説明

通気性のある弾性ポリオレフィンフィルムを作るプロセスおよび工場

本発明は、通気性のある弾性ポリオレフィンフィルムを準備するためのプロセスに関し、プロセスは、延伸による多孔性の生成を容易にするために、オレフィン、スチレン系熱可塑性エラストマおよび充填材の混合物をブロー成形するステップと、フラットフィルムを得るためにチューブ状のものを圧搾するステップと、フラットフィルムを軟化点まで加熱するステップと、フラットフィルムをプレスするステップと、フラットフィルムを8度から30度に冷却するステップと、通気性をもたせるためにフィルムを横および/または縦方向に延伸するステップとを含む。さらに本発明は、通気性のある弾性ポリオレフィンフィルムを生産するための工場と、通気性のある弾性ポリオレフィンフィルムを生産するためのオレフィン、スチレン系熱可塑性エラストマおよび充填材の混合物の使用とを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性のある弾性フィルムを準備するプロセスと、そのようなプロセスを実現するための工場と、通気性のある弾性ポリオレフィンフィルムを作るためのポリオレフィンおよび熱可塑性エラストマの混合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
通気性のあるポリオレフィンフィルムは、特にフィルムが空気と蒸気を通すことが可能である一方で液体に対して不浸透性であるように設計された製品を作るため、さまざまな技術分野で用いられる。
【0003】
先行技術についてのよりよい理解のため参照される、本願の出願人名義による特許EP−B1−1 226 013から、CaC0充填材または等価的な材料を加えたポリオレフィンフィルムを横および/または縦方向に延伸することにより、通気性のあるポリオレフィンフィルムを作るプロセスが公知である。
【0004】
特許EP−B1−1 226 013の教示によれば、延伸されるポリオレフィンフィルムは、ブロー押出成形によってチューブ状のもの(tubular)を生成するステップと、2つの重ねられた層を得るためにチューブ状のものを圧搾するステップと、2つの重ねられた層を軟化点まで加熱するステップと、強く連結するために2つの層を一緒にプレスするステップと、このように得られたフィルムを冷却するステップとを含むプロセスから得られる。
【0005】
このプロセスによって得られたフィルムは、フィルムの液体不透性特性に影響し得る微小孔を生成する危険を増大することなく、より高いフィルム延伸速度および延伸率を可能にする利点を有する。
【0006】
特許EP−B1−1 226 013のプロセスの結果としての通気性のあるポリオレフィンフィルムは、さらなる欠点を有する。
【0007】
特にフィルムが適切な液体密封性を与える一方、破損する危険を生じることなく覆われる表面に容易に適合されないことがあり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、先行技術の課題、特に上述の課題の解決策を与えることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのような目的は、請求項1の原理によるプロセス、請求項10の原理による工場、ならびに請求項12の原理による、ポリオレフィン、スチレン系熱可塑性エラストマおよび充填材の混合物の使用によって達成される。
【0010】
プロセスのさらなる実施形態は従属請求項2から9の原理に従って与えられることができ、工場のさらなる実施形態は従属請求項11の原理に従って与えられることができ、さらなる用途が請求項13の原理に従って作られ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のプロセスおよび装置は、本発明による生産工場を概略的に示すための図面とと
もに提案される、以下の可能な実施形態の記載からより明らかになる。
【0012】
下記に記載されるプロセスは、好ましくはLDPE、LLDPEタイプのポリエチレンと、スチレン系熱可塑性エラストマと、延伸することによりフィルムを多孔性にする、通常はCaC0ベースの充填材との混合物を用いる。
【0013】
しかしながら、従来の触媒作用方法(チーグラー、チーグラー−ナッタ、フィリップス(Ziegler、Ziegler−Natta、Phillips))またはメタロセン触媒作用によって得ることができる他のポリエチレンベースおよび/またはポリプロピレンベースのオレフィンが用いられてもよく、特に、4から10の炭素原子を備えたαオレフィンを有するポリエチレン共重合体(1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなど)であってもよい。
【0014】
追加される充填材の量は所望の通気性にも依存し、典型的には充填材は混合物の30重量%から70重量%である。
【0015】
より好ましくは、充填材は混合物の40重量%から50重量%である。
他の種類の有機的または無機的充填材がCaC0の代りに用いられてもよい。
【0016】
特に、以下の充填材が用いられてもよい。粘土、カオリン、ゼオライト、Zn、Al、Ca、CaS0、BaS0、MgO、Mg(OH)、TiOである。
【0017】
好ましくは充填材は、0.5μmから2μmの平均粒度を有し、その表面を疎水性にするよう処理される。
【0018】
充填材は、ポリマにおいてよりよい分散を得るために、例えばステアリン酸などの脂肪酸でさらに被膜されてもよい。
【0019】
可能な実施形態によれば、スチレン系熱可塑性エラストマは、クラトン(KRATON)(登録商標)(クラトンポリマリサーチ社)(KRATON POLYMERS RESEARCH S.A.- Avenue Jean Monnet 1-B-1348 Ottignies-Louvain-la-Neuve)販売)、またはセプトン(SEPTON)(登録商標)(クラレ社)(KURARAY Co.,LTD - Kuraray Nihonbashi BLDG., 3-1-6, Nihonbashi, CHUO-KU, TOKYO, 103-8254)販売)であってもよい。
【0020】
スチレン系熱可塑性エラストマの量は、混合物の10重量%から40重量%であってもよい。
【0021】
より好ましくは、スチレン系熱可塑性エラストマの量は混合物の20重量%から30重量%であってもよい。
【0022】
いずれにしても、スチレン系熱可塑性エラストマの量は、弾性ヒステリシス図において、50%の伸びにおいて検知される第1のサイクルと第2のサイクルとの間では30%から70%(好ましくは40%未満)のヒステリシス損失値、および、2サイクル後には、30%未満(好ましくは10%未満)の残留変形を得るような量である。
【0023】
これらのパラメータは、3インチの見本について、ターミナルを100mm間隔で配置し、伸び速度500mm/分で、インストロン(INSTRON)(登録商標)動力計シリーズ5564を用いることにより標準環境条件で行われたテストから得られた。
【0024】
オレフィンの量は、要求される弾性および通気性に依存して変動し得る。
好ましくは、オレフィンの量は混合物の10重量%から50重量%であってもよい。
【0025】
より好ましくは、オレフィンの量は混合物の25重量%から38重量%であってもよい。
【0026】
さらにより好ましくは、オレフィンの量は混合物の27重量%から34重量%であってもよい。
【0027】
混合物の3つの成分(オレフィン、スチレン系熱可塑性エラストマおよび充填材)の重量百分率の範囲を参照すると、1つの成分のいかなる重量偏差も少なくとも1つの別の成分の等しく反対の重量偏差を示すことが理解され、その結果、重量百分率の合計は常に100%である。
【0028】
プロセスの可能な実施形態では、重量百分率は実質的に以下のとおりである。27%のオレフィン、27%のスチレン系熱可塑性エラストマおよび46%の充填材である。
【0029】
この混合物は、円形ヘッド押出機1によってブロー成形され、それによりチューブ状のもの10を得る。
【0030】
押出機1によって供給されるチューブ状のもの10の温度は150度から230度、好ましくは170度から190度である。
【0031】
チューブ状のもの10のブロー率は、1:2から1:4、好ましくは1:3である。
ブロー押出成形されたチューブ状のもの10はさらにカレンダ加工される。
【0032】
チューブ状のもの10は、特に約80度から120度、より好ましくは約100度の温度で第1のカレンダ2に供給され、そこでチューブ状のものは2つの重ねられた層によって形成されるウェブ形状11になるまでプレスされ延ばされ、その幅はチューブ状のものの周囲の半分であってその厚さはチューブ状のものの厚さの2倍である。
【0033】
2つの重ねられた層を与えることは、続く延伸ステップの間、フィルムが損傷され得る危険、すなわち液体の不透性が不完全な領域を有し得る危険を減じる。
【0034】
実際、フィルムが両方の層の同じ位置で引裂け得る可能性は非常にまれである。
チューブ状のもの10を伸ばして薄くするために使用されるカレンダ2は、一対の合致する滑らかなローラを有し、前者はクロムメッキされた鋼からできており、後者は60から80ショア硬さのゴムでできている。加圧されたチューブ状のもの10にカレンダローラ2によって働く圧力は5kg/cmから10kg/cmである。
【0035】
フィルム11は、平らにされた後に軟化点まで加熱される。
この温度は押出された混合物の種類に依存し、80度から130度を示し、より好ましくは約100度である。
【0036】
このような加熱プロセスは、押出し混合物の水分または低蒸発点添加物の除去を助ける。
【0037】
さらに、このような加熱プロセスは、プロセスの前のステップによって引起されるフィルムの微小歪みの除去を助け、より一様なフィルム内部構造を与える。
【0038】
したがって、続く延伸はフィルムの全体にわたって一様である。
加熱は、まず約60度から100度の温度を有するホットローラ3の間にフィルム11を与えることによって得られ、次に、軟化点までさらに温度を上げる赤外線ランプ4の近くを通過する。
【0039】
実際、通常は水または油で加熱されるホットローラを用いることのみによっては、軟化点に達することがあるとしてもほとんど達することはできない。
【0040】
さらにIRランプは、フィルムのまわりの空気層を(典型的には300度から400度まで)加熱するという利点をもたらし、それによりフィルム11から残留水分を完全に除去することが可能になる。
【0041】
加熱後、フィルムはカレンダ5によってもう一度プレスされ、8度から30度の温度に冷却される。
【0042】
このような冷却プロセスは、好ましくは、8度から30度の一定温度で維持されるカレンダ5のローラの1つとの接触によって生じる。
【0043】
ローラ加圧により、この付加的なカレンダ加工ステップは元の2つの層を強く連結し、上記から得られたフィルムのいかなる層間剥離をも防ぐことを可能にし、フィルムに生成された熱衝撃が安定化処理を停止することを可能にする。
【0044】
このステップでは、フィルムは、その基本重量を変更することなく美的な目的のために任意でエンボス加工されてもよい。
【0045】
フィルムに生成される熱衝撃により、次の延伸ステップ中にフィルムによりよい通気性をもたらすことが判明した。
【0046】
フィルム加圧は、クロムメッキした鋼ローラおよび(60から80ショア硬さを有する)ゴムローラを組合せることにより得られる。
【0047】
安定化ステップの後、フィルム11は、横および/または縦方向に延伸される。
この目的のため、フィルムの横および/または縦方向にフィルムを延伸するための適切な手段6,8が与えられる。
【0048】
明らかに、これらの延伸ステップは逆でもよい。
好ましくは、延ばしローラ7が横方向延伸手段6および縦方向延伸手段8の間に与えられ、第1の延伸プロセスによって生成された折り目を除去する。
【0049】
典型的な縦の延伸率は、1:1.5から1:4であって、最も好ましい比率は1:3.5である。
【0050】
同様に、横縦の延伸率は、1:1.5から1:2.5である。
しかしながら、必要であれば、延伸はさらに1:4の比率にさえ達し得る。
【0051】
このような範囲内では、透湿性レベルは、モコン−パーマトラン(Mocon−Permatran)W器具のモデル100Kを用いてINDA IST 70.4方法(99)で検知される、500から10000(g/m)24hであり得る。
【0052】
フィルム11は、横および/または縦方向に延伸された後、フィルムスナップバックを最小限にするために延伸安定化ステーションを通過する。
【0053】
したがって、延伸されたフィルムの表面上で動作が継続して実行されるとき、あらゆる望ましくない縮みまたはしわ効果を防ぐ。
【0054】
あり得る公知の実施形態によれば、冷却安定化は、8度から30度の温度に保たれた2つのローラの間にフィルムを通すことによって行われてもよい。
【0055】
フィルムが一旦延伸されれば、いかなる公知の表面処理をも受けることができる。
フィルム11は、表面処理がされる場合はその後に消費者システムに運ばれるか、または格納用に巻取り機9によって巻取られてもよい。
【0056】
押出されたフィルムは高い表面接着力を有し、実際そのためにフィルムを損傷することなくロールを解くことが妨げられる。
【0057】
したがって、フィルムをロールに巻く前に、押出されたフィルム11に分離物質が与えられ、ロールの連続する巻きの間のいかなる直接接触をも防ぐ。
【0058】
この目的のため、延伸された弾性フィルム11と分離物質とを結合するための特別なステーション12が与えられる。
【0059】
したがって、フィルムがそれ自体に接着することに関連する問題を招くことなく、ロール18の巻きを連続的に解くことができる。
【0060】
第1の可能な実施形態によれば、分離層は連続的な構造を有する。
典型的にはこの層は、フィルムの最終使用に依存して、その間に接着手段を配置するか、または配置することなくフィルムに結合され得る、紙または不織布でできている。
【0061】
接着手段は、特別な装置14によって送達されてもよい。
代替的には分離物質は、不連続な構造を有する。
【0062】
この場合には、分離物質は押出されたフィルムの表面に与えられる粉末状の物質でできていてもよい。
【0063】
使用可能な粉末の物質は、例えば、タルク、石膏または大理石を含む。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明による生産工場を概略的に示す図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性のある弾性ポリオレフィンフィルムを準備するためのプロセスであって、
−延伸による多孔性の生成を容易にするために、オレフィン、スチレン系熱可塑性エラストマおよび充填材の混合物をブロー成形するステップと、
−フラットフィルムを得るためにチューブ状のもの(tubular)を圧搾するステップと、
−フラットフィルムを軟化点まで加熱するステップと、
−フラットフィルムをプレスするステップと、
−フラットフィルムを8度から30度に冷却するステップと、
−通気性をもたせるためにフィルムを横および/または縦方向に延伸するステップとを含む、プロセス。
【請求項2】
−通気性のある弾性フィルムに分離物質を結合するステップと、
−分離物質と結合されたフィルムをロールに巻取るステップとをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記混合物は、30重量%から70重量%の充填材と、10重量%から40重量%のスチレン系熱可塑性エラストマと、10重量%から50重量%のオレフィンとを含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記分離物質は連続的な構造を有する、請求項1、2または3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記分離物質は紙または不織布フィルムである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記紙または不織布フィルムは接着剤によって前記押出されたフィルムに結合される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記紙または不織布フィルムは、接着剤を用いることなく前記押出されたフィルム(11)に結合される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記分離層は不連続な構造を有する、請求項1、2または3に記載のプロセス。
【請求項9】
前記分離層は粉末状物質でできている、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
通気性のあるエラストマポリオレフィンフィルムを生産するための工場であって、
−チューブ状のもの(11)を押出すためのブロー押出成形機(1)と、
−ブロー押出成形機から供給される、押出されたチューブ状のもの(11)を圧搾するためのカレンダ(2)と、
−圧搾された押出されたチューブ状フィルムを軟化点まで加熱するための手段(3,4)と、
−以前に軟化点まで加熱されたフィルムをプレスするカレンダ(5)と、
−加圧されたフィルムを8度から30度の温度に冷却するための手段(5)と、
−フィルム(11)を横および/または縦方向に延伸するための手段(6,8)と、
−押出されたフィルム(11)を冷却することによる延伸安定化のための手段(6,8)とを連続して含む、工場。
【請求項11】
−押出されたフィルム(11)を分離物質に結合するための手段(12,13,14)と、
−前記分離物質に結合されたフィルム(11)をロール(18)に巻取るための巻取り
機(9)とをさらに含む、請求項10に記載の工場。
【請求項12】
通気性のある弾性フィルムを生産するための、オレフィン、スチレン系熱可塑性エラストマおよび充填材の混合物の使用。
【請求項13】
スチレン系熱可塑性エラストマの量は10重量%から40重量%、充填材の量は30重量%から70重量%、オレフィンの量は10重量%から50重量%である、請求項12に記載の混合物の使用。

【公表番号】特表2007−533487(P2007−533487A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540667(P2006−540667)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003877
【国際公開番号】WO2005/051635
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(501125437)ヌオーバ・パンサック・ソシエタ・ペル・アチオニ (1)
【氏名又は名称原語表記】NUOVA PANSAC S.P.A.
【Fターム(参考)】