説明

通線用リード線

【課題】十分な強度や耐久性を維持しつつ、且つ従来のものよりも通線性に優れた電気配線及び通信ケーブル通線用リード線の提供。
【解決手段】電気配線や通信ケーブル類などを配管内に配線するに際して使用するリード線であって、ポリエチレンナフタレート5〜50重量%とポリエチレンナフタレート以外のポリエステル系樹脂95〜50重量%とからなる合成樹脂モノフィラメントを少なくとも一部に使用してなることを特徴とする通線用リード線。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気配線や通信ケーブル類などの配管内に配線するに際して使用する通線用リード線の改良に関するものであり、さらに詳しくは、通線性に優れ、かつ十分な強度及び耐久性を有するに通線用リード線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、オフィス、商店、住宅及び工場などにおける電気配線や通信ケーブル類などの配線工事においては、建物の内装工事が完了した段階で、予め敷設した配管内へ電気配線や通信ケーブル類を通線する方法が採用されており、具体的には、まずリード線を予め敷設した配管内に通線し、このリード線の端末に電気配線や通信ケーブル類を連結した後、リード線を配管外へ引き抜くことにより、電気配線や通信ケーブル類を配管内に配線している。
【0003】
従来の通線作業においては、スチール製のリード線が主に使用されてきたが、スチール製のリード線は通電性を持つために配線作業中に感電するなどの危険性があった。
【0004】
そこで、近年では、スチール製のリード線に代わり、絶縁性のプラスチックを素材に使用したリード線が注目されており、例えば合成樹脂製モノフィラメントと金属線とからなる複合線状体を基本構造とする電気配線用リード線(例えば、特許文献1参照)や、断面形状が多角形の合成樹脂線材を延伸処理し、捻り回転を付与して外面に螺旋状稜線を形成したリード線(例えば、特許文献2参照)がその一例である。
【0005】
これらのリード線は、いずれも配線作業中に感電する心配もなく、従来のスチール製リード線と同等の強度を持つなどの特長を有しているが、配管内へスムーズに通線しにくく使いづらいなどの問題を残しており、さらなる改善が必要とされていた。
【0006】
また近年、電気配線や通信ケーブル類の軽量化に伴い配管径も小経化の傾向にある。その結果、プラスチック素材を使用したリード線も細くなるため、曲げ硬さが不足することになり、通線性がさらに低下するといった深刻な問題が生じるようになった。
【0007】
したがって、十分な強度および耐久性を維持しつつ、且つ従来のものよりも通線性に優れたプラスチック製リード線の実現が頻りに求められていた。
【特許文献1】特開2001−352630号公報
【特許文献2】特開2000−217217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術における問題点を課題として検討した結果、達成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明の目的は、十分な強度や耐久性を維持しつつ、且つ従来のものよりも通線性に優れた通線用リード線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明によれば、電気配線や通信ケーブル類などの配管内に配線するに際して使用する通線用リード線であって、ポリエチレンナフタレート(以下、PENと言う)5〜50重量%とPEN以外のポリエステル系樹脂95〜50重量%とからなる合成樹脂モノフィラメントを少なくとも一部に使用してなることを特徴とする通線用リード線が提供される。
【0011】
なお、本発明の通線用リード線においては、
PEN以外のポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレート(以下、PETと言う)であること、
合成樹脂モノフィラメントが複数本撚り合わされていること、
リード線の直径または外接円直径が2.0〜3.5mmの範囲にあること、
合成樹脂モノフィラメントのJIS L1013に準じて測定した引張強度が3.0〜5.0cN/dtexの範囲にあること、および
湿度65%、室温28℃の条件下で、12mm間隔に設置された直径2mmの2本のピンの下側に、長さ50mmの合成樹脂モノフィラメントを接触させ、2本のピンの間で合成樹脂モノフィラメントにJ型のフックを掛け、このフックを速度10mm/sで引き上げていく際に生じる合成樹脂モノフィラメントの最大曲げ硬さが15〜80N/mmの範囲にあること
がいずれも好ましい条件として挙げられ、これらの条件を満たすことによりさらに優れた効果を取得することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下に説明するとおり、十分な強度や耐久性を維持しつつ、且つ従来のものよりも通線性に優れた通線用リード線が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明品の通線用リード線(以下、単にリード線と言う)について具体的に説明する。
【0014】
本発明のリード線は、PEN5〜50重量%とPEN以外のポリエステル系樹脂95〜50重量%とからなる合成樹脂モノフィラメントを少なくとも一部に使用してなることを特徴とするものである。
【0015】
まず、本発明のリード線に使用する合成樹脂モノフィラメントにはPENが5〜50重量%含有されていることが必要であり、さらには15〜30重量%含有されていることがより好ましい。
【0016】
合成樹脂モノフィラメント中のPENの含有量が上記範囲を下回る場合は、合成樹脂モノフィラメントの曲げ硬さが小さくなる傾向となり、この合成樹脂モノフィラメントをリード線に使用した場合は、配管内への通線性が低下しやすくなるため好ましくない。逆に、PENの含有量が上記範囲を上回る場合は、合成樹脂モノフィラメントの弾性応力が低下傾向となり、この合成樹脂モノフィラメントをリード線に使用した場合は、同じく配管内への通線性が低下しやすくなるため好ましくない。
【0017】
なお、PEN以外のポリエステル系樹脂について、特に限定されないが、例えばPET、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリメチレンナフタレートまたはこれら2種類以上を共重合したものまたはブレンドしたものを挙げることができる。
【0018】
また、本発明で使用するポリエステル系樹脂には、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、他のジカルボン酸成分およびジオール成分を含有することができ、例えば、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、シクロヘキサンジカルボン酸およびデカリンジカルボン酸などが挙げられ、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族グリコール、o−キシリレングリコール、p−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ジフェニルスルホンなどの芳香族グリコール、およびヒドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、レゾルシン、カテコール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルスルホンなどを挙げることができる。
【0019】
特に、本発明のリード線に使用する合成樹脂モノフィラメントは、高強度、且つ高い曲げ硬さを有するリード線が得られやすいとの理由から、PEN5〜50重量%とPET95〜50重量%とからなることが望ましい。
【0020】
また、合成樹脂モノフィラメントには、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、燐酸バリウム、燐酸リチウム、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニア、フッ化リチウム、カオリン、タルク等の無機粒子、耐熱剤、耐候剤、耐光剤、耐加水分解剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、平滑剤、ワックス類、シリコーンオイル、界面活性剤、染料、顔料などの公知の添加剤成分を必要に応じて任意に添加することもできる。
【0021】
さらにまた、本発明のリード線に使用する合成樹脂モノフィラメントの直径は、リード線の使用目的に応じて適宜選定するのができ、特に限定されないが、1.0〜2.5mmの範囲が好ましく、さらに1.3〜2.0mmの範囲がより好ましい。
【0022】
本発明のリード線は、上述の合成樹脂モノフィラメントを少なくとも一部に使用したものであるが、図1に示すように、上述の合成樹脂モノフィラメント2を複数本撚り合わせた撚り線からなるリード線1である場合には特に好ましい効果が得られる。
【0023】
また、撚り線からなるリード線1の場合の合成樹脂モノフィラメントの撚り回数についても、リード線の使用目的に応じて適宜選定することができ、特に限定されないが、配管内の壁面との接触が面接触から点接触となり、摩擦抵抗が低減して通線性が向上する傾向にあるとの理由から、26〜58ターン/mであることがより好ましく、さらには34〜48ターン/mであることがより好ましい。
【0024】
本発明のリード線に使用する合成樹脂モノフィラメントの断面形状には、特に限定はされないが、円形の他に、楕円、三角形、四角形、五角形などの多角形、星形、多葉形などの異形断面形状を挙げることができ、さらに合成樹脂モノフィラメントに捻りを掛けて使用することもできる。
【0025】
リード線の直径は、一般に配管径の10〜40%程度のものが好ましく使用されるが、上述の通り、近年、配管径が小経化の傾向にあるため、リード線も細くする必要がある。
【0026】
しかし、細すぎるとリード線の曲げ硬さが小さくなるばかりか、リード線を配管内に押し込む際の力も伝わりにくくなるため、通線がしにくくなる場合があり、逆に、太すぎるとリード線が硬くなるため、配管のコーナー部分において、通線がしにくくなる場合がある。
【0027】
したがって、本発明のリード線の直径または外接円直径は、2.0〜3.5mmの範囲にあることが好ましく、さらには2.1〜3.2mmの範囲にあることが好ましい。
【0028】
リード線を予め敷設した配管内に通線し、このリード線の端末に電気配線や通信ケーブル類を連結した後、リード線を配管外へ引き抜く際に、リード線には大きな張力が掛かるため、リード線はこの張力に耐えうる強度を有することが好ましい。
【0029】
そのため、本発明のリード線に使用する合成樹脂モノフィラメントのJIS L1013に準じて測定した引張強度は3.0〜5.0cN/dtexの範囲にあることが好ましく、さらには4.0〜4.5cN/dtexの範囲にあることがより好ましい。
【0030】
また、配管は必ずしも直線であるとは限らず、途中コーナーを有する配管もあるため、リード線には、コーナーでもスムーズに通線できる適度な曲げ硬さを有することが好ましい。
【0031】
そこで、本発明のリード線に使用する合成樹脂モノフィラメントの最大曲げ硬さは、15〜80N/mmの範囲にあることが好ましく、さらには20〜50N/mm以上であることが好ましい。
【0032】
なお、合成樹脂モノフィラメントの最大曲げ硬さ(N/mm)は、図3に示すとおり、湿度65%、室温28℃の条件下で、12mm間隔に設置された直径2mmの2本のピン3(鋼線)の下側に、長さ50mmの合成樹脂モノフィラメント2を接触させ、2本のピン3の間で合成樹脂モノフィラメント2にJ型のフック4を掛け、このフック4を速度10mm/sで引き上げてゆき、合成樹脂モノフィラメント2が折れ曲がる際に生じる応力(N)をテンシロンで測定し、測定した応力の最大値を合成樹脂モノフィラメントの断面積(mm)で割った値である。
【0033】
次に、本発明のリード線の製造方法について説明する。
【0034】
本発明のリード線の製造方法は、何ら特殊な製造装置を使用する必要はなく、公知の方法で製造することができる。
【0035】
例えば、PEN5〜50重量%及びPET50〜95重量%の混合物を公知の溶融紡糸機に供給し、溶融紡糸機から押し出した未延伸糸を冷却水槽の表面を動揺させながら60〜90℃で冷却固化した後、合成樹脂組成物のガラス転移以上の熱媒温度で4.0〜8.5倍に1段または2段に延伸し、次いで0.85〜1.0倍に弛緩ないし定長熱処理することにより、まず合成樹脂モノフィラメントを得る。
【0036】
ここで、冷却水槽の表面を動揺させない場合は、未延伸糸の表面が凹凸となるため、延伸切れなどが発生する場合がある。
【0037】
なお、表面を動揺させる方法には、気体を吹き付ける方法、液体を放流する方法、ポンプなどで波形を生じさせる方法などが挙げられ、特に限定はされない。
【0038】
また、延伸工程において、延伸倍率が上記範囲を下回る場合は、延伸点が安定せずに物性的に不均一な合成樹脂モノフィラメントが得られやすいばかりか、コブ糸や延伸ムラが発生する場合があり、逆に、延伸倍率が上記範囲を上回る場合は、延伸切れなどが発生する場合がある。
【0039】
こうして得られた合成樹脂モノフィラメントは、次にリード線に加工されるが、本発明においては、得られた合成樹脂モノフィラメント単糸をそのままリード線に使用することも可能である。
【0040】
また、合成樹脂モノフィラメントを複数本撚り合わせてリード線に加工する場合には、例えば、複数本の合成樹脂モノフィラメントを合成樹脂のガラス転移点以上の温度でS撚り、またはZ撚りすることにより得ることができる。
【0041】
こうして得られたリード線は、電気配線や通信ケーブル類などの配管内に通線するに際して、十分な強度や耐久性を維持しつつ、且つ従来のものよりも通線性に優れたものであるため、その実用性が極めて高いものである。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明のリード線についてさらに詳しく説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
なお、上記及び下記の合成樹脂モノフィラメントの各種特性値及びリード線の通線性の評価は以下の方法に従って測定したものである。
【0044】
[直径または外接円直径]
デジタルマイクロメーター(MITUTOYO製)を使用して、合成樹脂モノフィラメントの直径を繊維軸方向に沿って5箇所測定し、その平均値を直径または外接円直径(mm)とした。
【0045】
[引張強度]
JIS L1013 8.5に準じて、試長250mmの合成樹脂モノフィラメント試料を引張速度300mm/分の条件で測定し、破断強力(N)を読み取った。そして、N=10本の合成樹脂モノフィラメントの破断強力を測定した後、10本の平均値(N)を繊度(dtex)で割り返し、算出した値を引張強度(cN/dtex)とした。
【0046】
[曲げ硬さ]
上述した図3の方法に従って測定した。
【0047】
[通線テスト]
内径14mmの配管(市販品)を図2に示すように形設し、AからBへとリード線を通線作業した場合のリード線の通線性について次の3段階で評価した。また、AからBまでのリード線の通線所要時間についても測定した。
○:AからBまで、途中引っ掛かることなくスムーズに通線することができた、
△:AからBまでの半分以上の所までスムーズに通線することができたが、それ以降は途中で引っ掛かる所があった、
×:AからBまでの半分も行かないところで引っ掛かった。
【0048】
なお、各コーナーにおける配管は、電気配管用エルボ(市販品)を使用し、各直線部分a〜fの長さは次の通りとした。
a:1.0m
b:1.0m
c:3.7m
d:11.0m
e:3.7m
f:5.0m
【0049】
[リード線を構成するモノフィラメントの使用原料]
合成樹脂モノフィラメントを溶融紡糸するに際し、次の合成樹脂を使用した。
原料A:PEN(帝人化成社製 TN8065S)
原料B:PET(東レ社製 T701T)
【0050】
[実施例1]
20重量%の原料Aと80重量%の原料Bの合成樹脂混合物をエクストルーダー型紡糸機に供給し、300℃で溶融混練した合成樹脂組成物を、ギアポンプを経て紡糸口金孔から紡出し、冷却固化した。
【0051】
そして冷却固化した未延伸糸を、温水浴および乾熱浴中で7.0倍に延伸し、さらに定長熱処理を施して、直径1.4mmの合成樹脂モノフィラメントを製造した。
【0052】
次に、得られた合成樹脂モノフィラメントを3本引き揃え、Z撚りに34ターン/mに撚り合わせた後、乾熱浴中で熱固定し、外接円直径が2.9mmのリード線を製造した。得られた合成樹脂モノフィラメントおよびリード線の各評価結果を表1に示す。
【0053】
[実施例2]
原料Aを5重量%、原料Bを95重量%に変更したこと以外は、実施例1と同じ製造法で合成樹脂モノフィラメントおよびリード線を製造した。得られた合成樹脂モノフィラメントおよびリード線の各評価結果を表1に示す。
【0054】
[実施例3]
原料Aを50重量%、原料Bを50重量%に変更したこと以外は、実施例1と同じ製造法で合成樹脂モノフィラメントおよびリード線を製造した。得られた合成樹脂モノフィラメントおよびリード線の各評価結果を表1に示す。
【0055】
[実施例4]
合成樹脂モノフィラメントの直径を1.0mm、リード線の外接円直径を2.1mmに変更したこと以外は、実施例1と同じ製造法で合成樹脂モノフィラメントおよびリード線を製造した。得られた合成樹脂モノフィラメントおよびリード線の各評価結果を表1に示す。
【0056】
[実施例5]
合成樹脂モノフィラメントの直径を1.7mm、リード線の外接円直径を3.5mmに変更したこと以外は、実施例1と同じ製造法で合成樹脂モノフィラメントおよびリード線を製造した。得られた合成樹脂モノフィラメントおよびリード線の各評価結果を表1に示す。
【0057】
[実施例6]
合成樹脂モノフィラメントを2本使用したこと以外は、実施例5と同じ製造方法でリード線を製造した。得られた合成樹脂モノフィラメントおよびリード線の各評価結果を表1に示す。
【0058】
[比較例1]
原料Bをエクストルーダー型紡糸機に供給し、300℃で溶融混練した合成樹脂組成物を、ギアポンプを経て紡糸口金孔から紡出し、冷却固化した。
【0059】
そして冷却固化した未延伸糸を温水浴および乾熱浴中で5.5倍に延伸し、さらに定長熱処理を施して、直径1.4mmの合成樹脂モノフィラメントを製造した。
【0060】
次に、得られた合成樹脂モノフィラメントを3本引き揃え、Z撚りに34ターン/mに撚り合わせた後、乾熱浴中で熱固定し、外接円直径が2.9mmのリード線を製造した。得られた合成樹脂モノフィラメントおよびリード線の各評価結果を表1に示す。
【0061】
[比較例2]
原料Aを2重量%、原料Bを98重量%に変更したこと以外は、比較例1と同じ製造方法で合成樹脂モノフィラメントおよびリード線を製造した。得られた合成樹脂モノフィラメントおよびリード線の各評価結果を表1に示す。
【0062】
[比較例3]
原料Aを60重量%、原料Bを40重量%に変更したこと以外は、実施例1と同じ製造方法で合成樹脂モノフィラメントおよびリード線を製造した。得られた合成樹脂モノフィラメントおよびリード線の各評価結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1から分かるように、本発明のリード線は、十分な強度や耐久性を持ち、通線性に優れたものであることがわかる。
【0065】
これに対して、本発明の条件に満たないリード線は、本発明の効果を十分に発揮することができず、例えば、PETのみからなる合成樹脂モノフィラメントを使用したリード線(比較例1)およびPENの添加量が必要量に満たない合成樹脂モノフィラメントを使用したリード線(比較例2)は、合成樹脂モノフィラメントの引張強度が低いためにリード線の強度も低く、且つ通線性が実施例に比べて低いことが分かる。
【0066】
また、PENの添加量が必要量以上の合成樹脂モノフィラメントを使用したリード線(比較例3)は、合成樹脂モノフィラメントの曲げ硬さが高いためにリード線も硬く、そのため、配管のコーナー部分で引っ掛かり、通線性に掛けたものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のリード線は、十分な強度や耐久性を維持し、且つ通線抵抗が極めて小さく、配管内をスムーズに通線することができるため、特に近年小経化しつつある電気配線及び通信ケーブル用の配管内に電気配線及び通信ケーブルを効率よく配線することができる。
【0068】
また、本発明のリード線には、必要に応じてその端末に電気接続用端子を接着、融着またはかしめて使用することができ、さらにはリード線以外の用途として、プルコードにも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のリード線の一例を示した斜視図である
【図2】実施例において通線性評価に使用した配管の平面図である。
【図3】最大曲げ硬さの測定方法を示した概略図である。
【符号の説明】
【0070】
1 リード線
2 合成樹脂モノフィラメント
3 ピン
4 フック
A 通線性評価用配管の入口
B 通線性評価用配管の出口
a〜f 通線性評価用配管の各部の長さ(m)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気配線や通信ケーブル類などの配管内に配線するに際して使用する通線用リード線であって、ポリエチレンナフタレート5〜50重量%とポリエチレンナフタレート以外のポリエステル系樹脂95〜50重量%とからなる合成樹脂モノフィラメントを少なくとも一部に使用してなることを特徴とする通線用リード線。
【請求項2】
前記ポリエチレンナフタレート以外のポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1に記載の通線用リード線。
【請求項3】
前記合成樹脂モノフィラメントが複数本撚り合わされていることを特徴とする請求項1または2に記載の通線用リード線。
【請求項4】
リード線の直径または外接円直径が2.0〜3.5mmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の通線用リード線。
【請求項5】
前記合成樹脂モノフィラメントのJIS L1013に準じて測定した引張強度が3.0〜5.0cN/dtexの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の通線用リード線。
【請求項6】
湿度65%、室温28℃の条件下で、12mm間隔に設置された直径2mmの2本のピンの下側に、長さ50mmの前記合成樹脂モノフィラメントを接触させ、2本のピンの間で合成樹脂モノフィラメントにJ型のフックを掛け、このフックを速度10mm/sで引き上げていく際に生じる合成樹脂モノフィラメントの最大曲げ硬さが15〜80N/mmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の通線用リード線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−138314(P2007−138314A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331003(P2005−331003)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】