説明

通信装置、通信システム及び通信装置の制御方法

【課題】データ送信側のユーザに対して通信品質を報知することにより、データ転送の成功率を向上させる通信装置、通信システム及び通信装置の制御方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる通信装置1は、一次側アンテナ11と、通信処理部12と、比較部13と、判定部14と、報知部15と、を備える。通信処理部12は、一次側アンテナ11と通信対象が備える二次側アンテナとを介して、通信対象と非接触通信可能であり、通信対象に対して搬送波を送信すると共に、通信対象からの応答信号を受信する。比較部13は、搬送波に基づく情報と、当該搬送波が送信された際の応答信号に含まれる情報と、を比較する。判定部14は、比較部13の比較結果に基づいて、通信対象との非接触通信の通信品質を判定する。報知部15は、判定部14の判定結果に基づいて、通信品質を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信装置、通信システム及び通信装置の制御方法に関し、特に非接触通信が可能な通信装置、通信システム及び通信装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、RFID(Radio Frequency Identification)通信機能(例えばFeliCa(登録商標)等)を備える携帯電話機が普及している。RFID通信機能は、自分の携帯電話機に格納されているデータ(電話帳データや画像データ等)を、他の携帯電話機に転送する際に用いられる。RFID通信においては、送信側の携帯電話機を受信側の携帯電話機にかざすだけでデータ転送が可能である。
【0003】
RFID通信においては、それぞれの携帯電話機に内蔵されているコイルアンテナを接近させることにより通信が行われる。このとき、良好な通信品質を維持するために、2つのコイルアンテナが重なり合うことが好ましい。そのため、RFID通信可能な携帯電話機には、FeliCaマーク等の位置合わせのための目印が付されている。ユーザは、送信側及び受信側の携帯電話機の筐体に付されている目印を合わせることにより、RFID通信を用いたデータ転送を行う。なお、データ転送中においては、図12に示すように、携帯電話機の表示画面には、通信処理の進捗状況を示すインジケータが表示される。
【0004】
特許文献1には、RFIDカードリーダライタからの搬送波の磁界強度を検出し、検出した磁界強度をLEDの発光輝度を用いて報知する携帯電話端末が開示されている。
【0005】
特許文献2には、近接無線通信の際に、電波強度が強く、かつ、通信レートが高い位置に、ユーザが無線端末装置を移動させることができるように、無線端末装置の表示部に当該無線端末装置を移動させるべき方向を表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−197510号公報
【特許文献2】特開2010−118773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
位置合わせのための目印を付す位置は、当該携帯電話機のデザインや実装部品の位置等に依存する。例えば、折り畳み式携帯電話機において、メインディスプレイの裏面にサブディスプレイが設けられている場合、当該サブディスプレイを避けて目印を付さなければならない。そのため、コイルアンテナの位置と目印の位置との相対的な位置関係が携帯電話機の機種毎に異なる場合がある。したがって、ユーザ同士が目印を合わせてRFID通信を行ったとしても、送信側コイルアンテナと受信側コイルアンテナとの位置がずれてしまい、重なり合わない。その結果、良好な通信品質でRFID通信を行うことができない。
【0008】
このとき、特許文献1及び2に記載の技術を用いると、受信側の携帯電話機は、磁界や電波の受信強度に基づいて、通信品質を判断し、受信側の携帯電話機のユーザに通信品質を報知できる。
【0009】
しかしながら、送信側の携帯電話機は、データ転送のために搬送波を送信しているため、RFID通信における磁界や電波の受信強度を検知することができない。そのため、送信側の携帯電話機は、磁界や電波の受信強度に基づいて、通信品質の判断をすることができない。したがって、送信側の携帯電話機のユーザは、良好な通信品質を維持するための携帯電話機の位置を認識することができない。その結果、RFID通信におけるデータ転送が失敗するという問題がある。なお、データ転送の失敗した場合、図13に示すように、携帯電話機の表示画面に通信失敗のメッセージが表示される。
【0010】
なお、上記の通り、特許文献1及び2に記載の技術は、いずれも磁界や電波の受信強度に基づいて、通信品質を検出している。つまり、特許文献1及び2は、受信側の携帯電話機等を想定しており、送信側の携帯電話機のユーザが通信品質を認識することについては、記載も示唆もされていない。
【0011】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、データ送信側のユーザに対して通信品質を報知することにより、データ転送の成功率を向上させる通信装置、通信システム及び通信装置の制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる通信装置は、一次側アンテナと、前記一次側アンテナと通信対象が備える二次側アンテナとを介して、前記通信対象と非接触通信可能であり、前記通信対象に対して搬送波を送信すると共に、前記通信対象からの応答信号を受信する通信処理手段と、
前記搬送波に基づく情報と、当該搬送波が送信された際の前記応答信号に含まれる情報と、を比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記通信対象との前記非接触通信の通信品質を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて、前記通信品質を報知する報知手段と、を備えるものである。
【0013】
本発明にかかる通信システムは、上記の通信装置と、前記通信装置と、非接触通信を行う通信対象と、を備え、前記通信装置及び前記通信対象には、前記非接触通信における前記通信装置と前記通信対象との相対的な位置を、所定の位置に合わせるための目印が付されており、前記一次側アンテナと前記通信装置に付された前記目印との相対的な位置関係が、前記二次側アンテナと前記通信対象に付された前記目印との相対的な位置関係と異なるものである。
【0014】
本発明にかかる通信装置の制御方法は、一次側アンテナを備える通信装置の制御方法であって、前記一次側アンテナと通信対象が備える二次側アンテナとを介して、非接触通信を用いて、前記通信対象に対して搬送波を送信すると共に、前記通信対象からの応答信号を受信し、前記搬送波に含まれる情報と、当該搬送波が送信された際の前記応答信号に含まれる情報と、を比較し、比較結果に基づいて、前記通信対象との前記非接触通信の通信品質を判定し、判定結果に基づいて、前記通信品質を報知するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、データ送信側のユーザに対して通信品質を報知することにより、データ転送の成功率を向上させる通信装置、通信システム及び通信装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1にかかる通信装置のブロック図である。
【図2】実施の形態2にかかる携帯電話機及び通信対象の外観斜視図である。
【図3】実施の形態2にかかる携帯電話機及び通信対象の背面図である。
【図4】実施の形態2にかかる携帯電話機のブロック図である。
【図5】実施の形態2にかかる携帯電話機の動作を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態2にかかる携帯電話機の表示画面を示す図である。
【図7】実施の形態2にかかる判定部の判定処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】実施の形態3にかかる判定部の判定処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】実施の形態4にかかる携帯電話機のブロック図である。
【図10】実施の形態4にかかる携帯電話機及び通信対象の外観斜視図である。
【図11】実施の形態4にかかる報知部の点灯制御を説明するための波形である。
【図12】関連する携帯電話機の表示画面を示す図である。
【図13】関連する携帯電話機の表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態にかかる通信装置1のブロック図を図1に示す。通信装置1は、一次側アンテナ11と、通信処理部12と、比較部13と、判定部14と、報知部15と、を備える。通信装置1は、一次側アンテナ11を介して、二次側アンテナを備える通信対象(図示省略)と非接触通信を行う。通信装置1は、例えば、携帯電話機、ゲーム機、音楽プレイヤー、ノートPC(Personal Computer)等である。通信対象は、通信装置1の例に加えて、RFIDタグやIC(Integrated Circuit)カード等でもよい。なお、通信装置1は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を備えている。当該CPUは、プログラムに基づいて、図1に示す通信装置1の各部に対して、各種の処理動作の実行を命令する。
【0018】
一次側アンテナ11は、非接触通信を行うためのアンテナであり、例えば、所定のインダクタンスを有するコイルと、所定の静電容量を有するキャパシタとからなる共振回路で構成される。一次側アンテナ11及び二次側アンテナは、電磁誘導方式を用いて磁気的に結合される。
【0019】
通信処理部12は、一次側アンテナ11と通信対象が備える二次側アンテナとを介して、通信対象と非接触通信可能であり、通信対象に対して搬送波を送信すると共に、通信対象からの応答信号を受信する。具体的には、通信処理部12は、CPUの命令に応じて、搬送波を変調することにより、通信対象に送信する送信データを搬送波に重畳させる。そして、通信処理部12は、一次側アンテナ11を介して、変調した搬送波を送出する。また、通信処理部12は、CPUの命令に応じて、受信した応答信号を復調することにより、応答信号に重畳している応答データを取得する。なお、搬送波の周波数は、例えば、13.56MHzである。
【0020】
比較部13は、搬送波に基づく情報と、当該搬送波が送信された際の応答信号に含まれる情報と、を比較する。具体的には、比較部13は、CPUの命令に応じて、搬送波に基づく情報と、当該搬送波が送信された際の応答信号に含まれる情報と、が一致するか否かを判定する。搬送波に基づく情報とは、良好な通信品質の通信において、搬送波に対する応答として期待される情報を意味する。搬送波に基づく情報は、例えば、搬送波に重畳した送信データや、当該送信データに対する応答として期待されるデータのヘッダ情報等である。応答信号に含まれる情報とは、例えば、通信処理部12が、応答信号を復調して取得した応答データや当該応答データのヘッダ情報等である。
【0021】
判定部14は、比較部13の比較結果に基づいて、通信対象との非接触通信の通信品質を判定する。具体的には、搬送波に基づく情報と、当該搬送波が送信された際の応答信号に含まれる情報と、が一致する場合、応答信号に含まれる情報は、良好な通信品質の非接触通信を介して通信装置1に送信された情報であると考えられる。したがって、判定部14は、CPUの命令に応じて、通信品質は良好であると判定する。
【0022】
一方、搬送波に基づく情報と、当該搬送波が送信された際の応答信号に含まれる情報と、が一致しない場合、応答信号に含まれる情報は、不良な通信品質の非接触通信を介して通信装置1に送信された情報であると考えられる。したがって、判定部14は、CPUの命令に応じて、通信品質は不良であると判定する。
【0023】
報知部15は、判定手段の判定結果に基づいて、通信品質をユーザに対して報知する。報知方法としては、例えば、表示部への表示、LED(Light Emitting Diode)の点灯、音声、バイブレーション等を用いることができる。なお、報知方法は、上記した方法以外の方法でもよい。
【0024】
続いて、本実施の形態にかかる通信装置1の動作について説明する。まず、通信処理部12が、一次側アンテナ11を介して、通信対象に対して搬送波を送信する。通信対象は二次側アンテナを介して搬送波を受信すると、搬送波に応じた応答信号を、通信装置1に対して送信する。
【0025】
ここで、応答信号とは、インピーダンスの不整合に起因して、搬送波の一部が反射することにより生じる信号である。このとき、通信対象の負荷を変化させる、つまり、通信対象のインピーダンスを変化させると、インピーダンスの変化に応じて、反射波(応答信号)の振幅が変化する。これを利用して、通信対象は、データ転送時において応答信号に情報を重畳させる(負荷変調)。
【0026】
通信処理部12は、一次側アンテナ11を介して受信した応答信号を復調し、応答信号に含まれる情報を、比較部13に対して出力する。そして、比較部13は、搬送波に基づく情報と、応答信号に含まれる情報と、を比較して、比較結果を判定部14に出力する。
【0027】
判定部14は、比較結果に基づいて、通信品質の判定を行い、判定結果を報知部15に対して出力する。報知部15は、通信装置1のユーザに対して、通信装置1と通信対象との非接触通信の通信品質を報知する。
【0028】
以上のように、本実施の形態にかかる通信装置1の構成によれば、比較部13が、搬送波に基づく情報と、当該搬送波を送信した際の応答信号に含まれる情報と、を比較する。そして、判定部14が、比較部13の比較結果に基づいて、通信品質を判定する。このとき、通信装置1は、搬送波の送信側、つまり、リーダライタ側であり、搬送波の受信強度を検出できない。しかし、通信装置1は、比較部13の比較結果に基づいて、通信品質を判定できる。
【0029】
さらに、報知部15が、判定部14によって判定された通信品質を、通信装置1のユーザに対して報知する。そのため、データの送信側である通信装置1のユーザが、非接触通信の通信品質を認識できる。その結果、通信装置1のユーザは、報知部15の報知に応じて、通信品質が良好となる通信装置1の位置を認識できる。したがって、高品質な非接触通信が実現され、データ転送の成功率を向上させることができる。
【0030】
<実施の形態2>
本発明にかかる実施の形態2について説明する。始めに、本実施の形態にかかる携帯電話機2(通信装置)と通信対象9との構成について説明する。図2は、携帯電話機2及び通信対象9の外観斜視図である。図2において、携帯電話機2と通信対象9とは対向している。図3は、携帯電話機2と通信対象9との対向面、つまり、携帯電話機2及び通信対象9の背面を示す図である。
【0031】
図2に示すように、携帯電話機2は正面LCD(Liquid Crystal Display)部21と、キー操作部22と、を備える折り畳み式の携帯電話機である。同様に、通信対象9は、図示しない正面LCD部が設けられた面の反対側の面に背面表示部91を備える折り畳み式の携帯電話機である。なお、携帯電話機2の詳細な構成については後述する。
【0032】
図3に示すように、携帯電話機2の筐体内部には、コイルアンテナ(一次側アンテナ)29が設けられている。コイルアンテナ29は矩形状をしたアンテナである。また、携帯電話機2には、正面LCD部21が設けられた面の裏面(図3において表示されている面)に目印200が付されている。当該目印200は、コイルアンテナ29が形成する矩形の略中心位置に付されている。なお、目印200とは、例えばFeliCaマークであり、非接触通信における携帯電話機2と通信対象9との相対的な位置を合わせるための目印である。
【0033】
一方、通信対象9の背面には、上記したように、背面表示部91が設けられている。また、通信対象9の筐体内部にも、コイルアンテナ(二次側アンテナ)92が設けられている。さらに、通信対象9の背面にも、目印100が付されている。このとき、コイルアンテナ92の中心部には、背面表示部91が設けられているため、目印100を、コイルアンテナ92の中央部に付すことができない。このため、目印100は、コイルアンテナ92が形成する矩形内の上部に付されている。つまり、携帯電話機2におけるコイルアンテナ29と目印200との相対的な位置関係は、通信対象9におけるコイルアンテナ92と目印100との相対的な位置関係とは異なる。
【0034】
次に、携帯電話機2の詳細な構成について説明する。図4は、携帯電話機2のブロック図である。携帯電話機2は、正面LCD部21(表示手段)と、キー操作部22と、メモリ部23と、制御部24と、電話無線部25と、アンテナ26と、RFID制御部27と、RFID無線部28と、コイルアンテナ29と、を備える。
【0035】
正面LCD部21は、携帯電話機2の表示画面である。キー操作部22は、ユーザからの情報入力を受けつける入力装置である。メモリ部23は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read Only Memory)によって構成されており、電話帳データや、制御部24が実行するためのプログラム等が格納されている。
【0036】
制御部24は、CPU(図示省略)を有し、メモリ部23に格納されたプログラムに基づいて、携帯電話機2の各部の処理動作の実行を命令する。また、制御部24は、実施の形態1において説明した比較部13、判定部14、及び報知部15に対応する処理動作を行う。なお、比較部13、判定部14、及び報知部15の動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
電話無線部25は、制御部24の命令に応じて、ユーザの通話音声を電波に乗せる変調処理や、基地局(図示省略)からアンテナ26を介して入力された電波から音声信号を取り出す復調処理等を行う。つまり、電話無線部25は、電話に関する信号処理を実行する。
【0038】
RFID制御部27は、制御部24の命令に応じて、通信対象9に送信する搬送波を変調し、搬送波に送信データを重畳させる。また、RFID制御部27は、制御部24の命令に応じて、通信対象9から受信した応答信号を復調し、応答信号から応答データを取り出す。RFID無線部28は、通信対象9に送信する搬送波に応じた電流をコイルアンテナ29に流す。また、RFID無線部28は、応答信号の受信によりコイルアンテナ29に流れた電流を整流する。つまり、RFID制御部27及びRFID無線部28は、実施の形態1の通信処理部12に対応する。
【0039】
続いて、本実施の形態にかかる携帯電話機2の動作について図5に示すフローチャートを参照して説明する。まず、携帯電話機2のユーザは、キー操作部22を操作して、電話帳等の送信データの送信を開始する(ステップS101)。具体的には、携帯電話機2のRFID無線部28は、コイルアンテナ29を介して、送信データが重畳した搬送波を送信する。
【0040】
次に、携帯電話機2のユーザは、携帯電話機2の目印200と、通信対象9の目印100とが対向するように、携帯電話機2の位置を移動させる(ステップS102)。これにより、非接触通信が開始される。
【0041】
そして、制御部24は、目印100と目印200とが対向する位置における通信品質を判定し、通信品質を正面LCD部21に表示させる(ステップS103)。なお、通信品質の判定処理の詳細については後述する。これにより、携帯電話機2のユーザが、現在の通信品質を認識できる。
【0042】
ここで、正面LCD部21における通信品質の表示例を図6に示す。図6に示すように、正面LCD部21には、通信の進捗状況を示す進捗インジケータ211と、通信品質を示す品質インジケータ212と、が表示される。このとき、通信品質は段階的に表示される。図6においては、通信品質は、6段階で表示され、星マークの点灯数が多いほど、通信品質が高いことを示す。勿論、通信品質の段階は6段階に限られない。
【0043】
ユーザは、正面LCD部21に表示されている現在の通信品質を確認し、ユーザは最適な通信品質であるか否かを判断する(ステップS104)。なお、最適な通信品質とは、品質インジケータ212の星マークが6つ点灯した状態でもよいし、点灯数が6つ未満であっても、ユーザが満足できる通信品質であればよい。
【0044】
ユーザが最適な通信品質でないと判断した場合(ステップS104:No)、ユーザは、最適な通信品質となるように、携帯電話機2を移動させて、携帯電話機2と通信対象9との相対的な位置を変更する(ステップS102)。具体的には、ユーザは、携帯電話機2を通信対象9に対して、任意の方向(例えば、前後上下左右。図2の矢印方向)に移動させる。携帯電話機2を移動させることにより、携帯電話機2のコイルアンテナ29と通信対象9のコイルアンテナ92との相対的な位置関係が変化するため、通信品質も変化する。
【0045】
制御部24は、再度通信品質を判定し、正面LCD部21に通信品質を表示させる(ステップS103)。ユーザは、現在の通信品質が最適な通信品質であるか否かを再度判断する(ステップS104)。最適な通信品質になるまで、携帯電話機2及び携帯電話機2のユーザは、ステップS102〜S104を繰り返す。
【0046】
そして、ユーザが最適な通信品質であると判断した場合(ステップS104:Yes)、ユーザは、携帯電話機2と通信対象9の相対的な位置関係が変化しないように、携帯電話機2の位置を維持する(ステップS105)。これにより、最適な通信品質でデータ通信が行われる。そして、携帯電話機2は、送信すべきデータが全て転送された時点で、データ通信を完了する(ステップS106)。
【0047】
ここで、図5のステップS103における通信品質の判定処理について図7のフローチャートを参照して詳細に説明する。ステップS103においては、既にデータ通信が行われており、携帯電話機2から、通信対象9に対して、搬送波が送信されている。このとき、搬送波に重畳している送信データは、例えば、電話帳のデータ要求のための情報である。
【0048】
電話帳のデータ要求を受信した通信対象9は、負荷変調を用いて、応答データ(例えば、電話帳の中のAさんのデータ)を重畳させた応答信号を生成し、当該応答信号を携帯電話機2に送信する。
【0049】
そして、携帯電話機2のRFID制御部27及びRFID無線部28は、応答信号を受信して、当該応答信号に含まれる応答データ(Aさんのデータ)を取得し、応答データを比較部13に出力する(ステップS201)。
【0050】
このとき、制御部24は、送信データに応じたヘッダ情報を予めメモリ部23に格納している。送信データに応じたヘッダ情報とは、送信データに対する応答として期待されるデータのヘッダ情報をいう。具体的には、送信データに応じたヘッダ情報は、電話帳のデータ要求に応じて、通信対象9から送信される応答データ(Aさんのデータ)に付加されるべきヘッダ情報のことを意味する。
【0051】
次に、比較部13は、応答データ(Aさんのデータ)のヘッダ情報を取得する。そして、比較部13は、電話帳のデータ要求に応じて送信された応答データ(Aさんのデータ)に付加されるべきヘッダ情報と、実際に受信した応答データのヘッダ情報とを比較する(ステップS202)。
【0052】
付加されるべきヘッダ情報と、実際に受信した応答データのヘッダ情報とが一致しない場合(ステップS203:No)、ヘッダ以降の情報、つまり、応答データに含まれるAさんのデータも適切に受信できていない可能性がある。そのため、制御部24は、RFID制御部27及びRFID無線部28に対して、搬送波に再送要求を重畳させて送信させる(ステップS204)。これにより、通信対象9は、再度応答データ(Aさんのデータ)が重畳した応答信号を送信する。なお、制御部24は、再送要求を行うと、再送要求の回数をインクリメントする。
【0053】
制御部24は、付加されるべきヘッダ情報と、実際に受信した応答データのヘッダ情報とが一致するまで、または、タイムアウトになるまで、RFID制御部27及びRFID無線部28に再送要求を送信させる。つまり、携帯電話機2は、ステップS201〜S204を繰り返す。
【0054】
付加されるべきヘッダ情報と、実際に受信した応答データのヘッダ情報とが一致した場合(ステップS203:Yes)、判定部14は、RFID制御部27及びRFID無線部28が送信した再送要求の回数に応じて、通信品質を判定する(ステップS205)。具体的には、判定部14は、再送要求の送信回数が少ないほど、通信品質が良好であると判定する。言い換えると、判定部14は、再送要求の送信回数が多いほど、通信品質が不良であると判定する。通信品質が不良であるほど、データの転送の成功率が低く、より多くの再送要求が必要となると考えられるためである。
【0055】
以上のように、本実施の形態にかかる携帯電話機2の構成によれば、比較部13が、送信データに応じたヘッダ情報と、実際に受信した応答データのヘッダ情報と、を比較する。また、送信データに応じたヘッダ情報と、実際に受信した応答データのヘッダ情報と、が一致しない場合、RFID制御部27及びRFID無線部28が、通信対象9に対して再送要求を送信する。そして、判定部14は、当該再送要求の送信回数に応じて、通信品質を判定する。これにより、判定部14は、再送回数に応じて、通信品質を段階的に判定できる。
【0056】
さらに、段階的な判定結果に応じて、報知部15は、正面LCD部21に通信品質を段階的に表示させることができる。そのため、携帯電話機2のユーザは、より詳細に通信品質を認識でき、最適な通信品質が実現される携帯電話機2の位置を容易に探し当てることができる。したがって、データ転送の成功率の向上を図ることができる。
【0057】
<実施の形態3>
本発明にかかる実施の形態3について説明する。本実施の形態にかかる携帯電話機3(通信装置)においては、携帯電話機3及び通信対象9の間でデータ転送が開始される前に、判定部14が、通信品質を判定する。なお、携帯電話機3の構成は、図4に示した携帯電話機2の構成と同様であるため、適宜説明を省略する。
【0058】
上記のように、判定部14がデータ転送開始前に通信品質を判定するため、携帯電話機3及び通信対象9の間において未だデータ転送は行われていない。つまり、通信対象9は、負荷変調動作を行っておらず、通信対象9のインピーダンスは変化しない。そのため、携帯電話機3から送信された搬送波は、インピーダンス不整合に起因して反射し、そのまま携帯電話機3へと返ってくる。
【0059】
続いて、図8に示すフローチャートを参照して判定部14の判定処理について詳細に説明する。まず、RFID制御部27及びRFID無線部28は、データ通信とは関係のない任意のビット列(例えば「1010」)の送信データを搬送波に重畳させて、通信対象9に対して送信する(ステップS301)。なお、制御部24は、任意のビット列をメモリ部23に格納しておく。
【0060】
通信対象9においては、上記のように、負荷変調動作が行われていないため、受信した搬送波はそのまま反射される。そして、携帯電話機3は応答信号として搬送波を受信する(ステップS302)。そのため、データ転送開始前においては、搬送波と応答信号とは略一致する。
【0061】
つまり、良好な通信品質の非接触通信においては、搬送波に重畳させた送信データと、応答信号に重畳している応答データとは、いずれも「1010」である。これを利用して、比較部13は、メモリ部23に格納された送信データ「1010」と、受信した応答データと、が一致しているか否かを判定する(ステップS303)。一致している場合は(ステップ304:Yes)、制御部24は、メモリ部23に格納された一致回数を1増やす(ステップS305)。そして、制御部24は、所定の時間が経過したか否か判定する(ステップS306)。所定の時間が経過していない場合、RFID制御部27及びRFID無線部28は、再度任意のビット列(「1010」)が重畳した搬送波を送信する(ステップS301)。
【0062】
一方、送信データと応答データとが一致してない場合は(ステップS304:No)、制御部24は、一致回数を増加させず、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS306)。
【0063】
所定の時間が経過していない場合、RFID制御部27及びRFID無線部28は、再度任意のビット列(「1010」)が重畳した搬送波を送信する(ステップS301)。つまり、所定の時間が経過するまで、RFID制御部27及びRFID無線部28は、送信データと応答データとが一致しているか否かに拘わらず、所定時間が経過するまでは、送信データ(「1010」)が重畳した搬送波を通信対象9に対して何度も送信する。このように、携帯電話機3は、ステップS301〜S305の動作を繰り返す。
【0064】
所定の時間が経過すると(ステップS306:Yes)、判定部14は、メモリ部23に格納された一致回数に応じて、通信品質を判定する(ステップS306)。具体的には、判定部14は一致回数が多いほど、通信品質が良好であると判定する。一致回数が多いということは、データ転送の成功率が高いと考えられるためである。
【0065】
以上のように、本実施の形態にかかる携帯電話機3の構成によれば、判定部14が、データ転送開始前に、通信品質を判定する。そのため、データ転送開始前に、最適な通信品質が確保される。したがって、データ転送開始時から最適な通信品質の非接触通信が可能となる。そのため、データ転送の成功率を向上させることができる。加えて、ユーザは、データ転送中に、最適な通信品質となる携帯電話機3の位置を探す必要が無い。
【0066】
<実施の形態4>
【0067】
本発明にかかる実施の形態4について説明する。本実施の形態にかかる携帯電話機4(通信装置)のブロック図を図9に示す。携帯電話機4は、図4に示した携帯電話機2の構成に加えて、LED部(点灯手段)31を備える。なお、その他の構成については携帯電話機2と同様であるので、説明を適宜省略する。
【0068】
図10は、携帯電話機4と通信対象9とが対向した状態における外観斜視図である。図10に示すように、LED部31は、正面LCD部21の上側に位置する携帯電話機4の筐体端部に設けられている。
【0069】
続いて、本実施の形態にかかる携帯電話機4の動作について説明する。なお、携帯電話機4は、通信品質の報知方法のみが上述の実施の形態と異なり、その他の動作については同様である。そのため、以下では、報知方法のみについて説明し、報知処理以前の動作については説明を省略する。
【0070】
報知部15は、判定部14により判定された通信品質に応じた点滅間隔で、LED部31を点灯させる。なお、点滅間隔とは、周期TにおけるLED部31の点灯時間のことを意味する。
【0071】
より詳細には、図11に示すように、報知部15は、通信品質に応じて、LED部31の点灯時間についてデューティー制御を行う。報知部15は、通信品質が良好であるほど、周期TにおけるLED部31の点灯時間を長くする。言い換えると、報知部15は、通信品質が不良であるほど、周期TにおけるLED部31の点灯時間を短くする。なお、点灯時間の変化は、連続的であってもよいし、段階的であってもよい。加えて、LED部31を用いた報知方法は、LED部31の点滅による報知に限られない。報知部15は、LED部31の明るさや色等を制御することによって、通信品質を報知してもよい。
【0072】
以上のように、本実施の形態にかかる携帯電話機4の構成によれば、報知部15は、通信品質に応じた点滅間隔で、LED部31を点灯させる。その結果、ユーザは、通信品質が良好となる通信装置1の位置を認識できる。したがって、高品質な非接触通信が実現され、データ転送の成功率を向上させることができる。
【0073】
なお、LED部31の配置位置は、図10に示した位置に限られないが、通信対象9のユーザが視認できる位置であることが好ましい。通信対象9のユーザが通信品質を認識することができると、データ送信側にユーザが存在しない場合(例えば、データ送信側が、改札機やレジ横に配置されているFelica対応の支払機であり、受信側が、ICカードや、携帯電話機の場合)、データ受信側(通信対象)のユーザが、通信品質が良好となる通信対象の位置を認識できる。その結果、データ受信側のユーザが良好な通信品質を探し出すことができ、データ転送の成功率の向上を図ることができる。
【0074】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更及び組み合わせをすることが可能である。例えば、一次側アンテナ及び二次側アンテナは、コイルアンテナに限られない。電界結合方式の場合、一次側アンテナ及び二次側アンテナは電極でもよい。また、実施の形態1〜4において説明した動作を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 通信装置
2〜4 携帯電話機
9 通信対象
11 一次側アンテナ
12 通信処理部
13 比較部
14 判定部
15 報知部
21 正面LCD部
22 キー操作部
23 メモリ部
24 制御部
25 電話無線部
26 アンテナ
27 RFID制御部
28 RFID無線部
29、92 コイルアンテナ
31 LED部
91 背面表示部
100、200 目印
211 進捗インジケータ
212 品質インジケータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側アンテナと、
前記一次側アンテナと通信対象が備える二次側アンテナとを介して、前記通信対象と非接触通信可能であり、前記通信対象に対して搬送波を送信すると共に、前記通信対象からの応答信号を受信する通信処理手段と、
前記搬送波に基づく情報と、当該搬送波が送信された際の前記応答信号に含まれる情報と、を比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記通信対象との前記非接触通信の通信品質を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記通信品質を報知する報知手段と、
を備える通信装置。
【請求項2】
前記通信処理手段は、所定時間内に前記応答信号を複数回受信し、
前記判定手段は、前記搬送波に基づく情報と、当該搬送波が送信された際の前記応答信号に含まれる情報と、が一致した回数に応じて、前記通信品質を判定する請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記搬送波に基づく情報と、当該搬送波が送信された際の前記応答信号に含まれる情報と、が不一致の場合、前記通信処理手段は、前記通信対象に対して、前記応答信号の再送要求を送信し、
前記判定手段は、前記再送要求の送信回数に応じて、前記通信品質を判定する請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記搬送波に基づく情報には、前記搬送波に重畳された送信データが含まれ、
前記比較手段は、前記送信データと、前記応答信号に重畳された応答データと、を比較する請求項1〜3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記搬送波に基づく情報には、前記搬送波に重畳された送信データに応じたヘッダ情報が含まれ、
前記比較手段は、前記送信データに応じたヘッダ情報と、前記応答信号に重畳された応答データのヘッダ情報と、を比較する請求項1〜4のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
表示手段をさらに備え、
前記報知手段は、前記表示手段に前記通信品質を段階的に表示させる請求項1〜5のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項7】
点灯手段をさらに備え、
前記報知手段は、前記通信品質に応じて前記点灯手段を制御することで前記通信品質を報知する請求項1〜6のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記一次側及び二次側アンテナはコイルアンテナである請求項1〜7のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の通信装置と、
前記通信装置と、非接触通信を行う通信対象と、を備え、
前記通信装置及び前記通信対象には、前記非接触通信における前記通信装置と前記通信対象との相対的な位置を、所定の位置に合わせるための目印が付されており、
前記一次側アンテナと前記通信装置に付された前記目印との相対的な位置関係が、前記二次側アンテナと前記通信対象に付された前記目印との相対的な位置関係と異なる通信システム。
【請求項10】
一次側アンテナを備える通信装置の制御方法であって、
前記一次側アンテナと通信対象が備える二次側アンテナとを介して、非接触通信を用いて、前記通信対象に対して搬送波を送信すると共に、前記通信対象からの応答信号を受信し、
前記搬送波に含まれる情報と、当該搬送波が送信された際の前記応答信号に含まれる情報と、を比較し、
比較結果に基づいて、前記通信対象との前記非接触通信の通信品質を判定し、
判定結果に基づいて、前記通信品質を報知する通信装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−222595(P2012−222595A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86184(P2011−86184)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】