説明

通信装置

【課題】 一対のデバイスが適切に無線通信することができない事象が発生するのを抑制すること。
【解決手段】 多機能機10は、指定設定DWS1を用いて、通話デバイス70と通信可能であるのか否かを確認する。多機能機10は、通話デバイス70と通信不可能であることが確認される場合に、SSIDサーチを実行する。多機能機10は、通話デバイス70からSSID「001−RECV」を受信しない場合には、指定設定DWS1を維持し、通話デバイス70からSSID「001−RECV」を受信する場合には、指定設定DWS1から受信設定RWSに変更する。なお、SSID「001−RECV」は、通話デバイス70から多機能機10に送信されるべき印刷対象のFAXデータが存在する場合に、通話デバイス70から送信されるSSIDである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、無線通信を実行する通信装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、一対のデバイスがアクセスポイントを介して無線通信するためのシステムが開示されている。即ち、特許文献1には、インフラストラクチャモードの無線通信技術が開示されている。なお、一対のデバイスが、アクセスポイントを介さずに無線通信するための技術も知られている。即ち、アドホックモードの無線通信技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2007−288312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インフラストラクチャモード及びアドホックモードのどちらの無線通信技術でも、一対のデバイスが適切に無線通信するためには、一対のデバイスのそれぞれに同じ無線設定(例えば、認証方式、暗号化方式等)を設定する必要がある。即ち、一対のデバイスに異なる無線設定が設定された状態では、通常、一対のデバイスが適切に無線通信することができない。また、一対のデバイスに同じ無線設定が設定されていても、通信環境等の理由(例えばデバイスとアクセスポイントとの間の距離が遠い)によって、一対のデバイスが適切に無線通信することができないこともある。
【0005】
本明細書では、一対のデバイスが適切に無線通信することができない事象が発生するのを抑制し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、第2の通信装置と無線通信を実行する第1の通信装置を開示する。第1の通信装置は、第1のメモリと、第1の確認部と、第1の変更部と、第1の通信実行部と、を備える。第1のメモリは、所定の無線設定を格納する。第1の確認部は、第1の通信装置に現在設定されている無線設定である第1の現行無線設定を用いて、第2の通信装置と無線通信を実行可能であるのか否かを確認する。第1の変更部は、第1の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認され、かつ、第2の通信装置から特定の情報が受信される第1の場合に、第1の現行無線設定を第1のメモリ内の所定の無線設定に変更し、第1の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認され、かつ、第2の通信装置から特定の情報が受信されない第2の場合に、第1の現行無線設定を維持する。特定の情報は、第2の通信装置から第1の通信装置へ送信されるべき第1の対象データが存在する場合に、第2の通信装置から送信される情報である。第1の通信実行部は、第1の場合に、所定の無線設定を用いて、第2の通信装置から第1の対象データを受信する。
【0007】
上記の構成によると、第1の通信装置は、現在の無線設定(即ち第1の現行無線設定)を用いて、第2の通信装置と無線通信を実行可能であるのか否かを確認する。第1の通信装置は、第2の通信装置と無線通信を実行不可能であることが確認され、かつ、第2の通信装置から特定の情報(即ち、第2の通信装置から第1の通信装置へ送信されるべき第1の対象データが存在する場合に、第2の通信装置から送信される情報)が受信される第1の場合に、現在の無線設定を、第1の現行無線設定から所定の無線設定に変更する。この結果、第1の通信装置は、変更後の無線設定(即ち所定の無線設定)を用いて、第1の対象データを第2の通信装置から受信することができる。従って、第1及び第2の通信装置が適切に無線通信することができない事象が発生するのを抑制し得る。しかも、第1の通信装置は、第2の通信装置と無線通信を実行不可能であることが確認され、かつ、第2の通信装置から特定の情報が受信されない第2の場合に、現在の無線設定(即ち第1の現行無線設定)を維持する。即ち、第1の通信装置は、現在の無線設定を変更する必要がある場合(即ち第1の場合)に、現在の無線設定を変更し、現在の無線設定を変更する必要がない場合(即ち第2の場合)に、現在の無線設定を維持する。このために、第1の通信装置は、適切なタイミングで、現在の無線設定を変更し得る。
【0008】
第1の通信装置は、さらに、第1の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認される場合に、第2の通信装置から特定の情報が受信されるのか否かを判断する判断部を備えていてもよい。第1の変更部は、第2の通信装置から特定の情報が受信されると判断される第1の場合に、第1の現行無線設定を所定の無線設定に変更し、第2の通信装置から特定の情報が受信されないと判断される第2の場合に、第1の現行無線設定を維持してもよい。この構成によると、第1の通信装置は、現在の無線設定を適切に変更又は維持し得る。
【0009】
特定の情報は、所定の無線設定に含まれる特定のネットワーク識別情報であってもよい。判断部は、第2の通信装置から、第2の通信装置に現在設定されている無線設定に含まれるネットワーク識別情報を受信する受信部を備えていてもよい。判断部は、第2の通信装置から受信されるネットワーク識別情報と、特定のネットワーク識別情報と、が一致するのか否かを判断することによって、第2の通信装置から特定の情報が受信されるのか否かを判断してもよい。この構成によると、第1の通信装置は、第2の通信装置から特定の情報が受信されるのか否かを適切に判断し得る。
【0010】
第1のメモリは、さらに、所定の無線設定とは異なる初期無線設定を格納してもよい。第1の変更部は、さらに、第1の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認され、かつ、第1の通信装置から第2の通信装置へ第2の対象データが送信されるべき第3の場合に、第1の現行無線設定を第1のメモリ内の初期無線設定に変更してもよい。第1の通信実行部は、第3の場合に、初期無線設定を用いて、第2の対象データを第2の通信装置に送信してもよい。この構成によると、第1の通信装置は、第2の対象データを第2の通信装置に適切に送信し得る。
【0011】
特定の情報は、所定の無線設定に含まれる特定のネットワーク識別情報であってもよい。特定の情報は、初期無線設定に含まれるネットワーク識別情報に、予め決められている文字列が付加されたものであってもよい。
【0012】
第2の通信装置は、第1の通信装置の付属機器であってもよい。第2の通信装置は、一般公衆回線が接続されるインターフェースを備えていてもよい。第1の対象データは、第2の通信装置のインターフェースによって一般公衆回線から受信されるFAXデータであって、第1の通信装置で出力されるべきFAXデータを含んでいてもよい。この構成によると、第1の通信装置は、第2の通信装置からFAXデータを適切に受信し得る。
【0013】
所定の無線設定は、第1の通信装置及び第2の通信装置が、アクセスポイントを介さずに直接的に無線通信を実行するためのアドホックモードの無線設定であってもよい。第1の現行無線設定は、第1の通信装置及び第2の通信装置が、アクセスポイントを介して間接的に無線通信を実行するためのインフラストラクチャモードの無線設定であってもよい。第1の変更部は、第1の場合に、インフラストラクチャモードの無線設定である第1の現行無線設定を、アドホックモードの無線設定である所定の無線設定に変更し、第2の場合に、インフラストラクチャモードの無線設定である第1の現行無線設定を維持してもよい。この構成によると、第1の通信装置は、第1の場合に、インフラストラクチャモードの無線設定から、アドホックモードの無線設定に適切に変更し得る。
【0014】
第1の通信実行部は、第1の現行無線設定を用いて無線通信を実行可能であると確認される場合に、第1の現行無線設定を用いて、第2の通信装置から第1の対象データを受信してもよい。この構成によると、第1の通信装置は、第2の通信装置から第1の対象データを適切に受信し得る。
【0015】
本明細書では、第1の通信装置と無線通信を実行する第2の通信装置を開示する。第2の通信装置は、第2のメモリと、第2の確認部と、情報送信部と、第2の変更部と、第2の通信実行部と、を備える。第2のメモリは、所定の無線設定を格納する。第2の確認部は、第2の通信装置に現在設定されている無線設定である第2の現行無線設定を用いて、第1の通信装置と無線通信を実行可能であるのか否かを確認する。情報送信部は、第2の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認され、かつ、第2の通信装置から第1の通信装置へ送信されるべき第1の対象データが存在する第4の場合に、特定の情報を第1の通信装置に送信し、第2の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認され、かつ、第1の対象データが存在しない第5の場合に、特定の情報を第1の通信装置に送信しない。第2の変更部は、第4の場合に、第2の現行無線設定を第2のメモリ内の所定の無線設定に変更する。第2の通信実行部は、第4の場合に、所定の無線設定を用いて、第1の通信装置に第1の対象データを送信する。
【0016】
上記の構成によると、第2の通信装置は、第1の通信装置と無線通信を実行不可能であることが確認され、かつ、第2の通信装置から第1の通信装置へ送信されるべき第1の対象データが存在する第4の場合に、特定の情報を第1の通信装置に送信する。これにより、第1の通信装置の現在の無線設定が、所定の無線設定に変更され得る。さらに、第2の通信装置は、第4の場合に、現在の無線設定を所定の無線設定に変更する。この結果、第2の通信装置は、変更後の無線設定(即ち所定の無線設定)を用いて、第1の対象データを第1の通信装置に送信することができる。従って、第1及び第2の通信装置が適切に無線通信することができない事象が発生するのを抑制し得る。しかも、第2の通信装置は、第1の通信装置と無線通信を実行不可能であることが確認され、かつ、第1の対象データが存在しない第5の場合に、特定の情報を第1の通信装置に送信しない。即ち、第2の通信装置は、第1の通信装置の現在の無線設定を変更する必要がある場合(即ち第4の場合)に、特定の情報を第1の通信装置に送信し、第1の通信装置の現在の無線設定を変更する必要がない場合(即ち第5の場合)に、特定の情報を第1の通信装置に送信しない。このために、第2の通信装置は、適切なタイミングで、第1の通信装置の現在の無線設定を変更させ得る。
【0017】
なお、上記の第1及び第2の通信装置を実現するための制御方法、コンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを格納するコンピュータ読取可能記憶媒体も新規で有用である。また、上記の第1及び第2の通信装置を備える無線通信システムも新規で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】無線通信システムの構成を示す。
【図2】第1実施例の多機能機のフローチャートを示す。
【図3】第1実施例の通話デバイスのフローチャートを示す。
【図4】多機能機及び通信デバイスが通信可能である状況で、通話デバイスがPSTNを介してFAXデータを受信する例を示す。
【図5】多機能機及び通信デバイスが通信不可能である状況で、通話デバイスがPSTNを介してFAXデータを受信する例を示す。
【図6】多機能機及び通信デバイスが通信可能である状況で、FAX送信操作が実行される例を示す。
【図7】多機能機及び通信デバイスが通信不可能である状況で、FAX送信操作が実行される例を示す。
【図8】第2実施例の多機能機のフローチャートを示す。
【図9】第2実施例の通話デバイスのフローチャートを示す。
【図10】多機能機及び通信デバイスが通信不可能である状況で、通話デバイスがPSTNを介してFAXデータを受信する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施例)
(システムの構成;図1)
図1に示されるように、無線通信システム2は、PC(パーソナルコンピュータ)4と、AP(アクセスポイント)6と、多機能機10と、通話デバイス70と、を備える。PC4は、AP6を介して、他のデバイス(例えば多機能機10)と無線通信可能である。多機能機10及び通話デバイス70は、AP6を介して、又は、AP6を介さずに、相互に無線通信可能である。即ち、多機能機10及び通話デバイス70は、インフラストラクチャの無線通信又はアドホックの無線通信を実行可能である。なお、本実施例では、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)の802.11の規格、及び、それに準ずる規格(例えば802.11a,11b等)に基づいて、無線通信が実行される。従って、後述の無線設定IWS,RWS,DWS1,DWS2は、上記の規格に適合する無線設定である。
【0020】
(多機能機10の構成)
多機能機(「親機」と呼んでもよい)10は、操作部12と、表示部14と、印刷実行部16と、スキャン実行部18と、無線インターフェース20(以下では、インターフェースを「I/F」と呼ぶ)と、制御部30と、を備える。操作部12は、複数のキーを備える。ユーザは、操作部12を操作することによって、様々な指示を多機能機10に入力することができる。表示部14は、様々な情報を表示するためのディスプレイである。印刷実行部16は、インクジェット方式、レーザ方式等の印刷機構である。スキャン実行部18は、CCD、CIS等のスキャン機構である。無線I/F20は、無線通信を実行するためのインターフェースである。
【0021】
制御部30は、CPU32と、NVRAM(不揮発性メモリ)34と、VRAM(揮発性メモリ)40と、を備える。CPU32は、多機能機10のROM(図示省略)に格納されているプログラムに従って、様々な処理を実行する。CPU32が当該プログラムに従って処理を実行することによって、確認部52、変更部54、通信実行部56、及び、判断部58の各機能が実現される。なお、判断部58は、受信部60を備える。
【0022】
NVRAM34は、初期設定IWS(Initial Wireless Setting)と、受信設定RWS(Receiving Wireless Setting)と、を格納する。初期設定IWS及び受信設定RWSは、それぞれ、多機能機10のベンダによって予め決められた無線設定(即ちSSID、認証方式、暗号化方式、パスワード等)である。初期設定IWS及び受信設定RWSは、多機能機10の出荷段階において、多機能機10に予め格納されている。初期設定IWS及び受信設定RWSは、アクセスポイント6を介さない無線通信を実現するためのアドホックモードの無線設定である。
【0023】
なお、初期設定IWSは、受信設定RWSとは異なる。例えば、初期設定IWSは、SSID「001」を含む。これに対し、受信設定RWSは、SSID「001−RECV」を含む。即ち、受信設定RWSに含まれるSSID「001−RECV」は、初期設定IWSに含まれるSSID「001」に、予め決められている文字列「−RECV」が付加されたものである。
【0024】
VRAM40は、無線設定ワーク領域42を備える。無線設定ワーク領域42は、多機能機10の現在の無線設定(即ち多機能機10が現在利用すべき無線設定)を格納するための記憶領域である。多機能機10が出荷された後に、多機能機10が初めて電源ONされる場合には、無線設定ワーク領域42に初期設定IWSが格納される。
【0025】
なお、ユーザは、多機能機10が初期設定IWSとは異なる無線設定を利用することを望む場合に、例えば、多機能機10の操作部12を操作して、多機能機10が利用すべき無線設定(即ち、SSID、認証方式、暗号化方式、パスワード等)を指定することができる。以下では、ユーザによって指定される多機能機10の無線設定のことを、「指定設定DWS(Designated Wireless Setting)1」と呼ぶ。なお、USBケーブル等の有線によって、多機能機10とPC4とが通信可能に接続されている場合には、ユーザは、例えば、PC4の操作部を操作して、指定設定DWS1を指定してもよい。なお、本実施例では、指定設定DWS1は、アクセスポイント6を介して無線通信を実現するためのインフラストラクチャの無線設定である。なお、指定設定DWS1は、初期設定IWS及び受信設定RWSとは異なるSSID「002」を含む。
【0026】
例えば、初期設定IWSが無線設定ワーク領域42に格納されている状態で、ユーザによって指定設定DWS1が指定されると、初期設定IWSに代えて指定設定DWS1が無線設定ワーク領域42に格納される。なお、この際には、多機能機10の電源がOFFされても指定設定DWS1が消去されないように、NVRAM34にも指定設定DWS1が格納される。また、例えば、指定設定DWS1が無線設定ワーク領域42に格納されている状態で、後述する条件が満たされると、指定設定DWS1に代えて受信設定RWS又は初期設定IWSが無線設定ワーク領域42に格納される。この点については、後で詳しく説明する。
【0027】
(通話デバイス70の構成)
通話デバイス(「子機」と呼んでもよい)70は、それ単体では出荷されず、多機能機10と共に出荷される。即ち、通話デバイス70は、多機能機10の付属機器である。通話デバイス70は、マイク72と、スピーカ74と、PSTNI/F76と、無線I/F78と、制御部80と、を備える。通話デバイス70がマイク72とスピーカ74を備えるために、ユーザは、通話デバイス70を用いて、一般公衆回線網であるPSTN(Public Switched Telephone Network)8を介した電話通信を実行することができる。PSTNI/F76は、PSTN8に接続される。具体的には、PSTNI/F76には、PSTNケーブルの一端が接続される。PSTNケーブルの他端は、例えば、家庭内のPSTN用ソケットに接続される。無線I/F78は、無線通信を実行するためのインターフェースである。
【0028】
制御部80は、CPU82と、NVRAM84と、VRAM90と、を備える。CPU82は、通話デバイス70のROM(図示省略)に格納されているプログラムに従って、様々な処理を実行する。CPU82が当該プログラムに従って処理を実行することによって、確認部102、変更部104、通信実行部106、及び、情報送信部108の各機能が実現される。
【0029】
NVRAM84は、初期設定IWS及び受信設定RWSを格納する。これらは、多機能機10のNVRAM34に格納されている初期設定IWS及び受信設定RWSと同じものである。初期設定IWS及び受信設定RWSは、通話デバイス70の出荷段階(即ち多機能機10の出荷段階)において、通話デバイス70に予め格納されている。
【0030】
VRAM90は、無線設定ワーク領域92を備える。無線設定ワーク領域92は、通話デバイス70の現在の無線設定(即ち通話デバイス70が現在利用すべき無線設定)を格納するための記憶領域である。多機能機10と共に通話デバイス70が出荷された後に、通話デバイス70が初めて電源ONされる場合には、無線設定ワーク領域92に初期設定IWSが格納される。このように、多機能機10及び通話デバイス70は、出荷段階において、同じ初期設定IWSが無線設定ワーク領域42,92に格納されるように構成されているために、アドホックモードの無線通信を実行可能である。
【0031】
ユーザは、通話デバイス70が初期設定IWSとは異なる無線設定を利用することを望む場合に、例えば、多機能機10の操作部12を操作して、通話デバイス70が利用すべき無線設定(即ち、SSID、認証方式、暗号化方式、パスワード等)を指定することができる。以下では、ユーザによって指定される通話デバイス70の無線設定のことを「指定設定DWS2」と呼ぶ。多機能機10は、通話デバイス70のための指定設定DWS2が指定されると、多機能機10の現在の無線設定(例えば初期設定IWS)を用いて、指定設定DWS2を通話デバイス70に無線で送信する。これにより、通話デバイス70は、指定設定DWS2を取得することができ、初期設定IWSに代えて指定設定DWS2を無線設定ワーク領域92に格納させることができる。なお、この際には、通話デバイス70の電源がOFFされても指定設定DWS2が消去されないように、NVRAM84にも指定設定DWS2が格納される。なお、後述する条件が満たされると、指定設定DWS2に代えて受信設定RWS又は初期設定IWSが無線設定ワーク領域92に格納されるが、この点については、後で詳しく説明する。
【0032】
(FAX機能)
多機能機10及び通話デバイス70が協働して処理を実行することによって、FAX機能が実現される。例えば、通話デバイス70は、PSTNインターフェース76を介してFAXデータを受信する場合に、FAXデータを多機能機10に無線で送信する。多機能機10は、無線I/F20によってFAXデータが受信される場合に、FAXデータによって表わされる画像の印刷を印刷実行部16に実行させる。これにより、FAXの受信動作が実行される。
【0033】
また、多機能機10は、スキャン実行部18が原稿をスキャンすることによって生成されるFAXデータを、通話デバイス70に無線で送信する。通話デバイス70は、無線I/F78によってFAXデータが受信される場合に、ユーザによって予め指定された宛先に向けて、PSTN8を介してFAXデータを送信する。これにより、FAXの送信動作が実行される。
【0034】
上述したように、通話デバイス70は、多機能機10に代わってPSTN8を介してFAXデータを受信可能であると共に、多機能機10に代わってPSTN8を介してFAXデータを送信可能である。従って、この点においても、通話デバイス70は、多機能機10の付属装置であると言える。なお、本実施例では、多機能機10は、FAXデータによって表わされる画像を印刷するが、変形例では、多機能機10は、FAXデータによって表わされる画像を表示してもよい。即ち、多機能機10は、FAXデータを出力(即ち印刷又は表示)すればよい。
【0035】
通話デバイス70は、多機能機10の付属機器であり、印刷実行部16及びスキャン実行部18を備えていない。従って、通話デバイス70は、多機能機10と比べると、小さいサイズを有する。通常、家庭内では、PSTN用ソケットの位置が決められている。仮に、多機能機10にPSTNケーブルを接続しなければならない構成を採用すると、PSTN用ソケットの近傍に多機能機10を配置する必要がある。多機能機10は、比較的に大きいサイズを有するために、PSTN用ソケットの近傍にスペースが少ない環境では、PSTN用ソケットの近傍に多機能機10を配置するのが困難である。これに対し、本実施例では、比較的に小さいサイズを有する通話デバイス70にPSTNI/F76が設けられている。従って、PSTN用ソケットの近傍にスペースが少ない環境でも、PSTN用ソケットの近傍に通話デバイス70を容易に配置して、通話デバイス70をPSTN8に接続することができる。さらに、多機能機10をPSTN用ソケットの近傍に限らず、自由に配置することができる。
【0036】
(多機能機10が実行する処理;図2)
続いて、図2のフローチャートを参照して、多機能機10が実行する処理の内容について説明する。多機能機10の電源がONされると、制御部30は、図2のフローチャートの処理を開始する。なお、多機能機10の電源がONされる際に、NVRAM34に指定設定DWS1が格納されている場合には、制御部30は、無線設定ワーク領域42に指定設定DWS1を格納する。一方において、多機能機10の電源がONされる際に、NVRAM34に指定設定DWS1が格納されていない場合(即ち指定設定DWS1が未だに指定されていない場合)には、制御部30は、無線設定ワーク領域42に初期設定IWSを格納する。
【0037】
S10において、確認部52(図1参照)は、確認タイミングが到来したか否かを判断する。具体的に言うと、制御部30は、確認タイマを内蔵しており、多機能機10の電源がONされる際に、確認タイマをリセットしてスタートさせる。確認タイマの値が所定値(例えば5分)以下である場合には、確認部52は、確認タイミングが到来していないと判断し(S10でNO)、S22に進む。一方において、確認タイマの値が所定値より大きい場合には、確認部52は、確認タイミングが到来したと判断し(S10でYES)、S12に進む。
【0038】
S12では、確認部52は、無線設定ワーク領域42に格納されている多機能機10の現在の無線設定(即ち初期設定IWS又は指定設定DWS1)を用いて、通信確認を送信する。なお、フローチャートに示していないが、制御部30は、通信確認の送信後に、確認タイマをリセットしてスタートさせる。
【0039】
次いで、S14において、確認部52は、通信確認の応答を受信したのか否かを判断する。即ち、確認部52は、多機能機10の現在の無線設定を用いて、通話デバイス70と通信可能であるのか否かを確認する。確認部52は、S12で通信確認を送信してから所定時間以内に応答を受信した場合に、通話デバイス70と通信可能であると確認し(S14でYES)、S16〜S20をスキップしてS22に進む。一方において、確認部52は、S12で通信確認を送信してから上記の所定時間以内に応答を受信しない場合に、通話デバイス70と通信不可能であると確認し(S14でNO)、S16に進む。
【0040】
S16では、受信部60(図1参照)は、多機能機10の周囲に存在する無線通信機器に対して、SSIDサーチを実行する。具体的には、受信部60は、プローブリクエストを送信する。プローブリクエストは、プローブリクエストを受信した無線通信機器の現在の無線設定に含まれるSSIDを多機能機10に送信するように、当該無線通信機器に要求するための信号である。
【0041】
なお、S12で送信される通信確認は、無線設定を用いて送信される信号であるために、多機能機10及び通話デバイス70に同じ無線設定が設定されていなければ、通話デバイス70は、多機能機10から通信確認を受信することができない。これに対し、プローブリクエストは、無線設定を用いずに送信される信号(周囲の無線通信機器のサーチ)であるために、通話デバイス70は、通話デバイス70の現在の無線設定に関わらず、多機能機10からプローブリクエストを受信し得る。即ち、通話デバイス70は、多機能機10から通信確認を受信することができなくても、多機能機10からプローブリクエストを受信し得る。通話デバイス70は、多機能機10からプローブリクエストを受信すると、通話デバイス70の現在の無線設定(即ち、無線設定ワーク領域92に格納されている無線設定)に含まれるSSIDを、多機能機10に送信する。これにより、多機能機10の受信部60は、通話デバイス70からSSIDを受信する。
【0042】
次いで、S18において、判断部58(図1参照)は、通話デバイス70から受信されたSSIDと、受信設定RWSに含まれるSSID「001−RECV」と、が一致するのか否かを判断する。2つのSSIDが一致しない場合(S18でNO)には、S20をスキップしてS22に進む。なお、多機能機10の周囲に存在するいずれの通信機器からもSSIDが受信されない場合にも、S18でNOと判断される。一方において、2つのSSIDが一致する場合(S18でYES)には、S20に進む。
【0043】
S20では、変更部54(図1参照)は、多機能機10の現在の無線設定(初期設定IWS又は指定設定DWS1)を、NVRAM34に格納されている受信設定RWSに変更する。このように、通話デバイス70と通信不可能であると確認され(S14でNO)、かつ、受信設定RWSに含まれるSSID「001−RECV」が通話デバイス70から受信される場合(S18でYES)には、多機能機10の現在の無線設定が受信設定RWSに変更される。
【0044】
後で詳しく説明するが、通話デバイス70は、多機能機10に通信確認を送信する(図3のS112、S144、S152参照)。多機能機10及び通話デバイス70が適切に無線通信を実行可能な状況では、制御部30は、多機能機10の現在の無線設定を用いて通信確認を受信して、S22でYESと判断する。この場合、S24において、制御部30は、多機能機10の現在の無線設定を用いて、通信確認の応答を送信する。S22でNOの場合、又は、S24を終えた場合には、S26に進む。
【0045】
後で詳しく説明するが、通話デバイス70は、PSTN8から受信されたFAXデータ(以下では「印刷対象のFAXデータ」と呼ぶ)を、多機能機10に送信する(図3のS158参照)。多機能機10及び通話デバイス70が適切に無線通信を実行可能な状況では、通信実行部56(図1参照)は、多機能機10の現在の無線設定を用いて印刷対象のFAXデータを受信して、S26でYESと判断する。この場合、S28において、制御部30は、印刷対象のFAXデータによって表わされる画像の印刷を印刷実行部16に実行させる。
【0046】
なお、上記のS20の処理が実行されたことによって、多機能機10の現在の無線設定が受信設定RWSに変更された場合には、S30において、変更部54は、多機能機10の現在の無線設定を、受信設定RWSから変更前の無線設定(初期設定IWS又は指定設定DWS1)に変更する。S26でNOの場合、又は、S30を終えた場合には、S40に進む。
【0047】
S40では、制御部30は、多機能機10の操作部12にFAX送信操作(即ち、宛先の指定のための操作、及び、スキャン実行ボタンの操作)が実行されたのか否かを判断する。FAX送信操作が実行されない場合(S40でNO)には、S10に戻り、FAX送信操作が実行された場合(S40でYES)には、S42に進む。S42では、制御部30は、原稿のスキャンをスキャン実行部18に実行させる。これにより、PSTN8を介して送信されるべきFAXデータ(以下では「送信対象のFAXデータ」と呼ぶ)が生成される。
【0048】
次いで、S44において、確認部52は、多機能機10の現在の無線設定を用いて、通話デバイス70に通信確認を送信する。次いで、S46において、S14と同様に、確認部52は、通信確認の応答を受信したのか否かを判断する。通話デバイス70と通信可能であると確認される場合(S46でYES)に、S58に進み、通話デバイス70と通信不可能であると確認される場合(S46でNO)に、S48に進む。
【0049】
S48では、変更部54は、多機能機10の現在の無線設定が初期設定IWSであるのか否かを判断する。多機能機10の現在の無線設定が初期設定IWSである場合(S48でYES)には、S50をスキップしてS52に進む。一方において、多機能機10の現在の無線設定が初期設定IWSでない場合、即ち、多機能機10の現在の無線設定が指定設定DWS1である場合(S48でNO)には、S50に進む。S50では、変更部54は、多機能機10の現在の無線設定を、指定設定DWS1から初期設定IWSに変更する。このように、通話デバイス70と通信不可能であると確認され(S46でNO)、かつ、送信対象のFAXデータが存在する場合には、多機能機10の無線設定が、指定設定DWS1から初期設定IWSに変更される。
【0050】
次いで、S52において、確認部52は、多機能機10の現在の無線設定(即ち初期設定IWS)を用いて、通信確認を送信する。次いで、S54において、S14と同様に、確認部52は、通信確認の応答を受信したのか否かを判断する。通話デバイス70と通信可能であると確認される場合(S54でYES)に、S58に進み、通話デバイス70と通信不可能であると確認される場合(S54でNO)に、S56に進む。S56では、制御部30は、エラー処理を実行する。具体的には、制御部30は、PSTN8を介したFAXデータの送信を実行不可能であることを示す情報を表示部14に表示させる。S56を終えた場合には、S10に戻る。
【0051】
S58では、通信実行部56(図1参照)は、多機能機10の現在の無線設定を用いて、S42で生成された送信対象のFAXデータを通話デバイス70に送信する。なお、上記のS50の処理が実行されたことによって、多機能機10の現在の無線設定が初期設定IWSである場合には、S60において、変更部54は、多機能機10の現在の無線設定を、初期設定IWSから指定設定DWS1に変更する。S60を終えた場合には、S10に戻る。
【0052】
(通話デバイス70が実行する処理;図3)
続いて、図3のフローチャートを参照して、通話デバイス70が実行する処理の内容について説明する。通話デバイス70の電源がONされると、制御部80は、図3のフローチャートの処理を開始する。なお、通話デバイス70の電源がONされる際に、NVRAM84に指定設定DWS2が格納されている場合には、制御部80は、無線設定ワーク領域92にDWS2を格納する。一方において、通話デバイス70の電源がONされる際に、NVRAM84に指定設定DWS2が格納されていない場合には、制御部80は、無線設定ワーク領域92に初期設定IWSを格納する。
【0053】
なお、図3のS110〜S160の処理の中には、図2のS10〜S60の処理と同様のものが多いために、以下では、S110〜S160の処理の内容を簡単に説明する。図3のS110〜S160の処理の具体的な内容については、図2のS10〜S60の処理を参照すれば、容易に理解可能である。
【0054】
S110で確認タイミングが到来したと判断される場合(S110でYES)には、S112において、確認部102は、通話デバイス70の現在の無線設定(即ち初期設定IWS又は指定設定DWS2)を用いて、通信確認を送信する。この場合、S114において、確認部102は、通信確認の応答を受信したのか否かを判断する。多機能機10と通信不可能であることが確認される場合(S114でNO)には、S116において、変更部104(図1参照)は、通話デバイス70の現在の無線設定が初期設定IWSであるのか否かを判断する。通話デバイス70の現在の無線設定が初期設定IWSでない場合、即ち、通話デバイス70の現在の無線設定が指定設定DWS2である場合(S116でNO)には、S118において、変更部104は、通話デバイス70の現在の無線設定を、指定設定DWS2から初期設定IWSに変更する。このように、多機能機10と通信不可能であると確認され(S114でNO)、かつ、通話デバイス70の現在の無線設定が指定設定DWS2である場合(S116でNO)には、通話デバイス70の無線設定が、指定設定DWS2から初期設定IWSに変更される。
【0055】
制御部80は、通話デバイス70の現在の無線設定を用いて、通話デバイス70から通信確認を受信すると、S122でYESと判断する。この場合、S124において、制御部80は、通話デバイス70の現在の無線設定を用いて、通信確認の応答を送信する。
【0056】
通信実行部106(図1参照)は、通話デバイス70の現在の無線設定を用いて、多機能機10から送信対象のFAXデータを受信すると、S126でYESと判断する。なお、S126では、通信実行部106は、ユーザによって指定された宛先(即ちFAX識別情報(例えばFAX番号))も受信する。次いで、S128において、制御部80は、PSTNI/F76を用いて、多機能機10から受信された宛先に発呼する。これにより、通話デバイス70と宛先との間で呼が成立する。次いで、制御部80は、PSTN8を介して、送信対象のFAXデータを送信する。なお、上記のS118の処理が実行されたことによって、通話デバイス70の現在の無線設定が初期設定IWSである場合には、S130において、変更部104は、通話デバイス70の現在の無線設定を、初期設定IWSから指定設定DWS2に変更する。
【0057】
制御部80は、多機能機10からプローブリクエストを受信すると、S132でYESと判断する。この場合、S134において、制御部80は、通話デバイス70の現在の無線設定に含まれるSSIDを、多機能機10に送信する。
【0058】
制御部80は、PSTNI/F76によって印刷対象のFAXデータが受信されると、S140でYESと判断する。この場合、S144において、確認部102は、通話デバイス70の現在の無線設定を用いて、多機能機10に通信確認を送信する。次いで、S146において、確認部102は、通信確認の応答を受信したのか否かを判断する。多機能機10と通信不可能であることが確認される場合(S146でNO)には、S150に進み、多機能機10と通信可能であることが確認される場合(S146でYES)には、S158に進む。
【0059】
S150では、変更部104は、通話デバイス70の現在の無線設定(初期設定IWS又は指定設定DWS2)を、受信設定RWSに変更する。このように、多機能機10と通信不可能であると確認され(S146でNO)、かつ、印刷対象のFAXデータが存在する場合には、通話デバイス70の無線設定が、受信設定RWSに変更される。
【0060】
次いで、S152において、確認部102は、通話デバイス70の現在の無線設定(即ち受信設定RWS)を用いて、通信確認を送信する。次いで、S154において、確認部102は、通信確認の応答を受信したのか否かを判断する。多機能機10と通信不可能であることが確認される場合(S154でNO)には、S156に進み、多機能機10と通信可能であることが確認される場合(S154でYES)には、S158に進む。
【0061】
S156では、情報送信部108(図1参照)は、多機能機10からプローブリクエストを受信するまで待機する。情報送信部108は、多機能機10からプローブリクエストを受信すると、通話デバイス70の現在の無線設定である受信設定RWSに含まれるSSID「001−RECV」を、多機能機10に送信する。なお、上述したように、S134でもSSIDが多機能機10に送信されるが、S134が実行される段階では、印刷対象のFAXデータが存在せず、通話デバイス70の現在の無線設定は、初期設定IWS又は指定設定DWS2である。従って、S134では、受信設定RWSに含まれるSSID「001−RECV」が多機能機10に送信されることはない。即ち、情報送信部108は、印刷対象のFAXデータが存在しない場合には、受信設定RWSに含まれるSSID「001−RECV」を、多機能機10に送信しない。
【0062】
S158では、通信実行部106は、通話デバイス70の現在の無線設定を用いて、印刷対象のFAXデータを多機能機10に送信する。なお、上記のS150の処理が実行されたことによって、通話デバイス70の現在の無線設定が受信設定RWSである場合には、S160において、変更部104は、通話デバイス70の現在の無線設定を、受信設定RWSから、変更前の無線設定(初期設定IWS又は指定設定DWS2)に変更する。
【0063】
(第1実施例の具体例;図4〜図7)
続いて、多機能機10及び通話デバイス70によって実現される具体的なケースについて説明する。以下の各ケースは、多機能機10及び通話デバイス70が図2及び図3のフローチャートを実行することによって実現される。
【0064】
(ケースA)
まず、図4及び図5を参照して、PSTN8から印刷対象のFAXデータを受信するケースAについて説明する。上述したように、ユーザによって指定設定DWS1及び指定設定DWS2が指定される前には、多機能機10及び通話デバイス70のそれぞれの現在の無線設定は、同じアドホックの初期設定IWSである。
【0065】
図4に示されるように、多機能機10は、通話デバイス70に通信確認を送信する(図2のS12)。通話デバイス70は、初期設定IWSを用いて、多機能機10から通信確認を受信する(図3のS122でYES)。この場合、通話デバイス70は、初期設定IWSを用いて、多機能機10に通信確認の応答を送信する(図3のS124)。多機能機10は、初期設定IWSを用いて、通信確認の応答を受信する(図2のS14でYES)。この結果、多機能機10の現在の無線設定である初期設定IWSが維持される。
【0066】
S200において、通話デバイス70は、PSTN8から印刷対象のFAXデータを受信する(図3のS140でYES)。この場合、通話デバイス70は、初期設定IWSを用いて、多機能機10に通信確認を送信する(図3のS144)。多機能機10は、初期設定IWSを用いて、通話デバイス70から通信確認を受信する(図2のS22でYES)。この場合、多機能機10は、初期設定IWSを用いて、通話デバイス70に通信確認の応答を送信する(図2のS24)。これにより、通話デバイス70は、初期設定IWSを用いて、通信確認の応答を受信する(図3のS146でYES)。
【0067】
次いで、通話デバイス70は、初期設定IWSを用いて、多機能機10に印刷対象のFAXデータを送信する(図3のS158)。多機能機10は、初期設定IWSを用いて、印刷対象のFAXデータを受信する(図2のS26でYES)。次いで、S202において、多機能機10は、印刷対象のFAXデータによって表わされる画像の印刷を実行する(図2のS28)。
【0068】
(設定変更)
例えば、ユーザが、多機能機10及びPC4がAP6を介して無線通信可能なシステムを構築することを望むことがある。この場合、ユーザは、多機能機10の無線設定として、インフラストラクチャモードの指定設定DWS1を指定する。そうすると、多機能機10の現在の無線設定である指定設定DWS1と、通話デバイス70の現在の無線設定である初期設定IWSと、が異なるために、多機能機10及び通話デバイス70が通信不可能になってしまう。従って、ユーザは、さらに、通話デバイス70の無線設定として、インフラストラクチャモードの指定設定DWS2を指定する。この際に、ユーザが、通話デバイス70の無線設定として、指定設定DWS1(例えばSSID「002」)と同じ指定設定DWS2(例えばSSID「002」)を適切に指定し、かつ、電波状態が安定である場合には、次のケースA1が実現される。なお、安定な電波状態は、多機能機10及びAP6が通信可能であり、かつ、通話デバイス70及びAP6が通信可能である状態を意味する。
【0069】
一方において、ユーザが、通話デバイス70の無線設定として、指定設定DWS1(例えばSSID「002」)とは異なる指定設定DWS2(例えばSSID「003」)を誤って指定した場合(以下では「ケースX」と呼ぶ)、あるいは、電波状態が不安定である場合(以下では「ケースY」と呼ぶ)には、図5のケースA2が実現される。なお、不安定な電波状態は、例えば、多機能機10及びAP6の間の距離が大きいために、多機能機10及びAP6が通信不可能である状態や、通話デバイス70及びAP6の間の距離が大きいために、通話デバイス70及びAP6が通信不可能である状態を意味する。
【0070】
(ケースA1)
ケースA1では、多機能機10及び通話デバイス70は、指定設定DWS1及びDWS2を用いて、AP6を介して、適切に無線通信を実行可能である。従って、AP6を介して無線通信が実行される点を除くと、初期設定IWSを用いて無線通信が実行される上記のケースと同様である。即ち、多機能機10と通話デバイス70との間では、通信確認、通信確認の応答、及び、印刷対象のFAXデータが、AP6を介して、適切に通信される。従って、S210でPSTN8から受信される印刷対象のFAXデータによって表わされる画像が、S212で適切に印刷される。
【0071】
(ケースA2)
図5に示されるように、ケースA2では、多機能機10は、指定設定DWS1を用いて、通話デバイス70に通信確認を送信しても(図2のS12)、通信確認の応答を受信することができない(図2のS14でNO)。この場合、多機能機10は、SSIDサーチを実行する(図2のS16)。通話デバイス70は、プローブリクエストを受信すると(図3のS132でYES)、指定設定DWS2に含まれるSSIDを、多機能機10に送信する(図3のS134)。具体的には、通話デバイス70は、上記のケースXでは、SSID「003」を送信し、上記のケースYでは、SSID「002」を送信する。多機能機10は、SSID「002」及びSSID「003」のどちらが受信されても、図2のS18でNOと判断して、多機能機10の現在の無線設定である指定設定DWS1を維持する。この結果、多機能機10は、指定設定DWS1を用いて、AP6を介して、PC4と無線通信を実行し得る。即ち、多機能機10は、PC4から印刷対象の印刷データを受信して、印刷を実行し得る。
【0072】
また、通話デバイス70は、指定設定DWS2を用いて、多機能機10に通信確認を送信しても(図3のS112)、通信確認の応答を受信することができない(図3のS114でNO)。この場合、S220において、通話デバイス70は、通話デバイス70の現在の無線設定を、指定設定DWS2から初期設定IWSに変更する(図3のS118)。
【0073】
S222でPSTN8から印刷対象のFAXデータが受信される際に、通話デバイス70は、S220で変更された初期設定IWSを用いて、多機能機10に通信確認を送信する(図3のS144)。なお、S220の通信確認が送信されるタイミングより前に、通話デバイス70がPSTN8から印刷対象のFAXデータを受信することがあり得る。この場合、S220を経ないために、通話デバイス70は、指定設定DWS2を用いて、多機能機10に通信確認を送信する(図3のS144)。どちらのケースであっても、通話デバイス70は、通信確認の応答を受信することができない(図3のS146でNO)。この場合、S224において、通話デバイス70は、通話デバイス70の現在の無線設定(初期設定IWS又は指定設定DWS2)を、受信設定RWSに変更する(図3のS150)。
【0074】
次いで、通話デバイス70は、受信設定RWSを用いて、多機能機10に通信確認を送信する(図3のS152)。現時点では、多機能機10の現在の無線設定が指定設定DWS1であるために、通話デバイス70は、通信確認の応答を受信することができない(S154のNO)。この場合、通話デバイス70は、多機能機10からプローブリクエストを受信するまで待機する(図3のS156)。
【0075】
一方において、多機能機10は、指定設定DWS1を用いて、通話デバイス70に通信確認を送信しても(図2のS12)、通信確認の応答を受信することができない(図2のS14でNO)。この場合、多機能機10は、SSIDサーチを実行する(図2のS16)。この結果、通話デバイス70は、通話デバイス70の現在の無線設定である受信設定RWSに含まれるSSID「001−RECV」を、多機能機10に送信する(図3のS156)。これにより、多機能機10は、図2のS18でYESと判断し、S225において、多機能機10の現在の無線設定を、指定設定DWS1から受信設定RWSに変更する(図2のS20)。
【0076】
次いで、通話デバイス70は、受信設定RWSを用いて、AP6を介さずに、多機能機10に印刷対象のFAXデータを送信する(図3のS158)。多機能機10は、受信設定RWSを用いて、AP6を介さずに、印刷対象のFAXデータを受信する(図2のS26でYES)。この結果、印刷対象のFAXデータの送信及び受信が完了する(S226,S228)。次いで、S230において、多機能機10は、印刷対象のFAXデータによって表わされる画像の印刷を実行する(図2のS28)。
【0077】
次いで、S232において、多機能機10は、多機能機10の現在の無線設定を、受信設定RWSから指定設定DWS1に変更する(図2のS30)。これにより、多機能機10は、指定設定DWS1を用いて、AP6を介して、PC4と無線通信を実行し得る。また、S234において、通話デバイス70は、通話デバイス70の現在の無線設定を、受信設定RWSから、変更前の無線設定(初期設定IWS又は指定設定DWS2)に変更する(図3のS160)。
【0078】
(ケースAの効果)
上記のケースA2に示されるように、多機能機10は、多機能機10の現在の無線設定である指定設定DWS1を用いて、通話デバイス70と通信可能であるのか否かを確認する。多機能機10は、通話デバイス70と通信不可能であることが確認される場合に、SSIDサーチを実行する。そして、通話デバイス70から受信されるSSIDと、受信設定RWSに含まれるSSIDと、が一致しない場合には、多機能機10は、現在の無線設定である指定設定DWS1を維持する。
【0079】
通話デバイス70は、通話デバイス70の現在の無線設定である指定設定DWS2を用いて、多機能機10と通信可能であるのか否かを確認する。通話デバイス70は、多機能機10と通信不可能であることが確認される場合に、通話デバイス70の現在の無線設定を、指定設定DWS2から初期設定IWSに変更する。次いで、通話デバイス70は、印刷対象のFAXデータが多機能機10に送信されるべき際に、通話デバイス70の現在の無線設定を、初期設定IWSから受信設定RWSに変更する。即ち、通話デバイス70は、多機能機10と通信不可能であることが確認され、かつ、印刷対象のFAXデータが存在する場合に、通話デバイス70の現在の無線設定を、指定設定DWS2から、初期設定IWSを経由して、受信設定RWSに変更する。
【0080】
その後、多機能機10は、SSIDサーチを実行して、通話デバイス70からSSID「001−RECV」を受信する場合に、多機能機10の現在の無線設定を、指定設定DWS1から受信設定RWSに変更する。この結果、多機能機10及び通話デバイス70のそれぞれに同じ受信設定RWSが設定されるために、多機能機10及び通話デバイス70は、受信設定RWSを用いて、印刷対象のFAXデータの無線通信を実行することができる。従って、多機能機10及び通話デバイス70が印刷対象のFAXデータの無線通信を実行することができない事象が発生するのを抑制し得る。
【0081】
上述したように、多機能機10は、指定設定DWS1を用いて、通話デバイス70と無線通信を実行することができない状況において、印刷対象のFAXデータが存在しない場合には、指定設定DWS1を維持する。これにより、多機能機10は、印刷対象のFAXデータが存在しない場合には、指定設定DWS1を用いて、AP6を介して、PC4と無線通信を実行し得る。従って、多機能機10がPC4と無線通信を実行することができない事象が発生するのも抑制することができる。即ち、本実施例によると、多機能機10は、適切なタイミングで、指定設定DWS1から受信設定RWSに変更することができる。
【0082】
また、本実施例では、多機能機10は、印刷対象のFAXデータが存在するのか否かを、通話デバイス70から受信されるSSIDの内容によって判断することができる。具体的に言うと、多機能機10は、通話デバイス70からSSID「001−RECV」が受信される場合には、印刷対象のFAXデータが存在することを知ることができ、通話デバイス70からSSID「001−RECV」以外のSSID(即ち「002」又は「003」)が受信される場合には、印刷対象のFAXデータが存在しないことを知ることができる。このように、本実施例では、受信設定RWSに含まれるSSIDの内容に基づいて、多機能機10が印刷対象のFAXデータの有無を知ることができる構成を採用している。このために、多機能機10は、プローブリクエストという一般的な無線通信の手法を用いて、印刷対象のFAXデータの有無を容易に知ることができる。
【0083】
(ケースB)
続いて、図6及び図7を参照して、PSTN8を介して送信対象のFAXデータを送信するケースBについて説明する。図6に示されるように、通話デバイス70は、初期設定IWSを用いて、多機能機10に通信確認を送信する(図3のS112)。多機能機10及び通話デバイス70のそれぞれに同じ初期設定IWSが設定されているために、通話デバイス70は、通信確認の応答を受信する(図3のS114でYES)。この結果、通話デバイス70の現在の無線設定である初期設定IWSが維持される。
【0084】
S240でFAX送信操作が実行されると(図2のS40でYES)、多機能機10は、初期設定IWSを用いて、通話デバイス70に通信確認を送信する(図2のS44)。多機能機10及び通話デバイス70のそれぞれに同じ初期設定IWSが設定されているために、多機能機10は、通信確認の応答を受信する(図2のS46でYES)。
【0085】
次いで、多機能機10は、初期設定IWSを用いて、AP6を介さずに、通話デバイス70に送信対象のFAXデータを送信する(図2のS58)。通話デバイス70は、初期設定IWSを用いて、AP6を介さずに、送信対象のFAXデータを受信する(図3のS126でYES)。次いで、S242において、通話デバイス70は、PSTN8を介して、送信対象のFAXデータを送信する(図3のS128)。
【0086】
(設定変更)
ユーザが、多機能機10の無線設定として、指定設定DWS1を指定し、通話デバイス70の無線設定として、指定設定DWS1と同じ指定設定DWS2を適切に指定し、さらに、電波状態が安定である場合には、次のケースB1が実現される。これに対し、上記のケースX又は上記のケースYでは、図7のケースB2が実現される。
【0087】
(ケースB1)
ケースB1では、多機能機10及び通話デバイス70は、指定設定DWS1及びDWS2を用いて、AP6を介して、適切に無線通信を実行可能である。従って、S250でFAX送信操作が実行される場合に、多機能機10と通話デバイス70との間では、通信確認、通信確認の応答、及び、送信対象のFAXデータが、AP6を介して、適切に通信される。この結果、S252において、送信対象のFAXデータがPSTN8を介して送信される。
【0088】
(ケースB2)
図7に示されるように、ケースB2では、通話デバイス70は、指定設定DWS2を用いて、多機能機10に通信確認を送信しても(図3のS112)、通信確認の応答を受信することができない(図3のS114でNO)。この場合、S260において、通話デバイス70は、通話デバイス70の現在の無線設定を、指定設定DWS2から初期設定IWSに変更する(図3のS118)。
【0089】
S262でFAX送信操作が実行される際に、多機能機10は、指定設定DWS1を用いて、通話デバイス70に通信確認を送信しても(図2のS44)、通信確認の応答を受信することができない(図2のS46でNO)。この場合、S264において、多機能機10は、多機能機10の現在の無線設定を、指定設定DWS1から初期設定IWSに変更する(図2のS50)。次いで、多機能機10は、初期設定IWSを用いて、通話デバイス70に通信確認を送信する(図2のS52)。多機能機10及び通話デバイス70のそれぞれに同じ初期設定IWSが設定されているために、多機能機10は、通信確認の応答を受信する(図2のS54でYES)。
【0090】
次いで、多機能機10は、初期設定IWSを用いて、AP6を介さずに、通話デバイス70に送信対象のFAXデータを無線で送信する(図2のS58)。通話デバイス70は、初期設定IWSを用いて、AP6を介さずに、送信対象のFAXデータを受信する(図3のS126でYES)。この結果、送信対象のFAXデータの送信及び受信が完了する(S266,S268)。次いで、S270において、通話デバイス70は、PSTN8を介して送信対象のFAXデータを送信する(図3のS128)。
【0091】
次いで、S272において、多機能機10は、多機能機10の現在の無線設定を、初期設定IWSから指定設定DWS1に変更する(図2のS60)。これにより、多機能機10は、指定設定DWS1を用いて、AP6を介して、PC4と無線通信を再び実行し得る。また、S274において、通話デバイス70は、通話デバイス70の現在の無線設定を、初期設定IWSから指定設定DWS2に変更する(図3のS130)。
【0092】
(ケースBの効果)
上記のケースB2に示されるように、通話デバイス70は、多機能機10と通信不可能であることが確認される場合に、現在の無線設定を指定設定DWS2から初期設定IWSに変更する。また、多機能機10は、送信対象のFAXデータが通話デバイス70に送信されるべき際(図2のS40でYES)に、通話デバイス70と通信不可能であることが確認される場合に、現在の無線設定を指定設定DWS1から初期設定IWSに変更する。この結果、多機能機10及び通話デバイス70は、同じ初期設定IWSを用いて、送信対象のFAXデータの無線通信を実行することができる。従って、多機能機10及び通話デバイス70が送信対象のFAXデータの無線通信を実行することができない事象が発生するのを抑制し得る。
【0093】
(対応関係)
多機能機10、通話デバイス70が、それぞれ、「第1の通信装置」、「第2の通信装置」の一例である。多機能機10のNVRAM34、通話デバイス70のNVRAM84が、それぞれ、「第1のメモリ」、「第2のメモリ」の一例である。また、初期設定IWS、受信設定RWS、指定設定DWS1、指定設定DWS2が、それぞれ、「初期無線設定」、「所定の無線設定」、「第1の現行無線設定」、「第2の現行無線設定」の一例である。さらに、印刷対象のFAXデータ、送信対象のFAXデータが、それぞれ、「第1の対象データ」、「第2の対象データ」の一例である。また、受信設定RWSに含まれるSSID「001−RECV」が、「特定の情報」の一例である。
【0094】
(第2実施例)
第1実施例と異なる点を説明する。多機能機10のNVRAM34は、受信設定RWSを格納せずに、初期設定IWSと指定設定DWS1(図示省略)とを格納する。同様に、通話デバイス70のNVRAM84は、受信設定RWSを格納せずに、初期設定IWSと指定設定DWS2(図示省略)とを格納する。
【0095】
(多機能機10が実行する処理;図8)
本実施例では、図2の多機能機処理に代えて、図8の多機能機処理が実行される。S310〜S316は、図2のS10〜S16と同様である。S318では、判断部58は、通話デバイス70から、通話デバイス70の現在の無線設定に含まれるSSIDと共に、特定の情報(例えば所定の文字列)を受信したか否か判断する。ここでYESの場合には、S319において、変更部54は、多機能機10の現在の無線設定が初期設定IWSであるのか否かを判断する。ここでNOの場合には、S320において、変更部54は、多機能機10の現在の無線設定を、指定設定DWS1から初期設定IWSに変更する。なお、S322〜S360は、図2のS22〜S60と同様である。
【0096】
(通話デバイス70が実行する処理;図9)
本実施例では、図3の通話デバイス処理に代えて、図9の通話デバイス処理が実行される。S410〜S446は、図3のS110〜S146と同様である。S446でNOの場合には、S448において、変更部104は、通話デバイス70の現在の無線設定が初期設定IWSであるのか否かを判断する。ここでNOの場合には、S450において、変更部104は、通話デバイス70の現在の無線設定を、指定設定DWS2から初期設定IWSに変更する。S452〜S454は、図3のS152〜S154と同様である。
【0097】
S456では、情報送信部108は、多機能機10からプローブリクエストを受信すると、通話デバイス70の現在の無線設定である初期設定IWSに含まれるSSID「001」と共に、予め決められている特定の情報(例えば所定の文字列)を、多機能機10に送信する。なお、情報送信部108は、S432で多機能機10からプローブリクエストを受信する場合には、通話デバイス70の現在の無線設定に含まれるSSIDを多機能機10に送信するが、特定の情報を多機能機10に送信しない。なお、S458〜S460は、図3のS158〜S160と同様である。
【0098】
(第2実施例の具体例;図10)
本実施例でも、第1実施例のケースA,A1,B,B1,B2が実現される。本実施例では、第1実施例のケースA2の代わりに、図10のケースA2’が実現される。多機能機10が1回目のSSIDサーチを実行する段階までは、図5と同様である。この場合、通話デバイス70は、指定設定DWS2に含まれるSSID(即ち、上記のケースXの場合にはSSID「003」、上記のケースYの場合にはSSID「002」)を、多機能機10に送信する(図9のS434)。ただし、この場合、通話デバイス70は、特定の情報を多機能機10に送信しない。
【0099】
通話デバイス70は、多機能機10に通信確認を送信しても(図9のS412)、多機能機10から応答を受信しないために(図9のS414でNO)、S520において、通話デバイス70の現在の無線設定を、指定設定DWS2から初期設定IWSに変更する(図9のS418)。なお、第1実施例と同様に、S520の通信確認が送信されるタイミングより前に、通話デバイス70がS522でPSTN8から印刷対象のFAXデータを受信する場合(図9のS440でYES)には、S524において、通話デバイス70は、通話デバイス70の現在の無線設定を、指定設定DWS2から初期設定IWSに変更する(図9のS5450)。
【0100】
その後、通話デバイス70は、多機能機10からプローブリクエストを受信すると、初期設定IWSに含まれるSSID「001」と、特定の情報と、を多機能機10に送信する(図9のS456)。この結果、S525において、多機能機10は、多機能機10の現在の無線設定を、指定設定DWS1から初期設定IWSに変更する(図8のS320)。その後の処理(即ち、印刷対象のFAXデータの送信及び印刷処理(S526,S528)、無線設定を変更前の設定に戻す処理(S532,S534))は、図5と同様である。
【0101】
(ケースA2‘の効果)
本実施例では、多機能機10及び通話デバイス70は、指定設定DWS1,DWS2を用いて、無線通信を実行することができない状況において、印刷対象のFAXデータが存在する場合には、指定設定DWS1,DWS2から初期設定IWSに変更する。この結果、多機能機10及び通話デバイス70が印刷対象のFAXデータの無線通信を実行することができない事象が発生するのを抑制し得る。また、多機能機10は、指定設定DWS1を用いて、無線通信を実行することができない状況において、印刷対象のFAXデータが存在しない場合には、指定設定DWS1を維持する。これにより、多機能機10は、印刷対象のFAXデータが存在しない場合には、指定設定DWS1を用いて、AP6を介して、PC4と無線通信を実行し得る。従って、多機能機10がPC4と無線通信を実行することができない事象が発生するのも抑制することができる。即ち、本実施例によると、多機能機10は、適切なタイミングで、指定設定DWS1から初期設定IWSに変更することができる。
【0102】
なお、多機能機10は、印刷対象のFAXデータが存在するのか否かを、通話デバイス70からSSIDと共に特定の情報が受信されるのか否かによって判断する。本実施例では、第1実施例と比較すると、通話デバイス70が、プローブリクエストに応じて、SSIDと共に特定の情報を送信するための新規な仕組みが必要である。換言すると、第1実施例では、このような新規な仕組みが必要ないために、多機能機10は、一般的なプローブリクエストの通信を用いることによって、印刷対象のFAXデータが存在するのか否かを知ることができる。ただし、本実施例では、新規な仕組みが必要ではあるが、多機能機10及び通話デバイス70のNVRAM34,84に受信設定RWSを格納させる必要がなく、NVRAM34,84が記憶すべき情報量を低減させることができる。なお、本実施例では、初期設定IWSが、「所定の無線設定」の一例である。
【0103】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を採用してもよい。
【0104】
(1)上記の第1実施例では、多機能機10の受信部60は、SSIDサーチとして、プローブリクエストを送信して通話デバイス70からSSIDを受信する手法を採用している。これに代えて、多機能機10の受信部60は、SSID「001−RECV」が指定されたプローブリクエストを送信してもよい。この場合、通話デバイス70の情報送信部108は、(A)通話デバイス70の現在の無線設定に含まれるSSIDが、プローブリクエストに含まれるSSID「001−RECV」に一致する場合に、SSID「001−RECV」を含む応答を多機能機10に送信し、(B)通話デバイス70の現在の無線設定に含まれるSSIDが、プローブリクエストに含まれるSSID「001−RECV」に一致しない場合に、応答を多機能機10に送信しなくてもよい。この構成によっても、多機能機10の判断部58は、通話デバイス70から受信されるSSIDが「001−RECV」であるのか否かを判断することができ、この結果、印刷対象のFAXデータが存在するのか否かを適切に判断することができる。本変形例も、「判断部は、第2の通信装置から特定の情報が受信されるのか否かを判断する」という構成に含まれる。
【0105】
(2)また、第1実施例において、通話デバイス70の情報送信部108は、多機能機10からプローブリクエストを受信しなくても、通話デバイス70の現在の無線設定に含まれるSSIDを、多機能機10に定期的に送信する構成を採用してもよい。この場合、多機能機10の受信部60は、通話デバイス70から定期的にSSIDを受信して、当該SSIDをVRAM40に記憶させてもよい。そして、図2のS18において、多機能機10の判断部58は、VRAM40に記憶されているSSIDの中に、「001−RECV」が存在する場合に、通話デバイス70から「001−RECV」が受信されたと判断してもよい。本変形例も、「判断部は、第2の通信装置から特定の情報が受信されるのか否かを判断する」という構成に含まれる。
【0106】
(3)第1実施例のケースA2、ケースB2、及び、第2実施例のケースA2’では、インフラストラクチャモードの無線設定DWS1、DWS2から、アドホックモードの無線設定RWS又はIWSに変更される。即ち、上記の各実施例では、「所定の無線設定」、「第1(又は第2)の現行無線設定」が、それぞれ、アドホックモードの無線設定、インフラストラクチャモードの無線設定である。これに代えて、「所定の無線設定」及び「第1(又は第2)の現行無線設定」の両方が、アドホックモードの無線設定であってもよい。また、「所定の無線設定」及び「第1(又は第2)の現行無線設定」の両方が、インフラストラクチャモードの無線設定であってもよい。また、「所定の無線設定」がインフラストラクチャモードの無線設定であり、「第1(又は第2)の現行無線設定」がアドホックモードの無線設定であってもよい。
【0107】
(4)上記の実施例では、多機能機10と通話デバイス70との間で通信される通信対象のデータは、FAXデータである。即ち、一般的に言うと、「第1の対象データ」及び「第2の対象データ」は、FAXデータを含む。しかしながら、「第1の対象データ」及び「第2の対象データ」は、FAXデータ以外のデータ(例えば、音声データ、画像データ、その他の種類のデータ(例えばテキストデータ)等)を含んでいてもよい。
【0108】
(5)上記の実施例では、多機能機10、通話デバイス70が、それぞれ、「第1の通信装置」、「第2の通信装置」の一例であるが、これに限られない。例えば、「第1の通信装置」及び「第2の通信装置」のそれぞれは、PCであってもよい。この場合、一対のPCの間でデータを通信するために、本明細書によって開示される技術が利用されてもよい。また、例えば、「第2の通信装置」がPCであり、「第1の通信装置」がプリンタであってもよい。この場合、例えば、PCからプリンタに送信される印刷データが、「第1の対象データ」及び「第2の対象データ」の一例であってもよい。一般的に言うと、「第1(又は第2)の通信装置」は、第2(又は第1)の通信装置と無線通信を実行するデバイスであればよい。
【0109】
(6)また、上記の実施例では、各部52〜60及び各部102〜108は、CPU32,82がプログラムを実行することによって実現される。これに代えて、各部52〜60及び各部102〜108のうちの少なくとも一部は、論理回路等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0110】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0111】
2:無線通信システム、6:AP、10:多機能機、70:通話デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の通信装置と無線通信を実行する第1の通信装置であって、
所定の無線設定を格納する第1のメモリと、
前記第1の通信装置に現在設定されている無線設定である第1の現行無線設定を用いて、前記第2の通信装置と無線通信を実行可能であるのか否かを確認する第1の確認部と、
前記第1の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認され、かつ、前記第2の通信装置から特定の情報が受信される第1の場合に、前記第1の現行無線設定を前記第1のメモリ内の前記所定の無線設定に変更し、前記第1の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認され、かつ、前記第2の通信装置から前記特定の情報が受信されない第2の場合に、前記第1の現行無線設定を維持する第1の変更部であって、前記特定の情報は、前記第2の通信装置から前記第1の通信装置へ送信されるべき第1の対象データが存在する場合に、前記第2の通信装置から送信される情報である、前記第1の変更部と、
前記第1の場合に、前記所定の無線設定を用いて、前記第2の通信装置から前記第1の対象データを受信する第1の通信実行部と、
を備える第1の通信装置。
【請求項2】
前記第1の通信装置は、さらに、
前記第1の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認される場合に、前記第2の通信装置から前記特定の情報が受信されるのか否かを判断する判断部を備え、
前記第1の変更部は、
前記第2の通信装置から前記特定の情報が受信されると判断される前記第1の場合に、前記第1の現行無線設定を前記所定の無線設定に変更し、
前記第2の通信装置から前記特定の情報が受信されないと判断される前記第2の場合に、前記第1の現行無線設定を維持する、請求項1に記載の第1の通信装置。
【請求項3】
前記特定の情報は、前記所定の無線設定に含まれる特定のネットワーク識別情報であり、
前記判断部は、前記第2の通信装置から、前記第2の通信装置に現在設定されている無線設定に含まれるネットワーク識別情報を受信する受信部を備え、
前記判断部は、前記第2の通信装置から受信される前記ネットワーク識別情報と、前記特定のネットワーク識別情報と、が一致するのか否かを判断することによって、前記第2の通信装置から前記特定の情報が受信されるのか否かを判断する、請求項2に記載の第1の通信装置。
【請求項4】
前記第1のメモリは、さらに、前記所定の無線設定とは異なる初期無線設定を格納し、
前記第1の変更部は、さらに、前記第1の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認され、かつ、前記第1の通信装置から前記第2の通信装置へ第2の対象データが送信されるべき第3の場合に、前記第1の現行無線設定を前記第1のメモリ内の前記初期無線設定に変更し、
前記第1の通信実行部は、前記第3の場合に、前記初期無線設定を用いて、前記第2の対象データを前記第2の通信装置に送信する、請求項1から3のいずれか一項に記載の第1の通信装置。
【請求項5】
前記特定の情報は、前記所定の無線設定に含まれる特定のネットワーク識別情報であり、
前記特定の情報は、前記初期無線設定に含まれるネットワーク識別情報に、予め決められている文字列が付加されたものである、請求項4に記載の第1の通信装置。
【請求項6】
前記第2の通信装置は、前記第1の通信装置の付属機器であり、
前記第2の通信装置は、一般公衆回線が接続されるインターフェースを備え、
前記第1の対象データは、前記第2の通信装置の前記インターフェースによって前記一般公衆回線から受信されるFAXデータであって、前記第1の通信装置で出力されるべき前記FAXデータを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の第1の通信装置。
【請求項7】
前記所定の無線設定は、前記第1の通信装置及び前記第2の通信装置が、アクセスポイントを介さずに直接的に無線通信を実行するためのアドホックモードの無線設定であり、
前記第1の現行無線設定は、前記第1の通信装置及び前記第2の通信装置が、アクセスポイントを介して間接的に無線通信を実行するためのインフラストラクチャモードの無線設定であり、
前記第1の変更部は、
前記第1の場合に、インフラストラクチャモードの無線設定である前記第1の現行無線設定を、アドホックモードの無線設定である前記所定の無線設定に変更し、
前記第2の場合に、インフラストラクチャモードの無線設定である前記第1の現行無線設定を維持する、請求項1から6のいずれか一項に記載の第1の通信装置。
【請求項8】
前記第1の通信実行部は、前記第1の現行無線設定を用いて無線通信を実行可能であると確認される場合に、前記第1の現行無線設定を用いて、前記第2の通信装置から前記第1の対象データを受信する、請求項1から7のいずれか一項に記載の第1の通信装置。
【請求項9】
第1の通信装置と無線通信を実行する第2の通信装置であって、
所定の無線設定を格納する第2のメモリと、
前記第2の通信装置に現在設定されている無線設定である第2の現行無線設定を用いて、前記第1の通信装置と無線通信を実行可能であるのか否かを確認する第2の確認部と、
前記第2の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認され、かつ、前記第2の通信装置から前記第1の通信装置へ送信されるべき第1の対象データが存在する第4の場合に、特定の情報を前記第1の通信装置に送信し、前記第2の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認され、かつ、前記第1の対象データが存在しない第5の場合に、前記特定の情報を前記第1の通信装置に送信しない情報送信部と、
前記第4の場合に、前記第2の現行無線設定を前記第2のメモリ内の前記所定の無線設定に変更する第2の変更部と、
前記第4の場合に、前記所定の無線設定を用いて、前記第1の通信装置に前記第1の対象データを送信する第2の通信実行部と、
を備える第2の通信装置。
【請求項10】
第2の通信装置と無線通信を実行する第1の通信装置であって、所定の無線設定を格納する第1のメモリを備える前記第1の通信装置のためのコンピュータプログラムであって、前記第1の通信装置に搭載されるコンピュータに、以下の各処理、即ち、
前記第1の通信装置に現在設定されている無線設定である第1の現行無線設定を用いて、前記第2の通信装置と無線通信を実行可能であるのか否かを確認する第1の確認処理と、
前記第1の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認され、かつ、前記第2の通信装置から特定の情報が受信される第1の場合に、前記第1の現行無線設定を前記第1のメモリ内の前記所定の無線設定に変更し、前記第1の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認され、かつ、前記第2の通信装置から前記特定の情報が受信されない第2の場合に、前記第1の現行無線設定を維持する第1の変更処理であって、前記特定の情報は、前記第2の通信装置から前記第1の通信装置へ送信されるべき第1の対象データが存在する場合に、前記第2の通信装置から送信される情報である、前記第1の変更処理と、
前記第1の場合に、前記所定の無線設定を用いて、前記第2の通信装置から前記第1の対象データを受信する第1の通信実行処理と、
を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項11】
第1の通信装置と無線通信を実行する第2の通信装置であって、所定の無線設定を格納する第2のメモリを備える前記第2の通信装置のためのコンピュータプログラムであって、前記第2の通信装置に搭載されるコンピュータに、以下の各処理、即ち、
前記第2の通信装置に現在設定されている無線設定である第2の現行無線設定を用いて、前記第1の通信装置と無線通信を実行可能であるのか否かを確認する第2の確認処理と、
前記第2の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認され、かつ、前記第2の通信装置から前記第1の通信装置へ送信されるべき第1の対象データが存在する第4の場合に、特定の情報を前記第1の通信装置に送信し、前記第2の現行無線設定を用いて無線通信を実行不可能であると確認され、かつ、前記第1の対象データが存在しない第5の場合に、前記特定の情報を前記第1の通信装置に送信しない情報送信処理と、
前記第4の場合に、前記第2の現行無線設定を前記第2のメモリ内の前記所定の無線設定に変更する第2の変更処理と、
前記第4の場合に、前記所定の無線設定を用いて、前記第1の通信装置に前記第1の対象データを送信する第2の通信実行処理と、
を実行させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−115687(P2013−115687A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261538(P2011−261538)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】