説明

通信装置およびこの装置のベースバンドプロセッサ

通信装置(6)は、筐体(12)と、筐体内の加入者識別モジュール(SIM)カードホルダ(28)と、複数の電話呼を受信および送信するための、ベースバンドプロセッサおよび第1の無線トランシーバ(16)を有するプリント回路基板(14)とを備え、プリント回路基板(14)は、SIMカードホルダに挿入されたSIMカードと無線通信を用いて通信するようにされた第2の無線トランシーバ(30)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、およびこの装置のベースバンドプロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
既知の通信装置は、
− 筐体、
− 筐体内の加入者識別モジュール(SIM)カードホルダ、
ならびに
− ベースバンドプロセッサと、複数の電話呼を受信および送信するための無線トランシーバとを有する、プリント回路基板
を備える。
【0003】
通常、通信装置のプリント回路基板は、カードホルダに挿入されたSIMカードとの有線通信を確立する6本の接続リード線を有する機構体も有する。有線通信の信頼性は、これら6本の接続リード線とそれに対応するSIMカード上の接続パッドの間の電気的接触の質によって決まる。
【0004】
電気的接触の不良は、カードホルダに機械的応力がかかることによって起きる可能性がある。電気的接触の不良は、ネットワーク損失を引き起こす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、より信頼性の高い通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記その他の目的を考慮に入れて、本発明によれば、プリント回路基板がカードホルダに挿入されたSIMカードを相手に無線通信を用いて通信するようにされた第2の無線トランシーバを備える、通信装置が提供される。
【0007】
上記の通信装置では、SIMカードとの間で有線通信を確立する複数の接続リード線を有する機構体が、第2の無線トランシーバで置き換えられている。その結果として、有線通信の代わりに無線通信が行われる。無線通信は、カードホルダにかかる機械的応力の影響を受けにくい。したがって、プリント回路基板とカードホルダに挿入されたSIMカードの間のデータ交換の信頼性が改善される。
【0008】
− ベースバンドプロセッサが、少なくとも1つの電子チップを保護パッケージ内に含む集積回路であり、
− 第2のトランシーバがこの同じ保護パッケージ内に位置する本発明による装置は、
第2のトランシーバによるベースバンドプロセッサのサイズの増大が、SIMカードとの有線通信のための接続リード線を有する機構体のサイズより小さいので、プリント回路基板上により広いスペースをもたらす。
【0009】
− 放射電場からプリント回路基板の少なくとも一部を保護するためのカバー(54)と、
− 遮蔽カバー上に位置する、カードホルダに挿入されたSIMカードからデータを読み取るための、第2のトランシーバに接続されたアンテナ(32)とを含む本発明による装置は、
同様にプリント回路基板上により広いスペースをもたらす。
【0010】
SIMカードホルダが、筐体の内面のアンテナの正面の位置に固定された本発明による装置は、プリント回路基板とSIMカードの間の通信の信頼性を改善する。
【0011】
第2のトランシーバが、13.56MHzの無線周波数を用いて通信するようにされ、この第2のトランシーバが、さらに筐体の外部に位置するその他の装置と通信するようにされている本発明による装置は、製造コストを大幅に削減する。
【0012】
また、本発明は、通信装置で使用されるベースバンドプロセッサにも関する。
【0013】
本発明の以上その他の態様は、以下の説明、図面および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、ネットワーク基地局4および無線通信装置を有する無線電話システム2を示す。典型的な目的では、無線通信装置は、無線携帯電話機6である。電話機6は、無線信号8を用いて基地局4と通信する。
【0015】
基地局4は、電話機6に無線信号8を送信する送信機、および電話機6から無線信号8を受信する受信機を含む。
【0016】
電話機6は、筐体12と、無線信号8の受信または送信を行うための無線周波トランシーバ16およびベースバンドプロセッサ18を有するプリント回路基板14とを備える。プリント回路基板14は、筐体12内に収容される。筐体12は、SIMカードを電話機6に挿入するためにユーザが開けるドアを有する。
【0017】
トランシーバ16は、無線信号8を受信または送信するためにアンテナ20に接続される。
【0018】
トランシーバ16は、受信された無線信号をベースバンド信号に変換し、またその逆の変換も行う。換言すれば、トランシーバ16の主な仕事は、無線信号から搬送波を除去すること、またはベースバンド信号にそのような搬送波を付加することである。ベースバンド信号は、トランシーバ16をプロセッサ18に接続するライン22を通して、プロセッサ18とサブシステム16との間で交換される。
【0019】
プロセッサ18は、電話機6のあらゆる機器を制御する。特に、プロセッサ18は、カードホルダ28に挿入されたSIMカード26からデータを読み取るようにされている。カードホルダ28は、筐体12内に位置する。
【0020】
プロセッサ18は、保護パッケージ内に収容された1つまたは複数の電子チップを有する集積回路である。本実施形態では、プロセッサ18は、保護パッケージ内に収容されアンテナ32に接続された無線トランシーバ30をも有する。トランシーバ30は、短距離無線通信(NFC)技術を用いて別の装置との間で無線通信リンクを確立するようにされている。NFC技術は周知であり、安価である。NFC技術は、10cm未満の距離における1Mbit以下のデータ交換速度の無線通信を可能にする13.56MHzの無線周波数に基づいている。
【0021】
図1では、コンピュータ36が、NFC技術を用いて電話機6と通信する装置を表している。これを行うために、コンピュータ36は、トランシーバ30との間で無線通信リンク42を確立するためにアンテナ40に接続された無線トランシーバ38を含む。
【0022】
トランシーバ30は、1つまたは複数の装置との間でいくつかの無線通信リンクを同時に確立する。
【0023】
SIMカード26は、無線通信リンク44を介してトランシーバ30と通信する受動データキャリアである。例えば、カード26は、アンテナ48に接続された無線トランシーバ46を有する非接触型スマートカードであり、無線トランシーバ46とアンテナ48はともにプラスチックカード内に組み込まれる。カード26は、カードホルダ28に挿入すること、またはそこから取り出すことができる。
【0024】
通常のものと同様、SIMカードは、電話番号など電話機6を操作するのに有用なデータを記憶するメモリ50をも有する。メモリ50は、トランシーバ46と連結される。
【0025】
図1では、分かりやすくするために、カードホルダ28が基板14と重なっていない。図2は、基板14の位置に対するカードホルダ28の位置を断面図で示す。この断面図では、基板14は水平になっており、筐体12の底部に位置している。図2では、電話機6の要素には図1と同じ参照番号が付してある。
【0026】
図2に示されるように、基板14の上部には、遮蔽カバー54が固定される。カバー54は、外部放射電磁場から基板14を保護するためのものである。例えば、少なくともカバー54の一部は、プロセッサ18の上部に位置して、このプロセッサを保護する。アンテナ32は、基板14上のスペースを節約するために、カバー54の上部に固定される。例えば、アンテナ32は、プロセッサ18の上方のカバー54の表面上に位置する。
【0027】
カードホルダ28は、アンテナ32とカード26のアンテナ48との間の距離を最短にするために筐体12内に固定される。これにより、リンク44の信頼性が高まる。ここで、カードホルダ28は、アンテナ32の上方に位置する。
【0028】
次に、図3を参照して電話機6の動作について述べる。
【0029】
最初に、ステップ70で、電話機6のユーザは、筐体12を開き、カード26をカードホルダ28に挿入する。
【0030】
次に、ステップ72で、電話機6が電力投入され、トランシーバ30がカード26との間でリンク44を確立する。リンク44が確立されると、ステップ74で、プロセッサ18が、リンク44を介して非接触方式でカード26からデータを読み取る。例えば、トランシーバ30は、周波数13.56MHzの変調された高周波信号を送信する。これに応答して、カード26は、別の変調を用いて、リンク44を介して必要とされたデータを送信する。
【0031】
これと同時に、またはその後に、平行ステップ76で、トランシーバ30は、リンク42を確立してコンピュータ36と通信する。リンク42が確立されると、ステップ78で、コンピュータ36とプロセッサ18の間でリンク42を介してデータが交換される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】通信装置を有する無線電話システムを示す概略図である。
【図2】図1の通信装置の断面図である。
【図3】図1の通信装置を動作させる方法を示す流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(12)と、
前記筐体内の加入者識別モジュール(SIM)カードホルダ(28)と、
複数の電話呼を受信および送信するための、ベースバンドプロセッサおよび第1の無線トランシーバ(16)を有するプリント回路基板(14)とを備える通信装置(6)であって、
前記プリント回路基板(14)が、前記SIMカードホルダに挿入されたSIMカードと無線通信を用いて通信するようにされた第2の無線トランシーバ(30)も備える通信装置(6)。
【請求項2】
前記ベースバンドプロセッサが、少なくとも1つの電子チップを保護パッケージ内に含む集積回路であり、
前記第2のトランシーバが、前記保護パッケージ内に位置する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プリント回路基板の少なくとも一部を放射電場から保護するためのカバー(54)と、
前記カバー上に位置する、前記カードホルダに挿入されたSIMカードからデータを読み取るための、前記第2のトランシーバに接続されたアンテナ(32)とを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記SIMカードホルダが、前記筐体の内面の前記アンテナの正面の位置に固定される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第2のトランシーバが、13.56MHzの無線周波数を用いて通信するようにされている、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第2のトランシーバが、さらに前記筐体(12)の外部に位置するその他の装置と通信するようにされている、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が移動電話機(6)である、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
請求項2に記載の通信装置のためのベースバンドプロセッサであって、前記ベースバンドプロセッサが少なくとも1つの電子チップを保護パッケージ内に有する集積回路であり、前記第2のトランシーバが前記保護パッケージ内に位置する、ベースバンドプロセッサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−503136(P2008−503136A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516098(P2007−516098)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051871
【国際公開番号】WO2005/124668
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】