説明

通信装置及び周波数共用方法

【課題】優先システムと非優先システムとが同一周波数帯を共用する場合に、優先システムにおける信号品質の向上及び非優先システムにおける信号送信機会の増加を図ること。
【解決手段】非優先システムと周波数帯域を共有する優先システムにおける通信装置は、統計量のピーク位置に対応する周波数シフト量及び時間シフト量の組み合わせと、優先システムにおける通信に使用される通信資源との所定の対応関係を参照することで、複数のサブフレーム各々に対する統計量のピーク位置が互いに異なるように、複数のサブフレーム各々の周波数シフト量及び時間シフト量を決定する付与統計量決定部と、付与統計量決定部で決定された周波数シフト量及び時間シフト量に基づいて、複数のサブフレームを作成する統計量付与部と、複数のサブフレームを含む送信信号を無線送信する送信部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信装置及び周波数共用方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の通信システムが全部又は一部の周波数帯域を共用できるようにすることで、周波数利用効率を向上させる技術が普及しつつある。例えば、特許文献1に記載の発明の場合、非優先システムの無線局は、受信した信号により情報を収集して通信状況を認識(センシング)し、共用周波数帯における優先システムの信号の有無を判定し、判定結果に応じて信号送信の可否を決定している。
【0003】
特許文献1等においては、優先システムからの信号の存在を認識するためのセンシング技術として、信号の統計量又は特徴量を利用している。特に、二次の周期定常性により表現される統計量は、比較的演算量が少なくて済むので有望視されている。複数のパラメータで指定される二次の周期定常性は、異なるパラメータを有する信号に対しては異なる特徴が出現する性質を有する。この性質を利用して、異なるパラメータを有する複数の信号を容易に識別することができる。
【0004】
したがって、通信方式の異なる複数のシステムが同一の領域で混在していたとしても、そのような統計量を計算することで「優先システムの信号が存在している」という情報を適確に得ることができる。周期定常性を利用する技術については特許文献1だけでなく、特許文献2等においても説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-222665号公報
【特許文献2】特開2008-061214号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】P.D.Sutton、K.E.Nolan and L.E.Doyle、 “Cyclostationary Signatures in Practical Cognitive Radio Applications、” IEEE Journal on Selected Areas in Communications(JSAC)、 vol.26、 no.1、 pp.13-24、 2008.
【非特許文献2】H.Harada、H.Fujii、S.Miura and T.Ohya、 “Cyclostationarity-Inducing Transmission for OFDM-based Spectrum Sharing Systems、” 2010 International Symposium on Communications and Information Technologies(ISCIT)、 pp.956-961、 Oct.2010.
【非特許文献3】A.V.Dandawate and G.B.Giannakis、 “Statistical tests for presence of cyclostationarity、” IEEE Trans. Signal Processing, vol. 42, no. 9, Sept. 1994.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、優先システム及び非優先システムがそれぞれ異なる通信方式を使用する場合、それらは非同期であり互いに通信は行われていない。従って従来のセンシングに基づく送信制御の場合、非優先システムのセンシングのタイミングを、優先システムにおける通信に合わせて最適化することはできない。例えば、優先システムで使用されるフレームよりもセンシングの周期が長かった場合、非優先システムによる継続的な信号送信が優先システムによる通信の品質を劣化させてしまうことが懸念される。逆に、優先システムで使用されるフレームよりもセンシングの周期が短かった場合、非優先システムは、頻繁にセンシングを行うことになり、不使用の無線リソースを十分に活用できないことが懸念される。
【0008】
本発明の課題は、優先システムと非優先システムとが同一周波数帯を共用する場合に、優先システムにおける信号品質の向上及び非優先システムにおける信号送信機会の増加を図ることが可能な通信装置及び周波数共用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態による通信装置は、
非優先システムと周波数帯域を共有する優先システムにおける通信装置であって、
統計量のピーク位置に対応する周波数シフト量及び時間シフト量の組み合わせと、前記優先システムにおける通信に使用される通信資源との所定の対応関係を参照することで、複数のサブフレーム各々に対する統計量のピーク位置が互いに異なるように、前記複数のサブフレーム各々の周波数シフト量及び時間シフト量を決定する付与統計量決定部と、
前記付与統計量決定部で決定された周波数シフト量及び時間シフト量に基づいて、前記複数のサブフレームを作成する統計量付与部と、
前記複数のサブフレームを含む送信信号を無線送信する送信部と
を有する、通信装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優先システムと非優先システムとが同一周波数帯を共用する場合に、優先システムにおける信号品質の向上及び非優先システムにおける信号送信機会の増加を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】同一の周波数帯域を共用する複数の無線局が通信する周波数共用環境を示す図。
【図2】センシング結果に基づく送信制御を行う場合のセンシング周期の影響を示す図。
【図3】被共用(優先)システムにおいて使用される送信信号を示す図。
【図4】被共用(優先)システムの無線局における信号生成装置を示す図。
【図5】周波数シフト量α及び時間シフト量νの様々な組み合わせに応じて異なる位置に周期自己相関値のピークが生じる様子を示す図。
【図6】パラメータの組み合わせの一例を示す図。
【図7】OFDM信号に周期自己相関特性を付与する例を示す図。
【図8】共用(非優先)システムの無線局における信号検出装置を示す図。
【図9】本発明の実施例によるセンシング及び送信制御の一例を示す図。
【図10】本発明の実施例によるセンシング及び送信制御の別の例を示す図。
【図11】フレームの先頭サブフレームを検出しやすくする変形例を説明するための図。
【図12】フレームの先頭サブフレームを検出しやすくする別の変形例を説明するための図。
【図13】フレームの先頭サブフレームを検出しやすくする更に別の変形例を説明するための図。
【図14】図13に示す変形例において使用可能な信号検出装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら実施例を説明する。図中、同様な要素には同じ参照番号又は参照符号が付されている。実施例は次の観点から説明される。
【0013】
1.システム
2.通信信号
3.信号生成装置
4.信号検出装置
5.動作例
6.変形例
6.1 先頭サブフレームのオーバーヘッドを増やす変形例
6.2 先頭サブフレーム長を増やす変形例
6.3 オフセットを正確に推定する変形例
【0014】
<1.システム>
図1は、同一周波数帯を複数の無線局が共用する周波数共用環境の概略図である。無線局(Radio Station)RS#1、RS#2、RS#3は同一のシステムに属していてもよいし、異なるシステムに属していてもよい。いずれにせよ、各無線局は、各自が使用するシステム帯域の一部又は一部の周波数を、他の無線局と共用しながら無線通信を行うことができる。説明の便宜上、無線局RS#1は、無線局RS#2やRS#3により使用される通信リソース以外の通信リソースを使用して通信しなければならないとする。一例として、無線局RS#1が相手方無線局RS#11と通信を開始しようとしたとする。このとき他の無線局RS#2、RS#3はそれぞれ他の無線局RS#21、RS#31と通信中であるかもしれない。同一の周波数帯域を共用する無線局同士の干渉を避けるため、無線局RS#1、RS#11は、他の無線局が使用していない周波数を使用しなければならない。言い換えれば、同一の周波数帯域を共用する複数のシステムに優先順位があり、無線局RS#1のシステムは、無線局RS#2、RS#3のシステムよりも低い優先度を有する。説明の便宜上、本願において、無線局RS#1のシステムは「非優先システム」又は「共用システム」と言及され、無線局RS#2やRS#3のシステムは「優先システム」又は「被共用システム」と言及される。
【0015】
なお、無線局は典型的には移動端末であるが固定端末でもよい。また、無線局は、ユーザ装置、加入者装置、モバイルホスト等のようなユーザが使用する通信装置でもよいし、或いは基地局やアクセスポイント等のようなオペレータやネットワーク側の通信装置でもよい。無線局は、具体的には、携帯電話、情報端末、高機能携帯電話、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、パーソナルディジタルアシスタント、携帯用パーソナルコンピュータ、パームトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、サーバ等であるが、これらに限定されない。
【0016】
図2は、図1に示す周波数共用環境において、センシング結果に基づく送信制御とセンシング周期との関係を説明するための図である。優先システムである被共用システムにおいて、ある無線リソース(例えば周波数チャネル)を用いた通信が行われているとする。非優先システムである共用システムの無線局は、通信を開始する前にセンシングを行い、被共用(優先)システムが無線リソースを使用していないことを確認した場合にのみ通信を開始することができる。被共用(優先)システムと共用(非優先)システムは互いに非同期で動作している。
【0017】
(3)は、共用(非優先)システムの無線局によるセンシングのタイミングが、被共用(優先)システムにおける通信の最中又は直後に訪れる場合を示す。センシングのタイミングが被共用(優先)システムにおける通信の最中に訪れた場合、共用(被優先)システムの無線局による通信は禁止される。センシングのタイミングが被共用(優先)システムにおける通信の後に訪れた場合、共用(被優先)システムの無線局による通信は許可される。この場合において、共用(被優先)システムの無線局による通信が、被共用(優先)システムにおける通信の開始直前に終了していたならば、周波数リソースを非常に効率的に活用できる。しかしながら、共用(非優先)システム及び被共用(優先)システムが同期していなかった場合、センシングのタイミングをこのように最適化することはできない。従って、センシングのタイミング又は周期が最適でないことに起因して、被共用(優先)システムにおける干渉が生じたり、或いは共用(非優先)システムに許容される送信機会が減少したりすることが懸念される。
【0018】
(1)は、共用(非優先)システムの無線局によるセンシングの周期が、被共用(優先)システムの通信状態が変化する周期よりも長かった場合を示す。この場合、センシング結果が無線リソースは使用されていないことを示していたとしても、そのセンシングから比較的短時間の内に被共用(優先)システムの通信が開始され、干渉が生じてしまうおそれがある。双方のシステムの信号が重畳してしまうからである。
【0019】
(2)は、逆に、共用(非優先)システムの無線局によるセンシングの周期が、被共用(優先)システムの通信状態が変化する周期よりも短かった場合を示す。この場合、頻繁にセンシングを行うことになるので、(1)で懸念されているような干渉が生じる可能性は低い。しかしながら、共用(非優先)システムの無線局は、センシングを行っている間は通信を行うことができないので、未利用の通信リソースを十分に活用できなくなることが懸念される。更に、頻繁にセンシングを行うことに起因して、消費電力の増加も懸念される。
【0020】
図1に示す優先システムに属する他の無線局RS#2、RS#3は、後述する方法で統計量(特徴量又は波形特徴量)が付与された送信信号を送信する。被優先システムに属する無線局RS#1は、他の無線局RS#2、RS#3が送信する送信信号を受信して統計量を分析し、他の無線局RS#2、RS#3により使用されていない通信リソース(時間、周波数、符号、電力、指向性等)を用いて無線通信を行う。このように、非優先システムの無線局RS#1は、優先システムの通信状況に応じて、使用可能な通信リソースを簡易かつ適確に判別することができ、被共用(優先)システムにおける干渉を抑制しつつ通信リソースの利用効率を大きく向上させることができる。
【0021】
<2.通信信号>
図3は被共用(優先)システムにおける通信装置が使用する通信信号の構成を示す。被共用(優先)システムにおける通信装置は、ある期間の間、周波数チャネル等のリソースを用いて無線通信を行う。通信に使用可能なリソースは、時間、周波数、符号、電力、指向性その他の任意の量で指定することが可能である。通信装置にリソースが割り当てられている期間は「フレーム」と言及され、1つのフレームの中でリソースの割り当て方は不変である。例えば、第1期間とそれに続く第2期間の双方で通信装置が通信する場合において、第1期間では周波数帯域Aのみが使用され、第2期間では周波数帯域Bのみが使用されるとする。この場合、第1期間が1つのフレームを構成し、第2期間は別のフレームを構成する。「フレーム」は「パケット」と言及されてもよい。フレームはP個のサブフレームを含み、Pは1以上の整数である。P個のサブフレーム各々の期間の長さは等しい。この点、期間の長さが一定していないフレームと異なる。更に、1つのサブフレームはN個のシンボルを含み、Nは1以上の整数である。N個のシンボル各々の期間の長さも等しい。一例としてシンボルは直交周波数分割多重(OFDM)方式で形成されたOFDMシンボルであるが、他のシンボルが使用されてもよい。P個のサブフレーム各々は、異なる統計量(特徴量又は波形特徴量)を示す。統計量は例えば周期自己相関(Cyclic autocorrelation function:CAF)により表現される。詳細には後述するが、統計量を指定する周波数シフト量α及び時間シフト量νの組み合わせ(α,ν)はP個のサブフレーム各々で異なるように決定され、サブフレーム毎に異なる場所に統計量のピークが生じるように通信信号が生成及び送信される。共用(非優先)システムの無線局は、このような通信信号を受信し、統計量を分析することで、共用(非優先)システムにおいて行われている通信のフレームがどのようなリソースを使用しているか、及び自身が使用可能なリソースを適確に知ることができる。
【0022】
<3.信号生成装置>
図4は被共用(優先)システムの無線局において使用される信号生成装置を示す。無線局は、信号生成装置以外に、信号の送受信等の処理を行う一般的な構成を有するが、それらについての説明は省略される。信号生成装置は、データ変調部41、付与統計量制御部42、統計量付与部43、マッピング部44、波形整形部45及びCAFパターン情報保持部46を有する。
【0023】
データ変調部41は、無線局から送信される送信データを変調する。変調は直交振幅変調(QAM)方式や位相シフトキーイング(PSK)方式等のような当該技術分野で既知の適切な如何なる方式で行われてもよい。データ変調部41及びマッピング部44の間に統計量付与部43が示されているが、図示の例は簡明化の観点から描かれているに過ぎず、データ変調部41及びマッピング部44の間にインタリーバ等のような他の処理要素が存在してもよい。また、データ変調部41に入力される送信データは、誤り訂正符号化後のデータでもよい。
【0024】
付与統計量制御部42は、送信するフレームのサイズや送信に用いる周波数帯域等の情報に基づいて、フレームを構成する1つ以上のサブフレーム各々に付与する統計量を決定する。具体的には、統計量を指定する周波数シフト量α及び時間シフト量νの組み合わせ(α,ν)がサブフレーム各々で異なるように決定され、すなわちサブフレーム毎に異なる場所に統計量のピークが生じるように、統計量が決定される。統計量とは、信号波形が有する統計的な特性を示す情報であり、二次の周期自己相関値によって得られる周期定常性や、信号振幅の分散値、周波数相関値、特定の系列との相互相関値等が、統計量として利用されてもよい。統計量は、特徴量、波形特徴量等と言及されてもよい。
【0025】
一般に、信号波形は、中心周波数、周波数帯域幅、送信電力、変調方式、送信情報シンボル等の様々なパラメータによって決定される。したがって、信号波形には上記のようなパラメータの特徴が含まれている。例えば、信号に用いられている変調方式等に起因して、ある固有のパラメータが周期自己相関値の計算に使用された場合にのみ、信号の周期自己相関値の値が大きくなる、という特徴がある。また、同一の変調方式を用いる信号に対して異なる周期定常性の特徴量を付与することも可能である。これらは一例に過ぎず、信号波形の特徴を表す統計量は、信号の相関値や統計値等のような様々な観点から表現することができる。
【0026】
統計量の一例である周期定常性について説明する。信号x(t)に対する二次の周期自己相関関数(CAF)は、以下の数式により表現される。
【0027】
【数1】

ここで、*は複素共役を表す。Iは観測時間長を表す。αは周波数シフト量又はサイクリック周波数(cyclic frequency)を表す。τは時間シフト量又はラグパラメータ(lag parameter)を表す。
CAFに関し、一般に、α≠0のときにRxα(τ)≠0ならば、x(t)は周期定常性を有する。
また、式(1)の離散時間表現は次のように書ける。
【0028】
【数2】

ここで、I0は観測サンプル数を表す。νはラグパラメータの離散時間表現を表す。なお、x[i]≡x(iTs)であり、Tsはサンプリング周期を表す。
式(2)のCAFに関し、推定値~Rxα(ν)、真値Rxα(ν)、及び推定誤差Δxα(ν)の間には次式が成り立つ。
【0029】
【数3】

推定誤差Δxα(ν)は、観測サンプル数I0が十分に多い場合、0になるが実際には有限の観測長であるため、0とはならない。しかしながら、信号x(t)が周期定常性を有する場合にはα、νにおけるCAF推定値~Rxα(ν)はα、ν以外でのCAF推定値よりも大きな絶対値となる確率が高いため、前述の周期定常性の定義は実用においては、CAFがα、νにおいてピークを有するときに、信号x(t)は周期定常性を有すると解釈できる。
【0030】
図4の統計量付与部43は、付与統計量制御部42により決定された統計量を各サブフレームに付与する。具体的には、サブフレーム毎に異なる場所に統計量のピークが生じるように各サブフレームが作成される。説明の簡明化のため、OFDM信号に基づく二次の周期自己相関値CAFが統計量として使用されているが、他の量を使用することも可能である。例えば、CDMA信号に異なる複数の統計量を付与することも可能である。統計量の具体的な付与方法については後述する。
【0031】
マッピング部44は、複数のサブフレームを含むフレームを時間領域のベースバンド信号に変換する。一例としてそのような変換は逆フーリエ変換により行われてもよい。
【0032】
波形整形部45は、ベースバンド信号を無線送信に適した信号の波形に変換し、不図示の無線部に出力する。
【0033】
CAFパターン情報保持部46は、フレームを構成する個々のサブフレームに使用可能なパラメータの組み合わせの情報を保持する。統計量が二次の周期自己相関値CAFで表現される場合、統計量は、周波数シフト量と時間シフト量との組み合わせ(α,ν)により指定される。
【0034】
図5及び図6はパラメータの組み合わせ(α,ν)の一例を示す。図5は周波数シフト量αと時間シフト量νと周期自己相関値CAF(Rαx[ν])とで規定される座標空間において、様々な値のパラメータの組み合わせに応じて、異なる場所にピークが生じる様子を示す。図6は、フレームを構成する個々のサブフレームが、どのようなパラメータの統計量を示すべきかの一例を示す。例えば、通信信号のフレームが図3に示すようにP個のサブフレームで構成される場合、サブフレーム#kはCAFパターン#kに対応するパラメータの組み合わせの統計量を示す。ただし、kは1以上P以下の整数である(P≦MAX)。無線局に割り当てられた周波数帯域がAであったとすると、CAFパターン#kに対応するパラメータの組み合わせは、(αk1)により表現される。無線局に割り当てられた周波数帯域がA及びBであったとすると、CAFパターン#kに対応するパラメータの組み合わせは、(αk4)により表現される。言い換えれば、あるサブフレームに対応する統計量のパラメータの組み合わせは、そのサブフレーム以降、フレームが終了するまでの間に残っているサブフレーム数(残り時間)に対応する。例えば、周波数帯域Aのみが割り当てられている場合において、サブフレーム#3が示すCAFパターン#3は、(α31)により表現され、残りサブフレーム数が2であることを示す。サブフレーム1つ分の期間Tfは送信側及び受信側で既知であるので、受信信号からサブフレーム#3の統計量の情報を取得した無線局(共用(非優先)システムの無線局)は、被共用(優先)システムの通信が以後2サブフレームの期間(2×Tf)経過後に終了することを知ることができる。図6に示す例の場合、MAX個の周波数シフト量αが個々の残り時間に対応付けられ、時間シフト量νが周波数帯域の種別に対応付けられているが、このことは必須ではない。MAX個の時間シフト量νが個々の残り時間に対応付けられ、周波数シフト量αが周波数帯域の種別に対応付けられてもよい。より一般的には、サブフレームに対応付けられる1つのCAFパターンに対して、周波数シフト量α及び時間シフト量νの組み合わせが1つ対応付けられていればよい。
【0035】
図7は図4に示す付与統計量制御部42、統計量付与部43及びマッピング部44を詳細に描いた実現例を示す。データ変調部41及びCAFパターン情報保持部46は、図4に示す例と同様に示されている。図示の例の場合、OFDM信号に対して、周期自己相関特性CAFにより表現される統計量が付与される。
【0036】
データ変調部41によりデータ変調された一連の信号は、直並変換部71により並列的な信号に変換され、並列的な信号の一部が複製部72により複製され、位相回転部74に与えられる。一方、回転速度制御部73は周波数シフト量αをどのような値にすべきかを決定し、決定した値に対応する回転量を位相回転部74に通知する。位相回転部74は、複製部72から受信した一部の並列信号に対して、回転速度制御部73が指定した量だけ位相を回転させ、シンボルシフト部76に出力する。他方、時間シフト量制御部75は、時間シフト量νをどのような値にすべきかを決定し、シンボルシフト部76に通知する。シンボルシフト部76は、位相回転を伴う複製された一部の並列信号を、指定された期間だけ時間軸方向にずらし、逆フーリエ変換部77に出力する。複製部72からの並列信号とシンボルシフト部76からの並列信号とを含む並列信号は、逆フーリエ変換部77において逆フーリエ変換され、GI挿入部78によりガードインターバルが付加され、並直変換部79により一連の時間信号に変換される。一連の時間信号は図4の波形整形部45に出力され、不図示の無線部を経て無線送信される。
【0037】
このような構成を使用すると、周波数シフト量αはサブキャリア間の周波数間隔及び位相回転量により特定され、時間シフト量νは並列信号に施される巡回シフト量及び位相回転量により特定される。すなわち、複製元と複製先のサブキャリアの関係や位相回転速度を変更することで、CAFピークが出現する周波数方向の位置(α)を制御することができ、シンボルの巡回シフト量やサンプルの巡回シフト量を変更することで、CAFピークが出現する時間方向の位置(ν)を変更することができる。これにより、例えば図5に示すように様々な位置にCAFのピークを生じさせることができる。
【0038】
このような統計量の付与は、被共用(優先)システム側に仕様の変更を必要とせずに実現できる。例えば、図7に示す例の場合、一部の通信リソース(複製部72により複製された並列信号がマッピングされる所定数個のサブキャリア)を統計量の付与のために使用することとし、送信データをコピーすること等により実現可能である。このため、既存のシステムへの導入は比較的容易である。この場合、統計量を付与するために使用される通信リソースの用途が制限されるので、その旨を示す制御信号が被共用(優先)システム内のユーザに報知されてもよい。このようにすることで、被共用(優先)システム内の通信を通常通り行うことが出来る。
【0039】
<4.信号検出装置>
図8は共用(非優先)システムの無線局において使用される信号検出装置を示す。無線局は、信号検出装置以外に、信号の送受信等の処理を行う一般的な構成を有するが、それらについての説明は省略される。信号検出装置は、統計量計算部81、判定部82、統計量情報復調部83、検出対象候補選択部84及びCAFパターン情報保持部85を有する。
【0040】
統計量計算部81は、無線局が受信した信号について統計量を算出する。統計量が二次の周期自己相関値CAFにより表現される場合、統計量は周波数シフト量α及び時間シフト量νの組み合わせにより指定される。パラメータのどの組み合わせについて統計量を計算すべきかは、検出対象候補選択部84から通知される。
【0041】
判定部82は、統計量計算部81において算出された統計量に対応するサブフレームが、受信信号に実際に含まれていたか否かを判定する。具体的な判定方法については後述する。
【0042】
統計量情報復調部83は、何らかの統計量に対応するサブフレームが、受信信号に実際に含まれていた場合に、その統計量に対応する情報を取得し、出力する。統計量に対応する情報は、例えば、被共用(優先)システムにおいて行われている通信のフレームが、どのような周波数で何時終了するか等を示す。上述したようにフレームが何時終了するかは、残りフレーム数や現在のフレーム番号等により判別することができる。
【0043】
検出対象候補選択部84は、統計量計算部81が計算すべき統計量のパラメータを通知する。検出対象候補が複数個存在する場合において、検出対象候補選択部84による候補の指定、統計量計算部81による統計量の計算及び判定部82による判定は、検出対象候補毎に順番に行われてもよいし、或いは複数の検出対象候補についての判定が同時に行われてもよい。
【0044】
CAFパターン情報保持部85は、図4のCAFパターン情報保持部46と同様に、フレームを構成する個々のサブフレームに使用可能なパラメータの組み合わせの情報を保持する。
【0045】
判定部82が、何らかの組み合わせ(α,ν)に対応する統計量が受信信号に含まれていたか否かを判定する具体的な方法は、例えば一般化尤度比検定法(GLRT:Generalized likelihood ratio test)である。ただし、他の統計的な方法により統計量の有無が検出されてもよい。一般化尤度比検定法GLRTでは、(α00)で指定される統計量の有無は次のようにして判定される。
【0046】
先ず、周波数シフト量α0及び時間シフト量ν0におけるCAF推定値をベクトル成分とする1×2型のベクトル(CAFベクトル)を次のように定義する。
【0047】
【数4】

ここで、Re{}及びIm{}はそれぞれ引数の実部及び虚部を表す。一般化尤度比検定GLRTにおける検定統計量Zxα00)は次のように表現される。
【0048】
【数5】

ここで、()Tは転置を表す。~Σxα00)はCAF推定誤差Δxα00)の共分散行列(covariance matrix)の推定値を表し、以下の数式により算出される。
【0049】
【数6】

ここで、W(s)は、規格化されたスペクトルウインドウの係数を表し、その長さLは奇数であるとする。このように導出される検定統計量Zxα00)の分布は、信号xが周波数シフト量α0及び時間シフト量ν0においてCAFピークを持たないとき、自由度2のカイ2乗分布に従う。よって、得られた検定統計量の値Zxα00)と、あらかじめ決定されている閾値Γの値とを比較することで、検出対象信号(周波数シフト量α0及び時間シフト量ν0を示す信号)が、受信信号に含まれているかどうかを判定することができ、閾値Γをカイ2乗分布の上側累積確率から適切に選択することにより、任意の誤警報率を達成することができる。例えば5%の誤警報率を達成するためには、カイ2乗分布の上側累積確率5%に対応する変数5.99を閾値Γとすればよく、このとき信号xがCAFピークを持つ信号を含まない場合に、検定統計量Zxα00)の値が5.99を超える確率は5%であるため、CAFピークを持つ信号が含まれていると誤って判定する確率は5%となる。
【0050】
<5.動作例>
図9は、本発明の実施例による動作例を示し、複数の帯域A,B,Cが使用可能な周波数共用環境におけるセンシング及び送信制御の一例を示す。第1のフレームにおいて、被共用(優先)システムの無線局は、帯域A、B、Cのうち帯域A及びBを用いて通信を行っている。共用(非優先)システムの無線局は自身の通信要求が生じた際に、Ts秒間のセンシングを行い、第1のフレーム中のサブフレーム#kを受信する。サブフレーム#kはCAFパターン#kに対応し、現在、被共用(優先)システムの通信に使用されている帯域はA及びBであること、及び現在のサブフレーム#kから現フレームが終了するまでの時間がT=k×Tf秒であること、という情報が得られる。ここで、kは被共用(優先)システムの第1のフレームの残りサブフレーム数に対応し、Tfはサブフレーム1つ分の時間であり、Tfは共用(非優先)システムのセンシング時間Tsより十分長い時間である。そのため本実施例の共用(非優先)システムは、被共用(優先)システムが使用していない帯域Cにおいて、(T−Ts)秒間の間通信を行うことが可能である。この期間内ならば共用(非優先)システムの無線局が帯域Cにおいて信号を送信したとしても、被共用(優先)システムに干渉を及ぼす懸念は生じないからである。
【0051】
共用(非優先)システムの無線局はその(T−Ts)秒後に次のセンシングを行う。このセンシングのタイミングは、被共用システムの通信における第1のフレームの直後に行われるので、第2のフレームの先頭フレームに該当する。このセンシングにより、無線局は第2のフレームの先頭サブフレーム#p2を受信する。第1のフレームの期間と第2のフレームの期間は同じでもよいし(p2=p1)、異なる長さでもよい(p2≠p1)。サブフレーム#p2はCAFパターン#p2に対応し、現在、被共用(優先)システムの通信に使用されている帯域はAのみであること、及び現在のサブフレーム#p2から現フレームが終了するまでの時間はT=p2×Tf-Tsであること、という情報が得られる。この期間Tは第2のフレームの期間Tp2=p2×Tfにほぼ等しいので(TsはTfよりも小さい)、共用(非優先)システムの無線局が帯域B及びCにおいて信号を送信したとしても、被共用(優先)システムに干渉を及ぼす懸念は生じない。
【0052】
共用(非優先)システムの無線局はその(p2×Tf-Ts)秒後に次のセンシングを行う。このセンシングのタイミングは、被共用システムの通信における第2のフレームの直後に行われるので、第3のフレームの先頭フレームに該当する。このセンシングにより、無線局は第3のフレームの先頭サブフレーム#p3を受信する。第2のフレームの期間と第3のフレームの期間は同じでもよいし(p3=p2)、異なる長さでもよい(p3≠p2)。サブフレーム#p3はCAFパターン#p3に対応し、現在、被共用(優先)システムの通信に使用されている帯域はA、B、Cであること、及び現在のサブフレーム#p3から現フレームが終了するまでの時間はT=p3×Tf-Tsであること、という情報が得られる。この場合、帯域A、B、Cの全てが共用(非優先)システムの無線局により使用されているので、被共用(優先)システムは如何なる信号も送信できない。
【0053】
そして、共用(非優先)システムの無線局は(p3×Tf-Ts)秒後に次のセンシングを行う。このセンシングのタイミングは、被共用システムの通信における第3のフレームの直後に行われるので、第4のフレームの先頭フレームに該当する。このセンシングにより、無線局は第4のフレームの先頭サブフレーム#p4を受信する。第3のフレームの期間と第4のフレームの期間は同じでもよいし(p4=p3)、異なる長さでもよい(p4≠p3)。サブフレーム#p4はCAFパターン#p4に対応し、現在、被共用(優先)システムの通信に使用されている帯域はB及びCのみであること、及び現在のサブフレーム#p4から現フレームが終了するまでの時間はT=p4×Tf-Tsであること、という情報が得られる。この場合、共用(非優先)システムの無線局が帯域Aにおいて信号を送信したとしても、被共用(優先)システムに干渉を及ぼす懸念は生じない。
【0054】
このように本発明によれば、個々のサブフレームに対応するCAFパターンから、フレームの残り時間及び使用不可能な帯域の情報を取得できるので、図2(3)に示すような理想的なセンシング及び送信制御を実現することができる。なお、図示の例のように、被共用(優先)システムが複数の帯域を使用する可能性がある場合において、全ての帯域で各サブフレームに対応するCAFパターンの情報が送信されてもよいし、特定の帯域に限ってそのような情報が送信されるようにしてもよい。共用(非優先)システムの無線局は、図9に示すように、使用できる可能性がある全ての帯域に渡ってセンシングが行われてもよいし、或いはセンシングを行うべき特定の帯域が事前に通知されていてもよい。後者の場合、その帯域に限定してセンシングを行うことで、センシングの精度を向上させることが可能である。このように、被共用(優先)システムへ干渉を与えずに共用(非優先)システムは通信可能な時間を増大させることができ、無線リソースの利用効率を大幅に改善することができる。
【0055】
図9に示す動作例の場合、被共用(優先)システムは何らかの周波数帯域において通信を行っているので、共用(非優先)システムの無線局はセンシングを行った際に常に何らかのCAFパターンから通信リソースの情報を取得できる。しかしながら、被共用(優先)システムの無線局が何れの周波数帯域においても通信していなかった場合に、共用(非優先)システムの無線局がセンシングを行ったとすると、何らの通信リソースの情報も取得できないことが懸念される。以下に説明する動作例は、このような懸念に対処することができる。
【0056】
図10はセンシング及び送信制御の別の動作例を示す。第1のフレームにおいて、被共用(優先)システムの無線局は、帯域A、B、Cのうち帯域A及びBを用いて通信を行っている。共用(非優先)システムの無線局は自身の通信要求が生じた際に、Ts秒間のセンシングを行い、第1のフレーム中のサブフレーム#kを受信する。サブフレーム#kはCAFパターン#kに対応し、現在、被共用(優先)システムの通信に使用されている帯域はA及びBであること、及び現在のサブフレーム#kから現フレームが終了するまでの時間がT=k×Tf秒であること、という情報が得られる。従って、共用(非優先)システムは、被共用(優先)システムが使用していない帯域Cにおいて、(T−Ts)秒間の間通信を行うことが可能である。ここまでは、図9に示す例と同様である。
【0057】
共用(非優先)システムの無線局はその(T−Ts)秒後に次のセンシングを行う。このセンシングのタイミングは、被共用システムの通信における第1のフレームの直後に行われるので、第2のフレームの先頭フレームに該当する。しかしながら、第2のフレームに相当する期間において、被共用(優先)システムはどの周波数帯域においても通信を行っていないので、共用(非優先)システムの無線局がセンシングを行ってもサブフレームのCAFパターンの情報は得られない。この場合に、共用(非優先)システムの無線局が長期間にわたって信号を送信し続けると、図2(1)において説明したような干渉が生じるおそれが生じる一方、頻繁にセンシングを行うと、図2(2)において説明したようにリソースの有効利用が妨げられてしまう。このような懸念に対処するため、無通信単位時間Tuが規定される。無通信単位時間Tuは所定の複数個のサブフレームに相当する期間を有し、1つのフレームは無通信単位時間Tuの自然数倍に等しい期間を有するように規定される。更に、被共用(優先)システムの無線局が間欠的にフレームを送信する場合、フレームが送信されない期間の長さも無通信単位時間Tuの自然数倍に制約される。この点、個々のフレームの長さにそのような制約がない図9等に示す例におけるフレーム構成と異なる。
【0058】
センシングの結果、被共用(優先)システムの通信が確認されなかった場合、共用(非優先)システムはどの周波数帯域を使用して通信を行ってもよいが、通信できる期間は無通信単位時間Tu-Tsに制限される。センシングの開始から無通信単位時間Tuの経過後に、次のセンシングが行われる。センシングの結果、被共用(優先)システムの通信が確認されなかった場合、共用(非優先)システムはどの周波数帯域を使用して通信を行ってもよいが、通信できる期間は無通信単位時間Tu-Tsに制限される。以後、センシングにより被共用(優先)システムの通信が確認されるまで、同様な処理が反復される。
【0059】
上述したようにセンシングのタイミングは被共用システムの通信におけるフレームの先頭サブフレームのタイミングに同期している。図示の例の場合、センシングの結果、無線局が第3のフレームの先頭サブフレーム#p3を受信する。サブフレーム#p3はCAFパターン#p3に対応し、現在、被共用(優先)システムの通信に使用されている帯域はA及びCであること、及び現在のサブフレーム#p3から現フレームが終了するまでの時間はT=p3×Tf-Tsであること、という情報が得られる。この期間Tにおいて共用(非優先)システムの無線局が帯域Bにおいて信号を送信したとしても、被共用(優先)システムに干渉を及ぼす懸念は生じない。
【0060】
そして、共用(非優先)システムの無線局は(p3×Tf-Ts)秒後に次のセンシングを行う。このセンシングのタイミングは、被共用システムの通信における第3のフレームの直後に行われ、かつ第4のフレームの先頭フレームに該当する。このセンシングにより、無線局は第4のフレームの先頭サブフレーム#p4を受信する。サブフレーム#p4はCAFパターン#p4に対応し、現在、被共用(優先)システムの通信に使用されている帯域はB及びCのみであること、及び現在のサブフレーム#p4から現フレームが終了するまでの時間はT=p4×Tf-Tsであること、という情報が得られる。この場合、共用(非優先)システムの無線局が帯域Aにおいて信号を送信したとしても、被共用(優先)システムに干渉を及ぼす懸念は生じない。
【0061】
このように被共用(優先)システムの無通信時間は、無通信単位時間Tuの整数倍であるので、共用(非優先)システムはその無通信単位時間Tu毎にセンシングを行うことで、被共用(優先)システムの通信の開始を迅速に検知することが可能である。無通信単位時間Tuを適切に長く設定することで、過剰にセンシングを行う必要がなくなる。図9や10に示す動作例に加えて、被共用(優先)システムのデータトラフィックがないことを表現する統計量が別途規定されていてもよい。そのような統計量を有する制御信号が、被共用(優先)システムから共用(非優先)システムへ通知されるようにすることで、共用(非優先)システムの無線局は、無通信時間が生じることを確実に知ることができる。この場合、被共用(優先)システムはデータトラフィックの有無に依らず常に統計量を持つ制御信号を送信しているので、共用(非優先)システムはセンシングにより被共用(優先)システムの通信状態を常に正確に認識することが可能となる。
【0062】
<6.変形例>
<<6.1 先頭サブフレームのオーバーヘッドを増やす変形例>>
図11は上記実施形態の変形例を説明するための図である。上述したように、フレームの先頭サブフレームは、センシングにおいて特に重要な情報を含んでいるので、共用(非優先)システムの無線局にとって特に重要である。従って、フレームの先頭サブフレームが、他のサブフレームよりも確実に通信されるように、通信の仕方を工夫することが考えられる。そのような工夫の一例として、被共用(優先)システムの無線局が、各フレームの先頭サブフレームを送信する際に、他のサブフレームよりもオーバーヘッドを増やすことが考えられる。例えば、先頭サブフレームにおいてCAFパターンを通知するのに使用されるサブキャリア数を、他のサブフレームよりも増やすことが考えられる。これにより、先頭サブフレームの統計量は、他のサブフレームの統計量よりも高いピークを示しやすくなる。また、先頭サブフレームについての送信レートが低減されてもよい(例えば、より低いMCSが使用されてもよい)。各フレームの先頭サブフレームは、共用(非優先)システムの通信との多少の重畳が生じる可能性がある上、共用(非優先)システムによる初回以降のセンシングが行われるタイミングである。先頭サブフレームにのみ上記のような処理を加えることにより、信号の重畳によるビット誤りの影響を低減させたり、共用システムによるセンシングの精度を向上させることができ、結果として周波数利用効率を向上させることができる。
【0063】
<<6.2 先頭サブフレーム長を増やす変形例>>
図12は上記実施形態の別の変形例を説明するための図である。フレームの先頭サブフレームが、他のサブフレームよりも確実に通信されるように、通信の仕方を工夫する別の例は、先頭サブフレームを他のサブフレームよりも長くすることである。例えば、共用(非優先)システムの無線局がi番目のフレームにおいて行ったセンシングの期間がサブフレーム#kと#k-1の境界を跨いでいたとする。この場合、無線局は、サブフレーム#kに対応する統計量の情報と、サブフレーム#k-1に対応する統計量の情報とを取得することになり、情報の検出精度が落ちる。この無線局がk×Tf-Tsだけ待機した後に、i+1番目のフレームの先頭サブフレームにおいてセンシングを行った場合、全てのサブフレームが同じ長さであったとすると、このセンシングでも2つの統計量に関する情報が取得されることになり、検出精度が落ちてしまう。しかしながら、本変形例のように、先頭サブフレームが他のサブフレームより長かった場合には、先頭サブフレームから統計量の情報を一意に取得することでき、検出精度の劣化を防止することができる。
【0064】
<<6.3 オフセットを正確に推定する変形例>>
図13は上記実施形態の更に別の変形例を説明するための図である。フレームの先頭サブフレームが、他のサブフレームよりも確実に通信されるように、通信の仕方を工夫する別の例は、先頭サブフレームまで待機する期間を正確に推定することである。本変形例では、被共用(優先)システムのサブフレーム長Tfと共用(非優先)システムにおけるセンシング期間Tsの長さが同程度となるように事前に決定されているものとする(Ts=Tf)。被共用(優先)システム及び共用(非優先)システムは互いに同期していないので、Ts=Tfの場合に共用(非優先)システムの無線局が初めてセンシングを行うと、センシング期間Tsはサブフレームの境界を跨ぐので2つの統計量が検出されやすい。検出された2つの統計量の受信品質又は受信電力強度の比率は、センシング時間Ts内に存在する2つのサブフレームの長さの比Rに等しい。本変形例では、検出された統計量の値の比Rから初回のセンシング終了時点と被共用システムのサブフレーム境界との間のオフセットTestを推定し、そのオフセット時間分だけ共用(非優先)システムの通信時間を微調整する。このような処理により、2回目以降のセンシングタイミングでは、被共用システムの先頭サブフレームに付与された統計量のみが検出されることとなり、検出精度が改善される。また、2回目以降のセンシング時間は被共用(優先)システムの先頭サブフレームに同期するため、共用(非優先)システムにおけるセンシング時間(Ts=Tf)と通信時間((P-1)×Tf)の和が被共用(優先)システムのフレーム時間(P×Tf)と一致するようになり、リソースの未使用期間が最も少なくなるように周波数を共用することが可能になる。
【0065】
図14はこのような変形例を実現するための信号検出装置の一例を示す。概して図8に示す信号検出装置と同様であるが、オフセット推定部141が設けられている点が主に異なる。判定部82において複数の統計量が検出された場合、オフセット推定部141は、統計量計算部81の結果を用いて、検出された統計量の比率から初回のセンシング終了時点とサブフレーム境界との間のオフセットを推定し、出力する。無線局はオフセットを用いて共用(非優先)システムの通信可能時間の微調整を行う。
【0066】
以上本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、それらは単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。例えば、本発明は、信号の統計量に基づいて通信の可否を判断する適切な如何なる移動通信システムに適用されてもよい。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。発明の理解を促すため具体的な数式を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数式は単なる一例に過ぎず適切な如何なる数式が使用されてもよい。実施例又は項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある項目に記載された事項が、別の項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。機能ブロック図における機能部又は処理部の境界は必ずしも物理的な部品の境界に対応するとは限らない。複数の機能部の動作が物理的には1つの部品で行われてもよいし、あるいは1つの機能部の動作が物理的には複数の部品により行われてもよい。説明の便宜上、本発明の実施例に係る装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウェアで、ソフトウェアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。ソフトウェアは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、EPROM、EEPROM、レジスタ、ハードディスク(HDD)、リムーバブルディスク、CD−ROM、データベース、サーバその他の適切な如何なる記憶媒体に用意されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【0067】
以下、開示される発明の実施形態を例示的に列挙する。
【0068】
[第1項]
第1無線通信システムの使用が第2無線通信システムより優先される共用周波数帯を用いて通信を行う第1無線通信システムの無線局における信号生成装置であって、
前記第1無線通信システムの送信フレームサイズ及び使用周波数帯に応じて信号に付与する統計量を制御する付与統計量制御部と、
送信フレームを複数のサブフレームに分割し前記付与統計量制御部において決定された統計量を送信信号の各送信サブフレームに付与する統計量付与部と、
通信要求量や通信路状態に応じて送信フレーム毎に使用する周波数帯を変更する波形整形部と、
を具備することを特徴とする信号生成装置。
【0069】
[第2項]
前記統計量として、信号の周期自己相関関数を用いることを特徴とする、第1項に記載の信号生成装置。
【0070】
[第3項]
前記付与統計量制御部は、前期送信フレームサイズの情報に応じて各サブフレームに対して前記周期自己相関関数のピークが出現する周波数シフト量を制御することを特徴とする、第1又は第2項に記載の信号生成装置。
【0071】
[第4項]
前記付与統計量制御部は、前記使用周波数帯の情報に応じて、各送信フレームに対して前記周期自己相関関数のピークが出現する時間シフト量を制御することを特徴とする、第1又は第2項に記載の信号生成装置。
【0072】
[第5項]
前記統計量付与部は、各送信フレームの第1サブフレームの信号に対して、他のサブフレームよりも多くのオーバーヘッドを用いて統計量付与を行うことを特徴とする、第1項に記載の信号生成装置。
【0073】
[第6項]
前記統計量付与部は、各送信フレームの第1サブフレームの信号を、他のサブフレームよりも多くのシンボルを用いて長いサブフレーム長となるように構成することを特徴とする、第1記載の信号生成装置。
【0074】
[第7項]
第1無線通信システムの使用が第2無線通信システムより優先される共用周波数帯を用いて通信を行う第2無線通信システムの無線局における信号検出装置であって、
検出対象の候補信号を選択し対応する統計量計算のためのパラメータを決定する検出対象候補選択部と、
前記検出対象候補選択部によって決定されたパラメータに応じて受信した信号の統計量を計算する統計量計算部と、
前記統計量計算部の計算結果を閾値と比較して前記検出対象候補選択部によって選択された候補信号の有無を判定する判定部と、
前記判定部により受信信号に含まれていると判定された候補信号の持つ統計量に対応する第1無線通信システムの情報を復調する統計量情報復調部と、
を具備することを特徴とする信号検出装置。
【0075】
[第8項]
前記統計量に対応する第1無線通信システムの情報は、当該信号検出装置を備える無線局が属する第2無線通信システムにおいて既知である、第7項に記載の信号検出装置。
【0076】
[第9項]
当該信号検出装置は第1無線通信システムのサブフレームタイミングとセンシングタイミングのオフセットを推定するオフセット推定部を更に有し、
前記判定部において複数の統計量が検出された場合にその統計量の値の比からサブフレームタイミングとセンシングタイミングのオフセットを推定し、第2無線通信システムが通信を行う時間を調整することを特徴とする第7項に記載の信号検出装置。
【0077】
[第10項]
第1無線通信システムの使用が第2無線通信システムより優先される共用周波数帯を用いて通信を行う前記第1無線通信システム及び前記第2無線通信システムで共用する周波数共用方法であって、
前記第1無線通信システムの無線局における信号生成装置が、送信信号フレームを複数のサブフレームに分割し各サブフレームにサブフレーム番号及び使用周波数帯に対応する統計量を付与する工程と、
前記第2無線通信システムの無線局における信号検出装置が、受信信号の統計量を計算し、前記第1無線通信システムの現在の送信サブフレーム番号及び使用周波数帯を認識する工程と、
前記第2無線通信システムの無線局が認識した前記第1無線通信システムの使用周波数帯以外の共用周波数帯を使用し、前記第1無線通信システムの現在の送信フレームの残り時間だけ通信を行う工程と、
を有することを特徴とする周波数共用方法。
【符号の説明】
【0078】
41 データ変調部
42 付与統計量制御部
43 統計量付与部
44 マッピング部
45 波形整形部
46 CAFパターン情報保持部
71 直並変換部
72 複製部
73 回転速度制御部
74 位相回転部
75 時間シフト量制御部
76 シンボルシフト部
77 逆フーリエ変換部
78 GI挿入部
79 並直変換部
81 統計量計算部
82 判定部
83 統計量情報復調部
84 検出対象候補選択部
85 CAFパターン情報保持部
141 オフセット推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非優先システムと周波数帯域を共有する優先システムにおける通信装置であって、
統計量のピーク位置に対応する周波数シフト量及び時間シフト量の組み合わせと、前記優先システムにおける通信に使用される通信資源との所定の対応関係を参照することで、複数のサブフレーム各々に対する統計量のピーク位置が互いに異なるように、前記複数のサブフレーム各々の周波数シフト量及び時間シフト量を決定する付与統計量決定部と、
前記付与統計量決定部で決定された周波数シフト量及び時間シフト量に基づいて、前記複数のサブフレームを作成する統計量付与部と、
前記複数のサブフレームを含む送信信号を無線送信する送信部と
を有する、通信装置。
【請求項2】
前記統計量が周期自己相関関数の値により表現される、請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記複数のサブフレーム各々の統計量が示す周波数シフト量は、当該通信装置により行われる通信の残り時間を示す、請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記複数のサブフレーム各々の統計量が示す時間シフト量は、当該通信装置の通信に使用される周波数を示す、請求項1ないし3の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記送信信号を構成する前記複数のサブフレームの内の先頭のサブフレームが、他のサブフレームの統計量よりも高いピークを示すように、前記付与統計量決定部は周波数シフト量及び時間シフト量を決定する、請求項1ないし4の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記送信信号を構成する前記複数のサブフレームの内の先頭のサブフレームが、他のサブフレームよりも長い期間を有する、請求項1ないし5の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
優先システムと周波数帯域を共有する非優先システムにおける通信装置であって、
前記優先システムの通信装置が送信した送信信号を受信する受信部と、
統計量のピーク位置に対応する周波数シフト量及び時間シフト量の組み合わせと、前記優先システムにおける通信に使用される通信資源との所定の対応関係を参照することで、前記送信信号が示す統計量に対応する通信資源を判定し、判定された通信資源を使用できない通信資源として判断する判断部と、
前記使用できない通信資源以外の通信資源を用いて無線送信を行う送信部と
を有する、通信装置。
【請求項8】
前記送信信号が示す統計量の周波数シフト量は、前記優先システムの前記通信装置により行われる通信の残り時間を示す、請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記送信信号が複数の統計量を示した場合、個々の統計量の受信電力比に基づいて、前記優先システムの前記通信装置により行われる通信の残り時間を推定する、請求項7又は8に記載の通信装置。
【請求項10】
優先システム及び非優先システムが同一の周波数帯域を共用する場合に使用される周波数共用方法であって、
統計量のピーク位置に対応する周波数シフト量及び時間シフト量の組み合わせと、前記優先システムにおける通信に使用される通信資源との所定の対応関係を参照することで、複数のサブフレーム各々に対する統計量のピーク位置が異なるように、前記複数のサブフレーム各々の周波数シフト量及び時間シフト量を決定するステップと、
決定された周波数シフト量及び時間シフト量に基づいて前記複数のサブフレームを作成し、該複数のサブフレームを含む送信信号を無線送信するステップと
を前記優先システムの通信装置において行い、
前記送信信号に含まれているサブフレームを受信するステップと、
前記所定の対応関係を参照することで、前記サブフレームが示す統計量に対応する通信資源を判定し、判定された通信資源を使用できない通信資源として判断するステップと、
前記使用できない通信資源以外の通信資源を用いて無線送信を行うステップと
を前記非優先システムの通信装置において行う、周波数共用方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−90202(P2013−90202A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229907(P2011−229907)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度 総務省「同一周波数帯における複数無線システム間無線リソース制御技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】