通信装置、通信方法、及び通信プログラム
【課題】音声の音量を調整することができる通信装置、通信方法、及び通信プログラムを提供する。
【解決手段】通信装置2は、IP網11を介して、デジタル音声信号13を送信する。通信装置2は、PSTN網12を介して、アナログ音声信号15を送信する。通信装置3は、デジタル音声信号14の振幅とデジタル音声信号16の振幅とを比較することによって、アナログ音声信号15がPSTN網12を伝送する場合の減衰率を算出する。通信装置3は、算出された減衰率に基づいて、アナログ音声信号16の増幅率を決定する。増幅されたアナログ音声信号16は、デジタル音声信号14の振幅と同一となる。通信装置3は、決定した増幅率に基づいてアナログ音声信号16を増幅する。通信装置3は、構内電話網9を介して通話端末6に対して、増幅されたアナログ音声信号16を送信する。
【解決手段】通信装置2は、IP網11を介して、デジタル音声信号13を送信する。通信装置2は、PSTN網12を介して、アナログ音声信号15を送信する。通信装置3は、デジタル音声信号14の振幅とデジタル音声信号16の振幅とを比較することによって、アナログ音声信号15がPSTN網12を伝送する場合の減衰率を算出する。通信装置3は、算出された減衰率に基づいて、アナログ音声信号16の増幅率を決定する。増幅されたアナログ音声信号16は、デジタル音声信号14の振幅と同一となる。通信装置3は、決定した増幅率に基づいてアナログ音声信号16を増幅する。通信装置3は、構内電話網9を介して通話端末6に対して、増幅されたアナログ音声信号16を送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通話音声の音量を調整する通信装置、通信方法、及び通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
IP網及びPSTN網の双方に接続可能な通信装置が知られている。例えば特許文献1に記載された通信装置は、IP網及びPSTN網のいずれかを介して、他の通信装置との間で通信する。通信装置がPSTN網を介して通信する場合、音声はアナログ信号のままPSTN網を伝送する。一方、通信装置がIP網を介して通信する場合、音声はデジタル信号に変換されてIP網を伝送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−165967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信装置がPSTN網を介して通信する場合、送信側の通信装置から送信されたアナログ信号がPSTN網を伝送する過程において減衰し、受信側の通信装置に到達する恐れがある。この結果、受信側の通信装置から出力される音声の音量が減衰する。一方、通信装置がIP網を介して通信する場合、音声はデジタル信号に変換されているので、IP網を伝送する過程において音量は減衰しない。この結果、受信側の通信装置から出力される音声の音量は減衰しない。
【0005】
IP網及びPSTN網の双方に接続可能な通信装置において、通話の途中にIP網からPSTN網に伝送路が切り替えられることが考えられる。この場合、送信側の音声の音量が同じであっても、伝送路が切替えられた場合に、受信側の通信装置から出力される音声の音量が減衰する恐れがある。この音量の減衰により、受信側の通信装置のユーザに音量の減衰よる違和感を与える恐れがあった。
【0006】
本発明の目的は、音声の音量を調整することができる通信装置、通信方法、及び通信プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一態様に係る通信装置は、IP網及びPSTN網の双方に接続可能な通信装置であって、前記IP網を介して、他の通信装置との間で音声信号をデジタル信号として通信する第一通信手段と、前記PSTN網を介して前記音声信号を通信するか否かを、前記IP網の通信状態に基づき判断する判断手段と、前記判断手段において、前記PSTN網を介して通信すると判断された場合に、前記PSTN網を介して、前記他の通信装置との間で前記音声信号をアナログ信号として通信する第二通信手段と、前記第一通信手段により前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第一音声信号の音量と、前記第二通信手段により前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第二音声信号の音量とに基づいて、前記第二音声信号の増減率を決定する決定手段と、前記決定手段によって決定された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力する第一出力手段とを備えている。
【0008】
第一態様によれば、通信装置は、IP網を介して受信した第一音声信号の音量と、PSTN網を介して受信した第二音声の音量とに基づいて、第二音声信号の増減率を決定することができる。音声の音量に基づいて増減率が決定されるため、音声の周波数帯域で最適な増減率を決定することができる。このため、ユーザは、伝送路がIP網からPSTN網に切り替わった場合でも、出力される音声を違和感なく継続して聞くことができる。
【0009】
また第一態様において、前記第一音声信号及び前記第二音声信号のうち、同一音声に帰属する部分を特定する特定手段を備え、前記決定手段は、前記特定手段において特定された部分の音量を比較することによって、前記第二音声信号の増減率を決定してもよい。これによって通信装置は、第一音声信号及び第二音声信号のうち、同一の音声に帰属する部分の音量を比較することができる。これによって、第二音声信号を適切に増減する増減率を決定することができる。これによって、ユーザは、伝送路がIP網からPSTN網に切り替わった場合でも、出力される音声をさらに違和感なく継続して聞くことができる。
【0010】
また第一態様において、前記特定手段は、前記第一音声信号のうち所定部分の音声に帰属する部分を前記第二音声信号から検索することによって、同一音声に帰属する部分を特定してもよい。IP網を介して到達する第一音声信号は、PSTN網を介して到達する第二音声信号よりも通信遅延が大きいため、第一音声信号は第二音声信号よりも遅れて通信装置に到達する。従って、第一音声信号のうち所定部分の音声に帰属する部分を、既に受信された状態の第二音声信号から検索することによって、通信装置は、同一音声に帰属する部分を確実に特定することができる。また第二音声信号は、PSTN網を介して伝送するため、波形の乱れが小さい。従って通信装置は、同一音声に帰属する部分を正確に特定することができる。
【0011】
また第一態様において、前記第一出力手段において、増減された前記第二音声信号が出力された後、前記第一通信手段における前記IP網を介した通信を中止する中止手段を備えていてもよい。通信装置は、音声の通信を、IP網からPSTN網に切り替えることができる。IP網からPSTN網に切り替えた後、IP網を介した通信を中止することによって、IP網に不要な通信負荷をかけてしまうことを防止することができる。また、IP網を介した通信処理が不要となるので、通信装置は処理負荷を軽減することができる。
【0012】
また第一態様において、前記決定手段において決定された前記増減率を、前記他の通信装置に対して通知する通知手段を備え、前記第一出力手段は、前記他の通信装置から前記増減率が通知された場合に、通知された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力してもよい。これによって通信装置は、増減率を決定するための処理が不要となるので、処理負荷を軽減することができる。
【0013】
また第一態様において、前記第二通信手段は、前記PSTN網を介して前記他の通信装置と通信を行う場合に、前記決定手段によって決定された前記増減率で前記音声信号を増減し、増減された前記音声信号を前記他の通信装置に対して送信し、増減された前記音声信号を前記他の通信装置から受信した場合に、受信された前記音声信号を出力する第二出力手段を更に備えていてもよい。このため他の通信装置は、受信した第二音声を増減することなく、そのまま出力することができる。これによって、他の通信装置の処理負荷を軽減させることができる。
【0014】
また第一態様において、前記判断手段は、前記IP網の通信品質が所定の基準を満たしていない場合に、前記PSTN網を介して通信すると判断してもよい。PSTN網を介して音声の通信が行われるので、音声の通信遅延は小さくなる。通信装置は、IP網の通信品質が悪化した場合であっても、IP網の代わりにPSTN網を介して通信することによって、通信装置間の通信を円滑に実行することができる。
【0015】
本発明の第二態様に係る通信方法は、IP網を介して、他の通信装置との間で音声信号をデジタル信号として通信する第一通信ステップと、PSTN網を介して前記音声信号を通信するか否かを、前記IP網の通信状態に基づき判断する判断ステップと、前記判断ステップにおいて、前記PSTN網を介して通信すると判断された場合に、前記PSTN網を介して、前記他の通信装置との間で前記音声信号をアナログ信号として通信する第二通信ステップと、前記第一通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第一音声信号の音量と、前記第二通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第二音声信号の音量とに基づいて、前記第二音声信号の増減率を決定する決定ステップと、前記決定ステップによって決定された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力する第一出力ステップとを備えている。第二態様によれば、第一態様と同様の効果を奏することができる。
【0016】
本発明の第三態様に係る通信プログラムは、IP網を介して、他の通信装置との間で音声信号をデジタル信号として通信する第一通信ステップと、PSTN網を介して前記音声信号を通信するか否かを、前記IP網の通信状態に基づき判断する判断ステップと、前記判断ステップにおいて、前記PSTN網を介して通信すると判断された場合に、前記PSTN網を介して、前記他の通信装置との間で前記音声信号をアナログ信号として通信する第二通信ステップと、前記第一通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第一音声信号の音量と、前記第二通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第二音声信号の音量とに基づいて、前記第二音声信号の増減率を決定する決定ステップと、前記決定ステップによって決定された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力する第一出力ステップとをコンピュータに実行させる。第三態様によれば、第一態様と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】通信システム1の概要を示す模式図である。
【図2】通信装置4及び通話端末7の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】通信システム1における通信の様子を示す模式図である。
【図4】通信システム1における通信の様子を示す模式図である。
【図5】通信システム1における通信の様子を示す模式図である。
【図6】メイン処理を示すフローチャートである。
【図7】メイン処理を示すフローチャートであって、図6の続きである。
【図8】メイン処理を示すフローチャートであって、図7の続きである。
【図9】第一音声信号41と第二音声信号42とを比較する方法を説明するための図である。
【図10】第一変形例におけるメイン処理を示すフローチャートであって、図6の続きである。
【図11】第二変形例におけるメイン処理を示すフローチャートであって、図6の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。記載されている装置の構成、各種処理のフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0019】
図1を参照して、通信システム1の概要について説明する。通信システム1は、通信装置2、3、及び通話端末5、6を備えている。以下、通信装置2、3を特に区別しない場合、又は総称する場合、通信装置4ともいう。通話端末5、6を特に区別しない場合、又は総称する場合、通話端末7ともいう。通信装置4は、IP網11及び公衆電話交換網12に接続している。以下、公衆電話交換網12を、PSTN網12ともいう。IP網11は、TCP/IPに基づいて通信が行われる通信網である。PSTN網12は、電話回線が交換機によって接続された通信網である。通信装置4は、IP網11及びPSTN網12を介して他の通信装置4と通信を行うことができる。通信装置4として、周知のゲートウェイ、(Private Branch Exchange)PBXなどを使用することができる。
【0020】
通信装置2及び通話端末5は、構内電話網8に接続している。通信装置2及び通話端末5は、構内電話網8を介して通信を行うことができる。通信装置3及び通話端末6は、構内電話網9に接続している。通信装置3及び通話端末6は、構内電話網9を介して通信を行うことができる。通話端末7は、通信装置4を介して他の通話端末7と通信を行うことができる。通話端末7間で通信が行われることによって、通話端末7のユーザは、他の通話端末7のユーザと通話を行うことができる。
【0021】
図2を参照し、通信装置4の電気的構成について説明する。通信装置4は、通信装置4の制御を司るCPU21を備えている。CPU21は、ROM22、RAM23、イーサネット(登録商標)インタフェース(以下、イーサネットI/Fという。)24、Foreign eXchange Station(以下、FXSという。)25、及び、Foreign eXchange Office(以下、FXOという。)26と電気的に接続している。ROM22は、書き換え可能な不揮発性メモリである。ROM22には、ブートプログラム、BIOS、OS、CPU21の制御プログラム等が記憶される。RAM23には、タイマやカウンタ、一時的なデータが記憶される。またRAM23には、第一記憶領域231(図9参照)及び第二記憶領域232(図9参照)が割り当てられる。第一記憶領域231及び第二記憶領域232の詳細は後述する。イーサネットI/F24は、IP網11を介して他の通信装置4と通信を行うためのコントローラである。FXS25は、構内電話網8、9を介して通話端末7と通信を行うためのインタフェースである。FXO26は、PSTN網12を介して他の通信装置4と通信を行うためのインタフェースである。
【0022】
通話端末7の電気的構成について説明する。通話端末7は、通話端末7の制御を司るCPU31を備えている。CPU31は、ROM32、RAM33、FXO34、スピーカ35、及び、マイク36を備えている。ROM23は、書き換え可能な不揮発性メモリである。ROM32には、ブートプログラム、BIOS、OS、CPU31の制御プログラム等が記憶される。RAM23には、タイマやカウンタ、一時的なデータが記憶される。FXO34は、構内電話網8、9を介して通信装置4と通信を行うためのコントローラである。
【0023】
なお通話端末7は、CPU31、ROM32、及びRAM33を備えていなくてもよい。マイク36を介して取得された音声は、増幅された後、そのままFXO34を介して通信装置4に対して送信されてもよい。また、FXO34を介して通信装置4から受信された音声は、増幅された後、そのままスピーカ35から出力されてもよい。
【0024】
図3、4、及び5を参照し、通信システム1において実行される通信の概要について説明する。図3に示すように、通話端末5に設けられたマイク36(図2参照)を介して、ユーザの音声が音声信号として取得される。取得される音声信号はアナログである。以下、アナログの音声信号を、アナログ音声信号ともいう。通話端末5は、取得されたアナログ音声信号15を、構内電話網8を介して通信装置2に送信する。通信装置2は、アナログ音声信号15を受信する。通信装置2は、受信したアナログ音声信号15を量子化することによって、離散値として数値化されたデジタル信号13に変換する。以下、デジタル信号に変換されたアナログ音声信号を、デジタル音声信号ともいう。通信装置2は、IP網11を介して通信装置3に対して、デジタル音声信号13を送信する。
【0025】
通信装置3は、IP網11を介してデジタル音声信号13をデジタル音声信号14として受信する。通信装置3は、受信されたデジタル音声信号14を、アナログ音声信号18に変換する。アナログ音声信号18は、構内電話網9を介して通話端末6に対して送信される。通話端末6は、アナログ音声信号18を受信する。通話端末6において、受信されたアナログ音声信号18に基づいて、スピーカ35(図2参照)から音声が出力される。通話端末6のユーザは、スピーカ35から出力される音声を聞くことで、通話端末5のユーザの発声した音声を認識することができる。
【0026】
デジタル音声信号13は、アナログ音声信号15が離散値として数値化されたものである。このためデジタル音声信号13の振幅は、IP網11を伝送する過程で変化しない。通信装置3において受信されたデジタル音声信号14の振幅は、通信装置2から送信されるデジタル音声信号13の振幅と同一となる。通信装置3においてデジタル音声信号14を変換することによって得られるアナログ音声信号18の振幅は、通信装置2においてデジタル音声信号13に変換される前のアナログ音声信号15の振幅と同一となる。なお、デジタル音声信号13、14及びアナログ音声信号15、18の振幅は、音声の音量に相当する。このため、通話端末6においてスピーカ35から出力される音声の音量は、通話端末5においてマイク36を介して取得された音声の音量と同一となる。
【0027】
IP網11の通信品質が悪化したとする。例えば、IP網11のトラフィックが増大した場合、IP網11の通信品質は悪化する。IP網11の通信品質が悪化すると、IP網11を介して通信が行われた場合の通信遅延は大きくなる。また、通信中のデータがIP網11内で破棄される確率が高くなる。従って、IP網11の通信品質が悪化した状態で、デジタル音声信号の通信がIP網11を介して継続された場合、通話端末7のユーザ間で実行される通話の品質が低下する可能性がある。そこで通信装置2は、IP網11の通信品質の悪化を検出した場合、以下に示す方法で通信を行う。
【0028】
通信装置2においてIP網11の通信品質の悪化が検出された場合、図4に示すように、通信装置2は、IP網11を介したデジタル音声信号の通信を維持しつつ、PSTN網12を介した通信を開始する。通信装置2は、通信装置3との間の電話回線を接続することによってPSTN網12を利用可能な状態とする。通信装置2は、PSTN網12を介してアナログ音声信号15を通信装置3に対して送信する。通信装置3は、IP網11を介してデジタル音声信号14を受信し、且つ、PSTN網12を介してアナログ音声信号15をアナログ音声信号16として受信する。
【0029】
アナログ音声信号15の振幅は、PSTN網12を伝送する過程で、伝送損失により減衰する。通信装置3においてPSTN網12を介して受信されたアナログ音声信号16の振幅は、通信装置2から送信されるアナログ音声信号15の振幅よりも小さくなる。
【0030】
通信装置3は、PSTN網12を介した通信を開始した後も、継続して、IP網11を介して受信されたデジタル音声信号14をアナログ音声信号18に変換して通話端末6に送信する。PSTN網12を介して受信されたアナログ音声信号16は、通話端末6に対して送信されない。通話端末6では、デジタル音声信号14が変換されたアナログ音声信号18に基づいて、スピーカ35から音声が出力される。このため、通話端末6のスピーカ35から出力される音声の音量は、PSTN網12を介した通信の開始前後で変化しない。
【0031】
通信装置3は、PSTN網12を介した通信が開始された場合、IP網11を介して受信されたデジタル音声信号14の振幅と、PSTN網12を介して受信されたアナログ音声信号16の振幅とを比較する。通信装置3は、通信装置2から送信されるアナログ音声信号15がPSTN網12を伝送することによって減衰した場合の減衰率を特定する。通信装置3は、アナログ音声信号15の減衰分を補完するために必要な、アナログ音声信号16の増幅率を算出する。減衰率の逆数が、増幅率として算出される。振幅の比較方法、及び増幅率の算出方法の詳細は後述する。
【0032】
図5に示すように、通信装置3は、算出された増幅率に基づいて、PSTN網12を介して受信したアナログ音声信号16を、アナログ音声信号17に増幅する。増幅されたアナログ音声信号17の振幅は、IP網11を介して受信されたデジタル音声信号14(図4参照)の振幅と同一となる。増幅されたアナログ音声信号17は、デジタル音声信号14から変換されたアナログ音声信号18(図4参照)の代わりに、構内電話網9を介して通話端末6に送信される。IP網11を介したデジタル音声信号の通信は終了される。通話端末6は、受信されたアナログ音声信号17に基づいてスピーカ35から音声が出力される。
【0033】
音声信号の伝送路がIP網11からPSTN網12に切り替えられる前と後で、通信装置3から通話端末6に対して送信されるアナログ音声信号17、18の振幅は変化しない。このため、通話端末6のスピーカ35から出力される音声の音量は、伝送路が切り替えられる前と後で変化しない。通話端末6のスピーカ35から、同一音量の音声が継続して出力される。
【0034】
以上のように通信装置3は、IP網11を介して受信したデジタル音声信号14の振幅と、PSTN網12を介して受信したアナログ音声信号16の振幅とを比較し、アナログ音声信号16の増幅率を算出する。通信装置3は、算出された増幅率で、PSTN網12を介して受信したアナログ音声信号16を増幅する。これによって、デジタル音声信号14の振幅と、増幅されたアナログ音声信号17の振幅とを同一に設定することができる。なお同一とは、ユーザが音量の変化を認識しない程度の振幅の差異を許容するものとする。振幅は厳密に同一でなくともよい。従って、音声信号の伝送路がIP網11からPSTN網12に切り替えられた場合であっても、通話端末6のスピーカ35から出力される音声の音量の変化を小さくできる。通話端末6のユーザは、音声信号の伝送路がIP網11からPSTN網12に切り替えられた場合でも、スピーカ35から出力される音声を違和感なく継続して聞くことができる。
【0035】
図6から図8を参照し、通信装置4のCPU21において実行されるメイン処理について説明する。通信装置4に電源が投入された場合に、メイン処理は実行される。なお以下では、通信装置4がIP網11を介して他の通信装置4に対して送信するデジタル音声信号を総称し、デジタル音声信号13という。通信装置4がIP網11を介して他の通信装置4から受信するデジタル音声信号を総称し、デジタル音声信号14という。構内通信網を介して通話端末7から通信装置4に対して送信されるアナログ音声信号、及び、通信装置4がPSTN網12を介して他の通信装置4に対して送信する場合のアナログ音声信号を総称し、アナログ音声信号15という。通信装置4がPSTN網12を介して他の通信装置4から受信するアナログ音声信号を総称し、アナログ音声信号16という。通信装置4がデジタル音声信号14を変換し、構内電話網を介して通話端末7に送信するアナログ音声信号を総称し、アナログ音声信号18という。通信装置4がアナログ音声信号16を増幅し、構内電話網を介して通話端末7に送信する場合のアナログ音声信号を、アナログ音声信号18という。以下、通信装置2のCPU21のメイン処理を例に挙げて説明する。
【0036】
構内電話網8を介して接続した通話端末5から、通話端末6との通信の開始を要求する信号を受信したかが判断される(S11)。通話端末6との通信の開始を要求する信号が受信された場合(S11:YES)、IP網11を介して通信装置3に対して、セッションの確立を要求するパケットが送信される(S13)。以下、セッションの確立を要求するパケットを、確立要求パケットともいう。確立要求パケットを受信した通信装置3は、セッションの確立を許可する旨を通知するパケットを、IP網11を介して通信装置2に対して送信する。以下、セッションの確立を許可する旨を通知するパケットを、確立応答パケットともいう。確立応答パケットが、IP網11を介して受信される(S15)。通信装置3との間のセッションは確立される。処理はS21に進む。
【0037】
S11で、通話端末6との通信の開始を要求する信号が受信されない場合(S11:NO)、通信装置3から、IP網11を介して確立要求パケットを受信したかが判断される(S17)。確立要求パケットが受信されていない場合(S17:NO)、処理はS11に戻る。確立要求パケットが受信された場合(S17:YES)、IP網11を介して通信装置3に対して、確立応答パケットが送信される(S19)。通信装置3との間のセッションは確立される。処理はS21に進む。
【0038】
なお上述の確立要求パケット及び確立応答パケットは、通信装置3に対して直接送信されなくてもよい。確立要求パケット及び確立応答パケットは、IP網11に接続した呼制御サーバに送信されてもよい。呼制御サーバは、通信装置2から受信した確立パケット及び確立応答パケットを、通信装置3に対して転送してもよい。上述の通信は、Session Initiation Protocol(SIP)に基づいて行われてもよい。
【0039】
S21では、次の処理が実行される。通話端末5から送信されたアナログ音声信号15が、構内電話網8を介して受信されたとする。受信されたアナログ音声信号15は、デジタル音声信号13に変換される。デジタル音声信号13は、IP網11を介して通信装置3に対して送信される。また、IP網11を介して、他の通信装置3から送信されたデジタル音声信号13が、デジタル音声信号14として受信されたとする。受信されたデジタル音声信号14は、アナログ音声信号18に変換される。変換されたアナログ音声信号18は、構内電話網8を介して通話端末5に送信される。
【0040】
通話端末5は、マイク36を介して取得されたアナログ音声信号15を、構内電話網8を介して通信装置2に対して送信する。また通話端末5は、構内電話網8を介して通信装置2からアナログ音声信号18を受信する。受信されたアナログ音声信号18に基づき、スピーカ35の出力が制御される。スピーカ35から音声が出力される。マイク36を介して取得される音声、およびスピーカ35から出力される音声により、通話端末7のユーザ間で通話が行われる。
【0041】
IP網11の通信状態に基づき、音声信号の伝送路をIP網11からPSTN網12に切り替える必要があるかが判断される。すなわち、IP網11の通信品質が所定の基準を満たしているかが判断される。IP網11の通信品質は、例えば、IP網11を介して通信装置3と通信が行われる場合の通信遅延時間に基づいて判断される。通信品質が所定の基準を満たしているか否かは、通信遅延時間と所定の閾値(例えば300ms)とを比較することによって実行される。通信遅延時間が所定の閾値未満である場合、ユーザ間で通話が実行された場合に、遅延の影響はユーザによって認識されない。従って、通信品質は所定の基準を満たしていると判断される。一方、通信遅延が所定の閾値以上である場合、ユーザ間で通話が実行された場合に、遅延の影響によってユーザは違和感を覚える。従って、通信品質は所定の基準を満たしていないと判断される。
【0042】
通信遅延時間は、周知の様々な方法で計測することが可能である。例えば通信装置2は、次のようにして通信遅延時間を計測する。通信装置2は、通信装置3に対してIP網11を介して往路データを送信する。通信装置3は、往路データを受信した場合、通信装置2に対して復路データを返信する。通信装置2は、IP網11を介して復路データを受信する。通信装置2は、往路データを送信してから復路データを受信するまでに要した時間を計測する。計測された時間を二分した値が、通信遅延時間に相当する。この方法によって通信遅延時間を計測するための一般的な方法として、例えばpingがある。
【0043】
なおIP網11の通信品質の判断方法は、上述の方法に限定されない。また、IP網11の通信品質が所定の基準を満たしているかの判断方法は、上述の方法に限定されない。
例えば、上述した往路データ、および復路データによる通信遅延時間の測定の他にも、以下のような方法でも、通信遅延時間が測定されてもよい。通信装置2にパケットを記録しておくジッタバッファが備えられる。このジッタバッファに記録され、音声信号として必要なパケットが300ms以上遅延しているか否かをモニタリングする。パケットロスなどで、300ms以上経過しても所望のパケットが届かない場合は遅延が大きいと判断する。遅延が大きいと判断しなければ、通信品質は所定の基準を満たしていると判断される。遅延が大きいと判断すれば、通信品質は所定の基準を満たしていないと判断される。この他にも、通信装置2のユーザによって入力操作が行われた場合に、IP網11の通信品質が所定の基準を満たしていないと判断されてもよい。
【0044】
IP網11の通信品質が所定の基準を満たしていないと判断された場合、音声信号の伝送路をIP網11からPSTN網12に切り替える必要があると判断される(S23:YES)。通信装置3に対して、音声信号の伝送路をIP網11からPSTN網12に切り替える旨を要求するパケットが、IP網11を介して送信される(S25)。以下、伝送路をIP網11からPSTN網12に切り替える旨を要求するパケットを、切替要求パケットともいう。伝送路の切り替えを許可する旨を通知するパケットを、IP網11を介して通信装置3から受信したかが判断される(S27)。以下、音声信号の伝送路の切り替えを許可する旨を通知するパケットを、切替許可パケットともいう。切替許可パケットが受信されない場合(S27:NO)、通信装置3において伝送路の切り替えが拒否されていることになる。処理はS23に戻る。
【0045】
切替許可パケットが受信された場合(S27:YES)、通信装置3において音声信号の伝送路の切り替えが許可されたことになる。通信装置3との間の電話回線の接続を要求する信号が、PSTN網12を介して通信装置3に対して送信される(S29)。以下、電話回線の接続を要求する信号を、接続要求信号ともいう。通信装置3から、電話回線の接続を許可する旨を通知する信号が受信されたかが判断される(S31)。以下、電話回線の接続を許可する旨を通知する信号を、接続応答信号ともいう。接続応答信号が受信されない場合(S31:NO)、処理はS31に戻る。接続応答信号の受信が継続して監視される。接続応答信号が受信された場合(S31:YES)、通信装置3との間の電話回線が接続されたことになる。PSTN網12を介し、通信装置3との間で通信を行うことが可能な状態となっている。処理はS45に進む。
【0046】
一方、IP網11の通信品質が所定の基準を満たしていると判断されたとする。音声信号の伝送路をIP網11からPSTN網12に切り替える必要がないと判断される(S23:NO)。通信装置3から送信される切替要求パケットを、IP網11を介して受信したかが判断される(S33)。切替要求パケットが受信されない場合(S33:NO)、処理はS23に戻る。
【0047】
切替要求パケットが受信された場合(S33:YES)、通信装置3においてIP網11の通信品質が所定の基準を満たしていないと判断されていることになる。切り替え要求パケットに応じ、音声信号の伝送路の切り替えを許可するか否かが判断される(S35)。音声信号の伝送路の切り替えを許可するか否かは、例えば、ROM22に記憶された許可テーブルに基づいて判断される。許可テーブルには、音声信号の伝送路の切り替えを許可する他の通信装置のIDが記憶されている。切替要求パケットを送信した通信装置3のIDが許可テーブルに記憶されている場合、伝送路の切り替えは許可される。一方、切替要求パケットを送信した通信装置3のIDが許可テーブル記憶されていない場合、伝送路の切り替えは禁止される。伝送路の切り替えが禁止された場合(S35:NO)、処理はS23に戻る。
【0048】
伝送路の切り替えが許可された場合(S35:YES)、切替要求パケットを送信した通信装置3に対して、IP網11を介して切替許可パケットが送信される(S37)。通信装置3から送信される接続要求信号を、PSTN網12を介して受信したかが判断される(S39)。接続要求信号が受信されない場合(S39:NO)、処理はS39に戻る。接続要求信号の受信が継続して監視される。接続要求信号が受信された場合(S39:YES)、電話回線の接続要求に応じてオフフックされる(S41)。接続要求信号を送信した通信装置3に対し、接続応答信号がPSTN網12を介して送信される(S43)。通信装置3との間の電話回線が接続されたことになる。PSTN網12を介し、通信装置3との間で通信を行うことが可能な状態となっている。処理はS45に進む。
【0049】
なお、上述の接続要求信号及び接続応答信号の通信は、PSTN網12に接続した回線交換機を介して実行される。通信装置2は、回線交換機に対して接続要求信号及び接続応答信号を送信する。回線交換機は、通信装置2から受信した接続要求信号及び接続応答信号を、通信装置3に対して転送する。
【0050】
S45では、IP網11を介して実行されている通信(S21参照)と並行して、次の通信が実行される。通話端末5から送信されたアナログ音声信号15が、構内電話網8を介して受信されたとする。受信されたアナログ音声信号15は、PSTN網12を介して通信装置3に対して送信される。通信装置3から送信されたアナログ音声信号15が、PSTN網12を介してアナログ信号16として受信される。
【0051】
なお、PSTN網12を介した通信が開始された後も、IP網11を介した通信は継続される。IP網11を介して通信装置3から受信されたデジタル音声信号14は、アナログ音声信号18に変換され、構内電話網8を介して通話端末5に対して送信される。通話端末5では、通信装置2から受信されたアナログ音声信号18に基づいて、スピーカ35から音声が出力される。S45では、PSTN網12を介して通信装置3から受信されたアナログ音声信号16は、通話端末5に対して送信されない。
【0052】
S45でPSTN網12を介した通信が開始された場合、図7に示すように、IP網11を介して受信されたデジタル音声信号14を、RAM23に割り当てられた第一記憶領域231(図9参照)に記憶する処理が開始される(S51)。以下、IP網11を介して受信されたデジタル音声信号14、及び、このデジタル音声信号14が変換されたアナログ音声信号18を、第一音声信号ともいう。第一記憶領域231への第一音声信号の記憶は、次のようにして実行される。第一音声信号がIP網11を介して受信された場合、受信された第一音声信号の振幅が取得される。取得された振幅と、所定の閾値(Th、図9参照)とが比較される。取得された振幅がThよりも小さい場合、第一音声信号は第一記憶領域231に記憶されない。一方、取得された振幅がThよりも大きくなった場合、振幅がThよりも大きくなった時点から所定時間(S時間、図9参照)内に受信された第一音声信号が、第一記憶領域231に記憶される。例えば、振幅がThよりも大きくなった時点から100ms内に受信された第一音声信号が、第一記憶領域231に記憶される。尚、図9では、経過時間を横軸に示し、振幅を縦軸に示す。
【0053】
なお、第一音声信号を第一記憶領域231に記憶する方法は、上述の方法に限定されない。例えば、第一音声信号はすべて第一記憶領域231に記憶されてもよい。記憶された第一音声信号から所定時間分が順番に切り出され、第二記憶領域に記憶された第二音声信号と比較されてもよい。
【0054】
PSTN網12を介して受信されたアナログ音声信号16は、デジタル音声信号に変換される。以下、PSTN網12を介して受信されたアナログ音声信号16、及び、アナログ音声信号16が変換されたデジタル音声信号を、第二音声信号ともいう。第二音声信号を、RAM23に割り当てられた第二記憶領域232(図9参照)に記憶する処理が開始される(S53)。第二記憶領域232には、所定時間(T時間、図9参照)分の第二音声信号が記憶される。例えば第二記憶領域232には、500ms分の第二音声信号が記憶される。
【0055】
第一記憶領域231に記憶された第一音声信号と、第二記憶領域232に記憶された第二音声信号とが比較される。第二音声信号のうち、第一音声信号と類似する部分が検索される(S55)。これによって、第一音声信号と同一の音声に帰属する部分が、第二記憶領域232に記憶された第二音声信号から特定される。類似する部分の特定は、例えば以下のようにして実行される。
【0056】
図9では、第一記憶領域231及び第二記憶領域232に記憶された音声信号が示されている。第一記憶領域231には、第一音声信号41が記憶されている。第一音声信号41は、振幅がTh以上となった時点Pから、S時間内に受信されたデジタル音声信号14である。第二記憶領域232には、第二音声信号42が記憶されている。第二音声信号42は、第一音声信号41がすべて第一記憶領域231に記憶された時点で、第二記憶領域232に記憶されているT時間分のデジタル音声信号である。
【0057】
第二記憶領域232に記憶された第二音声信号42が、S時間分抽出される。抽出される領域は、第二音声信号42の受信時間が新しい側から古い側(図中矢印54の方向)に向けて、所定時間ずつ移動される(領域51、52、53、・・・)。移動後の領域に基づいて、S時間分の抽出が繰り返し実行される。第二音声信号42は、受信された時間の新しい順に抽出されることになる。抽出された第二音声信号42と、第一音声信号41とが比較される。これによって、音声信号が相互に類似するか否かが判断される。音声信号が類似するか否かを判断する手法として、周知の方法を使用することができる。例えば相互相関関数が用いられる。第一音声信号41と、抽出された第二音声信号42との相関関係が、相互相関関数によって算出される。相関関係が最も大きくなった場合に、第一音声信号41と、抽出された第二音声信号42とが類似すると判断される。抽出された第二音声信号42が、第一音声信号41に類似する部分として特定される。図9では、実線にて示した領域55によって抽出された第二音声信号42が、第一音声信号41に類似すると判断される。第二音声信号42のうち領域55内の部分が、第一音声信号41と同一の音声に帰属する部分であると特定される。
【0058】
IP網11を介して通信が行われる場合の通信遅延時間は、PSTN網12を介して通信が行われる場合の通信遅延時間と比較して大きくなる。デジタル音声信号13及びアナログ音声信号15が通信装置3から同時に送信された場合、PSTN網12を介して伝送されるアナログ音声信号15よりも、IP網11を介して伝送されるデジタル音声信号13の方が遅れて通信装置2に到達する。PSTN網12を介して通信が行われる場合、電話回線を接続することによって一定の伝送帯域が確保されるので、良好な環境で通信が行われるためである。この他にも、パケットロス、回線ロス、ジッタバッファーロスなどの各種デジタル処理に要する時間が多いことも、PSTN網12を介して伝送されるアナログ音声信号15より、IP網11を介して伝送されるデジタル音声信号13の方が遅れて通信装置2に到達する理由である。従って通信装置2では、図9に示すように、第一音声信号41と類似する部分を、第一音声信号41が受信された時点よりも過去に受信された第二音声信号42から検索している。第二記憶領域232に記憶された第二音声信号42の中には、第一音声信号41に類似する部分が含まれている可能性が高い。従って通信装置2は、第一音声信号41に類似する部分を、第二音声信号42の中から確実に検索することができる。
【0059】
例えば、IP網11を介して通信が行われる場合、PSTN網12を介して通信が行われる場合と比較して、最大500msの通信遅延が発生する可能性がある。従って通信装置2は、第二音声信号42を記憶する記憶領域を500ms分第二記憶領域232に確保すればよい。これによって通信装置2は、第一音声信号41に類似する部分を、第二音声信号42の中から確実に検索することができることになる。
【0060】
また第二音声信号42は、通信環境の良好なPSTN網12を介した通信によって受信されているので、第二音声信号42から導かれる波形は、乱れや歪が小さい。従って通信装置2は、第二音声信号42のうち第一音声信号41に類似する部分を、正確に特定することができる。
【0061】
図7に示すように、第一音声信号41と、抽出された第二音声信号42とが比較され、双方が類似するかが判断される(S57)。類似しないと判断された場合(S57:NO)、処理はS55に戻る。抽出される領域が順次更新される。第一音声信号41と、切り出された第二音声信号42とを比較する処理が繰り返される。
【0062】
一方、第一音声信号41と、切り出された第二音声信号42とが類似すると判断された場合(S57:YES)、双方は、同一の音声に帰属する音声信号であることになる。第一音声信号41と、抽出された第二音声信号42とが対応付けられる(S59)。対応関係にある振幅が比較される(S61)。アナログ音声信号15がPSTN網12を伝送した場合に減衰する減衰率が算出される。算出された減衰率の逆数が、増幅率として決定される(S63)。以上のように、同一の音声に帰属する音声信号が比較されることで、増幅率が決定される。従って、実際にユーザから発せられた音声の周波数帯域で最適な増幅率が決定される。減衰率及び増幅率は、具体的には以下のようにして算出される。
【0063】
第一音声信号41の振幅の二乗平均値が算出される。以下、第一音声信号41に基づいて算出された二乗平均値を、第一平均値ともいう。切り出された第二音声信号42の振幅の二乗平均値が算出される。以下、切り出された第二音声信号42に基づいて算出された二乗平均値を、第二平均値ともいう。第二平均値は、第一平均値によって除算される。除算結果が、減衰率に相当する。算出された減衰率の逆数が算出される。算出された値が、増幅率として決定される。
【0064】
算出された増幅率で第二音声信号42が増幅された場合、増幅された第二音声信号42における振幅の二乗平均値は、第一音声信号41の振幅の二乗平均値と近似する。第一音声信号41の振幅と、増幅された第二音声信号42の振幅とは同一となる。従って上述の算出方法を採用することによって、第二音声信号42の増幅率を容易に決定することができるので、CPU21の処理負荷を軽減することができる。
【0065】
減衰率及び増幅率は、以下のように算出されてもよい。第一音声信号41のうち、振幅の最大値及び最小値が抽出される。最大値から最小値が減算され、ピークピーク値が算出される。以下、第一音声信号41に基づいて算出されたピークピーク値を、第一ピークピーク値ともいう。抽出された第二音声信号42のうち、振幅の最大値及び最小値が抽出される。最大値から最小値が減算され、ピークピーク値が算出される。以下、切り出された第二音声信号42に基づいて算出されたピークピーク値を、第二ピークピーク値ともいう。第二ピークピーク値は、第一ピークピーク値によって除算される。除算結果が、減衰率に相当する。算出された減衰率の逆数が算出される。算出された値が、増幅率として決定される。
【0066】
算出された増幅率で第二音声信号42が増幅された場合、増幅された第二音声信号42における振幅の最大値と最小値の差分は、第一音声信号41における振幅の最大値と最小値の差分と近似する。第一音声信号41の振幅と、増幅された第二音声信号42の振幅とは同一となる。従って上述の算出方法を採用することによって、通信装置2は、第二音声信号42の増幅率を容易に決定することができるので、CPU21の処理負荷を軽減することができる。
【0067】
上述のようにして決定された増幅率で、第二音声信号42が増幅される(S65)。この時点では、第一音声信号41が構内電話網8を介して通話端末5に対して送信されている(S21(図6参照))。増幅された第二音声信号42が構内電話網8を介して通話端末5に対して送信され、通話端末5に対する第一音声信号41の送信は中止される(S65)。
【0068】
通話端末5では、通信装置2から受信された第二音声信号42に基づいてスピーカ35から音声が出力される。第一音声信号41の振幅と、S65で増幅された第二音声信号42の振幅とは同一となっている。従って、通話端末7に対して送信される音声信号が切り替えられた場合でも、スピーカ35から出力される音声の音量の変動は小さい。ユーザは、出力される音声を違和感なく継続して聞くことができる。また、IP網11の通信品質が悪化した場合であっても、IP網11の代わりにPSTN網12を介して音声信号の通信を行うことによって、通信装置4間の通信を円滑に実行することができる。
【0069】
通信装置3との間で確立されたセッションを切断するための処理が実行される。S13(図6参照)で通信装置3に対して確立要求パケットを送信したかが判断される(S67)。確立要求パケットを送信していない場合(S67:NO)、通信装置3との間のセッションの切断を要求するパケットが、通信装置3に対して送信される(S71)。以下、セッションの切断を要求するパケットを、切断要求パケットともいう。通信装置3との間のセッションは切断される(S73)。処理はS81(図8参照)に進む。一方、S13で通信装置3に対して確立要求パケットを送信している場合(S67:YES)、通信装置3から送信される切断要求パケットを受信したかが判断される(S69)。切断要求パケットが受信されない場合(S69:NO)、処理はS69に戻る。通信装置3から切断要求パケットが受信された場合(S69:YES)、通信装置3との間のセッションは切断される(S73)。処理はS81(図8参照)に進む。
【0070】
以上のように通信装置2は、増幅された第二音声信号42を通話端末5に対して出力する処理を開始した場合、通信装置3との間のセッションを切断することによって、IP網11を介した通信を中止する。これによって通信装置2は、IP網11に不要な通信負荷をかけてしまうことを防止することができる。また通信装置2は、IP網11を介した通信処理が不要となるので、CPU21の処理負荷を軽減することができる。
【0071】
図8に示すように、通話端末6との通信を終了させる指示が、構内電話網8を介して通話端末5から受け付けられたか判断される(S81)。通話端末6との通信を終了させる指示が受け付けられた場合(S81:YES)、通信装置3との間で接続された状態の電話回線を切断させるために、オンフックされる(S83)。電話回線の切断を要求する信号が、PSTN網12を介して通信装置3に対して送信される(S85)。以下、電話回線の切断を要求する信号を、切断要求信号ともいう。通信装置3との間の電話回線は切断される(S87)。メイン処理は終了する。
【0072】
通話端末6との通信を終了させる指示が受け付けられていない場合(S81:NO)、通信装置3から、PSTN網12を介して切断要求信号を受信したかが判断される(S89)。切断要求信号が受信されていない場合(S89:NO)、処理はS81に戻る。通信装置3から送信された切断要求信号が受信された場合(S89:YES)、通信装置3との間の電話回線は切断される(S87)。メイン処理は終了する。
【0073】
以上説明したように、通信装置2は、IP網11を介して受信した第一音声信号41の振幅と、PSTN網12を介して受信した第二音声の振幅とに基づいて、第二音声信号42の増幅率を決定することができる。通信装置2は、決定された増幅率で第二音声信号42を増幅することによって、第一音声信号41の振幅と第二音声信号42の振幅とを近似させることができる。このため、伝送路がIP網11からPSTN網12に切り替えられ、通話端末5に対して送信される音声信号が第一音声信号41から第二音声信号42に切り替えられた場合でも、通話端末5のスピーカ35から出力される音声の音量の変動を小さくできる。ユーザは、スピーカ35から出力される音声を違和感なく継続して聞くことができる。
【0074】
また通信装置2は、第二音声信号42のうち、第一音声信号41と同一の音声に帰属する部分を特定する。通信装置2は、特定された部分の振幅を比較することによって、第二音声信号42の増幅率を決定することができる。実際にユーザから発せられる周波数帯域の音声に基づいて増幅率を決定することができるので、通話端末5のスピーカ35から出力される音声の音量の変動を、より小さくできる。
【0075】
なお図6〜図9では、通信装置2のCPU21のメイン処理を説明したが、通信装置3のCPU21も同様のメイン処理を行う。
【0076】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。以下、本発明の変形例(第一変形例及び第二変形例)について説明する。
【0077】
<第一変形例>
第一変形例について説明する。第一変形例では、確立要求パケットを受信した側の通信装置4において、増幅率が決定される。決定された増幅率は、確立要求パケットを送信した側の通信装置4に対して通知される。増幅率が通知された通信装置4は、通知された増幅率に基づいて、PSTN網12を介して受信された第二音声信号42を増幅する。図10を参照し、第一変形例におけるメイン処理について説明する。以下、通信装置2のCPU21のメイン処理を例に挙げて説明する。S11−S45(図6参照)、及び、S81−S87(図8参照)の処理は、上述の実施形態と同一であるため、説明を省略している。また、図10のうち上述の実施形態と同一の処理については、同一符号を付し、説明を省略又は簡略化している。
【0078】
S11−S45(図6参照)の処理が実行されることによって、通信装置2は、IP網11及びPSTN網12を介して音声信号の通信を行うことが可能となっている。S13(図6参照)で、通信装置3に対して確立要求パケットを送信したかが判断される(S101)。確立要求パケットを送信していない場合(S101:NO)、通信装置3から確立要求パケットを受信することによって、通信装置3との間のセッションは確立している。上述の実施形態と同一の方法で、第二音声信号42の増幅率が決定される(S51−S63)。決定された増幅率を通知するためのパケットが、IP網11を介して通信装置3に対して送信される(S103)。以下、増幅率を通知するためのパケットを、通知パケットともいう。
【0079】
決定された増幅率で、PSTN網12を介して通信装置3から受信された第二音声信号42が増幅される(S65)。増幅された第二音声信号42は、第一音声信号41の代わりに、構内電話網8を介して通話端末5に対して送信される(S65)。増幅された第二音声信号42の振幅は、第一音声信号41の振幅と同一である。このため、通話端末5のスピーカ35から出力される音声は、通話端末5に対して送信される音声信号が切り替わる前後で変化しない。通信装置3に対して、IP網11を介して切断要求パケットが送信される(S105)。通信装置3との間のセッションは切断される(S73)。処理はS81(図8参照)に進む。
【0080】
一方、S13(図6参照)で通信装置3に対して確立要求パケットを送信していた場合(S101:YES)、通信装置3から送信される通知パケットを受信したかが判断される(S107)。通知パケットが受信されていない場合(S107:NO)、処理はS107に戻る。通知パケットの受信が継続して監視される。通信装置3から通知パケットが受信された場合(S107:YES)、受信された通知パケットから、増幅率が取得される。取得された増幅率で、PSTN網12を介して通信装置3から受信された第二音声信号42が増幅される(S109)。増幅された第二音声信号42は、第一音声信号41の代わりに、構内電話網8を介して通話端末5に対して送信される(S109)。増幅された第二音声信号42の振幅は、第一音声信号41の振幅と同一である。このため、通話端末5のスピーカ35から出力される音声は、通話端末5に対して送信される音声信号が切り替わる前後で変化しない。
【0081】
通信装置3から送信される切断要求パケットを、IP網11を介して受信したかが判断される(S111)。切断要求パケットが受信されない場合(S111:NO)、処理はS111に戻る。通信装置3から送信された切断要求パケットが受信された場合(S111:YES)、通信装置3との間のセッションは切断される(S73)。処理はS81(図8参照)に進む。
【0082】
以上説明したように、第一変形例では、通信装置2は、通信装置3から送信される通知パケットを受信することによって、増幅率を取得することができる。通信装置2は、取得された増幅率に基づいて第二音声信号42を増幅し、構内電話網8を介して通話端末5に対して出力することができる。これによって、通話端末5のスピーカ35から出力される音声の音量変化を小さくすることができる。増幅率の通知を受ける側の通信装置4は、増幅率を決定するための処理が不要となるので、CPU21の処理負荷を軽減することができる。
【0083】
<第二変形例>
第二変形例について説明する。第二変形例では、確立要求パケットを受信した側の通信装置4において、増幅率が決定される。PSTN網11を介して他の通信装置4に対してアナログ音声信号15を送信する場合、送信されるアナログ音声信号15は、決定された増幅率に基づいて予め増幅される。増幅されたアナログ音声信号15が、PSTN網12を介して他の通信装置4に対して送信されることになる。確立要求パケットを受信した側の通信装置4は、PSTN網12を介して受信されたアナログ音声信号16を増幅することなく、そのまま通話端末7に対して送信することができる。図11を参照し、第二変形例におけるメイン処理について説明する。以下、通信装置2のCPU21のメイン処理を例に挙げて説明する。S11−S45(図6参照)、及び、S81−S87(図8参照)の処理は、上述の実施形態と同一であるため、説明を省略している。また、図11のうち上述の実施形態及び第一変形例と同一の処理については、同一符号を付し、説明を省略又は簡略化している。
【0084】
S11−S45(図6参照)の処理が実行されることによって、IP網11及びPSTN網12を介して音声信号の通信を行うことが可能となっている。S13(図6参照)で、通信装置3に対して確立要求パケットを送信したかが判断される(S101)。確立要求パケットを送信していない場合(S101:NO)、通信装置3から確立要求パケットを受信することによって、通信装置3との間のセッションは確立している。上述の実施形態と同一の方法で、第二音声信号42の増幅率が決定される(S51−63)。決定された増幅率で、PSTN網12を介して受信された第二音声信号42が増幅される(S65)。増幅された第二音声信号42は、構内電話網8を介して通話端末5に対して送信される(S65)。
【0085】
構内電話網8を介し、通話端末5から送信されたアナログ音声信号15が受信される。受信されたアナログ音声信号15は、S63で決定された増幅率に基づいて増幅される。増幅されたアナログ音声信号15が、PSTN網12を介して通信装置3に対して送信される(S121)。通信装置3に対して、IP網11を介して切断要求パケットが送信される(S105)。通信装置3との間のセッションは切断される(S73)。処理はS81(図8参照)に進む。
【0086】
一方、S13(図6参照)で通信装置3に対して確立要求パケットを送信していた場合(S101:YES)、通信装置3から受信されたアナログ音声信号16は、増幅されることなくそのまま構内電話網8を介して通話端末7に対して送信される(S123)。受信されたアナログ音声信号16の振幅は、通信装置3から送信される際に、増幅率に基づいて増幅されている(S121参照)。このため、受信されたアナログ音声信号16の振幅は、デジタル音声信号14の振幅と同一となっている。従って、通話端末5のスピーカ35から出力される音声は、通話端末5に対して送信される音声信号が、アナログ音声信号18からアナログ音声信号16に切り替わる前後で変化しない。
【0087】
通信装置3から送信される切断要求パケットを、IP網11を介して受信したかが判断される(S113)。切断要求パケットが受信されない場合(S113:NO)、処理はS113に戻る。通信装置3から切断要求パケットが受信された場合(S113:YES)、通信装置3との間のセッションは切断される(S73)。
【0088】
以上説明したように、第二変形例では、通信装置2は、PSTN網12を介して通信装置3に対して送信するアナログ音声信号15を、決定された増幅率に基づいて増幅する。PSTN網12を介して通信装置3に到達するアナログ音声信号16の振幅は、デジタル音声信号14の振幅と同一となる。このため通信装置3は、受信したアナログ音声信号16を増減することなく、そのまま出力することができる。これによって、通信装置3の処理負荷を軽減させることができる。
【0089】
上述では、アナログ音声信号15がPSTN網12を伝送した場合の伝送損失による減衰を補完するために、増幅率を決定していた。通信装置2では減衰率が決定されてもよい。例えば以下のような場合、減衰率が決定される。
【0090】
通信遅延の大きいIP網11を介して通信が行われる場合、PSTN網12を介して通信が行われる場合と比較して、エコーの影響が大きくなる。このため通信装置3は、エコーの影響を小さくするために、IP網11を介して通信装置2に対して送信するデジタル音声信号13の振幅を、PSTN網12を介して通信装置2に対して送信するアナログ音声信号15の振幅よりも小さくする場合がある。従って、第一音声信号41の振幅と比較して第二音声信号42の振幅が大きくなる場合がある。このような場合、通信装置2は、第二音声信号の減衰率を決定する。第二音声信号は、決定された減衰率によって減衰される。減衰された第二音声信号の振幅と、第一音声信号41の振幅とは同一となる。これによって、通話端末5のスピーカ35から出力される音声の変化は小さくなる。
【0091】
上述では、通信装置4と通話端末7とが構内電話網によって接続されていた。通信装置4と通話端末7とは、IP網によって接続されてもよい。通話端末7は、マイク36を介して取得した音声信号をデジタル音声信号に変換し、IP網を介して通信装置4に対して送信してもよい。通信装置4は、通話端末7から受信したデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換し、PSTN12を介して他の通信装置4に対して送信してもよい。通信装置4は、PSTN網12を介して受信したアナログ音声信号16をデジタル音声信号に変換し、IP網を介して通話端末に対して送信してもよい。
【0092】
上述では、第一音声信号41の振幅と第二音声信号42の振幅とを比較することによって、増幅率を決定していた。比較対象は振幅に限定されない。例えば、第一音声信号41及び第二音声信号42において、音量を示すパラメータが別途設けられている場合には、このパラメータを比較することによって、増幅率を決定してもよい。
【0093】
上述では、IP網11の通信品質が所定の基準を満たしていない場合に、伝送路をIP網11からPSTN網12に切り替えていた。通信装置4は、IP網11の通信品質が改善し、所定の基準を満たすこととなった場合、伝送路をPSTN網12からIP網11に切り替えてもよい。
【0094】
通信装置4は、複数の電話番号を備えており、複数の電話回線を介して他の通信装置4と通信を行うことが可能であってもよい。この場合、例えば一の電話回線が使用不可能である場合、他の電話回線を使用して通信が行われてもよい。
【0095】
上述では、第二音声信号42は、決定された増幅率、または減衰率によって増幅または減衰され、増幅、または減衰された第二音声信号42の振幅と、第一音声信号41の振幅とが同一となるようにしたが、これに限られない。第二音声信号42は、決定された増幅率、または減衰率によって増幅、減衰されればよい。増幅、または減衰された第二音声信号42の振幅と、第一音声信号41の振幅とは、完全に同一となる必要は無い。例えば、第二音声信号42の振幅と第一音声信号41の振幅との差が小さくなるように、第二音声信号42が増幅、または減衰されればよい。
【0096】
上述では、通信装置2は、アナログ音声信号15がPSTN網12を伝送することによって減衰した場合の減衰率を特定するとしたが、これに限られない。IP網11を介して通信装置2が通信している場合に、ユーザは、通信端末5に備えられたボタンなどの操作手段により、スピーカ35から出力される音量を調整することが考えられる。この場合、通信装置2のCPU21は、S65(図7参照)において、アナログ音声信号15がPSTN網12を伝送することによって増減した場合の増減率、および音量の調整情報から増減率を決定してもよい。次に増幅された第二音声信号42が通話端末5に対して送信されてもよい。具体的には、IP網11を介して通話端末5が通話している場合に、通信装置2は、通話端末5から音量の調整情報を取得する。通信装置2は、アナログ音声信号15がPSTN網12を伝送する場合の増減率を決定する。この決定された増減率は、取得された調整情報によって調整される。調整された増減率によって、第二音声信号42は増減される。通信装置2は、最終的に増減された第二音声信号42を通話端末5に対して送信する。これにより、ユーザがIP網11を介して通話している時のスピーカ35から出力される音量を調整した場合においても、通話端末5のスピーカ35から出力される音声の変化は小さくなる。
【0097】
なお、S21の処理を行うCPU21が本発明の「第一通信手段」に相当する。S23の処理を行うCPU21が本発明の「判断手段」に相当する。S45の処理を行うCPU21が本発明の「第二通信手段」に相当する。S63の処理を行うCPU21が本発明の「決定手段」に相当する。S65の処理を行うCPU21が本発明の「第一出力手段」に相当する。S55、57、59の処理を行うCPU21が本発明の「特定手段」に相当する。S73の処理を行うCPU21が本発明の「中止手段」に相当する。S103の処理を行うCPU21が本発明の「通知手段」に相当する。S123の処理を行うCPU21が本発明の「第二出力手段」に相当する。S21の処理が本発明の「第一通信ステップ」に相当する。S23の処理が本発明の「判断ステップ」に相当する。S45の処理が本発明の「第二通信ステップ」に相当する。S63の処理が本発明の「決定ステップ」に相当する。S65の処理が本発明の「第一出力ステップ」に相当する。
【符号の説明】
【0098】
1 通信システム
2、3、4 通信装置
5、6、7 通話端末
8、9 構内電話網
11 IP網
12 PSTN網
21 CPU
35 スピーカ
【技術分野】
【0001】
本発明は、通話音声の音量を調整する通信装置、通信方法、及び通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
IP網及びPSTN網の双方に接続可能な通信装置が知られている。例えば特許文献1に記載された通信装置は、IP網及びPSTN網のいずれかを介して、他の通信装置との間で通信する。通信装置がPSTN網を介して通信する場合、音声はアナログ信号のままPSTN網を伝送する。一方、通信装置がIP網を介して通信する場合、音声はデジタル信号に変換されてIP網を伝送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−165967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信装置がPSTN網を介して通信する場合、送信側の通信装置から送信されたアナログ信号がPSTN網を伝送する過程において減衰し、受信側の通信装置に到達する恐れがある。この結果、受信側の通信装置から出力される音声の音量が減衰する。一方、通信装置がIP網を介して通信する場合、音声はデジタル信号に変換されているので、IP網を伝送する過程において音量は減衰しない。この結果、受信側の通信装置から出力される音声の音量は減衰しない。
【0005】
IP網及びPSTN網の双方に接続可能な通信装置において、通話の途中にIP網からPSTN網に伝送路が切り替えられることが考えられる。この場合、送信側の音声の音量が同じであっても、伝送路が切替えられた場合に、受信側の通信装置から出力される音声の音量が減衰する恐れがある。この音量の減衰により、受信側の通信装置のユーザに音量の減衰よる違和感を与える恐れがあった。
【0006】
本発明の目的は、音声の音量を調整することができる通信装置、通信方法、及び通信プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一態様に係る通信装置は、IP網及びPSTN網の双方に接続可能な通信装置であって、前記IP網を介して、他の通信装置との間で音声信号をデジタル信号として通信する第一通信手段と、前記PSTN網を介して前記音声信号を通信するか否かを、前記IP網の通信状態に基づき判断する判断手段と、前記判断手段において、前記PSTN網を介して通信すると判断された場合に、前記PSTN網を介して、前記他の通信装置との間で前記音声信号をアナログ信号として通信する第二通信手段と、前記第一通信手段により前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第一音声信号の音量と、前記第二通信手段により前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第二音声信号の音量とに基づいて、前記第二音声信号の増減率を決定する決定手段と、前記決定手段によって決定された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力する第一出力手段とを備えている。
【0008】
第一態様によれば、通信装置は、IP網を介して受信した第一音声信号の音量と、PSTN網を介して受信した第二音声の音量とに基づいて、第二音声信号の増減率を決定することができる。音声の音量に基づいて増減率が決定されるため、音声の周波数帯域で最適な増減率を決定することができる。このため、ユーザは、伝送路がIP網からPSTN網に切り替わった場合でも、出力される音声を違和感なく継続して聞くことができる。
【0009】
また第一態様において、前記第一音声信号及び前記第二音声信号のうち、同一音声に帰属する部分を特定する特定手段を備え、前記決定手段は、前記特定手段において特定された部分の音量を比較することによって、前記第二音声信号の増減率を決定してもよい。これによって通信装置は、第一音声信号及び第二音声信号のうち、同一の音声に帰属する部分の音量を比較することができる。これによって、第二音声信号を適切に増減する増減率を決定することができる。これによって、ユーザは、伝送路がIP網からPSTN網に切り替わった場合でも、出力される音声をさらに違和感なく継続して聞くことができる。
【0010】
また第一態様において、前記特定手段は、前記第一音声信号のうち所定部分の音声に帰属する部分を前記第二音声信号から検索することによって、同一音声に帰属する部分を特定してもよい。IP網を介して到達する第一音声信号は、PSTN網を介して到達する第二音声信号よりも通信遅延が大きいため、第一音声信号は第二音声信号よりも遅れて通信装置に到達する。従って、第一音声信号のうち所定部分の音声に帰属する部分を、既に受信された状態の第二音声信号から検索することによって、通信装置は、同一音声に帰属する部分を確実に特定することができる。また第二音声信号は、PSTN網を介して伝送するため、波形の乱れが小さい。従って通信装置は、同一音声に帰属する部分を正確に特定することができる。
【0011】
また第一態様において、前記第一出力手段において、増減された前記第二音声信号が出力された後、前記第一通信手段における前記IP網を介した通信を中止する中止手段を備えていてもよい。通信装置は、音声の通信を、IP網からPSTN網に切り替えることができる。IP網からPSTN網に切り替えた後、IP網を介した通信を中止することによって、IP網に不要な通信負荷をかけてしまうことを防止することができる。また、IP網を介した通信処理が不要となるので、通信装置は処理負荷を軽減することができる。
【0012】
また第一態様において、前記決定手段において決定された前記増減率を、前記他の通信装置に対して通知する通知手段を備え、前記第一出力手段は、前記他の通信装置から前記増減率が通知された場合に、通知された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力してもよい。これによって通信装置は、増減率を決定するための処理が不要となるので、処理負荷を軽減することができる。
【0013】
また第一態様において、前記第二通信手段は、前記PSTN網を介して前記他の通信装置と通信を行う場合に、前記決定手段によって決定された前記増減率で前記音声信号を増減し、増減された前記音声信号を前記他の通信装置に対して送信し、増減された前記音声信号を前記他の通信装置から受信した場合に、受信された前記音声信号を出力する第二出力手段を更に備えていてもよい。このため他の通信装置は、受信した第二音声を増減することなく、そのまま出力することができる。これによって、他の通信装置の処理負荷を軽減させることができる。
【0014】
また第一態様において、前記判断手段は、前記IP網の通信品質が所定の基準を満たしていない場合に、前記PSTN網を介して通信すると判断してもよい。PSTN網を介して音声の通信が行われるので、音声の通信遅延は小さくなる。通信装置は、IP網の通信品質が悪化した場合であっても、IP網の代わりにPSTN網を介して通信することによって、通信装置間の通信を円滑に実行することができる。
【0015】
本発明の第二態様に係る通信方法は、IP網を介して、他の通信装置との間で音声信号をデジタル信号として通信する第一通信ステップと、PSTN網を介して前記音声信号を通信するか否かを、前記IP網の通信状態に基づき判断する判断ステップと、前記判断ステップにおいて、前記PSTN網を介して通信すると判断された場合に、前記PSTN網を介して、前記他の通信装置との間で前記音声信号をアナログ信号として通信する第二通信ステップと、前記第一通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第一音声信号の音量と、前記第二通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第二音声信号の音量とに基づいて、前記第二音声信号の増減率を決定する決定ステップと、前記決定ステップによって決定された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力する第一出力ステップとを備えている。第二態様によれば、第一態様と同様の効果を奏することができる。
【0016】
本発明の第三態様に係る通信プログラムは、IP網を介して、他の通信装置との間で音声信号をデジタル信号として通信する第一通信ステップと、PSTN網を介して前記音声信号を通信するか否かを、前記IP網の通信状態に基づき判断する判断ステップと、前記判断ステップにおいて、前記PSTN網を介して通信すると判断された場合に、前記PSTN網を介して、前記他の通信装置との間で前記音声信号をアナログ信号として通信する第二通信ステップと、前記第一通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第一音声信号の音量と、前記第二通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第二音声信号の音量とに基づいて、前記第二音声信号の増減率を決定する決定ステップと、前記決定ステップによって決定された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力する第一出力ステップとをコンピュータに実行させる。第三態様によれば、第一態様と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】通信システム1の概要を示す模式図である。
【図2】通信装置4及び通話端末7の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】通信システム1における通信の様子を示す模式図である。
【図4】通信システム1における通信の様子を示す模式図である。
【図5】通信システム1における通信の様子を示す模式図である。
【図6】メイン処理を示すフローチャートである。
【図7】メイン処理を示すフローチャートであって、図6の続きである。
【図8】メイン処理を示すフローチャートであって、図7の続きである。
【図9】第一音声信号41と第二音声信号42とを比較する方法を説明するための図である。
【図10】第一変形例におけるメイン処理を示すフローチャートであって、図6の続きである。
【図11】第二変形例におけるメイン処理を示すフローチャートであって、図6の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。記載されている装置の構成、各種処理のフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0019】
図1を参照して、通信システム1の概要について説明する。通信システム1は、通信装置2、3、及び通話端末5、6を備えている。以下、通信装置2、3を特に区別しない場合、又は総称する場合、通信装置4ともいう。通話端末5、6を特に区別しない場合、又は総称する場合、通話端末7ともいう。通信装置4は、IP網11及び公衆電話交換網12に接続している。以下、公衆電話交換網12を、PSTN網12ともいう。IP網11は、TCP/IPに基づいて通信が行われる通信網である。PSTN網12は、電話回線が交換機によって接続された通信網である。通信装置4は、IP網11及びPSTN網12を介して他の通信装置4と通信を行うことができる。通信装置4として、周知のゲートウェイ、(Private Branch Exchange)PBXなどを使用することができる。
【0020】
通信装置2及び通話端末5は、構内電話網8に接続している。通信装置2及び通話端末5は、構内電話網8を介して通信を行うことができる。通信装置3及び通話端末6は、構内電話網9に接続している。通信装置3及び通話端末6は、構内電話網9を介して通信を行うことができる。通話端末7は、通信装置4を介して他の通話端末7と通信を行うことができる。通話端末7間で通信が行われることによって、通話端末7のユーザは、他の通話端末7のユーザと通話を行うことができる。
【0021】
図2を参照し、通信装置4の電気的構成について説明する。通信装置4は、通信装置4の制御を司るCPU21を備えている。CPU21は、ROM22、RAM23、イーサネット(登録商標)インタフェース(以下、イーサネットI/Fという。)24、Foreign eXchange Station(以下、FXSという。)25、及び、Foreign eXchange Office(以下、FXOという。)26と電気的に接続している。ROM22は、書き換え可能な不揮発性メモリである。ROM22には、ブートプログラム、BIOS、OS、CPU21の制御プログラム等が記憶される。RAM23には、タイマやカウンタ、一時的なデータが記憶される。またRAM23には、第一記憶領域231(図9参照)及び第二記憶領域232(図9参照)が割り当てられる。第一記憶領域231及び第二記憶領域232の詳細は後述する。イーサネットI/F24は、IP網11を介して他の通信装置4と通信を行うためのコントローラである。FXS25は、構内電話網8、9を介して通話端末7と通信を行うためのインタフェースである。FXO26は、PSTN網12を介して他の通信装置4と通信を行うためのインタフェースである。
【0022】
通話端末7の電気的構成について説明する。通話端末7は、通話端末7の制御を司るCPU31を備えている。CPU31は、ROM32、RAM33、FXO34、スピーカ35、及び、マイク36を備えている。ROM23は、書き換え可能な不揮発性メモリである。ROM32には、ブートプログラム、BIOS、OS、CPU31の制御プログラム等が記憶される。RAM23には、タイマやカウンタ、一時的なデータが記憶される。FXO34は、構内電話網8、9を介して通信装置4と通信を行うためのコントローラである。
【0023】
なお通話端末7は、CPU31、ROM32、及びRAM33を備えていなくてもよい。マイク36を介して取得された音声は、増幅された後、そのままFXO34を介して通信装置4に対して送信されてもよい。また、FXO34を介して通信装置4から受信された音声は、増幅された後、そのままスピーカ35から出力されてもよい。
【0024】
図3、4、及び5を参照し、通信システム1において実行される通信の概要について説明する。図3に示すように、通話端末5に設けられたマイク36(図2参照)を介して、ユーザの音声が音声信号として取得される。取得される音声信号はアナログである。以下、アナログの音声信号を、アナログ音声信号ともいう。通話端末5は、取得されたアナログ音声信号15を、構内電話網8を介して通信装置2に送信する。通信装置2は、アナログ音声信号15を受信する。通信装置2は、受信したアナログ音声信号15を量子化することによって、離散値として数値化されたデジタル信号13に変換する。以下、デジタル信号に変換されたアナログ音声信号を、デジタル音声信号ともいう。通信装置2は、IP網11を介して通信装置3に対して、デジタル音声信号13を送信する。
【0025】
通信装置3は、IP網11を介してデジタル音声信号13をデジタル音声信号14として受信する。通信装置3は、受信されたデジタル音声信号14を、アナログ音声信号18に変換する。アナログ音声信号18は、構内電話網9を介して通話端末6に対して送信される。通話端末6は、アナログ音声信号18を受信する。通話端末6において、受信されたアナログ音声信号18に基づいて、スピーカ35(図2参照)から音声が出力される。通話端末6のユーザは、スピーカ35から出力される音声を聞くことで、通話端末5のユーザの発声した音声を認識することができる。
【0026】
デジタル音声信号13は、アナログ音声信号15が離散値として数値化されたものである。このためデジタル音声信号13の振幅は、IP網11を伝送する過程で変化しない。通信装置3において受信されたデジタル音声信号14の振幅は、通信装置2から送信されるデジタル音声信号13の振幅と同一となる。通信装置3においてデジタル音声信号14を変換することによって得られるアナログ音声信号18の振幅は、通信装置2においてデジタル音声信号13に変換される前のアナログ音声信号15の振幅と同一となる。なお、デジタル音声信号13、14及びアナログ音声信号15、18の振幅は、音声の音量に相当する。このため、通話端末6においてスピーカ35から出力される音声の音量は、通話端末5においてマイク36を介して取得された音声の音量と同一となる。
【0027】
IP網11の通信品質が悪化したとする。例えば、IP網11のトラフィックが増大した場合、IP網11の通信品質は悪化する。IP網11の通信品質が悪化すると、IP網11を介して通信が行われた場合の通信遅延は大きくなる。また、通信中のデータがIP網11内で破棄される確率が高くなる。従って、IP網11の通信品質が悪化した状態で、デジタル音声信号の通信がIP網11を介して継続された場合、通話端末7のユーザ間で実行される通話の品質が低下する可能性がある。そこで通信装置2は、IP網11の通信品質の悪化を検出した場合、以下に示す方法で通信を行う。
【0028】
通信装置2においてIP網11の通信品質の悪化が検出された場合、図4に示すように、通信装置2は、IP網11を介したデジタル音声信号の通信を維持しつつ、PSTN網12を介した通信を開始する。通信装置2は、通信装置3との間の電話回線を接続することによってPSTN網12を利用可能な状態とする。通信装置2は、PSTN網12を介してアナログ音声信号15を通信装置3に対して送信する。通信装置3は、IP網11を介してデジタル音声信号14を受信し、且つ、PSTN網12を介してアナログ音声信号15をアナログ音声信号16として受信する。
【0029】
アナログ音声信号15の振幅は、PSTN網12を伝送する過程で、伝送損失により減衰する。通信装置3においてPSTN網12を介して受信されたアナログ音声信号16の振幅は、通信装置2から送信されるアナログ音声信号15の振幅よりも小さくなる。
【0030】
通信装置3は、PSTN網12を介した通信を開始した後も、継続して、IP網11を介して受信されたデジタル音声信号14をアナログ音声信号18に変換して通話端末6に送信する。PSTN網12を介して受信されたアナログ音声信号16は、通話端末6に対して送信されない。通話端末6では、デジタル音声信号14が変換されたアナログ音声信号18に基づいて、スピーカ35から音声が出力される。このため、通話端末6のスピーカ35から出力される音声の音量は、PSTN網12を介した通信の開始前後で変化しない。
【0031】
通信装置3は、PSTN網12を介した通信が開始された場合、IP網11を介して受信されたデジタル音声信号14の振幅と、PSTN網12を介して受信されたアナログ音声信号16の振幅とを比較する。通信装置3は、通信装置2から送信されるアナログ音声信号15がPSTN網12を伝送することによって減衰した場合の減衰率を特定する。通信装置3は、アナログ音声信号15の減衰分を補完するために必要な、アナログ音声信号16の増幅率を算出する。減衰率の逆数が、増幅率として算出される。振幅の比較方法、及び増幅率の算出方法の詳細は後述する。
【0032】
図5に示すように、通信装置3は、算出された増幅率に基づいて、PSTN網12を介して受信したアナログ音声信号16を、アナログ音声信号17に増幅する。増幅されたアナログ音声信号17の振幅は、IP網11を介して受信されたデジタル音声信号14(図4参照)の振幅と同一となる。増幅されたアナログ音声信号17は、デジタル音声信号14から変換されたアナログ音声信号18(図4参照)の代わりに、構内電話網9を介して通話端末6に送信される。IP網11を介したデジタル音声信号の通信は終了される。通話端末6は、受信されたアナログ音声信号17に基づいてスピーカ35から音声が出力される。
【0033】
音声信号の伝送路がIP網11からPSTN網12に切り替えられる前と後で、通信装置3から通話端末6に対して送信されるアナログ音声信号17、18の振幅は変化しない。このため、通話端末6のスピーカ35から出力される音声の音量は、伝送路が切り替えられる前と後で変化しない。通話端末6のスピーカ35から、同一音量の音声が継続して出力される。
【0034】
以上のように通信装置3は、IP網11を介して受信したデジタル音声信号14の振幅と、PSTN網12を介して受信したアナログ音声信号16の振幅とを比較し、アナログ音声信号16の増幅率を算出する。通信装置3は、算出された増幅率で、PSTN網12を介して受信したアナログ音声信号16を増幅する。これによって、デジタル音声信号14の振幅と、増幅されたアナログ音声信号17の振幅とを同一に設定することができる。なお同一とは、ユーザが音量の変化を認識しない程度の振幅の差異を許容するものとする。振幅は厳密に同一でなくともよい。従って、音声信号の伝送路がIP網11からPSTN網12に切り替えられた場合であっても、通話端末6のスピーカ35から出力される音声の音量の変化を小さくできる。通話端末6のユーザは、音声信号の伝送路がIP網11からPSTN網12に切り替えられた場合でも、スピーカ35から出力される音声を違和感なく継続して聞くことができる。
【0035】
図6から図8を参照し、通信装置4のCPU21において実行されるメイン処理について説明する。通信装置4に電源が投入された場合に、メイン処理は実行される。なお以下では、通信装置4がIP網11を介して他の通信装置4に対して送信するデジタル音声信号を総称し、デジタル音声信号13という。通信装置4がIP網11を介して他の通信装置4から受信するデジタル音声信号を総称し、デジタル音声信号14という。構内通信網を介して通話端末7から通信装置4に対して送信されるアナログ音声信号、及び、通信装置4がPSTN網12を介して他の通信装置4に対して送信する場合のアナログ音声信号を総称し、アナログ音声信号15という。通信装置4がPSTN網12を介して他の通信装置4から受信するアナログ音声信号を総称し、アナログ音声信号16という。通信装置4がデジタル音声信号14を変換し、構内電話網を介して通話端末7に送信するアナログ音声信号を総称し、アナログ音声信号18という。通信装置4がアナログ音声信号16を増幅し、構内電話網を介して通話端末7に送信する場合のアナログ音声信号を、アナログ音声信号18という。以下、通信装置2のCPU21のメイン処理を例に挙げて説明する。
【0036】
構内電話網8を介して接続した通話端末5から、通話端末6との通信の開始を要求する信号を受信したかが判断される(S11)。通話端末6との通信の開始を要求する信号が受信された場合(S11:YES)、IP網11を介して通信装置3に対して、セッションの確立を要求するパケットが送信される(S13)。以下、セッションの確立を要求するパケットを、確立要求パケットともいう。確立要求パケットを受信した通信装置3は、セッションの確立を許可する旨を通知するパケットを、IP網11を介して通信装置2に対して送信する。以下、セッションの確立を許可する旨を通知するパケットを、確立応答パケットともいう。確立応答パケットが、IP網11を介して受信される(S15)。通信装置3との間のセッションは確立される。処理はS21に進む。
【0037】
S11で、通話端末6との通信の開始を要求する信号が受信されない場合(S11:NO)、通信装置3から、IP網11を介して確立要求パケットを受信したかが判断される(S17)。確立要求パケットが受信されていない場合(S17:NO)、処理はS11に戻る。確立要求パケットが受信された場合(S17:YES)、IP網11を介して通信装置3に対して、確立応答パケットが送信される(S19)。通信装置3との間のセッションは確立される。処理はS21に進む。
【0038】
なお上述の確立要求パケット及び確立応答パケットは、通信装置3に対して直接送信されなくてもよい。確立要求パケット及び確立応答パケットは、IP網11に接続した呼制御サーバに送信されてもよい。呼制御サーバは、通信装置2から受信した確立パケット及び確立応答パケットを、通信装置3に対して転送してもよい。上述の通信は、Session Initiation Protocol(SIP)に基づいて行われてもよい。
【0039】
S21では、次の処理が実行される。通話端末5から送信されたアナログ音声信号15が、構内電話網8を介して受信されたとする。受信されたアナログ音声信号15は、デジタル音声信号13に変換される。デジタル音声信号13は、IP網11を介して通信装置3に対して送信される。また、IP網11を介して、他の通信装置3から送信されたデジタル音声信号13が、デジタル音声信号14として受信されたとする。受信されたデジタル音声信号14は、アナログ音声信号18に変換される。変換されたアナログ音声信号18は、構内電話網8を介して通話端末5に送信される。
【0040】
通話端末5は、マイク36を介して取得されたアナログ音声信号15を、構内電話網8を介して通信装置2に対して送信する。また通話端末5は、構内電話網8を介して通信装置2からアナログ音声信号18を受信する。受信されたアナログ音声信号18に基づき、スピーカ35の出力が制御される。スピーカ35から音声が出力される。マイク36を介して取得される音声、およびスピーカ35から出力される音声により、通話端末7のユーザ間で通話が行われる。
【0041】
IP網11の通信状態に基づき、音声信号の伝送路をIP網11からPSTN網12に切り替える必要があるかが判断される。すなわち、IP網11の通信品質が所定の基準を満たしているかが判断される。IP網11の通信品質は、例えば、IP網11を介して通信装置3と通信が行われる場合の通信遅延時間に基づいて判断される。通信品質が所定の基準を満たしているか否かは、通信遅延時間と所定の閾値(例えば300ms)とを比較することによって実行される。通信遅延時間が所定の閾値未満である場合、ユーザ間で通話が実行された場合に、遅延の影響はユーザによって認識されない。従って、通信品質は所定の基準を満たしていると判断される。一方、通信遅延が所定の閾値以上である場合、ユーザ間で通話が実行された場合に、遅延の影響によってユーザは違和感を覚える。従って、通信品質は所定の基準を満たしていないと判断される。
【0042】
通信遅延時間は、周知の様々な方法で計測することが可能である。例えば通信装置2は、次のようにして通信遅延時間を計測する。通信装置2は、通信装置3に対してIP網11を介して往路データを送信する。通信装置3は、往路データを受信した場合、通信装置2に対して復路データを返信する。通信装置2は、IP網11を介して復路データを受信する。通信装置2は、往路データを送信してから復路データを受信するまでに要した時間を計測する。計測された時間を二分した値が、通信遅延時間に相当する。この方法によって通信遅延時間を計測するための一般的な方法として、例えばpingがある。
【0043】
なおIP網11の通信品質の判断方法は、上述の方法に限定されない。また、IP網11の通信品質が所定の基準を満たしているかの判断方法は、上述の方法に限定されない。
例えば、上述した往路データ、および復路データによる通信遅延時間の測定の他にも、以下のような方法でも、通信遅延時間が測定されてもよい。通信装置2にパケットを記録しておくジッタバッファが備えられる。このジッタバッファに記録され、音声信号として必要なパケットが300ms以上遅延しているか否かをモニタリングする。パケットロスなどで、300ms以上経過しても所望のパケットが届かない場合は遅延が大きいと判断する。遅延が大きいと判断しなければ、通信品質は所定の基準を満たしていると判断される。遅延が大きいと判断すれば、通信品質は所定の基準を満たしていないと判断される。この他にも、通信装置2のユーザによって入力操作が行われた場合に、IP網11の通信品質が所定の基準を満たしていないと判断されてもよい。
【0044】
IP網11の通信品質が所定の基準を満たしていないと判断された場合、音声信号の伝送路をIP網11からPSTN網12に切り替える必要があると判断される(S23:YES)。通信装置3に対して、音声信号の伝送路をIP網11からPSTN網12に切り替える旨を要求するパケットが、IP網11を介して送信される(S25)。以下、伝送路をIP網11からPSTN網12に切り替える旨を要求するパケットを、切替要求パケットともいう。伝送路の切り替えを許可する旨を通知するパケットを、IP網11を介して通信装置3から受信したかが判断される(S27)。以下、音声信号の伝送路の切り替えを許可する旨を通知するパケットを、切替許可パケットともいう。切替許可パケットが受信されない場合(S27:NO)、通信装置3において伝送路の切り替えが拒否されていることになる。処理はS23に戻る。
【0045】
切替許可パケットが受信された場合(S27:YES)、通信装置3において音声信号の伝送路の切り替えが許可されたことになる。通信装置3との間の電話回線の接続を要求する信号が、PSTN網12を介して通信装置3に対して送信される(S29)。以下、電話回線の接続を要求する信号を、接続要求信号ともいう。通信装置3から、電話回線の接続を許可する旨を通知する信号が受信されたかが判断される(S31)。以下、電話回線の接続を許可する旨を通知する信号を、接続応答信号ともいう。接続応答信号が受信されない場合(S31:NO)、処理はS31に戻る。接続応答信号の受信が継続して監視される。接続応答信号が受信された場合(S31:YES)、通信装置3との間の電話回線が接続されたことになる。PSTN網12を介し、通信装置3との間で通信を行うことが可能な状態となっている。処理はS45に進む。
【0046】
一方、IP網11の通信品質が所定の基準を満たしていると判断されたとする。音声信号の伝送路をIP網11からPSTN網12に切り替える必要がないと判断される(S23:NO)。通信装置3から送信される切替要求パケットを、IP網11を介して受信したかが判断される(S33)。切替要求パケットが受信されない場合(S33:NO)、処理はS23に戻る。
【0047】
切替要求パケットが受信された場合(S33:YES)、通信装置3においてIP網11の通信品質が所定の基準を満たしていないと判断されていることになる。切り替え要求パケットに応じ、音声信号の伝送路の切り替えを許可するか否かが判断される(S35)。音声信号の伝送路の切り替えを許可するか否かは、例えば、ROM22に記憶された許可テーブルに基づいて判断される。許可テーブルには、音声信号の伝送路の切り替えを許可する他の通信装置のIDが記憶されている。切替要求パケットを送信した通信装置3のIDが許可テーブルに記憶されている場合、伝送路の切り替えは許可される。一方、切替要求パケットを送信した通信装置3のIDが許可テーブル記憶されていない場合、伝送路の切り替えは禁止される。伝送路の切り替えが禁止された場合(S35:NO)、処理はS23に戻る。
【0048】
伝送路の切り替えが許可された場合(S35:YES)、切替要求パケットを送信した通信装置3に対して、IP網11を介して切替許可パケットが送信される(S37)。通信装置3から送信される接続要求信号を、PSTN網12を介して受信したかが判断される(S39)。接続要求信号が受信されない場合(S39:NO)、処理はS39に戻る。接続要求信号の受信が継続して監視される。接続要求信号が受信された場合(S39:YES)、電話回線の接続要求に応じてオフフックされる(S41)。接続要求信号を送信した通信装置3に対し、接続応答信号がPSTN網12を介して送信される(S43)。通信装置3との間の電話回線が接続されたことになる。PSTN網12を介し、通信装置3との間で通信を行うことが可能な状態となっている。処理はS45に進む。
【0049】
なお、上述の接続要求信号及び接続応答信号の通信は、PSTN網12に接続した回線交換機を介して実行される。通信装置2は、回線交換機に対して接続要求信号及び接続応答信号を送信する。回線交換機は、通信装置2から受信した接続要求信号及び接続応答信号を、通信装置3に対して転送する。
【0050】
S45では、IP網11を介して実行されている通信(S21参照)と並行して、次の通信が実行される。通話端末5から送信されたアナログ音声信号15が、構内電話網8を介して受信されたとする。受信されたアナログ音声信号15は、PSTN網12を介して通信装置3に対して送信される。通信装置3から送信されたアナログ音声信号15が、PSTN網12を介してアナログ信号16として受信される。
【0051】
なお、PSTN網12を介した通信が開始された後も、IP網11を介した通信は継続される。IP網11を介して通信装置3から受信されたデジタル音声信号14は、アナログ音声信号18に変換され、構内電話網8を介して通話端末5に対して送信される。通話端末5では、通信装置2から受信されたアナログ音声信号18に基づいて、スピーカ35から音声が出力される。S45では、PSTN網12を介して通信装置3から受信されたアナログ音声信号16は、通話端末5に対して送信されない。
【0052】
S45でPSTN網12を介した通信が開始された場合、図7に示すように、IP網11を介して受信されたデジタル音声信号14を、RAM23に割り当てられた第一記憶領域231(図9参照)に記憶する処理が開始される(S51)。以下、IP網11を介して受信されたデジタル音声信号14、及び、このデジタル音声信号14が変換されたアナログ音声信号18を、第一音声信号ともいう。第一記憶領域231への第一音声信号の記憶は、次のようにして実行される。第一音声信号がIP網11を介して受信された場合、受信された第一音声信号の振幅が取得される。取得された振幅と、所定の閾値(Th、図9参照)とが比較される。取得された振幅がThよりも小さい場合、第一音声信号は第一記憶領域231に記憶されない。一方、取得された振幅がThよりも大きくなった場合、振幅がThよりも大きくなった時点から所定時間(S時間、図9参照)内に受信された第一音声信号が、第一記憶領域231に記憶される。例えば、振幅がThよりも大きくなった時点から100ms内に受信された第一音声信号が、第一記憶領域231に記憶される。尚、図9では、経過時間を横軸に示し、振幅を縦軸に示す。
【0053】
なお、第一音声信号を第一記憶領域231に記憶する方法は、上述の方法に限定されない。例えば、第一音声信号はすべて第一記憶領域231に記憶されてもよい。記憶された第一音声信号から所定時間分が順番に切り出され、第二記憶領域に記憶された第二音声信号と比較されてもよい。
【0054】
PSTN網12を介して受信されたアナログ音声信号16は、デジタル音声信号に変換される。以下、PSTN網12を介して受信されたアナログ音声信号16、及び、アナログ音声信号16が変換されたデジタル音声信号を、第二音声信号ともいう。第二音声信号を、RAM23に割り当てられた第二記憶領域232(図9参照)に記憶する処理が開始される(S53)。第二記憶領域232には、所定時間(T時間、図9参照)分の第二音声信号が記憶される。例えば第二記憶領域232には、500ms分の第二音声信号が記憶される。
【0055】
第一記憶領域231に記憶された第一音声信号と、第二記憶領域232に記憶された第二音声信号とが比較される。第二音声信号のうち、第一音声信号と類似する部分が検索される(S55)。これによって、第一音声信号と同一の音声に帰属する部分が、第二記憶領域232に記憶された第二音声信号から特定される。類似する部分の特定は、例えば以下のようにして実行される。
【0056】
図9では、第一記憶領域231及び第二記憶領域232に記憶された音声信号が示されている。第一記憶領域231には、第一音声信号41が記憶されている。第一音声信号41は、振幅がTh以上となった時点Pから、S時間内に受信されたデジタル音声信号14である。第二記憶領域232には、第二音声信号42が記憶されている。第二音声信号42は、第一音声信号41がすべて第一記憶領域231に記憶された時点で、第二記憶領域232に記憶されているT時間分のデジタル音声信号である。
【0057】
第二記憶領域232に記憶された第二音声信号42が、S時間分抽出される。抽出される領域は、第二音声信号42の受信時間が新しい側から古い側(図中矢印54の方向)に向けて、所定時間ずつ移動される(領域51、52、53、・・・)。移動後の領域に基づいて、S時間分の抽出が繰り返し実行される。第二音声信号42は、受信された時間の新しい順に抽出されることになる。抽出された第二音声信号42と、第一音声信号41とが比較される。これによって、音声信号が相互に類似するか否かが判断される。音声信号が類似するか否かを判断する手法として、周知の方法を使用することができる。例えば相互相関関数が用いられる。第一音声信号41と、抽出された第二音声信号42との相関関係が、相互相関関数によって算出される。相関関係が最も大きくなった場合に、第一音声信号41と、抽出された第二音声信号42とが類似すると判断される。抽出された第二音声信号42が、第一音声信号41に類似する部分として特定される。図9では、実線にて示した領域55によって抽出された第二音声信号42が、第一音声信号41に類似すると判断される。第二音声信号42のうち領域55内の部分が、第一音声信号41と同一の音声に帰属する部分であると特定される。
【0058】
IP網11を介して通信が行われる場合の通信遅延時間は、PSTN網12を介して通信が行われる場合の通信遅延時間と比較して大きくなる。デジタル音声信号13及びアナログ音声信号15が通信装置3から同時に送信された場合、PSTN網12を介して伝送されるアナログ音声信号15よりも、IP網11を介して伝送されるデジタル音声信号13の方が遅れて通信装置2に到達する。PSTN網12を介して通信が行われる場合、電話回線を接続することによって一定の伝送帯域が確保されるので、良好な環境で通信が行われるためである。この他にも、パケットロス、回線ロス、ジッタバッファーロスなどの各種デジタル処理に要する時間が多いことも、PSTN網12を介して伝送されるアナログ音声信号15より、IP網11を介して伝送されるデジタル音声信号13の方が遅れて通信装置2に到達する理由である。従って通信装置2では、図9に示すように、第一音声信号41と類似する部分を、第一音声信号41が受信された時点よりも過去に受信された第二音声信号42から検索している。第二記憶領域232に記憶された第二音声信号42の中には、第一音声信号41に類似する部分が含まれている可能性が高い。従って通信装置2は、第一音声信号41に類似する部分を、第二音声信号42の中から確実に検索することができる。
【0059】
例えば、IP網11を介して通信が行われる場合、PSTN網12を介して通信が行われる場合と比較して、最大500msの通信遅延が発生する可能性がある。従って通信装置2は、第二音声信号42を記憶する記憶領域を500ms分第二記憶領域232に確保すればよい。これによって通信装置2は、第一音声信号41に類似する部分を、第二音声信号42の中から確実に検索することができることになる。
【0060】
また第二音声信号42は、通信環境の良好なPSTN網12を介した通信によって受信されているので、第二音声信号42から導かれる波形は、乱れや歪が小さい。従って通信装置2は、第二音声信号42のうち第一音声信号41に類似する部分を、正確に特定することができる。
【0061】
図7に示すように、第一音声信号41と、抽出された第二音声信号42とが比較され、双方が類似するかが判断される(S57)。類似しないと判断された場合(S57:NO)、処理はS55に戻る。抽出される領域が順次更新される。第一音声信号41と、切り出された第二音声信号42とを比較する処理が繰り返される。
【0062】
一方、第一音声信号41と、切り出された第二音声信号42とが類似すると判断された場合(S57:YES)、双方は、同一の音声に帰属する音声信号であることになる。第一音声信号41と、抽出された第二音声信号42とが対応付けられる(S59)。対応関係にある振幅が比較される(S61)。アナログ音声信号15がPSTN網12を伝送した場合に減衰する減衰率が算出される。算出された減衰率の逆数が、増幅率として決定される(S63)。以上のように、同一の音声に帰属する音声信号が比較されることで、増幅率が決定される。従って、実際にユーザから発せられた音声の周波数帯域で最適な増幅率が決定される。減衰率及び増幅率は、具体的には以下のようにして算出される。
【0063】
第一音声信号41の振幅の二乗平均値が算出される。以下、第一音声信号41に基づいて算出された二乗平均値を、第一平均値ともいう。切り出された第二音声信号42の振幅の二乗平均値が算出される。以下、切り出された第二音声信号42に基づいて算出された二乗平均値を、第二平均値ともいう。第二平均値は、第一平均値によって除算される。除算結果が、減衰率に相当する。算出された減衰率の逆数が算出される。算出された値が、増幅率として決定される。
【0064】
算出された増幅率で第二音声信号42が増幅された場合、増幅された第二音声信号42における振幅の二乗平均値は、第一音声信号41の振幅の二乗平均値と近似する。第一音声信号41の振幅と、増幅された第二音声信号42の振幅とは同一となる。従って上述の算出方法を採用することによって、第二音声信号42の増幅率を容易に決定することができるので、CPU21の処理負荷を軽減することができる。
【0065】
減衰率及び増幅率は、以下のように算出されてもよい。第一音声信号41のうち、振幅の最大値及び最小値が抽出される。最大値から最小値が減算され、ピークピーク値が算出される。以下、第一音声信号41に基づいて算出されたピークピーク値を、第一ピークピーク値ともいう。抽出された第二音声信号42のうち、振幅の最大値及び最小値が抽出される。最大値から最小値が減算され、ピークピーク値が算出される。以下、切り出された第二音声信号42に基づいて算出されたピークピーク値を、第二ピークピーク値ともいう。第二ピークピーク値は、第一ピークピーク値によって除算される。除算結果が、減衰率に相当する。算出された減衰率の逆数が算出される。算出された値が、増幅率として決定される。
【0066】
算出された増幅率で第二音声信号42が増幅された場合、増幅された第二音声信号42における振幅の最大値と最小値の差分は、第一音声信号41における振幅の最大値と最小値の差分と近似する。第一音声信号41の振幅と、増幅された第二音声信号42の振幅とは同一となる。従って上述の算出方法を採用することによって、通信装置2は、第二音声信号42の増幅率を容易に決定することができるので、CPU21の処理負荷を軽減することができる。
【0067】
上述のようにして決定された増幅率で、第二音声信号42が増幅される(S65)。この時点では、第一音声信号41が構内電話網8を介して通話端末5に対して送信されている(S21(図6参照))。増幅された第二音声信号42が構内電話網8を介して通話端末5に対して送信され、通話端末5に対する第一音声信号41の送信は中止される(S65)。
【0068】
通話端末5では、通信装置2から受信された第二音声信号42に基づいてスピーカ35から音声が出力される。第一音声信号41の振幅と、S65で増幅された第二音声信号42の振幅とは同一となっている。従って、通話端末7に対して送信される音声信号が切り替えられた場合でも、スピーカ35から出力される音声の音量の変動は小さい。ユーザは、出力される音声を違和感なく継続して聞くことができる。また、IP網11の通信品質が悪化した場合であっても、IP網11の代わりにPSTN網12を介して音声信号の通信を行うことによって、通信装置4間の通信を円滑に実行することができる。
【0069】
通信装置3との間で確立されたセッションを切断するための処理が実行される。S13(図6参照)で通信装置3に対して確立要求パケットを送信したかが判断される(S67)。確立要求パケットを送信していない場合(S67:NO)、通信装置3との間のセッションの切断を要求するパケットが、通信装置3に対して送信される(S71)。以下、セッションの切断を要求するパケットを、切断要求パケットともいう。通信装置3との間のセッションは切断される(S73)。処理はS81(図8参照)に進む。一方、S13で通信装置3に対して確立要求パケットを送信している場合(S67:YES)、通信装置3から送信される切断要求パケットを受信したかが判断される(S69)。切断要求パケットが受信されない場合(S69:NO)、処理はS69に戻る。通信装置3から切断要求パケットが受信された場合(S69:YES)、通信装置3との間のセッションは切断される(S73)。処理はS81(図8参照)に進む。
【0070】
以上のように通信装置2は、増幅された第二音声信号42を通話端末5に対して出力する処理を開始した場合、通信装置3との間のセッションを切断することによって、IP網11を介した通信を中止する。これによって通信装置2は、IP網11に不要な通信負荷をかけてしまうことを防止することができる。また通信装置2は、IP網11を介した通信処理が不要となるので、CPU21の処理負荷を軽減することができる。
【0071】
図8に示すように、通話端末6との通信を終了させる指示が、構内電話網8を介して通話端末5から受け付けられたか判断される(S81)。通話端末6との通信を終了させる指示が受け付けられた場合(S81:YES)、通信装置3との間で接続された状態の電話回線を切断させるために、オンフックされる(S83)。電話回線の切断を要求する信号が、PSTN網12を介して通信装置3に対して送信される(S85)。以下、電話回線の切断を要求する信号を、切断要求信号ともいう。通信装置3との間の電話回線は切断される(S87)。メイン処理は終了する。
【0072】
通話端末6との通信を終了させる指示が受け付けられていない場合(S81:NO)、通信装置3から、PSTN網12を介して切断要求信号を受信したかが判断される(S89)。切断要求信号が受信されていない場合(S89:NO)、処理はS81に戻る。通信装置3から送信された切断要求信号が受信された場合(S89:YES)、通信装置3との間の電話回線は切断される(S87)。メイン処理は終了する。
【0073】
以上説明したように、通信装置2は、IP網11を介して受信した第一音声信号41の振幅と、PSTN網12を介して受信した第二音声の振幅とに基づいて、第二音声信号42の増幅率を決定することができる。通信装置2は、決定された増幅率で第二音声信号42を増幅することによって、第一音声信号41の振幅と第二音声信号42の振幅とを近似させることができる。このため、伝送路がIP網11からPSTN網12に切り替えられ、通話端末5に対して送信される音声信号が第一音声信号41から第二音声信号42に切り替えられた場合でも、通話端末5のスピーカ35から出力される音声の音量の変動を小さくできる。ユーザは、スピーカ35から出力される音声を違和感なく継続して聞くことができる。
【0074】
また通信装置2は、第二音声信号42のうち、第一音声信号41と同一の音声に帰属する部分を特定する。通信装置2は、特定された部分の振幅を比較することによって、第二音声信号42の増幅率を決定することができる。実際にユーザから発せられる周波数帯域の音声に基づいて増幅率を決定することができるので、通話端末5のスピーカ35から出力される音声の音量の変動を、より小さくできる。
【0075】
なお図6〜図9では、通信装置2のCPU21のメイン処理を説明したが、通信装置3のCPU21も同様のメイン処理を行う。
【0076】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。以下、本発明の変形例(第一変形例及び第二変形例)について説明する。
【0077】
<第一変形例>
第一変形例について説明する。第一変形例では、確立要求パケットを受信した側の通信装置4において、増幅率が決定される。決定された増幅率は、確立要求パケットを送信した側の通信装置4に対して通知される。増幅率が通知された通信装置4は、通知された増幅率に基づいて、PSTN網12を介して受信された第二音声信号42を増幅する。図10を参照し、第一変形例におけるメイン処理について説明する。以下、通信装置2のCPU21のメイン処理を例に挙げて説明する。S11−S45(図6参照)、及び、S81−S87(図8参照)の処理は、上述の実施形態と同一であるため、説明を省略している。また、図10のうち上述の実施形態と同一の処理については、同一符号を付し、説明を省略又は簡略化している。
【0078】
S11−S45(図6参照)の処理が実行されることによって、通信装置2は、IP網11及びPSTN網12を介して音声信号の通信を行うことが可能となっている。S13(図6参照)で、通信装置3に対して確立要求パケットを送信したかが判断される(S101)。確立要求パケットを送信していない場合(S101:NO)、通信装置3から確立要求パケットを受信することによって、通信装置3との間のセッションは確立している。上述の実施形態と同一の方法で、第二音声信号42の増幅率が決定される(S51−S63)。決定された増幅率を通知するためのパケットが、IP網11を介して通信装置3に対して送信される(S103)。以下、増幅率を通知するためのパケットを、通知パケットともいう。
【0079】
決定された増幅率で、PSTN網12を介して通信装置3から受信された第二音声信号42が増幅される(S65)。増幅された第二音声信号42は、第一音声信号41の代わりに、構内電話網8を介して通話端末5に対して送信される(S65)。増幅された第二音声信号42の振幅は、第一音声信号41の振幅と同一である。このため、通話端末5のスピーカ35から出力される音声は、通話端末5に対して送信される音声信号が切り替わる前後で変化しない。通信装置3に対して、IP網11を介して切断要求パケットが送信される(S105)。通信装置3との間のセッションは切断される(S73)。処理はS81(図8参照)に進む。
【0080】
一方、S13(図6参照)で通信装置3に対して確立要求パケットを送信していた場合(S101:YES)、通信装置3から送信される通知パケットを受信したかが判断される(S107)。通知パケットが受信されていない場合(S107:NO)、処理はS107に戻る。通知パケットの受信が継続して監視される。通信装置3から通知パケットが受信された場合(S107:YES)、受信された通知パケットから、増幅率が取得される。取得された増幅率で、PSTN網12を介して通信装置3から受信された第二音声信号42が増幅される(S109)。増幅された第二音声信号42は、第一音声信号41の代わりに、構内電話網8を介して通話端末5に対して送信される(S109)。増幅された第二音声信号42の振幅は、第一音声信号41の振幅と同一である。このため、通話端末5のスピーカ35から出力される音声は、通話端末5に対して送信される音声信号が切り替わる前後で変化しない。
【0081】
通信装置3から送信される切断要求パケットを、IP網11を介して受信したかが判断される(S111)。切断要求パケットが受信されない場合(S111:NO)、処理はS111に戻る。通信装置3から送信された切断要求パケットが受信された場合(S111:YES)、通信装置3との間のセッションは切断される(S73)。処理はS81(図8参照)に進む。
【0082】
以上説明したように、第一変形例では、通信装置2は、通信装置3から送信される通知パケットを受信することによって、増幅率を取得することができる。通信装置2は、取得された増幅率に基づいて第二音声信号42を増幅し、構内電話網8を介して通話端末5に対して出力することができる。これによって、通話端末5のスピーカ35から出力される音声の音量変化を小さくすることができる。増幅率の通知を受ける側の通信装置4は、増幅率を決定するための処理が不要となるので、CPU21の処理負荷を軽減することができる。
【0083】
<第二変形例>
第二変形例について説明する。第二変形例では、確立要求パケットを受信した側の通信装置4において、増幅率が決定される。PSTN網11を介して他の通信装置4に対してアナログ音声信号15を送信する場合、送信されるアナログ音声信号15は、決定された増幅率に基づいて予め増幅される。増幅されたアナログ音声信号15が、PSTN網12を介して他の通信装置4に対して送信されることになる。確立要求パケットを受信した側の通信装置4は、PSTN網12を介して受信されたアナログ音声信号16を増幅することなく、そのまま通話端末7に対して送信することができる。図11を参照し、第二変形例におけるメイン処理について説明する。以下、通信装置2のCPU21のメイン処理を例に挙げて説明する。S11−S45(図6参照)、及び、S81−S87(図8参照)の処理は、上述の実施形態と同一であるため、説明を省略している。また、図11のうち上述の実施形態及び第一変形例と同一の処理については、同一符号を付し、説明を省略又は簡略化している。
【0084】
S11−S45(図6参照)の処理が実行されることによって、IP網11及びPSTN網12を介して音声信号の通信を行うことが可能となっている。S13(図6参照)で、通信装置3に対して確立要求パケットを送信したかが判断される(S101)。確立要求パケットを送信していない場合(S101:NO)、通信装置3から確立要求パケットを受信することによって、通信装置3との間のセッションは確立している。上述の実施形態と同一の方法で、第二音声信号42の増幅率が決定される(S51−63)。決定された増幅率で、PSTN網12を介して受信された第二音声信号42が増幅される(S65)。増幅された第二音声信号42は、構内電話網8を介して通話端末5に対して送信される(S65)。
【0085】
構内電話網8を介し、通話端末5から送信されたアナログ音声信号15が受信される。受信されたアナログ音声信号15は、S63で決定された増幅率に基づいて増幅される。増幅されたアナログ音声信号15が、PSTN網12を介して通信装置3に対して送信される(S121)。通信装置3に対して、IP網11を介して切断要求パケットが送信される(S105)。通信装置3との間のセッションは切断される(S73)。処理はS81(図8参照)に進む。
【0086】
一方、S13(図6参照)で通信装置3に対して確立要求パケットを送信していた場合(S101:YES)、通信装置3から受信されたアナログ音声信号16は、増幅されることなくそのまま構内電話網8を介して通話端末7に対して送信される(S123)。受信されたアナログ音声信号16の振幅は、通信装置3から送信される際に、増幅率に基づいて増幅されている(S121参照)。このため、受信されたアナログ音声信号16の振幅は、デジタル音声信号14の振幅と同一となっている。従って、通話端末5のスピーカ35から出力される音声は、通話端末5に対して送信される音声信号が、アナログ音声信号18からアナログ音声信号16に切り替わる前後で変化しない。
【0087】
通信装置3から送信される切断要求パケットを、IP網11を介して受信したかが判断される(S113)。切断要求パケットが受信されない場合(S113:NO)、処理はS113に戻る。通信装置3から切断要求パケットが受信された場合(S113:YES)、通信装置3との間のセッションは切断される(S73)。
【0088】
以上説明したように、第二変形例では、通信装置2は、PSTN網12を介して通信装置3に対して送信するアナログ音声信号15を、決定された増幅率に基づいて増幅する。PSTN網12を介して通信装置3に到達するアナログ音声信号16の振幅は、デジタル音声信号14の振幅と同一となる。このため通信装置3は、受信したアナログ音声信号16を増減することなく、そのまま出力することができる。これによって、通信装置3の処理負荷を軽減させることができる。
【0089】
上述では、アナログ音声信号15がPSTN網12を伝送した場合の伝送損失による減衰を補完するために、増幅率を決定していた。通信装置2では減衰率が決定されてもよい。例えば以下のような場合、減衰率が決定される。
【0090】
通信遅延の大きいIP網11を介して通信が行われる場合、PSTN網12を介して通信が行われる場合と比較して、エコーの影響が大きくなる。このため通信装置3は、エコーの影響を小さくするために、IP網11を介して通信装置2に対して送信するデジタル音声信号13の振幅を、PSTN網12を介して通信装置2に対して送信するアナログ音声信号15の振幅よりも小さくする場合がある。従って、第一音声信号41の振幅と比較して第二音声信号42の振幅が大きくなる場合がある。このような場合、通信装置2は、第二音声信号の減衰率を決定する。第二音声信号は、決定された減衰率によって減衰される。減衰された第二音声信号の振幅と、第一音声信号41の振幅とは同一となる。これによって、通話端末5のスピーカ35から出力される音声の変化は小さくなる。
【0091】
上述では、通信装置4と通話端末7とが構内電話網によって接続されていた。通信装置4と通話端末7とは、IP網によって接続されてもよい。通話端末7は、マイク36を介して取得した音声信号をデジタル音声信号に変換し、IP網を介して通信装置4に対して送信してもよい。通信装置4は、通話端末7から受信したデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換し、PSTN12を介して他の通信装置4に対して送信してもよい。通信装置4は、PSTN網12を介して受信したアナログ音声信号16をデジタル音声信号に変換し、IP網を介して通話端末に対して送信してもよい。
【0092】
上述では、第一音声信号41の振幅と第二音声信号42の振幅とを比較することによって、増幅率を決定していた。比較対象は振幅に限定されない。例えば、第一音声信号41及び第二音声信号42において、音量を示すパラメータが別途設けられている場合には、このパラメータを比較することによって、増幅率を決定してもよい。
【0093】
上述では、IP網11の通信品質が所定の基準を満たしていない場合に、伝送路をIP網11からPSTN網12に切り替えていた。通信装置4は、IP網11の通信品質が改善し、所定の基準を満たすこととなった場合、伝送路をPSTN網12からIP網11に切り替えてもよい。
【0094】
通信装置4は、複数の電話番号を備えており、複数の電話回線を介して他の通信装置4と通信を行うことが可能であってもよい。この場合、例えば一の電話回線が使用不可能である場合、他の電話回線を使用して通信が行われてもよい。
【0095】
上述では、第二音声信号42は、決定された増幅率、または減衰率によって増幅または減衰され、増幅、または減衰された第二音声信号42の振幅と、第一音声信号41の振幅とが同一となるようにしたが、これに限られない。第二音声信号42は、決定された増幅率、または減衰率によって増幅、減衰されればよい。増幅、または減衰された第二音声信号42の振幅と、第一音声信号41の振幅とは、完全に同一となる必要は無い。例えば、第二音声信号42の振幅と第一音声信号41の振幅との差が小さくなるように、第二音声信号42が増幅、または減衰されればよい。
【0096】
上述では、通信装置2は、アナログ音声信号15がPSTN網12を伝送することによって減衰した場合の減衰率を特定するとしたが、これに限られない。IP網11を介して通信装置2が通信している場合に、ユーザは、通信端末5に備えられたボタンなどの操作手段により、スピーカ35から出力される音量を調整することが考えられる。この場合、通信装置2のCPU21は、S65(図7参照)において、アナログ音声信号15がPSTN網12を伝送することによって増減した場合の増減率、および音量の調整情報から増減率を決定してもよい。次に増幅された第二音声信号42が通話端末5に対して送信されてもよい。具体的には、IP網11を介して通話端末5が通話している場合に、通信装置2は、通話端末5から音量の調整情報を取得する。通信装置2は、アナログ音声信号15がPSTN網12を伝送する場合の増減率を決定する。この決定された増減率は、取得された調整情報によって調整される。調整された増減率によって、第二音声信号42は増減される。通信装置2は、最終的に増減された第二音声信号42を通話端末5に対して送信する。これにより、ユーザがIP網11を介して通話している時のスピーカ35から出力される音量を調整した場合においても、通話端末5のスピーカ35から出力される音声の変化は小さくなる。
【0097】
なお、S21の処理を行うCPU21が本発明の「第一通信手段」に相当する。S23の処理を行うCPU21が本発明の「判断手段」に相当する。S45の処理を行うCPU21が本発明の「第二通信手段」に相当する。S63の処理を行うCPU21が本発明の「決定手段」に相当する。S65の処理を行うCPU21が本発明の「第一出力手段」に相当する。S55、57、59の処理を行うCPU21が本発明の「特定手段」に相当する。S73の処理を行うCPU21が本発明の「中止手段」に相当する。S103の処理を行うCPU21が本発明の「通知手段」に相当する。S123の処理を行うCPU21が本発明の「第二出力手段」に相当する。S21の処理が本発明の「第一通信ステップ」に相当する。S23の処理が本発明の「判断ステップ」に相当する。S45の処理が本発明の「第二通信ステップ」に相当する。S63の処理が本発明の「決定ステップ」に相当する。S65の処理が本発明の「第一出力ステップ」に相当する。
【符号の説明】
【0098】
1 通信システム
2、3、4 通信装置
5、6、7 通話端末
8、9 構内電話網
11 IP網
12 PSTN網
21 CPU
35 スピーカ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP網及びPSTN網の双方に接続可能な通信装置であって、
前記IP網を介して、他の通信装置との間で音声信号をデジタル信号として通信する第一通信手段と、
前記PSTN網を介して前記音声信号を通信するか否かを、前記IP網の通信状態に基づき判断する判断手段と、
前記判断手段において、前記PSTN網を介して通信すると判断された場合に、前記PSTN網を介して、前記他の通信装置との間で前記音声信号をアナログ信号として通信する第二通信手段と、
前記第一通信手段により前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第一音声信号の音量と、前記第二通信手段により前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第二音声信号の音量とに基づいて、前記第二音声信号の増減率を決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力する第一出力手段と
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第一音声信号及び前記第二音声信号のうち、同一音声に帰属する部分を特定する特定手段を備え、
前記決定手段は、
前記特定手段において特定された部分の音量を比較することによって、前記第二音声信号の増減率を決定することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記特定手段は、
前記第一音声信号のうち所定部分の音声に帰属する部分を前記第二音声信号から検索することによって、同一音声に帰属する部分を特定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第一出力手段において、増減された前記第二音声信号が出力された後、前記第一通信手段における前記IP網を介した通信を中止する中止手段を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項5】
前記決定手段において決定された前記増減率を、前記他の通信装置に対して通知する通知手段を備え、
前記第一出力手段は、
前記他の通信装置から前記増減率が通知された場合に、通知された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の通信装置。
【請求項6】
前記第二通信手段は、
前記PSTN網を介して前記他の通信装置と通信を行う場合に、前記決定手段によって決定された前記増減率で前記音声信号を増減し、増減された前記音声信号を前記他の通信装置に対して送信し、
増減された前記音声信号を前記他の通信装置から受信した場合に、受信された前記音声信号を出力する第二出力手段を更に備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の通信装置。
【請求項7】
前記判断手段は、
前記IP網の通信品質が所定の基準を満たしていない場合に、前記PSTN網を介して通信すると判断することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の通信装置。
【請求項8】
IP網を介して、他の通信装置との間で音声信号をデジタル信号として通信する第一通信ステップと、
PSTN網を介して前記音声信号を通信するか否かを、前記IP網の通信状態に基づき判断する判断ステップと、
前記判断ステップにおいて、前記PSTN網を介して通信すると判断された場合に、前記PSTN網を介して、前記他の通信装置との間で前記音声信号をアナログ信号として通信する第二通信ステップと、
前記第一通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第一音声信号の音量と、前記第二通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第二音声信号の音量とに基づいて、前記第二音声信号の増減率を決定する決定ステップと、
前記決定ステップによって決定された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力する第一出力ステップと
を備えたことを特徴とする通信方法。
【請求項9】
IP網を介して、他の通信装置との間で音声信号をデジタル信号として通信する第一通信ステップと、
PSTN網を介して前記音声信号を通信するか否かを、前記IP網の通信状態に基づき判断する判断ステップと、
前記判断ステップにおいて、前記PSTN網を介して通信すると判断された場合に、前記PSTN網を介して、前記他の通信装置との間で前記音声信号をアナログ信号として通信する第二通信ステップと、
前記第一通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第一音声信号の音量と、前記第二通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第二音声信号の音量とに基づいて、前記第二音声信号の増減率を決定する決定ステップと、
前記決定ステップによって決定された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力する第一出力ステップと
をコンピュータに実行させるための通信プログラム。
【請求項1】
IP網及びPSTN網の双方に接続可能な通信装置であって、
前記IP網を介して、他の通信装置との間で音声信号をデジタル信号として通信する第一通信手段と、
前記PSTN網を介して前記音声信号を通信するか否かを、前記IP網の通信状態に基づき判断する判断手段と、
前記判断手段において、前記PSTN網を介して通信すると判断された場合に、前記PSTN網を介して、前記他の通信装置との間で前記音声信号をアナログ信号として通信する第二通信手段と、
前記第一通信手段により前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第一音声信号の音量と、前記第二通信手段により前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第二音声信号の音量とに基づいて、前記第二音声信号の増減率を決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力する第一出力手段と
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第一音声信号及び前記第二音声信号のうち、同一音声に帰属する部分を特定する特定手段を備え、
前記決定手段は、
前記特定手段において特定された部分の音量を比較することによって、前記第二音声信号の増減率を決定することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記特定手段は、
前記第一音声信号のうち所定部分の音声に帰属する部分を前記第二音声信号から検索することによって、同一音声に帰属する部分を特定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第一出力手段において、増減された前記第二音声信号が出力された後、前記第一通信手段における前記IP網を介した通信を中止する中止手段を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項5】
前記決定手段において決定された前記増減率を、前記他の通信装置に対して通知する通知手段を備え、
前記第一出力手段は、
前記他の通信装置から前記増減率が通知された場合に、通知された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の通信装置。
【請求項6】
前記第二通信手段は、
前記PSTN網を介して前記他の通信装置と通信を行う場合に、前記決定手段によって決定された前記増減率で前記音声信号を増減し、増減された前記音声信号を前記他の通信装置に対して送信し、
増減された前記音声信号を前記他の通信装置から受信した場合に、受信された前記音声信号を出力する第二出力手段を更に備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の通信装置。
【請求項7】
前記判断手段は、
前記IP網の通信品質が所定の基準を満たしていない場合に、前記PSTN網を介して通信すると判断することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の通信装置。
【請求項8】
IP網を介して、他の通信装置との間で音声信号をデジタル信号として通信する第一通信ステップと、
PSTN網を介して前記音声信号を通信するか否かを、前記IP網の通信状態に基づき判断する判断ステップと、
前記判断ステップにおいて、前記PSTN網を介して通信すると判断された場合に、前記PSTN網を介して、前記他の通信装置との間で前記音声信号をアナログ信号として通信する第二通信ステップと、
前記第一通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第一音声信号の音量と、前記第二通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第二音声信号の音量とに基づいて、前記第二音声信号の増減率を決定する決定ステップと、
前記決定ステップによって決定された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力する第一出力ステップと
を備えたことを特徴とする通信方法。
【請求項9】
IP網を介して、他の通信装置との間で音声信号をデジタル信号として通信する第一通信ステップと、
PSTN網を介して前記音声信号を通信するか否かを、前記IP網の通信状態に基づき判断する判断ステップと、
前記判断ステップにおいて、前記PSTN網を介して通信すると判断された場合に、前記PSTN網を介して、前記他の通信装置との間で前記音声信号をアナログ信号として通信する第二通信ステップと、
前記第一通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第一音声信号の音量と、前記第二通信ステップにより前記他の通信装置から受信した前記音声信号である第二音声信号の音量とに基づいて、前記第二音声信号の増減率を決定する決定ステップと、
前記決定ステップによって決定された前記増減率で前記第二音声信号を増減し、増減された前記第二音声信号を出力する第一出力ステップと
をコンピュータに実行させるための通信プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−249135(P2012−249135A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120111(P2011−120111)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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