通信装置及び通信方法
【課題】平均放射電力及び尖頭電力のいずれも変化させることなく、通信品質として、例えば、信号対雑音比を高くすることができる通信装置及び通信方法を提供する。
【解決手段】通信装置100は、自装置のアンテナ140bと他の装置のアンテナ140bとの距離を測距する測距部110と、測距部110が測距した距離に応じて拡散レートを定め、拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、他の装置と通信する通信部120と、を備える。
【解決手段】通信装置100は、自装置のアンテナ140bと他の装置のアンテナ140bとの距離を測距する測距部110と、測距部110が測距した距離に応じて拡散レートを定め、拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、他の装置と通信する通信部120と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信における通信装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全地球測位システム(Global Positioning System:GPS)、超広帯域無線(Ultra Wide Band:UWB)、又は無線LAN(Local Area Network)を用いて、無線通信により位置を推定する通信装置が開示されている(特許文献1、非特許文献1及び2参照)。
【0003】
また、移動体通信システムでは、通信装置間の距離に応じて信号の伝搬損失が変動するため、安定した通信品質を維持するには、伝搬損失に応じて変動する受信信号強度を補償する必要がある。ここで、符号分割多元接続(Code Division Multiple Access:CDMA)方式において、アップリンクの送信電力を調整することにより、受信信号強度を補償する適応電力制御方法が、非特許文献3に開示されている。また、直交周波数分割多元アクセス(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:OFDMA)方式において、変調方式を制御することにより、受信信号強度を補償する適応変調方法が、非特許文献4に開示されている。
【0004】
また、電波法等により規定された平均放射電力及びピーク放射電力の上限値を厳守しながら、インパルス信号の繰り返し周波数を減少させつつ、インパルス信号の振幅を増大させることで、受信信号強度を復調可能な水準に保つ通信装置が、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−101254号公報
【特許文献2】特開2007−142668号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ビー、ダブリュー、パーキンソン他編「グローバル、ポジショニング、システム:セオリー、アンド、アプリケーションズ」AIAA、1996年1月15日(B. W. Parkinson, et. al., “Global Positioning System: Theory & Applications”, AIAA, January 15, 1996)
【非特許文献2】ジェイ、ディー、テイラー編「ウルトラワイドバンド、レーダ、テクノロジー」CRC、2000年9月21日(J. D. Taylor, “Ultra-wideband Radar Technology”, CRC, September 21, 2000)
【非特許文献3】アイトリプルイー、トランザクションズ、オン、コミュニケーションズ、第41巻、第11号、第1626頁から1634頁、1993年(IEEE Transactions on Communications, Vol 41, No. 11, pp. 1626-1634, 1993)
【非特許文献4】アイトリプルイー、トランザクションズ、オン、コミュニケーションズ、第43巻、第7号、第2223頁から2230頁、1995年(IEEE Transactions on Communications, Vol 43, No. 7, pp. 2223-2230, 1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、インパルス信号の振幅(尖頭電力)を増大させた場合、通信装置は、電波法等により規定された平均放射電力の上限値を満たすため、インパルス信号の繰り返し周波数を減少させなければならない。しかしながら、通信装置が出力可能である尖頭電力には物理的に上限があるため、通信装置は、通信品質として、例えば、信号対雑音比(Signal to Noise Ratio:SNR)を限定的にしか高くすることができなかった。
【0008】
本発明は、前記の諸点に鑑みてなされたものであり、平均放射電力及び尖頭電力のいずれも変化させることなく、通信品質として、例えば、信号対雑音比を高くすることができる通信装置及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの距離を測距する測距部と、前記測距部が測距した前記距離に応じて拡散レートを定め、前記拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する通信部と、を備えることを特徴とする通信装置である。
【0010】
また、本発明は、前記測距部が、電波の強度、電波が到来した時刻、電波が異なる方向から到来した時刻の差、電波が到来した方向、位置に応じて予め定められた電波の特徴量と受信された電波の特徴量との照合結果、又は受信されるまでに電波がホップされた回数に基づいて、前記距離を測距することを特徴とする通信装置である。
【0011】
また、本発明は、前記通信部が、インパルス信号を通信することを特徴とする通信装置である。
【0012】
また、本発明は、前記通信部が、パルス位置変調により前記インパルス信号を通信することを特徴とする通信装置である。
【0013】
また、本発明は、前記通信部が、位相偏移変調により前記インパルス信号を通信することを特徴とする通信装置である。
【0014】
また、本発明は、前記通信部が、超広帯域インパルス無線方式に基づく前記インパルス信号を通信することを特徴とする通信装置である。
【0015】
また、本発明は、前記測距部が、前記超広帯域インパルス無線方式に基づくインパルス信号が自装置と前記他の装置との間を往復した時間に基づいて、前記距離を測距することを特徴とする通信装置である。
【0016】
また、本発明は、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する測距部と、前記測距部が測距した前記距離に応じて第1の拡散レートを定め、前記第1の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する通信部と、を備えることを特徴とする通信装置である。
【0017】
また、本発明は、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する測距部と、前記測距部が測距した前記距離に応じて第2の拡散レートを定め、前記第2の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と拡散レートを同調させて通信する通信部と、を備えることを特徴とする通信装置である。
【0018】
また、本発明は、通信装置における通信方法であって、測距部が、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの距離を測距する過程と、通信部が、前記測距部が測距した前記距離に応じて拡散レートを定め、前記拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する過程と、を有することを特徴とする通信方法である。
【0019】
また、本発明は、通信装置における通信方法であって、測距部が、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する過程と、通信部が、前記測距部が測距した前記距離に応じて第1の拡散レートを定め、前記第1の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する過程と、を有することを特徴とする通信方法である。
【0020】
また、本発明は、通信装置における通信方法であって、測距部が、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する過程と、通信部が、前記測距部が測距した前記距離に応じて第2の拡散レートを定め、前記第2の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と拡散レートを同調させて通信する過程と、を有することを特徴とする通信方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、通信装置は、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの距離に応じて拡散レートを高くするので、平均放射電力及び尖頭電力のいずれも変化させることなく、通信品質として、例えば、信号対雑音比を高くすることができる。また、通信装置は、信号対雑音比を高くすることにより、通信距離を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態における、第1通信装置及び第2通信装置を示す図である。
【図2】第1実施形態における、通信装置の第1構成例を示す図である。
【図3】第1実施形態における、通信装置の第2構成例を示す図である。
【図4】第1実施形態における、通信装置の第3構成例を示す図である。
【図5】第1実施形態における、通信装置及び第2通信装置の動作手順の例を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態における、UWB−IRのインパルス信号の例を示す図である。
【図7】第2実施形態における、拡散レートが3である場合のパケットエラー率と通信距離との関係が例示された図である。
【図8】第2実施形態における、拡散レートが124である場合のパケットエラー率と通信距離との関係が例示された図である。
【図9】第2実施形態における、第1通信装置及び第2通信装置の動作手順の例を示すフローチャートである。
【図10】第3実施形態における、第1及び第2通信装置の動作手順の例を示すフローチャートである。
【図11】第3実施形態における、第1〜第3通信装置を示す図である。
【図12】第3実施形態における、第1〜第4通信装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1には、第1実施形態における、第1通信装置及び第2通信装置が示されている。測位測距システムは、通信装置100−1(第1通信装置)と、通信装置100−2(第2通信装置)とを備える。
【0024】
通信装置100−1は、アンテナ140−1を備える。同様に、通信装置100−2は、アンテナ140−2を備える。通信装置100−1は、自装置のアンテナと他の装置(図1では、通信装置100−2)のアンテナとの距離(以下、「離隔距離」という)を測距し、離隔距離に基づいて、拡散レートを定める。また、通信装置100−1は、拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、通信装置100−2と無線通信する。ここで、拡散レートとは、拡散符号のチップレートを信号のビットレートで除算した値である。また、拡散レートが高いほど、無線通信における処理利得は大きくなり、信号対雑音比が高くなる。また、拡散レートが低いほど、無線通信におけるスループットは高くなる。
【0025】
次に、通信装置の構成例を説明する。
図2には、第1実施形態における、通信装置の第1構成例が示されている。第1構成例において、通信装置100は、通信部110と、測距部120とを備える。
【0026】
測距部120は、アンテナ140bを備える。アンテナ140bは、アンテナ140(図1を参照)に含まれるアンテナである。また、測距部120は、自装置のアンテナ140bと他の装置のアンテナ140bとの距離である離隔距離を、繰り返し測距する。また、測距部120は、測距した離隔距離を通信部110に出力する。ここで、測距部120は、無線通信により測距を実行する。例えば、測距部120は、アンテナ140bに受信された電波の強度(Received Signal Strength: RSS)、アンテナ140bに受信された電波が到来した時刻(Time of Arrival: TOA)、アンテナ140bに受信された電波が異なる方向から到来した時刻の差(Time Difference of Arrival: TDOA)、アンテナ140bに受信された電波が到来した方向(Angle of Arrival: AOA)、位置に応じて予め定められた電波の特徴量(位置指紋)と受信された電波の特徴量との照合結果、又は受信されるまでに電波がホップされた回数(ホップ数)に基づいて測距する。また、例えば、測距部120は、電波の代わりに、可視光又は超音波を用いて測距してもよい。なお、測距部120が離隔距離を測距する方法は、これらに限らなくてよい。
【0027】
通信部110は、アンテナ140aを備える。アンテナ140aは、アンテナ140(図1を参照)に含まれるアンテナである。通信部110は、測距部120が測距した離隔距離に応じて、最適な拡散レート(以下、「最適拡散レート」という)を定める。ここで、通信部110は、離隔距離が長くなるに従い、拡散レートの初期値よりも高くした拡散レートを最適拡散レートと定める。また、通信部110は、離隔距離が短くなるに従い、拡散レートの初期値よりも低くした拡散レートを最適拡散レートと定める。
【0028】
また、通信部110は、他の装置に送信する信号を変調する際、その信号に対して直接拡散を実行する。ここで、通信部110は、他の装置に送信する信号に拡散符号を乗算することで、スペクトルが広帯域に広がった拡散信号を生成する。生成した拡散信号には、データ信号と、離隔距離を測距するための測距信号とが含まれていてもよい。
【0029】
通信部110は、拡散レートを最適拡散レートに更新する。また、通信部110は、生成した拡散信号を、更新した拡散レートで通信装置100−2にアンテナ140aを介して送信する。なお、通信部110は、送信のみならず、通信装置100−2から拡散信号を受信してもよい。
【0030】
図3には、第1実施形態における、通信装置の第2構成例が示されている。第2構成例において、通信装置100は、通信部110と、測距部120とを備える。また、通信部110は、信号処理部111と、高周波回路部130とを備える。また、測距部120は、測距処理部121と、高周波回路部130とを備える。
【0031】
このように、第2構成例では、通信部110及び測距部120が、高周波回路部130を共有する。これにより、第2構成例における通信装置100は、第1構成例(図2を参照)と比較して、通信装置100を低コスト及び小型にすることができる。
【0032】
アンテナ140は、他の通信装置から無線通信によって拡散信号を受信し、受信した拡散信号を高周波回路部130に出力する。また、アンテナ140には、変調された拡散信号が高周波回路部130から入力される。アンテナ140は、高周波回路部130から入力された変調された拡散信号を、他の通信装置に無線通信により送信する。
【0033】
高周波回路部130には、アンテナ140が無線通信により他の測位装置から受信した変調された拡散信号が、アンテナ140から入力される。高周波回路部130は、アンテナ140から入力された変調された拡散信号を復調して、復調した拡散信号を信号処理部111及び測距処理部121に出力する。ここで、高周波回路部130は、拡散信号に含まれるデータ信号を、信号処理部111に出力する。また、高周波回路部130は、拡散信号に含まれる測距信号を、測距処理部121に出力する。
【0034】
復調した拡散信号を信号処理部111及び測距処理部121に出力する場合、高周波回路部130は、復調した拡散信号に含まれるデータ信号と測距信号とを、時分割によって分配する。この場合、高周波回路部130は、PINダイオード(p−intrinsic−n Diode)、FET(Field Effect Transistor)などのスイッチ素子を備える。また、高周波回路部130は、復調した拡散信号に含まれるデータ信号と測距信号とを、周波数分割によって分配してもよい。この場合、高周波回路部130は、誘電体フィルタ、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタなどのフィルタ素子を備える。
【0035】
また、高周波回路部130には、信号処理部111からデータ信号が入力される。また、高周波回路部130には、測距処理部121から測距信号が入力される。高周波回路部130は、信号処理部111及び測距処理部121から入力された各信号を変調(直接拡散)して、アンテナ140に出力する。
【0036】
測距処理部121は、離隔距離を測距するための測距信号を、高周波回路部130に出力する。また、測距処理部121には、高周波回路部130が復調した測距信号が、高周波回路部130から入力される。ここで、測距処理部121は、自装置と他の測位装置との間で、測距信号を繰り返し通信する(単方向通信もしくは双方向通信)。これにより、測距処理部121は、離隔距離の変化を検出することができる。
【0037】
測距処理部121は、高周波回路部130から入力された復調した測距信号に基づいて、離隔距離を測距する。ここで、測距処理部121は、例えば、高周波回路部130から入力された復調した測距信号の強度(RSS)に基づいて、離隔距離を測距する。また、測距処理部121は、測距した離隔距離を信号処理部111に出力する。
【0038】
信号処理部111は、離隔距離に応じて定めた拡散レートで、データ信号を高周波回路部130に出力する。ここで、信号処理部111は、離隔距離が長くなるに従い、拡散レートを高くする。また、信号処理部111は、離隔距離が短くなるに従い、拡散レートを低くする。また、信号処理部111には、高周波回路部130が復調したデータ信号が、高周波回路部130から入力される。信号処理部111は、入力されたデータ信号に基づいて、所定の処理を実行する。
【0039】
図4には、第1実施形態における、通信装置の第3構成例が示されている。第3構成例において、通信装置100は、高周波回路部130と、アンテナ140と、ベースバンド回路部150と、プロセッサ部160と、メモリ部170とを備える。
【0040】
アンテナ140は、第2構成例(図3を参照)と同様である。高周波回路部130には、アンテナ140が無線通信により他の測位装置から受信した変調された拡散信号が、アンテナ140から入力される。また、高周波回路部130は、アンテナ140から入力された変調された拡散信号を復調して、復調した拡散信号をプロセッサ部160及び測距部120に出力する。ここで、高周波回路部130は、拡散信号に含まれるデータ信号を、ベースバンド回路部150を介してプロセッサ部160に出力する。また、高周波回路部130は、拡散信号に含まれる測距信号を、ベースバンド回路部150が備える測距部120に出力する。
【0041】
ベースバンド回路部150は、情報信号をプロセッサ部160から取得して、取得した情報信号に拡散符号を乗算した拡散信号を高周波回路部130に出力する。また、ベースバンド回路部150は、拡散信号を高周波回路部130から取得して、取得した拡散信号を逆拡散して得られた情報信号をプロセッサ部160に出力する。なお、ベースバンド回路部150は、情報信号をメモリ部170に記憶させてもよい。
【0042】
また、ベースバンド回路部150は、測距部120を備える。測距部120は、測距信号を高周波回路部130に出力する。また、測距部120は、復調された測距信号を高周波回路部130から取得する。これにより、測距部120は、例えば、インパルス信号を用いるUWB−IR(Ultra WideBand−Impulse Radio)により、測距を実行することができる。なお、測距部120が実行する測距は、インパルス信号を用いるUWB−IRによる測距に限定されなくてよい。
【0043】
プロセッサ部160は、信号処理部111(図3を参照)を備える。プロセッサ部160が備える信号処理部111は、情報信号から拡散信号を生成し、生成した拡散信号を高周波回路部130にベースバンド回路部150を介して出力する。また、プロセッサ部160が備える信号処理部111は、復調された拡散信号を高周波回路部130からベースバンド回路部150を介して取得し、取得した復調された拡散信号から情報信号を生成する。これにより、プロセッサ部160は、インパルス信号を用いるUWB−IRにより、他の通信装置と通信することができる。なお、プロセッサ部160が実行する通信は、インパルス信号を用いるUWB−IRによる通信に限定されなくてよい。
【0044】
メモリ部170は、各種のデータを記憶する。例えば、メモリ部170は、プロセッサ部160が他の通信装置に送信する情報信号に基づくデータ、及び他の通信装置から受信した情報信号に基づくデータを記憶する。
【0045】
次に、通信装置の動作手順例を説明する。
図5は、第1実施形態における、第1通信装置及び第2通信装置の動作手順の例を示すフローチャートである。通信装置100−1(第1通信装置)の測距部120、及び通信装置100−2(第2通信装置)の測距部120は、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との離隔距離を測距する(ステップS1)。また、通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、離隔距離に基づいて、最適拡散レートを定める(ステップS2)。
【0046】
また、通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、拡散レートを最適拡散レートに更新する(ステップS3)。そして、通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、最適拡散レートに更新した拡散レートで、互いにデータを通信する(ステップS4)。
【0047】
さらに、通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、通信を継続するか否かを判定する。例えば、通信部110は、予め定められたタイムスケジュール、又はサーバ(不図示)から送信されたコマンド信号に基づいて、通信を継続するか否かを判定する。また、通信部110は、電源が供給されている限り通信を続けるとしてもよい(ステップS5)。通信を継続すると判定した場合(ステップS5−Yes)、通信部110及び測距部120は、ステップS1に移行する。一方、通信を継続しないと判定した場合(ステップS5−No)、通信部110及び測距部120は、処理を終了する。
【0048】
以上のように、通信装置100−1は、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との距離を測距する測距部120と、測距部120が測距した距離に応じて拡散レートを定め、拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、通信装置100−2と通信する通信部110と、を備える。
【0049】
また、通信方法は、通信装置における通信方法であって、測距部120が、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との距離を測距する過程と、通信部110が、測距部120が測距した距離に応じて拡散レートを定め、拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、通信装置100−2と通信する過程と、を有する。
【0050】
これにより、通信装置100−1は、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との距離が長くなるに従い、拡散レートを高くするので、平均放射電力及び尖頭電力のいずれも変化させることなく、処理利得を高くすることができる。また、通信装置100−1は、処理利得を高くすることにより、信号対雑音比を高くすることができる。また、通信装置100−1は、信号対雑音比を高くすることにより、通信距離を長くすることができる。また、通信装置100−1は、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との距離に応じて拡散レートを低くするので、平均放射電力及び尖頭電力のいずれも変化させることなく、スループットを高くすることができる。
【0051】
また、測距部120は、電波の強度(RSS)、電波が到来した時刻(TOA)、電波が異なる方向から到来した時刻の差(TDOA)、電波が到来した方向(AOA)、位置に応じて予め定められた電波の特徴量(位置指紋)と受信された電波の特徴量との照合結果、又は受信されるまでに電波がホップされた回数(ホップ数)に基づいて、離隔距離を測距する。
【0052】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。第2実施形態では、UWB−IRにおけるインパルス信号が通信装置のアンテナ間を往復した時間(RTT)を用いて、通信装置100−1が、電波が到来した時刻(TOA)により離隔距離を測距する場合について説明する。なお、通信装置100−1は、TOAのほか、例えば、RSS、TDOA、AOA、位置指紋、ホップ数、可視光、又は超音波により、離隔距離を測距してもよい。
【0053】
図6には、第2実施形態における、UWB−IRのインパルス信号の例が示されている。ここで、一例として、インパルス信号11(搬送波)の位相が、インパルス信号10及び12に対して180度反転されている場合が示されている。また、一例として、搬送波の周波数は、4[GHz]、パルス幅(pulse width)は、2[ns]、パルス繰返し周期(pulse repetition period)は、31.25[ns]である。ここで、変調方式には、二位相偏移変調(Binary Phase Shift Keying:BPSK)を用いたが、パルス位置変調などが用いられてもよい。
【0054】
図7には、第2実施形態における、拡散レートが3(約10.7[Mbps])である場合のパケットエラー率と通信距離との関係が、一例として示されている。例えば、通信距離が約10[m]を超えた場合には、パケットエラー率が1[%]を超えることが示されている。また、図8には、第2実施形態における、拡散レートが124(約258[kbps])である場合のパケットエラー率と通信距離との関係が、一例として示されている。例えば、通信距離が約40[m]を超えた場合には、パケットエラー率が1[%]を超えることが示されている。
【0055】
図7及び8に例示されたパケットエラー率と通信距離との関係に基づけば、通信部110(図2を参照)は、離隔距離が10[m]である場合、最適拡散レートを3と定め、拡散レートを最適拡散レート3に更新する。また、離隔距離が10〜40[m]である場合、最適拡散レートを124と定め、拡散レートを最適拡散レート124に更新する。なお、拡散レートの初期値は、離隔距離の初期値に基づいて、予め定められる。
【0056】
次に、通信装置の動作手順例を説明する。
図9は、第2実施形態における、第1通信装置及び第2通信装置の動作手順の例を示すフローチャートである。通信装置100−1(第1通信装置)の通信部110、及び通信装置100−2(第2通信装置)の通信部110は、拡散レートを拡散レートの初期値に定める(ステップSa1)。通信装置100−1の測距部120は、所定データをインパルス信号に乗せて、拡散レートの初期値で通信装置100−2に送信する(ステップSa2)。
【0057】
通信装置100−2の測距部120は、所定データをインパルス信号に乗せて、拡散レートの初期値で通信装置100−1に送信する(ステップSa3)。通信装置100−1の測距部120は、インパルス信号が往復した時間(RTT)を用いて、TOAにより、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との離隔距離を測距する(ステップSa4)。
【0058】
通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、通信を継続するか否かを判定する(ステップSa5)。通信を継続しないと判定した場合(ステップSa5−No)、通信部110及び測距部120は、ステップSa11に移行する。一方、通信を継続すると判定した場合(ステップSa5−Yes)、通信装置100−1の通信部110は、測距部120が測距した離隔距離に基づいて、最適拡散レートを定める(ステップSa7)。
【0059】
通信装置100−1の通信部110は、最適拡散レートをインパルス信号に乗せて、通信装置100−2の通信部110に送信する。ここで、インパルス信号には、最適拡散レート以外の所定データが、更に乗せられてもよい(ステップSa8)。
【0060】
そして、通信装置100−2の通信部110は、所定データをインパルス信号に乗せて、通信装置100−1の通信部110に送信する。この所定データには、通信装置100−1の通信部110が送信した最適拡散レートを、通信装置100−2の通信部110が正常に受信したことを示すデータが含まれていてもよい(ステップSa9)。さらに、通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、拡散レートを最適拡散レートに更新し、ステップSa4に移行する(ステップSa10)。
【0061】
ステップSa5において、通信を継続しないと判定した場合(ステップSa5−No)、通信装置100−1の通信部110は、通信終了を示すデータをインパルス信号に乗せて、通信装置100−2の通信部110に送信する(ステップSa11)。
【0062】
このように、RTTを用いて離隔距離を測距する場合、いずれかの通信装置100のみが離隔距離を測距すればよく、他方の通信装置100は、離隔距離を測距しなくてもよい。
【0063】
なお、通信装置100−2が送信のみを行い、通信装置100−1が受信のみを行う場合、通信装置100−1と通信装置100−2との時刻を同期させた上で、通信装置100−1の測距部120は、TOAにより離隔距離を測距してもよい。
また、通信装置100−2が送信のみを行い、通信装置100−1が受信のみを行う場合、通信装置100−1と通信装置100−2との時刻を同期させることなく、通信装置100−1の測距部120は、RSS又はAOAにより離隔距離を測距してもよい。
また、通信装置100−1が、第3構成例(図4を参照)を備える場合、通信装置100−1のプロセッサ部160は、測距部120の代わりに、離隔距離を算出してもよい。また、プロセッサ部160及び測距部120は、互いに協調して離隔距離を算出してもよい。また、プロセッサ部160は、算出した離隔距離をメモリ部170に記憶させてもよい。
【0064】
以上のように、通信部110は、インパルス信号を通信する。また、通信部110は、パルス位置変調によりインパルス信号を通信する。また、通信部110は、位相偏移変調によりインパルス信号を通信する。また、通信部110は、超広帯域インパルス無線方式に基づくインパルス信号を通信する。また、測距部120は、超広帯域インパルス無線方式に基づくインパルス信号が自装置と他の装置との間を往復した時間に基づいて、距離を測距する。
【0065】
また、通信装置100−1は、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との距離を測距する測距部120と、測距部120が測距した距離に応じて最適拡散レートを定め、最適拡散レートに応じた拡散符号により符号化された情報信号(拡散信号)に基づいて変調されたインパルス信号を、通信装置100−2と通信する通信部110と、を備える。
【0066】
また、通信方法は、通信装置における通信方法であって、通信装置100−1の測距部120が、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との距離を測距する過程と、通信装置100−1の通信部110が、通信装置100−1の測距部120が測距した距離に応じて最適拡散レートを定め、最適拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、通信装置100−2と通信する過程と、を有する。
【0067】
これにより、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との間をインパルス信号が往復した時間(RTT)を用いて、通信装置100−1のみが離隔距離を測距すればよいので、通信装置100−1は、通信装置100−1と通信装置100−2との時刻を同期させることなく、最適拡散レートを定めることができる。
【0068】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について図面を参照して詳細に説明する。第3実施形態では、通信装置100−1が、複数の他の通信装置と、時分割によって拡散レートを同調させて通信する場合について説明する。なお、第3実施形態では、第2実施形態と同様に、UWB−IRにおけるインパルス信号が通信装置のアンテナ間を往復した時間(RTT)を用いて、通信装置100−1が離隔距離を測距するものとする。
【0069】
通信装置100−1の通信部110は、通信装置100−1の測距部120が測距した離隔距離に応じて最適拡散レートを定め、最適拡散レートに応じた拡散符号により符号化された情報信号(拡散信号)に基づき変調されたインパルス信号を、通信装置100−2と拡散レートを同調させて通信する。
【0070】
次に、通信装置の動作手順例を説明する。
図10は、第3実施形態における、第1及び第2通信装置の動作手順の例を示すフローチャートである。通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、拡散レートを初期値R0に定める(ステップSb1)。通信装置100−1の測距部120は、所定データをインパルス信号に乗せて、拡散レートの初期値で通信装置100−2に送信する(ステップSb2)。
【0071】
通信装置100−2の測距部120は、所定データをインパルス信号に乗せて、拡散レートの初期値で通信装置100−1に送信する(ステップSb3)。通信装置100−1の測距部120は、インパルス信号が往復した時間(RTT)を用いて、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との離隔距離を測距する(ステップSb4)。
【0072】
通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、通信を継続するか否かを判定する(ステップSb5)。通信を継続しないと判定した場合(ステップSb5−No)、通信部110及び測距部120は、処理を終了する。一方、通信を継続すると判定した場合(ステップSb5−Yes)、通信装置100−1の通信部110は、通信回数を示すカウント値Nを1とする(ステップSb6)。
【0073】
通信装置100−1の通信部110は、測距部120が測距した離隔距離に基づいて、最適拡散レートRNを定める(ステップSb7)。通信装置100−1の通信部110は、最適拡散レートRNと、インパルス信号を次回に送信する時刻TNとをインパルス信号に乗せて、通信装置100−2の通信部110に送信する。ここで、インパルス信号には、これら以外の所定データが、更に乗せられてもよい。なお、インパルス信号を次回に送信する時刻TNが予め定められている場合、通信装置100−1の通信部110は、インパルス信号を次回に送信する時刻TNを送信しなくてもよい(ステップSb8)。
【0074】
通信装置100−2の通信部110は、所定データをインパルス信号に乗せて、通信装置100−1の通信部110に送信する。この所定データには、通信装置100−1の通信部110が送信した最適拡散レートRN及び時刻TNを、通信装置100−2の通信部110が正常に受信したことを示すデータが含まれていてもよい(ステップSb9)。
【0075】
通信装置100−1の測距部120は、インパルス信号が往復した時間(RTT)を用いて、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との離隔距離を測距する(ステップSb10)。
【0076】
通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、通信を継続するか否かを判定する(ステップSb11)。通信を継続しないと判定した場合(ステップSb11−No)、通信装置100−1の通信部110は、ステップSb19に移行する。一方、通信を継続すると判定した場合(ステップSb11−Yes)、通信装置100−1の通信部110は、通信回数を示すカウント値Nに、1を加算する(ステップSb12)。
【0077】
通信装置100−1の通信部110は、測距部120が測距した離隔距離に基づいて、最適拡散レートRNを定める(ステップSb13)。通信装置100−1の通信部110は、拡散レートを最適拡散レートRN−1に更新する(ステップSb14)。一方、通信装置100−2の通信部110は、通信装置100−1の通信部110がインパルス信号を送信する時刻TN−1前(直前)に、拡散レートを最適拡散レートRN−1に更新する(ステップSb15)。
【0078】
通信装置100−1の通信部110は、最適拡散レートRNと、インパルス信号を次回に送信する時刻TNとをインパルス信号に乗せて、通信装置100−2の通信部110に送信する(ステップSb16)。通信装置100−2の通信部110は、所定データをインパルス信号に乗せて、通信装置100−1の通信部110に送信する。この所定データには、通信装置100−1の通信部110が送信した最適拡散レートRN及び時刻TNを、通信装置100−2の通信部110が正常に受信したことを示すデータが含まれていてもよい(ステップSb17)。通信装置100−2の通信部110は、拡散レートを初期値R0に更新し、ステップSb10に移行する(ステップSb18)。
【0079】
ステップSb11において、通信を継続しないと判定した場合(ステップSb11−No)、通信装置100−1の通信部110は、通信終了を示すデータをインパルス信号に乗せて、通信装置100−2の通信部110に送信する(ステップSb19)。
【0080】
図11には、第3実施形態における、第1〜第3通信装置が示されている。ここで、一例として、通信装置100−2(第2通信装置)を、基地局とする。また、通信装置100−1(第1通信装置)及び100−3(第3通信装置)を、移動局とする。
【0081】
基地局は、移動局がインパルス信号を送信する前(直前)に、その移動局の最適拡散レートに、拡散レートを更新する(図10のステップSb15を参照)。例えば、基地局が拡散レートを更新する際に必要な遷移時間(処理時間、安定化のための待機時間などを含む)を0.5[ms]と、移動局と基地局との間で送受信される、複数のインパルス信号から構成される1パケットの長さを3[ms]と、基地局が移動局からパケットを受信してから、その基地局がパケットを返信するまでの処理時間を2[ms]とする。この場合、ある移動局と通信するために、基地局が拡散レートをその移動局の最適拡散レートRNに設定している総時間は、9[ms]である。
【0082】
ここで、ある移動局と基地局とが1パケットを毎秒1回通信するとした場合、基地局がその移動局と通信するために、拡散レートをその移動局の最適拡散レートに設定している総時間9[ms]は、1秒間に対して、9/1000程度の割合である。それ以外の時間において、基地局が拡散レートを初期値R0に定めておくようにすれば、新たな移動局が、基地局と通信可能な領域内に移動してきた場合でも、基地局は、その新たな移動局が送信したインパルス信号を、高確率(991/1000)で受信することできる。
【0083】
基地局は、さらに多くの移動局と通信してもよい。図12には、第3実施形態における、第1〜第4通信装置が示されている。ここで、一例として、通信装置100−2(第2通信装置)を、基地局とする。また、通信装置100−1(第1通信装置)、100−3(第3通信装置)、及び100−4(第4通信装置)を、移動局とする。また、各移動局の拡散レートの初期値は、初期値R0に設定されているものとする。また、拡散レートの初期値R0は、システムにおいて採りうる最適拡散レートRNのダイナミックレンジの最大値、又は最大値に近い値に定められているものとする。これにより、基地局は、広範囲に存在する移動局と通信することができる。
【0084】
図12において、基地局の位置を中心とする円形状の領域A、領域B、及び領域Cを設定する。一例として、領域Aの半径は、10[m]とする。また、領域Bの半径は、40[m]とする。領域Cの半径は、100[m]とする。また、一例として、通信装置100−1は、領域Aに位置しているとする。また、通信装置100−3は、領域Bに位置しているとする。また、通信装置100−4は、領域Cに位置しているとする。
【0085】
例えば、基地局が通信装置100−1(移動局)と通信する場合、基地局及び通信装置100−1は、領域Aの半径10[m]に応じて、拡散レート3で通信する。同様に、基地局が通信装置100−3(移動局)と通信する場合、基地局及び通信装置100−3は、領域Bの半径40[m]に応じて、拡散レート124で通信する。同様に、基地局が通信装置100−4(移動局)と通信する場合、基地局及び通信装置100−4は、領域Bの半径40[m]に応じて、拡散レート2500で通信する。
【0086】
以上のように、通信装置100は、自装置と他の装置との間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置と他の装置との距離を測距する測距部120と、測距部120が測距した距離に応じて最適拡散レートを定め、最適拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、他の装置と拡散レートを同調させて通信する通信部110と、を備える。
【0087】
また、通信方法は、通信装置における通信方法であって、測距部120が、自装置と他の装置との間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置と他の装置との距離を測距する過程と、通信部110が、測距部120が測距した距離に応じて最適拡散レートを定め、最適拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、他の装置と拡散レートを同調させて通信する過程と、を有する。
【0088】
これにより、通信装置(基地局)は、他の通信装置(移動局)と拡散レートを同調させて通信するので、複数の他の通信装置(移動局)と並列に通信することができる。
【0089】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0090】
例えば、通信装置は、輻輳を制御するために、キャリアセンスを実行してもよい。
【0091】
また、例えば、通信装置は、複数の無線チャンネルを有していてもよい。
【0092】
また、例えば、基地局及び移動局は、自装置を識別する識別情報をインパルス信号に乗せて、互いに通信してもよい。これにより、基地局及び移動局は、自装置を他の通信装置に識別させることができる。また、基地局及び移動局は、他の通信装置を識別することができる。
【0093】
なお、以上に説明した通信装置を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
10…インパルス信号、11…インパルス信号、12…インパルス信号、20…境界、21…境界、22…境界、100…通信装置、110…通信部、111…信号処理部、120…測距部、121…測距処理部、130…高周波回路部、140…アンテナ、150…ベースバンド回路部、160…プロセッサ部、170…メモリ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信における通信装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全地球測位システム(Global Positioning System:GPS)、超広帯域無線(Ultra Wide Band:UWB)、又は無線LAN(Local Area Network)を用いて、無線通信により位置を推定する通信装置が開示されている(特許文献1、非特許文献1及び2参照)。
【0003】
また、移動体通信システムでは、通信装置間の距離に応じて信号の伝搬損失が変動するため、安定した通信品質を維持するには、伝搬損失に応じて変動する受信信号強度を補償する必要がある。ここで、符号分割多元接続(Code Division Multiple Access:CDMA)方式において、アップリンクの送信電力を調整することにより、受信信号強度を補償する適応電力制御方法が、非特許文献3に開示されている。また、直交周波数分割多元アクセス(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:OFDMA)方式において、変調方式を制御することにより、受信信号強度を補償する適応変調方法が、非特許文献4に開示されている。
【0004】
また、電波法等により規定された平均放射電力及びピーク放射電力の上限値を厳守しながら、インパルス信号の繰り返し周波数を減少させつつ、インパルス信号の振幅を増大させることで、受信信号強度を復調可能な水準に保つ通信装置が、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−101254号公報
【特許文献2】特開2007−142668号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ビー、ダブリュー、パーキンソン他編「グローバル、ポジショニング、システム:セオリー、アンド、アプリケーションズ」AIAA、1996年1月15日(B. W. Parkinson, et. al., “Global Positioning System: Theory & Applications”, AIAA, January 15, 1996)
【非特許文献2】ジェイ、ディー、テイラー編「ウルトラワイドバンド、レーダ、テクノロジー」CRC、2000年9月21日(J. D. Taylor, “Ultra-wideband Radar Technology”, CRC, September 21, 2000)
【非特許文献3】アイトリプルイー、トランザクションズ、オン、コミュニケーションズ、第41巻、第11号、第1626頁から1634頁、1993年(IEEE Transactions on Communications, Vol 41, No. 11, pp. 1626-1634, 1993)
【非特許文献4】アイトリプルイー、トランザクションズ、オン、コミュニケーションズ、第43巻、第7号、第2223頁から2230頁、1995年(IEEE Transactions on Communications, Vol 43, No. 7, pp. 2223-2230, 1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、インパルス信号の振幅(尖頭電力)を増大させた場合、通信装置は、電波法等により規定された平均放射電力の上限値を満たすため、インパルス信号の繰り返し周波数を減少させなければならない。しかしながら、通信装置が出力可能である尖頭電力には物理的に上限があるため、通信装置は、通信品質として、例えば、信号対雑音比(Signal to Noise Ratio:SNR)を限定的にしか高くすることができなかった。
【0008】
本発明は、前記の諸点に鑑みてなされたものであり、平均放射電力及び尖頭電力のいずれも変化させることなく、通信品質として、例えば、信号対雑音比を高くすることができる通信装置及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの距離を測距する測距部と、前記測距部が測距した前記距離に応じて拡散レートを定め、前記拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する通信部と、を備えることを特徴とする通信装置である。
【0010】
また、本発明は、前記測距部が、電波の強度、電波が到来した時刻、電波が異なる方向から到来した時刻の差、電波が到来した方向、位置に応じて予め定められた電波の特徴量と受信された電波の特徴量との照合結果、又は受信されるまでに電波がホップされた回数に基づいて、前記距離を測距することを特徴とする通信装置である。
【0011】
また、本発明は、前記通信部が、インパルス信号を通信することを特徴とする通信装置である。
【0012】
また、本発明は、前記通信部が、パルス位置変調により前記インパルス信号を通信することを特徴とする通信装置である。
【0013】
また、本発明は、前記通信部が、位相偏移変調により前記インパルス信号を通信することを特徴とする通信装置である。
【0014】
また、本発明は、前記通信部が、超広帯域インパルス無線方式に基づく前記インパルス信号を通信することを特徴とする通信装置である。
【0015】
また、本発明は、前記測距部が、前記超広帯域インパルス無線方式に基づくインパルス信号が自装置と前記他の装置との間を往復した時間に基づいて、前記距離を測距することを特徴とする通信装置である。
【0016】
また、本発明は、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する測距部と、前記測距部が測距した前記距離に応じて第1の拡散レートを定め、前記第1の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する通信部と、を備えることを特徴とする通信装置である。
【0017】
また、本発明は、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する測距部と、前記測距部が測距した前記距離に応じて第2の拡散レートを定め、前記第2の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と拡散レートを同調させて通信する通信部と、を備えることを特徴とする通信装置である。
【0018】
また、本発明は、通信装置における通信方法であって、測距部が、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの距離を測距する過程と、通信部が、前記測距部が測距した前記距離に応じて拡散レートを定め、前記拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する過程と、を有することを特徴とする通信方法である。
【0019】
また、本発明は、通信装置における通信方法であって、測距部が、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する過程と、通信部が、前記測距部が測距した前記距離に応じて第1の拡散レートを定め、前記第1の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する過程と、を有することを特徴とする通信方法である。
【0020】
また、本発明は、通信装置における通信方法であって、測距部が、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する過程と、通信部が、前記測距部が測距した前記距離に応じて第2の拡散レートを定め、前記第2の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と拡散レートを同調させて通信する過程と、を有することを特徴とする通信方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、通信装置は、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの距離に応じて拡散レートを高くするので、平均放射電力及び尖頭電力のいずれも変化させることなく、通信品質として、例えば、信号対雑音比を高くすることができる。また、通信装置は、信号対雑音比を高くすることにより、通信距離を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態における、第1通信装置及び第2通信装置を示す図である。
【図2】第1実施形態における、通信装置の第1構成例を示す図である。
【図3】第1実施形態における、通信装置の第2構成例を示す図である。
【図4】第1実施形態における、通信装置の第3構成例を示す図である。
【図5】第1実施形態における、通信装置及び第2通信装置の動作手順の例を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態における、UWB−IRのインパルス信号の例を示す図である。
【図7】第2実施形態における、拡散レートが3である場合のパケットエラー率と通信距離との関係が例示された図である。
【図8】第2実施形態における、拡散レートが124である場合のパケットエラー率と通信距離との関係が例示された図である。
【図9】第2実施形態における、第1通信装置及び第2通信装置の動作手順の例を示すフローチャートである。
【図10】第3実施形態における、第1及び第2通信装置の動作手順の例を示すフローチャートである。
【図11】第3実施形態における、第1〜第3通信装置を示す図である。
【図12】第3実施形態における、第1〜第4通信装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1には、第1実施形態における、第1通信装置及び第2通信装置が示されている。測位測距システムは、通信装置100−1(第1通信装置)と、通信装置100−2(第2通信装置)とを備える。
【0024】
通信装置100−1は、アンテナ140−1を備える。同様に、通信装置100−2は、アンテナ140−2を備える。通信装置100−1は、自装置のアンテナと他の装置(図1では、通信装置100−2)のアンテナとの距離(以下、「離隔距離」という)を測距し、離隔距離に基づいて、拡散レートを定める。また、通信装置100−1は、拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、通信装置100−2と無線通信する。ここで、拡散レートとは、拡散符号のチップレートを信号のビットレートで除算した値である。また、拡散レートが高いほど、無線通信における処理利得は大きくなり、信号対雑音比が高くなる。また、拡散レートが低いほど、無線通信におけるスループットは高くなる。
【0025】
次に、通信装置の構成例を説明する。
図2には、第1実施形態における、通信装置の第1構成例が示されている。第1構成例において、通信装置100は、通信部110と、測距部120とを備える。
【0026】
測距部120は、アンテナ140bを備える。アンテナ140bは、アンテナ140(図1を参照)に含まれるアンテナである。また、測距部120は、自装置のアンテナ140bと他の装置のアンテナ140bとの距離である離隔距離を、繰り返し測距する。また、測距部120は、測距した離隔距離を通信部110に出力する。ここで、測距部120は、無線通信により測距を実行する。例えば、測距部120は、アンテナ140bに受信された電波の強度(Received Signal Strength: RSS)、アンテナ140bに受信された電波が到来した時刻(Time of Arrival: TOA)、アンテナ140bに受信された電波が異なる方向から到来した時刻の差(Time Difference of Arrival: TDOA)、アンテナ140bに受信された電波が到来した方向(Angle of Arrival: AOA)、位置に応じて予め定められた電波の特徴量(位置指紋)と受信された電波の特徴量との照合結果、又は受信されるまでに電波がホップされた回数(ホップ数)に基づいて測距する。また、例えば、測距部120は、電波の代わりに、可視光又は超音波を用いて測距してもよい。なお、測距部120が離隔距離を測距する方法は、これらに限らなくてよい。
【0027】
通信部110は、アンテナ140aを備える。アンテナ140aは、アンテナ140(図1を参照)に含まれるアンテナである。通信部110は、測距部120が測距した離隔距離に応じて、最適な拡散レート(以下、「最適拡散レート」という)を定める。ここで、通信部110は、離隔距離が長くなるに従い、拡散レートの初期値よりも高くした拡散レートを最適拡散レートと定める。また、通信部110は、離隔距離が短くなるに従い、拡散レートの初期値よりも低くした拡散レートを最適拡散レートと定める。
【0028】
また、通信部110は、他の装置に送信する信号を変調する際、その信号に対して直接拡散を実行する。ここで、通信部110は、他の装置に送信する信号に拡散符号を乗算することで、スペクトルが広帯域に広がった拡散信号を生成する。生成した拡散信号には、データ信号と、離隔距離を測距するための測距信号とが含まれていてもよい。
【0029】
通信部110は、拡散レートを最適拡散レートに更新する。また、通信部110は、生成した拡散信号を、更新した拡散レートで通信装置100−2にアンテナ140aを介して送信する。なお、通信部110は、送信のみならず、通信装置100−2から拡散信号を受信してもよい。
【0030】
図3には、第1実施形態における、通信装置の第2構成例が示されている。第2構成例において、通信装置100は、通信部110と、測距部120とを備える。また、通信部110は、信号処理部111と、高周波回路部130とを備える。また、測距部120は、測距処理部121と、高周波回路部130とを備える。
【0031】
このように、第2構成例では、通信部110及び測距部120が、高周波回路部130を共有する。これにより、第2構成例における通信装置100は、第1構成例(図2を参照)と比較して、通信装置100を低コスト及び小型にすることができる。
【0032】
アンテナ140は、他の通信装置から無線通信によって拡散信号を受信し、受信した拡散信号を高周波回路部130に出力する。また、アンテナ140には、変調された拡散信号が高周波回路部130から入力される。アンテナ140は、高周波回路部130から入力された変調された拡散信号を、他の通信装置に無線通信により送信する。
【0033】
高周波回路部130には、アンテナ140が無線通信により他の測位装置から受信した変調された拡散信号が、アンテナ140から入力される。高周波回路部130は、アンテナ140から入力された変調された拡散信号を復調して、復調した拡散信号を信号処理部111及び測距処理部121に出力する。ここで、高周波回路部130は、拡散信号に含まれるデータ信号を、信号処理部111に出力する。また、高周波回路部130は、拡散信号に含まれる測距信号を、測距処理部121に出力する。
【0034】
復調した拡散信号を信号処理部111及び測距処理部121に出力する場合、高周波回路部130は、復調した拡散信号に含まれるデータ信号と測距信号とを、時分割によって分配する。この場合、高周波回路部130は、PINダイオード(p−intrinsic−n Diode)、FET(Field Effect Transistor)などのスイッチ素子を備える。また、高周波回路部130は、復調した拡散信号に含まれるデータ信号と測距信号とを、周波数分割によって分配してもよい。この場合、高周波回路部130は、誘電体フィルタ、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタなどのフィルタ素子を備える。
【0035】
また、高周波回路部130には、信号処理部111からデータ信号が入力される。また、高周波回路部130には、測距処理部121から測距信号が入力される。高周波回路部130は、信号処理部111及び測距処理部121から入力された各信号を変調(直接拡散)して、アンテナ140に出力する。
【0036】
測距処理部121は、離隔距離を測距するための測距信号を、高周波回路部130に出力する。また、測距処理部121には、高周波回路部130が復調した測距信号が、高周波回路部130から入力される。ここで、測距処理部121は、自装置と他の測位装置との間で、測距信号を繰り返し通信する(単方向通信もしくは双方向通信)。これにより、測距処理部121は、離隔距離の変化を検出することができる。
【0037】
測距処理部121は、高周波回路部130から入力された復調した測距信号に基づいて、離隔距離を測距する。ここで、測距処理部121は、例えば、高周波回路部130から入力された復調した測距信号の強度(RSS)に基づいて、離隔距離を測距する。また、測距処理部121は、測距した離隔距離を信号処理部111に出力する。
【0038】
信号処理部111は、離隔距離に応じて定めた拡散レートで、データ信号を高周波回路部130に出力する。ここで、信号処理部111は、離隔距離が長くなるに従い、拡散レートを高くする。また、信号処理部111は、離隔距離が短くなるに従い、拡散レートを低くする。また、信号処理部111には、高周波回路部130が復調したデータ信号が、高周波回路部130から入力される。信号処理部111は、入力されたデータ信号に基づいて、所定の処理を実行する。
【0039】
図4には、第1実施形態における、通信装置の第3構成例が示されている。第3構成例において、通信装置100は、高周波回路部130と、アンテナ140と、ベースバンド回路部150と、プロセッサ部160と、メモリ部170とを備える。
【0040】
アンテナ140は、第2構成例(図3を参照)と同様である。高周波回路部130には、アンテナ140が無線通信により他の測位装置から受信した変調された拡散信号が、アンテナ140から入力される。また、高周波回路部130は、アンテナ140から入力された変調された拡散信号を復調して、復調した拡散信号をプロセッサ部160及び測距部120に出力する。ここで、高周波回路部130は、拡散信号に含まれるデータ信号を、ベースバンド回路部150を介してプロセッサ部160に出力する。また、高周波回路部130は、拡散信号に含まれる測距信号を、ベースバンド回路部150が備える測距部120に出力する。
【0041】
ベースバンド回路部150は、情報信号をプロセッサ部160から取得して、取得した情報信号に拡散符号を乗算した拡散信号を高周波回路部130に出力する。また、ベースバンド回路部150は、拡散信号を高周波回路部130から取得して、取得した拡散信号を逆拡散して得られた情報信号をプロセッサ部160に出力する。なお、ベースバンド回路部150は、情報信号をメモリ部170に記憶させてもよい。
【0042】
また、ベースバンド回路部150は、測距部120を備える。測距部120は、測距信号を高周波回路部130に出力する。また、測距部120は、復調された測距信号を高周波回路部130から取得する。これにより、測距部120は、例えば、インパルス信号を用いるUWB−IR(Ultra WideBand−Impulse Radio)により、測距を実行することができる。なお、測距部120が実行する測距は、インパルス信号を用いるUWB−IRによる測距に限定されなくてよい。
【0043】
プロセッサ部160は、信号処理部111(図3を参照)を備える。プロセッサ部160が備える信号処理部111は、情報信号から拡散信号を生成し、生成した拡散信号を高周波回路部130にベースバンド回路部150を介して出力する。また、プロセッサ部160が備える信号処理部111は、復調された拡散信号を高周波回路部130からベースバンド回路部150を介して取得し、取得した復調された拡散信号から情報信号を生成する。これにより、プロセッサ部160は、インパルス信号を用いるUWB−IRにより、他の通信装置と通信することができる。なお、プロセッサ部160が実行する通信は、インパルス信号を用いるUWB−IRによる通信に限定されなくてよい。
【0044】
メモリ部170は、各種のデータを記憶する。例えば、メモリ部170は、プロセッサ部160が他の通信装置に送信する情報信号に基づくデータ、及び他の通信装置から受信した情報信号に基づくデータを記憶する。
【0045】
次に、通信装置の動作手順例を説明する。
図5は、第1実施形態における、第1通信装置及び第2通信装置の動作手順の例を示すフローチャートである。通信装置100−1(第1通信装置)の測距部120、及び通信装置100−2(第2通信装置)の測距部120は、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との離隔距離を測距する(ステップS1)。また、通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、離隔距離に基づいて、最適拡散レートを定める(ステップS2)。
【0046】
また、通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、拡散レートを最適拡散レートに更新する(ステップS3)。そして、通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、最適拡散レートに更新した拡散レートで、互いにデータを通信する(ステップS4)。
【0047】
さらに、通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、通信を継続するか否かを判定する。例えば、通信部110は、予め定められたタイムスケジュール、又はサーバ(不図示)から送信されたコマンド信号に基づいて、通信を継続するか否かを判定する。また、通信部110は、電源が供給されている限り通信を続けるとしてもよい(ステップS5)。通信を継続すると判定した場合(ステップS5−Yes)、通信部110及び測距部120は、ステップS1に移行する。一方、通信を継続しないと判定した場合(ステップS5−No)、通信部110及び測距部120は、処理を終了する。
【0048】
以上のように、通信装置100−1は、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との距離を測距する測距部120と、測距部120が測距した距離に応じて拡散レートを定め、拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、通信装置100−2と通信する通信部110と、を備える。
【0049】
また、通信方法は、通信装置における通信方法であって、測距部120が、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との距離を測距する過程と、通信部110が、測距部120が測距した距離に応じて拡散レートを定め、拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、通信装置100−2と通信する過程と、を有する。
【0050】
これにより、通信装置100−1は、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との距離が長くなるに従い、拡散レートを高くするので、平均放射電力及び尖頭電力のいずれも変化させることなく、処理利得を高くすることができる。また、通信装置100−1は、処理利得を高くすることにより、信号対雑音比を高くすることができる。また、通信装置100−1は、信号対雑音比を高くすることにより、通信距離を長くすることができる。また、通信装置100−1は、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との距離に応じて拡散レートを低くするので、平均放射電力及び尖頭電力のいずれも変化させることなく、スループットを高くすることができる。
【0051】
また、測距部120は、電波の強度(RSS)、電波が到来した時刻(TOA)、電波が異なる方向から到来した時刻の差(TDOA)、電波が到来した方向(AOA)、位置に応じて予め定められた電波の特徴量(位置指紋)と受信された電波の特徴量との照合結果、又は受信されるまでに電波がホップされた回数(ホップ数)に基づいて、離隔距離を測距する。
【0052】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。第2実施形態では、UWB−IRにおけるインパルス信号が通信装置のアンテナ間を往復した時間(RTT)を用いて、通信装置100−1が、電波が到来した時刻(TOA)により離隔距離を測距する場合について説明する。なお、通信装置100−1は、TOAのほか、例えば、RSS、TDOA、AOA、位置指紋、ホップ数、可視光、又は超音波により、離隔距離を測距してもよい。
【0053】
図6には、第2実施形態における、UWB−IRのインパルス信号の例が示されている。ここで、一例として、インパルス信号11(搬送波)の位相が、インパルス信号10及び12に対して180度反転されている場合が示されている。また、一例として、搬送波の周波数は、4[GHz]、パルス幅(pulse width)は、2[ns]、パルス繰返し周期(pulse repetition period)は、31.25[ns]である。ここで、変調方式には、二位相偏移変調(Binary Phase Shift Keying:BPSK)を用いたが、パルス位置変調などが用いられてもよい。
【0054】
図7には、第2実施形態における、拡散レートが3(約10.7[Mbps])である場合のパケットエラー率と通信距離との関係が、一例として示されている。例えば、通信距離が約10[m]を超えた場合には、パケットエラー率が1[%]を超えることが示されている。また、図8には、第2実施形態における、拡散レートが124(約258[kbps])である場合のパケットエラー率と通信距離との関係が、一例として示されている。例えば、通信距離が約40[m]を超えた場合には、パケットエラー率が1[%]を超えることが示されている。
【0055】
図7及び8に例示されたパケットエラー率と通信距離との関係に基づけば、通信部110(図2を参照)は、離隔距離が10[m]である場合、最適拡散レートを3と定め、拡散レートを最適拡散レート3に更新する。また、離隔距離が10〜40[m]である場合、最適拡散レートを124と定め、拡散レートを最適拡散レート124に更新する。なお、拡散レートの初期値は、離隔距離の初期値に基づいて、予め定められる。
【0056】
次に、通信装置の動作手順例を説明する。
図9は、第2実施形態における、第1通信装置及び第2通信装置の動作手順の例を示すフローチャートである。通信装置100−1(第1通信装置)の通信部110、及び通信装置100−2(第2通信装置)の通信部110は、拡散レートを拡散レートの初期値に定める(ステップSa1)。通信装置100−1の測距部120は、所定データをインパルス信号に乗せて、拡散レートの初期値で通信装置100−2に送信する(ステップSa2)。
【0057】
通信装置100−2の測距部120は、所定データをインパルス信号に乗せて、拡散レートの初期値で通信装置100−1に送信する(ステップSa3)。通信装置100−1の測距部120は、インパルス信号が往復した時間(RTT)を用いて、TOAにより、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との離隔距離を測距する(ステップSa4)。
【0058】
通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、通信を継続するか否かを判定する(ステップSa5)。通信を継続しないと判定した場合(ステップSa5−No)、通信部110及び測距部120は、ステップSa11に移行する。一方、通信を継続すると判定した場合(ステップSa5−Yes)、通信装置100−1の通信部110は、測距部120が測距した離隔距離に基づいて、最適拡散レートを定める(ステップSa7)。
【0059】
通信装置100−1の通信部110は、最適拡散レートをインパルス信号に乗せて、通信装置100−2の通信部110に送信する。ここで、インパルス信号には、最適拡散レート以外の所定データが、更に乗せられてもよい(ステップSa8)。
【0060】
そして、通信装置100−2の通信部110は、所定データをインパルス信号に乗せて、通信装置100−1の通信部110に送信する。この所定データには、通信装置100−1の通信部110が送信した最適拡散レートを、通信装置100−2の通信部110が正常に受信したことを示すデータが含まれていてもよい(ステップSa9)。さらに、通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、拡散レートを最適拡散レートに更新し、ステップSa4に移行する(ステップSa10)。
【0061】
ステップSa5において、通信を継続しないと判定した場合(ステップSa5−No)、通信装置100−1の通信部110は、通信終了を示すデータをインパルス信号に乗せて、通信装置100−2の通信部110に送信する(ステップSa11)。
【0062】
このように、RTTを用いて離隔距離を測距する場合、いずれかの通信装置100のみが離隔距離を測距すればよく、他方の通信装置100は、離隔距離を測距しなくてもよい。
【0063】
なお、通信装置100−2が送信のみを行い、通信装置100−1が受信のみを行う場合、通信装置100−1と通信装置100−2との時刻を同期させた上で、通信装置100−1の測距部120は、TOAにより離隔距離を測距してもよい。
また、通信装置100−2が送信のみを行い、通信装置100−1が受信のみを行う場合、通信装置100−1と通信装置100−2との時刻を同期させることなく、通信装置100−1の測距部120は、RSS又はAOAにより離隔距離を測距してもよい。
また、通信装置100−1が、第3構成例(図4を参照)を備える場合、通信装置100−1のプロセッサ部160は、測距部120の代わりに、離隔距離を算出してもよい。また、プロセッサ部160及び測距部120は、互いに協調して離隔距離を算出してもよい。また、プロセッサ部160は、算出した離隔距離をメモリ部170に記憶させてもよい。
【0064】
以上のように、通信部110は、インパルス信号を通信する。また、通信部110は、パルス位置変調によりインパルス信号を通信する。また、通信部110は、位相偏移変調によりインパルス信号を通信する。また、通信部110は、超広帯域インパルス無線方式に基づくインパルス信号を通信する。また、測距部120は、超広帯域インパルス無線方式に基づくインパルス信号が自装置と他の装置との間を往復した時間に基づいて、距離を測距する。
【0065】
また、通信装置100−1は、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との距離を測距する測距部120と、測距部120が測距した距離に応じて最適拡散レートを定め、最適拡散レートに応じた拡散符号により符号化された情報信号(拡散信号)に基づいて変調されたインパルス信号を、通信装置100−2と通信する通信部110と、を備える。
【0066】
また、通信方法は、通信装置における通信方法であって、通信装置100−1の測距部120が、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との距離を測距する過程と、通信装置100−1の通信部110が、通信装置100−1の測距部120が測距した距離に応じて最適拡散レートを定め、最適拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、通信装置100−2と通信する過程と、を有する。
【0067】
これにより、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との間をインパルス信号が往復した時間(RTT)を用いて、通信装置100−1のみが離隔距離を測距すればよいので、通信装置100−1は、通信装置100−1と通信装置100−2との時刻を同期させることなく、最適拡散レートを定めることができる。
【0068】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について図面を参照して詳細に説明する。第3実施形態では、通信装置100−1が、複数の他の通信装置と、時分割によって拡散レートを同調させて通信する場合について説明する。なお、第3実施形態では、第2実施形態と同様に、UWB−IRにおけるインパルス信号が通信装置のアンテナ間を往復した時間(RTT)を用いて、通信装置100−1が離隔距離を測距するものとする。
【0069】
通信装置100−1の通信部110は、通信装置100−1の測距部120が測距した離隔距離に応じて最適拡散レートを定め、最適拡散レートに応じた拡散符号により符号化された情報信号(拡散信号)に基づき変調されたインパルス信号を、通信装置100−2と拡散レートを同調させて通信する。
【0070】
次に、通信装置の動作手順例を説明する。
図10は、第3実施形態における、第1及び第2通信装置の動作手順の例を示すフローチャートである。通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、拡散レートを初期値R0に定める(ステップSb1)。通信装置100−1の測距部120は、所定データをインパルス信号に乗せて、拡散レートの初期値で通信装置100−2に送信する(ステップSb2)。
【0071】
通信装置100−2の測距部120は、所定データをインパルス信号に乗せて、拡散レートの初期値で通信装置100−1に送信する(ステップSb3)。通信装置100−1の測距部120は、インパルス信号が往復した時間(RTT)を用いて、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との離隔距離を測距する(ステップSb4)。
【0072】
通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、通信を継続するか否かを判定する(ステップSb5)。通信を継続しないと判定した場合(ステップSb5−No)、通信部110及び測距部120は、処理を終了する。一方、通信を継続すると判定した場合(ステップSb5−Yes)、通信装置100−1の通信部110は、通信回数を示すカウント値Nを1とする(ステップSb6)。
【0073】
通信装置100−1の通信部110は、測距部120が測距した離隔距離に基づいて、最適拡散レートRNを定める(ステップSb7)。通信装置100−1の通信部110は、最適拡散レートRNと、インパルス信号を次回に送信する時刻TNとをインパルス信号に乗せて、通信装置100−2の通信部110に送信する。ここで、インパルス信号には、これら以外の所定データが、更に乗せられてもよい。なお、インパルス信号を次回に送信する時刻TNが予め定められている場合、通信装置100−1の通信部110は、インパルス信号を次回に送信する時刻TNを送信しなくてもよい(ステップSb8)。
【0074】
通信装置100−2の通信部110は、所定データをインパルス信号に乗せて、通信装置100−1の通信部110に送信する。この所定データには、通信装置100−1の通信部110が送信した最適拡散レートRN及び時刻TNを、通信装置100−2の通信部110が正常に受信したことを示すデータが含まれていてもよい(ステップSb9)。
【0075】
通信装置100−1の測距部120は、インパルス信号が往復した時間(RTT)を用いて、通信装置100−1のアンテナ140と通信装置100−2のアンテナ140との離隔距離を測距する(ステップSb10)。
【0076】
通信装置100−1の通信部110、及び通信装置100−2の通信部110は、通信を継続するか否かを判定する(ステップSb11)。通信を継続しないと判定した場合(ステップSb11−No)、通信装置100−1の通信部110は、ステップSb19に移行する。一方、通信を継続すると判定した場合(ステップSb11−Yes)、通信装置100−1の通信部110は、通信回数を示すカウント値Nに、1を加算する(ステップSb12)。
【0077】
通信装置100−1の通信部110は、測距部120が測距した離隔距離に基づいて、最適拡散レートRNを定める(ステップSb13)。通信装置100−1の通信部110は、拡散レートを最適拡散レートRN−1に更新する(ステップSb14)。一方、通信装置100−2の通信部110は、通信装置100−1の通信部110がインパルス信号を送信する時刻TN−1前(直前)に、拡散レートを最適拡散レートRN−1に更新する(ステップSb15)。
【0078】
通信装置100−1の通信部110は、最適拡散レートRNと、インパルス信号を次回に送信する時刻TNとをインパルス信号に乗せて、通信装置100−2の通信部110に送信する(ステップSb16)。通信装置100−2の通信部110は、所定データをインパルス信号に乗せて、通信装置100−1の通信部110に送信する。この所定データには、通信装置100−1の通信部110が送信した最適拡散レートRN及び時刻TNを、通信装置100−2の通信部110が正常に受信したことを示すデータが含まれていてもよい(ステップSb17)。通信装置100−2の通信部110は、拡散レートを初期値R0に更新し、ステップSb10に移行する(ステップSb18)。
【0079】
ステップSb11において、通信を継続しないと判定した場合(ステップSb11−No)、通信装置100−1の通信部110は、通信終了を示すデータをインパルス信号に乗せて、通信装置100−2の通信部110に送信する(ステップSb19)。
【0080】
図11には、第3実施形態における、第1〜第3通信装置が示されている。ここで、一例として、通信装置100−2(第2通信装置)を、基地局とする。また、通信装置100−1(第1通信装置)及び100−3(第3通信装置)を、移動局とする。
【0081】
基地局は、移動局がインパルス信号を送信する前(直前)に、その移動局の最適拡散レートに、拡散レートを更新する(図10のステップSb15を参照)。例えば、基地局が拡散レートを更新する際に必要な遷移時間(処理時間、安定化のための待機時間などを含む)を0.5[ms]と、移動局と基地局との間で送受信される、複数のインパルス信号から構成される1パケットの長さを3[ms]と、基地局が移動局からパケットを受信してから、その基地局がパケットを返信するまでの処理時間を2[ms]とする。この場合、ある移動局と通信するために、基地局が拡散レートをその移動局の最適拡散レートRNに設定している総時間は、9[ms]である。
【0082】
ここで、ある移動局と基地局とが1パケットを毎秒1回通信するとした場合、基地局がその移動局と通信するために、拡散レートをその移動局の最適拡散レートに設定している総時間9[ms]は、1秒間に対して、9/1000程度の割合である。それ以外の時間において、基地局が拡散レートを初期値R0に定めておくようにすれば、新たな移動局が、基地局と通信可能な領域内に移動してきた場合でも、基地局は、その新たな移動局が送信したインパルス信号を、高確率(991/1000)で受信することできる。
【0083】
基地局は、さらに多くの移動局と通信してもよい。図12には、第3実施形態における、第1〜第4通信装置が示されている。ここで、一例として、通信装置100−2(第2通信装置)を、基地局とする。また、通信装置100−1(第1通信装置)、100−3(第3通信装置)、及び100−4(第4通信装置)を、移動局とする。また、各移動局の拡散レートの初期値は、初期値R0に設定されているものとする。また、拡散レートの初期値R0は、システムにおいて採りうる最適拡散レートRNのダイナミックレンジの最大値、又は最大値に近い値に定められているものとする。これにより、基地局は、広範囲に存在する移動局と通信することができる。
【0084】
図12において、基地局の位置を中心とする円形状の領域A、領域B、及び領域Cを設定する。一例として、領域Aの半径は、10[m]とする。また、領域Bの半径は、40[m]とする。領域Cの半径は、100[m]とする。また、一例として、通信装置100−1は、領域Aに位置しているとする。また、通信装置100−3は、領域Bに位置しているとする。また、通信装置100−4は、領域Cに位置しているとする。
【0085】
例えば、基地局が通信装置100−1(移動局)と通信する場合、基地局及び通信装置100−1は、領域Aの半径10[m]に応じて、拡散レート3で通信する。同様に、基地局が通信装置100−3(移動局)と通信する場合、基地局及び通信装置100−3は、領域Bの半径40[m]に応じて、拡散レート124で通信する。同様に、基地局が通信装置100−4(移動局)と通信する場合、基地局及び通信装置100−4は、領域Bの半径40[m]に応じて、拡散レート2500で通信する。
【0086】
以上のように、通信装置100は、自装置と他の装置との間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置と他の装置との距離を測距する測距部120と、測距部120が測距した距離に応じて最適拡散レートを定め、最適拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、他の装置と拡散レートを同調させて通信する通信部110と、を備える。
【0087】
また、通信方法は、通信装置における通信方法であって、測距部120が、自装置と他の装置との間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置と他の装置との距離を測距する過程と、通信部110が、測距部120が測距した距離に応じて最適拡散レートを定め、最適拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、他の装置と拡散レートを同調させて通信する過程と、を有する。
【0088】
これにより、通信装置(基地局)は、他の通信装置(移動局)と拡散レートを同調させて通信するので、複数の他の通信装置(移動局)と並列に通信することができる。
【0089】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0090】
例えば、通信装置は、輻輳を制御するために、キャリアセンスを実行してもよい。
【0091】
また、例えば、通信装置は、複数の無線チャンネルを有していてもよい。
【0092】
また、例えば、基地局及び移動局は、自装置を識別する識別情報をインパルス信号に乗せて、互いに通信してもよい。これにより、基地局及び移動局は、自装置を他の通信装置に識別させることができる。また、基地局及び移動局は、他の通信装置を識別することができる。
【0093】
なお、以上に説明した通信装置を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
10…インパルス信号、11…インパルス信号、12…インパルス信号、20…境界、21…境界、22…境界、100…通信装置、110…通信部、111…信号処理部、120…測距部、121…測距処理部、130…高周波回路部、140…アンテナ、150…ベースバンド回路部、160…プロセッサ部、170…メモリ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの距離を測距する測距部と、
前記測距部が測距した前記距離に応じて拡散レートを定め、前記拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する通信部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記測距部は、電波の強度、電波が到来した時刻、電波が異なる方向から到来した時刻の差、電波が到来した方向、位置に応じて予め定められた電波の特徴量と受信された電波の特徴量との照合結果、又は受信されるまでに電波がホップされた回数に基づいて、前記距離を測距することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信部は、インパルス信号を通信することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信部は、パルス位置変調により前記インパルス信号を通信することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信部は、位相偏移変調により前記インパルス信号を通信することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信部は、超広帯域インパルス無線方式に基づく前記インパルス信号を通信することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項7】
前記測距部は、前記超広帯域インパルス無線方式に基づく前記インパルス信号が自装置と前記他の装置との間を往復した時間に基づいて、前記距離を測距することを特徴とする請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する測距部と、
前記測距部が測距した前記距離に応じて第1の拡散レートを定め、前記第1の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する通信部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項9】
自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する測距部と、
前記測距部が測距した前記距離に応じて第2の拡散レートを定め、前記第2の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と拡散レートを同調させて通信する通信部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項10】
通信装置における通信方法であって、
測距部が、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの距離を測距する過程と、
通信部が、前記測距部が測距した前記距離に応じて拡散レートを定め、前記拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する過程と、
を有することを特徴とする通信方法。
【請求項11】
通信装置における通信方法であって、
測距部が、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する過程と、
通信部が、前記測距部が測距した前記距離に応じて第1の拡散レートを定め、前記第1の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する過程と、
を有することを特徴とする通信方法。
【請求項12】
通信装置における通信方法であって、
測距部が、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する過程と、
通信部が、前記測距部が測距した前記距離に応じて第2の拡散レートを定め、前記第2の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と拡散レートを同調させて通信する過程と、
を有することを特徴とする通信方法。
【請求項1】
自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの距離を測距する測距部と、
前記測距部が測距した前記距離に応じて拡散レートを定め、前記拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する通信部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記測距部は、電波の強度、電波が到来した時刻、電波が異なる方向から到来した時刻の差、電波が到来した方向、位置に応じて予め定められた電波の特徴量と受信された電波の特徴量との照合結果、又は受信されるまでに電波がホップされた回数に基づいて、前記距離を測距することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信部は、インパルス信号を通信することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信部は、パルス位置変調により前記インパルス信号を通信することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信部は、位相偏移変調により前記インパルス信号を通信することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信部は、超広帯域インパルス無線方式に基づく前記インパルス信号を通信することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項7】
前記測距部は、前記超広帯域インパルス無線方式に基づく前記インパルス信号が自装置と前記他の装置との間を往復した時間に基づいて、前記距離を測距することを特徴とする請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する測距部と、
前記測距部が測距した前記距離に応じて第1の拡散レートを定め、前記第1の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する通信部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項9】
自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する測距部と、
前記測距部が測距した前記距離に応じて第2の拡散レートを定め、前記第2の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と拡散レートを同調させて通信する通信部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項10】
通信装置における通信方法であって、
測距部が、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの距離を測距する過程と、
通信部が、前記測距部が測距した前記距離に応じて拡散レートを定め、前記拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する過程と、
を有することを特徴とする通信方法。
【請求項11】
通信装置における通信方法であって、
測距部が、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する過程と、
通信部が、前記測距部が測距した前記距離に応じて第1の拡散レートを定め、前記第1の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と通信する過程と、
を有することを特徴とする通信方法。
【請求項12】
通信装置における通信方法であって、
測距部が、自装置のアンテナと他の装置のアンテナとの間をインパルス信号が往復した時間に基づいて、自装置のアンテナと前記他の装置のアンテナとの距離を測距する過程と、
通信部が、前記測距部が測距した前記距離に応じて第2の拡散レートを定め、前記第2の拡散レートに応じた拡散符号により符号化された信号を、前記他の装置と拡散レートを同調させて通信する過程と、
を有することを特徴とする通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−4726(P2012−4726A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136247(P2010−136247)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(397065136)株式会社横須賀テレコムリサーチパーク (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(397065136)株式会社横須賀テレコムリサーチパーク (28)
【Fターム(参考)】
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