説明

通信装置および通信方法

【課題】通信中に回線速度の変更が可能な通信回線へ通信信号を送信する構成において、当該回線速度の変更に起因して高い優先度のデータが廃棄されることを防ぐ。
【解決手段】通信装置101は、通信中に回線速度の変更が可能な通信回線161へ通信信号を送信する。通信装置101は、優先度を有するデータを取得するためのデータ取得部11と、変更後の回線速度を予測するための速度予測部13と、回線速度の変更に先立って、速度予測部13によって予測された変更後の回線速度以下の中継速度を設定するための中継速度設定部13と、設定された中継速度で、優先度順に、データ取得部11によって取得されたデータを中継するためのデータ中継部21と、データ中継部21によって中継されたデータを含む通信信号を、通信回線161の回線速度に従って通信回線161へ送信するための回線送信部22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置および通信方法に関し、特に、通信中に回線速度の変更が可能な通信回線へ通信信号を送信するための通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の電話回線を利用して高速のデータ通信を行なうxDSL(x Digital Subscriber
Line:デジタル加入者線)方式には、たとえばADSL(Asymmetric DSL:非対称デジタル加入者線)およびVDSL(Very high-bit-rate DSL:超高速デジタル加入者線)などがある。
【0003】
国際電気通信連合の電気通信標準化部門(ITU−T)で勧告化されたG.993.2(「Very high speed digital subscriber line transceivers 2 (VDSL2)」,ITU-T勧告 G.993.2(非特許文献1)参照)では、回線安定化機能が定められている。この機能は、回線を切断することなく、回線状態に合わせてペイロードレートすなわちVDSL回線上の通信速度を自動調整し、通信を安定化させる機能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「Very high speed digital subscriber line transceivers 2 (VDSL2)」,ITU-T勧告G.993.2(非特許文献1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、VDSL回線に接続されるVDSL装置では、ペイロードレートを超える速度でVDSL回線へデータを送信すると、各データの優先度に関係なくデータが廃棄されてしまう。
【0006】
このようなデータの廃棄を防ぐために、たとえば、VDSL回線へデータを送信するための回線送信部へ当該データを中継する中継速度(以下、シェーピングレートとも称する。)を設定する方法が考えられる。具体的には、シェーピングレートがペイロードレートを超えないように設定し、回線送信部へ優先度順にデータを中継する。これにより、優先度の高いデータを保護することができる。
【0007】
ここで、回線安定化機能を有するVDSLシステムでは、ペイロードレートが動的に変化するため、シェーピングレートもペイロードに追随して変化させる必要がある。
【0008】
しかしながら、ペイロードレートが変更された後、これに追随してシェーピングレートの変更を完了するまでの間にデータがランダムに廃棄され、優先度の高いデータが廃棄されてしまう場合がある。
【0009】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、通信中に回線速度の変更が可能な通信回線へ通信信号を送信する構成において、当該回線速度の変更に起因して高い優先度のデータが廃棄されることを防ぐことが可能な通信装置および通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる通信装置は、通信中に回線速度の変更が可能な通信回線へ通信信号を送信するための通信装置であって、優先度を有するデータを取得するためのデータ取得部と、変更後の上記回線速度を予測するための速度予測部と、上記回線速度の変更に先立って、上記速度予測部によって予測された変更後の上記回線速度以下の中継速度を設定するための中継速度設定部と、上記中継速度設定部によって設定された上記中継速度で、上記優先度順に、上記データ取得部によって取得されたデータを中継するためのデータ中継部と、上記データ中継部によって中継された上記データを含む通信信号を、上記通信回線の回線速度に従って上記通信回線へ送信するための回線送信部とを備える。
【0011】
このように、変更後の回線速度を予測し、回線速度の変更に先立って中継速度を変更する構成により、回線速度が中継速度を超える状態を維持することができるため、IPパケット等のデータのランダム廃棄を防ぐことができる。そして、VoIP(Voice Over IP)等、再送不可および高応答性を要求される優先度の高いデータを保護することができる。したがって、通信中に回線速度の変更が可能な通信回線へ通信信号を送信する構成において、当該回線速度の変更に起因して高い優先度のデータが廃棄されることを防ぐことができる。
【0012】
好ましくは、上記通信装置は、さらに、上記通信信号の送信先の他の通信装置が上記通信信号を受信して測定した上記通信回線の状態を、上記他の通信装置から取得するための回線状態取得部を備え、上記速度予測部は、上記回線状態取得部によって取得された上記通信回線の状態に基づいて、変更後の上記回線速度を予測する。
【0013】
このように、通信回線の回線状態を取得し、当該回線状態に基づいて変更後の回線速度を予測する構成により、回線速度の変更を迅速に予測し、回線速度の変更前に中継速度をより確実に変更することができる。
【0014】
より好ましくは、上記回線状態取得部は、上記他の通信装置が上記通信回線の状態に基づいて算出したSNRマージンを上記他の通信装置から取得し、上記速度予測部は、上記回線状態取得部によって取得された上記SNRマージンに基づいて、変更後の上記回線速度を予測する。
【0015】
このように、SNRマージンを通信回線の回線状態として取得する構成により、回線状態の適切な指標を用いて回線速度の変更を正確に予測することができる。
【0016】
好ましくは、上記通信装置は、さらに、上記通信信号の送信先の他の通信装置からの新たな上記回線速度に関する通知を取得するための速度通知取得部を備え、上記速度予測部は、上記速度通知取得部によって取得された上記通知が示す回線速度を変更後の上記回線速度として予測する。
【0017】
このように、レート変更通知を取得し、当該レート変更通知に基づいて変更後の回線速度を予測する構成により、回線速度の変更を正確に検知し、中継速度を適切に変更することができる。
【0018】
好ましくは、上記通信装置は、さらに、上記中継速度が新たに設定された後、上記通信回線の回線速度の情報を取得するための速度変更結果取得部を備え、上記中継速度設定部は、上記速度変更結果取得部によって取得された上記情報に基づいて上記中継速度を再設定する。
【0019】
このような構成により、変更後の回線速度の予測値が、実際の変更後の回線速度と大きく異なる場合、および回線速度の変更がキャンセルされた場合において、中継速度の変更を見直し、適切な通信速度で良好な通信を行なうことができる。
【0020】
好ましくは、上記通信装置は、さらに、上記通信信号の送信先の他の通信装置が上記通信信号を受信して測定した上記通信回線の状態を上記他の通信装置から取得するための回線状態取得部と、上記他の通信装置からの新たな上記回線速度に関する通知を取得するための速度通知取得部とを備え、上記速度予測部は、上記通信回線の状態および上記通知のうち、先に取得された方に基づいて、変更後の上記回線速度を予測する。
【0021】
このような構成により、回線速度の変更予測のために1つの判断要素を用いる構成と比べて、回線速度の変更を早期に検知し、中継速度の変更を早期に行なうことができる。
【0022】
より好ましくは、上記通信装置は、さらに、上記通信信号の送信先の他の通信装置が上記通信信号を受信して測定した上記通信回線の状態を上記他の通信装置から取得するための回線状態取得部と、上記回線状態取得部によって取得された上記通信回線の状態、ならびに上記中継速度設定部によって設定が維持された上記中継速度または再設定された上記中継速度の対応関係の履歴を記憶するための記憶部とを備え、上記速度予測部は、上記記憶部によって記憶された上記履歴に基づいて、変更後の上記回線速度を予測する。
【0023】
このような構成により、変更後の中継速度と実際の変更後の回線速度との乖離を小さくすることができるため、通信のスループットを向上させてデータの廃棄を低減し、また、中継速度の再設定処理の発生を抑制することができる。
【0024】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる通信方法は、通信中に回線速度の変更が可能な通信回線へ通信信号を送信するための通信装置における通信方法であって、優先度を有するデータを取得するステップと、変更後の上記回線速度を予測するステップと、上記回線速度の変更に先立って、予測した変更後の上記回線速度以下の中継速度を設定するステップと、設定した上記中継速度で、上記優先度順に、取得したデータを中継するステップと、中継した上記データを含む通信信号を、上記通信回線の回線速度に従って上記通信回線へ送信するステップとを含む。
【0025】
このように、変更後の回線速度を予測し、回線速度の変更に先立って中継速度を変更する構成により、回線速度が中継速度を超える状態を維持することができるため、IPパケット等のデータのランダム廃棄を防ぐことができる。そして、VoIP(Voice Over IP)等、再送不可および高応答性を要求される優先度の高いデータを保護することができる。したがって、通信中に回線速度の変更が可能な通信回線へ通信信号を送信する構成において、当該回線速度の変更に起因して高い優先度のデータが廃棄されることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、通信中に回線速度の変更が可能な通信回線へ通信信号を送信する構成において、当該回線速度の変更に起因して高い優先度のデータが廃棄されることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】(a)は、回線安定化機能の無い場合のペイロードレートの切り替えを示す図である。(b)は、回線安定化機能の有る場合のペイロードレートの切り替えを示す図である。
【図3】回線安定化機能における、ペイロードレートの変更による問題点を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る通信装置が通信速度の設定処理を行なう際の動作を示すシーケンス図である。
【図5】図4に示すシーケンス図における、各レートの変化を概念的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る通信装置が通信速度の設定処理を行なう際の動作を示すシーケンス図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る通信装置におけるペイロードレートおよびシェーピングレートの設定変更処理の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る通信装置におけるペイロードレートおよびシェーピングレートの設定変更処理の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0029】
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【0030】
図1を参照して、通信システム201は、たとえばVDSLシステムであり、通信装置であるVDSL集合装置101と、同じく通信装置であるVDSL宅内装置102とを備える。VDSL集合装置101は、L2SW(レイヤ2スイッチ)(データ取得部およびデータ中継部)11と、VDSL−CO(Central Office)処理部(回線送信部、回線状態取得部、速度通知取得部および速度変更結果取得部)12と、制御部(速度予測部および中継速度設定部)13と、記憶部14とを含む。VDSL宅内装置102は、L2SW(データ取得部およびデータ中継部)21と、VDSL−CPE(Customer Premise Equipment)処理部(回線送信部、回線状態取得部、速度通知取得部および速度変更結果取得部)22と、制御部(速度予測部および中継速度設定部)23とを含む。
【0031】
VDSL集合装置101およびVDSL宅内装置102は、たとえば電話回線151を介して接続される。VDSL集合装置101およびVDSL宅内装置102は、VDSL方式に従う通信信号であるVDSL信号を互いに送受信する。
【0032】
以下、VDSL集合装置101からVDSL宅内装置102への通信方向を下り方向と称し、VDSL宅内装置102からVDSL集合装置101への通信方向を上り方向と称する。
【0033】
なお、VDSL集合装置101は、電話回線151を介して複数のVDSL宅内装置102と通信を行なう構成であってもよい。
【0034】
通信システム201は、回線安定化機能を有する。すなわち、電話回線151における下り方向の通信回線161および上り方向の通信回線162の回線速度は、通信中に変更可能である。なお、これらの回線速度は、VDSL集合装置101が主体的に変更してもよいし、VDSL宅内装置102が主体的に変更してもよいし、VDSL集合装置101およびVDSL宅内装置102以外の他の装置が主体的に変更してもよい。
【0035】
また、通信システム201において、VDSL集合装置101およびVDSL宅内装置102は、通信を開始する前に、通信回線161および通信回線162の回線状態をチェックするトレーニングを行なう。このトレーニングでは、信号対雑音比(以下、SNR(Signal to Noise Ratio)とも称する。)を観測し、観測結果に応じて、通信信号のレートを設定する。これにより、回線状態に応じた通信速度が自動的に設定される。
【0036】
また、通信システム201において、VDSL集合装置101およびVDSL宅内装置102は、測定したSNRから所定のマージン値(以下、SNRマージンとも称する。)を減算したSNRの条件下で通信信号が所定の受信品質を満たすように通信信号のレートを設定する。すなわち、SNRマージンは伝送誤りを防止するためのマージン値である。SNRマージンを設定することにより、伝送誤りに対する通信信号の耐性を調整することができる。
【0037】
下り方向において、VDSL集合装置101におけるL2SW11は、たとえばイーサネット(登録商標)からIP(Internet Protocol)パケットを受信して、VDSL−CO処理部12へ中継する。L2SW11によるIPパケットの中継速度が、シェーピングレートRSPDである。L2SW11は、このシェーピングレートRSPDを設定する。
【0038】
より詳細には、L2SW11は、IPパケットの優先度ごとに設けられた複数のバッファを有する。L2SW11は、受信したIPパケットの優先度に基づいて、当該IPパケットを振り分けてバッファに蓄積する。
【0039】
L2SW11は、IPパケットの優先度に基づいてバッファからIPパケットを取り出し、VDSL−CO処理部12へ出力する。L2SW11は、このようにして優先度順にIPパケットの中継を行い、たとえば、イーサネットからのIPパケットの送信レートRTXDがシェーピングレートRSPDを超える場合には、優先度の低いIPパケットを廃棄する。
【0040】
VDSL−CO処理部12は、L2SW11から受けたIPパケットに対してVDSL方式に従う信号処理を行なってVDSL信号を生成し、通信回線161へ送信する。VDSL−CO処理部12は、通信回線161の回線速度すなわち通信回線161におけるIPパケットの伝送可能レートであるペイロードレートRPYDを設定する。
【0041】
ここで、L2SW11によるIPパケットの中継速度すなわちシェーピングレートRSPDがペイロードレートRPYDを超える場合には、VDSL−CO処理部12において、IPパケットの優先度には関係なく、ランダムにIPパケットが廃棄される。すなわち、優先順にデータ廃棄が起こるのではなく、L2SW11から優先度順に送信されたIPパケットが、VDSL−CO処理部12側で受けきれずに順番に廃棄される。
【0042】
VDSL宅内装置102におけるVDSL−CPE処理部22は、通信回線161を介してVDSL集合装置101から受信したVDSL信号に対してVDSL方式に従う信号処理を行なってIPパケットを再生し、当該IPパケットをL2SW21経由でイーサネットへ送信する。
【0043】
上り方向において、VDSL宅内装置102におけるL2SW21は、たとえばイーサネット(登録商標)からIP(Internet Protocol)パケットを受信して、VDSL−CPE処理部22へ中継する。L2SW21によるIPパケットの中継速度が、シェーピングレートRSPUである。L2SW21は、このシェーピングレートRSPUを設定する。
【0044】
より詳細には、L2SW21は、IPパケットの優先度ごとに設けられた複数のバッファを有する。L2SW21は、受信したIPパケットの優先度に基づいて、当該IPパケットを振り分けてバッファに蓄積する。
【0045】
L2SW21は、IPパケットの優先度に基づいてバッファからIPパケットを取り出し、VDSL−CPE処理部22へ出力する。L2SW21は、このようにして優先度順にIPパケットの中継を行い、たとえば、イーサネットからのIPパケットの送信レートRTXUがシェーピングレートRSPUを超える場合には、優先度の低いIPパケットを廃棄する。
【0046】
VDSL−CPE処理部22は、L2SW21から受けたIPパケットに対してVDSL方式に従う信号処理を行なってVDSL信号を生成し、通信回線162へ送信する。VDSL−CPE処理部22は、通信回線162の回線速度すなわち通信回線162におけるIPパケットの伝送可能レートであるペイロードレートRPYUを設定する。
【0047】
ここで、L2SW21によるIPパケットの中継速度すなわちシェーピングレートRSPUがペイロードレートRPYUを超える場合には、VDSL−CPE処理部22において、IPパケットの優先度には関係なく、ランダムにIPパケットが廃棄される。すなわち、優先順にデータ廃棄が起こるのではなく、L2SW21から優先度順に送信されたIPパケットが、VDSL−CPE処理部22側で受けきれずに順番に廃棄される。
【0048】
VDSL集合装置101におけるVDSL−CPE処理部12は、通信回線162を介してVDSL宅内装置102から受信したVDSL信号に対してVDSL方式に従う信号処理を行なってIPパケットを再生し、当該IPパケットをL2SW11経由でイーサネットへ送信する。
【0049】
VDSL集合装置101において、制御部13は、VDSL−CO処理部12が保持しているSNRマージン測定結果を定期的に取得する。また、制御部13は、VDSL−CO処理部12が保持しているペイロードレートを定期的に取得する。また、制御部13は、シェーピングレート変更要求をL2SW11へ出力する。
【0050】
L2SW11は、制御部13からのシェーピングレート変更要求を受信し、シェーピングレートを変更する。
【0051】
VDSL−CO処理部12は、VDSL−CPE処理部22へ、通信回線161のSNRマージン測定要求を定期的に送信する。また、VDSL−CO処理部12は、通信回線161のSNRマージン測定結果をVDSL−CPE処理部22から受信して保持する。また、VDSL−CO処理部12は、VDSL−CPE処理部22との間でトレーニングを行なうことにより、通信回線161のペイロードレートを設定し、保持する。また、VDSL−CO処理部12は、OLR(On Line Reconfiguration)メッセージをVDSL−CPE処理部22から受信し、結果すなわちOKまたはキャンセルをVDSL−CPE処理部22に通知する。OLRメッセージに対する結果がOKの場合には、VDSL−CO処理部12は、VDSL−CPE処理部22とともにペイロードレートを変更する。
【0052】
VDSL宅内装置102において、VDSL−CPE処理部22は、SNRマージン測定要求をVDSL−CO処理部12から受信して、通信回線161のSNRマージンを測定する。そして、VDSL−CPE処理部22は、SNRマージン測定結果をVDSL−CO処理部12へ送信する。また、VDSL−CPE処理部22は、VDSL−CO処理部12との間でトレーニングを行なうことにより、通信回線161のペイロードレートを設定する。また、VDSL−CPE処理部22は、OLRメッセージをVDSL−CO処理部12へ送信する。そして、VDSL−CPE処理部22は、OLRメッセージに対する結果をVDSL−CO処理部12から受信し、OKである場合にはVDSL−CO処理部12とともに通信回線161のペイロードレートを変更する。
【0053】
また、VDSL宅内装置102において、制御部23は、VDSL−CPE処理部22が保持しているSNRマージン測定結果を定期的に取得する。また、制御部23は、VDSL−CPE処理部22が保持しているペイロードレートを定期的に取得する。また、制御部23は、シェーピングレート変更要求をL2SW21へ出力する。
【0054】
L2SW21は、制御部23からのシェーピングレート変更要求を受信し、シェーピングレートを変更する。
【0055】
VDSL−CPE処理部22は、VDSL−CO処理部12へ、通信回線162のSNRマージン測定要求を定期的に送信する。また、VDSL−CPE処理部22は、通信回線162のSNRマージン測定結果をVDSL−CO処理部12から受信して保持する。また、VDSL−CPE処理部22は、VDSL−CO処理部12との間でトレーニングを行なうことにより、通信回線162のペイロードレートを設定し、保持する。また、VDSL−CPE処理部22は、OLR(On Line Reconfiguration)メッセージをVDSL−CO処理部12から受信し、結果すなわちOKまたはキャンセルをVDSL−CO処理部12に通知する。OLRメッセージに対する結果がOKの場合には、VDSL−CPE処理部22は、VDSL−CO処理部12とともにペイロードレートを変更する。
【0056】
VDSL集合装置101において、VDSL−CO処理部12は、SNRマージン測定要求をVDSL−CPE処理部22から受信して、通信回線162のSNRマージンを測定する。そして、VDSL−CO処理部12は、SNRマージン測定結果をVDSL−CPE処理部22へ送信する。また、VDSL−CO処理部12は、VDSL−CPE処理部22との間でトレーニングを行なうことにより、通信回線162のペイロードレートを設定する。また、VDSL−CO処理部12は、OLRメッセージをVDSL−CPE処理部22へ送信する。そして、VDSL−CO処理部12は、OLRメッセージに対する結果をVDSL−CPE処理部22から受信し、OKである場合にはVDSL−CPE処理部22とともに通信回線162のペイロードレートを変更する。
【0057】
図2(a)は、回線安定化機能の無い場合のペイロードレートの切り替えを示す図である。図2(b)は、回線安定化機能の有る場合のペイロードレートの切り替えを示す図である。
【0058】
図2(a)を参照して、ITU−T G.993.1のVDSL1では、回線を切断してからペイロードレートを調整する。このため、回線が再接続されるまでの間、通信を行なうことができない。
【0059】
図2(b)を参照して、ITU−T G.993.2のVDSL2では、回線を切断することなくペイロードレートを調整することができるため、ペイロードレートを変更しても通信を継続させることができる。
【0060】
図3は、回線安定化機能における、ペイロードレートの変更による問題点を示す図である。
【0061】
図3を参照して、ペイロードレートがタイミングT1において低速度に変更され、この変更をタイミングT1以降に検知し、シェーピングレートをタイミングT2において低速度に変更すると、タイミングT1からT2までの期間TRにおいて、シェーピングレートがペイロードレートを超える。このため、期間TRにおいて、VDSL−CO処理部12またはVDSL−CPE処理部22がIPパケットをランダムに廃棄し、優先度の高いIPパケットが廃棄されてしまう場合がある。
【0062】
そこで、本発明の実施の形態に係る通信装置では、以下のような動作を行なうことにより、上記問題点を解決する。
【0063】
[動作]
次に、本発明の実施の形態に係る通信装置が通信速度を制御する際の動作について説明する。以下では、下り方向の通信速度制御について代表的に説明する。上り方向の通信速度制御は下り方向の通信速度制御と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0064】
再び図1を参照して、局側装置101における制御部13は、通信回線161における変更後のペイロードレートを予測する。
【0065】
たとえば、VDSL−CO処理部12は、VDSL信号の送信先のVDSL宅内装置102がVDSL信号を受信して測定した通信回線161の状態を、VDSL宅内装置102から取得する。制御部13は、VDSL−CO処理部12によって取得された通信回線161の状態に基づいて、変更後のペイロードレートを予測する。
【0066】
具体的には、VDSL−CO処理部12は、VDSL宅内装置102が通信回線161の状態すなわちSNRに基づいて算出したSNRマージンをVDSL宅内装置102から取得する。制御部13は、VDSL−CO処理部12によって取得されたSNRマージンに基づいて、変更後のペイロードレートを予測する。
【0067】
制御部13は、通信回線161のペイロードレートの変更に先立って、予測した変更後のペイロードレート以下のシェーピングレートを設定する。
【0068】
L2SW11は、制御部13によって設定されたシェーピングレートで、優先度順に、イーサネットから取得したIPパケットをVDSL−CO処理部12へ中継する。
【0069】
そして、VDSL−CO処理部12は、L2SW11によって中継されたIPパケットを含むVDSL信号を、通信回線161のペイロードレートに従って通信回線161へ送信する。
【0070】
また、VDSL−CO処理部12は、L2SW11のシェーピングレートが新たに設定された後、通信回線161の回線速度すなわちペイロードレートの情報を取得する。
【0071】
そして、制御部13は、VDSL−CO処理部12によって取得されたペイロードレートの情報に基づいてシェーピングレートを再設定する。
【0072】
図4は、本発明の実施の形態に係る通信装置が通信速度の設定処理を行なう際の動作を示すシーケンス図である。図4は、下り方向において、SNRマージンの変化を検知し、ペイロードレートの変更前にシェーピングレートを変更する場合を示している。
【0073】
図4を参照して、まず、VDSL集合装置101におけるVDSL−CO処理部12は、SNRマージン測定要求をVDSL宅内装置102におけるVDSL−CPE処理部22へ送信する。この測定要求は、定期的に行われる。ここで、VDSL−CO処理部12は、たとえばSNRマージンとして6dBを保持しているものとする(ステップS1)。
【0074】
次に、VDSL−CPE処理部22は、SNRマージン測定要求をVDSL−CO処理部12から受信して、SNRマージンを測定する。より詳細には、VDSL−CPE処理部22は、通信回線161におけるSNRを測定し、SNRの測定結果、現在のペイロードレートおよび所定のエラーレート等の受信品質に基づいてSNRマージンを算出する。たとえば、SNRマージンが、目標値である6dBに対して4dBであったとする(ステップS2)。
【0075】
次に、VDSL−CPE処理部22は、算出したSNRマージンを示すSNRマージン測定結果をVDSL−CO処理部12へ送信する(ステップS3)。
【0076】
次に、VDSL−CO処理部12は、VDSL−CPE処理部22から受信したSNRマージン測定結果に基づいて、保持しているSNRマージンを更新する。具体的には、VDSL−CO処理部12は、保持しているSNRマージンを6dBから4dBに更新する(ステップS4)。
【0077】
次に、VDSL−CPE処理部22は、SNRマージンが所定の閾値たとえば5dBよりも低い状態が所定時間続いたことから、6dBのSNRマージンを確保するために、ペイロードレートを低速に変更すべきであると判断する。この所定時間は、たとえばユーザが設定可能である(ステップS5)。
【0078】
次に、VDSL−CPE処理部22は、ペイロードレートを変更すべきであると判断すると、ペイロードレートの変更予告であるレート変更通知すなわちOLRメッセージをVDSL−CO処理部12へ送信する。具体的には、VDSL−CPE処理部22は、SNRマージンを6dBに戻すための低速のペイロードレートを示すレート変更通知をVDSL−CO処理部12へ送信する(ステップS6)。
【0079】
次に、VDSL−CO処理部12は、VDSL−CPE処理部22からレート変更通知を受信して、VDSL−CPE処理部22へACKを送信する、すなわちVDSL−CPE処理部22からのOLRメッセージに対するOKをVDSL−CPE処理部22に通知する(ステップS7)。
【0080】
次に、VDSL−CO処理部12およびVDSL−CPE処理部22は、トレーニングを行なうことにより(ステップS8)、ペイロードレートを変更する。ここで、VDSL−CO処理部12は、変更後のペイロードレートを保持する(ステップS9)。
【0081】
一方、制御部13は、VDSL−CO処理部12が保持しているSNRマージンおよびペイロードレートを定期的に取得する。
【0082】
制御部13は、1回目の取得動作P1において、SNRマージンおよびペイロードレートが変更されていないことから、次回の取得動作P2まで待機する。
【0083】
次に、制御部13は、2回目の取得動作P2において、更新されたSNRマージンを取得する(ステップS11)。
【0084】
次に、制御部13は、通信回線161の回線状態の変化すなわちSNRマージンの変化を学習する。たとえば、制御部13は、更新前および更新後のSNRマージンすなわち6dBおよび4dBを記憶部14に保存する(ステップS12)。
【0085】
次に、制御部13は、更新前および更新後のSNRマージンならびに後述する記憶部14に保存されたシェーピングレートの設定履歴に基づいて、ペイロードレートの変更を予測する。たとえば、制御部13は、通信回線161のSNRマージンが小さくなると、通信回線161の回線状態が悪くなったと判断できることから、通信回線161のペイロードレートが低速に変更されると判断する(ステップS13)。
【0086】
次に、制御部13は、予測した変更後のペイロードレートが現在のシェーピングレートより小さい場合には、ペイロードレートの予測値以下のレートを示すレート変更要求をL2SW11へ出力する(ステップS14)。
【0087】
次に、制御部13は、設定したシェーピングレートを学習する。たとえば、制御部13は、SNRマージンの6dBから4dBへの変化と、設定したシューピングレートすなわちレート変更要求の示すレートとを対応づけて記憶部14に保存する(ステップS15)。
【0088】
次に、L2SW11は、制御部13から受けたレート変更要求の示すレートにシェーピングレートを変更する(ステップS16)。
【0089】
次に、制御部13は、3回目の取得動作P3において、実際に変更されたペイロードレートを取得する(ステップS17)。
【0090】
次に、制御部13は、実際に変更されたペイロードレートが、予測したレートよりも大きい、すなわち変更したシェーピングレートが、実際に変更されたペイロードレートに対して小さすぎる場合には、シェーピングレートを再設定する。制御部13は、実際に変更されたペイロードレート以下の範囲で高速にしたシェーピングレートを示すレート変更要求をL2SW11へ出力する。一方、制御部13は、変更したシェーピングレートが、実際に変更されたペイロードレートに対して適切な値である場合には、当該シェーピングレートの設定を維持する(ステップS18)。
【0091】
次に、制御部13は、再設定したシェーピングレートを学習する。たとえば、制御部13は、SNRマージンの6dBから4dBへの変化と、再設定したシューピングレートとを対応づけて記憶部14に保存する(ステップS19)。
【0092】
次に、L2SW11は、制御部13から受けたレート変更要求の示すレートにシェーピングレートを再変更する(ステップS20)。
【0093】
上記のように、制御部13が、設定したシェーピングレートを学習する(ステップS15およびS19)構成により、今後SNRマージンが6dBから4dBに変化した場合に、1回のシェーピングレート変更処理でシェーピングレートを適切な値に設定することができるため、シェーピングレートの再設定処理の発生を抑制することができる。
【0094】
すなわち、記憶部14は、VDSL−CO処理部12によって取得された通信回線161の状態、ならびに制御部13によって設定が維持されたシェーピングレートまたは再設定されたシェーピングレートの対応関係の履歴を記憶する。
【0095】
そして、制御部13は、記憶部14によって記憶された履歴に基づいて、変更後のペイロードレートを予測する。
【0096】
このような学習機能は、たとえば、マンション等の集合住宅におけるエレベータの移動に対して効果的である。すなわち、エレベータ通過時に電話回線151におけるノイズが増大する場合があり、エレベータの通過は恒常的で回線状態への影響パターンも決まっている。このため、上記のような学習機能により、シェーピングレートの再設定処理の生じる可能性を大幅に低減することができる。
【0097】
図5は、図4に示すシーケンス図における、各レートの変化を概念的に示す図である。
【0098】
図5を参照して、まず、ペイロードレートとしてRPYD1が設定されており、ペイロードレートRPYD1以下のシェーピングレートであるRSPD1が設定されている。
【0099】
この状態において、通信回線161のSNRマージンが減少したことから、シェーピングレートがRSPD1よりも小さいRSPD2に設定される(図4のステップS16)。
【0100】
次に、ペイロードレートがRPYD1よりも小さいRPYD2に設定される(図4のステップS9)。
【0101】
次に、変更後のシェーピングレートであるRSPD2が、新たに設定されたペイロードレートであるRPYD2よりも小さすぎることから、シェーピングレートが、RSPD1よりも小さくかつRSPD2より大きいRSPD3に変更される(図4のステップS20)。
【0102】
図6は、本発明の実施の形態に係る通信装置が通信速度の設定処理を行なう際の動作を示すシーケンス図である。図6は、下り方向において、レート変更通知によってペイロードレートの変更を前もって検知し、ペイロードレートの変更前にシェーピングレートを変更する場合を示している。
【0103】
VDSL−CO処理部12は、VDSL信号の送信先のVDSL宅内装置102からの新たなペイロードレートに関する通知たとえばOLRメッセージを取得する。
【0104】
そして、制御部13は、VDSL−CO処理部12によって取得された通知が示すペイロードレートを変更後のペイロードレートとして予測する。
【0105】
図6を参照して、まず、VDSL−CPE処理部22は、ペイロードレートを低速に変更すべきであると判断する(ステップS31)。
【0106】
次に、VDSL−CPE処理部22は、ペイロードレートを変更すべきであると判断すると、ペイロードレートの変更予告であるレート変更通知すなわちOLRメッセージをVDSL−CO処理部12へ送信する。たとえば、VDSL−CPE処理部22は、より低速のペイロードレートを示すレート変更通知をVDSL−CO処理部12へ送信する(ステップS32)。
【0107】
次に、VDSL−CO処理部12は、VDSL−CPE処理部22から受信したレート変更通知に基づいて、保持しているペイロードレートを更新し(ステップS33)、また、VDSL−CPE処理部22へACKを送信する、すなわちVDSL−CPE処理部22からのOLRメッセージに対するOKをVDSL−CPE処理部22に通知する(ステップS34)。
【0108】
次に、VDSL−CO処理部12およびVDSL−CPE処理部22は、トレーニングを行なうことにより(ステップS35)、ペイロードレートを変更する。ここで、VDSL−CO処理部12は、保持しているペイロードレートを、実際に変更されたペイロードレートに更新する(ステップS36)。
【0109】
一方、制御部13は、VDSL−CO処理部12が保持しているSNRマージンおよびペイロードレートを定期的に取得する。
【0110】
制御部13は、1回目の取得動作P1において、SNRマージンおよびペイロードレートが変更されていないことから、次回の取得動作P2まで待機する。
【0111】
次に、制御部13は、2回目の取得動作P2において、更新されたペイロードレートを取得する(ステップS41)。
【0112】
次に、制御部13は、取得したペイロードレートを変更後のペイロードレートとして予測する(ステップS42)。
【0113】
次に、制御部13は、取得したペイロードレートが現在のシェーピングレートより小さい場合には、取得したペイロードレート以下のレートを示すレート変更要求をL2SW11へ出力する(ステップS43)。
【0114】
次に、L2SW11は、制御部13から受けたレート変更要求の示すレートにシェーピングレートを変更する(ステップS44)。
【0115】
次に、制御部13は、3回目の取得動作P3において、実際の変更後のペイロードレートを取得する(ステップS45)。
【0116】
次に、制御部13は、実際に変更されたペイロードレートが、レート変更通知の示すレートよりも大きい、すなわち変更したシェーピングレートが、実際に変更されたペイロードレートに対して小さすぎる場合には、シェーピングレートを再設定する。制御部13は、実際に変更されたペイロードレート以下の範囲で高速にしたシェーピングレートを示すレート変更要求をL2SW11へ出力する。一方、制御部13は、変更したシェーピングレートが、実際に変更されたペイロードレートに対して適切な値である場合には、当該シェーピングレートの設定を維持する(ステップS46)。
【0117】
次に、L2SW11は、制御部13から受けたレート変更要求の示すレートにシェーピングレートを再変更する(ステップS47)。
【0118】
図4および図6に示すシーケンス図を用いて説明したように、VDSL−CO処理部12は、VDSL信号の送信先のVDSL宅内装置102がVDSL信号を受信して測定した通信回線161の状態たとえばSNRマージンをVDSL宅内装置102から取得する(図4のステップS4)。また、VDSL−CO処理部12は、VDSL宅内装置102からの新たなシェーピングレートに関する通知たとえばOLRメッセージを取得する(図6のステップS33)。
【0119】
そして、制御部13は、通信回線161のSNRマージンおよびOLRメッセージのうち、先に取得された方に基づいて、変更後のシェーピングレートを予測する(図4のステップS13および図6のステップS42)。
【0120】
図7は、本発明の実施の形態に係る通信装置におけるペイロードレートおよびシェーピングレートの設定変更処理の一例を示す図である。
【0121】
図7を参照して、VDSL集合装置101では、制御部13が、SNRマージンの変化、またはOLRメッセージによるペイロードレートの変更予告を検知し、ペイロードレートが実際に小さくなるタイミングT1より前のタイミングT3において、シェーピングレートを小さくする。
【0122】
これにより、ペイロードレートが変更されたタイミングT1より後のタイミングT2においてシェーピングレートを変更する構成と比べて、シェーピングレートがペイロードレートを超える期間が存在しなくなるため、VDSL−CO処理部12におけるIPパケットの廃棄を防ぐことができる。
【0123】
また、制御部13は、実際に変更されたペイロードレートと、変更したシェーピングレートとを比較し、比較結果に応じてシェーピングレートを再変更する。たとえば、変更後のシェーピングレートが、実際に変更されたペイロードレートより所定値以上小さい場合には、ペイロードレート以下の範囲で、シェーピングレートが大きくなるように変更する(タイミングT4)。
【0124】
図8は、本発明の実施の形態に係る通信装置におけるペイロードレートおよびシェーピングレートの設定変更処理の他の例を示す図である。
【0125】
図8を参照して、VDSL集合装置101では、制御部13が、タイミングT3においてシェーピングレートを低速に変更した後、実際に変更されたペイロードレートと、変更したシェーピングレートとを比較し、比較結果に応じてシェーピングレートを再変更する。
【0126】
たとえば、ペイロードレートの変更がキャンセルされ、実際にはペイロードレートが変更されなかった場合には、シェーピングレートを変更前の値に戻す(タイミングT4)。
【0127】
ところで、回線安定化機能を有するVDSLシステムでは、ペイロードレートが動的に変化するため、シェーピングレートもペイロードに追随して変化させる必要がある。しかしながら、ペイロードレートが変更された後、これに追随してシェーピングレートの変更を完了するまでの間にデータがランダムに廃棄され、優先度の高いデータが廃棄されてしまう場合がある。
【0128】
これに対して、本発明の実施の形態に係る通信装置では、たとえば下り方向において、制御部13は、通信回線161における変更後のペイロードレートを予測し、通信回線161のペイロードレートの変更に先立って、予測した変更後のペイロードレート以下のシェーピングレートを設定する。L2SW11は、制御部13によって設定されたシェーピングレートで、優先度順に、L2SW11によって取得されたIPパケットをVDSL−CO処理部12へ中継する。そして、VDSL−CO処理部12は、L2SW11によって中継されたIPパケットを含むVDSL信号を、通信回線161のペイロードレートに従って通信回線161へ送信する。
【0129】
このように、変更後のペイロードレートを予測し、ペイロードレートの変更に先立ってシェーピングレートを変更する構成により、ペイロードレートがシェーピングレートを超える状態を維持することができるため、IPパケット等のデータのランダム廃棄を防ぐことができる。そして、VoIP(Voice Over IP)等、再送不可および高応答性を要求される優先度の高いデータを保護することができる。
【0130】
したがって、本発明の実施の形態に係る通信装置では、通信中に回線速度の変更が可能な通信回線へ通信信号を送信する構成において、当該回線速度の変更に起因して高い優先度のデータが廃棄されることを防ぐことができる。
【0131】
また、本発明の実施の形態に係る通信装置では、VDSL−CO処理部12は、VDSL信号の送信先のVDSL宅内装置102がVDSL信号を受信して測定した通信回線161の状態を、VDSL宅内装置102から取得する。そして、制御部13は、VDSL−CO処理部12によって取得された通信回線161の状態に基づいて、変更後のペイロードレートを予測する。
【0132】
このように、通信回線161の回線状態を取得し、当該回線状態に基づいて変更後のペイロードレートを予測する構成により、ペイロードレートの変更を迅速に予測し、ペイロードレート変更前にシェーピングレートをより確実に変更することができる。
【0133】
また、本発明の実施の形態に係る通信装置では、VDSL−CO処理部12は、VDSL宅内装置102が通信回線161の状態に基づいて算出したSNRマージンをVDSL宅内装置102から取得する。そして、制御部13は、VDSL−CO処理部12によって取得されたSNRマージンに基づいて、変更後のペイロードレートを予測する。
【0134】
このように、SNRマージンを通信回線161の回線状態として取得する構成により、回線状態の適切な指標を用いてペイロードレートの変更を正確に予測することができる。
【0135】
また、本発明の実施の形態に係る通信装置では、VDSL−CO処理部12は、VDSL信号の送信先のVDSL宅内装置102からの新たなペイロードレートに関する通知たとえばOLRメッセージを取得する。そして、制御部13は、VDSL−CO処理部12によって取得された通知が示すペイロードレートを変更後のペイロードレートとして予測する。
【0136】
このように、レート変更通知を取得し、当該レート変更通知に基づいて変更後のペイロードレートを予測する構成により、ペイロードレートの変更を正確に検知し、シェーピングレートを適切に変更することができる。
【0137】
また、本発明の実施の形態に係る通信装置では、VDSL−CO処理部12は、L2SW11のシェーピングレートが新たに設定された後、通信回線161の回線速度すなわちペイロードレートの情報を取得する。そして、制御部13は、VDSL−CO処理部12によって取得された情報に基づいてシェーピングレートを再設定する。
【0138】
このような構成により、変更後のペイロードレートの予測値が、実際の変更後のペイロードレートと大きく異なる場合、およびペイロードレートの変更がキャンセルされた場合において、シェーピングレートの変更を見直し、適切な通信速度で良好な通信を行なうことができる。
【0139】
また、本発明の実施の形態に係る通信装置では、VDSL−CO処理部12は、VDSL信号の送信先のVDSL宅内装置102がVDSL信号を受信して測定した通信回線161の状態たとえばSNRマージンをVDSL宅内装置102から取得する。また、VDSL−CO処理部12は、VDSL宅内装置102からの新たなペイロードレートに関する通知たとえばOLRメッセージを取得する。制御部13は、通信回線161の状態および新たなペイロードレートに関する通知のうち、先に取得された方に基づいて、変更後のペイロードレートを予測する。
【0140】
このような構成により、ペイロードレートの変更予測のために1つの判断要素を用いる構成と比べて、ペイロードレートの変更を早期に検知し、シェーピングレートの変更を早期に行なうことができる。
【0141】
また、本発明の実施の形態に係る通信装置では、記憶部14は、VDSL−CO処理部12によって取得された通信回線161の状態、ならびに制御部13によって設定が維持されたシェーピングレートまたは再設定されたシェーピングレートの対応関係の履歴を記憶する。そして、制御部13は、記憶部14によって記憶された履歴に基づいて、変更後のペイロードレートを予測する。
【0142】
このような構成により、変更後のシェーピングレートと実際の変更後のペイロードレートとの乖離を小さくすることができるため、通信のスループットを向上させてデータの廃棄を低減し、また、シェーピングレートの再設定処理の発生を抑制することができる。
【0143】
なお、本発明の実施の形態に係る通信システムでは、VDSL集合装置101およびVDSL宅内装置102は、イーサネットからIPパケットを受信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。VDSL集合装置101およびVDSL宅内装置102は、通信相手へ送信すべき通信データを自ら生成する構成であってもよい。
【0144】
また、本発明の実施の形態に係る通信システムでは、VDSL集合装置101およびVDSL宅内装置102は、回線状態であるSNRマージン、または新たな回線速度の通知であるOLRメッセージを通信相手から受け取る構成であるとしたが、これに限定するものではない。VDSL集合装置101およびVDSL宅内装置102は、通信信号の送信先である通信回線の回線速度すなわちペイロードレートの変更を自ら予定し、当該回線速度の変更前に中継速度すなわちシェーピングレートを変更する構成であってもよい。
【0145】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0146】
11 L2SW(データ取得部およびデータ中継部)
12 VDSL−CO処理部(回線送信部、回線状態取得部、速度通知取得部および速度変更結果取得部)
13 制御部(速度予測部および中継速度設定部)
14 記憶部
21 L2SW(データ取得部およびデータ中継部)
22 VDSL−CPE処理部(回線送信部、回線状態取得部、速度通知取得部および速度変更結果取得部)
23 制御部(速度予測部および中継速度設定部)
101 VDSL集合装置
102 VDSL宅内装置
201 通信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信中に回線速度の変更が可能な通信回線へ通信信号を送信するための通信装置であって、
優先度を有するデータを取得するためのデータ取得部と、
変更後の前記回線速度を予測するための速度予測部と、
前記回線速度の変更に先立って、前記速度予測部によって予測された変更後の前記回線速度以下の中継速度を設定するための中継速度設定部と、
前記中継速度設定部によって設定された前記中継速度で、前記優先度順に、前記データ取得部によって取得されたデータを中継するためのデータ中継部と、
前記データ中継部によって中継された前記データを含む通信信号を、前記通信回線の回線速度に従って前記通信回線へ送信するための回線送信部とを備える、通信装置。
【請求項2】
前記通信装置は、さらに、
前記通信信号の送信先の他の通信装置が前記通信信号を受信して測定した前記通信回線の状態を、前記他の通信装置から取得するための回線状態取得部を備え、
前記速度予測部は、前記回線状態取得部によって取得された前記通信回線の状態に基づいて、変更後の前記回線速度を予測する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記回線状態取得部は、前記他の通信装置が前記通信回線の状態に基づいて算出したSNRマージンを前記他の通信装置から取得し、
前記速度予測部は、前記回線状態取得部によって取得された前記SNRマージンに基づいて、変更後の前記回線速度を予測する、請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信装置は、さらに、
前記通信信号の送信先の他の通信装置からの新たな前記回線速度に関する通知を取得するための速度通知取得部を備え、
前記速度予測部は、前記速度通知取得部によって取得された前記通知が示す回線速度を変更後の前記回線速度として予測する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信装置は、さらに、
前記中継速度が新たに設定された後、前記通信回線の回線速度の情報を取得するための速度変更結果取得部を備え、
前記中継速度設定部は、前記速度変更結果取得部によって取得された前記情報に基づいて前記中継速度を再設定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信装置は、さらに、
前記通信信号の送信先の他の通信装置が前記通信信号を受信して測定した前記通信回線の状態を前記他の通信装置から取得するための回線状態取得部と、
前記他の通信装置からの新たな前記回線速度に関する通知を取得するための速度通知取得部とを備え、
前記速度予測部は、前記通信回線の状態および前記通知のうち、先に取得された方に基づいて、変更後の前記回線速度を予測する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信装置は、さらに、
前記通信信号の送信先の他の通信装置が前記通信信号を受信して測定した前記通信回線の状態を前記他の通信装置から取得するための回線状態取得部と、
前記回線状態取得部によって取得された前記通信回線の状態、ならびに前記中継速度設定部によって設定が維持された前記中継速度または再設定された前記中継速度の対応関係の履歴を記憶するための記憶部とを備え、
前記速度予測部は、前記記憶部によって記憶された前記履歴に基づいて、変更後の前記回線速度を予測する、請求項5に記載の通信装置。
【請求項8】
通信中に回線速度の変更が可能な通信回線へ通信信号を送信するための通信装置における通信方法であって、
優先度を有するデータを取得するステップと、
変更後の前記回線速度を予測するステップと、
前記回線速度の変更に先立って、予測した変更後の前記回線速度以下の中継速度を設定するステップと、
設定した前記中継速度で、前記優先度順に、取得したデータを中継するステップと、
中継した前記データを含む通信信号を、前記通信回線の回線速度に従って前記通信回線へ送信するステップとを含む、通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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