通信装置および通信方法
【課題】人体等を介した通信における接触対象または近接対象としての通信媒体の状態によらずに、通信特性の安定化を実現することが可能な通信装置および通信方法を提供する。
【解決手段】通信装置1は、通信媒体としての導電性媒質と静電結合する通信電極と、接地としての周囲環境と静電結合する接地電極と、を含む信号電極11(1)〜11(n)を備える通信装置であって、通信電極と接地電極との間に電力を印加する送信部12と、通信電極と接地電極との間の電位差を検出してこの電位差に基づいて、複数の信号電極の中から、通信電極として用いる信号電極と、接地電極として用いる信号電極と、の組み合わせを決定する電極制御部15と、決定された組み合わせに基づいて、信号電極11(1)〜11(n)の中から、通信電極と接地電極とを切り替える電極変更部14と、を備える。
【解決手段】通信装置1は、通信媒体としての導電性媒質と静電結合する通信電極と、接地としての周囲環境と静電結合する接地電極と、を含む信号電極11(1)〜11(n)を備える通信装置であって、通信電極と接地電極との間に電力を印加する送信部12と、通信電極と接地電極との間の電位差を検出してこの電位差に基づいて、複数の信号電極の中から、通信電極として用いる信号電極と、接地電極として用いる信号電極と、の組み合わせを決定する電極制御部15と、決定された組み合わせに基づいて、信号電極11(1)〜11(n)の中から、通信電極と接地電極とを切り替える電極変更部14と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性を有する媒質を介して行われる通信を実現する通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人体等の導電性を有する媒質(以下、総称して人体と表記する)を伝送路として用いて、その近傍の限られた領域内で通信を行う技術(以下、総称して人体通信と表記する)の研究が行われている(例えば、下記の特許文献1および非特許文献1参照)。人体通信においては、送信装置および受信装置の両方ともが人体に接触または近接した場合に送受信装置間の通信経路が確立される。
【0003】
通常、送受信装置はそれぞれ2枚1組の信号電極(以下、信号電極対と表記する)を備えており、そのうちの一方の信号電極(以下、通信電極と表記する)が主に人体と静電結合するとともに、他方の信号電極(以下、接地電極と表記する)が主に人体の周囲にある地面や壁などの外部環境と静電結合して、見かけ上の閉回路を形成することによって送信装置から受信装置への情報の伝送が行われる。
【0004】
送信装置では、通信電極と接地電極との間に電力を印加し、これらの電極間に電位差を与えて人体近傍に電界を誘起することによって情報を送信する。一方、受信装置では、送信装置により人体近傍に誘起された電界によって信号電極対の電極間に生じる電位差を検出することによって、送信装置からの情報を受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−128536号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“RedTacton(レッドタクトン)とは?”、[online]、平成20年、日本電信電話株式会社、[平成20年3月2日検索]、インターネット<URL:http://www.redtacton.com/jp/info/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、そのような通信装置を通常使用する場合、信号電極対の通信電極および接地電極がそれぞれ人体および外部環境のみと静電結合するわけではなく、例えば図1に示すように、理想的には本来、外部環境のみと結合する側の接地電極であっても人体との静電結合が多少なりとも生じる。
【0008】
そのため、送信装置の場合には信号電極対の電極間に印加される信号電力(送信電力)が同じであっても、これらの電極間に誘起される電位差が小さくなるため、送信性能が低下するという問題があった。つまり、信号電極対の人体への接触状態または近接状態によって、信号電極対の電極間に同じ電力を給電した場合でも、この信号電極対からの反射電力が増加するため、送信性能が低下することがあるという問題があった。
【0009】
また、受信装置の場合も同様に、信号の検出感度(受信感度)が同じであっても信号電極対の電極間に誘起される電位差が小さくなるため、受信性能が低下することがあるという問題があった。
【0010】
特に、人間が通信装置を手に持って使用する場合には、通信電極と接地電極の両方に同時に手が触れることがあり、そのような場合には通信電極と接地電極の両方と人体との結合がより大きくなるため、通信性能の劣化が非常に大きくなることがあるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、人体等を介した通信における接触対象または近接対象としての通信媒体の状態によらずに、通信特性の安定化を実現することが可能な通信装置および通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の通信装置は、通信媒体としての導電性媒質と静電結合する通信電極と、接地としての周囲環境と静電結合する接地電極と、を含む複数の信号電極を備える通信装置であって、通信電極と接地電極との間に電力を印加する送信手段と、通信電極と接地電極との間の電位差を検出する検出手段と、複数の信号電極の中から、通信電極として用いる信号電極と、接地電極として用いる信号電極と、の組み合わせを決定する電極制御手段と、電極制御手段により決定された組み合わせに基づいて、複数の信号電極の中から、通信電極と接地電極とを切り替える電極変更手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の通信方法は、通信媒体としての導電性媒質と静電結合する通信電極と、接地としての周囲環境と静電結合する接地電極と、を含む複数の信号電極を備える通信装置によって行われる通信方法であって、通信装置が、通信電極と接地電極との間に電力を印加する送信ステップと、通信装置が、通信電極と接地電極との間の電位差を検出する検出ステップと、通信装置が、複数の信号電極の中から、通信電極として用いる信号電極と、接地電極として用いる信号電極と、の組み合わせを決定する電極制御ステップと、通信装置が、電極制御ステップにより決定された組み合わせに基づいて、複数の信号電極の中から、通信電極と接地電極とを切り替える電極変更ステップと、を有することを特徴とする。
【0014】
これらの発明では、通信を行う場合、通信装置が、複数の信号電極の中から、通信電極として用いる信号電極と、接地電極として用いる信号電極と、の組み合わせを決定する。そして、決定された組み合わせに基づいて、複数の信号電極の中から、通信電極と接地電極とを切り替える。このため、通信装置と通信媒体との静電結合の様子が変化することによって通信装置の通信性能が変化しても、検出された電位差に基づいて、通信電極と接地電極との適切な組み合わせが決定されて切り替えられる。この結果、人体等を介した通信における接触対象または近接対象としての通信媒体の状態によらずに、通信特性の安定化を実現することができる。
【0015】
また、上記の通信装置は、送信手段によって通信電極と接地電極との間に電力が印加された場合の反射電力を測定する計測手段を更に備え、電極制御手段は、計測手段によって測定された反射電力に基づいて、組み合わせを決定するようにしてもよい。
【0016】
これにより、通信電極と接地電極との間に電力が印加された場合の反射電力を測定し、測定された反射電力に基づいて、組み合わせを決定することができる。このため、通信装置と通信媒体との静電結合の様子が変化することによって通信装置の通信性能が変化するのに伴って、測定された反射電力の大きさが変化しても、測定された反射電力に基づいて、通信電極と接地電極との適切な組み合わせが決定されて切り替えられる。この結果、人体等を介した通信における接触対象または近接対象としての通信媒体の状態によらずに、通信特性の更なる安定化を実現することができる。
【0017】
また、電極制御手段は、計測手段によって測定される反射電力が最も小さくなるような組み合わせを選択して決定するようにしてもよい。
【0018】
これにより、測定される反射電力が最も小さくなるような組み合わせが選択されて決定される。ここで、通信性能が安定している場合には反射電力の値が小さくなることから、通信電極と接地電極との組み合わせのうち最も通信特性の良い組み合わせを用いて通信を行うようにすることができる。
【0019】
また、電極制御手段は、計測手段によって測定される反射電力が所定値以下となるような組み合わせを選択して決定するようにしてもよい。
【0020】
これにより、測定される反射電力が所定値以下となるような組み合わせが選択されて決定される。ここで、この所定値を、通信特性が安定する場合の最大値として設定し、測定される反射電力がこの所定値以下となるような組み合わせを用いることによって、通信特性の更なる安定化を実現することができる。
【0021】
また、上記の通信装置は、複数の信号電極のそれぞれと通信媒体との接触または近接の状態を検出する検知手段を更に備え、電極制御手段は、検知手段によって検出された接触または近接の状態に基づいて、組み合わせを選択して決定するようにしてもよい。特に、電極制御手段は、検知手段によって検出される接触または近接の状態が異なるような組み合わせを選択して決定するようにしてもよい。なお、検知手段は、タッチセンサまたは近接センサを含んで構成されるようにしてもよい。
【0022】
これにより、複数の信号電極のそれぞれと通信媒体との接触または近接の状態を検出し、検出された接触または近接の状態に基づいて、組み合わせが選択されて決定される。特に、検出される接触または近接の状態が異なるような組み合わせが選択されて決定される。すなわち、通信媒体との静電結合の状態が異なる信号電極の組み合わせが選択されて決定される。この結果、通信装置と通信媒体との接触または近接の状態によらずに、通信特性の更なる安定化を実現することができる。
【0023】
また、電極制御手段は、複数の信号電極のそれぞれの面積に関する面積情報を記憶する第一の記憶手段を含み、当該第一の記憶手段に記憶されている当該面積情報に基づいて、組み合わせを選択して決定するようにしてもよい。
【0024】
これにより、複数の信号電極のそれぞれの面積に関する面積情報に基づいて、組み合わせが選択されて決定される。このため、例えば、信号電極の面積が大きい電極から順に信号電極を切り替えることが可能となる。この結果、通信に使用する信号電極を短時間で選択して決定することができる。
【0025】
また、電極制御手段は、過去に決定された通信電極と接地電極との組み合わせに関する組み合わせ情報を記憶する第二の記憶手段を含み、当該第二の記憶手段に記憶されている当該組み合わせ情報に基づいて、組み合わせを選択して決定するようにしてもよい。
【0026】
これにより、過去に決定された通信電極と接地電極との組み合わせに関する組み合わせ情報に基づいて、組み合わせが選択されて決定される。このため、例えば、過去に使用された回数が多い信号電極の組み合わせから順に信号電極を切り替えることが可能となる。この結果、通信に使用する信号電極を短時間で選択して決定することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、人体等を介した通信における接触対象または近接対象としての通信媒体の状態によらずに、通信特性の安定化を実現することが可能な通信装置および通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】人体通信を説明する模式図である。
【図2】第一実施形態に係る通信装置を使用した通信システムの例を説明する説明図である。
【図3】第一実施形態に係る通信装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図4】第一実施形態に係る通信装置のハードウェア構成の一例を示す物理ブロック図である。
【図5】第一実施形態に係る通信装置が有する信号電極の配置例を説明する説明図である。
【図6】第一実施形態に係る通信装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第二実施形態に係る通信装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図8】第二実施形態に係る通信装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第三実施形態に係る通信装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図10】電極面積に関する情報を記憶するデータベースの構成例を示す図である。
【図11】第四実施形態に係る通信装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図12】電極の使用履歴を記憶するデータベースの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
(1)第一実施形態(請求項1〜4)
(1−1)通信システムの機能および構成
まず、第一実施形態に係る通信装置を有する通信システムの機能および構成を説明する。図2は、2つの通信装置1,20が、通信媒体としての導電性媒質である人体30を介しての情報の伝送(人体通信)を行う通信システムの例を表している。2つの通信装置1,20のそれぞれは、人体通信の送信装置としての機能と受信装置としての機能の両方を有している。ここでは、便宜上、通信装置1が人体通信の送信側装置であり、通信装置20が人体通信の受信側装置であるものとして説明し、以下では送信装置である通信装置1に着目して説明を行うが、受信装置である通信装置20に関しても同様である。なお、当然のことながら、2つの通信装置1,20のそれぞれは、通信媒体として人体30以外を使用する通信システムに用いられてもよい。
【0031】
(1−2)通信装置の構成
引き続き、送信側の通信装置1の構成について、図3および図4を用いて説明する。図3は、送信側の通信装置1の機能構成を示す機能ブロック図であり、図4は、通信装置1のハードウェア構成の一例を示す物理ブロック図である。通信装置1は、図3に示すように、機能的な構成要素として、n(nは3以上の整数)個の信号電極11(1)〜11(n)、送信部12(送信手段)、受信部13、電極変更部14(電極変更手段)、電極制御部15(検出手段兼電極制御手段)、および計測部16(計測手段)を備えている。なお、これらの構成要素は、CPUやROM等に所定のプログラムを読み込ませて実行することで実現してもよい。これらの構成要素は、CPU等で構成される制御回路(図示せず)により制御される。
【0032】
通信装置1は、図4に示すように、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなどを実行するCPU31、ROMおよびRAMで構成される主記憶部32、ハードディスクやメモリ等で構成される補助記憶部33、信号が入力される入力部34、および信号が出力される出力部35で構成される。後述する通信装置1における各機能は、CPU31および主記憶部32に所定のソフトウェアを読み込ませ、CPU31の制御の下で入力部34や出力部35を作動させたり、主記憶部32および補助記憶部33に対してデータの読み書きを実行させたりすることで実現される。
【0033】
通信装置1は、人体30と静電結合する通信電極と、接地としての周囲環境と静電結合する接地電極と、を含む複数の信号電極を備える通信装置である。通信装置1は、通信に使用する通信電極および接地電極の電極対としての信号電極11(1)〜11(n)から、1個または複数個の信号電極を選択するとともに、選択する電極対を適切に切り替えることによって、様々な使用状態においても良好な通信特性を提供できるようにする。また、そのために、実際に電極対を順次切り替えてそれが適切であるか否かを判定し、適切と判定される電極対を通信に使用することによって、通信特性の安定化を実現する。
【0034】
図5は、例えばn=4とした場合の通信装置1が有する信号電極11(1)〜11(4)の配置例を説明する説明図である。ここでは、通信電極として信号電極11(1)が選択され、接地電極として信号電極11(3)が組み合わせとして選択されているとし、この組み合わせでは通信装置1は通信性能が十分でないとする。この場合、通信装置1は、信号電極11(1)に対して信号電極11(2)および信号電極11(4)(または、信号電極11(3)に対して信号電極11(2)および信号電極11(4))を組み合わせて使用することによって、通信性能の安定化を実現できるかどうかを判定する。
【0035】
このとき、通信装置1は、信号電極11(1)に対して信号電極11(2)および信号電極11(4)(または、信号電極11(3)に対して信号電極11(2)および信号電極11(4))を実際に順に組み合わせて切り替えることによって、それぞれの電極対が、通信を行うために十分であるかを判定する。このように判定することによって、通信を行うために適切な電極の組み合わせを決定する。このように、通信装置1では、使用する信号電極11の組み合わせを最適なものに変更することによって、通信性能の安定化を実現する。このような効果を実現するために、各構成要素は、以下のように機能する。
【0036】
信号電極11(1)〜11(n)のそれぞれは、通信媒体および外部の周囲環境と静電結合して閉回路を形成することによって、情報の伝送を行うための素子である。信号電極11(1)〜11(n)のそれぞれは、例えば、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)通信やBluetooth通信等におけるアンテナに相当するものである。信号電極11(1)〜11(n)のそれぞれは、電極変更部14によって信号電極11の一部または全てが通信に使用されるように制御される。
【0037】
例えば、図5に示す通信装置1の例では、通信電極として信号電極11(1)が割り当てられ、接地電極として信号電極11(3)が割り当てられるといったように、通信電極および接地電極のそれぞれに対して1つの信号電極を割り当てることも可能であり、また、通信電極として信号電極11(1),11(2)が割り当てられ、接地電極として信号電極11(3),11(4)が割り当てられるといったように、通信電極および接地電極のそれぞれに対して複数の信号電極を1組にして割り当てることも可能である。
【0038】
送信部12は、現時点で選択されている電極対間(通信電極と接地電極との間)に電力を給電することにより、通信媒体としての人体30近傍に電界を誘起させて情報の送信を行う送信用素子である。また、送信部12は、計測部16による反射電力の測定を行う際の基準となる試験信号を送信するための機能も有する。
【0039】
受信部13は、他の通信装置によって通信媒体としての人体30近傍に誘起された電界により電極対間に生じる電位差を検出することによって、他の通信装置から送信された情報を受信する受信用素子である。受信部13は、通信装置1が送信装置である本実施形態においては動作しない。
【0040】
電極変更部14は、電極制御部15の指示に従って、信号電極11(1)〜11(n)を切り替えるための切り替え用素子である。電極変更部14は、例えばスイッチ素子により構成され、信号電極11(1)〜11(n)と送信部12との電気的な接続を切り替えることによって、送信部12によって給電される信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせを変更するといった切り替え処理を実行することができる。
【0041】
電極制御部15は、通信電極と接地電極との間の電位差を検出して、この検出結果に基づいて、電極変更部14をどのように制御するかを決定するための制御部分である。通信装置1では、通信に適切な信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせを決定するために、実際に信号電極11(1)〜11(n)を切り替えて適切となる組み合わせを探査する処理を行う。この処理を行うため、電極制御部15は、大別して三つの大きな機能を有する。
【0042】
一つ目の機能として、現時点で選択されている電極対が通信を行うために適切であるか否かを判定する機能を有する。電極制御部15は、計測部16により計測された反射電力の大きさに基づいて、上記の判定を行う。また、反射電力の測定を行うために、送信部12から適切なタイミングで電極対に電力が給電されるようにタイミング制御を行う。
【0043】
二つ目の機能として、上記の判定結果に応じて、信号電極11(1)〜11(n)を切り替えて適切な組み合わせを探索する動作(以下、電極の検索動作と表記)を継続するか中止するかを判定する機能を有する。上記の一つ目の機能によって、現時点での電極対が通信を行うために適切でないと判定された場合には、電極制御部15は、電極の検索動作の継続を決定する。一方、現時点での電極対が通信を行うために適切であると判定された場合には、電極制御部15は、電極の検索動作の中止を決定する。
【0044】
三つ目の機能として、上記の二つ目の機能において電極の検索動作の継続が決定された場合には、他の電極対に対して同様に通信性能の判定を行う必要があるため、次にどのような信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせに対して通信性能の判定を行うかを決定する機能を有する。
【0045】
計測部16は、送信部12によって信号電極11(1)〜11(n)から選択された通信電極と接地電極との間に電力が給電された場合に、信号電極対から放射されずに送信部12へと戻ってしまう反射電力の大きさを計測するためのセンサ部分である。計測部16によって測定された反射電力の値に基づいて、電極制御部15が、現時点で選択されている電極対が通信を行うために適切であるかを判定する。
【0046】
以上の機能を用いて、電極制御部15が、通信装置1の通信性能の低下度合いと、計測部16によって測定される反射電力の大きさとが、比例することを利用して、使用する電極対を選択して決定する。すなわち、電極制御部15は、通信装置1の通信性能が低下する場合には反射電力が増加する傾向があることを利用し、反射電力の大きさが小さくなる電極対を用いて通信するように電極の検索動作を制御する。
【0047】
例えば、電極制御部15は、信号電極11(1)〜11(n)の全ての組み合わせについて、計測部16による反射電力の測定を繰り返し実行させ、その反射電力の値が最も小さくなる信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせを最終的に選択する。これにより、最も通信性能の良い電極対を使用して情報の伝送を行うことが可能になる。
【0048】
また、他の例として、計測部16によって計測される反射電力の値が予め設定されている閾値(所定値)以下となる電極対が発見された場合に、電極制御部15は、電極の検索動作を中止させるようにしてもよい。このように、安定した通信が可能となる状態における反射電力の最大値を予め閾値として定義しておき、この閾値よりも反射電力が小さくなる電極対が使用されれば、安定した通信が可能になる。この結果、網羅的な電極の検索動作が不要となるため、比較的短時間で電極の検索動作を終了させて、情報の伝送を開始させることが可能になる。
【0049】
(1−3)通信装置における処理
引き続き、通信装置1によって行われる処理の流れ(通信方法)について、図6を用いて説明する。図6は、通信装置1における処理の流れを示すフローチャートである。
【0050】
通信装置1では、電極の検索動作が開始されると、まず、電極制御部15からの指示信号の出力に基づいて、送信部12が、計測部16による反射電力の測定のための(試験)信号の送信を行う(送信ステップ、ステップS11)。ここで送信される信号は、本来通信すべき送信信号そのものであってもよく、また、反射電力を測定するための試験用の信号であってもよい。
【0051】
つぎに、計測部16が、反射電力の値を測定し(ステップS12)、電極制御部15が、測定された反射電力の値に基づいて、電極の検索動作を中断するための条件を満たしているかどうかを判定する(制御ステップ、ステップS13)。測定された反射電力の値が条件を満たさない場合(ステップS13;NO)、現時点で選択されている通信電極および接地電極の電極対が通信用電極対として適切でないことを意味するため、電極制御部15が、通信性能の判定を行う対象としての新たな電極の組み合わせを決定し(制御ステップ、ステップS14)、電極変更部14が、電極制御部15からの指示信号の出力に基づいて、信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせを変更する(電極変更ステップ、ステップS15)。
【0052】
なお、測定された反射電力の値が条件を満たすまで上記の動作が繰り返し行われ、反射電力の測定値が条件を満たす場合(ステップS13;YES)、現時点で選択されている通信電極および接地電極の組み合わせが通信用電極対として適切であるため、電極制御部15が、通信に使用する信号電極対として決定し(ステップS16)、電極の検索動作を終了させる。
【0053】
なお、通信装置1は、人体通信の開始前に予め電極の検索動作を行うようにしてもよく、また、通信途中で通信性能が不足していることが判明した場合に適宜電極の検索動作を行うようにしてもよい。人体通信の開始前に予め電極の検索動作および選択を行っておくことにより、新たな通信開始時に、予め最適に選択された電極対を用いて通信を開始することが可能なため、より安定した通信を実行できる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の通信装置1によれば、通信装置と通信媒体との静電結合の状態によって通信性能が劣化している場合に、この劣化状態に応じて信号電極11(1)〜11(n)を切り替えることによって、最適な信号電極を用いて通信を行うことが可能となる。この結果、人体等を介した通信における接触対象または近接対象としての通信媒体との結合状態によらずに、通信特性の安定化を実現することができる。
【0055】
(2)第二実施形態(請求項5〜7)
(2−1)通信装置の構成
次に、第二実施形態に係る通信装置2の構成について、図7を用いて説明する。図7は、送信側の通信装置2の機能構成を示す機能ブロック図である。通信装置2は、図7に示すように、第一実施形態に係る通信装置1の計測部16の代わりに検知部17(検知手段)を配置した構成を有しており、これに関連して電極制御部15の機能が、第一実施形態における電極制御部15と異なっている。本実施形態の他の構成は第一実施形態と同様であるため、説明は割愛する。
【0056】
検知部17は、信号電極11(1)〜11(n)のそれぞれと、通信媒体としての人体30との接触または近接の状態を検出するためのセンサ部分である。検知部17は、例えば、信号電極11(1)〜11(n)のそれぞれと人体30との接触または近接の状態を検知するために、誘導型、静電容量型、超音波型、電磁波型、赤外線型等のタッチセンサまたは近接センサを含んで構成されるようにしてもよい。
【0057】
通信装置2では、検知部17で検知される接触または近接の状態に応じて、電極制御部15における電極の検索動作を制御する。これにより、人体通信を行うために適切な信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせが選択されて決定される。
【0058】
(2−2)通信装置における処理
引き続き、通信装置2によって行われる処理の流れ(通信方法)について、図8を用いて説明する。図8は、通信装置2における処理の流れを示すフローチャートである。
【0059】
通信装置2では、電極の検索動作が開始されると、まず、検知部17が、現時点で選択されている通信電極および接地電極のそれぞれと人体30との接触または近接の状態を検出する(ステップS21)。次に、電極制御部15が、検知部17によって検出された状態同士を比較して、その状態(接触または近接の関係)が同一である場合(ステップS22;YES)、電極制御部15が、接触または近接の状態の検出を行なう対象としての新たな電極の組み合わせを決定し(制御ステップ、ステップS23)、電極変更部14が、電極制御部15からの指示信号の出力に基づいて、信号電極11(1)〜11(n)から選択する通信電極および接地電極の組み合わせを変更する(電極変更ステップ、ステップS24)。
【0060】
なお、検知部17によって検出された状態同士が異なるまで上記の動作が繰り返し行われ、検出された状態同士が異なる場合(ステップS22;NO)、現時点で選択されている通信電極および接地電極としての信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせが通信用電極として適切であるため、電極制御部15が、通信に使用する信号電極対として決定し(ステップS25)、電極の検索動作を終了させる。
【0061】
より具体的には、例えば、検知部17がタッチセンサを含んで構成されている場合には、各信号電極と人体30との接触の有無(すなわち、タッチセンサで通信媒体を検出しているか否か)を測定し、この測定結果に基づいて、通信媒体が触れている(すなわち、タッチセンサで通信媒体を検出している)信号電極が通信電極として選択されるととともに、通信媒体が触れていない(すなわち、タッチセンサで通信媒体を検出していない)信号電極が接地電極として選択されるように(ステップS22;NO)、電極制御部15が信号電極の検索動作を繰り返し行う。これにより、通信特性の安定化を実現することができる。
【0062】
これは、人体通信において、電極対の一方のみと通信媒体が結合するとともに、他方が周囲環境と結合する状況で理想的な通信性能が得られることを利用するものである。通信装置2が手で握られているような場合であっても複数の信号電極の中から手が触れている電極と触れていない電極の組み合わせを検出して通信を行うことによって通信特性の安定化を実現することができる。
【0063】
同様に、例えば、検知部17が近接センサを含んで構成されている場合には、各信号電極と人体30との近接の有無およびその近接の度合い(すなわち、通信媒体が電極にどの程度近接しているか)を測定し、この測定結果に基づいて、通信媒体が近接している電極と近接していない電極とを組み合わせて、または、近接の度合いが大きい電極と小さい電極とを組み合わせて、通信を行うことによって、同様に通信特性の安定化を実現することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の通信装置2によれば、通信装置2に実装された各信号電極への接触または近接の状態という非常にシンプルな情報を用いて、通信に使用する電極対の最適化が行われる。この結果、第一実施形態と同様に、人体等を介した通信における接触対象または近接対象としての通信媒体との結合状態によらずに、通信特性の安定化を実現することができる。
【0065】
(3)第三実施形態(請求項8)
(3−1)通信装置の構成
次に、第三実施形態に係る通信装置3の構成について、図9を用いて説明する。図9は、送信側の通信装置3の機能構成を示す機能ブロック図である。通信装置3は、図9に示すように、第一実施形態に係る通信装置1の電極制御部15の内部に第1記憶部18(第一の記憶手段)が含まれる構成である。本実施形態の他の構成は第一実施形態と同様であるため、説明は割愛する。
【0066】
第1記憶部18は、信号電極11(1)〜11(n)のそれぞれの面積に関する面積情報を記憶するメモリ部分である。この面積情報は、新たな電極の組み合わせへの変更が行なわれる場合に用いられる。より詳しくは、電極の検索動作において新たな電極の組み合わせへの変更が決定された場合に、電極制御部15は、第1記憶部18によって記憶されている面積情報に基づいて、次に変更する信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせを決定する。
【0067】
(3−2)面積情報の一例
例えば、図10に示すように、第1記憶部18に信号電極11(1)〜11(n)のそれぞれの面積が記憶されているとする。信号電極の面積が大きいほど、人体通信における通信特性が向上する可能性が高いため、通信電極側および接地電極側のそれぞれにおいて、信号電極の面積が大きい電極素子から順に(例えば、信号電極6⇒信号電極N−4⇒信号電極N⇒…⇒信号電極1という順に)信号電極が検索されて、新たな電極の組み合わせが決定される。
【0068】
これにより、人体通信における通信特性が向上する可能性が高い信号電極から、電極の検索動作の検索対象候補として選択されていくため、最終的に、信号電極の組み合わせを決定するまでの時間を短縮することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態の通信装置3によれば、通信特性が向上する可能性が高い信号電極を優先して検索していくことができるため、比較的短い時間で、所望の通信特性の安定化を実現することができる。
【0070】
(4)第四実施形態(請求項9)
(4−1)通信装置の構成
次に、第四実施形態に係る通信装置4の構成について、図11を用いて説明する。図11は、送信側の通信装置4の機能構成を示す機能ブロック図である。通信装置4は、図11に示すように、第一実施形態に係る通信装置1の電極制御部15の内部に第2記憶部19(第二の記憶手段)が含まれる構成である。本実施形態の他の構成は第一実施形態と同様であるため、説明は割愛する。
【0071】
第2記憶部19は、過去の人体通信において使用が決定された通信電極と接地電極との組み合わせとその回数に関する組み合わせ情報を記憶するメモリ部分である。この組み合わせ情報は、新たな電極の組み合わせへの変更が行なわれる場合に用いられる。
【0072】
(4−2)組み合わせ情報の一例
例えば、図12に示すように、第2記憶部19に、過去に使用が決定されて使用された通信電極と接地電極との組み合わせとその発生回数(すなわち、過去の信号電極の使用履歴)が記憶されている。ここで、No.1とNo.Mのそれぞれの信号電極の組み合わせでは、No.1の信号電極の組み合わせの方が過去の通信において多く使用されていることが明らかである。このため,No.1とNo.Mの信号電極の組み合わせの中では、No.1の電極の組み合わせの方が、通信特性が向上する可能性が高い。これにより、電極制御部15が、組み合わせの発生頻度が高い信号電極の組み合わせから選択していく。この結果、最終的に、使用する信号電極の組み合わせを決定するまでに要する時間を短縮できる可能性が高くなる。なお、ある組み合わせで信号電極が使用された場合に、電極制御部15が、第2記憶部19における組み合わせ情報を更新する。
【0073】
なお、第2記憶部19に記憶される組み合わせ情報は、図11に示す形式に限定されるものではない。人体通信を利用するアプリケーションによって通信装置4の使用状態(例えば、人体30が通信装置を持つ場合の持ち方に関する状態)が大きく異なるため、例えば、通信装置4が使用される人体通信のアプリケーションに関する情報を第2記憶部19が追加で記憶し、アプリケーションごとに信号電極の組み合わせおよび発生回数を記憶するようにしてもよい。これにより、使用する信号電極の組み合わせを決定するまでに要する時間を、更に短縮できる可能性が高くなる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の通信装置4によれば、通信特性が向上する可能性が高い信号電極を優先して検索していくことができるため、比較的短い時間で、所望の通信特性の安定化を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、人体等を介した通信における接触対象または近接対象としての通信媒体の状態によらずに、通信特性の安定化を実現することができる。
【符号の説明】
【0076】
1〜4,20…通信装置、11(1)〜11(n)…信号電極、12…送信部、13…受信部、14…電極変更部、15…電極制御部、16…計測部、17…検知部、18…第1記憶部、19…第2記憶部、30…人体、31…CPU、32…主記憶部、33…補助記憶部、34…入力部、35…出力部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性を有する媒質を介して行われる通信を実現する通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人体等の導電性を有する媒質(以下、総称して人体と表記する)を伝送路として用いて、その近傍の限られた領域内で通信を行う技術(以下、総称して人体通信と表記する)の研究が行われている(例えば、下記の特許文献1および非特許文献1参照)。人体通信においては、送信装置および受信装置の両方ともが人体に接触または近接した場合に送受信装置間の通信経路が確立される。
【0003】
通常、送受信装置はそれぞれ2枚1組の信号電極(以下、信号電極対と表記する)を備えており、そのうちの一方の信号電極(以下、通信電極と表記する)が主に人体と静電結合するとともに、他方の信号電極(以下、接地電極と表記する)が主に人体の周囲にある地面や壁などの外部環境と静電結合して、見かけ上の閉回路を形成することによって送信装置から受信装置への情報の伝送が行われる。
【0004】
送信装置では、通信電極と接地電極との間に電力を印加し、これらの電極間に電位差を与えて人体近傍に電界を誘起することによって情報を送信する。一方、受信装置では、送信装置により人体近傍に誘起された電界によって信号電極対の電極間に生じる電位差を検出することによって、送信装置からの情報を受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−128536号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“RedTacton(レッドタクトン)とは?”、[online]、平成20年、日本電信電話株式会社、[平成20年3月2日検索]、インターネット<URL:http://www.redtacton.com/jp/info/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、そのような通信装置を通常使用する場合、信号電極対の通信電極および接地電極がそれぞれ人体および外部環境のみと静電結合するわけではなく、例えば図1に示すように、理想的には本来、外部環境のみと結合する側の接地電極であっても人体との静電結合が多少なりとも生じる。
【0008】
そのため、送信装置の場合には信号電極対の電極間に印加される信号電力(送信電力)が同じであっても、これらの電極間に誘起される電位差が小さくなるため、送信性能が低下するという問題があった。つまり、信号電極対の人体への接触状態または近接状態によって、信号電極対の電極間に同じ電力を給電した場合でも、この信号電極対からの反射電力が増加するため、送信性能が低下することがあるという問題があった。
【0009】
また、受信装置の場合も同様に、信号の検出感度(受信感度)が同じであっても信号電極対の電極間に誘起される電位差が小さくなるため、受信性能が低下することがあるという問題があった。
【0010】
特に、人間が通信装置を手に持って使用する場合には、通信電極と接地電極の両方に同時に手が触れることがあり、そのような場合には通信電極と接地電極の両方と人体との結合がより大きくなるため、通信性能の劣化が非常に大きくなることがあるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、人体等を介した通信における接触対象または近接対象としての通信媒体の状態によらずに、通信特性の安定化を実現することが可能な通信装置および通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の通信装置は、通信媒体としての導電性媒質と静電結合する通信電極と、接地としての周囲環境と静電結合する接地電極と、を含む複数の信号電極を備える通信装置であって、通信電極と接地電極との間に電力を印加する送信手段と、通信電極と接地電極との間の電位差を検出する検出手段と、複数の信号電極の中から、通信電極として用いる信号電極と、接地電極として用いる信号電極と、の組み合わせを決定する電極制御手段と、電極制御手段により決定された組み合わせに基づいて、複数の信号電極の中から、通信電極と接地電極とを切り替える電極変更手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の通信方法は、通信媒体としての導電性媒質と静電結合する通信電極と、接地としての周囲環境と静電結合する接地電極と、を含む複数の信号電極を備える通信装置によって行われる通信方法であって、通信装置が、通信電極と接地電極との間に電力を印加する送信ステップと、通信装置が、通信電極と接地電極との間の電位差を検出する検出ステップと、通信装置が、複数の信号電極の中から、通信電極として用いる信号電極と、接地電極として用いる信号電極と、の組み合わせを決定する電極制御ステップと、通信装置が、電極制御ステップにより決定された組み合わせに基づいて、複数の信号電極の中から、通信電極と接地電極とを切り替える電極変更ステップと、を有することを特徴とする。
【0014】
これらの発明では、通信を行う場合、通信装置が、複数の信号電極の中から、通信電極として用いる信号電極と、接地電極として用いる信号電極と、の組み合わせを決定する。そして、決定された組み合わせに基づいて、複数の信号電極の中から、通信電極と接地電極とを切り替える。このため、通信装置と通信媒体との静電結合の様子が変化することによって通信装置の通信性能が変化しても、検出された電位差に基づいて、通信電極と接地電極との適切な組み合わせが決定されて切り替えられる。この結果、人体等を介した通信における接触対象または近接対象としての通信媒体の状態によらずに、通信特性の安定化を実現することができる。
【0015】
また、上記の通信装置は、送信手段によって通信電極と接地電極との間に電力が印加された場合の反射電力を測定する計測手段を更に備え、電極制御手段は、計測手段によって測定された反射電力に基づいて、組み合わせを決定するようにしてもよい。
【0016】
これにより、通信電極と接地電極との間に電力が印加された場合の反射電力を測定し、測定された反射電力に基づいて、組み合わせを決定することができる。このため、通信装置と通信媒体との静電結合の様子が変化することによって通信装置の通信性能が変化するのに伴って、測定された反射電力の大きさが変化しても、測定された反射電力に基づいて、通信電極と接地電極との適切な組み合わせが決定されて切り替えられる。この結果、人体等を介した通信における接触対象または近接対象としての通信媒体の状態によらずに、通信特性の更なる安定化を実現することができる。
【0017】
また、電極制御手段は、計測手段によって測定される反射電力が最も小さくなるような組み合わせを選択して決定するようにしてもよい。
【0018】
これにより、測定される反射電力が最も小さくなるような組み合わせが選択されて決定される。ここで、通信性能が安定している場合には反射電力の値が小さくなることから、通信電極と接地電極との組み合わせのうち最も通信特性の良い組み合わせを用いて通信を行うようにすることができる。
【0019】
また、電極制御手段は、計測手段によって測定される反射電力が所定値以下となるような組み合わせを選択して決定するようにしてもよい。
【0020】
これにより、測定される反射電力が所定値以下となるような組み合わせが選択されて決定される。ここで、この所定値を、通信特性が安定する場合の最大値として設定し、測定される反射電力がこの所定値以下となるような組み合わせを用いることによって、通信特性の更なる安定化を実現することができる。
【0021】
また、上記の通信装置は、複数の信号電極のそれぞれと通信媒体との接触または近接の状態を検出する検知手段を更に備え、電極制御手段は、検知手段によって検出された接触または近接の状態に基づいて、組み合わせを選択して決定するようにしてもよい。特に、電極制御手段は、検知手段によって検出される接触または近接の状態が異なるような組み合わせを選択して決定するようにしてもよい。なお、検知手段は、タッチセンサまたは近接センサを含んで構成されるようにしてもよい。
【0022】
これにより、複数の信号電極のそれぞれと通信媒体との接触または近接の状態を検出し、検出された接触または近接の状態に基づいて、組み合わせが選択されて決定される。特に、検出される接触または近接の状態が異なるような組み合わせが選択されて決定される。すなわち、通信媒体との静電結合の状態が異なる信号電極の組み合わせが選択されて決定される。この結果、通信装置と通信媒体との接触または近接の状態によらずに、通信特性の更なる安定化を実現することができる。
【0023】
また、電極制御手段は、複数の信号電極のそれぞれの面積に関する面積情報を記憶する第一の記憶手段を含み、当該第一の記憶手段に記憶されている当該面積情報に基づいて、組み合わせを選択して決定するようにしてもよい。
【0024】
これにより、複数の信号電極のそれぞれの面積に関する面積情報に基づいて、組み合わせが選択されて決定される。このため、例えば、信号電極の面積が大きい電極から順に信号電極を切り替えることが可能となる。この結果、通信に使用する信号電極を短時間で選択して決定することができる。
【0025】
また、電極制御手段は、過去に決定された通信電極と接地電極との組み合わせに関する組み合わせ情報を記憶する第二の記憶手段を含み、当該第二の記憶手段に記憶されている当該組み合わせ情報に基づいて、組み合わせを選択して決定するようにしてもよい。
【0026】
これにより、過去に決定された通信電極と接地電極との組み合わせに関する組み合わせ情報に基づいて、組み合わせが選択されて決定される。このため、例えば、過去に使用された回数が多い信号電極の組み合わせから順に信号電極を切り替えることが可能となる。この結果、通信に使用する信号電極を短時間で選択して決定することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、人体等を介した通信における接触対象または近接対象としての通信媒体の状態によらずに、通信特性の安定化を実現することが可能な通信装置および通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】人体通信を説明する模式図である。
【図2】第一実施形態に係る通信装置を使用した通信システムの例を説明する説明図である。
【図3】第一実施形態に係る通信装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図4】第一実施形態に係る通信装置のハードウェア構成の一例を示す物理ブロック図である。
【図5】第一実施形態に係る通信装置が有する信号電極の配置例を説明する説明図である。
【図6】第一実施形態に係る通信装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第二実施形態に係る通信装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図8】第二実施形態に係る通信装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第三実施形態に係る通信装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図10】電極面積に関する情報を記憶するデータベースの構成例を示す図である。
【図11】第四実施形態に係る通信装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図12】電極の使用履歴を記憶するデータベースの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
(1)第一実施形態(請求項1〜4)
(1−1)通信システムの機能および構成
まず、第一実施形態に係る通信装置を有する通信システムの機能および構成を説明する。図2は、2つの通信装置1,20が、通信媒体としての導電性媒質である人体30を介しての情報の伝送(人体通信)を行う通信システムの例を表している。2つの通信装置1,20のそれぞれは、人体通信の送信装置としての機能と受信装置としての機能の両方を有している。ここでは、便宜上、通信装置1が人体通信の送信側装置であり、通信装置20が人体通信の受信側装置であるものとして説明し、以下では送信装置である通信装置1に着目して説明を行うが、受信装置である通信装置20に関しても同様である。なお、当然のことながら、2つの通信装置1,20のそれぞれは、通信媒体として人体30以外を使用する通信システムに用いられてもよい。
【0031】
(1−2)通信装置の構成
引き続き、送信側の通信装置1の構成について、図3および図4を用いて説明する。図3は、送信側の通信装置1の機能構成を示す機能ブロック図であり、図4は、通信装置1のハードウェア構成の一例を示す物理ブロック図である。通信装置1は、図3に示すように、機能的な構成要素として、n(nは3以上の整数)個の信号電極11(1)〜11(n)、送信部12(送信手段)、受信部13、電極変更部14(電極変更手段)、電極制御部15(検出手段兼電極制御手段)、および計測部16(計測手段)を備えている。なお、これらの構成要素は、CPUやROM等に所定のプログラムを読み込ませて実行することで実現してもよい。これらの構成要素は、CPU等で構成される制御回路(図示せず)により制御される。
【0032】
通信装置1は、図4に示すように、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなどを実行するCPU31、ROMおよびRAMで構成される主記憶部32、ハードディスクやメモリ等で構成される補助記憶部33、信号が入力される入力部34、および信号が出力される出力部35で構成される。後述する通信装置1における各機能は、CPU31および主記憶部32に所定のソフトウェアを読み込ませ、CPU31の制御の下で入力部34や出力部35を作動させたり、主記憶部32および補助記憶部33に対してデータの読み書きを実行させたりすることで実現される。
【0033】
通信装置1は、人体30と静電結合する通信電極と、接地としての周囲環境と静電結合する接地電極と、を含む複数の信号電極を備える通信装置である。通信装置1は、通信に使用する通信電極および接地電極の電極対としての信号電極11(1)〜11(n)から、1個または複数個の信号電極を選択するとともに、選択する電極対を適切に切り替えることによって、様々な使用状態においても良好な通信特性を提供できるようにする。また、そのために、実際に電極対を順次切り替えてそれが適切であるか否かを判定し、適切と判定される電極対を通信に使用することによって、通信特性の安定化を実現する。
【0034】
図5は、例えばn=4とした場合の通信装置1が有する信号電極11(1)〜11(4)の配置例を説明する説明図である。ここでは、通信電極として信号電極11(1)が選択され、接地電極として信号電極11(3)が組み合わせとして選択されているとし、この組み合わせでは通信装置1は通信性能が十分でないとする。この場合、通信装置1は、信号電極11(1)に対して信号電極11(2)および信号電極11(4)(または、信号電極11(3)に対して信号電極11(2)および信号電極11(4))を組み合わせて使用することによって、通信性能の安定化を実現できるかどうかを判定する。
【0035】
このとき、通信装置1は、信号電極11(1)に対して信号電極11(2)および信号電極11(4)(または、信号電極11(3)に対して信号電極11(2)および信号電極11(4))を実際に順に組み合わせて切り替えることによって、それぞれの電極対が、通信を行うために十分であるかを判定する。このように判定することによって、通信を行うために適切な電極の組み合わせを決定する。このように、通信装置1では、使用する信号電極11の組み合わせを最適なものに変更することによって、通信性能の安定化を実現する。このような効果を実現するために、各構成要素は、以下のように機能する。
【0036】
信号電極11(1)〜11(n)のそれぞれは、通信媒体および外部の周囲環境と静電結合して閉回路を形成することによって、情報の伝送を行うための素子である。信号電極11(1)〜11(n)のそれぞれは、例えば、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)通信やBluetooth通信等におけるアンテナに相当するものである。信号電極11(1)〜11(n)のそれぞれは、電極変更部14によって信号電極11の一部または全てが通信に使用されるように制御される。
【0037】
例えば、図5に示す通信装置1の例では、通信電極として信号電極11(1)が割り当てられ、接地電極として信号電極11(3)が割り当てられるといったように、通信電極および接地電極のそれぞれに対して1つの信号電極を割り当てることも可能であり、また、通信電極として信号電極11(1),11(2)が割り当てられ、接地電極として信号電極11(3),11(4)が割り当てられるといったように、通信電極および接地電極のそれぞれに対して複数の信号電極を1組にして割り当てることも可能である。
【0038】
送信部12は、現時点で選択されている電極対間(通信電極と接地電極との間)に電力を給電することにより、通信媒体としての人体30近傍に電界を誘起させて情報の送信を行う送信用素子である。また、送信部12は、計測部16による反射電力の測定を行う際の基準となる試験信号を送信するための機能も有する。
【0039】
受信部13は、他の通信装置によって通信媒体としての人体30近傍に誘起された電界により電極対間に生じる電位差を検出することによって、他の通信装置から送信された情報を受信する受信用素子である。受信部13は、通信装置1が送信装置である本実施形態においては動作しない。
【0040】
電極変更部14は、電極制御部15の指示に従って、信号電極11(1)〜11(n)を切り替えるための切り替え用素子である。電極変更部14は、例えばスイッチ素子により構成され、信号電極11(1)〜11(n)と送信部12との電気的な接続を切り替えることによって、送信部12によって給電される信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせを変更するといった切り替え処理を実行することができる。
【0041】
電極制御部15は、通信電極と接地電極との間の電位差を検出して、この検出結果に基づいて、電極変更部14をどのように制御するかを決定するための制御部分である。通信装置1では、通信に適切な信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせを決定するために、実際に信号電極11(1)〜11(n)を切り替えて適切となる組み合わせを探査する処理を行う。この処理を行うため、電極制御部15は、大別して三つの大きな機能を有する。
【0042】
一つ目の機能として、現時点で選択されている電極対が通信を行うために適切であるか否かを判定する機能を有する。電極制御部15は、計測部16により計測された反射電力の大きさに基づいて、上記の判定を行う。また、反射電力の測定を行うために、送信部12から適切なタイミングで電極対に電力が給電されるようにタイミング制御を行う。
【0043】
二つ目の機能として、上記の判定結果に応じて、信号電極11(1)〜11(n)を切り替えて適切な組み合わせを探索する動作(以下、電極の検索動作と表記)を継続するか中止するかを判定する機能を有する。上記の一つ目の機能によって、現時点での電極対が通信を行うために適切でないと判定された場合には、電極制御部15は、電極の検索動作の継続を決定する。一方、現時点での電極対が通信を行うために適切であると判定された場合には、電極制御部15は、電極の検索動作の中止を決定する。
【0044】
三つ目の機能として、上記の二つ目の機能において電極の検索動作の継続が決定された場合には、他の電極対に対して同様に通信性能の判定を行う必要があるため、次にどのような信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせに対して通信性能の判定を行うかを決定する機能を有する。
【0045】
計測部16は、送信部12によって信号電極11(1)〜11(n)から選択された通信電極と接地電極との間に電力が給電された場合に、信号電極対から放射されずに送信部12へと戻ってしまう反射電力の大きさを計測するためのセンサ部分である。計測部16によって測定された反射電力の値に基づいて、電極制御部15が、現時点で選択されている電極対が通信を行うために適切であるかを判定する。
【0046】
以上の機能を用いて、電極制御部15が、通信装置1の通信性能の低下度合いと、計測部16によって測定される反射電力の大きさとが、比例することを利用して、使用する電極対を選択して決定する。すなわち、電極制御部15は、通信装置1の通信性能が低下する場合には反射電力が増加する傾向があることを利用し、反射電力の大きさが小さくなる電極対を用いて通信するように電極の検索動作を制御する。
【0047】
例えば、電極制御部15は、信号電極11(1)〜11(n)の全ての組み合わせについて、計測部16による反射電力の測定を繰り返し実行させ、その反射電力の値が最も小さくなる信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせを最終的に選択する。これにより、最も通信性能の良い電極対を使用して情報の伝送を行うことが可能になる。
【0048】
また、他の例として、計測部16によって計測される反射電力の値が予め設定されている閾値(所定値)以下となる電極対が発見された場合に、電極制御部15は、電極の検索動作を中止させるようにしてもよい。このように、安定した通信が可能となる状態における反射電力の最大値を予め閾値として定義しておき、この閾値よりも反射電力が小さくなる電極対が使用されれば、安定した通信が可能になる。この結果、網羅的な電極の検索動作が不要となるため、比較的短時間で電極の検索動作を終了させて、情報の伝送を開始させることが可能になる。
【0049】
(1−3)通信装置における処理
引き続き、通信装置1によって行われる処理の流れ(通信方法)について、図6を用いて説明する。図6は、通信装置1における処理の流れを示すフローチャートである。
【0050】
通信装置1では、電極の検索動作が開始されると、まず、電極制御部15からの指示信号の出力に基づいて、送信部12が、計測部16による反射電力の測定のための(試験)信号の送信を行う(送信ステップ、ステップS11)。ここで送信される信号は、本来通信すべき送信信号そのものであってもよく、また、反射電力を測定するための試験用の信号であってもよい。
【0051】
つぎに、計測部16が、反射電力の値を測定し(ステップS12)、電極制御部15が、測定された反射電力の値に基づいて、電極の検索動作を中断するための条件を満たしているかどうかを判定する(制御ステップ、ステップS13)。測定された反射電力の値が条件を満たさない場合(ステップS13;NO)、現時点で選択されている通信電極および接地電極の電極対が通信用電極対として適切でないことを意味するため、電極制御部15が、通信性能の判定を行う対象としての新たな電極の組み合わせを決定し(制御ステップ、ステップS14)、電極変更部14が、電極制御部15からの指示信号の出力に基づいて、信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせを変更する(電極変更ステップ、ステップS15)。
【0052】
なお、測定された反射電力の値が条件を満たすまで上記の動作が繰り返し行われ、反射電力の測定値が条件を満たす場合(ステップS13;YES)、現時点で選択されている通信電極および接地電極の組み合わせが通信用電極対として適切であるため、電極制御部15が、通信に使用する信号電極対として決定し(ステップS16)、電極の検索動作を終了させる。
【0053】
なお、通信装置1は、人体通信の開始前に予め電極の検索動作を行うようにしてもよく、また、通信途中で通信性能が不足していることが判明した場合に適宜電極の検索動作を行うようにしてもよい。人体通信の開始前に予め電極の検索動作および選択を行っておくことにより、新たな通信開始時に、予め最適に選択された電極対を用いて通信を開始することが可能なため、より安定した通信を実行できる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の通信装置1によれば、通信装置と通信媒体との静電結合の状態によって通信性能が劣化している場合に、この劣化状態に応じて信号電極11(1)〜11(n)を切り替えることによって、最適な信号電極を用いて通信を行うことが可能となる。この結果、人体等を介した通信における接触対象または近接対象としての通信媒体との結合状態によらずに、通信特性の安定化を実現することができる。
【0055】
(2)第二実施形態(請求項5〜7)
(2−1)通信装置の構成
次に、第二実施形態に係る通信装置2の構成について、図7を用いて説明する。図7は、送信側の通信装置2の機能構成を示す機能ブロック図である。通信装置2は、図7に示すように、第一実施形態に係る通信装置1の計測部16の代わりに検知部17(検知手段)を配置した構成を有しており、これに関連して電極制御部15の機能が、第一実施形態における電極制御部15と異なっている。本実施形態の他の構成は第一実施形態と同様であるため、説明は割愛する。
【0056】
検知部17は、信号電極11(1)〜11(n)のそれぞれと、通信媒体としての人体30との接触または近接の状態を検出するためのセンサ部分である。検知部17は、例えば、信号電極11(1)〜11(n)のそれぞれと人体30との接触または近接の状態を検知するために、誘導型、静電容量型、超音波型、電磁波型、赤外線型等のタッチセンサまたは近接センサを含んで構成されるようにしてもよい。
【0057】
通信装置2では、検知部17で検知される接触または近接の状態に応じて、電極制御部15における電極の検索動作を制御する。これにより、人体通信を行うために適切な信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせが選択されて決定される。
【0058】
(2−2)通信装置における処理
引き続き、通信装置2によって行われる処理の流れ(通信方法)について、図8を用いて説明する。図8は、通信装置2における処理の流れを示すフローチャートである。
【0059】
通信装置2では、電極の検索動作が開始されると、まず、検知部17が、現時点で選択されている通信電極および接地電極のそれぞれと人体30との接触または近接の状態を検出する(ステップS21)。次に、電極制御部15が、検知部17によって検出された状態同士を比較して、その状態(接触または近接の関係)が同一である場合(ステップS22;YES)、電極制御部15が、接触または近接の状態の検出を行なう対象としての新たな電極の組み合わせを決定し(制御ステップ、ステップS23)、電極変更部14が、電極制御部15からの指示信号の出力に基づいて、信号電極11(1)〜11(n)から選択する通信電極および接地電極の組み合わせを変更する(電極変更ステップ、ステップS24)。
【0060】
なお、検知部17によって検出された状態同士が異なるまで上記の動作が繰り返し行われ、検出された状態同士が異なる場合(ステップS22;NO)、現時点で選択されている通信電極および接地電極としての信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせが通信用電極として適切であるため、電極制御部15が、通信に使用する信号電極対として決定し(ステップS25)、電極の検索動作を終了させる。
【0061】
より具体的には、例えば、検知部17がタッチセンサを含んで構成されている場合には、各信号電極と人体30との接触の有無(すなわち、タッチセンサで通信媒体を検出しているか否か)を測定し、この測定結果に基づいて、通信媒体が触れている(すなわち、タッチセンサで通信媒体を検出している)信号電極が通信電極として選択されるととともに、通信媒体が触れていない(すなわち、タッチセンサで通信媒体を検出していない)信号電極が接地電極として選択されるように(ステップS22;NO)、電極制御部15が信号電極の検索動作を繰り返し行う。これにより、通信特性の安定化を実現することができる。
【0062】
これは、人体通信において、電極対の一方のみと通信媒体が結合するとともに、他方が周囲環境と結合する状況で理想的な通信性能が得られることを利用するものである。通信装置2が手で握られているような場合であっても複数の信号電極の中から手が触れている電極と触れていない電極の組み合わせを検出して通信を行うことによって通信特性の安定化を実現することができる。
【0063】
同様に、例えば、検知部17が近接センサを含んで構成されている場合には、各信号電極と人体30との近接の有無およびその近接の度合い(すなわち、通信媒体が電極にどの程度近接しているか)を測定し、この測定結果に基づいて、通信媒体が近接している電極と近接していない電極とを組み合わせて、または、近接の度合いが大きい電極と小さい電極とを組み合わせて、通信を行うことによって、同様に通信特性の安定化を実現することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の通信装置2によれば、通信装置2に実装された各信号電極への接触または近接の状態という非常にシンプルな情報を用いて、通信に使用する電極対の最適化が行われる。この結果、第一実施形態と同様に、人体等を介した通信における接触対象または近接対象としての通信媒体との結合状態によらずに、通信特性の安定化を実現することができる。
【0065】
(3)第三実施形態(請求項8)
(3−1)通信装置の構成
次に、第三実施形態に係る通信装置3の構成について、図9を用いて説明する。図9は、送信側の通信装置3の機能構成を示す機能ブロック図である。通信装置3は、図9に示すように、第一実施形態に係る通信装置1の電極制御部15の内部に第1記憶部18(第一の記憶手段)が含まれる構成である。本実施形態の他の構成は第一実施形態と同様であるため、説明は割愛する。
【0066】
第1記憶部18は、信号電極11(1)〜11(n)のそれぞれの面積に関する面積情報を記憶するメモリ部分である。この面積情報は、新たな電極の組み合わせへの変更が行なわれる場合に用いられる。より詳しくは、電極の検索動作において新たな電極の組み合わせへの変更が決定された場合に、電極制御部15は、第1記憶部18によって記憶されている面積情報に基づいて、次に変更する信号電極11(1)〜11(n)の組み合わせを決定する。
【0067】
(3−2)面積情報の一例
例えば、図10に示すように、第1記憶部18に信号電極11(1)〜11(n)のそれぞれの面積が記憶されているとする。信号電極の面積が大きいほど、人体通信における通信特性が向上する可能性が高いため、通信電極側および接地電極側のそれぞれにおいて、信号電極の面積が大きい電極素子から順に(例えば、信号電極6⇒信号電極N−4⇒信号電極N⇒…⇒信号電極1という順に)信号電極が検索されて、新たな電極の組み合わせが決定される。
【0068】
これにより、人体通信における通信特性が向上する可能性が高い信号電極から、電極の検索動作の検索対象候補として選択されていくため、最終的に、信号電極の組み合わせを決定するまでの時間を短縮することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態の通信装置3によれば、通信特性が向上する可能性が高い信号電極を優先して検索していくことができるため、比較的短い時間で、所望の通信特性の安定化を実現することができる。
【0070】
(4)第四実施形態(請求項9)
(4−1)通信装置の構成
次に、第四実施形態に係る通信装置4の構成について、図11を用いて説明する。図11は、送信側の通信装置4の機能構成を示す機能ブロック図である。通信装置4は、図11に示すように、第一実施形態に係る通信装置1の電極制御部15の内部に第2記憶部19(第二の記憶手段)が含まれる構成である。本実施形態の他の構成は第一実施形態と同様であるため、説明は割愛する。
【0071】
第2記憶部19は、過去の人体通信において使用が決定された通信電極と接地電極との組み合わせとその回数に関する組み合わせ情報を記憶するメモリ部分である。この組み合わせ情報は、新たな電極の組み合わせへの変更が行なわれる場合に用いられる。
【0072】
(4−2)組み合わせ情報の一例
例えば、図12に示すように、第2記憶部19に、過去に使用が決定されて使用された通信電極と接地電極との組み合わせとその発生回数(すなわち、過去の信号電極の使用履歴)が記憶されている。ここで、No.1とNo.Mのそれぞれの信号電極の組み合わせでは、No.1の信号電極の組み合わせの方が過去の通信において多く使用されていることが明らかである。このため,No.1とNo.Mの信号電極の組み合わせの中では、No.1の電極の組み合わせの方が、通信特性が向上する可能性が高い。これにより、電極制御部15が、組み合わせの発生頻度が高い信号電極の組み合わせから選択していく。この結果、最終的に、使用する信号電極の組み合わせを決定するまでに要する時間を短縮できる可能性が高くなる。なお、ある組み合わせで信号電極が使用された場合に、電極制御部15が、第2記憶部19における組み合わせ情報を更新する。
【0073】
なお、第2記憶部19に記憶される組み合わせ情報は、図11に示す形式に限定されるものではない。人体通信を利用するアプリケーションによって通信装置4の使用状態(例えば、人体30が通信装置を持つ場合の持ち方に関する状態)が大きく異なるため、例えば、通信装置4が使用される人体通信のアプリケーションに関する情報を第2記憶部19が追加で記憶し、アプリケーションごとに信号電極の組み合わせおよび発生回数を記憶するようにしてもよい。これにより、使用する信号電極の組み合わせを決定するまでに要する時間を、更に短縮できる可能性が高くなる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の通信装置4によれば、通信特性が向上する可能性が高い信号電極を優先して検索していくことができるため、比較的短い時間で、所望の通信特性の安定化を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、人体等を介した通信における接触対象または近接対象としての通信媒体の状態によらずに、通信特性の安定化を実現することができる。
【符号の説明】
【0076】
1〜4,20…通信装置、11(1)〜11(n)…信号電極、12…送信部、13…受信部、14…電極変更部、15…電極制御部、16…計測部、17…検知部、18…第1記憶部、19…第2記憶部、30…人体、31…CPU、32…主記憶部、33…補助記憶部、34…入力部、35…出力部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信媒体としての導電性媒質と静電結合する通信電極と、接地としての周囲環境と静電結合する接地電極と、を含む複数の信号電極を備える通信装置であって、
前記通信電極と前記接地電極との間に電力を印加する送信手段と、
前記通信電極と前記接地電極との間の電位差を検出する検出手段と、
前記複数の信号電極の中から、前記通信電極として用いる信号電極と、前記接地電極として用いる信号電極と、の組み合わせを決定する電極制御手段と、
前記電極制御手段により決定された組み合わせに基づいて、前記複数の信号電極の中から、前記通信電極と前記接地電極とを切り替える電極変更手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記送信手段によって前記通信電極と前記接地電極との間に前記電力が印加された場合の反射電力を測定する計測手段を更に備え、
前記電極制御手段は、前記計測手段によって測定された前記反射電力に基づいて、前記組み合わせを決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記電極制御手段は、前記計測手段によって測定される前記反射電力が最も小さくなるような前記組み合わせを選択して決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記電極制御手段は、前記計測手段によって測定される前記反射電力が所定値以下となるような前記組み合わせを選択して決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記複数の信号電極のそれぞれと前記通信媒体との接触または近接の状態を検出する検知手段を更に備え、
前記電極制御手段は、前記検知手段によって検出された接触または近接の状態に基づいて、前記組み合わせを選択して決定する、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の通信装置。
【請求項6】
前記電極制御手段は、前記検知手段によって検出される接触または近接の状態が異なるような前記組み合わせを選択して決定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記検知手段は、タッチセンサまたは近接センサを含んで構成される、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記電極制御手段は、前記複数の信号電極のそれぞれの面積に関する面積情報を記憶する第一の記憶手段を含み、当該第一の記憶手段に記憶されている当該面積情報に基づいて、前記組み合わせを選択して決定する、
ことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の通信装置。
【請求項9】
前記電極制御手段は、過去に決定された前記通信電極と前記接地電極との組み合わせに関する組み合わせ情報を記憶する第二の記憶手段を含み、当該第二の記憶手段に記憶されている当該組み合わせ情報に基づいて、前記組み合わせを選択して決定する、
ことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の通信装置。
【請求項10】
通信媒体としての導電性媒質と静電結合する通信電極と、接地としての周囲環境と静電結合する接地電極と、を含む複数の信号電極を備える通信装置によって行われる通信方法であって、
前記通信装置が、前記通信電極と前記接地電極との間に電力を印加する送信ステップと、
前記通信装置が、前記通信電極と前記接地電極との間の電位差を検出する検出ステップと、
前記通信装置が、前記複数の信号電極の中から、前記通信電極として用いる信号電極と、前記接地電極として用いる信号電極と、の組み合わせを決定する電極制御ステップと、
前記通信装置が、前記電極制御ステップにより決定された組み合わせに基づいて、前記複数の信号電極の中から、前記通信電極と前記接地電極とを切り替える電極変更ステップと、
を有することを特徴とする通信方法。
【請求項1】
通信媒体としての導電性媒質と静電結合する通信電極と、接地としての周囲環境と静電結合する接地電極と、を含む複数の信号電極を備える通信装置であって、
前記通信電極と前記接地電極との間に電力を印加する送信手段と、
前記通信電極と前記接地電極との間の電位差を検出する検出手段と、
前記複数の信号電極の中から、前記通信電極として用いる信号電極と、前記接地電極として用いる信号電極と、の組み合わせを決定する電極制御手段と、
前記電極制御手段により決定された組み合わせに基づいて、前記複数の信号電極の中から、前記通信電極と前記接地電極とを切り替える電極変更手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記送信手段によって前記通信電極と前記接地電極との間に前記電力が印加された場合の反射電力を測定する計測手段を更に備え、
前記電極制御手段は、前記計測手段によって測定された前記反射電力に基づいて、前記組み合わせを決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記電極制御手段は、前記計測手段によって測定される前記反射電力が最も小さくなるような前記組み合わせを選択して決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記電極制御手段は、前記計測手段によって測定される前記反射電力が所定値以下となるような前記組み合わせを選択して決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記複数の信号電極のそれぞれと前記通信媒体との接触または近接の状態を検出する検知手段を更に備え、
前記電極制御手段は、前記検知手段によって検出された接触または近接の状態に基づいて、前記組み合わせを選択して決定する、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の通信装置。
【請求項6】
前記電極制御手段は、前記検知手段によって検出される接触または近接の状態が異なるような前記組み合わせを選択して決定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記検知手段は、タッチセンサまたは近接センサを含んで構成される、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記電極制御手段は、前記複数の信号電極のそれぞれの面積に関する面積情報を記憶する第一の記憶手段を含み、当該第一の記憶手段に記憶されている当該面積情報に基づいて、前記組み合わせを選択して決定する、
ことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の通信装置。
【請求項9】
前記電極制御手段は、過去に決定された前記通信電極と前記接地電極との組み合わせに関する組み合わせ情報を記憶する第二の記憶手段を含み、当該第二の記憶手段に記憶されている当該組み合わせ情報に基づいて、前記組み合わせを選択して決定する、
ことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の通信装置。
【請求項10】
通信媒体としての導電性媒質と静電結合する通信電極と、接地としての周囲環境と静電結合する接地電極と、を含む複数の信号電極を備える通信装置によって行われる通信方法であって、
前記通信装置が、前記通信電極と前記接地電極との間に電力を印加する送信ステップと、
前記通信装置が、前記通信電極と前記接地電極との間の電位差を検出する検出ステップと、
前記通信装置が、前記複数の信号電極の中から、前記通信電極として用いる信号電極と、前記接地電極として用いる信号電極と、の組み合わせを決定する電極制御ステップと、
前記通信装置が、前記電極制御ステップにより決定された組み合わせに基づいて、前記複数の信号電極の中から、前記通信電極と前記接地電極とを切り替える電極変更ステップと、
を有することを特徴とする通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−244082(P2011−244082A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112239(P2010−112239)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
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