説明

通信装置および通信装置設定方法

【課題】クロストークの影響を抑止して伝送路の信号波形調節がおこなえること。
【解決手段】通信装置は、内部に信号伝送する複数の伝送路と、伝送路の信号波形調節により伝送特性が好適となる状態に変更自在なプリエンファシス部,ラインイコライザと、このプリエンファシス部,ラインイコライザによる伝送路の伝送特性の調節を制御するとともに、調節する伝送路に影響を与える他の伝送路を判定し、他の伝送路からのクロストークの発生を抑止する制御をおこなう好適化制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を伝送する通信装置および通信装置設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信装置および情報処理装置において、装置筐体内にバックワイヤリングボード(BWB)を設け、このバックワイヤリングボードに対してプラグインユニットが装着されるものがある。バックワイヤリングボードを用いた電気信号の伝送は、一般的に用いられており、最近の通信装置では電気信号の伝送容量の増大に伴い、伝送速度が高速化されてきている。このような電気信号の伝送品質を確保するために、プリエンファシス、ラインイコライザ等の技術が用いられている。また、好適な伝送品質を確保するために、プリエンファシス、ラインイコライザは伝送路毎に好適な設定に調節して使用される。
【0003】
通信装置内では、送信ユニットからバックワイヤリングボードを介して受信ユニット迄の間で複数の伝送路が接続されている。高速化された伝送路では、送信ユニットにプリエンファシス部が設けられ、また、受信ユニットにラインイコライザ部が設けられている。また、受信ユニットには、受信信号の波形状態をモニタする信号モニタ部が設けられ、モニタ情報から受信信号の状態が好適になるように、受信ユニットのイコライザの制御、および送信ユニットのプリエンファシス部に対してプリエンファシスおよびイコライザ設定を調節する制御の機能を有している。
【0004】
このように、高密度、および高速化した通信装置では、伝送路間にクロストークが発生する。クロストークは、一般に近接する伝送路(平行配線パターン)間、およびバックワイヤリングボードと送信ユニット、受信ユニットとを接続するコネクタ部分で生じる。このため、この伝送路における信号方向や、信号(駆動回路)タイミング等の情報に基づいて、クロストークノイズの発生をプログラム上で検証する技術が開示されている(たとえば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−67104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、高密度、および高速化した通信装置において、受信ユニットでの受信信号の状態に基づいて、エンファシス/イコライザ設定を調節した場合には、伝送路間のクロストーク発生により、受信波形が歪む。そして、歪んだ波形に合わせたエンファシス/イコライザ設定で調節をおこなってしまうと、受信波形全体が歪んでしまい伝送路の性能から期待した伝送特性を実現できなくなるという問題が生じる。
【0007】
図10は、クロストークの影響を説明するための図である。クロストークがプリエンファシス調節結果に影響する場合の例を示した。送信波形Aは、プリエンファシス調節中のパルス状の送信波形である。対応する受信波形Aは、エンファシス調節中の受信波形であり、クロストークXTが乗り、波形の立ち上がり部分aの振幅が見かけ上大きく見えてしまう。受信ユニットでは、クロストークXTの影響を受けた受信波形Aを受信しているにもかかわらず、この受信波形Aだけをみてエンファシス判定をおこなった結果、受信波形Aは良好であり、送信ユニットでのプリエンファシス制御はおこなわなくてもよいと誤判定してしまう。
【0008】
この結果、クロストークXTが生じていても、送信ユニットでは、プリエンファシスをおこなわない送信波形B(送信波形Aと同じ)の信号を送信し、受信ユニットでは受信波形Bを検出することになる。この受信波形Bでは信号の立ち上がり部分bが緩やかで、開口(アイ)が小さく、伝送特性を向上することができない。なお、クロストークがない状態で、エンファシス判定が実施されたとき、本来はプリエンファシスを実施したほうがより開口(アイ)が大きくなる。このときの送信波形/受信波形はいずれもCの状態に決定され、受信ユニットでは、本来このような立ち上がり部分cが急峻である良好な受信波形Cを得たいのであるが、得ることができなかった。
【0009】
このように、エンファシス/イコライザ設定の調節でクロストークの影響を解消しようとした、クロストークの状態に基づいてエンファシス/イコライザ設定の調節を適切におこなう必要があるが、上述したように単純に受信波形に基づいてエンファシス/イコライザ設定をおこなうだけでは適切な受信波形を得ることができず、伝送特性を向上させることができなかった。
【0010】
開示の通信装置および通信装置設定方法は、上述した問題点を解消するものであり、クロストークの影響を抑止して伝送路の信号調節がおこなえることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、開示技術は、装置に設けられ、信号を伝送する複数の伝送路と、前記伝送路の信号波形の調節により伝送特性が好適となる状態に調節可能な調節部と、前記調節部による前記伝送路の伝送特性の調節を制御するとともに、調節する前記伝送路に影響を与える他の伝送路を判定し、前記他の伝送路からのクロストーク発生の抑止を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
開示の通信装置および通信装置設定方法によれば、クロストークの影響を抑止して伝送路の信号調節がおこなえるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる通信装置を示す構成図である。
【図2】図2は、実施の形態1にかかるクロストークテーブルの内容を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態1にかかる伝送路の好適化処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図4】図4は、実施の形態1にかかる好適化処理の実施回数を判定する処理を示すフローチャートである。
【図5】図5は、実施の形態1にかかる好適化の実施回数の判定に用いるデータテーブルを示す図である。
【図6】図6は、実施の形態2にかかる通信装置を示す構成図である。
【図7】図7は、実施の形態2にかかる各クロストークテーブルの内容を示す図である。
【図8】図8は、実施の形態2にかかる好適化の実施回数の判定に用いるデータテーブルを示す図である。
【図9】図9は、実施の形態2にかかる伝送路の好適化処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】図10は、クロストークの影響を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、開示技術の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
実施の形態1では、通信装置全体における伝送路を単位として好適化処理を実施する構成について説明する。この好適化処理は、伝送路の伝送特性の向上のための調節であり、具体的にはプリエンファシスおよびラインイコライザを用いて電気信号の信号波形を好適な状態に設定(調節)する。加えて、好適化する伝送路については、他の伝送路からのクロストークの影響を抑止した状態で好適化を実施できるようにする。
【0016】
(実施の形態1の構成)
図1は、実施の形態1にかかる通信装置を示す構成図である。図1に示すように、実施の形態にかかる通信装置100は、バックワイヤリングボード101と、送信ユニット102と、受信ユニット103と、制御ユニット104と、を含んでいる。送信ユニット102からバックワイヤリングボード101を介して受信ユニット103に至る間には、信号を高速伝送する伝送路105が設けられている。図1に示す例では、伝送路105は、8系統の伝送路A〜Hを有し、便宜上から図中には2系統の伝送路A,H(およびこの伝送路A,Hに関連する構成)のみを図示してある。
【0017】
この通信装置100は、たとえば、ラックマウントタイプのサーバであり、筐体前方に開口された複数のスロット部分から送信ユニット102、受信ユニット103が挿入され、これら送信ユニット102および受信ユニット103のコネクタ102a,103aが筐体背部に設けられたバックワイヤリングボード101のコネクタ101a,101bに挿入されることにより、伝送路105が形成される。また、制御ユニット104についても、コネクタ104aがバックワイヤリングボード101のコネクタ101cを介してバックワイヤリングボード101に電気的に接続される。
【0018】
バックワイヤリングボード101は、送信ユニット102から出力された信号を受信ユニット103に伝送する複数系統の伝送路(A〜H)105を有する。このほかに、制御信号伝送用のデータバス106が設けられている。伝送路105は、たとえば1m程度の長さを有し、実際には何千(系統)と多数が設けられている。データバス106は、送信ユニット102,受信ユニット103,制御ユニット104との間で上述した好適化制御に必要な情報をやりとりするために設けられる。図示の例では、データバス106は、受信ユニット103で検出された各伝送路(A〜H)105それぞれのモニタ情報a〜hや、制御ユニット104から送信ユニット102(および受信ユニット103)に出力される出力停止制御信号x,好適化制御信号zの信号伝送用に用いられる。
【0019】
送信ユニット102は、送信部(送信アンプ)111と、プリエンファシス部(信号強調部)112と、エンファシス制御部113とを有している。これら送信部111と、プリエンファシス部112と、エンファシス制御部113は、それぞれ伝送路105の系統数(図示の例では8系統)分、対応して設けられている。図1には、うち2系統の伝送路(A,H)105に対応する送信部111a,111hと、プリエンファシス部112a,112hと、エンファシス制御部113a,113hを記載してある。
【0020】
受信ユニット103は、受信部(受信アンプ)121と、ラインイコライザ(信号成形部)122と、イコライザ制御部123と、信号モニタ124とを有している。これら受信部(受信アンプ)121と、ラインイコライザ122と、イコライザ制御部123と、信号モニタ124についても、それぞれ伝送路105の系統数分(図示の例では8系統)、対応して設けられている。図1には、便宜上、うち2系統の伝送路(A,H)105に対応する受信部121a,121hと、ラインイコライザ122a,122hと、イコライザ制御部123a,123hと、信号モニタ(A)124a,(B)124hを記載してある。
【0021】
制御ユニット104は、クロストークテーブル131と、好適化制御部132とを有している。クロストークテーブル131には、各伝送路(A〜H)105において、クロストークの影響が考えられる伝送路(A〜H)105の組み合わせの情報が設定され、記憶保持される。すなわち、このクロストークテーブル131には、ある伝送路105に対しクロストークの影響を与えることがなく、同時に動作することができる他の伝送路105の組み合わせが記憶保持される。好適化制御部132は、クロストークテーブル131に設定された情報に基づいて、ある伝送路105に対しクロストークの影響がなく同時に動作することができる他の伝送路105の組み合わせを判定し、好適化を実施する。
【0022】
そして、好適化制御部132は、送信ユニット102に設けられたエンファシス制御部113(113a〜113h)と、受信ユニット103に設けられたイコライザ制御部123(123a〜123h)に対して、エンファシス/イコライザの好適化制御時に好適化制御信号zをデータバス106zを介して出力する。また、好適化制御部132は、ある伝送路105に対する好適化実施時に、この伝送路105に対してクロストークの影響がある他の伝送路105の信号出力を停止させる出力停止制御信号xをデータバス106xを介して出力する。
【0023】
上記構成による制御ユニット104としては、たとえばコンピュータ装置を用い、好適化制御部132がCPUで構成され、ROMに格納された好適化制御のプログラムを実行することにより、好適化制御を実行する。この際、RAMを作業用のデータエリアとして用いる。また、クロストークテーブル131の情報は、記憶部としてのRAM等に設定保持されるようになっている。
【0024】
上記構成による送信ユニット102からバックワイヤリングボード101を介して受信ユニット103との間に接続される伝送路105およびデータバス106の接続構成について説明する。伝送路(A)105aでみると、送信ユニット102の送信部111aから出力された信号がプリエンファシス部112aで信号強調されてバックワイヤリングボード101の伝送路(A)105a上で伝送される。この伝送路(A)105a上の信号は、ラインイコライザ122aで波形成形された後、受信部121aに出力される。
【0025】
また、受信ユニット103に設けられた信号モニタ(A)124aは、伝送路(A)105aの信号波形を検出し、検出したモニタ情報aをデータバス106aを介してイコライザ制御部123a、および受信ユニット103のエンファシス制御部113aにそれぞれ出力する。エンファシス制御部113aは、伝送路(A)105aのプリエンファシス部112aに対し、モニタ情報aに基づき送信する信号に対するプリエンファシス制御をおこなう。イコライザ制御部123aは、伝送路(A)105aのラインイコライザ122aに対し、モニタ情報aに基づき受信する信号に対するラインイコライザ処理(波形成形等)の制御をおこなう。
【0026】
これらプリエンファシスおよびラインイコライザ処理は、モニタ情報aが示す波形状態を検出しながらおこなわれ、信号モニタ(A)124aにて信号波形が良好な状態になるようプリエンファシス値やラインイコライザ値を変更する。上記説明では、伝送路(A)105aに対応する構成について説明したが、他の伝送路(B〜H)105についても同様に系統別の伝送路105、およびデータバス106を用いて各系統別の構成が接続されている。
【0027】
(クロストークテーブルについて)
図2は、実施の形態1にかかるクロストークテーブルの内容を示す図である。縦軸方向は好適化を実施する各伝送路A〜Hであり、横軸方向は、好適化を実施する各伝送路A〜Hに対してクロストーク源となる伝送路A〜Hである。図1に示した各伝送路(A〜H)105は、A〜Hの順で互いが平行に配線されている。ここでは、伝送路同士間でクロストークが発生することとしたが、上述したコネクタ101a〜101c,102a,103a,104a部分においても、内部の信号に対するピン配置によって伝送路上の信号が近接あるいは交差する等してクロストークが発生する。したがって、クロストークテーブル131には、このコネクタ101a〜101c,102a,103a,104aにおけるクロストークの情報を含めて設定する。
【0028】
このクロストークテーブル131には、たとえば、伝送路Aの好適化を実施する場合は、伝送路Bはアクティブ(信号通過)にできないことが設定(○印)されている。伝送路Bが伝送路Aに隣接してクロストークの影響を与えるためである。また、伝送路Bの好適化を実施する場合は、この伝送路Bに隣接する一方の伝送路Aと、他方の伝送路Cとをアクティブ(信号通過)にできないことが示されている。伝送路A,Cが伝送路Bに隣接してクロストークの影響を与えるためである。
【0029】
好適化制御部132は、ある伝送路A〜Hの好適化実施時に、このクロストークテーブル131を参照する。そして、好適化を実施する一つの伝送路105を指定したとき、この伝送路を指定する好適化制御信号zをデータバス106zを介して出力する。出力された好適化制御信号zは、データバス106zを介して送信ユニット102の該当する伝送路のエンファシス制御部113と、受信ユニット103の該当する伝送路のイコライザ制御部123に入力され、エンファシス/イコライザの好適化がおこなわれる。
【0030】
また、この好適化実施時には、好適化を実施する伝送路105に対してクロストークの影響がある伝送路をクロストークテーブル131から読み出す。そして、好適化を実施する伝送路に対してクロストークの影響を与える伝送路に該当する送信部111に対しては、出力停止制御信号xをデータバス106xを介して出力する。これにより、ある一つの好適化を実施する伝送路に対してクロストークの影響を与える伝送路は、信号が出力停止制御される。上記例では、伝送路Bの好適化を実施する場合は、この伝送路Bに隣接する一方の伝送路Aと、他方の伝送路Cの信号を出力停止させる。
【0031】
(好適化処理の処理内容について)
図3は、実施の形態1にかかる伝送路の好適化処理の処理内容を示すフローチャートである。図3に示した処理は、制御ユニット104が統括制御する。図3を用いて、好適化実施時における好適化を実施する伝送路と、この好適化を実施する伝送路に対してクロストーク源となる伝送路を出力停止させ、複数系統の伝送路をまとめて好適化する処理について説明する。
【0032】
図3に示した処理は、通信装置の起動毎に実行され、制御ユニット104の好適化制御部132は、起動時毎の伝送路105の配置状態を確認する(操作S301)。この際、通信装置100が有するユニット数の変更や、ユニット毎に異なるコネクタ内の内部配線に伴う変更の可能性がある。すなわち、バックワイヤリングボード101に挿抜される送信ユニット102および受信ユニット103の数やコネクタ仕様の変更により、クロストークテーブル131の設定値が異なるためである。ここで、クロストークテーブル131は、通信装置100の構成にあわせて最新の状態であるとする。そして、制御ユニット104は、装置起動時にクロストークテーブル131を参照して、伝送路(A〜H)105の配置状態を読み取る。
【0033】
そして、制御ユニット104は、クロストークテーブル131の情報が図2に示す状態であるとき、このクロストークテーブル131の情報に基づいて、同時に好適化可能な伝送路105の系統数(本数)を算出する。この場合、図2の例では、ある伝送路に対してクロストークの影響がある伝送路は、隣接する一対の伝送路である。このため、好適化制御部132は、1回目の好適化実施時には、好適化する伝送路として一つおきの複数の伝送路(A,C,E,G)105を選択する(操作S302、実施順1)。
【0034】
この場合、全体の系統数が8であるため、4つの系統が選択されている。そして、選択した伝送路(A,C,E,G)105に対しては、好適化制御信号zを出力する。この好適化制御信号zは、データバス106zを介して好適化する伝送路(A,C,E,G)105に対応した送信ユニット102のエンファシス制御部113(113a,113c…)、および受信ユニット103のイコライザ制御部123(123a,123c…)に出力される。
【0035】
これにより、好適化する伝送路(A,C,E,G)105に対しては、エンファシス制御部113は、プリエンファシス部112に対して好適化のためのプリエンファシス値を好適とする制御をおこない、また、イコライザ制御部123は、ラインイコライザ122に対してラインイコライザ値を好適とする制御をおこなってプリエンファシスされた入力信号に対する整合処理をおこなう。これらにより、各伝送路(A,C,E,G)105の信号に対する好適化が施される。
【0036】
この操作S302では、好適化する伝送路(A,C,E,G)105に対しては、送信ユニット102の各送信部111から信号を出力している。これと同時に、好適化制御部132は、クロストークテーブル131を参照して、信号を流した伝送路(A,C,E,G)105に隣接する伝送路(B,D,F,H)105の情報を得る。そして、この伝送路(B,D,F,H)105については、データバス106xを介して出力停止制御信号xを出力する。この出力停止制御信号xは、データバス106xを介して出力停止する伝送路(B,D,F,H)105に対応した送信ユニット102の送信部111(111b,111d…)に出力される。
【0037】
このように、各伝送路(A,C,E,G)105の信号に対する好適化が施されるときには、この好適化しようとする伝送路(A,C,E,G)105に隣接する伝送路(B,D,F,H)105の出力を停止することにより、伝送路(A,C,E,G)105の好適化処理をクロストークの影響を抑止した状態でおこなうことができるようになる。
【0038】
次の2回目の好適化実施時においても、好適化制御部132は、クロストークテーブル131を参照して、好適化を実施していない残り4つの系統の伝送路(B,D,F,H)105を選択し、上記同様に好適化を実施する(操作S303、実施順2)。また、この際には上記同様に、好適化する伝送路(B,D,F,H)105に隣接する伝送路(A,C,E,G)105については、好適化実施時に信号を出力停止させる。
【0039】
上記処理により、全ての伝送路(A〜H)105に対する好適化が実施され、エンファシス/イコライザの好適値が設定される。この後、好適化制御部132は、全ての伝送路(A〜H)105の出力をアクティブにして(操作S304)、通信装置100としての運用を開始させる(操作S305)。
【0040】
上記のように、ある一つの伝送路Aの好適化をおこなおうとする場合、隣接する伝送路Bを除きさらに離れている伝送路Cはアクティブにして同時に好適化をおこなうことができる。そして、上記処理によれば、複数系統の伝送路105に対する好適化の実施回数を減らすことができる。上記処理では、8系統を8回にわたり好適化処理する必要はなく、2回で済むため、好適化処理にかかる時間を短縮化できるようになる。
【0041】
(好適化処理の実施回数の判定について)
図4は、実施の形態1にかかる好適化処理の実施回数を判定する処理を示すフローチャートである。図4に示す処理は、好適化制御部132が図2に示したクロストークテーブル131の設定を読み込み、複数系統の伝送路を同時に好適化する実施回数および伝送路の好適化の実施順を判定する。
【0042】
実施順の初期値は1とし1ずつ加算され、伝送路はAからHに至る順で判定していくものとする(操作S401)。次に、好適化制御部132は、操作S401の伝送路の伝送路状態を確認する(操作S402)。伝送路の状態が実施順が未定であるときには(操作S402:未定)、この伝送路の状態を実施順に確定するとともに、この対象伝送路に対してクロストーク源となる隣接する伝送路をクロストークテーブル131を参照して得る(操作S403)。
【0043】
次に、好適化制御部132は、図2に示したクロストークテーブル131上でクロストークの影響を与える設定(○)がされた伝送路について、伝送路状態を確認する(操作S404)。伝送路の状態が実施順が未定であるときには(操作S404:未定)、この伝送路の状態をNext(次回以降の実施を示す)とする(操作S405)。なお、操作S402、および操作S404において、既に実施順が確定(Nextに設定)されている場合には(操作S402:Next、および操作S404:Next)、いずれも操作S406に移行する。
【0044】
次に、操作S406では、好適化制御部132は、最後の伝送路Hまで判断処理が達したかを判断し、最後の伝送路まで達していれば(操作S406:Yes)、次に、全伝送路の実施順確定であるか判定し(操作S407)、全伝送路の実施順が確定していれば(操作S407:Yes)、以上の実施順判定の処理を終了する。
【0045】
また、操作S406において、最後の伝送路Hまで判定処理が達していなければ(操作S406:No)、伝送路を次の伝送路とし(操作S408)、操作S402に復帰し、操作S402以降の処理を再度実行する。また、操作S407において、全伝送路の実施順が確定していなければ(操作S407:No)、1回の実施順が確定し、次回の実施順を判断するために、伝送路状態がNextとなっている伝送路についてはクリアし、伝送路の初期値をAとし(操作S409)、操作S402以降の処理を再度実行する。
【0046】
(好適化の実施回数の判定に用いるデータテーブルについて)
図5は、実施の形態1にかかる好適化の実施回数の判定に用いるデータテーブルを示す図である。好適化制御部132が図4に示す処理を実行した結果のデータがデータテーブル500の「伝送路状態」の項目に順次設定されていき作成される。このデータテーブル500は、好適化制御部132が書き込み可能なROM等である。
【0047】
図5の状態は、図4の処理が完了し、全てのデータが項目に設定された状態である。図の左側には、図4の処理の説明を記載してある。図の右側の「伝送路状態」の項目には、操作S402の伝送路状態確認時、および操作S405のNext設定時に、それぞれデータが書き込まれる。そして、「伝送路状態」の項目に一度書き込まれた実施順を示すデータ(1,2)は消去されずに保持されるものとする。但し、Nextのデータは、実施順が1→2に繰り上がった場合にクリアされる。
【0048】
図5に示す「伝送路状態」の各項目へのデータ設定の状態を図4に示す処理順に、具体的に説明する。操作S401では、はじめに、実施順1=1、伝送路=Aであり、「伝送路状態」の伝送路Aに1が設定される(項目501上段の設定)。次に、操作S402では、操作S401の伝送路Aの伝送路状態を確認し、伝送路Aの状態が実施順が未定であるため、この伝送路Aの状態を初期状態である実施順=1として設定する。また、操作S403では、クロストーク源となる隣接する伝送路Bをクロストークテーブル131を参照して得る。そして、操作S404では、クロストークテーブル131上でクロストークの影響を与える設定(○)がされた伝送路Bについて、伝送路状態を確認し、実施順が未定であるため、操作S405では伝送路Bの状態をNextに設定する(項目501下段の設定)。
【0049】
次に、操作S406では、伝送路=Aの状態で判定されるから、操作S408では次の伝送路Bにシフトされ、操作S402に復帰したとき、伝送路Bについて伝送路状態が確認される(項目502の設定)。この伝送路=Bの処理時には、操作S402では、伝送路BがNext(操作S402:Next)に分岐し、操作S406に移行する。操作S406では、伝送路=Bの状態で判定されるから、操作S408では次の伝送路Cにシフトされ、操作S402に復帰したとき、伝送路Cについて判定処理がなされる。
【0050】
以降、伝送路C〜Hまで上記の判定処理が繰り返され、「伝送路状態」の各項目にデータが順次設定されていく。判定対象の伝送路が伝送路Hまで達すると、操作S406:Yes、および操作S407:Noの判定により、操作S409に至る。操作S409では、実施順=2に繰り上がり、実施順1における各伝送路の実施順が確定される(項目506の設定)。この際、実施順=1→2へと繰り上がり、Nextのデータのみクリアされる(項目507の設定)。
【0051】
この後、実施順=2、伝送路=Aとして、実施順2に関する判定処理(操作S402以降)が実施される。以降の処理では、設定する伝送路の状態(実施順=2)とされる。そして、操作S402では、操作S401の伝送路Aの伝送路状態を確認し、伝送路Aの状態は実施順が確定済みであるため、この伝送路Aについては設定済みである実施順1に対する設定をおこなわず、操作S406に移行する(項目510の設定)。
【0052】
操作S406では、伝送路=Aの状態で判定されるから、操作S408では次の伝送路Bにシフトされ、操作S402に復帰したとき、伝送路Bについて伝送路状態が確認される(項目511)。この伝送路=Bについては、実施順=2として設定される(項目511の上段の設定)。また、操作S404では、伝送路Bに対してクロストーク源となる伝送路A,Cについては伝送路状態(実施順)が1で確定済みと判定され、データテーブル500に保持されている(項目511の下段の設定)。
【0053】
以降、同様にして伝送路C〜Hまで上記の判定処理が繰り返され、データテーブル500の「伝送路状態」の各項目にデータが順次設定されていく。判定対象の伝送路が伝送路Hまで達すると、好適化制御部132は、操作S407で全伝送路の実施順が確定されているか判定し、項目512の全伝送路A〜Hに実施順1,2が設定されていることを確認して、実施順判定処理を終了する。
【0054】
上述した説明では、図3を用いた好適化時の実施順で選択される各伝送路は、図2に示すクロストークテーブル131を参照して選択するとした。より詳細には、伝送路の実施順については、図4に示した処理により生成したデータテーブル500(図5参照)に基づき選択することができる。すなわち、好適化制御部132は、このデータテーブル500に設定保持された実施順と、実施順に含まれる伝送路の情報(データテーブル500の最下段の項目512に設定された各伝送路に対する実施順)に基づいて、図3に記載した処理のとおり、実施順に対応する伝送路を選択して、好適化を実施する。この際、伝送路に対してクロストーク源となる伝送路については、図2に示したクロストークテーブル131を参照して該当するクロストーク源の伝送路に対して信号の停止制御をおこなう。この後、全ての伝送路をアクティブにして通信装置100の運用を開始する。
【0055】
以上により、好適化制御部132は、全伝送路A〜Hに対する好適化の実施について、データテーブル500に設定された実施順1,2にそれぞれ設定された伝送路を振り分けて2回の実施でおこなえるようになる。すなわち、8系統の伝送路を8回にわたり好適化処理する必要はなく、4系統ずつ2回の処理で済むため、好適化処理にかかる時間を短縮化できるようになる。
【0056】
このように、実施の形態1にかかる通信装置によれば、クロストークの影響を抑止して伝送路の伝送特性を向上するための信号調節を好適におこなえるようになる。この際、プリエンファシス部およびラインイコライザの好適化実施時に、好適化を実施する伝送路に対して障害となるクロストークの影響を与える伝送路の動作を停止させている。これにより、プリエンファシス部およびラインイコライザの調節時、特に信号波形を変化させるなどの影響を防止して好適化を実施できるようになる。
【0057】
したがって、プリエンファシス部およびラインイコライザを用いて信号の調節を好適化させることができ、このプリエンファシスおよびイコライザの設定値を好適にできるようになり、伝送路に対して期待した伝送特性を実現できる好適化が実現できるようになる。これにより、通信装置100の設計時に必要以上のマージンをもたせる必要がなくなる。また、バックワイヤリングボード101の材質に、よりコストの安い材質を用いることも可能となる。また、バックワイヤリングボード101に同じ品質の材質を用いた場合には、好適化実施によって以前より低振幅の信号を用いることも可能になり、低消費電力化、伝送速度の高速化が可能となる。
【0058】
さらに、伝送路の系統数と、各伝送路に対してクロストーク源となる伝送路の状態をクロストークテーブルに保持し、このクロストークテーブルを参照して、通信装置内に設けた複数の伝送路をクロストークの影響を抑止して同時に好適化できる組み合わせを求める構成としている。これにより、伝送路の好適化の実施回数を最小限にすることができるようになり、全ての伝送路に対する好適化を短時間で実施できるようになり、好適化を効率的におこなえるようになる。
【0059】
(実施の形態2)
実施の形態2では、通信装置100に設けられた各ユニット毎の伝送路を単位として通信装置100全体のクロストークの影響を抑止する好適化処理をおこなう構成について説明する。
【0060】
(実施の形態2の構成)
図6は、実施の形態2にかかる通信装置を示す構成図である。図6に示す構成部において実施の形態1(図1)と同一の構成部には同一の符号を付してある。図示のように、実施の形態2では、バックワイヤリングボード101に共通クロストークテーブル601を設け、送信ユニット102に送信ユニットクロストークテーブル602を設け、受信ユニット103に受信ユニットクロストークテーブル603を設けている。なお、これら共通クロストークテーブル601、送信ユニットクロストークテーブル602、受信ユニットクロストークテーブル603は、中央に集中して設けてもよく、たとえば、バックワイヤリングボード101に設けてもよい。
【0061】
共通クロストークテーブル601には、バックワイヤリングボード101内の伝送路105におけるクロストークの情報が設定されている。送信ユニットクロストークテーブル602には、送信ユニット102内の伝送路に対するクロストークの情報が設定されている。受信ユニットクロストークテーブル603には、受信ユニット103内の伝送路に対するクロストークの情報が設定されている。
【0062】
これら共通クロストークテーブル601と、送信ユニットクロストークテーブル602と、受信ユニットクロストークテーブル603とにそれぞれ設定されたクロストークの情報は、好適化制御部132によって読み取られる。
【0063】
(クロストークテーブルについて)
図7は、実施の形態2にかかる各クロストークテーブルの内容を示す図である。共通クロストークテーブル601は、図2のクロストークテーブル131と同様の設定であるとする。送信ユニットクロストークテーブル602には、送信ユニット102内の伝送路Aに対して伝送路Fがクロストーク源であることが設定されている(伝送路Fに対して伝送路Aがクロストーク源602a)。受信ユニットクロストークテーブル603には、受信ユニット103内の伝送路Bに対して伝送路Hがクロストーク源であることが設定されている(伝送路Hに対して伝送路Bがクロストーク源603a)。
【0064】
好適化制御部132は、これら共通クロストークテーブル601と、送信ユニットクロストークテーブル602と、受信ユニットクロストークテーブル603とを読み取り、図示しないROM等の記憶部に全体クロストークテーブル701を作成する。全体クロストークテーブル701は、これら共通クロストークテーブル601と、送信ユニットクロストークテーブル602と、受信ユニットクロストークテーブル603の設定内容を全て合わせ(加算し)たものである。
【0065】
(実施の形態2の好適化の実施回数の判定に用いるデータテーブルについて)
実施の形態2においても、好適化制御部132は、実施の形態1(図4)に記載したフローチャートに従い、好適化の実施回数を決定する。
【0066】
図8は、実施の形態2にかかる好適化の実施回数の判定に用いるデータテーブルを示す図である。図8に示すデータテーブル800について、「伝送路状態」の各項目へのデータ設定の状態を図4に示す処理順に、具体的に説明する。操作S401では、はじめに、実施順=1、伝送路=Aであり、「伝送路状態」の伝送路Aに1が設定される(項目801上段の設定)。次に、操作S402では、操作S401の伝送路Aの伝送路状態を確認し、伝送路Aの状態が実施順が未定であるため、この伝送路Aの状態を初期状態である実施順=1として設定する。また、操作S403では、クロストーク源となる伝送路B,Fを全体クロストークテーブル701を参照して得る。そして、操作S404では、全体クロストークテーブル701上でクロストークの影響を与える設定(○)がされた伝送路B,Fについて、伝送路状態を確認し、実施順が未定であるため、操作S405では伝送路B,Fの状態をNextに設定する(項目801下段の設定)。
【0067】
次に、操作S406では、伝送路=Aの状態で判定されるから、操作S408では次の伝送路Bにシフトされ、操作S402に復帰したとき、伝送路Bについて伝送路状態が確認される(項目802の設定)。この伝送路=Bの処理時には、操作S402では、伝送路BがNext(操作S402:Next)に分岐し、操作S406に移行する。操作S406では、伝送路=Bの状態で判定されるから、操作S408では次の伝送路Cにシフトされ、操作S402に復帰したとき、伝送路Cについて判定処理がなされる。
【0068】
以降、伝送路C〜Hまで上記の判定処理が繰り返され、「伝送路状態」の各項目にデータが順次設定されていく。判定対象の伝送路が伝送路Hまで達すると、操作S406:Yes、および操作S407:Noの判定により、操作S409に至る。操作S409では、実施順=2に繰り上がり、実施順1における各伝送路の実施順が確定される(項目806の設定)。この際、実施順=1→2へと繰り上がり、Nextのデータのみクリアされる(項目807の設定)。
【0069】
この後、実施順=2、伝送路=Aとして、実施順2に関する判定処理(操作S402以降)が実施される。以降の処理では、設定する伝送路の状態(実施順=2)とされる。そして、操作S402では、操作S401の伝送路Aの伝送路状態を確認し、伝送路Aの状態が実施順が確定済みであるため、この伝送路Aについては設定済みである実施順1に対する設定をおこなわず、操作S406に移行する(項目810の設定)。
【0070】
操作S406では、伝送路=Aの状態で判定されるから、操作S408では次の伝送路Bにシフトされ、操作S402に復帰したとき、伝送路Bについて伝送路状態が確認される(項目811)。この伝送路=Bについては、実施順=2として設定される(項目811の上段の設定)。また、操作S404では、伝送路Bに対してクロストーク源となる伝送路A,Cについては伝送路状態(実施順)が1で確定済みと判定され、データテーブル500に保持される(項目811中段の設定)。さらに、伝送路Hについては、伝送路状態を確認し、実施順が未定であるため、操作S405では伝送路Hの状態をNextに設定する(項目811下段の設定)。
【0071】
以降、同様にして伝送路C〜Hまで上記の判定処理が繰り返され、「伝送路状態」の各項目にデータが順次設定されていく。判定対象の伝送路が伝送路Hまで達すると、操作S406:Yes、および操作S407:Noの判定により、操作S409に至る。操作S409では、実施順=3に繰り上がり、実施順2における各伝送路の実施順が確定される(項目812の設定)。この際、実施順=2→3へと繰り上がり、Nextのデータのみクリアされる(項目813の設定)。
【0072】
この後、実施順=3、伝送路=Aとして、実施順3に関する判定処理(操作S402以降)が実施される。この実施順3の処理では、実施順が未定であった伝送路Hについて、操作S402にて実施順3が設定される(項目821上段の設定)。また、伝送路Hに対してクロストーク源となる伝送路Gは伝送路状態(実施順)が1で確定済みと判定されデータテーブル500に保持されている(項目821下段の設定)。最後に、判定対象の伝送路が最後の伝送路Hまで達することにより、操作S407で全伝送路の実施順が確定されているか判定され、項目822の全伝送路A〜Hに実施順1,2,3が設定されていることを確認して、実施順判定処理を終了する。
【0073】
(好適化処理の処理内容について)
図9は、実施の形態2にかかる伝送路の好適化処理の処理内容を示すフローチャートである。制御ユニット104の好適化制御部132は、データテーブル800の最下段の項目822に設定された各伝送路に対する実施順を参照し、各伝送路に対する好適化の実施順を選択する。また、図7に示した全体クロストークテーブル701を参照して該当するクロストーク源の伝送路に対して信号の停止制御をおこなう。
【0074】
通信装置100に対する好適化の実施は、通信装置の起動毎に実行される(操作S901)。そして、好適化制御部132は、データテーブル800を参照して、1回目の好適化実施時には、実施順1で好適化する伝送路に設定された複数の伝送路(A,C,E,G)105を選択する(操作S902)。そして、選択した伝送路(A,C,E,G)105に対しては、好適化制御信号zを出力する。この好適化制御信号zは、データバス106zを介して好適化する伝送路(A,C,E,G)105に対応した送信ユニット102のエンファシス制御部113(113a,113c…)、および受信ユニット103のイコライザ制御部123(123a,123c…)に出力される。
【0075】
これにより、好適化する伝送路(A,C,E,G)105に対しては、エンファシス制御部113は、プリエンファシス部112に対して好適化のためのプリエンファシス値を好適とする制御をおこない、また、イコライザ制御部123は、ラインイコライザ122に対してラインイコライザ値を好適とする制御をおこなってプリエンファシスされた入力信号に対する整合処理をおこなう。これらにより、各伝送路(A,C,E,G)105の信号に対する好適化が施される。
【0076】
この操作S902では、好適化する伝送路(A,C,E,G)105に対しては、送信ユニット102の各送信部111から信号を出力している。これと同時に、好適化制御部132は、全体クロストークテーブル701を参照し、好適化を実施する複数の伝送路(A,C,E,G)105に対してクロストーク源となる伝送路(B,D,F,H)105の情報を得る。そして、この伝送路(B,D,F,H)105については、データバス106xを介して出力停止制御信号xを出力する。この出力停止制御信号xは、データバス106xを介して出力停止する伝送路(B,D,F,H)105に対応した送信ユニット102の送信部111(111b,111d…)に出力される。
【0077】
このように、各伝送路(A,C,E,G)105の信号に対する好適化が施されるときには、この好適化しようとする伝送路(A,C,E,G)105に対してクロストーク源となる伝送路(B,D,F,H)105の出力を停止することにより、伝送路(A,C,E,G)105の好適化処理をクロストークの影響を抑止した状態でおこなうことができるようになる。
【0078】
次の2回目の好適化実施時においても、好適化制御部132は、データテーブル800を参照して、実施順2で好適化する伝送路に設定された複数の伝送路(B,D,F)105を選択し、上記同様に好適化を実施する(操作S903)。また、この際には、全体クロストークテーブル701を参照し、好適化を実施する複数の伝送路(B,D,F)105に対してクロストーク源となる伝送路(A,C,E,G,H)105の情報を得る。そして、これらの伝送路(A,C,E,G,H)105については、好適化実施時に信号を出力停止させる。
【0079】
次の3回目の好適化実施時においても、好適化制御部132は、データテーブル800を参照して、実施順3で好適化する伝送路に設定された伝送路(H)105を選択し、上記同様に好適化を実施する(操作S904)。また、この際には、全体クロストークテーブル701を参照し、好適化を実施する伝送路(H)105に対してクロストーク源となる伝送路(B,G)105の情報を得る。そして、これらの伝送路(B,G)105については、好適化実施時に信号を出力停止させる。
【0080】
上記処理により、全ての伝送路(A〜H)105に対する好適化が実施され、エンファシス/イコライザの好適値が設定される。この後、好適化制御部132は、全ての伝送路(A〜H)105の出力をアクティブにして(操作S905)、通信装置100としての運用を開始する(操作S906)。
【0081】
上記の好適化処理の例では、伝送路Hに対して伝送路B,Gがクロストーク源となっているため、実施順2で選択した伝送路B,D,Fとともに、伝送路Hを含み同時に好適化をすることができないため、伝送路Hは実施順3となっている。このように、全体クロストークテーブル701に相互の伝送路間でのクロストークの状態を設定しておくことにより、図4に示す処理を実行すれば、伝送路同士の組み合わせを判断し、実施順を設定できるようになる。
【0082】
以上説明したように、実施の形態2にかかる通信装置によれば、実施の形態1同様に、クロストークの影響を抑止した状態で伝送路の信号調節をおこなうことができるようになる。この際、プリエンファシス部およびラインイコライザの好適化実施時に、好適化を実施する伝送路に対して障害となるクロストークの影響を与える伝送路の動作を停止させている。これにより、プリエンファシス部およびラインイコライザの調節時、特に信号波形を変化させるなどの影響を防止して好適化を実施できるようになる。
【0083】
また、実施の形態2では、送信ユニット102、受信ユニット103の各ユニットのそれぞれが有するクロストークの情報を集約させて、全体クロストークテーブルに設定している。これにより、通信装置100の各ユニット別にクロストークの状態を設定するだけで、通信装置100全体の伝送路の好適化を実施できる。特に、送信ユニット102、受信ユニット103の各ユニットの内部でクロストークが生じる場合に対応して、クロストークの影響を抑止した好適化を実施できるようになる。また、各ユニット別に異なるクロストーク発生の状態を設定できるため、通信装置100内でユニット単位での交換に容易に対応でき、この際、クロストークテーブル全体を再設定する必要がない。
【0084】
さらに、好適化制御部132は、全伝送路A〜Hに対する好適化の実施について、データテーブル500に設定された実施順で伝送路を振り分けて実施できるようになる。この際、同時に好適化することができない伝送路の組み合わせを除外でき、除外する伝送路の好適化については他の実施順に振り分けることにより、クロストークの影響を排除しつつ同時に好適化できる伝送路の系統数をできるだけ増やすことができるようになる。これにより、好適化処理にかかる時間を短縮化できるようになる。
【0085】
上記各実施の形態では、説明の便宜上、伝送路105の系統数を8としたが、通信装置100が実際に有する伝送路105の系統数は、一つの送信ユニット102(あるいは受信ユニット103)あたりたとえば100系統(本)設けられる。また、バックワイヤリングボード101は、10個のユニット(送信ユニット102および受信ユニット103)に接続可能である。このため、バックワイヤリングボード101上での伝送路105の系統数は1000系統(本)と、多数設けられることになる。このように通信装置100は、多数系統の伝送路を有するが、上述したように同時に好適化する伝送路の組み合わせを判定することにより、全伝送路に対する好適化の実施回数(実施順)を最小化することができる。また、伝送路の系統数が多いほど好適化の実施にかかる時間を短縮化でき、好適化の実施の効率を向上できる。
【0086】
なお、別な実施の形態として、送信ユニットは送信器、受信ユニットは受信器、制御ユニットはコントローラ、プリエンファシス部はプリエンファシス回路、エンファシス制御部はエンファシスコントローラ、ラインイコライザはラインイコライザ回路、好適化制御部は好適化制御回路、イコライザ制御部はイコライザコントローラ、好適化制御部は好適化コントローラに置き換えて構成してもよい。
【0087】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0088】
(付記1)装置に設けられ、信号を伝送する複数の伝送路と、
前記伝送路の信号波形の調節により伝送特性が好適となる状態に調節可能な調節部と、
前記調節部による前記伝送路の伝送特性の調節を制御するとともに、調節する前記伝送路に影響を与える他の伝送路を判定し、前記他の伝送路からのクロストーク発生の抑止を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【0089】
(付記2)前記制御部は、前記伝送路の組み合わせ情報と、前記伝送路にクロストークの影響を与える前記他の伝送路の組み合わせ情報とに基づいて、前記伝送路のうち、同時に伝送特性を調節できる複数の前記伝送路の組み合わせを求め、組み合わせられた前記伝送路に対して信号波形を調節することを特徴とする付記1に記載の通信装置。
【0090】
(付記3)前記制御部は、前記伝送路の組み合わせの判定に基づいて、全ての前記伝送路を組み合わせたときの全体の調節の回数および前記伝送路の調節の順序を求め、前記調節の順序にしたがい前記組み合わせられた前記伝送路に対して信号波形を調節することを特徴とする付記2に記載の通信装置。
【0091】
(付記4)前記伝送路の情報と、前記伝送路の信号にクロストークの影響を与える前記他の伝送路の情報とを関連付けて記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記伝送路に対して信号波形を調節することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の通信装置。
【0092】
(付記5)複数の前記伝送路に接続される複数の信号ユニットを備え、
前記記憶部は、前記信号ユニット毎に、信号伝送する前記伝送路の情報と、前記伝送路の信号にクロストークの影響を与える前記他の伝送路の情報とを関連付けて記憶し、
前記制御部は、前記信号ユニット毎に記憶された前記記憶部の情報を集約させ、前記集約させた情報に基づいて、前記調節部による前記伝送路の伝送特性の調節を制御することを特徴とする付記4に記載の通信装置。
【0093】
(付記6)前記調節部は、前記伝送路に対して出力する信号に対するプリエンファシス値を調節するプリエンファシス部であることを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載の通信装置。
【0094】
(付記7)前記調節部は、前記伝送路を介して入力される信号に対するイコライザ値を調節するイコライザ部であることを特徴とする付記1〜6のいずれか一つに記載の通信装置。
【0095】
(付記8)前記信号ユニットは、前記伝送路に信号を送信する送信ユニットと、前記伝送路から信号を受信する受信ユニットと、前記信号ユニットおよび前記受信ユニットが接続されるバックボードユニットと、からなることを特徴とする付記5〜7のいずれか一つに記載の通信装置。
【0096】
(付記9)前記制御部は、前記他の伝送路の信号を停止させることにより、当該他の伝送路からのクロストークの発生を抑止させることを特徴とする付記1〜8のいずれか一つに記載の通信装置。
【0097】
(付記10)通信装置に設けられて信号伝送する伝送路の情報と、前記伝送路の信号にクロストークの影響を与える他の伝送路の情報とを関連付けるステップと、
前記関連付けされた情報に基づいて、前記伝送路の伝送特性の調節を制御する際に、前記調節する前記伝送路に影響を与える前記他の伝送路を判定するステップと、
前記判定に基づいて、前記伝送路を信号調節して伝送特性が好適となる状態に変更させるステップと、
前記判定に基づいて、前記伝送路に対する信号調節時に、前記他の伝送路からのクロストークの発生を抑止させるステップと、
を含むことを特徴とする通信装置設定方法。
【符号の説明】
【0098】
100 通信装置
101 バックワイヤリングボード
101a〜101c,102a,103a,104a コネクタ
102 送信ユニット
103 受信ユニット
104 制御ユニット
105 伝送路
106 データバス
111 送信部
112 プリエンファシス部
113 エンファシス制御部
121 受信部
122 ラインイコライザ
123 イコライザ制御部
124 信号モニタ
131 クロストークテーブル
132 好適化制御部
500 データテーブル
601 共通クロストークテーブル
602 送信ユニットクロストークテーブル
603 受信ユニットクロストークテーブル
701 全体クロストークテーブル
800 データテーブル
x 出力停止制御信号
z 好適化制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置に設けられ、信号を伝送する複数の伝送路と、
前記伝送路の信号波形の調節により伝送特性が好適となる状態に調節可能な調節部と、
前記調節部による前記伝送路の伝送特性の調節を制御するとともに、調節する前記伝送路に影響を与える他の伝送路を判定し、前記他の伝送路からのクロストーク発生の抑止を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記伝送路の組み合わせ情報と、前記伝送路にクロストークの影響を与える前記他の伝送路の組み合わせ情報とに基づいて、前記伝送路のうち、同時に伝送特性を調節できる複数の前記伝送路の組み合わせを求め、組み合わせられた前記伝送路に対して信号波形を調節することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記伝送路の組み合わせの判定に基づいて、全ての前記伝送路を組み合わせたときの全体の調節の回数および前記伝送路の調節の順序を求め、前記調節の順序にしたがい前記組み合わせられた前記伝送路に対して信号波形を調節することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記伝送路の情報と、前記伝送路の信号にクロストークの影響を与える前記他の伝送路の情報とを関連付けて記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記伝送路に対して信号波形を調節することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の通信装置。
【請求項5】
複数の前記伝送路に接続される複数の信号ユニットを備え、
前記記憶部は、前記信号ユニット毎に、信号伝送する前記伝送路の情報と、前記伝送路の信号にクロストークの影響を与える前記他の伝送路の情報とを関連付けて記憶し、
前記制御部は、前記信号ユニット毎に記憶された前記記憶部の情報を集約させ、前記集約させた情報に基づいて、前記調節部による前記伝送路の伝送特性の調節を制御することを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
通信装置に設けられて信号伝送する伝送路の情報と、前記伝送路の信号にクロストークの影響を与える他の伝送路の情報とを関連付けるステップと、
前記関連付けされた情報に基づいて、前記伝送路の伝送特性の調節を制御する際に、前記調節する前記伝送路に影響を与える前記他の伝送路を判定するステップと、
前記判定に基づいて、前記伝送路を信号調節して伝送特性が好適となる状態に変更させるステップと、
前記判定に基づいて、前記伝送路に対する信号調節時に、前記他の伝送路からのクロストークの発生を抑止させるステップと、
を含むことを特徴とする通信装置設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−165082(P2012−165082A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22150(P2011−22150)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】