説明

通信装置および通信システム

【課題】通信装置の小型化を実現可能な技術を提供する。
【解決手段】送信装置10は、送信データを含む送信信号を生成する生成手段と、送信信号にプリアンブル信号を付加したパケット信号を、直交変調することなく送信する送信手段とを備える。上記プリアンブル信号は、OFDM信号であり、所定の配置パターンに従って、各サブキャリアにプリアンブルデータを割り当てて得られた周波数領域の信号に、IFFT処理を施すことによって生成される時間領域の信号のうち、虚部の信号を除いた実部の信号である。そして、所定の配置パターンは、複数のサブキャリアを、中心周波数の昇順で0からN−1(Nは整数)までの整数を用いて番号付けした場合、N/2−1以下の番号が付された各サブキャリアのうちのいずれかにプリアンブルデータを割り当て、N/2−1よりも大きい番号が付されたサブキャリアには、プリアンブルデータを割り当てないことを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに直交する複数のサブキャリアから構成されるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を用いて通信を行う技術が存在する(例えば、特許文献1)。
【0003】
OFDM信号を送信する一般的な通信装置(送信装置)は、送信データを複素平面上にマッピングする一次変調を行って複素シンボルを得た後、当該複素シンボルに逆高速フーリエ変換(IFFT)を施して、ベースバンドのOFDM信号を生成する。そして、通信装置は、ベースバンドのOFDM信号に対して、直交変調、周波数変換等の所定の処理を施して、搬送帯域のOFDM信号を生成し、搬送帯域のOFDM信号を通信信号として伝送路に出力する。
【0004】
一方、OFDM信号を受信する一般的な通信装置(受信装置)は、受信信号に対して周波数変換、直交検波等の所定の処理を施して、ベースバンドのOFDM信号を生成する。そして、通信装置は、ベースバンドのOFDM信号に対して、高速フーリエ変換(FFT)、デマッピング処理等の復調処理を施して、データを復調する。
【0005】
また、パケット方式で通信を行う場合、受信装置は、送信装置がいつパケット信号を送信するのか、換言すればパケット信号がいつ受信装置へ到来するのかを把握していない。このため、受信装置は、パケット信号の到来に備えて待機し、待機中に受信する信号の中からパケット信号を検出する必要がある。このようなパケット信号の検出処理は、パケット信号に含まれるプリアンブル信号を用いて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−230751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなパケット方式で通信を行う各通信装置では、情報を伝達する通信機能を損なうことなく、通信装置の小型化が実現されることが好ましい。
【0008】
そこで、本発明は、通信装置の小型化を実現することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る通信装置の第1の態様は、送信データを含む送信信号を生成する生成手段と、前記送信信号にプリアンブル信号を付加したパケット信号を送信する送信手段とを備え、前記プリアンブル信号は、複数のサブキャリアから構成されるOFDM信号であり、前記プリアンブル信号は、所定の配置パターンに従って、各サブキャリアにプリアンブルデータを割り当てて得られた周波数領域の信号に、IFFT処理を施すことによって生成される時間領域の信号のうち、虚部の信号を除いた実部の信号であり、前記所定の配置パターンは、前記複数のサブキャリアを、各サブキャリアの中心周波数の昇順で、0からN−1(Nは整数)までの整数を用いて番号付けした場合、N/2−1以下の番号が付された各サブキャリアのうちのいずれかに前記プリアンブルデータを割り当て、N/2−1よりも大きい番号が付されたサブキャリアには、前記プリアンブルデータを割り当てないこと、或いは、N/2−1よりも大きい番号が付された各サブキャリアのうちのいずれかに前記プリアンブルデータを割り当て、N/2−1以下の番号が付されたサブキャリアには、前記プリアンブルデータを割り当てないことを示し、前記送信手段は、直交変調を施すことなく、前記パケット信号を送信する。
【0010】
また、本発明に係る通信装置の第2の態様は、上記第1の態様であって、前記プリアンブル信号には、1OFDMシンボル単位のショートプリアンブル信号が含まれ、前記ショートプリアンブル信号に関する所定の配置パターンは、連続した番号が付されたサブキャリアにおいて、奇数個のサブキャリア置きに等間隔で、偶数個のサブキャリアに前記プリアンブルデータを割り当てることを示す。
【0011】
また、本発明に係る通信装置の第3の態様は、上記第1の態様または上記第2の態様であって、前記プリアンブル信号には、1OFDMシンボル単位のショートプリアンブル信号が含まれ、前記ショートプリアンブル信号に関する所定の配置パターンは、前記ショートプリアンブル信号のPAPR(Peak to Average Power Ratio)が1に近くなるように、前記プリアンブルデータをサブキャリアに割り当てることを示す。
【0012】
また、本発明に係る通信装置の第4の態様は、上記第1の態様から上記第3の態様のいずれかであって、前記プリアンブル信号には、1OFDMシンボル単位のショートプリアンブル信号が含まれ、前記ショートプリアンブル信号に関する所定の配置パターンは、前記ショートプリアンブル信号の電力が、1OFDMシンボルの前記送信信号の電力よりも6dB高くなるように、前記プリアンブルデータをサブキャリアに割り当てることを示す。
【0013】
また、本発明に係る通信装置の第5の態様は、上記第1の態様から上記第4の態様のいずれかであって、前記プリアンブル信号には、1OFDMシンボル単位のロングプリアンブル信号が含まれ、前記ロングプリアンブル信号に関する所定の配置パターンは、前記ロングプリアンブル信号のPAPRが1に近くなるように、前記プリアンブルデータをサブキャリアに割り当てることを示す。
【0014】
また、本発明に係る通信装置の第6の態様は、上記第1の態様から上記第5の態様のいずれかであって、前記プリアンブル信号には、1OFDMシンボル単位のロングプリアンブル信号が含まれ、前記ロングプリアンブル信号に関する所定の配置パターンは、PRBS(Pseudo Random Binary(Bit) Sequence)の前記プリアンブルデータをサブキャリアに割り当てることを示す。
【0015】
また、本発明に係る通信装置の第7の態様は、送信データを含む送信信号を生成する生成手段と、前記送信信号にプリアンブル信号を付加したパケット信号を送信する送信手段とを備え、前記プリアンブル信号には、1OFDMシンボル単位のショートプリアンブル信号が含まれ、前記ショートプリアンブル信号は、所定の配置パターンに従って、前記ショートプリアンブル信号を構成する各サブキャリアにプリアンブルデータを割り当てて得られた周波数領域の信号に、IFFT処理を施すことによって生成される時間領域の信号のうち、虚部の信号を除いた実部の信号であり、前記ショートプリアンブル信号に関する前記所定の配置パターンは、前記ショートプリアンブル信号を構成する128個のサブキャリアを、各サブキャリアの中心周波数の昇順で、0から127までの整数を用いて番号付けしたとき、78番のサブキャリアと、86番のサブキャリアと、102番のサブキャリアとに、「2.82×2」のプリアンブルデータを割り当て、94番のサブキャリアに「−2.82×2」のプリアンブルデータを割り当てることを示し、前記送信手段は、直交変調を施すことなく、前記パケット信号を送信する。
【0016】
また、本発明に係る通信装置の第8の態様は、送信データを含む送信信号を生成する生成手段と、前記送信信号にプリアンブル信号を付加したパケット信号を送信する送信手段とを備え、前記プリアンブル信号には、1OFDMシンボル単位のロングプリアンブル信号が含まれ、前記ロングプリアンブル信号は、所定の配置パターンに従って、前記ロングプリアンブル信号を構成する各サブキャリアにプリアンブルデータを割り当てて得られた周波数領域の信号に、IFFT処理を施すことによって生成される時間領域の信号のうち、虚部の信号を除いた実部の信号であり、前記ロングプリアンブル信号に関する前記所定の配置パターンは、前記ロングプリアンブル信号を構成する128個のサブキャリアを、各サブキャリアの中心周波数の昇順で、0から127までの整数を用いて番号付けしたとき、75番、78番、80番、81番、82番、85番、86番、87番、92番、94番、95番、96番、104番および105番の各サブキャリアに、「1」のプリアンブルデータを割り当て、76番、77番、79番、83番、84番、88番、89番、90番、91番、93番、97番、98番、99番、100番、101番、102番、103番および106番の各サブキャリアに「−1」のプリアンブルデータを割り当てることを示し、前記送信手段は、直交変調を施すことなく、前記パケット信号を送信する。
【0017】
また、本発明に係る通信装置の第9の態様は、パケット信号を受信する受信手段と、パケット信号に含まれるプリアンブル信号を検出するプリアンブル検出手段とを備え、前記パケット信号は、送信装置において直交変調されていない実数の信号であり、前記プリアンブル検出手段は、前記パケット信号に相関演算を施して得られる、相関演算結果を利用してプリアンブル信号の検出を行い、前記プリアンブル検出手段は、受信したプリアンブル信号の複素共役信号を生成する複素共役部を有さない。
【0018】
また、本発明に係る通信システムは、第1通信装置と、前記第1通信装置と通信を行う第2通信装置とを備え、前記第1通信装置は、送信データを含む送信信号を生成する生成手段と、前記送信信号にプリアンブル信号を付加したパケット信号を送信する送信手段とを有し、前記プリアンブル信号は、複数のサブキャリアから構成されるOFDM信号であり、前記プリアンブル信号は、所定の配置パターンに従って、各サブキャリアにプリアンブルデータを割り当てて得られた周波数領域の信号に、IFFT処理を施すことによって生成される時間領域の信号のうち、虚部の信号を除いた実部の信号であり、前記所定の配置パターンは、前記複数のサブキャリアを、各サブキャリアの中心周波数の昇順で、0からN−1(Nは整数)までの整数を用いて番号付けした場合、N/2−1以下の番号が付された各サブキャリアのうちのいずれかに前記プリアンブルデータを割り当て、N/2−1よりも大きい番号が付されたサブキャリアには、前記プリアンブルデータを割り当てないこと、或いは、N/2−1よりも大きい番号が付された各サブキャリアのうちのいずれかに前記プリアンブルデータを割り当て、N/2−1以下の番号が付されたサブキャリアには、前記プリアンブルデータを割り当てないことを示し、前記送信手段は、直交変調を施すことなく、前記パケット信号を送信し、前記第2通信装置は、前記パケット信号を受信する受信手段と、前記パケット信号に含まれる前記プリアンブル信号を検出するプリアンブル検出手段とを有し、前記プリアンブル検出手段は、前記パケット信号に相関演算を施して得られる、相関演算結果を利用してプリアンブル信号の検出を行い、前記プリアンブル検出手段は、受信したプリアンブル信号の複素共役信号を生成する複素共役部を有さない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、通信装置の小型化を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る通信システムの構成図である。
【図2】本実施形態に係る送信装置の構成を示す図である。
【図3】パケットの構成を示す図である。
【図4】本実施形態に係る受信装置の構成を示す図である。
【図5】サブキャリア番号「0」番のサブキャリアから「N−1」番のサブキャリアによって構成されるOFDM信号を示す図である。
【図6】IFFT部への入力信号が偶関数であることを示す概念図である。
【図7】IFFT部への入力信号が奇関数であることを示す概念図である。
【図8】計算機シミュレーションに用いられたデータを示す図である。
【図9】計算機シミュレーションに用いられたデータを示す図である。
【図10】計算機シミュレーションの結果を示す図である。
【図11】計算機シミュレーションの結果を示す図である。
【図12】計算機シミュレーションの結果を示す図である。
【図13】STFを生成する際に用いるデータ配置パターンの一例を示す図である。
【図14】図13のデータ配置パターンを用いて生成されたSTFの波形を示す図である。
【図15】LTFを生成する際に用いるデータ配置パターンの一例を示す図である。
【図16】プリアンブル検出部内の相関演算部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
<実施形態>
[1.通信システムの構成]
図1は、本実施形態に係る通信システム1の構成図である。
【0023】
図1に示されるように、通信システム1は、第1通信装置10と第2通信装置20とを有している。通信システム1における第1通信装置10および第2通信装置20は互いに有線通信によって通信可能に構成されている。第1通信装置10と第2通信装置20とを電気的に接続する伝送路30は、通常の通信線であってもよく、或いは、電力線であってもよい。電力線を伝送路とする場合、第1通信装置10および第2通信装置20は、電力線通信(PLC:power line communication)によって通信を行うことになる。本実施形態では、電力線通信によって通信を行う通信システム1を例示する。
【0024】
また、通信装置10,20間の有線通信は、周波数軸上で互いに直交する複数のサブキャリアを合成して得られるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を用いて行われる。そして、当該OFDM信号は、一定の時間単位で区切ってパケット単位で伝送される。
【0025】
また、本通信システム1では、OFDM信号を構成する全サブキャリアのうち、所定帯域に含まれるサブキャリアを利用してデータの伝送が行われる。データの伝送に利用するサブキャリアの詳細については、後述する。
【0026】
なお、以下では、第1通信装置10は送信装置として機能し、第2通信装置20は受信装置として機能する場合を例示するが、これに限定されるものではない。すなわち、第1通信装置10は、少なくとも送信機能を有しており、当該送信機能に加えて受信機能を有していてもよい。同様に、第2通信装置20は、少なくとも受信機能を有しており、当該受信機能に加えて送信機能を有していてもよい。
【0027】
[2.送信装置の構成]
次に、通信システム1を構成する送信装置10の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る送信装置10の構成を示す図である。
【0028】
図2に示されるように、送信装置10は、スクランブラ111、符号化部112、インターリーブ部(インターリーバ)113、一次変調部114、入力信号構成部115、IFFT(逆高速フーリエ変換)部116、並列/直列変換部(並直列変換部)117、GI付加部118、プリアンブル出力部119、パケット構成部120、および送信部121を備えている。
【0029】
具体的には、スクランブラ111は、伝送対象のデータ(「伝送データ」または「送信データ」とも称する)に対して、攪拌して順序を並び替えるスクランブル処理を施す。スクランブラ111においてスクランブル処理が施された送信データは、符号化部112に入力される。
【0030】
符号化部112は、スクランブル処理が施された送信データに対して、誤り訂正のための冗長符号化を行う。冗長符号化には、例えば、拘束長k=7、符号化率1/2を原符号とする畳み込み符号が用いられる。符号化部112から出力される送信データのビット列は、インターリーブ部113に入力される。
【0031】
インターリーブ部113では、誤りが1つのシンボルに偏らないようにするため、送信データのビット列を並び替えるビット・インターリーブが行われる。インターリーブ部113から出力される送信データは、一次変調部114入力される。
【0032】
一次変調部114では、所定の変調方式(例えば、QPSK、16QAM)に従って、送信データがシンボルごとにサブキャリアにマッピング(対応づけ)される。
【0033】
なお、ここでのシンボル(Symbol)は、変調方式ごとに定まる、搬送波(サブキャリア)に乗せるひと区切りの送信データの構成単位を表し、後述のOFDMシンボルとの混同を避けるため、データシンボルまたは複素シンボルとも称される。例えば、QPSKでは、1シンボル(1データシンボル)で送信できる送信データは2ビットである。
【0034】
入力信号構成部115は、バッファ等で構成され、送信データを含むデータ信号をサブキャリアに分散して乗せるために、一次変調部114から入力されたデータシンボルを所定個の並列データに変換する機能を有している。
【0035】
具体的には、上述のように、通信システム1では、OFDM信号を構成する全サブキャリアのうち、所定帯域に含まれるサブキャリアを利用してデータの伝送が行われる。このため、入力信号構成部115は、上記所定帯域に含まれるサブキャリアにデータ信号を割り当てるとともに、上記所定帯域以外の他のサブキャリアに0(ゼロ)を割り当てて並列データを生成し、当該並列データをIFFT部116に出力する。
【0036】
このように、入力信号構成部115は、各サブキャリアにデータ信号の割り当てを行う割当手段として機能する。なお、データの伝送に利用されるサブキャリアを含む上記所定帯域の詳細については後述する。
【0037】
IFFT部116は、入力信号構成部115から入力される並列データに逆高速フーリエ変換を施して、周波数領域のデータを時間領域のデータに変換する。入力信号構成部115から入力される周波数領域のデータは、各サブキャリアに関する振幅および位相のデータであり、IFFT部116は、各サブキャリア分の振幅位相データから、1つのOFDMシンボル分の時間データを生成することになる。
【0038】
IFFT部116で生成される時間データは、時間領域の複素データであり、IFFT部116からは、I軸成分(同相成分、実数成分)の時間データと、Q軸成分(直交成分、虚数成分)の時間データとがそれぞれ生成される。
【0039】
本実施形態では、IFFT部116で生成される時間領域の複素データのうち、I軸成分の時間データが並直列変換部117に入力され、Q軸成分の時間データは破棄される。
【0040】
並直列変換部117は、IFFT部116から入力される並列のデータを直列のデータに変換する機能を有している。並直列変換部117から出力される直列のデータは、ベースバンド(基底帯域)のOFDM信号(ベースバンドOFDM信号)としてGI付加部118に入力される。
【0041】
GI付加部118は、並直列変換部117から入力されるベースバンドOFDM信号に対して、ガードインターバル(GI)の付加処理を施し、GI付加済みのベースバンドOFDM信号をパケット構成部120に出力する。
【0042】
プリアンブル出力部119は、受信側において、受信信号の検出処理、シンボル・タイミング同期等の各種同期処理に用いるためのプリアンブル(Preamble)信号(プリアンブル)を出力する機能を有している。
【0043】
具体的には、プリアンブル出力部119は、出力対象となるプリアンブル信号を記憶した記憶部(不図示)を有し、当該記憶部に記憶されたプリアンブル信号を外部に出力する。記憶部に記憶されたプリアンブル信号は、所定の配置パターンに従って各サブキャリアにプリアンブルに関するデータ(「プリアンブルデータ信号」または「プリアンブルデータ」とも称する)を配置する(割り当てる)ことによって得られる周波数領域の信号に、IFFT処理を施すことによって生成された時間領域の信号のうち、実部をとって得られる信号である。このようなプリアンブル信号は、予め生成され記憶部に記憶されている。なお、プリアンブル信号を生成する際に用いられる、各サブキャリアへのプリアンブルデータの配置パターン(「データ配置パターン」または「データ割当パターン」とも称する)については、後述する。
【0044】
パケット構成部120は、GI付加部118から出力されるOFDM信号にプリアンブル信号を付加して、パケット単位の信号(「パケット信号」とも称する)を生成する。
【0045】
ここで、パケット構成部120で生成される、パケット(パケット信号)の構成について説明する。図3は、パケットの構成を示す図である。
【0046】
図3に示されるように、パケット50は、プリアンブル51と、プリアンブル51に続くPHY(物理層)ヘッダー52と、PHYヘッダー52に続くPHYペイロード53とで構成されている。
【0047】
プリアンブル51は、連続する4つのショート・トレーニング・フィールド(STF)51Sと、これらのSTF51Sに続く3つのロング・トレーニング・フィールド(LTF)51Lとで構成されている。4つのSTF51Sは同じ内容であり、また、3つのLTF51Lは同じ内容である。STF51SおよびLTF51Lそれぞれは、1OFDMシンボルの信号である。
【0048】
STF51Sは、予め規定された固定パターンの信号が所定周期で所定回数(例えば、4回)繰り返された構成を有している。つまり、STF51Sは、周期性を有した信号(厳密には、対称性を有した信号)である。当該STF51Sは、受信側において送信側から送られてくるパケット単位の信号(パケット信号)を検出するため、および受信側において受信信号のレベルを補正する自動利得制御(AGC:Automatic Gain Control)を行うために用いられる。
【0049】
3つのLTF51Lのうち、最初のLTF51LAと、2番目のLTF51LBは、受信側において、FFT処理を実行するタイミング(シンボル・タイミング)の微調整に用いられる。3つのLTF51Lのうち、最後のLTF51LCは、伝送路推定に用いられる。
【0050】
なお、プリアンブルの構成として、プリアンブルに含まれるLTFを2つにして、2つのLTFの前に、ガードインターバルを付加する態様とし、最初のLTFをシンボル・タイミングの微調整に用い、2番目のLTF51を伝送路推定に用いる構成も考えられる。当該構成では、シンボル・タイミングのずれをガードインターバル分許容できる。これに対して、本実施形態のように、ガードインターバルを省いて、LTF51Lを3つにし、最初のLTF51LAおよび2番目のLTF51LBをシンボル・タイミングの微調整に用いる構成とすれば、シンボル・タイミングのずれを1OFDMシンボル分許容できることになる。
【0051】
PHYヘッダー52は、後続して送信される送信データの伝送速度、データ長等のヘッダ情報を含んでいる。
【0052】
PHYペイロード53は、伝送対象の送信データを含んでいる。
【0053】
このように、パケット構成部120は、STF51SおよびLTF51Lを含んだプリアンブル51と、PHYヘッダー52と、PHYペイロード53とで構成されたパケット信号を生成する。なお、STFは、「ショート・トレーニング・シンボル」または「ショートプリアンブル信号」とも称され、LTFは、「ロング・トレーニング・シンボル」または「ロングプリアンブル信号」とも称される。
【0054】
図2の送信装置10の説明に戻って、送信部121は、パケット構成部120で生成されたデジタル形式のパケット信号をアナログ形式のパケット信号に変換するDA変換処理を行い、DA変換処理後のパケット信号を通信信号として出力する。送信部121から出力された通信信号は、伝送路30を介して受信装置20へと伝送される。
【0055】
このように、送信装置10は、IFFT部116において生成される時間領域の複素データのうち、虚数成分の時間データを破棄し、実数成分の時間データに基づいて生成されたOFDM信号(「実部OFDM信号」とも称する)を通信信号として送信する。これによれば、送信装置10は、直交変調を行うことなく、実数信号を伝送することが可能になるので、送信装置10から直交変調を行うための構成を省くことができる。
【0056】
すなわち、従来の送信装置は、IFFT処理後のベースバンドOFDM信号に対して直交変調を施し、直交変調後の信号のうち、実数部分の信号を搬送帯域のOFDM信号として伝送していた。これに対して、本実施形態の送信装置10は、IFFT処理後のベースバンドOFDM信号に対して直交変調を施すことなく、ベースバンドOFDM信号の実数部分の信号(実部信号)を取り出して、当該実数部分の信号を伝送する。
【0057】
なお、上記構成を有する送信装置10は、送信データを含む送信信号(上記では、ベースバンドOFDM信号)を生成する生成手段と、当該送信信号にプリアンブル信号を付加することによってパケット信号を生成し、当該パケット信号を送信する送信手段とで構成されているとも表現できる。すなわち、送信データを含む送信信号を生成する生成手段には、スクランブラ111、符号化部112、インターリーブ部113、一次変調部114、入力信号構成部115、IFFT部116、および並直列変換部117が含まれ、送信手段には、プリアンブル生成部119および送信部121が含まれる。
【0058】
[3.受信装置の構成]
次に、通信システム1を構成する受信装置20について説明する。図4は、本実施形態に係る受信装置20の構成を示す図である。
【0059】
図4に示されるように、受信装置20は、受信部201と、プリアンブル検出部202と、AGC(自動利得調整)部203と、FFT(高速フーリエ変換)部204と、FFT制御部205と、シンボル・タイミング検出部206と、伝送路推定部207と、等化器208と、復調部209と、デインターリーブ部210と、ビタビ復号化部211と、デスクランブラ212とを備えている。
【0060】
送信装置10から送信された通信信号は、伝送路30を介して受信装置20へと伝送される。受信装置20は、通信信号を受信部201において受信する。
【0061】
受信部201は、受信した通信信号(受信信号)に対してフィルタ処理、AD変換処理等を施す。そして受信部201は、デジタル形式の受信信号を、プリアンブル検出部202、AGC(自動利得調整)部203、およびFFT部204に出力する。
【0062】
なお、当該通信システム1において利用される通信信号は、送信側で直交変調されていない信号であるため、受信側では直交検波が不要となる。このため、本実施形態の受信装置20は、直交検波を行うための構成、および直交検波によって生成される高周波成分の信号を除去するためのローパスフィルタを有していない。
【0063】
プリアンブル検出部202は、受信信号に含まれるプリアンブル信号を検出するプリアンブル信号の検出処理を行う。具体的には、プリアンブル検出部202は、相関演算部(後述)を有し、当該相関演算部において受信信号に相関演算を施し、相関演算結果を利用してプリアンブル信号の検出を行う。
【0064】
そして、プリアンブル検出部202は、プリアンブル信号を検出した場合、プリアンブル信号を検出したことを示す信号(プリアンブル検出信号)をAGC部203およびFFT制御部205に出力する。
【0065】
AGC部203は、プリアンブル検出部202からのプリアンブル検出信号の入力に応じて、異なる受信レベルの信号を適正なレベルの信号となるように、利得の調整を行う。
【0066】
FFT制御部205は、シンボル・タイミングに基づいて、FFT部204に対して制御信号を出力し、FFT部204で実行されるFFT処理の実行タイミングを制御する。
【0067】
また、FFT制御部205は、プリアンブル検出部202からプリアンブル検出信号が入力されたときは、プリアンブル信号の検出タイミングに基づいて、シンボル・タイミングを特定する。パケット信号の構成は既知であるため、FFT制御部205は、プリアンブル信号の検出タイミングに基づいて、シンボル・タイミングを特定することができる。なお、FFT制御部205において、プリアンブル信号の検出タイミングに基づいて特定されたシンボル・タイミングは、暫定的なシンボル・タイミングであり、シンボル・タイミングは、後に微調整される。
【0068】
シンボル・タイミング検出部206は、パケットのプリアンブル51に含まれるLTF51Lを用いて正規のシンボル・タイミングを検出する。シンボル・タイミング検出部206で検出された正規のシンボル・タイミングは、FFT制御部205に通知される。正規のシンボル・タイミングが通知されると、FFT制御部205では、正規のシンボル・タイミングに基づいて、FFT処理の実行タイミングが制御されることになる。
【0069】
FFT部204は、受信信号に高速フーリエ変換を施して、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する、いわゆるマルチキャリア復調処理を実行する。FFT部204から出力されるマルチキャリア復調処理後の受信信号は、伝送路推定部207および等化器208に入力される。
【0070】
なお、FFT部204へは、実数信号と虚数信号とがそれぞれ入力されることになるが、本受信装置20では、受信部201において一連の受信処理が施された受信信号に基づく信号が実数信号としてFFT部204へ入力され、虚数信号としては、例えば、ゼロが入力される。
【0071】
伝送路推定部(伝送路推定手段)207は、受信信号に含まれるプリアンブル信号と、受信装置20の記憶部に予め記憶されている既知のプリアンブル信号とを比較することによって、伝送路の特性を推定する。伝送路推定部207によって推定された伝送路特性(「推定伝送路特性」とも称する)は、等化器208に出力される。
【0072】
等化器(等化処理手段)208は、受信信号を、当該受信信号に対応する推定伝送路特性で除算して伝送路の歪みを除去する等化処理を行う。等化器208から出力される等化処理後の受信信号は、復調部209に出力される。
【0073】
復調部209は、等化処理後の受信信号にデマッピング処理等のサブキャリア復調処理を施し、復調された受信信号をデインターリーブ部210に出力する。
【0074】
デインターリーブ部210では、送信側で並び替えられた受信信号を元に戻すデインターリーブが行われる。デインターリーブされた受信信号は、ビタビ復号化部211に出力される。ビタビ復号化部211では、受信信号に対して誤り訂正復号が行われる。
【0075】
デスクランブラ212では、ビタビ復号化部211から出力された受信信号に対してデスクランブル処理が施される。これにより、送信データに対応した復号データが生成されることになる。
【0076】
このように、受信装置20では、直交検波を行うことなく、FFT部204において受信信号にマルチキャリア復調処理が施される。
【0077】
なお、本実施形態の受信装置20において復号データ(受信データ)を取得する復調手段には、プリアンブル検出部202、FFT部204、FFT制御部205、シンボル・タイミング検出部206、伝送路推定部207、等化器208、復調部209、デインターリーブ部210、ビタビ復号化部211、およびデスクランブラ212が含まれる。
【0078】
[4.OFDM信号を構成する各サブキャリアの利用態様]
次に、上記通信システム1において用いられるOFDM信号における、サブキャリアの利用態様について詳述する。図5は、サブキャリア番号「0」番のサブキャリアから「N−1」番のサブキャリアによって構成されるOFDM信号LSを示す図である。
【0079】
上述のように、通信システム1では、OFDM信号を構成する全サブキャリアのうち、所定帯域に含まれるサブキャリアを利用してデータの伝送が行われる。
【0080】
具体的には、OFDM信号を構成するN個(Nは整数)のサブキャリアそれぞれを、各サブキャリアの周波数(中心周波数)の昇順で、0からN−1までの整数を用いて番号付けした場合、データの伝送に用いられるサブキャリアは、N/2−1以下の番号が付された各サブキャリアとなる。
【0081】
各サブキャリアのうち、データの伝送に用いられるサブキャリアは、「使用サブキャリア」または「伝送用サブキャリア」とも称され、例えば、図5に示されるOFDM信号LSでは、区間LKに含まれるサブキャリアが使用サブキャリアとなる。すなわち、通信システム1では、OFDM信号LSを構成する複数のサブキャリアのうち、区間LKの所定帯域に含まれるサブキャリアに、送信データを含むデータ信号を乗せてデータの伝送が行われる。なお、上記所定帯域は、データの伝送に用いられる伝送帯域であり、当該伝送帯域には、使用サブキャリアが含まれることになる。
【0082】
一方、N/2−1よりも大きい番号が付された各サブキャリアは、データの伝送に用いないサブキャリア(「不使用サブキャリア」または「非伝送用サブキャリア」とも称する)となる。なお、各不使用サブキャリアには、ゼロを乗せて通信が行われる。
【0083】
このように、通信システム1では、OFDM信号を構成するN個のサブキャリアそれぞれを、各サブキャリアの周波数の昇順で、0からN−1までの整数を用いて番号付けした場合、伝送帯域に含まれるN/2−1以下の番号が付された各サブキャリアを用いてデータの伝送が行われる。これによれば、IFFT処理後のベースバンドOFDM信号の実数部分の信号を通信信号として用いた場合でも、受信側において送信データの復元が可能になる。なお、厳密には、Nは、2のべき乗であり、偶数である。
【0084】
なお、上記伝送帯域は、規格によって定められた、電力線通信を行う際に利用する帯域(規格に基づく利用帯域)の制限を受ける可能性がある。具体的には、N/2−1以下の番号が付された各サブキャリアを含む帯域のうち、規格に基づく利用帯域に含まれない部分については、データの伝送に用いることができない。このため、N/2−1以下の番号が付された各サブキャリアを含む帯域において、規格に基づく利用帯域に含まれない部分が存在する場合、伝送帯域は、N/2−1以下の番号が付された各サブキャリアを含む帯域のうち、規格に基づく利用帯域に含まれない部分を省いた帯域となる。換言すれば、伝送帯域は、規格に基づく帯域に含まれ、かつN/2−1以下の番号が付された各サブキャリアを含む帯域となる。
【0085】
[5.送信データの復元原理]
次に、送信データの復元原理について説明する。図6は、IFFT部への入力信号が偶関数であることを示す概念図であり、図7は、IFFT部への入力信号が奇関数であることを示す概念図である。図8,9は、計算機シミュレーションに用いられたデータを示す図である。図10〜図12は、計算機シミュレーションの結果を示す図である。
【0086】
フーリエ変換理論では、「FFT部への入力が実数の偶関数であれば、FFT部からの出力は、実数の偶関数になり、入力が実数の奇関数であれば、FFT部からの出力は、虚数の奇関数になる。」という理論が存在する。FFT演算とIFFT演算とは、対偶演算であるため、当該理論はFFT演算だけでなく、IFFT演算でも成立する。
【0087】
IFFT演算に関する上記理論を数式に表すと、下記式(1)、式(2)のようになる。
【0088】
【数1】

【0089】
【数2】

【0090】
なお、式(1)中のhe(k)は、IFFT処理前の実数の偶関数を表し、ho(k)は、IFFT処理前の実数の奇関数を表している。また、式(1)は、N点のhe(k)信号からN点のRe(n)信号への変換を示し、式(2)は、N点のho(k)信号からN点のIe(n)信号への変換を示している。
【0091】
ここで、IFFT部へ複素信号x(k)が入力され、当該複素信号の実部が偶関数であり、当該複素信号の虚部が奇関数であれば、上記式(1)、(2)から下記の式(3)が成立する。
【0092】
【数3】

【0093】
式(3)は、IFFT部へ入力される複素信号の実部が偶関数であり、かつ虚部が奇関数であれば、IFFT部の出力は、実数信号になることを示している。このように、IFFT部から出力される出力信号が実数信号であれば、IFFT部の出力信号に対して直交変調を施す必要がなく、IFFT部の出力信号を外部に送信する通信信号としてそのまま用いることが可能になる。
【0094】
IFFT演算は、N点の信号に対する演算であるため、偶関数および奇関数の定義は、数学上の定義とは若干異なる。具体的には、IFFT演算において偶関数とは、図6に示されるように、N個のデータが中心点を通る線に関して対称(中心点を基準にして左右対称)であることを意味し、数式では、h(n)=h(N−n)と表される。また、IFFT演算において奇関数とは、図7に示されるように、N個のデータが中心点に関して点対称であることを意味し、数式では、h(n)=−h(N−n)と表される。
【0095】
上述のように、IFFT部の出力が実数信号になるためには、IFFT部へ入力される複素信号の実部が偶関数であり、かつ虚部が奇関数であればよい。そして、IFFT部への入力信号において実部が偶関数および虚部が奇関数であるということは、入力信号の実部および虚部がそれぞれ対称性を有していることに相当する。
【0096】
このように、理論上、対称性を有したデータ信号をIFFT部に入力すれば、IFFT部からは実数信号を出力させることが可能になる。
【0097】
しかし、通常、送信装置では、通信に利用する帯域の広がりを制限するために、IFFT処理後の信号に対して帯域制限フィルタが掛けられる。対称性を有したデータ信号をIFFT部に入力し、IFFT処理後の信号に帯域制限フィルタを掛けると、帯域制限フィルタの非理想特性の影響により、通信信号に歪みが生じ、データ信号の対称性が損なわれる可能性がある。データ信号の対称性が損なわれた場合、受信装置20は、対称性のないデータ信号を受信することになり、送信データを復元できないことになる。
【0098】
そこで、本実施形態の送信装置10は、OFDM信号を構成するN個のサブキャリアそれぞれを、各サブキャリアの周波数の昇順で、0からN−1までの整数を用いて番号付けした場合、N/2−1以下の番号が付されたサブキャリアにデータ信号を乗せる。そして、送信装置10は、N/2−1よりも大きい番号が付されたサブキャリアにはデータ信号を乗せることなく通信を行う。
【0099】
このように、全サブキャリアのうち、伝送帯域以外のサブキャリアにデータ信号を乗せないことによれば、送信装置10から出力される通信信号の帯域を制限することが可能になり、帯域制限フィルタが不要になる。
【0100】
帯域制限フィルタが不要になると、通信信号に歪みを生じさせることなくデータを伝送することが可能になる。
【0101】
一方、全サブキャリアのうち、伝送帯域以外のサブキャリアを不使用サブキャリアとした場合、対称性を有するデータ信号をIFFT部116に入力することができなくなるため、IFFT部116の出力は、実部と虚部とを有した複素信号となる。
【0102】
ここで、全サブキャリアのうち、伝送帯域以外のサブキャリアを不使用サブキャリアとするデータ信号をIFFT部116に入力させたときに、IFFT部116から出力される複素信号の実部が、対称性を有したデータ信号をIFFT部に入力したときに、IFFT部から出力される実数信号と同じ形であれば、IFFT部116から出力される複素信号の実部を送信すれば、受信側では、送信データを復元できることになる。
【0103】
以下では、全サブキャリアのうち、伝送帯域以外のサブキャリアを不使用サブキャリアとして送信データの伝送を行った場合に、受信側で、送信データを復元可能か否かを検証する。
【0104】
まず、IFFT部116への入力信号x(k)を下記式(4)のように定義する。
【0105】
【数4】

【0106】
なお、式(4)中のNは、OFDM信号を構成するサブキャリアの個数を表している。
【0107】
式(4)で示される信号x(k)にIFFT処理を施すと、IFFT処理後の信号X(n)は式(5)のように表される。
【0108】
【数5】

【0109】
式(5)を展開して実部と虚部とで表される形に整理すると、式(6)のようになる。ここで、式(4)より、N/2≦k≦N−1では、x(k)=0であるため、式(6)は、式(7)のように表されることになる。
【0110】
【数6】

【0111】
【数7】

【0112】
式(7)より、IFFT処理後の信号X(n)の実部XR(n)は、式(8)となる。
【0113】
【数8】

【0114】
式(8)は、振幅が半分であること以外は、式(3)と同じ形となっている。式(4)で示される信号x(k)は、対称性を有した信号ではないが、N/2≦k≦N−1ではx(k)=0であるため、実質的に対称性を有した信号と見ることができる。
【0115】
したがって、IFFT処理後の信号X(n)のうち、式(8)で示される実部信号XR(n)を通信信号として伝送した場合、受信装置20は、当該通信信号XR(n)にFFT処理を施せば、式(3)の関係から、信号x(k)を生成することができ、送信データを復元することができる。
【0116】
下記の図8〜図12は、計算機シミュレーションの結果を示し、図8は、IFFT部116への入力信号x(k)の実部xr(k)、図9は、IFFT部116への入力信号x(k)の虚部xi(k)を示している。図10は、IFFT処理後の実部信号XR(n)を示している。また、図11は、IFFT処理後の実部信号XR(n)にFFT処理を施して復元された信号x(k)の実部x’r(k)を示し、図12は、IFFT処理後の実部信号XR(n)にFFT処理を施して復元された信号x(k)の虚部x’i(k)を示している。
【0117】
図8と図11、および図9と図12を比較すると、計算機シミュレーションの結果からも、IFFT処理後の実部信号XR(n)にFFT処理を施せば、IFFT処理前の入力信号x(k)を復元できることが分かる。
【0118】
このように、本実施形態の通信システム1によれば、OFDM信号を構成するN個のサブキャリアそれぞれを、各サブキャリアの周波数の昇順で、0からN−1までの整数を用いて番号付けしたとき場合、N/2−1以下の番号が付された各サブキャリアを用いてデータの伝送を行っても、受信装置20において送信データを復元することができる。
【0119】
以上のような通信システム1の送信装置10では、虚部の信号を除いた実部の信号に基づく通信信号が直交変調されることなく送信されるので、送信装置10から直交変調を行うための構成を省くことができ、ひいては、送信装置10の小型化、低コスト化および省電力化を実現することが可能になる。
【0120】
また、受信装置20は、送信装置10において、直交変調されていない実数信号を受信するので、受信装置20では、直交検波を行うための構成、および直交検波によって生成される高周波成分の信号を除去するためのローパスフィルタが不要となる。これによれば、受信装置20の小型化、低コスト化および省電力化を実現することが可能になる。
【0121】
また、送信装置10は、全サブキャリアのうち、N/2−1よりも大きい番号が付された非伝送帯域のサブキャリアにデータ信号を乗せないで通信を行うので、送信装置10から通信信号の帯域を制限するための帯域制限フィルタを省くことが可能になり、送信装置10の小型化、および低コスト化を実現することが可能になる。
【0122】
なお、上記では、IFFT部116への入力信号を実質的に左右対称な信号とするために、N/2−1以下の番号が付されたサブキャリアにはデータ信号を割り当て、N/2−1よりも大きい番号が付されたサブキャリアにはデータ信号を割り当てないようにしていたが、サブキャリアへのデータ信号の割り当て態様を反対にしてもよい。すなわち、N/2−1よりも大きい番号が付されたサブキャリアにはデータ信号を割り当て、N/2−1以下の番号が付されたサブキャリアにはデータ信号を割り当てないようにして、IFFT部116への入力信号を実質的に左右対称な信号としてもよい。
【0123】
[6.プリアンブル信号の生成に用いるデータ配置パターンについて]
次に、プリアンブル信号を生成する際に用いられる、各サブキャリアへのデータ配置パターンについて、詳述する。図13は、STF51Sを生成する際に用いるデータ配置パターンPTSの一例を示す図である。図14は、図13のデータ配置パターンPTSを用いて生成されたSTF51Sの波形を示す図である。図15は、LTF51Lを生成する際に用いるデータ配置パターンPTLの一例を示す図である。
【0124】
プリアンブル51に含まれる、STF51Sを生成する際には、下記の設定規則(Rs1)〜(Rs4)に従って設定されたデータ配置パターンを採用する。
【0125】
(Rs1)伝送帯域のサブキャリアに実数のプリアンブルデータ信号が配置されること。
【0126】
(Rs2)STF51Sは、数周期分の周期性を有していること。
【0127】
(Rs3)平均電力に対する最大電力の比(PAPR:Peak to Average Power Ratio)が1に近いこと。
【0128】
(Rs4)STF51Sのパワー(電力)が、送信データを含むOFDMシンボルのパワーより6dB高いこと。
【0129】
設定規則(Rs1)は、STF51Sに含まれる情報を受信装置20に伝送するための前提条件である。
【0130】
また、設定規則(Rs2)のように、STF51Sが数周期分の周期性を有せば、プリアンブル信号を早期に検出することが可能になる。具体的には、受信装置20で行われるプリアンブル信号の検出処理は、相関演算を利用して同じ信号が検出されたか否かに基づいて行われる。このため、1つのSTFが1周期分の周期性を有している場合は、1つ以上のSTFを受信しなければ、プリアンブル信号を検出できないことになる。これに対して、本実施形態では、1つのSTF51Sが数周期分の周期性を有しているので、1つのSTF51S内で、プリアンブル信号の検出を行うことが可能になる。これによれば、プリアンブル信号を早期に検出することが可能になる。
【0131】
また、相関演算では、先に受信した信号を一旦バッファに記憶して遅延させ、先に受信した信号と後に受信した信号とを用いて相関演算が行われるが、1つのSTF51Sが数周期分の周期性を有せば、受信した信号を記憶しておくバッファの容量を低減することができる。例えば、1つのSTFが1周期分の周期性を有している場合、相関演算を行うには、当該1つのSTFを記憶しておく必要があり、少なくとも当該1つのSTFを記憶可能な容量を有するバッファが必要になる。これに対して、本実施形態のように、1つのSTF51Sが数周期分の周期性を有している場合、相関演算を行うために必要となる信号のデータ量が減るので、バッファの容量を低減することが可能になる。
【0132】
なお、本実施形態では、1つのSTF51Sにおいて、4周期分の周期性を持たせている。これは、周期が短すぎると相関がとれなくなり、周期が長くなるとバッファの容量が大きくなるため、相関演算の実現性とバッファ容量の低減要請とのバランスを考慮して定めたものである。
【0133】
設定規則(Rs3)は、送信信号を増幅する増幅器(アンプ)の設計を容易にするための条件である。具体的には、OFDM信号を送信する送信装置では、増幅器のダイナミックレンジ(信号振幅の最大と最小の範囲)を広くとって信号が歪まないように設計される。このため、STFのPAPRが1に近い場合、増幅器の設計が容易になる。
【0134】
設定規則(Rs4)は、S/N比を上げてプリアンブル信号を検出し易くするための条件である。
【0135】
図13には、上記4つの設定規則(Rs1)〜(Rs4)に従って設定されたデータ配置パターンPTSが例示されている。
【0136】
当該データ配置パターンPTSは、128個のサブキャリアを、各サブキャリアの中心周波数の昇順で、0から127までの整数を用いて番号付けしたとき、78番のサブキャリアと、86番のサブキャリアと、102番のサブキャリアとに、「2.82×2」のプリアンブルデータ信号を乗せ、94番のサブキャリアに「−2.82×2」のプリアンブルデータ信号を乗せることを示している。なお、データ配置パターンPTSは、128個のサブキャリアのうち、プリアンブルデータ信号を乗せない他のサブキャリアに対しては、ゼロを乗せることを示すとも言える。
【0137】
このようなデータ配置パターンPTSを用いて生成されたSTF51Sでは、帯域幅が131.25kHz〜356.25kHzとなり、PAPRが1.69、周期が4となる。また、STF51Sのパワーは、送信データを送信するOFDMシンボルのパワーより6dB高くなる。
【0138】
以下では、データ配置パターンの設定手順について、図13のデータ配置パターンPTSを設定する場合を例にして詳述する。なお、図13のデータ配置パターンPTSを用いて生成されるSTF51Sをプリアンブル信号として採用する通信システムでは、128個のサブキャリアで構成されたOFDM信号を用いて通信が行われ、一次変調方式としてQPSK変調方式が採用されているものとする。
【0139】
データ配置パターンは、下記の設定手順(Js1)〜(Js5)を順に踏むことによって設定することができる。
【0140】
具体的には、設定手順(Js1)では、伝送帯域に応じて、使用するサブキャリアが特定される。
【0141】
図13のデータ配置パターンPTSを設定する際には、103.125kHz〜393.75kHzの帯域に含まれるサブキャリアが特定される。103.125kHz〜393.75kHzの帯域に含まれるサブキャリアは、75番のサブキャリアから106番のサブキャリアまでの計32個のサブキャリアであり、当該32個のサブキャリアが使用するサブキャリアとして特定されることになる。
【0142】
次の設定手順(Js2)では、1つのSTF51S内で周期性を持たせるために、プリアンブルデータ信号を乗せるサブキャリアの位置および数が決定される。
【0143】
上述のように、フーリエ変換理論では、「IFFT部への入力が実数の偶関数であれば、IFFT部からの出力は、実数の偶関数になる」という理論が存在する。
【0144】
ここで、プリアンブルデータ信号は実数であるため、データ配置パターンに従ってプリアンブルデータ信号をサブキャリアに配置することによって得られる周波数領域の信号(IFFT処理前の周波数領域のSTF)は、実数信号となる。また、当該実数信号は、伝送帯域に含まれるサブキャリアにプリアンブルデータ信号を配置して得られたものであることから、実質的に対称性を有した信号と見ることができる。そうすると、IFFT処理前の周波数領域のSTFは、実数の偶関数と見ることができ、当該周波数領域のSTFに、IFFT処理を施すことによって生成された時間領域の信号のうち、実部をとって得られる信号は、1OFDMシンボル期間において左右対称の偶関数となる。
【0145】
IFFT処理後の実部信号が1OFDMシンボル期間において左右対称の偶関数になることは、上記式(8)において、IFFT部116への入力信号x(k)の虚部xi(k)を「0」としたときに得られる式が、「IFFT部への入力が実数の偶関数であれば、IFFT部からの出力は、実数の偶関数になる」という理論を表した上記式(1)と同じ形となることからも証明される。
【0146】
またさらに、連続した番号が付されたサブキャリア(連番のサブキャリア)において、奇数個のサブキャリア置きに等間隔で、プリアンブルデータ信号をサブキャリアに配置するとともに、プリアンブルデータ信号を配置するサブキャリアの数を偶数とした場合、1OFDMシンボルの左半分或いは右半分においても対称性をもたらすことができる。
【0147】
図13のデータ配置パターンPTSでは、伝送帯域に含まれる、連続して並ぶサブキャリアにおいて、7個のサブキャリア置きに等間隔でプリアンブルデータ信号を配置するとともに、プリアンブルデータ信号を配置するサブキャリア数を4としている。このようなデータ配置パターンPTSを用いて生成されるSTF51Sは、図14に示されるような4対称の信号となる。
【0148】
このような4対称な信号に対して相関演算を行った場合、相関演算結果の絶対値は、周期4の信号に対して相関演算を行ったときの相関演算結果の絶対値と同じになる。上記では、説明の便宜上、STF51Sを周期性を有した信号と称したが、厳密には、対称性を有した信号である。
【0149】
次の設定手順(Js3)では、STF51Sのパワーと、送信データを送信するOFDMシンボルのパワーとを等しくする、プリアンブルデータ信号の基準振幅が算出される。
【0150】
例えば、伝送帯域に含まれるサブキャリアの数を32個とし、QPSK変調方式で一次変調された振幅「1」のデータ信号を32個の各サブキャリアに乗せてOFDMシンボルを生成する場合、当該OFDMシンボルのパワーPDは、式(9)のように「32」となる。
【0151】
【数9】

【0152】
一方、STF51Sでは、プリアンブルデータ信号を乗せるサブキャリア数は、4であるため、プリアンブルデータ信号を実部I=1,虚部Q=0の信号と仮定すると、STF51SのパワーPSは、「4」になる。
【0153】
OFDMシンボルのパワーPDのSTF51SのパワーPSに対する比PD/PSは、32/4=8となる。また、電圧または電流の2乗がパワーに相当するため、STF51SのパワーPSと、OFDMシンボルのパワーPDとを等しくする、プリアンブルデータ信号の基準振幅は、8の平方根である2.82となる。
【0154】
次の設定手順(Js4)では、STF51SのパワーPSを、送信データを送信するOFDMシンボルのパワーPDよりも6dB高くするために基準振幅に乗算する係数が決定される。
【0155】
STF51SのパワーPSを、送信データを送信するOFDMシンボルのパワーPDよりも6dB高くするための係数は、「2」である。すなわち、プリアンブルデータ信号の値(振幅)を2.82×2とすれば、式(10)に示されるように、STF51SのパワーPSは、送信データを送信するOFDMシンボルのパワーPDよりも6dB高くなる。
【0156】
【数10】

【0157】
そして、設定手順(Js5)では、PAPRが最も小さくなる、プリアンブルデータ信号の符号の組合わせが選択される。
【0158】
OFDM信号は、異なるデータ信号で変調された複数のサブキャリアを重ね合わせて得られた信号であるため、同相合成によって、PAPRが大きくなる可能性がある。そこで、PAPRが大きくならないように、プリアンブルデータ信号の符号の組合わせが調整される。
【0159】
図13のデータ配置パターンPTSでは、プリアンブルデータ信号を乗せるサブキャリア数は、4であるため、プリアンブルデータ信号の符号の組合せの総数は、24=16通りとなる。16通り分のPAPRを算出した結果、78番のサブキャリアに乗せるプリアンブル信号の符号を「+」、86番のサブキャリアに乗せるプリアンブル信号の符号を「+」、94番のサブキャリアに乗せるプリアンブル信号の符号を「−」、102番のサブキャリアに乗せるプリアンブル信号の符号を「+」とした場合、PAPRが最も小さくなった。
【0160】
このように、本実施形態では、STF51Sを生成するためのデータ配置パターンは、上記の各設定規則(Rs1)〜(Rs4)に従って設定される。
【0161】
次に、プリアンブル51に含まれる、LTF51Lを生成する際に用いるデータ配置パターンについて説明する。
【0162】
プリアンブル51に含まれる、LTF51Lを生成する際には、下記の設定規則(RL1)〜(RL4)に従って設定されたデータ配置パターンが用いられる。
【0163】
(RL1)伝送帯域のサブキャリアに実数のプリアンブルデータ信号が配置されること。
【0164】
(RL2)平均電力に対する最大電力の比(PAPR)が1に近いこと。
【0165】
(RL3)プリアンブルデータ信号が疑似乱数バイナリ(ビット)シーケンス(PRBS:Pseudo Random Binary(Bit) Sequence)であること。
【0166】
設定規則(RL1)は、STF51Sの設定規則(Rs1)と同様、LTF51Lに含まれる情報を受信装置20に伝送するための前提条件である。
【0167】
設定規則(RL2)は、STF51Sの設定規則(Rs3)と同様、送信信号を増幅する増幅器(アンプ)の設計を容易にするための条件である。
【0168】
設定規則(RL3)は、送信装置10において、伝送路推定率を向上させるための条件である。LTF51Lは、伝送路推定に用いられるため、LTF51Lのプリアンブルデータ信号は、周波数領域でも時間領域でも偏りのない信号であることが好ましい。このため、プリアンブルデータ信号にPRBSを採用すれば、送信装置10において、伝送路推定率を向上させることができる。
【0169】
図15には、上記3つの設定規則(RL1)〜(RL3)に従って設定されたデータ配置パターンPTLが例示されている。
【0170】
当該データ配置パターンPTLは、128個のサブキャリアを、各サブキャリアの中心周波数の昇順で、0から127までの整数を用いて番号付けしたとき、75番、78番、80番、81番、82番、85番、86番、87番、92番、94番、95番、96番、104番および105番の各サブキャリアに、「1」のプリアンブルデータ信号を乗せ、76番、77番、79番、83番、84番、88番、89番、90番、91番、93番、97番、98番、99番、100番、101番、102番、103番および106番の各サブキャリアに「−1」のプリアンブルデータ信号を乗せることを示している。なお、データ配置パターンPTLは、128個のサブキャリアのうち、プリアンブルデータ信号を乗せない他のサブキャリアに対しては、ゼロを乗せることを示すとも言える。
【0171】
このようなデータ配置パターンPTLを用いて生成されたLTF51Lでは、帯域幅が103.125kHz〜393.75kHzとなり、PAPRが1.96となる。
【0172】
[7.受信装置20に含まれるプリアンブル検出部202の詳細構成]
次に、受信装置20に含まれるプリアンブル検出部202(図4)の構成について詳述する。図16は、プリアンブル検出部202内の相関演算部22の構成を示す図である。
【0173】
プリアンブル検出部202は、受信部201から出力される受信信号に対して相関演算を施す相関演算部22を有している。
【0174】
具体的には、図16に示されるように、相関演算部22は、遅延回路221と、2つの乗算回路222,223と、2つの移動平均フィルタ224,225と、除算回路226とを有している。
【0175】
相関演算部22では、受信信号が、遅延回路221と、2つの乗算回路222,223とにそれぞれ入力される。
【0176】
遅延回路221は、受信信号を所定時間M、遅延させて出力する。遅延時間MはSTF51Sの周期の自然数倍に設定可能であるが、Mの値が大きくなると遅延が大きくなるので、ここでは、MをSTF51Sの1周期分(M=32サンプル)に設定する。なお、Mの設定値は既知であり、受信装置20に予め与えられている。
【0177】
遅延回路221の出力は、乗算回路222によって受信信号と乗算され、乗算結果は移動平均フィルタ224へ入力される。
【0178】
移動平均フィルタ224は、所定時間幅に関して入力信号(すなわち乗算回路222の出力)の移動平均を演算し、演算結果を除算回路226に出力する。
【0179】
また、乗算回路223は、受信信号同士を乗算し、乗算結果を移動平均フィルタ225に出力する。
【0180】
移動平均フィルタ225は、乗算回路223の出力の移動平均を演算し、演算結果を除算回路226に出力する。
【0181】
除算回路226は、移動平均フィルタ224の出力と移動平均フィルタ225の出力とを除算することによって正規化を行い、除算後の信号を相関演算結果として出力する。
【0182】
プリアンブル検出部202は、上記のような相関演算部22からの出力信号の振幅を抽出し、当該振幅を所定の閾値と比較することによって、プリアンブル信号を検出したか否かを判定する。
【0183】
上述のように、送信装置10のプリアンブル出力部119から出力されるプリアンブル信号は、データ配置パターンPTS,PTLに従って得られる周波数領域の信号に、IFFT処理を施すことによって生成される時間領域の信号のうち、虚部の信号を除いた実部の信号である。そして、送信装置10は、送信データを含むOFDM信号に当該プリアンブル信号を付加してパケット信号を構成し、当該パケット信号を通信信号として送信する。このため、通信信号に含まれるプリアンブル信号は、直交変調を受けていない実数信号であり、受信装置20は、受信したプリアンブル信号に対して直交検波を行わない。
【0184】
プリアンブル信号が複素信号であった場合、受信装置では、相関演算部において受信信号の複素共役信号を生成する複素共役回路が必要になる。これに対して、本実施形態の受信装置20は、実数のプリアンブル信号を受信するため、相関演算部22において複素共役回路が不要となる。これによれば、受信装置20におけるプリアンブル検出部202の回路規模を縮小化できるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0185】
受信したプリアンブル信号に対して直交検波を行う場合は、直交検波後のプリアンブル信号は複素信号となるため、受信装置では、相関演算部において受信信号の複素共役信号を生成する複素共役回路が必要になる。
【0186】
これに対して、本実施形態の受信装置20は、受信したプリアンブル信号に直交検波を行わないため、プリアンブル信号は実数信号である。このため、相関演算部22において複素共役回路が不要となる。これによれば、受信装置20におけるプリアンブル検出部202の回路規模を縮小化できるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0187】
以上のように、送信装置10と受信装置20とを含む通信システム1において、送信装置10は、送信データを含む送信信号を生成する生成手段と、送信信号にプリアンブル信号を付加したパケット信号を送信する送信手段とを備え、当該送信手段は、直交変調を施すことなく、パケット信号を送信する。そして、プリアンブル信号は、複数のサブキャリアから構成されるOFDM信号である。また、当該プリアンブル信号は、所定の配置パターンに従って、各サブキャリアにプリアンブルデータを割り当てて得られた周波数領域の信号に、IFFT処理を施すことによって生成される時間領域の信号のうち、虚部の信号を除いた実部の信号である。さらに、所定の配置パターンは、前記複数のサブキャリアを、各サブキャリアの中心周波数の昇順で、0からN−1(Nは整数)までの整数を用いて番号付けした場合、N/2−1以下の番号が付された各サブキャリアのうちのいずれかに前記プリアンブルデータを割り当て、N/2−1よりも大きい番号が付されたサブキャリアには、前記プリアンブルデータを割り当てないこと、或いは、N/2−1よりも大きい番号が付された各サブキャリアのうちのいずれかに前記プリアンブルデータを割り当て、N/2−1以下の番号が付されたサブキャリアには、前記プリアンブルデータを割り当てないことを示している。
【0188】
また、通信システム1における受信装置20は、パケット信号を受信する受信部201と、パケット信号に含まれるプリアンブル信号を検出するプリアンブル検出部202とを備えている。プリアンブル検出部201は、パケット信号に相関演算を施して得られる、相関演算結果を利用してプリアンブル信号の検出を行う。また、プリアンブル検出部201は、受信したプリアンブル信号の複素共役信号を生成する複素共役部を有していない。
【0189】
このような通信システム1によれば、送信装置10から送信されるパケット信号は、直交変調されていない実数信号であるため、受信装置20において、直交検波を行うための構成、および受信したプリアンブル信号の複素共役信号を生成する複素共役部が不要になり、部品点数を削減することができる。部品点数の削減により、ひいては、受信装置20の小型化および低コスト化、および省電力化を実現することが可能になる。
【0190】
<変形例>
以上、実施形態について説明したが、この発明は、上記に説明した内容に限定されるものではない。
【0191】
例えば、上記実施形態では、通信システム1における送信装置10および受信装置20が、有線通信によって通信可能に構成される態様を例示したがこれに限定されない。具体的には、送信装置10と受信装置20とは、無線通信によって通信可能に構成される態様であってもよい。無線通信によって通信可能に構成される場合、送信装置10は、ベースバンドのOFDM信号を搬送帯域のOFDM信号にする周波数変換部を有する構成となるが、直交変調部は不要である。一方、受信装置20は、搬送帯域のOFDM信号をベースバンドのOFDM信号にする周波数変換部を有する構成となるが、直交検波部は不要である。
【符号の説明】
【0192】
1 通信システム
10 受信装置(通信装置)
10 送信装置(通信装置)
119 プリアンブル出力部
120 パケット構成部
121 送信部
201 受信部
202 プリアンブル検出部
22 相関演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信データを含む送信信号を生成する生成手段と、
前記送信信号にプリアンブル信号を付加したパケット信号を送信する送信手段と、
を備え、
前記プリアンブル信号は、複数のサブキャリアから構成されるOFDM信号であり、
前記プリアンブル信号は、所定の配置パターンに従って、各サブキャリアにプリアンブルデータを割り当てて得られた周波数領域の信号に、IFFT処理を施すことによって生成される時間領域の信号のうち、虚部の信号を除いた実部の信号であり、
前記所定の配置パターンは、前記複数のサブキャリアを、各サブキャリアの中心周波数の昇順で、0からN−1(Nは整数)までの整数を用いて番号付けした場合、
N/2−1以下の番号が付された各サブキャリアのうちのいずれかに前記プリアンブルデータを割り当て、N/2−1よりも大きい番号が付されたサブキャリアには、前記プリアンブルデータを割り当てないこと、
或いは、
N/2−1よりも大きい番号が付された各サブキャリアのうちのいずれかに前記プリアンブルデータを割り当て、N/2−1以下の番号が付されたサブキャリアには、前記プリアンブルデータを割り当てないことを示し、
前記送信手段は、直交変調を施すことなく、前記パケット信号を送信する通信装置。
【請求項2】
前記プリアンブル信号には、1OFDMシンボル単位のショートプリアンブル信号が含まれ、
前記ショートプリアンブル信号に関する所定の配置パターンは、連続した番号が付されたサブキャリアにおいて、奇数個のサブキャリア置きに等間隔で、偶数個のサブキャリアに前記プリアンブルデータを割り当てることを示す請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記プリアンブル信号には、1OFDMシンボル単位のショートプリアンブル信号が含まれ、
前記ショートプリアンブル信号に関する所定の配置パターンは、前記ショートプリアンブル信号のPAPR(Peak to Average Power Ratio)が1に近くなるように、前記プリアンブルデータをサブキャリアに割り当てることを示す請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記プリアンブル信号には、1OFDMシンボル単位のショートプリアンブル信号が含まれ、
前記ショートプリアンブル信号に関する所定の配置パターンは、前記ショートプリアンブル信号の電力が、1OFDMシンボルの前記送信信号の電力よりも6dB高くなるように、前記プリアンブルデータをサブキャリアに割り当てることを示す請求項1から請求項3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項5】
前記プリアンブル信号には、1OFDMシンボル単位のロングプリアンブル信号が含まれ、
前記ロングプリアンブル信号に関する所定の配置パターンは、前記ロングプリアンブル信号のPAPRが1に近くなるように、前記プリアンブルデータをサブキャリアに割り当てることを示す請求項1から請求項4のいずれかに記載の通信装置。
【請求項6】
前記プリアンブル信号には、1OFDMシンボル単位のロングプリアンブル信号が含まれ、
前記ロングプリアンブル信号に関する所定の配置パターンは、PRBS(Pseudo Random Binary(Bit) Sequence)の前記プリアンブルデータをサブキャリアに割り当てることを示す請求項1から請求項5のいずれかに記載の通信装置。
【請求項7】
送信データを含む送信信号を生成する生成手段と、
前記送信信号にプリアンブル信号を付加したパケット信号を送信する送信手段と、
を備え、
前記プリアンブル信号には、1OFDMシンボル単位のショートプリアンブル信号が含まれ、
前記ショートプリアンブル信号は、所定の配置パターンに従って、前記ショートプリアンブル信号を構成する各サブキャリアにプリアンブルデータを割り当てて得られた周波数領域の信号に、IFFT処理を施すことによって生成される時間領域の信号のうち、虚部の信号を除いた実部の信号であり、
前記ショートプリアンブル信号に関する前記所定の配置パターンは、前記ショートプリアンブル信号を構成する128個のサブキャリアを、各サブキャリアの中心周波数の昇順で、0から127までの整数を用いて番号付けしたとき、78番のサブキャリアと、86番のサブキャリアと、102番のサブキャリアとに、「2.82×2」のプリアンブルデータを割り当て、94番のサブキャリアに「−2.82×2」のプリアンブルデータを割り当てることを示し、
前記送信手段は、直交変調を施すことなく、前記パケット信号を送信する通信装置。
【請求項8】
送信データを含む送信信号を生成する生成手段と、
前記送信信号にプリアンブル信号を付加したパケット信号を送信する送信手段と、
を備え、
前記プリアンブル信号には、1OFDMシンボル単位のロングプリアンブル信号が含まれ、
前記ロングプリアンブル信号は、所定の配置パターンに従って、前記ロングプリアンブル信号を構成する各サブキャリアにプリアンブルデータを割り当てて得られた周波数領域の信号に、IFFT処理を施すことによって生成される時間領域の信号のうち、虚部の信号を除いた実部の信号であり、
前記ロングプリアンブル信号に関する前記所定の配置パターンは、前記ロングプリアンブル信号を構成する128個のサブキャリアを、各サブキャリアの中心周波数の昇順で、0から127までの整数を用いて番号付けしたとき、75番、78番、80番、81番、82番、85番、86番、87番、92番、94番、95番、96番、104番および105番の各サブキャリアに、「1」のプリアンブルデータを割り当て、76番、77番、79番、83番、84番、88番、89番、90番、91番、93番、97番、98番、99番、100番、101番、102番、103番および106番の各サブキャリアに「−1」のプリアンブルデータを割り当てることを示し、
前記送信手段は、直交変調を施すことなく、前記パケット信号を送信する通信装置。
【請求項9】
パケット信号を受信する受信手段と、
パケット信号に含まれるプリアンブル信号を検出するプリアンブル検出手段と、
を備え、
前記パケット信号は、送信装置において直交変調されていない実数の信号であり、
前記プリアンブル検出手段は、前記パケット信号に相関演算を施して得られる、相関演算結果を利用してプリアンブル信号の検出を行い、
前記プリアンブル検出手段は、受信したプリアンブル信号の複素共役信号を生成する複素共役部を有さない通信装置。
【請求項10】
第1通信装置と、
前記第1通信装置と通信を行う第2通信装置と、
を備え、
前記第1通信装置は、
送信データを含む送信信号を生成する生成手段と、
前記送信信号にプリアンブル信号を付加したパケット信号を送信する送信手段と、
を有し、
前記プリアンブル信号は、複数のサブキャリアから構成されるOFDM信号であり、
前記プリアンブル信号は、所定の配置パターンに従って、各サブキャリアにプリアンブルデータを割り当てて得られた周波数領域の信号に、IFFT処理を施すことによって生成される時間領域の信号のうち、虚部の信号を除いた実部の信号であり、
前記所定の配置パターンは、前記複数のサブキャリアを、各サブキャリアの中心周波数の昇順で、0からN−1(Nは整数)までの整数を用いて番号付けした場合、
N/2−1以下の番号が付された各サブキャリアのうちのいずれかに前記プリアンブルデータを割り当て、N/2−1よりも大きい番号が付されたサブキャリアには、前記プリアンブルデータを割り当てないこと、
或いは、
N/2−1よりも大きい番号が付された各サブキャリアのうちのいずれかに前記プリアンブルデータを割り当て、N/2−1以下の番号が付されたサブキャリアには、前記プリアンブルデータを割り当てないことを示し、
前記送信手段は、直交変調を施すことなく、前記パケット信号を送信し、
前記第2通信装置は、
前記パケット信号を受信する受信手段と、
前記パケット信号に含まれる前記プリアンブル信号を検出するプリアンブル検出手段と、
を有し、
前記プリアンブル検出手段は、前記パケット信号に相関演算を施して得られる、相関演算結果を利用してプリアンブル信号の検出を行い、
前記プリアンブル検出手段は、受信したプリアンブル信号の複素共役信号を生成する複素共役部を有さない通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−90239(P2013−90239A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230865(P2011−230865)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】