のユーザが許可した場合にのみ、PSTN発呼またはWiMAX発呼を行うようにすることもできる。そして、切り替えを許可しない場合、発呼側のVoIP通信装置200Aのユーザが、IP通話を継続または終了できるようにしても良い。
【0058】
また、上記では、ユーザが記憶部207に予め特定事象に対応付けて処理情報を登録したが、これに限定されない。例えば、IP通話中にIP通話品質が劣化する可能性が高い事象が発生した時、スピーカから注意喚起音を発したり表示部等にメッセージを表示したりすることによりユーザに特定事象の発生を報知し、その後、ユーザが状況に応じて回線切り替えの要否や切り替え先等を指定するように構成することもできる。
【0059】
さらに、IP通話中にVoIP通信装置200においてIPフレームの受信時間の算出およびフレーム中のシーケンス番号の監視を行い、パケットの受信順序が入れ替わったり、抜けが発生した場合、品質が劣化したと判定してVoIP通話をPSTN通話に切り替えるように構成することもできる。この場合、IPフレームのRTP(Real-time Transport Protocol:リアルタイム トランスポート プロトコル)にタイムスタンプを振り当てることが望ましい。さらに、記憶部207に所定のIP網品質スレシュ値を予め登録しておき、IPフレームの品質が該IP網品質スレシュ値を下回った時にVoIP通話をPSTN通話に切り替えることもできる。
【0060】
また、VoIP通信装置200に、受信したIPフレームの品質を常時観測するIP網品質検出部および受信したWiMAXフレームの品質を常時観測するWiMAX網品質検出部を追加し、VoIP通信中に、主制御部208が観測結果を用いてIP通話とWiMAX通話のどちらの品質が良いか判定し、次回のVoIP通信で品質の良い回線を選択することもできる。この場合、天気情報提供サーバ610および地震情報提供サーバ620をWiMAX網400にも接続し、WiMAX通話品質が劣化する可能性が高い事象が発生した時に、WiMAX通話からPSTN通話へ切り替わるように構成することもできる。
【0061】
(第3の実施形態の変形例)
第3の実施形態の変形例について説明する。第3の実施形態では、着呼側のVoIP通信装置200Bを使用している地域で緊急地震速報が発表された場合、着呼側のVoIP通信装置200Bの記憶部207Bに登録されている処理情報に基づいてPSTN回線730へ切り替えた。この場合、発呼側のVoIP通信装置200Aのユーザの意志に反して、PSTN回線730の使用料が発呼側のVoIP通信装置200Aへ課金される。
【0062】
そこで、本実施形態では、IP通話を開始した時、発呼側のVoIP通信装置200Aは、自分の電話番号111A、222A、333Aと共に、自装置の記憶部207Aに登録されている処理情報をIPフレームに付与して着呼側のVoIP通信装置200Bに送信する。
【0063】
着呼側のVoIP通信装置200Bは、相手側装置の電話番号と処理情報とを受信した場合、それらを自装置の記憶部207Bに一時的に記憶する。そして、IP通話品質が劣化する可能性が高い事象が発生した場合、着呼側のVoIP通信装置200Bは、自装置のユーザが設定した処理情報ではなく、一時的に記憶したIP通話相手(発呼側のVoIP通信装置200A)の処理情報に基づいて処理を行う。
【0064】
本実施形態に係る通信システムは、発呼側のVoIP通信装置200Aにユーザが意図しない課金が発生することを避けることができる。
【0065】
なお、発呼側のVoIP通信装置200Aから処理情報を受信した場合、着呼側のVoIP通信装置200Bは図示しない表示部に受信した処理情報を表示し、着呼側のVoIP通信装置200Bのユーザが、どちらの処理情報に基づいて処理を行うか選択するように構成することもできる。
【0066】
さらに、発呼側のVoIP通信装置200Aと着呼側のVoIP通信装置200Bがそれぞれアクセス可能な記憶装置に共通の処理情報を登録し、発呼側のVoIP通信装置200Aと着呼側のVoIP通信装置200Bは、IP通話品質が劣化する可能性が高い事象が発生した場合、該記憶装置に登録されている処理情報に基づいて処理を行うように構成することもできる。
【符号の説明】
【0067】
10、20、20B 通信装置
11、21 IP通信手段
12、22 公衆交換電話通信手段
13、24 特定事象検出手段
14、26、26B 制御手段
23 WiMAX通信手段
25 記憶手段
27 入力手段
100 通信システム
200、200A、200B VoIP通信装置
201 IP網インターフェース部
202 WiMAX網インターフェース部
203 PSTNインターフェース部
204 IP網送受信回路部
205 WiMAX網送受信回路部
206 PSTN周辺回路部
207 記憶部
208 主制御部
300 IP網
400 WiMAX網
500 PSTN
610 天気情報提供サーバ
620 地震情報提供サーバ
710、720、730 回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP網を経由してIP通信を行うIP通信手段と、
公衆交換電話網を経由して公衆交換電話通信を行う公衆交換電話通信手段と、
前記IP通信の品質が劣化する可能性が高い特定事象を検出する特定事象検出手段と、
IP通信中に前記特定事象が検出された場合、前記IP通信から前記公衆交換電話通信へ変更する制御手段と、
を備える通信装置。
【請求項2】
WiMAX網を経由してWiMAX通信を行うWiMAX通信手段と、
前記特定事象ごとに公衆交換電話通信またはWiMAX通信を指定する処理情報が登録された記憶手段と、
をさらに備え、
前記制御手段は、IP通信中に前記特定事象が検出された場合、該検出された特定事象に対応する処理情報を前記記憶手段から抽出し、該抽出した処理情報に基づいて通信方式を変更する、請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
WiMAX網を経由してWiMAX通信を行うWiMAX通信手段と、
IP通信中に前記特定事象が検出された場合、公衆交換電話通信またはWiMAX通信を指定する処理情報の入力をユーザから受け付ける入力手段と、
をさらに備え、
前記制御手段は、前記入力された処理情報に基づいて通信方式を変更する、請求項1記載の通信装置。
【請求項4】
前記特定事象は、気象に関する事象である、請求項1乃至3のいずれか1項記載の通信装置。
【請求項5】
IP網を経由したIP通信と、公衆交換電話網を経由した公衆交換電話通信と、が可能な発呼側通信装置および着呼側通信装置を備え、
前記発呼側通信装置および着呼側通信装置は、IP通信中にIP通信の品質が劣化する可能性が高い特定事象が検出された場合、前記IP通信から前記公衆交換電話通信へ変更することを特徴とする通信システム。
【請求項6】
前記発呼側通信装置および着呼側通信装置は、IP通信開始時に互いの公衆交換電話通信用の電話番号を取得し、
IP通信中に特定事象が検出された場合、前記発呼側通信装置から前記着呼側通信装置へ公衆交換電話網経由の発呼を行い、前記着呼側通信装置が該発呼に用いられている電話番号と前記取得した電話番号とを照合し、照合できた場合、前記発呼に応答することにより前記IP通信から前記公衆交換電話通信へ変更する、請求項5記載の通信システム。
【請求項7】
前記着呼側通信装置は、IP通信中に特定事象を検出した場合、公衆交換電話通信への変更を要求する要求フレームを生成して前記発呼側通信装置へ送信し、
前記発呼側通信装置は、IP通信中に前記要求フレームを受信した場合、前記公衆交換電話網経由の発呼を前記着呼側通信装置へ行う、請求項6記載の通信システム。
【請求項8】
前記特定事象ごとに公衆交換電話通信またはWiMAX通信を指定する処理情報が登録された記憶手段をさらに備え、
発呼側通信装置および着呼側通信装置は、WiMAX網を経由したWiMAX通信がさらに可能であると共に、IP通信中に前記特定事象が検出された場合、該検出された特定事象に対応する処理情報を前記記憶手段から抽出し、該抽出した処理情報に基づいて通信方式を変更する、請求項5記載の通信システム。
【請求項9】
前記特定事象は、気象に関する事象である、請求項5乃至8のいずれか1項記載の通信システム。
【請求項10】
IP網を経由してIP通信を行うIP通信手段と、公衆交換電話網を経由して公衆交換電話通信を行う公衆交換電話通信手段と、を備えた通信装置を用いた通信方法であって、
IP通信の品質が劣化する可能性が高い特定事象の発生を監視し、
IP通信中に前記特定事象が発生した場合、前記IP通信から前記公衆交換電話通信へ変更する、通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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