説明

通知範囲拡大機能を有する無線中継装置

【課題】 本発明は一度火災情報を中継した無線中継装置が一定時間内に別の無線中継装置からの火災情報を受信したならば、火災が拡大した旨を報知し、さらに通知元が設定したホップ数を変更して、通知範囲を拡大出来る無線中継装置を提供する。
【解決手段】 無線中継装置1−1が火災の発生を検知すると、火災情報に装置ID情報およびホップ数を付与して、近隣へ通知する。無線中継装置1−11が火災情報を受信すると、ホップ数を更新して近隣へ中継する。無線中継装置1−12が無線中継装置1−1と、無線中継装置1−11の両方から前記火災情報を一定時間内に受信した場合に、前記火災情報の装置ID情報が無線中継装置1−11のものであれば火災が拡大している旨を報知し、ホップ数を所定の値以上に変更して前記火災情報を中継する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線中継装置でマルチホップ式に情報を中継する機能を備えた無線中継装置に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
住宅に設置して災害の発生を報知する無線中継装置において、災害の発生を検知した場合に無線電波によって無線の有効範囲内に存在する近隣の無線中継装置に対して、ホップ数を設定して緊急情報を通知し、さらに緊急情報を通知された無線中継装置は、無線の有効範囲内に存在する近隣の無線中継装置へ設定されたホップ数に従い、緊急情報を中継する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、特許文献1の方法によると、緊急情報を通知または中継した無線中継装置の端末情報を利用して、自無線中継装置は緊急情報を受信済か否か判定している。そのため、通知元からの緊急情報を中継した無線中継端末が災害を検知して近隣に通知しても、既に緊急情報を受信済と判定されてしまい受信することができず、災害が広範囲に拡大する可能性のある、例えば火災等において災害の規模が拡大した事が通知出来ないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−134636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を解消するために、一度火災情報を中継した無線中継装置が一定時間内に別の無線中継装置からの火災情報を受信したならば、火災が拡大した旨を報知し、さらに通知元が設定したホップ数を変更して、通知範囲を拡大出来る無線中継装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は複数の無線中継装置間でマルチホップ式に情報を中継する無線中継ネットワークを構成する無線中継装置であって、近傍に存在する他無線中継装置と無線通信により所定のデータを通信する無線通信手段と、自無線中継装置の近傍で発生した火災を検知する火災検知手段と、前記検知した火災に係る火災情報を近隣の他無線中継装置へ通知する火災情報通知手段と、近隣の他無線中継装置から火災情報を受信した場合に前記他無線中継装置以外の近隣の他無線中継装置へ前記受信した火災情報を中継する火災情報中継手段と、前記火災情報を中継した中継日時および送信元の無線中継装置の装置ID情報を関連付けて記憶する中継履歴記憶手段と、前記複数の無線中継装置の各々の隣接関係に係る情報を記憶しておく隣接情報記憶手段と、を有し、前記火災情報通知手段は、前記火災検知手段が火災の発生を検知した場合に、複数の他無線中継装置を介してマルチホップ式に中継する前記火災情報の通知元として、前記マルチホップ式に中継する回数であるホップ数を予め定められた値に設定し、前記設定したホップ数と自無線中継装置の装置IDを前記火災情報に含めて隣接の他無線中継装置へ通知し、前記火災情報中継手段は、近隣の他無線中継装置から火災情報を受信した場合に、前記受信した火災情報に含まれているホップ数と装置IDを抽出し、前記隣接情報記憶手段を参照して前記抽出した装置IDの他無線中継装置に隣接する他無線中継装置の装置IDを特定し、前記特定した装置IDが前記中継履歴記憶手段に記憶されておりかつ前記記憶されている前記装置IDに関連付けられた中継日時と現在の日時の差が予め定めた一定時間内であったならば、当該火災が拡大しているものとして前記抽出したホップ数以上の所定の値に変更し、前記変更したホップ数に前記受信した火災情報を更新して近隣の他無線中継装置へ中継することを特徴とする通知範囲拡大機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、火災の規模が拡大した事を判定し、ホップ数を増やしてより広範囲に通知することが出来る。そのため、大規模な火災が発生した場合に迅速な避難をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による無線中継装置の実施形態に係わる全体構成図である。
【図2】本発明による無線中継装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明による無線中継装置の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明による無線中継装置の実施形態に係わる全体構成図である。本発明による無線中継装置を備えた住宅において、無線中継装置1−1が火災の発生を検知すると、火災情報を自無線中継装置から報知し、また火災情報に自無線中継装置の装置ID情報およびマルチホップ式に中継する回数を示すホップ数を付与して、無線中継装置1−1の近隣に存在する無線中継装置1―11、無線中継装置1―12、無線中継装置1―13、無線中継装置1−14、無線中継装置1−15へ通知する。
【0011】
無線中継装置1−11が無線中継装置1−1から火災情報を受信すると、前記火災情報に付与されたホップ数を更新して無線中継装置1―11の近隣に存在する無線中継装置1−12、無線中継装置1−21、無線中継装置1−28へ中継する。
【0012】
無線中継装置1−12が無線中継装置1−1と、無線中継装置1−11の両方から前記火災情報を一定時間内に受信した場合、前記火災情報に付与された装置ID情報から、無線中継装置1−1からの火災情報が中継されたか、無線中継装置1―11が新たに火災を検知して通知した別の火災情報かを判定する。前記火災情報の装置ID情報が無線中継装置1−1のものならば、同じ火災情報を一度中継しているため中継を行わない。前記火災情報の装置ID情報が無線中継装置1−11のものであれば、火災が拡大している旨を自無線中継装置から報知し、また前記ホップ数を所定の値以上に変更して前記火災情報を中継する。
【0013】
図2は、本発明による無線中継装置の実施形態に係わるブロック構成図である。
本発明による無線中継装置1は、他無線中継装置と無線通信を行なう無線通信部2と、自無線中継装置の近傍で発生した火災を検知する火災検知部3と、火災時と火災以外の処理を切り分けて自無線中継装置に係る制御を行う制御部4と、自動検針に係る自動検針データを一時保存するデータ蓄積部5と、火災情報を中継日時および通知元の装置ID情報を関連付けて記憶する中継履歴記憶部7と、火災情報を報知する火災情報報知部8と、複数の無線中継装置の各々の隣接関係に係る情報を記憶しておく隣接情報記憶部9と、自動検針データの処理を行う自動検針処理部10から構成されている。
【0014】
尚、本装置は火災の発生および火災情報の受信がない場合は、制御部4は無線通信部2が送受信および中継した自動検針データを受け取り、自動検針処理部10に渡して処理を行う。また、火災検知部3が火災を検知または無線通信部2が火災情報を受信した場合に、制御部4は自動検針処理部10が保持している自動検針データをデータ蓄積部5に一時保存し、前記火災情報の送受信および中継を行う。さらに、前記火災情報の送受信および中継が終了した場合に、再び制御部4はデータ蓄積部5から保存した自動検針データを呼出して自動検針処理部10に渡し、処理を行った自動検針データを受け取り無線通信部2に渡して送受信および中継を行うものとする。
【0015】
次に、火災検知部3が火災を検知、または無線通信部2が火災情報を受信すると、制御部4は火災情報を受け取り火災情報通知部6へ渡す。火災情報通知部6は前記火災情報を火災情報報知部8に渡し、火災情報報知部8は自無線中継装置から火災情報を報知する。尚、火災情報の報知方法については特定の音、光、LED等に表示する文字等、どのようなものでも良い。
【0016】
次に、火災情報通知部6は火災情報から中継日時と通知元の装置ID情報とホップ数を抽出し、中継履歴記憶部7に記憶された中継履歴および、隣接情報記憶部9に記憶された隣接情報を呼び出し、前記火災情報を通知または中継する条件に合致するか否かの判定を行う。条件に合致した場合は中継履歴記憶部7へ前記抽出した情報を記憶し、さらに隣接情報記憶部9から火災情報の送信先を抽出して前記火災情報に付与する、またはホップ数を所定の値以上に変更して制御部4に戻す。条件に合致しない場合は、送信又は中継を行わない旨の結果を制御部4に戻す。
【0017】
制御部4は、火災情報通知部6から火災情報を受け取った場合に、前記火災情報を無線通信部2に渡して他無線中継装置に通知又は中継を行う。
【0018】
図3は、本発明による無線中継装置の実施形態に係わる動作フローチャートである。本フローチャートは電源の投入によりスタートする。
【0019】
初めに、無線通信部2が火災情報を受信したか否か(S10)、また火災検知部3が火災を検知したか否かを判定し(S20)、何れかを検知するまで判定を繰り返す(S10,No S20,NO)。
【0020】
火災検知部3が火災を検知した場合(S20,Yes)、火災情報通知部6は他無線中継装置に送信する火災情報に所定の値のホップ数を設定し(S30)、自無線中継装置の装置ID情報を設定する(S40)。次に火災情報報知部8は前記火災情報を報知して(S50)、無線通信部2から他無線中継装置に通知する(S60)。
【0021】
無線通信部2が火災情報を受信した場合は(S10,Yes)、中継履歴記憶部7を参照し、中継履歴が存在しなければ(S200,No)、受信した前記火災情報に含まれるホップ数をデクリメントし(S210)、中継履歴記憶部7に通知元の装置ID情報と中継日時を履歴として記憶し(S220)、ホップ数が0でなければ(S230,No)、送信する前記火災情報にデクリメントしたホップ数を設定し(S240)、火災情報報知部8は火災情報を報知して(S250)、無線通信部2から他無線中継装置に中継する(S260)。
【0022】
また、前記ホップ数が0であった場合(S230,Yes)、火災情報報知部8は火災情報を報知し(S270)、火災情報を中継せずにS10に戻る。
【0023】
中継履歴記憶部7に中継履歴が存在する場合(S200,Yes)、前記受信した火災情報に含まれる装置ID情報と、以前に履歴として記憶した装置ID情報を照合し、同一の情報であると判定された場合は(S300,YES)、火災情報の中継を行わず、S10に戻る。
【0024】
また、装置ID情報が異なる場合(S300,No)、更に現在の火災情報を受信した日時と以前に中継した日時を比較し、一定時間が経過していると判定されたならば(S310,No)、通常の中継を行い、S10に戻る。ここで、前記比較した火災情報の日時が一定時間内であった場合(S310,Yes)、火災情報通知部6は抽出されたホップ数以上の所定の値である通知先拡大用のホップ数を前記火災情報に設定し(S320)、火災情報報知部8は災害が拡大している旨を自無線中継装置に報知し(S330)、中継履歴記憶部7に前記火災情報に含まれる送信元の装置ID情報と中継日時を記憶し(S340)、無線通信部2から前記火災情報を他無線中継装置に中継して(S350)、S10に戻る。
【符号の説明】
【0025】
1・・・無線中継装置
2・・・無線通信部
3・・・火災検知部
4・・・制御部
5・・・データ蓄積部
6・・・火災情報通知部
7・・・中継履歴記憶部
8・・・火災情報報知部
9・・・隣接情報記憶部
10・・・自動検針処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線中継装置間でマルチホップ式に情報を中継する無線中継ネットワークを構成する無線中継装置であって、
近傍に存在する他無線中継装置と無線通信により所定のデータを通信する無線通信手段と、自無線中継装置の近傍で発生した火災を検知する火災検知手段と、前記検知した火災に係る火災情報を近隣の他無線中継装置へ通知する火災情報通知手段と、近隣の他無線中継装置から火災情報を受信した場合に前記他無線中継装置以外の近隣の他無線中継装置へ前記受信した火災情報を中継する火災情報中継手段と、前記火災情報を中継した中継日時および送信元の無線中継装置の装置ID情報を関連付けて記憶する中継履歴記憶手段と、前記複数の無線中継装置の各々の隣接関係に係る情報を記憶しておく隣接情報記憶手段と、を有し、
前記火災情報通知手段は、前記火災検知手段が火災の発生を検知した場合に、複数の他無線中継装置を介してマルチホップ式に中継する前記火災情報の通知元として、前記マルチホップ式に中継する回数であるホップ数を予め定められた値に設定し、前記設定したホップ数と自無線中継装置の装置IDを前記火災情報に含めて隣接の他無線中継装置へ通知し、
前記火災情報中継手段は、近隣の他無線中継装置から火災情報を受信した場合に、前記受信した火災情報に含まれているホップ数と装置IDを抽出し、前記隣接情報記憶手段を参照して前記抽出した装置IDの他無線中継装置に隣接する他無線中継装置の装置IDを特定し、前記特定した装置IDが前記中継履歴記憶手段に記憶されておりかつ前記記憶されている前記装置IDに関連付けられた中継日時と現在の日時の差が予め定めた一定時間内であったならば、当該火災が拡大しているものとして前記抽出したホップ数以上の所定の値に変更し、前記変更したホップ数に前記受信した火災情報を更新して近隣の他無線中継装置へ中継することを特徴とする通知範囲拡大機能を有する無線中継装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−84037(P2013−84037A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221744(P2011−221744)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000134707)株式会社ナカヨ通信機 (522)
【Fターム(参考)】