説明

通気性輻射熱反射体及びその製造方法

【課題】耐機械的衝撃性、耐磨耗性、及び形状保持性に優れた通気性輻射熱反射体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 耐熱性の複合化無機繊維又は無機繊維で構成された通気性を有する布材から作製した帯部材11を、長手方向に巻いて形成した断面円形又は断面多角形の柱状物からなる通気性輻射熱反射体10であって、通気性輻射熱反射体10の一面側が加熱された際に、一面側から他面側への熱の移動を抑制しながら、一面側から輻射熱を放射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、加熱炉の排気口の入口や炉内壁に取付けて、炉外へ流出する熱を減少させると共に、高温になって加熱炉内に輻射熱を反射する通気性輻射熱反射体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス燃焼加熱炉あるいは雰囲気制御加熱炉における最も顕著な熱損失は、高温排ガスによる熱損失である。そこで、炉内壁に熱輻射効率の高い物質を貼ること(例えば、特許文献1参照)や、炭化ケイ素系の不織布マット(以下、単にマットという)を炉内天井に設けた排気口に熱フィルタとして貼り付け、更に、炉内の天井並びに側壁に熱反射体としても貼り付けて、高温排ガスの顕熱を炉内で回収する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−210782号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】鈴木謙爾、外3名、「Si−C−(M)−O系繊維不織布マットによるガス燃焼加熱炉の省エネルギー化ならびに高性能化」、工業加熱、社団法人日本工業炉協会、2007年7月15日、第44巻、第4号、p.17−25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、柔軟体であるマットを、炉内の天井や側壁に貼り付けるには、セラミック接着剤を用いて接着する方法が一般的となる。しかし、炉内温度が、例えば1000℃以上の高温で、高温排ガスが高速で流転する炉内で、マットをセラミック接着剤による接着だけで長期に亘って安定して炉内の天井や側壁に付着させることは困難で、マットが剥がれて落下する可能性が高い。また、柔軟体であるマットが、高温排ガスによる機械的衝撃や磨耗に長期間に亘り耐えることができるかという問題もある。更に、柔軟体であるマットは保形性(形状保持性)が極端に低いため貼り付け作業が非常に煩雑になると共に、マット同士を組合わせて互いに支えあわせて一体化するような使用ができないため、貼り付けたマットの一部に剥離が生じると、その剥離は容易にマット全体に拡がって、マットが落下するという問題がある。そして、一旦マットが落下すると、落下の影響は周囲のマットに拡がり、マットの落下が連鎖して発生するという問題も生じる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、耐機械的衝撃性、耐磨耗性、及び形状保持性に優れ、しかも組合わせて使用することが可能な通気性輻射熱反射体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る通気性輻射熱反射体は、耐熱性の複合化無機繊維又は無機繊維で構成された通気性を有する布材から作製した帯部材を、長手方向に巻いて形成した断面円形又は断面多角形の柱状物からなる通気性輻射熱反射体であって、該通気性輻射熱反射体の一面側が加熱された際に、該一面側から他面側への熱の移動を抑制しながら、該一面側から輻射熱を放射する。
【0008】
第1の発明に係る通気性輻射熱反射体において、前記布材は、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下の織物とすることができる。
また、前記布材は、厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%の不織布とすることもできる。
【0009】
第1の発明に係る通気性輻射熱反射体において、前記複合化無機繊維は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造を有し、
Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、
Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、前記外殻構造は、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、前記内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。
ここで、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQE、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、一般式QESi、QESiO、REAl12、及び
REAlOのいずれか1又は2以上からなることが好ましい。
【0010】
第1の発明に係る通気性輻射熱反射体において、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成することが好ましい。
また、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、
β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、該結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成することができる。
更に、前記内殻構造は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成することもできる。
そして、前記内殻構造は、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成してもよい。
あるいは、前記内殻構造は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成することも可能である。
【0011】
第1の発明に係る通気性輻射熱反射体において、前記無機繊維は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成することが好ましい。
また、前記無機繊維は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成することもできる。
更に、前記無機繊維は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成してもよい。
そして、前記無機繊維は、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成することも可能である。
【0012】
前記目的に沿う第2の発明に係る通気性輻射熱反射体は、耐熱性の無機繊維で構成された通気性を有する布材から作製した帯部材を、長手方向に巻いて断面円形又は断面多角形の柱状物とし、該柱状物を構成している前記無機繊維の外側に第2の外殻構造を設けて、該柱状物を第2の内殻構造と該第2の外殻構造を持つ複合化無機繊維から形成した通気性輻射熱反射体であって、該通気性輻射熱反射体の一面側が加熱された際に、該一面側から他面側への熱の移動を抑制しながら、該一面側から輻射熱を放射する。
【0013】
第2の発明に係る通気性輻射熱反射体において、前記布材は、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下の織物とすることができる。
また、前記布材は、厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%の不織布とすることもできる。
【0014】
第2の発明に係る通気性輻射熱反射体において、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、前記第2の外殻構造は、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記第2の外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は前記第2の内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記第2の外殻構造の厚さは0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。
ここで、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQE、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、一般式QESi、QESiO、REAl12、及び
REAlOのいずれか1又は2以上からなることが好ましい。
【0015】
第2の発明に係る通気性輻射熱反射体において、前記無機繊維は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質から構成されていることが好ましい。
また、前記無機繊維は、Si、C、及びOを含有する無機物質から構成することができる。
更に、前記無機繊維は、β−SiCの微結晶を含有する結晶質の無機物質から構成することもできる。
【0016】
前記目的に沿う第3の発明に係る通気性輻射熱反射体の製造方法は、第2の発明に係る通気性輻射熱反射体の製造方法であって、
前記布材を裁断して前記帯部材を作製する第1工程と、
前記帯部材の一部を芯管の外周面に一定の張力下で隙間無く巻き付けて第1の渦巻き物を形成し、該第1の渦巻き物から前記芯管を除去した際に形成される空間部に、前記帯部材の他の一部をその中心部から隙間なく巻いて形成した第2の渦巻き物を充填して前記柱状物を作製する第2工程と、
前記柱状物を、前記材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液中に浸漬し、前記板状物を陰極側にして50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して、電気泳動により、前記粉末を該柱状物を形成している前記帯部材を構成している前記無機繊維の外側に付着させる第3工程と、
前記柱状物を前記分散溶液中から取り出し、乾燥させて水及び/又は有機溶媒を除去する第4工程と、
乾燥した前記柱状物を、不活性ガス雰囲気中1300〜1700℃で、0.2〜2時間加熱処理して前記粉末を前記無機繊維に固着させ、該無機繊維を前記第2の内殻構造と前記第2の外殻構造を持つ前記複合化無機繊維に変える第5工程とを有している。
【0017】
第3の発明に係る通気性輻射熱反射体の製造方法において、前記布材に化学繊維が含有される場合、あるいは前記布材にサイジング剤が施されている場合、前記第3工程の前に、前記柱状物を不活性ガス雰囲気中800〜1200℃で0.5〜5時間加熱処理することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明に係る通気性輻射熱反射体においては、通気性輻射熱反射体が、耐熱性の複合化無機繊維又は無機繊維で構成された通気性を有する布材から作製した帯部材で形成されているので、加熱炉内に配置した場合、排ガスの通過を妨げることなく、しかも排ガスとの接触を十分に行うことができる。これにより、排ガスの有する熱を通気性輻射熱反射体で濾し取って排ガス温度を下げることができると共に、排ガスで加熱された際に、加熱炉内に輻射熱を反射することができる。その結果、加熱炉内からの放熱量が減少し、燃料使用量を減少させることができる。
また、通気性輻射熱反射体を、布材から作製した帯部材を巻いて柱状物としているので、平面状で柔軟体である布材と比較して保形性が著しく向上し、排ガスによる機械的衝撃や磨耗に長期間に亘り耐えることが可能になると共に、取扱い(取付け、取外し、取替え等)を容易に行うことができる。更に、柱状物のため、加熱炉の内壁や天井に沿って並べて配置することが可能となり、例えば、セラミック接着剤を使用して互いに接着することで、剥落や落下を抑制して長期間に亘り安定して使用することが可能になる。
【0019】
第1の発明に係る通気性輻射熱反射体において、布材が、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下の織物である場合、又は布材が、厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%の不織布である場合、布材から作製した帯部材の巻き取る回数を変えることで、種々の寸法の通気性部材を容易に形成できる。
【0020】
第1の発明に係る通気性輻射熱反射体において、複合化無機繊維が内殻構造と外殻構造を持つ多層構造を有し、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、外殻構造が、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成される場合、目的に応じて外殻構造の組成を選択することで、内殻構造の劣化を防止することができる。また、外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値が、内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、外殻構造の厚さが、0.2μm以上10μm以下である場合、無機繊維に温度変動が生じても、外殻構造が内殻構造から剥離することを防止できる。
【0021】
第1の発明に係る通気性輻射熱反射体において、固溶体酸化物が、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、第2群から選択された少なくとも1の元素をQE、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、一般式QESi、QESiO、REAl12、及びREAlOのいずれか1又は2以上からなる場合、固溶体酸化物の耐熱性及び耐食性を高めることができる。
【0022】
第1の発明に係る通気性輻射熱反射体において、内殻構造が、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されている場合、内殻構造が、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、該結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、内殻構造が、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されている場合、内殻構造が、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、内殻構造が、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されている場合、比熱が小さくなって温度変動に容易に追従できると共に、高温になった際に輻射熱の反射効率を高めることができる。
【0023】
第1の発明に係る通気性輻射熱反射体において、無機繊維が、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されている場合、無機繊維が、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されている場合、無機繊維が、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されている場合、比熱が小さくなって温度変動に容易に追従できると共に、加熱された際に輻射熱の反射効率を高めることができる。
また、無機繊維が、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成されている場合、加熱されても、酸化雰囲気中で使用できる。
【0024】
第2の発明に係る通気性輻射熱反射体においては、通気性輻射熱反射体が、柱状物を構成している無機繊維の外側に第2の外殻構造を設けて、無機繊維を第2の内殻構造と第2の外殻構造を持つ複合化無機繊維に変えることで形成されるので、目的に応じて第2の外殻構造の組成を選択することで、第2の内殻構造の劣化を防止することができる。
【0025】
第2の発明に係る通気性輻射熱反射体において、布材が、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下の織物である場合、又は布材が、厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%の不織布である場合、布材から作製した帯部材の巻き取る回数を変えることで、種々の寸法の通気性部材を容易に形成できる。
【0026】
第2の発明に係る通気性輻射熱反射体において、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、第2の外殻構造が、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成される場合、目的に応じて第2の外殻構造の組成を選択することで、第2の内殻構造の劣化を防止することができる。また、第2の外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値が、第2の内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、第2の外殻構造の厚さが0.2μm以上10μm以下である場合、複合化無機繊維に温度変動が生じても、第2の外殻構造が第2の内殻構造から剥離することを防止できる。
【0027】
第2の発明に係る通気性輻射熱反射体において、固溶体酸化物が、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、第2群から選択された少なくとも1の元素をQE、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、一般式QESi、QESiO、REAl12、及びREAlOのいずれか1又は2以上からなる場合、固溶体酸化物の耐熱性及び耐食性を高めることができる。
【0028】
第2の発明に係る通気性輻射熱反射体において、無機繊維が、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)、Si、C、及びOを含有する無機物質、又は(3)β−SiCの微結晶を含有する結晶質の無機物質から構成されている場合、第2の内殻構造の組成は(1)〜(3)のいずれかの無機物質と同一となり、比熱が小さくなって温度変動に容易に追従できると共に、高温になった際に輻射熱の反射効率を高めることができる。
【0029】
第3の発明に係る通気性輻射熱反射体の製造方法においては、通気性輻射熱反射体の使用環境に応じて、最適な組成の第2の外殻構造を設けることができ、第2の内殻構造の劣化を防止することができる。
【0030】
第3の発明に係る通気性輻射熱反射体の製造方法において、布材に化学繊維が含有される場合、あるいは布材にサイジング剤が施されている場合、第3工程の前に、柱状物を不活性ガス雰囲気中800〜1200℃で0.5〜5時間加熱処理するので、柱状物を無機化することができ、通気性輻射熱反射体の高温下での安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る通気性輻射熱反射体の説明図である。
【図2】変形例に係る通気性輻射熱反射体の説明図である。
【図3】本発明の第4の実施の形態に係る通気性輻射熱反射体の説明図である。
【図4】実施例1に係る通気性輻射熱反射体の設置状況を示す説明図である。
【図5】同通気性輻射熱反射体の電力削減率及び温度の時間変化を示す説明図である。
【図6】(A)は同通気性輻射熱反射体の複合化無機繊維の表面状態を示す電子顕微鏡写真、(B)は実施例2に係る通気性輻射熱反射体の無機繊維の表面状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例5及び実施例6の円盤状物をそれぞれ使用した場合の、電気炉内の温度分布の説明図である。
【図8】実施例7で使用する熱放射率測定装置の説明図である。
【図9】同熱放射率測定装置で測定した熱放射率の波長依存性の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る通気性輻射熱反射体10は、耐熱性の複合化無機繊維で構成された通気性を有する布材から作製した帯部材11を長手方向に巻いて形成した、例えば断面円形の柱状物(巻物)である。そして、通気性輻射熱反射体10は、加熱炉の、例えば天井部12に設けられた断面円形の排気口13に内装された円筒体14の入口側に挿入され、天井部12から加熱炉内に突出する円筒体14の先側側部を貫通する複数のセラミックピン15で支持されて落下が防止されている。
【0033】
円筒体14に挿入された通気性輻射熱反射体10は、一面(炉内に向いた面)側が炉内からの輻射熱及び炉内から排気口13内を通過して炉外に排出される高温の排ガスにより加熱される。その際に、通気性輻射熱反射体10は、一面側から他面(炉外に向いた面)側への熱の移動を抑制して排気口13から炉外に流出する排ガスの熱を減少させる、すなわち、排ガスの顕熱を濾し取って排ガスの温度を低下させる熱フィルタとして作用する。また、通気性輻射熱反射体10は、加熱されて高温になった一面側から輻射熱を炉内に放射する(炉内に向けて輻射熱を反射する)熱レフレクタとしても作用する。
【0034】
布材を構成する耐熱性の複合化無機繊維は、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造を有している。ここで、内殻構造は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2とし、更にその炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物、(3)Si、C、及びOを含有する無機物質、(4)粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物、及び(5)β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質のいずれか1から構成されている。内殻構造は、炭化ケイ素系素材であるため、高温下で内殻構造は大きな熱放射率を有する。このため、内殻構造を有する複合化無機繊維で構成された帯状材11から形成された柱状物からなる通気性輻射熱反射体10は、高温下で大きな熱放射率を有することになる。
【0035】
一方、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、
Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、外殻構造は、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成されている。そして、外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、外殻構造の厚さは0.2μm以上10μm以下である。これによって、通気性輻射熱反射体10の温度が変動しても(通気性輻射熱反射体10を構成している複合化無機繊維の温度が変動しても)、外殻構造が内殻構造から剥離することを防止できる。その結果、通気性輻射熱反射体10を高温の酸化雰囲気中で使用しても、内殻構造が酸素と反応すること(内殻構造の酸化)を防止でき、内殻構造の材質変化に伴う特性の低下(例えば、強度低下、熱放射率の低下等)が抑制される。
【0036】
なお、固溶体酸化物が、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QESi、QESiO、REAl12、及び
REAlOのいずれか1又は2以上からなる場合、固溶体酸化物の耐熱性及び耐食性が高まる。その結果、外殻構造の耐熱性及び耐食性が高まることによって、酸化に伴う内殻構造の材質変化を防止でき、複合化無機繊維(通気性輻射熱反射体10)の高温酸化雰囲気中での安定性を更に高めることができる。
【0037】
通気性輻射熱反射体10を形成する帯部材11は、布材を裁断して作製される。そして、帯部材11の一部を芯管の外周面に一定の張力下で隙間無く巻き付けて第1の渦巻き物18を形成し、この第1の渦巻き物18から芯管を取外して形成される空間部に、帯部材11の他の一部をその中心部から隙間なく巻いて形成した第2の渦巻き物19を内装(充填)して柱状物からなる通気性輻射熱反射体10が構成される。このため、帯部材11の巻取り回数を変える(巻き取る帯部材11の長さを変える)ことで、通気性輻射熱反射体10の外径寸法を容易に調整でき、任意の大きさの通気性輻射熱反射体を作製できる。
【0038】
ここで、布材が織物である場合、織物の厚みは0.2〜10mm、開口率は30%以下である。また、布材が不織布である場合、不織布の厚みは1〜10mm、体積空隙率は50〜97%である。このため、布材から作製した帯部材11は通気性を有し、帯部材11を巻いて形成した通気性輻射熱反射体10も通気性を有する。なお、帯部材11の幅が3mm未満の場合、通気性輻射熱反射体10の厚みも3mm未満となり、排ガスの顕熱を濾し取って排ガスの温度を低下させる熱フィルタ作用が弱くなる。また、帯部材11の幅が300mmを超えると、通気性輻射熱反射体10の厚みも300mmを超えるため、通気性輻射熱反射体10の厚み方向の両側で生じる圧力損失が大きくなる。このため、帯部材11の幅を3〜300mmにした。そして、通気性輻射熱反射体10の寿命は、通気性輻射熱反射体10の厚みが厚くなると伸びるので、通気性輻射熱反射体10の厚みを3〜300mmの範囲で調整することで、通気性輻射熱反射体10を一定期間に亘って安定して使用することができる。
【0039】
円筒体14の排気口13内への取付けは、例えば、耐熱性無機接着剤が練り込まれた複合化無機繊維からなる織物16を円筒体14の外周面に巻き付け、この状態の円筒体14を排気口13に挿入して、円筒体14と排気口13との間の隙間を織物16で充填することにより行う。外側に織物16が巻き付けられた円筒体14を排気口13内に挿入すると、織物16は円筒体14と排気口13との間の隙間の形状に合わせて変形し、円筒体14の外周面と排気口13の内周面との隙間を確実に充填することができる。そして、織物16に練り込まれた耐熱性無機接着剤が硬化すると、織物16を隙間の形状に合わせた形で固定することができ、隙間を安定して塞ぐことができると共に、耐熱性無機接着剤を介して円筒体14と織物16及び織物16と排気口13の内周面との接合が行われ、円筒体14を排気口13内で強固に固定することができる。更に、円筒体14側部の軸方向中央部の周方向の複数位置には、内側から円筒体14及び円筒体14の外側の織物16をそれぞれ貫通し、その先部が排気口13の内周面に当接する複数(図1では2本)の耐熱性のセラミックボルト17が設けられている。このため、セラミックボルト17の先端部で排気口12の内周面を押圧することで、円筒体14の排気口13内への固定を更に強化できる。
【0040】
セラミックピン15(セラミックボルト17も同様)は、高耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は高耐熱性非酸化物(例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン)のいずれか1からなる。これによって、セラミックピン15の高温下での変形や破損を防止して、長期間に亘って安定して使用することができる。ここで、加熱炉内で使用中に温度変動がある場合、セラミックピン15を、高耐熱性非酸化物で形成することで、セラミックピン15の温度変化に伴う破損を更に防止できる。なお、高耐熱性非酸化物で構成したセラミックピン15は、高温下の酸化性雰囲気中では、セラミックピン15の表面が徐々に酸化されてくるので、セラミックピン15の表面には、例えば、アルミナ、ジルコニア等の耐熱酸化物のスラリーを塗布して被覆層を形成し、セラミックピン15の表面の酸化を防止する。これによって、セラミックピン15の高温特性(例えば、強度、熱衝撃抵抗)の低下を防いで、長期間に亘って安定して使用することができる。
【0041】
ここで、織物16は、例えば、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Si、C、及びOを含有する無機物質、(3)β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質、あるいは(4)Al、Si、及びOからなる非晶質の無機物質から形成されている。なお、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質には、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。また、Si、C、及びOを含有する無機物質には、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。
【0042】
織物16を形成する無機繊維が(1)〜(3)のいずれかの無機物質で構成されている場合、通気性輻射熱反射体10を設置する加熱炉内の雰囲気が低酸化性の場合、(1)〜(3)のいずれかの無機物質で構成された無機繊維の酸化速度は小さいので、織物16を長期間に亘って使用する(円筒体14を排気口13内に長期間に亘って固定する)ことができる。一方、通気性輻射熱反射体10を設置する加熱炉内の雰囲気が酸化性の場合、使用時間の経過と共に織物16は徐々に酸化して形態が変化する。したがって、バッチ式の加熱炉等のように、頻繁に織物16の状況確認及びメンテナンスが可能な場合は、炉内雰囲気が酸化性であっても、織物16の交換を前提に通気性輻射熱反射体10を設置することができる。
また、織物16を形成する無機繊維が(4)の無機物質で構成されている場合、高温下において酸化性雰囲気、非酸化性雰囲気を問わず、非晶質の結晶化が進行して(粒成長が生じて)無機繊維が脆くなる。このため、織物16を形成している無機繊維が(4)の無機物質で構成されている場合、織物16を長期間に亘って使用することができない。
【0043】
また、通気性輻射熱反射体の厚みを大きくする必要がある場合、図2に示すように、幅広の帯部材20の一部を芯管の外周面に巻いて形成した環状の第1の渦巻き物21の中心部に、帯部材20の他の一部をその中心部から隙間なく巻いて作製した第2の渦巻き物22を内装(充填)して通気性輻射熱反射体23を構成し、通気性輻射熱反射体23内に、厚み方向に沿って内径が、例えば1〜50mmの複数(図2では4個)の耐熱性の中空管24を設けることで、通気性輻射熱反射体23の厚み方向の両側で生じる圧力損失を小さくすることができる。また、通気性輻射熱反射体23の断面積に対する中空管24の中空部の総断面積の割合は30%以下である。これにより、輻射熱の放射面積(反射面積)の大幅な低下を防止しながら、通気性輻射熱反射体23の厚み方向の両側で生じる圧力損失を小さくできる。なお、中空管24を設ける代わりに、通気性輻射熱反射体に排ガスの通過方向に沿って直径が1〜50mmの複数の貫通孔を形成してもよい。
【0044】
ここで、中空管24は、高耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は高耐熱性非酸化物(例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン)のいずれか1からなる。これによって、中空管24の高温下での変形や破損を防止して、長期間に亘って安定して使用することができる。ここで、加熱炉内で使用中に温度変動がある場合、中空管24を、高耐熱性非酸化物で形成することで、中空管24の温度変化に伴う破損を更に防止できる。なお、高耐熱性非酸化物で構成した中空管24は、高温下の酸化性雰囲気中では、中空管24の表面が徐々に酸化されてくるので、中空管24の表面に、例えば、アルミナ、ジルコニア等の耐熱酸化物のスラリーを塗布して被覆層を形成し、中空管24の表面の酸化を防止する。これによって、中空管24の高温特性(例えば、強度、熱衝撃抵抗)の低下を防いで、長期間に亘って安定して使用することができる。
【0045】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る通気性輻射熱反射体10の作用について、説明する。
通気性輻射熱反射体10を構成する耐熱性の複合化無機繊維は、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造を有しているので、高温の酸化雰囲気中でも内殻構造の変質が防止されて、無機繊維の形状を維持することができ、通気性輻射熱反射体10内に形成されている排ガスの通過経路が安定に存在できる。このため、通気性輻射熱反射体10を、円筒体14を介して加熱炉の排気口13内に設置すると、排ガスは円筒体14内に挿入されている通気性輻射熱反射体10を通過して外部に排出することができる。このとき、排ガスは通気性輻射熱反射体10を構成している複合化無機繊維と効率的に接触するため、通気性輻射熱反射体10は排ガスの顕熱を濾し取って排ガスの温度を低下させ(熱フィルタ作用を示し)、排気口13から外部に流出する熱を減少させることができる。また、通気性輻射熱反射体10は、排ガスにより加熱されて高温となる。このとき、内殻構造は酸化されず、炭化ケイ素系素材の特徴のひとつである大きな熱放射率を維持できる。これにより、高温になった通気性輻射熱反射体10は、加熱炉内からの輻射熱を反射して(熱レフレクタ作用を示し)加熱炉内に戻すことができる。その結果、通気性輻射熱反射体10を排気口13に設けることで、加熱炉内からの放熱量を減少させ、燃料使用量を減少させることができる。
【0046】
本発明の第2の実施の形態に係る通気性輻射熱反射体は、第1の実施の形態に係る通気性輻射熱反射体10と比較して、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で構成された布材の代わりに、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Si、C、及びOを含有する無機物質、(3)β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質、あるいは(4)Al、Si、及びOからなる非晶質の無機物質で構成された無機繊維で形成された布材を裁断して帯部材を形成することが特徴となっている。このため、第2の実施の形態に係る通気性輻射熱反射体の構成及び作用は、通気性輻射熱反射体10と同一であるので、詳細な説明は省略し、布材を形成する無機繊維について説明する。
【0047】
ここで、(1)の無機物質には、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。また、(2)の無機物質には、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。
【0048】
そして、無機繊維が(1)〜(3)のいずれかの無機物質で構成されている場合、無機繊維は、通気性輻射熱反射体10を構成している複合化無機繊維の内殻構造と同一の組成となるので、この無機繊維から構成された布材から作製した帯部材を隙間無く巻き取った柱状物から形成される通気性輻射熱反射体も、通気性輻射熱反射体10と同様の熱フィルタ作用及び熱レフレクタ作用を有する。なお、無機繊維は炭化ケイ素系素材であるため、高温の酸化雰囲気中では徐々に酸化されて材質が変化し、特性低下(例えば、強度低下、熱放射率の低下等)が生じる。このため、通気性輻射熱反射体を設置する雰囲気が低酸化性の場合は、無機繊維の酸化速度は小さいので、通気性輻射熱反射体は長期間に亘って、破損せずに高い輻射熱の反射効率を維持することができる。また、バッチ式の加熱炉等のように、頻繁に通気性輻射熱反射体の状況確認及びメンテナンスが可能な場合は、雰囲気が酸化性であっても、交換を前提に通気性輻射熱反射体を使用することができる。
【0049】
また、無機繊維が、(4)の無機物質で構成されている場合、複合化無機繊維の内殻構造及び(1)〜(3)の無機繊維と比較して、比熱が大きく、熱放射率が小さくなる。このため、複合化無機繊維で形成した通気性輻射熱反射体10、又は(1)〜(3)の無機物質で構成された無機繊維で形成した通気性輻射熱反射体と比較して、(4)の無機物質で構成された無機繊維で形成した通気性輻射熱反射体の熱フィルタ作用及び熱レフレクタ作用は低下する。更に、(4)の無機物質で構成された無機繊維では、高温下において酸化性雰囲気、非酸化性雰囲気を問わず、非晶質の結晶化が進行するため(粒成長が生じるため)無機繊維が脆くなる。従って、通気性輻射熱反射体を形成している無機繊維が(4)の無機物質で構成されている場合、通気性輻射熱反射体を長期間に亘って使用することができない。
【0050】
図3に示すように、本発明の第3の実施の形態に係る通気性輻射熱反射体25は、耐熱性の無機繊維で構成された通気性を有する布材から作製した帯部材26の一部を長手方向に芯管の周囲に巻いて作製した環状の第1の渦巻き物27の中心部(芯管を除去した際に形成される空間部)に、帯部材26の他の一部を中心部から隙間無く巻いて作製した第2の渦巻き物28を内装(充填)して断面円形の柱状物を形成した後、柱状物を構成している無機繊維の外側に第2の外殻構造を設けて、柱状物を第2の内殻構造と第2の外殻構造を持つ複合化無機繊維から形成するようにしたことが特徴となっている。そして、通気性輻射熱反射体25は、本発明の第1の実施の形態に係る通気性輻射熱反射体10と同様に、加熱炉の、例えば天井部12に設けられた排気口13に内装された円筒体14の入口側に挿入され、天井部12から加熱炉内に突出する円筒体14の先側側部を貫通する複数のセラミックピン15で支持されて落下が防止されている。
【0051】
円筒体14に挿入された通気性輻射熱反射体25は、一面(炉内に向いた面)側が炉内からの輻射熱及び炉内から排気口13内を通過して炉外に排出される高温の排ガスにより加熱される。その際に、通気性輻射熱反射体25は、一面側から他面(炉外に向いた面)側への熱の移動を抑制して排気口13から炉外に流出する排ガスの熱を減少させる、すなわち、排ガスの顕熱を濾し取って排ガスの温度を低下させる熱フィルタとして作用する。また、通気性輻射熱反射体25は、加熱されて高温になった一面側から輻射熱を炉内に放射する(炉内に向けて輻射熱を反射する)熱レフレクタとしても作用する。
【0052】
帯部材26を構成している無機繊維は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Si、C、及びOを含有する無機物質、及び(3)β−SiCの微結晶を含有する結晶質の無機物質のいずれか1で構成されている。ここで、(1)の無機物質には、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。また、(2)の無機物質には、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。
【0053】
無機繊維が(1)〜(3)のいずれかの無機物質で構成されている場合、複合化無機繊維の第2の内殻構造は、第1の実施の形態に係る通気性輻射熱反射体10を構成している複合化無機繊維の内殻構造と同一の組成(炭化ケイ素系素材)となる。このため、第2の内殻構造を有する複合化無機繊維で構成された柱状物からなる通気性輻射熱反射体25は、高温下で大きな熱放射率を有することになる。
【0054】
一方、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、
Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、第2の外殻構造は、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成されている。そして、第2の外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、第2の内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、第2の外殻構造の厚さは0.2μm以上10μm以下である。これによって、通気性輻射熱反射体25の温度が変動しても(通気性輻射熱反射体25を構成している複合化無機繊維の温度が変動しても)、第2の外殻構造が第2の内殻構造から剥離することを防止できる。その結果、通気性輻射熱反射体25を高温の酸化雰囲気中で使用しても、第2の内殻構造が酸素と反応すること(第2の内殻構造の酸化)を防止でき、第2の内殻構造の材質変化に伴う特性の低下(例えば、強度低下、熱放射率の低下等)が抑制される。
【0055】
なお、固溶体酸化物が、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、
Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、一般式QESi、QESiO、REAl12、及び
REAlOのいずれか1又は2以上からなる場合、固溶体酸化物の耐熱性及び耐食性が高まる。その結果、第2の外殻構造の耐熱性及び耐食性が高まることによって、酸化に伴う第2の内殻構造の材質変化を防止でき、複合化無機繊維(通気性輻射熱反射体25)の高温酸化雰囲気中での安定性を更に高めることができる。
【0056】
通気性輻射熱反射体25を形成する帯部材26は、無機繊維で構成された織物(厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下)又は不織布(厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%)からなる通気性を有する布材を、例えば3〜300mmの幅に裁断して作製される。このため、帯部材26の巻取り回数を変えることで、通気性輻射熱反射体25の外径寸法を容易に調整でき、任意の大きさの通気性輻射熱反射体を作製できる。
【0057】
ここで、帯部材26の幅が3mm未満の場合、通気性輻射熱反射体25の厚みも3mm未満となり、排ガスの顕熱を濾し取って排ガスの温度を低下させる熱フィルタ作用が弱くなる。また、帯部材26の幅が300mmを超えると、通気性輻射熱反射体25の厚みも300mmを超えるため、通気性輻射熱反射体25の厚み方向の両側で生じる圧力損失が大きくなる。このため、帯部材26の幅を3〜300mmにした。そして、通気性輻射熱反射体25の寿命は、通気性輻射熱反射体25の厚みが厚くなると伸びるので、通気性輻射熱反射体25の厚みを3〜300mmの範囲で調整することで、通気性輻射熱反射体25を一定期間に亘って安定して使用することができる。
【0058】
また、通気性輻射熱反射体の厚みを大きくする必要がある場合は、幅広の帯部材の一部を芯管の外周面に巻いて形成した環状の第1の渦巻き物の中心部に、帯部材の他の一部をその中心部から隙間なく巻いて作製した第2の渦巻き物を内装(充填)して通気性輻射熱反射体を構成し、通気性輻射熱反射体内に、厚み方向に沿って内径が、例えば1〜50mmの複数の耐熱性の中空管を設けることで、通気性輻射熱反射体の厚み方向の両側で生じる圧力損失を小さくすることができる。ここで、通気性輻射熱反射体の断面積に対する中空管の中空部の総断面積の割合は30%以下である。これにより、輻射熱の放射面積(反射面積)の大幅な低下を防止しながら、通気性輻射熱反射体の厚み方向の両側で生じる圧力損失を小さくできる。なお、中空管を設ける代わりに、通気性輻射熱反射体に排ガスの通過方向に沿って直径が1〜50mmの複数の貫通孔を形成してもよい。なお、中空管には、通気性輻射熱反射体10の変形例で説明した中空管24と同一のものを使用できる。
【0059】
続いて、本発明の第4の実施の形態に係る通気性輻射熱反射体25の製造方法について説明する。
通気性輻射熱反射体25の製造方法は、無機繊維で構成された布材を裁断して帯部材26を作製する第1工程と、帯部材26の一部を芯管(図示せず)の外周面に一定の張力下で隙間無く巻き付けて第1の渦巻き物27を形成し、第1の渦巻き物27から芯管を除去した際に形成される空間部に、帯部材26の他の一部をその中心部から隙間なく巻いて形成した第2の渦巻き物28を充填して柱状物を作製する第2工程とを有している。また、通気性輻射熱反射体25の製造方法は、柱状物を、材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液中に浸漬し、柱状物を陰極側にして50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して電気泳動により粉末を柱状物を構成している無機繊維の外側に付着させる第3工程と、柱状物を分散溶液中から取り出し、乾燥させて水及び/又は有機溶剤を除去する第4工程と、乾燥した柱状物を、不活性ガス雰囲気中1300〜1700℃で0.2〜2時間加熱処理して粉末を無機繊維に固着させ、無機繊維を第2の内殻構造と第2の外殻構造を持つ複合化無機繊維に変える第5工程とを有している。以下、詳細に説明する。
【0060】
無機繊維で構成された布材を裁断して、帯部材26を作製する。ここで、布材が織物の場合、厚みは0.2〜10mm、開口率は30%以下であり、布材が不織布の場合、厚みは1〜10mm、体積空隙率は50〜97%である。また、布材を形成している無機繊維は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Si、C、及びOを含有する無機物質、及び(3)β−SiCの微結晶を含有する結晶質の無機物質のいずれか1で構成されている。なお、作製する帯部材26の幅は、通気性輻射熱反射体25を挿入する円筒体14の長さに応じて、3〜300mmの範囲で決定する(以上、第1工程)。
【0061】
作製した帯部材26の一部を、例えば、不織布用送り出し機又は巻き取り機等を用いて、芯管の外周面に一定の張力下で隙間無く巻き付けて、円筒体14に挿入可能な外径を有する第1の渦巻き物27を形成する。次いで、第1の渦巻き物27から芯管を取外し、第1の渦巻き物27の中央部に形成される空間部に、帯部材26の他の一部からなる第2の渦巻き物28を充填して、柱状物を作製する。
【0062】
ここで、帯部材26を作製する布材に化学繊維(例えばレーヨン繊維)が含有される場合、あるいは布材にサイジング剤が施されている場合は、柱状物を、不活性ガス雰囲気(窒素ガス雰囲気、好ましくはアルゴンガス雰囲気)中で、800〜1200℃の温度で、0.5〜5時間加熱処理する。これによって、化学繊維を完全に分解して除去したり、一部を分解除去し残部を炭化させることができ、サイジング剤は完全に除去することができる。その結果、柱状物は、完全に無機物化する(以上、第2工程)。
【0063】
柱状物を、材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液が貯留された浴槽中に浸漬する。ここで、有機溶媒は、例えば、アセトン、エタノール、ノルマルヘプタン等である。また、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、
Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、材料Aは、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる。なお、耐熱性及び耐食性の高い固溶体酸化物とする場合、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、
Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、更に第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、固溶体酸化物の組成を、一般式QESi、QESiO、REAl12、及びREAlOのいずれか1又は2以上とする。
【0064】
次いで、柱状物を陰極側にして、直流安定化電源より50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して電気泳動により、分散溶液中の粉末を柱状物を形成している帯部材26を構成している無機繊維の外側に付着させる(電気泳動処理)。ここで、浴槽中には、例えば、C/Cコンポジット製のカソ−ド電極が距離を有して対向配置されており、柱状物はアノ−ド電極となる2枚のステンレス製金網で抱き合わされて(挟まれて)、カソ−ド電極間に配置される(以上、第3工程)。
【0065】
電気泳動処理が完了すると、柱状物を分散溶液中から取り出し、分散溶液の液切りを行った後、1〜4時間風乾して、無機繊維の外側に付着した粉末層に含まれる水及び/又は有機溶媒の大半を飛散除去する。次いで、大気雰囲気中、40〜80℃の温度で3〜10時間熱風乾燥して、粉末層に残存する水及び/又は有機溶媒を完全に除去する(以上、第4工程)。
【0066】
乾燥が完了した柱状物を、アルゴンガス等の不活性ガス気流下、又は0.2〜1MPaの微圧力の不活性ガス雰囲気中で、1300〜1700℃の温度で0.2〜2時間加熱処理する。これによって、無機繊維の外側に付着している粉末が焼結して無機繊維に固着し、無機繊維は第2の内殻構造と第2の外殻構造を持つ複合化無機繊維に変わり(以上、第5工程)、通気性輻射熱反射体25が形成される。そして、第2の外殻構造は、材料Aで構成され、第2の内殻構造は、無機繊維が(1)の無機物質で構成されている場合は(1)の無機物質で、無機繊維が(2)の無機物質で構成されている場合は(2)の無機物質で、無機繊維が(3)の無機物質で構成されている場合は(3)の無機物質でそれぞれ構成される。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
先ず、Si、C、O、及びZrを含有する無機物質で形成された無機繊維で構成された不織布(繊維目付が240g/m、化学繊維の一例であるレ−ヨン繊維を20質量%含有し、幅が500mm、長さが10mのロール巻き)を裁断して、幅が20mmの帯部材を作製した(第1工程)。次いで、帯部材の一部が弛まないように一定の張力を加えながら、巻き取り機を用いて帯部材の一部を芯管の外周面に隙間無く巻き付けて、外径58mmの第1の渦巻き物を形成し、第1の渦巻き物から芯管を除去した跡に形成される空間部に帯部材の他の一部をその中心部から隙間なく巻いて作製した第2の渦巻き物を充填して、柱状物を作製した。そして、柱状物を熱処理炉内にセットし、アルゴンガス雰囲気中、800℃で1時間熱処理して、不織布に含有されているレ−ヨン繊維の一部を分解除去して残部を炭化させると共に、不織布に施されているサイジング剤(有機物)の除去を行った(第2工程)。
【0068】
続いて、熱処理された柱状物をアノ−ド電極となる2枚のステンレス製金網で抱き合わせ、第1群から選択されたSi、Zrの元素からなる固溶体酸化物であるジルコン(ZrSiO)の粉末がエタノ−ルと水の混合溶媒中に均一分散した分散溶液を貯留している浴槽中に距離を設けて対向配置したC/Cコンポジット製の2枚のカソ−ド電極の間に配置した。そして、直流安定化電源より120Vの直流電圧を5分間印加して、柱状物を形成している不織布を構成する無機繊維の外側にジルコンの粉末を電気泳動により付着させた(第3工程)。次いで、柱状物を分散溶液中から取り出し、液切り、2時間の風乾、大気雰囲気中40℃で6時間の熱風乾燥を行った(第4工程)後、アルゴンガス雰囲気中0.5MPaの微加圧下において、1500℃で0.5時間熱処理を行って、無機繊維の外側に付着させたジルコン粉末を焼結させて無機繊維に固着させることにより、無機繊維を第2の内殻構造(Si、C、O、及びZrを含有する無機物質で構成されている)と第2の外殻構造(ジルコン)を持つ複合化無機繊維に変えて(第5工程)、直径58mm、厚さ20mmの通気性輻射熱反射体(以下、円盤状物1という)を作製した。
【0069】
一方、外径が68mm、内径が58mm、長さが80mmのアルミナ製の円筒体(アルミナ管)の外周面に、炭化ケイ素系の無機繊維で構成され、アルミナ質の耐熱性無機接着剤を練り込まれた平織物(厚みが0.25mm、幅が40mm)を巻き付けて、外径が70mmのシール部を形成した。そして、図4に示す電気炉の天井部の中央に形成された内径70mmの排気口の入口側(炉内側)から、外径70mmのシール部が取付けれた円筒体を基側から挿入し、円筒体の軸方向中央より基側の側部の対向する位置(周方向0度位置及び180度位置)に予め作製しておいたボルト孔に、外径7mm、長さ12mmのアルミナ製のボルトをねじ込み、円筒体の内側から円筒体及びシール部をそれぞれ貫通させて、その先部を排気口の内周面に当接させて押圧した。次いで、円盤状物1を円筒体の炉内側の開口から挿入し、円筒体の先側の側部の対向する位置(周方向0度位置及び180度位置)に予め作製しておいた孔に、円筒体の外側から外径7mm、長さ30mmのアルミナ製のピンを差込み、円筒体内に挿入された円盤状物1を支持した。以上によって、電気炉の排気口内への円盤状物1の設置(取付け)が完了する。
【0070】
続いて、電気炉の排気口内に設置した円盤状物1の熱フィルタ作用及び熱レフレクタ作用を確認するため、電気炉を常時1300℃一定に保持(電気炉中央部の温度で制御)し、電気炉の炉床中央部に形成した空気送入口より0.8リットル/分の流量で空気を200時間電気炉内に流通させ、そのときの電気炉の消費電力W1の削減率を調べた。ここで、消費電力W1の削減率は、電気炉の排気口内に円盤状物1を設置しない状態で、炉床中央部の空気送入口より0.8リットル/分の流量で空気を電気炉内に流通させながら、電気炉を常時1300℃一定に保持する際に必要な消費電力量をW0とした場合、100×(W0−W1)/W0により求めた。その結果を図5に示す。なお、図5には、電気炉中央部に配置した熱電対で測定した温度(設定温度)、円盤状物1の炉内側表面に取付けた熱電対で測定した円盤状物下の温度、及び円盤状物1の炉外側表面に取付けた熱電対で測定した円盤状物上の温度も合わせて記載している。また、別の電気炉内に円盤状物1を配置し、1300℃の空気中で340時間連続加熱し、円盤状物1の高温酸化による劣化の有無を観察した。
【0071】
図5に示すように、円盤状物1を設置する場合は、設置しない場合に比べ消費電力削減率は35%の高い値を示し、この削減率は200時間中変わることなく一定で、円盤状物1が優れた熱レフレクタ作用(輻射熱反射特性)を有することが確認でき、電気炉運転の省エネルギ−に大きく寄与すること、結果的にはCOの発生低減に大きく寄与することが示唆された。また、円盤状物下の温度(炉内側表面温度)が1250℃であるのに対して、円盤状物上の温度(炉外側表面温度)は630℃であり、円盤状物1の上下で620℃もの温度差が発生しており、この温度差は200時間に亘って常時一定であった。このことから、円盤状物1が優れた熱フィルタ作用(熱遮蔽特性)を持つことが確認できた。
【0072】
大気中、1300℃での円盤状物1の耐久試験(高温酸化抵抗性試験)において、耐久試験開始から150時間及び340時間を経過した時点における円盤状物1を形成している複合化無機繊維を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果を図6(A)に示す。図6(A)に示すように、高温酸化による複合化無機繊維の劣化は全く認められず、この円盤状物1が1300℃の高温でも、長期に亘って一定した性能を保持し得るものであることが確認できた。
【0073】
(実施例2)
Si、C、O、及びZrを含有する無機物質で形成された無機繊維で構成された不織布(繊維目付が240g/m、レ−ヨン繊維を20質量%含有し、厚さ5mm、体積空隙率95%)を裁断して、幅が20mmの帯部材を作製した。次いで、帯部材が弛まないように一定の張力を加えながら、巻き取り機を用いて帯部材を中心部から外側まで(芯管を使用しないで)隙間無く巻き付けて、外径58mm、厚さが20mmの円盤状物2(通気性輻射熱反射体)を作製した。そして、実施例1の円盤状物1を円筒体から取外し、作製した円盤状物2を挿入して、実施例1と同様に、電気炉を常時1300℃一定に保持し、電気炉の炉床の空気送入口より0.8リットル/分の流量で空気を200時間電気炉内に流通させ、そのときの電気炉の消費電力の削減率を調べた。また、円盤状物2の上下にそれぞれ熱電対を取付け、円盤状物上下の温度を測定した。
【0074】
その結果、円盤状物2を挿入しても、使用の初期段階(加熱を開始してから約100時間程度)では、消費電力削減率は、実施例1とほぼ同等の値を示し、円盤状物2が優れた熱レフレクタ作用(輻射熱反射特性)を有することが確認できた。また、円盤状物2の上下の温度差が示す熱遮蔽効果も実施例1とほぼ同等の結果を示した。一方、実施例1の円盤状物1と同様の方法で行った円盤状物2の大気中、1300℃での耐久試験では、図6(B)に示すように、円盤状物2を形成している不織布を構成するSi、C、O、及びZrを含有する無機物質で形成された無機繊維は、150時間を経過した時点で既に無機繊維が著しく損傷を受けて劣化していることが認められた。したがって、円盤状物2をこの温度で実用に供するためには、比較的短期間で取替えながら使用する必要がある。
【0075】
(実施例3)
Si、C、及びOを含有する無機物質で形成された無機繊維で構成された平織物(繊維目付が289g/m、厚さ0.33mm)を裁断して、幅が20mmの帯部材を作製した。次いで、帯部材が弛まないように一定の張力を加えながら、巻き取り機を用いて帯部材を中心部から外側まで(芯管を使用しないで)隙間無く巻き付けて、外径58mm、厚さが20mmの円盤状物3(通気性輻射熱反射体)を作製した。そして、実施例1の円盤状物1を円筒体から取外し、作製した円盤状物3を挿入して、実施例1と同様に、電気炉を常時1300℃一定に保持し、電気炉の炉床の空気送入口より0.8リットル/分の流量で空気を200時間電気炉内に流通させ、そのときの電気炉の消費電力の削減率を調べた。また、円盤状物3の上下にそれぞれ熱電対を取付け、円盤状物上下の温度を測定した。
【0076】
その結果、円盤状物3を挿入しても、使用の初期段階(加熱を開始してから約100時間程度)では、消費電力削減率は、実施例1とほぼ同等の値を示し、円盤状物3が優れた熱レフレクタ作用(輻射熱反射特性)を有することが確認できた。また、円盤状物3の上下の温度差が示す熱遮蔽効果も実施例1とほぼ同等の結果を示した。一方、実施例1の円盤状物1と同様の方法で行った円盤状物3の大気中、1300℃での耐久試験では、円盤状物2の場合と同様、円盤状物3を形成している平織物を構成するSi、C、及びOを含有する無機物質で形成された無機繊維は、150時間を経過した時点で既に無機繊維が著しく損傷を受けて劣化していることが認められた。したがって、円盤状物3をこの温度で実用に供するためには、比較的短期間で取替えながら使用する必要がある。
【0077】
(実施例4)
実施例1で使用した不織布を裁断して、幅が50mmの帯部材を作製し、実施例1と同様の方法で円盤状物4(通気性輻射熱反射体)を作製した。次いで、内径5mm、外径7mm、長さ50mmのアルミナ製の10本の中空管が円盤状物4の表裏面上に均等に配置されるように、中空管を円盤状物4の軸方向に貫通させた。その結果、円盤状物4の開口率は7.4%となった。そして、実施例1の円盤状物1を円筒体から取外し、作製した円盤状物4を挿入して、実施例1と同様に、電気炉を常時1300℃一定に保持し、電気炉の炉床の空気送入口より0.8リットル/分の流量で空気を200時間電気炉内に流通させ、そのときの電気炉の消費電力の削減率を求めて省エネルギ−効果を調べた。また、円盤状物4の上下にそれぞれ熱電対を取付けて円盤状物4の上下面の温度を測定し、円盤状物4の熱遮蔽効果を調べた。
【0078】
円盤状物4では、開口率が7.4%のため、加熱された空気による圧力損失が殆ど無く、高温空気が円盤状物4を素通りすると思われたが、消費電力削減率及び熱遮蔽効果は、いずれも実施例1(開口率が0%の円盤状物1)とほぼ同一の優れた結果を示した。その結果、円盤状物に複数の孔を開けて、円盤状物の厚み方向の両側での熱風による圧損を無くす工夫を施しても、性能発現、すなわち、熱レフレクタ作用(輻射熱反射特性)及び熱フィルタ作用(熱遮蔽特性)には全く影響を及ぼさないことがわかった。
【0079】
(実施例5)
実施例1で使用した不織布を裁断して、幅が5mmの第2の帯部材を作製し、実施例1と同様の方法で直径58mm、厚さ5mmの円盤状物5(通気性輻射熱反射体)を作製した。そして、実施例1の円盤状物1をアルミナ製の円筒体から取外し、作製した円盤状物5を挿入して、実施例1と同様に、電気炉を常時1300℃一定に保持した状態で、電気炉内の中心(温度制御点)と円盤状物5の炉内側端面の中心を結ぶ直線に沿った温度分布、円盤状物5の炉内側端面の中央部温度、及び円盤状物5の炉外側端面の中央部温度を測定すると共に、円盤状物5の炉内側端面の中央部温度と炉外側端面の中央部温度との温度差(熱遮蔽効果)を調べた。その結果を、図7に示す。
【0080】
図7に示すように、円盤状物5を使用すると、電気炉内の中心を1300℃に温度制御する場合、円盤状物5の炉内側端面の中央部でも1285℃の高い温度が保たれており、円盤状物5を装着するだけで所望の温度を電気炉内に広域に亘って保持できる、すなわち炉均熱部を著しく広範に広げることができることが確認できた。また、この円盤状物5の炉外側端面の中央部温度は630℃で、円盤状物5の両側で655℃に及ぶ熱遮蔽効果が確認できた。
【0081】
(実施例6)
Al、Si、及びOを含有する非晶質無機物質(Alが約30%、SiOが約70%)で構成された無機繊維(Al−Si−O系無機繊維)で形成された不織布(厚さ5mm、体積空隙率80%)を裁断して、幅が5mmの帯部材を作製した。次いで、帯部材が弛まないように一定の張力を加えながら、巻き取り機を用いて帯部材を中心部から外側まで(芯管を使用しないで)隙間無く巻き付けて、外径58mm、厚さが5mmの円盤状物6(通気性輻射熱反射体)を作製した。そして、実施例1の円盤状物1を円筒体から取外し、作製した円盤状物6を挿入して、実施例1と同様に、電気炉を常時1300℃一定に保持した状態で、電気炉内の中心(温度制御点)と円盤状物6の炉内側端面の中心を結ぶ直線に沿った温度分布、円盤状物6の炉内側端面の中央部温度、及び円盤状物6の炉外側端面の中央部温度を測定すると共に、円盤状物6の炉内側端面の中央部温度と炉外側端面の中央部温度との温度差(熱遮蔽効果)を調べた。
【0082】
図7に示すように、円盤状物6を使用する場合、温度分布は、電気炉内の中心と円盤状物6の炉内側端面の中心を結ぶ直線に沿って、電気炉の中心部から6cm程度の部位から温度が低下し始め、電気炉の中心部から10cm程度の部位(円盤状物6の炉内側端面から炉内側に2.5cm程度入った部位)から急激に温度が低下し、円盤状物6の炉内側端面の中央部温度は1150℃まで低下した。しかしながら、この円盤状物6の炉外側端面の中央部温度は535℃であり、円盤状物6の厚み方向の両側で615℃に及ぶ熱遮蔽効果が確認できた。
【0083】
(実施例7)
実施例5の円盤状物5、実施例6の円盤状物6から、縦15mm、横15mm、厚さ5mmの平板状の試験片をそれぞれ切り出し、図8に示す測定装置を用いて各試験片の熱放射率を測定した。熱放射率の測定は、電気炉内に設けた試料ホルダーに、試験片の縦15mm、横15mmの一面が露出するようにセットし、試験片温度を800〜1000℃の範囲に加熱して、電気炉の外部に設けた光学系を用いて一定強度の光(0.7〜5μmの波長範囲の赤外線)を試験片の露出した面に照射し、試験片の露出した面で反射した反射光の強度(放射強度)を測定して求めた。その結果を図9に示す。
【0084】
ここで、試験片を構成する不織布は、体積空隙率が95%で、直径が10μmの無機繊維から形成されているため、試験片で反射された光の大部分は散逸する。このため、炭化ケイ素の試験体を用いて測定した値をバックグラウンドとした装置係数を用いて、測定された放射強度の補正を行い、波長毎の単色放射率を算出した。なお、光学系は、試験片への光照射及び試験片からの反射光強度を測定する集束レンズを備えたフーリエ変換赤外分光器(FT−IR)と、試験片への外乱光の入射及びフーリエ変換赤外分光器への外乱光の入射を防止するピンホールスリットと、照射光及び反射光の進路を変えるミラー(反射面が金蒸着膜)と、試験片への照射光及び試験片からの反射光を集光する集光レンズとを有している。
【0085】
図9に示すように、800〜1000℃の温度範囲では、円盤状物5から作製した試験片(Si、C、O、及びZrを含有する無機物質で構成された第2の内殻構造と、ジルコンから構成された第2の外殻構造を持つ複合化無機繊維で形成されている)の熱放射率は約90%であり、円盤状物6から作製した試験片(Al−Si−O系無機繊維で形成されている)の熱放射率(15〜40%)に比べ、著しく高い熱放射率を示すことが分かった。このことは、実施例1、4、5に示した複合化無機繊維で形成された円盤状物1、4、5の高い消費電力削減率や優れた熱遮蔽効果は、円盤状物1、4、5が持つ高い熱放射率、言い換えると高輻射熱反射特性によるものであることを明示している。一方、Al−Si−O系無機繊維で形成された円盤状物6は、図9に示すように、複合化無機繊維で形成された円盤状物5に比べると性能は劣るものの、800〜1000℃の範囲で0.15〜0.4の熱放射率を示し、これにより、円盤状物6がそれなりの熱遮蔽効果を持つことが裏付けられた。
【0086】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、加熱炉の排気口の断面形状が四角形の場合、排気口に角筒を挿入し、通気性輻射熱反射体を角筒に挿入可能な断面四角形の柱状物(全ての角部が外側に突出した多角形の柱状物の一例)とする。
また、通気性輻射熱反射体を、断面三角形、断面正方形、断面長方形、断面正六角形の柱状物とすることができる。これにより、通気性輻射熱反射体を加熱炉の内壁や天井に沿って並べて配置することが可能となり、例えば、セラミック接着剤を使用して互いに接着することで、剥落や落下を抑制して長期間に亘り安定して存在させることが可能になり、高温排ガスの顕熱を加熱炉内で効率的に回収することができる。
【符号の説明】
【0087】
10:通気性輻射熱反射体、11:帯部材、12:天井部、13:排気口、14:円筒体、15:セラミックピン、16:織物、17:セラミックボルト、18:第1の渦巻き物、19:第2の渦巻き物、20:帯部材、21:第1の渦巻き物、22:第2の渦巻き物、23:通気性輻射熱反射体、24:中空管、25:通気性輻射熱反射体、26:帯部材、27:第1の渦巻き物、28:第2の渦巻き物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性の複合化無機繊維又は無機繊維で構成された通気性を有する布材から作製した帯部材を、長手方向に巻いて形成した断面円形又は断面多角形の柱状物からなる通気性輻射熱反射体であって、該通気性輻射熱反射体の一面側が加熱された際に、該一面側から他面側への熱の移動を抑制しながら、該一面側から輻射熱を放射することを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項2】
請求項1記載の通気性輻射熱反射体において、前記布材は、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下の織物であることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項3】
請求項1記載の通気性輻射熱反射体において、前記布材は、厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%の不織布であることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の通気性輻射熱反射体において、前記布材は前記複合化無機繊維で構成され、該複合化無機繊維は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造を有し、
Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、
Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、前記外殻構造は、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、前記内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下であることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項5】
請求項4記載の通気性輻射熱反射体において、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QESi、QESiO、REAl12、及びREAlOのいずれか1又は2以上からなることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項6】
請求項4又は5記載の通気性輻射熱反射体において、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されていることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項7】
請求項4又は5記載の通気性輻射熱反射体において、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、該結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成されていることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項8】
請求項4又は5記載の通気性輻射熱反射体において、前記内殻構造は、
Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されていることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項9】
請求項4又は5記載の通気性輻射熱反射体において、前記内殻構造は、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成されていることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項10】
請求項4又は5記載の通気性輻射熱反射体において、前記内殻構造は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されていることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の通気性輻射熱反射体において、前記布材は前記無機繊維で構成され、該無機繊維は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されていることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の通気性輻射熱反射体において、前記布材は前記無機繊維で構成され、該無機繊維は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されていることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の通気性輻射熱反射体において、前記布材は前記無機繊維で構成され、該無機繊維は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されていることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項14】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の通気性輻射熱反射体において、前記布材は前記無機繊維で構成され、該無機繊維は、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成されていることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項15】
耐熱性の無機繊維で構成された通気性を有する布材から作製した帯部材を、長手方向に巻いて断面円形又は断面多角形の柱状物とし、該柱状物を構成している前記無機繊維の外側に第2の外殻構造を設けて、該柱状物を第2の内殻構造と該第2の外殻構造を持つ複合化無機繊維から形成した通気性輻射熱反射体であって、該通気性輻射熱反射体の一面側が加熱された際に、該一面側から他面側への熱の移動を抑制しながら、該一面側から輻射熱を放射することを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項16】
請求項15記載の通気性輻射熱反射体において、前記布材は、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下の織物であることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項17】
請求項15記載の通気性輻射熱反射体において、前記布材は、厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%の不織布であることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか1項に記載の通気性輻射熱反射体において、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、
Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、前記第2の外殻構造は、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記第2の外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は前記第2の内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記第2の外殻構造の厚さは0.2μm以上10μm以下であることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項19】
請求項18記載の通気性輻射熱反射体において、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、一般式QESi、QESiO、REAl12、及びREAlOのいずれか1又は2以上からなることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれか1項に記載の通気性輻射熱反射体において、前記無機繊維は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質から構成されていることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項21】
請求項15〜19のいずれか1項に記載の通気性輻射熱反射体において、前記無機繊維は、Si、C、及びOを含有する無機物質から構成されていることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項22】
請求項15〜19のいずれか1項に記載の通気性輻射熱反射体において、前記無機繊維は、β−SiCの微結晶を含有する結晶質の無機物質から構成されていることを特徴とする通気性輻射熱反射体。
【請求項23】
請求項15〜22のいずれか1項に記載の通気性輻射熱反射体の製造方法であって、
前記布材を裁断して前記帯部材を作製する第1工程と、
前記帯部材の一部を芯管の外周面に一定の張力下で隙間無く巻き付けて第1の渦巻き物を形成し、該第1の渦巻き物から前記芯管を除去した際に形成される空間部に、前記帯部材の他の一部をその中心部から隙間なく巻いて形成した第2の渦巻き物を充填して前記柱状物を作製する第2工程と、
前記柱状物を、前記材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液中に浸漬し、前記板状物を陰極側にして50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して、電気泳動により、前記粉末を該柱状物を形成している前記帯部材を構成している前記無機繊維の外側に付着させる第3工程と、
前記柱状物を前記分散溶液中から取り出し、乾燥させて水及び/又は有機溶媒を除去する第4工程と、
乾燥した前記柱状物を、不活性ガス雰囲気中1300〜1700℃で、0.2〜2時間加熱処理して前記粉末を前記無機繊維に固着させ、該無機繊維を前記第2の内殻構造と前記第2の外殻構造を持つ前記複合化無機繊維に変える第5工程とを有することを特徴とする通気性輻射熱反射体の製造方法。
【請求項24】
請求項23記載の通気性輻射熱反射体の製造方法において、前記布材に化学繊維が含有される場合、あるいは前記布材にサイジング剤が施されている場合、前記第3工程の前に、前記柱状物を不活性ガス雰囲気中800〜1200℃で、0.5〜5時間加熱処理することを特徴とする通気性輻射熱反射体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−231959(P2011−231959A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101187(P2010−101187)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(594081397)株式会社超高温材料研究センター (15)
【Fターム(参考)】