説明

通気性細幅編織物

【課題】 積極的かつ十分に外気を取り入れて安定した通気性を得ることができ、スポーツウエアなどに装着してファッション性および機能性を向上せしめることもできる通気性細幅編織物を提供すること。
【解決手段】 細幅の帯状に編織されたベース帯体1には、緻密編織部11と有孔で通気性を有するメッシュ編織部12とを長手方向に沿って形成する一方、このベース帯体1の幅よりも細幅の帯状に編織された被覆帯体2を、その両側縁部21・21と前記ベース帯体1の緻密編織部11とを連結固定して、少なくとも前記メッシュ編織部12上をカバーするごとく配設して構成し、前記被覆帯体2の少なくとも一方の側縁部21と前記ベース帯体1の緻密編織部11とを、所定間隔で繋ぐスペーサ糸3を設けて浮かし状態に連結固定せしめることによって、当該連結箇所に開口部31を形成しつゝ当該被覆帯体2を前記メッシュ編織部12の上面上部に支持固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性被服材料の改良、更に詳しくは、積極的かつ十分に外気を取り入れて安定した通気性を得ることができ、しかも、スポーツウエアなどに装着してファッション性および機能性を向上せしめることもできる通気性細幅編織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、作業衣やスポーツウエア、シューズ、帽子などにおいて、内部の湿気を速やかに外部に排出できるようにしたものとして、種々の通気性ウエアや通気素材などの被服材料が提案されている。
【0003】
例えば、<特許文献1>には、織編物からなる上衣において、着丈の一部にメッシュ状布帛を用いて通気口を設け、これらの通気口にそれぞれ覆い布を取り付けたものが開示されている。
【0004】
しかしながら、かかる構造では、通気口となるメッシュ状の箇所に覆い布が取り付けてあるので、外部からの見栄えや身体保護性、保温性を優先するあまり、通気口を塞いでしまい通気性能が低下するという問題がある。
【0005】
また、<特許文献2>には、上段布片と下段布片の間に三次元立体編物を配置して安定した空隙を設けた通気性ウエアが開示されている。
【0006】
しかしながら、かかる構造では、空隙を確保するための三次元立体編物の上から縫製する必要があるため、分厚い三次元立体編物は使えないばかりか、縫い糸の締め付けにより三次元立体編物の空隙が潰され、十分な通気性が得られないという問題がある。
【0007】
更にまた、<特許文献3>には、本体テープの幅方向中央部にメッシュ編織部が形成され、被覆テープが上記メッシュ編織部を被覆するように本体テープ上に平行に重ねられ、その側縁部の一方が本体テープに連結され、残りの部分が本体から分離してフラップを形成する二重テープが開示されている。
【0008】
しかしながら、かかる構造では、通気性のあるメッシュ編織部を開閉自在で不安定なフラップで覆っているため、フラップの自由端側の位置に左右されて、メッシュ編織部を完全に塞いでしまって十分な通気性得られないことがあり、また、逆に、フラップが開き過ぎて、必要以上に通気してしまうこともあり、安定した通気量を維持することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−256415号公報(第2−5頁、図1−3)
【特許文献2】特開2008−38323号公報(第3−6頁、図1−6)
【特許文献3】特許第3583373号公報(第3−5頁、図1−7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の通気性被服材料に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、積極的かつ十分に外気を取り入れて安定した通気性を得ることができ、しかも、スポーツウエアなどに装着してファッション性および機能性を向上せしめることもできる通気性細幅編織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0012】
即ち、本発明は、通気性部分を有する複葉構造から成る細幅の編織物であって、
細幅の帯状に編織されたベース帯体1には、緻密編織部11と有孔で通気性を有するメッシュ編織部12とを長手方向に沿って形成する一方、
このベース帯体1の幅よりも細幅の帯状に編織された被覆帯体2を、その両側縁部21・21と前記ベース帯体1の緻密編織部11とを連結固定して、少なくとも前記メッシュ編織部12上をカバーするごとく配設して構成し、
前記被覆帯体2の少なくとも一方の側縁部21と前記ベース帯体1の緻密編織部11とを、所定間隔で繋ぐスペーサ糸3を設けて浮かし状態に連結固定せしめることによって、当該連結箇所に開口部31を形成しつゝ当該被覆帯体2を前記メッシュ編織部12の上面上部に支持固定するという技術的手段を採用したことによって、通気性細幅編織物を完成させた。
【0013】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、被覆帯体材2の一方の側縁部21とベース帯体1の緻密編織部11とをスペーサ糸3により連結固定して、かつ、他方の側縁部21を緻密編織部11から分岐して一体に延成して、
その下方に位置するメッシュ編織部12の幅方向に対して所定の角度で傾斜した状態でスペーサ糸3により支持固定して、当該連結箇所に開口部31を形成するという技術的手段を採用することができる。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、編織物がダブルラッセル構造からなり、被覆帯体材2の一方の側縁部21をベース帯体1の緻密編織部11から分岐して一体に延成するという技術的手段を採用することができる。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、被覆帯体2の両側縁部21・21において、それぞれスペーサ糸3により支持固定して、両サイドにそれぞれ開口部31を形成して、かつ、これら両サイドのスペーサ糸3・3…を、互い違いに交互に配置するという技術的手段を採用することができる。
【0016】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ベース帯体1に複数条のメッシュ編成部12・12…を形成して、被覆帯体2・2…を各メッシュ編織部12の上面上部にそれぞれ支持固定するという技術的手段を採用することができる。
【0017】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、複数のスペーサ糸3・3…を被覆帯体2の側縁部21において所定間隔に設ける一方、隣接するスペーサ糸3・3の間において、前記被覆帯体2の側縁部21とベース帯体1の緻密編織部11とを隙間なく連結するという技術的手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にあっては、細幅の帯状に編織されたベース帯体には、緻密編織部と有孔で通気性を有するメッシュ編織部とを長手方向に沿って形成する一方、このベース帯体の幅よりも細幅の帯状に編織された被覆帯体を、その両側縁部と前記ベース帯体の緻密編織部とを連結固定して、少なくとも前記メッシュ編織部上をカバーするごとく配設せしめて構成して、前記被覆帯体の少なくとも一方の側縁部と前記ベース帯体の緻密編織部とを、所定間隔で繋ぐスペーサ糸を設けて浮かし状態に連結固定することによって、当該連結箇所に開口部を形成しつゝ当該被覆帯体を前記メッシュ編織部の上面上部に支持固定することができる。
【0019】
したがって、本発明の通気性細幅編織物によれば、積極的かつ十分に外気を取り入れて安定した通気性を得ることができる。
【0020】
また、本発明の通気性細幅編織物をスポーツ衣服等に用いた際には、被覆帯体により外気流を衣服内に積極的に導入させ、衣服内の空気の循環し易くさせることができ、更にまた、立体的な構造による意匠効果が得られ、ファッション性も要求される装飾テープとしての利用価値が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態の通気性細幅編織物を表わす斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態の通気性細幅編織物を表わす説明断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の通気性細幅編織物の変形例を表わす説明断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の通気性細幅編織物の変形例を表わす説明断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の通気性細幅編織物を表わす斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態の通気性細幅編織物を表わす説明断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態の通気性細幅編織物を表わす斜視図である。
【図8】本発明の第3実施形態の通気性細幅編織物を表わす斜視図である。
【図9】本発明の通気性細幅編織物をスポーツウエアの上衣に装着した状態を表わす正面図である。
【図10】本発明の通気性細幅編織物をスポーツウエアのパンツに装着した状態を表わす正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態を、具体的に図示した図面に基づいて、更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0023】
『第1実施形態』
本発明の第1実施形態を図1から図4に基づいて説明する。図1中、符号1で指示するものはベース帯体であって、このベース帯体1は、細幅の帯状に編織されており、緻密編織部11と有孔で通気性を有するメッシュ編織部12とが長手方向に沿って形成されている。織機や編機、織組織や編組織は公知のものを採用することができる。
【0024】
また、符号2で指示するものは被覆帯体であって、この被覆帯体2は、前記ベース帯体1の幅よりも細幅の帯状に編織されている。
【0025】
更にまた、符号3で指示するものはスペーサ糸であって、このスペーサ糸3は、ポリエステル系繊維などの合成繊維などで比較的繊度の大きい嵩高加工糸を採用する。
【0026】
しかして、本発明は、通気性部分を有する複葉構造から成る細幅の編織物であって、構成するにあっては、まず、細幅の帯状に編織(本実施形態では編成)されたベース帯体1に、緻密編織部11と有孔で通気性を有するメッシュ編織部12とを長手方向に沿って形成する。本実施形態では、ベース帯体1の略中央にメッシュ編織部12を1本形成する。
【0027】
この緻密編織部11は、通常の外衣に用いられている程度に通気性を有した編地(ダブルラッセル編地)であって、その編組織は特に限定されるものではなく、また、使用する糸の種類や番手についても特に限定されるものでない。
【0028】
また、メッシュ編織部12については、編地面に孔部を多数形成して通気性を大きくしたメッシュ組織からなるもので、本実施形態では、ダブルラッセル機の片側針床でメッシュ組織を形成することができ、編み組織によって孔部を直接形成するものや編み密度を疎にして形成するものであっても良い。
【0029】
なお、メッシュ編織部12の孔部が大き過ぎたり数を増やし過ぎたりすると剛性が低下して、編織物全体としての形態安定性を損なうので好ましくなく、孔部の最大長さ(または径)を5mm以下にすることが好ましい。
【0030】
また、本発明の編織物全体の幅は用途により適宜選択されるものであるが、編織物の幅内にメッシュ編織部12を設けるためには少なくとも3mm以上は必要であり、上限については制限されるものではない。
【0031】
この際、メッシュ編織部12の幅については、広い方が通気性を向上させることができるが、あまりに広くするとその上方に位置する被覆帯体2がメッシュ編織部12側に湾曲してメッシュ編織部12の空隙を塞ぐおそれがあるため、メッシュ編織部12の幅は2〜30mm程度が好ましい範囲である。
【0032】
そして、このベース帯体1の幅よりも細幅の帯状に編織された被覆帯体2を、その両側縁部21・21と前記ベース帯体1の緻密編織部11とを連結固定して、少なくとも前記メッシュ編織部12上をカバーするごとく配設する。
【0033】
本実施形態では、被覆帯体2も前記ベース帯体1の緻密編織部11と同様に通常の外衣として用いられている程度に通気性を有した編地であり、ダブルラッセル機の片側針床で編組織を形成する。また、被覆帯体2の幅は2〜30mmが好ましく、特に、正面から見た際に前記メッシュ編織部12を隠すために、メッシュ編織部12と略同等の幅にすることがより好ましい。
【0034】
そして、前記被覆帯体2の少なくとも一方の側縁部21と前記ベース帯体1の緻密編織部11とを、所定間隔をもって繋ぐスペーサ糸3を設けて浮かし状態に連結固定することによって、当該連結箇所に開口部31を形成しつゝ当該被覆帯体2を前記メッシュ編織部12の上面上部に支持固定する(図2参照)。
【0035】
本実施形態では、被覆帯体材2の一方の側縁部21とベース帯体1の緻密編織部11とをスペーサ糸3により連結固定して、かつ、他方の側縁部21を緻密編織部11から分岐せしめて一体に延成する。具体的には、編織物をダブルラッセル構造にして、被覆帯体材2の一方の側縁部21をベース帯体1の緻密編織部11から分岐させて一体に延成する。
【0036】
このようにして、被覆帯体材2の下方に位置するメッシュ編織部12の幅方向に対して所定の角度で傾斜した状態でスペーサ糸3により支持固定して、当該連結箇所に生地内部に通気するための開口部31を形成することができる。
【0037】
本実施形態において、被覆帯体2とベース帯体1のメッシュ編織部12の面レベルとがなす角(以下、「傾斜角」という)は、2〜50°の範囲であることが好ましい。この傾斜角は、緻密編織部11の上面から緻密編織部11側の被覆帯体2の高さおよび被覆帯体2の傾斜している水平距離から測定することができる。
【0038】
この際、傾斜角が2°以下であると、気流を取り入れるための被覆帯体2の先端部と緻密編織部11との間にできる間隙が非常に小さくなるので十分に外気を取り入れることができず、一方、傾斜角が50°以上となると、気流制御が難しくなることや、構造体の正面からメッシュ編織部12が見え易くなる問題が生じるため、好ましい範囲は3〜50°であり、より好ましくは15〜35°である。
【0039】
本実施形態において、被覆帯体2の側縁部21とメッシュ編織部12を連結する具体的方法としては、スペーサ糸3をダブルラッセル機のメッシュ編織部12の編成側を針床にして所定長編成した後、被覆帯体2の編成側を針床にして1〜2ループ編成し、再度メッシュ編織部12の編成側の針床で繰り返すことでスペーサ糸3をこれら両部材に一体に編み込んで配置することができる。
【0040】
この際、連結箇所における被覆帯体2の側縁部21とメッシュ編織部12の間隙(開口部31)の大きさや傾斜角は、ダブルラッセル機の針床間距離とスペーサ糸3の糸特性および編成時のスペーサ糸3の送り量により決まってくるため、必要とする間隙に応じて適宜設定することができる。
【0041】
なお、本実施形態に用いるスペーサ糸3の種類としては、開口部31に作用する圧縮に対する反発力を高めるために、合成繊維からなる単糸繊度、および糸繊度ができるだけ大きい嵩高加工糸が好ましい。
【0042】
また、開口部31における被覆帯体2の側縁部21とメッシュ編織部12の間隙は、1〜10mmの範囲が好ましい。間隔が1mm以下では、空気を取り入れる量が少なくなってしまうからである。逆に、間隔を10mm以上にすると、空気を多量に取り入れることができるが、開口部31からメッシュ編織部12が容易に目視され、外観的な品位面で劣るという問題があり、更に、スペーサ糸3の繊度等との関係で製造が難しくなり、スペーサ糸3の強度でそれだけの距離を安定的に保持することが難しいという問題がある。
【0043】
なお、本実施形態において、被覆帯体2の幅が大きい場合や、開口部31が大きい場合には、被覆帯体2の側縁部21に配置したスペーサ糸3だけでは間隙が保持できなくなるおそれがあるため、付加的に、被覆帯体2の幅方向の中間位置などに適宜スペーサ糸3を配置してもよい。
【0044】
また、本実施形態におけるスペーサ糸3は、被覆帯体2の側縁部21とメッシュ編織部12とを編織物の長さ方向に2〜50mmのピッチで連結して、被覆帯体2の傾斜角を一定に保っている。スペーサ糸3の連結ピッチが2mm以下となると、空気を取り入れる口がスペーサ糸3により塞がれてしまって十分な空気を内部に導入することができない問題があるからである。
【0045】
一方、連結ピッチが50mm以上になると、連結箇所で被覆帯体2の側縁部21が湾曲して撓んだり、あるいはスペーサ糸3自体が圧縮方向の負荷に耐えられなくなって、被覆帯体2の傾斜角を安定させることができなくなるおそれがある。
【0046】
以上のような構造により、被覆帯体2における緻密編織部11側の側縁部21は、緻密編織部11の面レベルに対して高い位置にあるので、例えば、緻密編織部11面に平行な気流が被覆帯体2に向かうと、被覆帯体2により気流を内側へと積極的に誘導し、メッシュ編織部12を通過して内部へと導くことができる。
【0047】
なお、本実施形態では、図3および図4に示すように、ベース帯体1に複数条(本実施形態では2本)のメッシュ編成部12・12…を形成して、被覆帯体2・2…が各メッシュ編織部12の上面上部にそれぞれ支持固定することもできる。
【0048】
この際、メッシュ編成部12のピッチ等も使用目的により好ましい値を決めることができる。更に、図4に示すように被覆帯体2の傾斜方向を反対に配置しても構わず、そうすることにより空気を内部に取り入れる側と外部に出す側に分けることもできる。
【0049】
『第2実施形態』
本発明の第2実施形態を図5および図6に基づいて説明する。本実施形態では、被覆帯体2の両側縁部21・21において、それぞれスペーサ糸3により支持固定して、両サイドにそれぞれ開口部31を形成する。
【0050】
このようにすることによって、通気量を大きくすることができ、より通気性能の高い編織物を構成することができる。
【0051】
『第3実施形態』
本発明の第3実施形態を図7および図8に基づいて説明する。本実施形態では、複数のスペーサ糸3・3…を被覆帯体2の側縁部21において所定間隔に設ける一方、隣接するスペーサ糸3・3の間において、前記被覆帯体2の側縁部21とベース帯体1の緻密編織部11とが隙間ない箇所を作製する。この箇所は、縫合等により連結することもできるし、自由にしておくこともできる。
【0052】
このようにして、被覆帯体2の側縁部21とメッシュ編織部12の間隙による傾斜した箇所(スペーサ糸3が存在している箇所)と傾斜のない箇所を交互に設けることができる。なお、稜線部分においてプリーツ加工等を施すこともできる。
【0053】
本実施形態では、図7に示すように、被覆帯体2の片方の側縁部21において開口部31を設けた場合と、図8に示すように、被覆帯体2の両方の側縁部21・21においてそれぞれ開口部31を設けた場合(更に、両サイドのスペーサ糸3・3…を互い違いに交互に配置する)の両方に採用することができる。
【0054】
以上の各実施形態1〜3のように構成した通気性細幅編織物は、図9に示すようなスポーツウエアの上衣に装着することができ、具体的には、肩から袖口および脇から裾に向かって、前見頃と後ろ見頃の合わせ目に配置して縫い合わせることができる。
【0055】
また、図10のようなスポーツウエアのパンツに装着する場合にも、前記同様にして、前見頃と後見頃の合わせ目に本実施形態の通気性細幅編織物を配置して縫い合わせることができる。
【0056】
このように、身体の側面側に本実施形態の通気性細幅編織物を配置させることにより、前方に走行した際に生じる空気流は、被覆帯体2によりメッシュ編織部12側に誘導されてウエア内に導入されて、ウエア内に留まっていた空気と入れ替えが行われ、蒸れ感を感じることなく快適に運動することができる。
【0057】
また、本発明の編織物は、被覆帯体2が傾斜して立体的な形体を醸し出しているので意匠性という面からも優れた特徴を有している。
【実施例】
【0058】
本発明の通気性細幅編織物を以下の具体的な条件で製作する。まず、編糸として合成繊維のマルチフィラメント糸を用い、幅方向に対して緻密編織部11、2本のメッシュ編織部12、そして緻密編織部11の順の配置でダブルラッセル機により編成した。
【0059】
そして、被覆帯体2はそれぞれのメッシュ編織部12を覆う幅で2本形成し、それぞれの被覆帯体2の側縁部21の一方が緻密編織部11と編構造で一体にして、もう一方の被覆帯体2の側縁部21はスペーサ糸3によってその下方に位置するメッシュ編織部11と部分的に連結させた。
【0060】
具体的なサイズとして、通気性細幅編織物の全体幅は36mm、メッシュ編織部12の幅はそれぞれ8.5mm、緻密編織部11の幅はそれぞれ9mm、被覆帯体2の幅はそれぞれ7mm、空隙部の高さは2mm、連結ピッチは4mm、傾斜角は14°とした。
【0061】
本実施形態の通気性細幅編織物の効果を確認するために、本実施形態品を装着したトレーニングウエア(図9および図10に示す配置)を作製し、従来の非装着のトレーニングウエア(比較品)と比較するテストを行った。テスト方法としては、環境シミュレーター内(温度30℃、湿度40%)でウエアを着用し、全身に風を送りながら1分間ランニングし、ランニング終了と同時に風を止めて1分後および2分後の体表面温度をサーモグラフィーで測定した。
【0062】
その結果、本発明のウエア着用時は、比較品の着用時に比べて外気を取り入れているから、体表面温度の上昇が低いことが確認され、また、実際の着用者の体感も比較品に比べて涼やかさ感じた。
【0063】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、ベース帯体1および被覆帯体2は、編物構造に限らず、織物構造を採用することができる。
【0064】
また、本発明の通気性細幅編織物は、スポーツウエア等のサイド部に配置したものに限らず、例えば、後見頃の肩部に水平に配置したり、胸の部分に水平方向に、ウエアのファッション性も兼ねて使用することもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0065】
1 ベース帯体
11 緻密編織部
12 メッシュ編織部
2 被覆帯体
21 側縁部
3 スペーサ糸
31 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性部分を有する複葉構造から成る細幅の編織物であって、
細幅の帯状に編織されたベース帯体1には、緻密編織部11と有孔で通気性を有するメッシュ編織部12とが長手方向に沿って形成されている一方、
このベース帯体1の幅よりも細幅の帯状に編織された被覆帯体2が、その両側縁部21・21と前記ベース帯体1の緻密編織部11とが連結固定されて、少なくとも前記メッシュ編織部12上をカバーするごとく配設されて構成されており、
前記被覆帯体2の少なくとも一方の側縁部21と前記ベース帯体1の緻密編織部11とが、所定間隔で繋ぐスペーサ糸3を設けて浮かし状態に連結固定されることによって、当該連結箇所に開口部31を形成しつゝ当該被覆帯体2が前記メッシュ編織部12の上面上部に支持固定されていることを特徴とする通気性細幅編織物。
【請求項2】
被覆帯体材2の一方の側縁部21とベース帯体1の緻密編織部11とがスペーサ糸3により連結固定されており、かつ、他方の側縁部21は緻密編織部11から分岐して一体に延成されており、
その下方に位置するメッシュ編織部12の幅方向に対して所定の角度で傾斜した状態でスペーサ糸3により支持固定されて、当該連結箇所に開口部31が形成されていることを特徴とする請求項1記載の通気性細幅編織物。
【請求項3】
編織物がダブルラッセル構造からなり、被覆帯体材2の一方の側縁部21がベース帯体1の緻密編織部11から分岐して一体に延成されていることを特徴とする請求項2記載の通気性細幅編織物。
【請求項4】
被覆帯体2の両側縁部21・21において、それぞれスペーサ糸3により支持固定されて、両サイドにそれぞれ開口部31が形成されており、かつ、これら両サイドのスペーサ糸3・3…が、互い違いに交互に配置されていることを特徴とする請求項1記載の通気性細幅編織物。
【請求項5】
ベース帯体1に複数条のメッシュ編成部12・12…が形成されており、被覆帯体2・2…が各メッシュ編織部12の上面上部にそれぞれ支持固定されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の通気性細幅編織物。
【請求項6】
複数のスペーサ糸3・3…が被覆帯体2の側縁部21において所定間隔に設けられている一方、隣接するスペーサ糸3・3の間において、前記被覆帯体2の側縁部21とベース帯体1の緻密編織部11とが隙間なく連結されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の通気性細幅編織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−144487(P2011−144487A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8024(P2010−8024)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(591168932)株式会社SHINDO (22)
【Fターム(参考)】