説明

通水カップ

【課題】便器に対する密着性を高めることにより、詰まりの解消に必要な圧力を容易に発生させることができる通水カップを提供する。
【解決手段】使用者が把持するための柄棒2と、該柄棒2の先端に取り付けられたカップ部材4とからなる通水カップ1において、上記カップ部材4は、弾性変形可能な素材により形成されていて、柄棒2側に位置する部分球面状の第1部分4Aと、該第1部分4Aから前方に向かって延出し先端に開口3を有する筒状の第2部分4Bとから構成され、上記第1部分4Aと第2部分4Bとの間の位置に外周方向に張り出すフランジ状の張出縁5が設けられ、該張出縁5の前面5Aと後面5Bのうち少なくとも前面5Aは平坦に形成され、上記第2部分4Bが上記張出縁5より前方に突出して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、和式便器または洋式便器の排水管に生じた詰まりを解消するための通水カップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、和式便器や洋式便器の排水管に詰まりが生じた際、この詰まりを解消する道具として通水カップが公知である。この通水カップは、使用者が把持するための柄棒と、軟質弾性材料からなり先端に開口を有するカップ部材とから構成されている。
上記通水カップにおいて、排水管の詰まりを解消する場合には、先ず、上記カップ部材の口縁を便器の排水口の周囲に押し付けて密着させ、次いで、上記柄棒を押し引きすることによって上記カップ部材を弾性変形させる。すると、このカップ部材の弾性変形によって上記排水口内に正圧及び負圧が発生し、この圧力が上記排水口を通じて排水管内に作用するため、この圧力によって詰まりの原因となっている異物が上流或いは下流方向に移動され、上記詰まりが解消される。
【0003】
しかしながら、上記従来の通水カップは、カップ形をしたカップ部材の先端縁をそのまま便器に押し付けるものであったため、密着性が悪く、詰まった異物を移動させるに必要な圧力が得られず、その分、何度も柄棒を往復動させる手間がかかっており、必ずしも利便性の高いものとは言えなかった。
【0004】
一方、特許文献1には、カップ部材の外周に該カップ部材を取り囲む傾斜壁を設けたものが開示されている。この傾斜壁は、上記カップ部材の口縁外周に突設されていて、湾曲した形状をなしている。この特許文献1の通水カップは、上記傾斜壁を便器の周囲に押し付けて使用するものである。
【0005】
しかし、上記特許文献1に示す通水カップは、上記傾斜壁が湾曲しているため、弾性変形し難く、該傾斜壁全体が排水口周囲に密着し難いことが考えられる。
【特許文献1】実開昭63−29496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の課題は、便器に対する密着性を高めることにより、詰まりの解消に必要な圧力を容易に発生させることができる通水カップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明によれば、使用者が把持するための柄棒と、該柄棒の先端に取り付けられたカップ部材とからなる通水カップにおいて、上記カップ部材は、弾性変形可能な素材により形成されていて、柄棒側に位置する部分球面状の第1部分と、該第1部分から前方に向かって延出し先端に開口を有する筒状の第2部分とから構成され、上記第1部分と第2部分との間の位置に外周方向に張り出すフランジ状の張出縁が設けられ、該張出縁の前面と後面のうち少なくとも前面は平坦に形成され、上記第2部分が上記張出縁より前方に突出していることを特徴とする通水カップが提供される。
【0008】
本発明においては、上記第2部分は、次第に先細り形状をなすと共に、筒壁がカップ部材の内側に向って湾曲し、該筒壁の外面と上記張出縁の前面とが滑らかに連なっていることことが望ましい。
【0009】
本発明において好ましくは、上記張出縁は、上記カップ部材と同心の略円環状に形成され、全体的に均一な厚さを有していることである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の通水カップは、便器に対して高い密着性を有することにより、排水管内に作用させる流体圧が容易に高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1及び図2は、本発明に係る通水カップ1の一実施形態を示すものである。この通水カップ1は、使用者が把持するための柄棒2と、該柄棒2の先端に取り付けられて先端に開口3を有するカップ部材4とから構成されている。
【0012】
上記柄棒2は、合成樹脂やアルミニウムなどの硬質素材で中空に形成された細長い丸棒であって、その軸線L方向の長さは、押し引き操作を行い易い長さに形成されている。該柄棒2の先端には、図2に示すように、該柄棒2と上記カップ部材4とを連結するための連結部材6が装着されている。この連結部材6は、合成樹脂やアルミニウム等からなる有底の筒状部材であって、先端部の外周に雄螺子7を有し、開口する基端部が、上記柄棒2内に挿入されて接着等の適宜手段により固定され、底部を有する上記先端部は、上記カップ部材4の筒状をした取付部4C内の雌螺子8にねじ込まれ、それによって上記柄棒2が、この連結部材6を介して上記カップ部材4に連結されている。
【0013】
上記カップ部材4は、ゴム或いは軟質合成樹脂などの弾性変形可能な素材で全体が一体に形成されたもので、上記柄棒2側に位置する部分球面状をした第1部分4Aと、該第1部分4Aから前方に向かって延びる筒状の第2部分4Bと、これらの第1部分4Aと第2部分4Bとの間の位置に該カップ部材4の外周を取り巻くように形成されたフランジ状の張出縁5とで構成されている。
【0014】
上記第1部分4Aは、柄棒2側に向けて凸形に湾曲する天面9を有し、この天面9の頂部の位置即ち第1部分4Aの外面中央部に、軸線L方向に延びる略円筒状の上記取付部4Cが形成されている。図2に示すように、この取付部4Cは、上記柄棒2を強固に取り付けられるように、上記天面9よりも肉厚に形成するか、あるいは、内部に硬質の補強筒を挿入することにより、その強度が高められている。そして、この取付部4Cの内部の取付孔10の内周面に、上記雌螺子8が形成されている。
【0015】
上記第2部分4Bは、上記第1部分4Aと同心状に位置していて、先端の開口3に向かって次第に小径となるような先細り形状に形成されると共に、その筒壁11がカップ部材4の内側に向って湾曲した形に形成されている。従って、上記開口3の口径は、カップ部材4の内部空間の最大径、即ち、上記第1部分4Aと第2部分4Bとの境界部分の内径より小さい。該第2部分4Bの肉厚は一定であっても良いが、先端側の弾性変形を生じ易くするためには、先端側ほど次第に薄肉になるように形成されていることが望ましい。
【0016】
上記張出縁5は、カップ部材4の最も外径が大きい部分、即ち上記第1部分4Aと第2部分4Bとの境目の外周部分に、該カップ部材4から水平方向即ち上記軸線Lと直交する方向に張り出すように形成されている。該張出縁5は、円環形をしていて、上記第1部分4A及び第2部分4Bと同心状に位置し、その内周端から外終端に至るリング幅Hは全周にわたり一定である。
上記張出縁5の前面5A及び後面5Bは、それぞれ平坦かつ平滑な面に形成されている。一方、この張出縁5の厚さは、その内周端から外終端にかけて一定であっても良いが、外周側の弾性変形を生じ易くするためには、外周側ほど次第に薄肉になるように形成されていることが望ましい。このように外周側を薄肉とした場合には、前面5Aを上記軸線Lと直交する平面とし、後面5Bは、外周側ほど次第に前面5Aに近づく方向に傾斜する傾斜面とすることが望ましい。
そして、上記張出縁5の前面5Aは、上記第2部分4Bの筒壁9と、曲面を介して滑らかに連なっている。
【0017】
上記構成を有する通水カップ1を使用して便器の詰まりを解消するときは、図3に示すように、上記カップ部材4を便器21の排水口22に押し付け、張出縁5を該排水口22の周囲の壁部分23に密着させる。このとき、上記カップ部材4の第2部分4Bは先細りの筒状をしていて、しかも弾性変形可能であるため、様々な形態の便器における排水口の口径や形状等に程良く適合し、少なくともその先端部分が該排水口内に確実に嵌合することになる。また、上記張出縁5は、カップ部材4の外周方向にフランジ状に延出していて、前面5Aが平坦かつ平滑な面に形成されているため、該排水口22の周囲の壁部分23の形状に倣ってスムーズに弾性変形し、全周が該壁部分23に良好に密接することになる。
【0018】
その状態で上記柄棒2を押し引きすると、上記張出縁5が壁部分23に密接したまま該張出縁5及び上記第1部分4A及び第2部分4Bが弾性変形するため、上記排水口2内に正圧及び負圧が発生し、この圧力が排水管24内に作用することにより、詰まりの原因となっている異物25が吸引あるいは押圧されて押し動かされ、詰まりが解消する。
かくして上記通水カップ1は、外周にフランジ状の張出縁5を設けたことと、上記第2部分4Bを先細りの筒状に形成して該張出縁5よりも前方に突出させたこととにより、便器1に対する密着性を高めて排水管24内の詰まりを確実に解消することができるものである。
【0019】
なお、上記通水カップ1においては、和式便器及び洋式便器を問わず何れにも使用することが可能である。
【0020】
また、本実施形態では、上記張出縁5の前面5Aと後面5Bの両方が平坦且つ平滑な面に形成されているが、便器1に密着させる前面5Aのみが平坦且つ平滑に形成されていればよい。したがって、後面5Bについては、その表面が粗面であっても、若干湾曲していても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る通水カップの実施形態における正面図である。
【図2】図1の通水カップのA−A線での断面図である
【図3】図1の通水カップの使用状態の説明図である
【符号の説明】
【0022】
1 通水カップ
2 柄棒
3 開口
4 カップ部材
4A 第1部分
4B 第2部分
5 張出縁
5A 前面
5B 後面
11 筒壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が把持するための柄棒と、該柄棒の先端に取り付けられたカップ部材とからなる通水カップにおいて、
上記カップ部材は、弾性変形可能な素材により形成されていて、柄棒側に位置する部分球面状の第1部分と、該第1部分から前方に向かって延出し先端に開口を有する筒状の第2部分とから構成され、
上記第1部分と第2部分との間の位置に外周方向に張り出すフランジ状の張出縁が設けられ、該張出縁の前面と後面のうち少なくとも前面は平坦に形成され、
上記第2部分が上記張出縁より前方に突出していることを特徴とする通水カップ。
【請求項2】
上記第2部分は、次第に先細り形状をなすと共に、筒壁がカップ部材の内側に向って湾曲し、該筒壁の外面と上記張出縁の前面とが滑らかに連なっていることを特徴とする請求項1に記載の通水カップ。
【請求項3】
上記張出縁は、上記カップ部材と同心の略円環状に形成され、全体的に均一な厚さを有していることを特徴とする請求項1または2に記載の通水カップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−100879(P2009−100879A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274269(P2007−274269)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000101363)アズマ工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】