説明

通気性粘着テープ

【課題】優れた織布と粘着剤層の密着性を有すると同時に、発汗や水等との接触による粘着力の低下も抑制でき、他の性能にも優れた通気性粘着テープを提供する。
【解決手段】基材及び粘着剤層を有する通気性粘着テープであって、上記基材は、ポリウレタン糸を芯糸として合成繊維糸でカバーリングした縦糸と合成繊維糸を芯糸として綿糸でカバーリングした横糸とが平織りされた織布であることを特徴とする通気性粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用やスポーツ用等に用いられる粘着テープは、一般に、紙、布、プラスチックフィルム等を素材とする基材の片面に粘着剤層が形成された構成を有している。例えば、医療用粘着テープは脱脂綿、ガーゼ、包帯、シップ剤等のヒトの皮膚への固定用等に使用されており、スポーツ用テープは主に患部の固定、圧迫、保護用に使用されている。また近年、血液・リンパ液循環の改善、筋肉や関節の動きのサポート、表皮の緊張緩和等が可能なキネシオロジーテープと称される粘着テープも使用されている。
【0003】
粘着テープの一例のキネシオロジーテープの一般的な構成は、織布/粘着剤層/剥離紙の3層構造のものであり、当該織布として、ポリウレタン糸を芯糸として綿糸でカバーリングした縦糸と綿糸の横糸との平織りのもの等が提案されている。このようなキネシオロジーテープの縦方向(伸縮性を有する)を筋肉の流れに沿うように貼ることで、痛みや凝りの緩和、血流の改善、運動時のケガ予防等が期待できる。
【0004】
しかし、このような一般的なキネシオロジーテープは、発汗や水等との接触により綿糸が吸水してしまうため、テープの粘着力(特に自背面粘着力)が大幅に低下して剥がれやすくなるという問題がある。
【0005】
また、粘着テープとして種々提案されているが(例えば、特許文献1〜4)、ここでは、基材(織布等)について詳細な検討がされていない。更に、発汗や水との接触により粘着力が低下すること、基材及び粘着剤層間の密着力が低いため糊残りが生じやすい等の問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−284252号公報
【特許文献2】特開平6−200220号公報
【特許文献3】特開平6−166853号公報
【特許文献4】特開平8−175979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、優れた織布と粘着剤層の密着性を有すると同時に、発汗や水等との接触による粘着力の低下も抑制でき、他の性能にも優れた通気性粘着テープを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材及び粘着剤層を有する通気性粘着テープであって、上記基材は、ポリウレタン糸を芯糸として合成繊維糸でカバーリングした縦糸と合成繊維糸を芯糸として綿糸でカバーリングした横糸とが平織りされた織布であることを特徴とする通気性粘着テープである。
上記粘着剤層がアクリル系粘着剤、吸水性高分子化合物及び疎水性有機溶剤を含有する粘着剤組成物を使用して得られるものであることが好ましい。
上記通気性粘着テープは、キネシオロジーテープであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の通気性粘着テープは、上記構成を有するため、発汗や水との接触によるテープの粘着力の低下を抑制できると同時に、織布と粘着剤層の間に良好な密着性を得ることも可能である。更に、撥水剤や抗菌剤等の各種添加剤により容易に機能を付与することもできることから、撥水性、抗菌性等の機能付与も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の通気性粘着テープの構成を示した概略図の一例である。
【図2】図1で示された構成の通気性粘着テープをロール状に巻き取った製品を示した概略図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の通気性粘着テープでは、基材として、ポリウレタン糸を芯糸として合成繊維糸でカバーリングした縦糸と合成繊維糸を芯糸として綿糸でカバーリングした横糸とが平織りされた織布が使用される。
【0012】
上記のとおり、ポリウレタン糸を芯糸として綿糸でカバーリングした縦糸と綿糸の横糸との平織りの織布を使用した一般的なキネシオロジーテープでは水分等との接触により粘着力が低下し、剥がれ易くなるため、綿糸に代えて吸水しにくいポリエステル等の合成繊維糸を使用することが考えられる。だが、このような合成繊維糸を用いた織布を基材としたテープは、織布及び粘着剤層間の密着性が悪く、糊残りし易い。
【0013】
これに対し、本発明では、縦糸としてポリウレタン糸(芯糸)を合成繊維糸でカバーリングしたものを使用していることにより、吸水が抑制され、発汗や水との接触が生じても良好な粘着力を維持できる。また、横糸として合成繊維糸(芯糸)を綿糸でカバーリングしたものを使用することで、粘着剤が織布の繊維間に入り込み易くなり投錨効果が生じるため、織布及び粘着剤層間の密着性が良好となる。以上のような作用により、両立が困難な織布及び粘着剤層間の高い密着性、発汗や水との接触による粘着力の低下の抑制の両立が可能となる。
【0014】
上記織布の縦糸は、ポリウレタン糸を芯糸として合成繊維糸でカバーリングしたもの(ポリウレタン糸に合成繊維糸がらせん状に巻き付けられたカバリング糸)である。
上記縦糸のポリウレタン糸は、ポリエステル系のポリウレタンやポリウレタンウレア、ポリエーテル系のポリウレタンやポリウレタンウレアから構成される弾性糸であり、これらポリウレタンやポリウレタンウレアに他の有機合成樹脂体を複合又は混合させた弾性糸等を用いてもよい。
【0015】
上記縦糸の合成繊維糸は特に限定されず、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリアミド繊維等が使用できるが、価格面、寸法安定性の点からポリエステル繊維が特に好ましい。
【0016】
上記織布の横糸は、合成繊維糸を芯糸として綿糸でカバーリングしたもの(合成繊維糸に綿糸がらせん状に巻き付けられたカバリング糸)である。
上記横糸の合成繊維糸は特に限定されず、上記縦糸に使用される合成繊維糸と同様のものが使用できる。
【0017】
上記横糸において、合成繊維糸及び綿糸の混合割合は、質量比で95:5〜30:70の範囲内が好ましく、80:20〜50:50の範囲内がより好ましい。綿糸の混合割合が少なすぎる場合は、投錨効果が得られず粘着剤との密着性が低下したり、各種添加剤(抗菌剤及び撥水剤等)が染み込みにくく機能付与しにくくなるおそれがある。多すぎる場合は、吸水によりテープ粘着力が低下するおそれがある。
【0018】
なお、上記縦糸及び横糸として使用されるポリウレタン糸及び合成繊維糸の単糸数、断面形状等は特に限定されない。例えば、糸は1単糸で構成されるモノフィラメントでもよく、複数単糸で構成されるマルチフィラメントでもよい。糸の断面形状も円形でもよく、扁平でもよい。
【0019】
また、縦糸や横糸として使用されるカバリング糸は、らせん状に一重に巻き付けたもの(SCY:シングル・カバード・ヤーン)であってもよく、らせん状に二重に巻き付けたもの(DCY:ダブル・カバード・ヤーン)、三重に巻き付けたものであってもよい。
更に、カバリング糸は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の公知の繊維との混繊、交撚等による複合糸としても使用することもできる。
【0020】
上記織布の目付は、10〜500g/mであることが好ましく、20〜200g/mであることがより好ましい。10g/m未満であると、目が粗くなり貼り合わせに粘着剤が裏抜けしやすくなるおそれがある。500g/mを超えると、目が密になりすぎて粘着剤を充分に浸透させることができないおそれがある。
【0021】
上記織布(基材)は、撥水加工を施したものが好ましい。これにより、ヒトの皮膚に貼付して使用した場合に、発汗したり、粘着テープに水が接触したとしても、織布への吸水が撥水加工によって防止される。このため、貼付時において、テープの粘着力を良好に維持することができる。
【0022】
上記撥水加工を施す方法としては特に限定されず、従来公知の方法で行うことができる。例えば、撥水剤の水溶液を織布にスプレー塗布する方法、織布を撥水剤の水溶液に含浸(ディッピング)する方法、撥水剤の水溶液が入ったバス(浴)に一部含浸状態に配置されたローラーを回転させつつ、上記ローラーの上に織布を接触させながら移動させることによって織布に撥水剤を付与するローラーコーティング法等によって撥水剤を織布の構成繊維に付着させることができる。
【0023】
上記撥水剤としては、撥水性を付与することが可能なものであれば特に限定されず、フッ素系撥水剤、シリコン系撥水剤、ワックス系撥水剤、ジルコニウム系撥水剤、エチレン尿素系撥水剤、メチロールアミド系撥水剤、ピリジニウム塩系撥水剤等を挙げることができる。なかでも、ワックス系撥水剤が好ましく、パラフィンワックスが特に好ましい。この場合、粘着剤層との密着性を高めるとともに、発汗や水との接触による粘着力の低下を防止できる。また、優れた通気性及び透湿性も維持できる。
【0024】
上記ワックス系撥水剤としては、例えば、石油ワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックスを挙げることができる。上記石油ワックスとしては、例えば、パラフィンワックスを挙げることができる。上記パラフィンワックスは、石油の精製工程によって製造される常温で固体のワックスである。通常、炭素数20〜40の直鎖状パラフィン系炭化水素を主成分とし、少量の分枝鎖状パラフィンを含むものである。通常、40〜100℃の温度で溶融する性質を有している。上記パラフィンワックスの分子量は300〜550であることが好ましい。上記撥水剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上述した方法等によって撥水剤が付着された織布の乾燥温度は60〜160℃、乾燥時間は1〜600秒が好ましい。
【0025】
上記織布(基材)は、抗菌加工を施したものが好ましい。これにより、通気性粘着テープに優れた抗菌性を付与できるため、例えば、ヒトの皮膚に長期間貼付した場合、皮膚常在菌の繁殖による悪臭の発生や皮膚への悪影響を防止できる。上記抗菌剤としては、例えば、無機系抗菌剤、有機系抗菌剤を挙げることができる。
【0026】
上記無機系抗菌剤としては、銀、亜鉛、銅、チタン、モリブデン等の金属;これらの金属イオンをシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、セラミック、アルミナシリコン、チタンゼオライト、アパタイト、炭酸カルシウム等の無機質微粒子に担持させたもの;ゾル−ゲル法により無機化合物粒子の表面を他の無機酸化物、複合酸化物等により積層又は被覆等したもの等を挙げることができる。
【0027】
上記有機系抗菌剤としては、キチン、キトサン、ワサビやカラシの抽出物、ヒノキチオール、茶抽出物等の天然物、イソチオシアン酸アリル、ポリオキシアルキレントリアルキルアンモニウム、塩化べンザルコニウム、へキサメチレンビグアニド塩酸塩、有機シリコン第4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩類、フェニルアミド系化合物、ビグアニド系化合物、スルホイソフタル酸テトラアルキルホスホニウム塩又はそのジエステル、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、安息香酸、安息香酸塩類、サリチル酸、サリチル酸塩類、フェノール、ソルビン酸及びその塩類、デヒドロ酢酸及びその塩類、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン)、ポリリジン又はポリリジン塩、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、スルホニウム塩基、フェニルアミド基、ビグアニド基等の抗菌活性基を主鎖又は側鎖に有する高分子化合物等を挙げることができる。なかでも、ビグアナイド系抗菌剤を使用することが好ましい。
【0028】
上記抗菌加工の方法としては、基材中に含ませることが可能な方法であれば特に限定されず、例えば、織布の撥水剤による撥水加工の際に、撥水剤に加えて更に抗菌剤を添加した後、上記撥水加工及び抗菌加工を行う方法等を挙げることができる。
【0029】
例えば、基材にポリエステル繊維等の長繊維糸を使用した場合、撥水剤や抗菌剤等の各種添加剤が染み込みにくく、基材に機能付与することが困難であるが、本発明では、ポリウレタン糸(芯糸)を合成繊維糸でカバーリングした縦糸を使用するとともに、合成繊維糸(芯糸)を綿糸でカバーリングした横糸とが平織りされた織布を基材として使用していることから、上記添加剤の染み込みが確保でき、所望の機能付与が可能となる。
【0030】
本発明の通気性粘着テープは、粘着剤層を有している。上記粘着剤層は粘着剤を含む粘着剤組成物を用いて形成することができる。上記粘着剤層としては、アクリル系粘着剤、吸水性高分子化合物及び疎水性有機溶剤を含有する粘着剤組成物を使用して得られるものが好ましい。織布(基材)と上記粘着剤組成物により形成される粘着剤層とを有していることにより、優れた通気性や透湿性を発現させることができる。このため、皮膚呼吸の阻害や皮膚のムレ、カブレを良好に防止できる。また、良好な粘着力を維持することも可能となる。
【0031】
上記アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体を含む粘着剤である。
上記アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体、これらの共重合体又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合性単量体の共重合体等を挙げることができる。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が2〜18、好ましくは4〜12の一級〜三級アルコールと、アクリル酸又はメタクリル酸とから得られるエステル等を挙げることができる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0033】
上記共重合性単量体としては、共重合反応に関与する不飽和二重結合を分子内に少なくとも1個有すると共に、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホキシル基、アミノ基、アミド基等の官能基を側鎖に有する単量体を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記吸水性高分子化合物としては、自重の数百倍から倍近い水を吸収して膨潤し、しかも溶解することなく、かつ、膨潤物に圧力を加えても吸水した水を離脱しないものであれば特に限定されない。例えば、ポリアクリル酸ナトリウム化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、セルロースエステル、ポリアミド、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。なかでも、ポリアクリル酸ナトリウム化合物、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましく、ポリアクリル酸ナトリウム化合物、ポリプロピレングリコールが特に好ましい。これにより、優れた加工性、通気性、安全性を得ることができ、比較的安価でもある。更に、優れた通気性及び透湿性が得られるとともに、良好な粘着力を維持することができる。
【0035】
上記吸水性高分子化合物は、吸水することによって、粘着剤層中に均一な通気性孔が得られるため、通常粘着剤層を形成するために使用される粘着剤組成物としては、水を添加したものが使用されるか、又は、吸水している吸水性高分子化合物が使用される。
上記粘着剤組成物において、上記吸水性高分子化合物の含有量は、上記アクリル系粘着剤(固形分)100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましい。
【0036】
上記疎水性有機溶剤としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、鉱油、石油エーテル等を挙げることができる。なかでも、粘着剤の乾燥条件(通気性に影響する)、コストの点から酢酸エチル、トルエンが好ましい。
【0037】
上記粘着剤層は、抗菌剤を含有することが好ましい。これにより、皮膚常在菌の繁殖を良好に抑制できる。
上記抗菌剤としては特に限定されず、上記抗菌剤と同様のものを使用できる。なかでも、無機系抗菌剤が好ましく、銀系抗菌剤が特に好ましい。これにより、通気性粘着テープの抗菌性を高めるとともに、優れた安全性、耐熱性、加工性を得ることもできる。
【0038】
上記粘着剤層が銀系抗菌剤を含有する場合、上記粘着剤層は、更にアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩を含有するものであることが好ましい。これにより、銀系抗菌剤を粘着剤層中に均一に分散できるため、良好な抗菌性を発揮させることが可能となる。上記アルキルエーテルリン酸エステルやその塩の配合方法としては特に限定されないが、銀系抗菌剤をアルキルエーテルリン酸エステルやその塩を使用してペースト状にしたものを使用することが好ましい。これにより、粘着剤組成物の配合時における銀系抗菌剤の沈殿を防止でき、抗菌剤を粘着剤層中に均一に分散させることができる。なかでも、アルキルエーテルリン酸エステルが好ましい。
【0039】
上記アルキルエーテルリン酸エステル又はその塩としては特に限定されないが、下記式で表される化合物(アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、その塩)が好ましい。上記化合物は、アルコール又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルのリン酸エステル化反応により得ることができる。
【0040】
【化1】

【0041】
式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜26のアルキル基若しくはアルケニル基、又は、フェニル基、ベンジル基、クレジル基、ナフチル基等の一般的な界面活性剤の疎水基を表す。上記Rはアルキル基又はアルケニル基が好ましい。上記Rの炭素数は1〜18が好ましく、4〜18がより好ましい。AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、オキシエチレン基が好ましい。aは、0〜50が好ましく、0〜30がより好ましく、0〜20が特に好ましい。bは、1〜3の整数を表す。Mは、同一又は異なって、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基又は水酸基が置換してもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜5)アンモニウム基を表し、なかでも、水素原子が好ましい。
【0042】
上記粘着剤組成物は、硬化剤を含有することが好ましい。上記硬化剤としては、公知のものを使用することができるが、イソシアネート系硬化剤が好ましい。
また、上記粘着剤層には、必要に応じて、公知の可塑剤、軟化剤、充填剤、粘着付与剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0043】
上記粘着剤層は、例えば、粘着剤、必要に応じて他の成分を有機溶媒に溶解又は分散させ、得られた組成物を基材の片面に塗布し、乾燥して形成させることができる。また、後述するセパレーター層の片面に塗布し、乾燥して形成させることもできる。上記粘着剤層の重さ(乾燥後)は、10〜90g/mであることが好ましく、30〜70g/mであることがより好ましい。
【0044】
上記通気性粘着テープは、製造、運搬、保存中に、粘着剤層が器具、容器等に接着することを防止すること、テープの劣化を防止することを目的として、皮膚面への貼付の直前までは粘着剤層の露出面を、セパレーター層にて被覆、保護することが好ましい。この場合、通気性粘着テープは、基材、粘着剤層及びセパレーター層をこの順に積層した構造を有している。使用時において、セパレーター層を剥離して、粘着剤層の面を露出させ、皮膚に貼付して使用する。
【0045】
上記セパレーター層としては、使用時に粘着剤層から容易に剥離されるものであれば特に限定されず、例えば、粘着剤層と接触する面にシリコーン樹脂、フッ素樹脂等を塗布することによって剥離処理が施されたポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム、上質紙、グラシン紙等の紙、上質紙又はグラシン紙等とポリオレフィンとのラミネートフィルム等を挙げることができる。
【0046】
上記通気性粘着テープは、JIS L1096A法(フラジール形試験機)による通気度が20cm/cm・s以上であることが好ましい。これにより、通気度が少なすぎて皮膚刺激が起こることを抑制することができる。上記通気度は、単位面積の試験片の一方から吸引し(125Pa)、通過する空気量を測定して算出される値である。
【0047】
上記通気性粘着テープは、JIS Z0237に準拠する粘着力(対ガラス)が4.0〜8.0N/25mmであることが好ましい。上記範囲内である場合、ヒトの皮膚に良好に貼付して使用することができる。「JIS Z 0237に準拠する粘着力(対ガラス)」とは、試験板としてSUS304鋼板に代えてガラス板を用いる他は、JIS Z0237に規定する180度引き剥がし法によって測定される粘着力である(23±2℃、相対湿度50±5%)。
【0048】
上記範囲の通気度、粘着力を有する通気性粘着テープは、基材を構成する織布を適宜選択することや、アクリル系粘着剤、吸水性高分子化合物、疎水性有機溶剤を含む粘着剤組成物を使用すること等の手法によって製造できる。なお、上記通気度及び粘着力は、基材及び粘着剤層からなるテープ(セパレーター層はない)を用いて測定される値である。
【0049】
本発明の通気性粘着テープは、筋肉・関節サポートテープ、血行促進テープとして好適に使用することができる。より具体的には、キネシオロジーテープとして好適に使用することができる。
【0050】
上記キネシオロジーテープとは、キネシオロジー(医学を基礎にした身体の運動に関する筋肉の運動機能を専門的に研究する学問)に基づく自然療法「キネシオテーピング法」に使用するテープであり、筋肉に対して貼付するテープである。上記キネシオロジーテープには一定の伸縮性と、体にフィットする粘着性があり、痛いところや凝っているところ等に貼ることによって、人間の自然治癒力を促進させ、障害を和らげたり治したりするものである。
【0051】
具体的には、キネシオロジーテープには以下(1)〜(3)のような効果がある。
(1)血液・リンパ液循環の改善(テープで皮膚が持ち上げられ、血液・リンパ液の循環が良くなることにより、新陳代謝を活発にする、疲労の回復を早める、筋肉疲労を軽減させる。)
(2)筋肉や関節の動きをサポート(テープが皮膚を持ち上げ、筋肉の動きをスムーズにする。また伸縮性で、筋肉の動きをサポート、関節の動きを円滑にする。)
(3)表皮の緊張を緩和(伸縮性によって皮膚に適度の刺激を与え、表皮の緊張を緩和させる。)
【0052】
本発明の通気性粘着テープは、従来公知の製造方法により製造することができ、例えば、以下の方法を挙げることができる。先ず、セパレーター層の片面に粘着剤組成物を塗布、乾燥して粘着剤層を形成する。セパレーター層上に形成された粘着剤層と、織布(基材)とを貼り付けた後、必要に応じて、裁断、ロール状に巻き取る等の工程を行うことによって通気性粘着テープが製造される。
【0053】
上記通気性粘着テープの製造において、粘着剤層及び織布の貼り合わせは、加温により粘着剤層(粘着剤組成物)の粘度を低下させ、テープの両面(セパレータ層及び織布の両側)から加圧しながら行うことが好ましい。これにより、織布の空隙内部まで粘着剤組成物を入り込ませることができるため、良好な投錨効果が得られ、織布と粘着剤層の密着性を高めることができる。
【0054】
上記粘着剤組成物の加温温度は、40〜100℃の範囲内が好ましい。この範囲内に調整することにより、投錨効果が促進され、良好な密着性を得ることができる。
【0055】
本発明の通気性粘着テープの概略図の一例を図1及び2に示す。
図1は本発明の通気性粘着テープ(キネシオロジーテープ)の構成を示した概略図であり、基材1(織布)、粘着剤層2及びセパレーター層3が積層された構成を有している。図2は、上記構成の通気性粘着テープをロール状に巻き取った製品を示した概略図である。
【実施例】
【0056】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
【0057】
実施例1 キネシオロジーテープの製造
織布は、ポリウレタン糸(40デニール)を芯糸としポリエステル糸でカバーリングした縦糸と、ポリエステル糸を芯糸とし綿糸でカバーリングした横糸(混合割合:ポリエステル65%、綿糸35%)が平織りされたものを使用した。織布(基材)として、液流染色機パラフィン系撥水剤3%、ビグアナイド系抗菌剤1.5%溶液中で循環され、撥水加工、抗菌加工されたものを使用した。破断伸度は約80%であった。なお、織布に使用された縦糸及び横糸(カバリング糸)は、SCY(シングル・カバード・ヤーン)である。
【0058】
酢酸エチル20質量部、トルエン40質量部、アクリル系粘着剤100.0質量部、吸水性高分子化合物1.0質量部、イオン交換水20質量部、イソシアネート系硬化剤3.0質量部、銀系抗菌剤0.1質量部を混合し、粘度5000cpsの粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液をコンマコーターで片面ポリラミ剥離紙のシリコン面に塗工し、温度勾配50〜140℃で溶剤を乾燥後、織布(基材)と貼り合わせて試料を得た。
【0059】
乾燥後の粘着剤層の重さは、57g/mであった。なお、貼り合わせ時には、形成された粘着剤層(粘着剤組成物)を60℃にて加温し、剥離紙及び織布の両面から加圧しながら貼り付け、織布の空隙内部まで粘着剤組成物を入り込ませた。また、銀系抗菌剤は、アルキルエーテルリン酸エステルを用いてペースト状にしたものを使用した。
【0060】
使用した市販品は、以下のとおりである。
パラフィン系撥水剤:「TH−44」(日華化学)
アクリル系粘着剤:「サイビノールAT−1104(サイデン化学製)」
吸水性高分子化合物:「アロンビスS」(日本純薬製、ポリアクリル酸ナトリウム)
イソシアネート系硬化剤:「タケネートB−830」(三井武田ケミカル製)、
銀系抗菌剤:「ゼオミックAW10N」(シナネン製)
【0061】
実施例2
織布の横糸の混合割合をポリエステル糸(95%)/綿糸(5%)に変更した以外、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0062】
実施例3
織布の横糸の混合割合をポリエステル糸(30%)/綿糸(70%)に変更した以外、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0063】
実施例4
織布の横糸の混合割合をポリエステル糸(96%)/綿糸(4%)に変更した以外、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0064】
実施例5
織布の横糸の混合割合をポリエステル糸(29%)/綿糸(71%)に変更した以外、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0065】
比較例1
織布の横糸を綿糸(100%)に変更した以外、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0066】
比較例2
織布の横糸をポリエステル糸(100%)に変更した以外、実施例1と同様にして試料を作成した。
【0067】
〔評価〕
上記で得られた試料について、次の評価試験を行い、結果を表1に示した。
(通気性)
JIS L1096通気性A法に準じて測定した。なお、剥離紙を剥がした後の粘着テープで評価した。
○;通気度が20cm/cm・s以上
×;通気度が20cm/cm・s未満
【0068】
(撥水性)
JIS L1092撥水度試験(スプレー試験)に準じて測定した。なお、剥離紙を剥がした後の粘着テープで評価した。
○;撥水度4以上
×;撥水度3以下
【0069】
(抗菌性)
JIS Z2801プラスチック製品等の試験方法に準拠して実施した。なお、剥離紙を剥がした後の粘着テープで評価した。
○;抗菌活性値2.0以上
×;抗菌活性値2.0未満
【0070】
(織布と粘着剤層の密着性)
試料の粘着剤面同士を貼り合せ、手で勢いよく剥がしたときの剥離状態より判断した。
○;粘着剤層が界面剥離しなかった。
×;織布と粘着剤層との間で界面剥離を起こした。
△;部分的に界面剥離が発生した。
【0071】
(粘着力1)
JIS Z0237に準じて測定した。各試験試料を幅25mm×長さ150mmに断裁後、離型紙を剥がし、得られた粘着テープをガラス板に貼付して、温度23℃、相対湿度50%で24時間放置した。得られた各被着体から各試験試料を引張速度300mm/分、引張角度180度の下で引き剥がした時の接着力を測定した。
○;粘着力6.0±2.0N/25mm
×;粘着力8.0N/25mm超え又は4.0N/25mm未満
【0072】
(粘着力2)
JIS Z0237に準じて測定した。各試験試料を幅25mm×長さ150mmに断裁後、離型紙を剥がし、得られた粘着テープを別途用意した粘着テープの自背面に貼付して、温度23℃の水で1時間放置した。得られた各被着体から各試験試料を引張速度300mm/分、引張角度180度の下で引き剥がした時の接着力を測定した。
○;粘着力2.0N/25mm以上
×;粘着力2.0N/25mm未満
【0073】
【表1】

【0074】
表より、ポリウレタン糸(芯糸)をポリエステル糸でカバーリングしたカバリング糸を縦糸、ポリエステル糸(芯糸)を綿糸でカバーリングしたカバリング糸を横糸とした織布を使用した実施例の粘着テープは、密着性や粘着力に優れていた。また、これは、アクリル系粘着剤、ポリアクリル酸ナトリウム、イソシアネート系硬化剤、酢酸エチル、トルエンを含む粘着剤組成物を使用しているため、良好な通気性を有していた。更に、パラフィン系撥水剤、ビグアナイド系抗菌剤にて撥水加工、抗菌加工しているため、撥水性、抗菌性も良好であった。
一方、比較例では、これらすべての性能に優れたものは得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の通気性粘着テープは、医療用・スポーツ用粘着テープ、特にキネシオロジーテープとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 基材(織布)
2 粘着剤層
3 セパレーター層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材及び粘着剤層を有する通気性粘着テープであって、
前記基材は、ポリウレタン糸を芯糸として合成繊維糸でカバーリングした縦糸と合成繊維糸を芯糸として綿糸でカバーリングした横糸とが平織りされた織布である
ことを特徴とする通気性粘着テープ。
【請求項2】
粘着剤層がアクリル系粘着剤、吸水性高分子化合物及び疎水性有機溶剤を含有する粘着剤組成物を使用して得られるものである請求項1記載の通気性粘着テープ。
【請求項3】
キネシオロジーテープである請求項1又は2記載の通気性粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−166(P2011−166A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143292(P2009−143292)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】