説明

通線装置

【目的】 より障害の少ない経路を選んで通線することによって、これまで通線不可能だった管路へ通線したり、観察したいと考える位置へ導くことを可能とした通線装置の提供を目的としている。
【構成】 管路内に通線するべきケーブル11等の先端に設けられ、外周面から突出する複数の突出部材14を有する可動部13と、該可動部を回転させ或いは振動させる可動手段12とを備えた通線装置10。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、既設管路内にケーブル等を敷設する際に用いられる管路内通線機や管路内の状況の情報を得るための管路内観察装置等の操作性、通線効率の向上を図るための技術に関し、装置先端部に回転運動を行なう機構を取り付けることにより、従来ほとんど操作不可能であり、作業時に、管路内の状況により受動的にその経路が決まってしまう管路内通線機や管路内観察装置にステアリング能力を与え、恣意的にその経路を決定し、より障害の少ない経路を選んで進行させ、これまで通線不可能だった管路へ通線したり、観察したいと考える位置へ導くことを可能としたものである。
【0002】
【従来の技術】図9は従来の通線装置の一例を示すものであり、この通線装置は高剛性のロッド1と、この先端に取り付けられ、外周面から突出する複数の突出部材2を有する先端部3とから概略構成されている。この装置を用いた通線操作を説明すると、巻取りドラム4に巻取られたロッド1の先端を通線するべき管路5の一方から挿入し、ロッド1を押し込んで行くことによってロッド1を管路5の所定の部位まで通線する。このようなロッド1は高剛性であるので、このロッド1を管路5内に押し込むとき、ロッド1に加えた押し込み力を先端部3にまで伝えられるようになっている。この先端部3には複数の突出部材2が設けられているので、先端部3を比較的滑らかに管路5内に押し込むことができるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の通線装置には、進路の変更を行なえるような機構は設けられておらず、既にケーブル等が敷設された既設管路内に新たなケーブルを敷設しようとする際に、スムーズに通線することができない場合があった。すなわち普通、管路内に敷設されたケーブル等の状態は一定でなく、跳ね上がったり、よじれたり、絡み合ったりしており、また管路についても、ずれていたり、内部に土砂等の障害物があったり、曲がっている場合が多く、このような状態の管路内に強い力で押したり或いは引いたりしながらロッドを押し込んでいくわけであり、従来の通線装置は進路が変更できないために、実は管路内に通線可能な隙間があるのにもかかわらず、先端部が既設ケーブル等の谷部に嵌まり込んだり障害物に当接して通線できない場合があり、また非常に時間がかかったり、通線に大きな力を要するなどの欠点があった。
【0004】一方、ロッド1の先端にカメラ等を備え、上記通線装置と同様にして管路等に通線され、管路内を観察するために使用される観察装置においては、視野方向を変更するために、先端部を屈曲自在でかつ屈曲方向と角度とを調節可能とした首振り機構付きのものや、ミラーを使った視野方向変更装置付きのものが提供されている。しかし、上記首振り機構付きのものは、先端が柔軟であるために強く押し込むことができず、またミラーを使った場合は先端部が大きくなり押し込みには不利であり、ケーブルの陰になるような場所の観察はできなかった。
【0005】本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来ほとんど操作不可能であり、作業時に、管路内の状況により受動的にその経路が決まってしまう管路内通線機や管路内観察装置にステアリング能力を与え、恣意的にその経路を決定し、より障害の少ない経路を選んで通線することによって、これまで通線不可能だった管路へ通線したり、観察したいと考える位置へ導くことを可能とした通線装置の提供を目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の通線装置は、管路内に通線するべきケーブル等の先端に設けられ、外周面から突出する複数の突出部材を有する可動部と、該可動部を回転させ或いは振動させる可動手段とを備えたものである。また請求項2の通線装置は、請求項1の通線装置において、先端部に前方を撮影するカメラ部を設けたものである。
【0007】
【作用】本発明の通線装置は、管路内に通線するべきケーブル等の先端に設けられ、外周面から突出する複数の突出部材を有する可動部と、該可動部を回転させ或いは振動させる可動手段とを備えた構成とし、可動部を回転させ或いは振動させることによって、管路内通線装置や管路内観察装置の挿入進路が変更できるため、障害点を回避しながら通線を行うことができる。
【0008】
【実施例】図1は本発明の通線装置の第1実施例を示すものであり、この通線装置10は高剛性のロッドやケーブル等11(以下、ケーブルと記す)の先端に取り付けられた駆動部12と、該駆動部12に回転可能に取付けられた先端部13とから概略構成されている。この実施例の通線装置10は、図3に示すように先端部13内に、前方を写し出すためのカメラ部15を内蔵し、このカメラ部15で撮影した画像をカメラ用ケーブル15aを通してケーブル挿入側に設けられたコントローラ(図示略)に送り、このコントローラにおいて通線装置10の前方の画像を観察するために用いられる観察装置に本発明を適用した場合を例示している。
【0009】先端部13は円筒状をなし、その外周面には複数の円弧状の突出板14が放射状に設けられている。なお、この突出板14の枚数は特に限定されず1枚以上何枚でも良い。この先端部13は図3に示すように、駆動部12のフレーム16により固定された状態にあるカメラ部15の外周面に接するように設けられた2つのベアリング17,18によって回転自在に支持されている。また、先端部13の後端部内面には駆動部12の駆動ギア18に係合するギア19が形成されている。
【0010】上記駆動部12は、モータ20とギアヘッド21とを備え、モータ20からケーブル11を経てケーブル挿入側に延出されたコード22を通して電流を印加し、モータ20を駆動させることによって、先端部13を回転駆動させるようになっている。このモータ20に印加する電流(パルスを含む)又は電圧を適宜に制御することによって、先端部13の回転と停止や回転速度、回転方向を調節するようになっている。また、カメラ部15は、ケーブル11を経てケーブル挿入側に延出されたカメラ用ケーブル15aを通して外部のコントローラに接続され、このコントローラでカメラ部15が撮影した管路内の様子をモニターで観察するようになっている。なお、カメラ部15には、光源用のライトガイド等が適宜付設される。
【0011】図2はこの実施例の通線装置10における先端部13の移動原理を説明するための概要図であり、この通線装置10を複数本の既設ケーブル24が敷設された既設管路23に通線する場合、従来のものでは先端部が既設ケーブル24間の谷部に嵌まり込み易く、通線の際の抵抗が大きいが、この実施例の通線装置10では、複数の突出板14を設けた先端部13を回転駆動させながらケーブル11の押し込みを実行することによって、先端部13が既設ケーブル24の外周面を這うように移動し、既設ケーブル24間の谷部に落ち込んでも容易に這い出し、結果的にこの通線装置10を備えたケーブル11は既設ケーブル24を避けるように進行方向を変えながら押し込まれて行く。このように、上述した通線装置10は、障害点を回避しながら通線を行うことができ、従来では通線が不可能であった既設管路への通線が可能となる。また何度も繰り返して通線作業を行うことなく確実に通線することができるので、作業効率を大幅に向上させることができる。また障害点を回避しながら通線を行うので、少ない抵抗でケーブル11を押し込むことができ、従来の通線装置に比べて通線距離を延長することができる。さらに、少ない抵抗でケーブル11を押し込むことができるので、既設のケーブル24に無理な力をかけることなく新たなケーブル11の通線が可能となり、ケーブル11,24に対する安全性を向上させることができる。また、カメラ部15で撮影した観察画面を見ながら障害を回避できるため、作業効率を一層向上させることができる。また、その挿入進路が変更でき、観察装置を適宜な位置に移動できるので、従来は十分に観察できなかったケーブルの陰の部位の観察が可能となり、管路内をより詳細に観察することができる。
【0012】図4は本発明の通線装置の第2実施例を示す図である。この実施例の通線装置30は、先の実施例の通線装置10における突出板14に変えて、先端部31の先端から後端にかけて円弧状に架設された複数本のワイヤよりなるケージ状突出体32とした場合を例示するものである。このケージ状突出体32は、先の実施例における突出板14と同様に、既設管路23内で先端部31を回転駆動させたときに、先端部31を既設ケーブル24の外周に沿って移動させるために用いるものであり、この実施例の通線装置30によれば、先の第1実施例と同様の効果が得られる他、このケージ状突出体32は先の実施例における突出板14に比べて撓み易いので、図4に示すように狭い間隔を移動させる場合に、ケージ状突出体32が適宜に撓んで既設ケーブル24外周や管路23内周面に接しながら移動することができ、より小さい隙間内の移動が可能となる。
【0013】図5は本発明の第3実施例を示すものである。この実施例による通線装置40は、ケーブル先端に取り付けられるヘッド部41と、その先端に設けられたカメラヘッド42と、カメラヘッド42の外周に図示略のベアリングによって回転可能に支持された回転体44と、該回転体44に隣接して設けられた円筒状モータ43とを備えている。この回転体44の外周には、図示はしないが、ケージ状突出体32あるいは突出板14が設けられている。上記円筒状モータ43としては超音波モータ等が好適に用いられるこの通線装置40は、円筒状モータ43を回転駆動させることによって、回転体44を回転駆動し、該回転体44に設けられたケージ状突出体32又は突出板14の回転によりヘッド部41を既設ケーブル24の外周に沿って移動させるようにしたものであり、この実施例の通線装置40によれば、先の第2実施例と同様の効果が得られる他、駆動源が小型となり、通線装置の小型化を図ることができる。また、回転体44にケージ状突出体32の後端を固定し、突出体32先端をカメラヘッド42先端のフレームに固定することにより、モータ43を所定角度だけ回転させるとケージ状突出体32の後端側のみが捩られるように変形し、この変形によりヘッド部41を移動させることもできる。
【0014】図6ないし図8は本発明の通線装置の第4実施例を示すものである。この実施例による通線装置50は、ケーブル11の先端に接続され、その外周面に螺旋溝54が形成されたロッド53と、該ロッド53上に取り付けられた回転部51とから概略構成されている。回転体51は円筒状をなしており、その外周面には複数の円弧状の突出板14が放射状に設けられている。この回転体51の内周面には、図7に示すようにロッド53の螺旋溝54に挿入されるピン55が突出形成されている。これによって回転体51は螺旋溝54に沿って回転しながら後退又は前進するようになっている。この通線装置50は、通線作業時に、図8に示すように、先端が何らかの障害物56に当接した場合、回転体51が螺旋溝54に沿って回転しながら後退し、回転する突出板52が障害物56の外面を這い上がるように移動することによって、障害物56を避けることができるようになっている。従って、この実施例の通線装置50においても、上述した第1実施例による通線装置と同様の効果を得ることができる。
【0015】なお、本発明は上記各実施例によって限定されるものではなく、種々の改変が可能である。例えば、上記実施例のうち、モータを用いて先端部13,31等を回転駆動させるものでは、モータ20,43に変えて、水圧や空気圧を利用した回転駆動手段を用いることもできる。また上記各実施例では、突出板14やケージ状突出体32を設けた先端部13,31や回転体44,51を回転させる構成としたが、回転させることなく、該先端部等に振動波を付与し、既設ケーブル24の外周に沿って移動させることにより、挿入進路を変更するように構成することもできる。
【0016】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明の通線装置によれば、複数の突出部材を有する可動部と、該可動部を回転させ或いは振動させる可動手段とを備え、可動部を回転させ或いは振動させることによって、管路内通線装置や管路内観察装置の挿入進路が変更できるため、障害点を回避しながら通線を行うことができ、従来では通線が不可能であった既設管路への通線が可能となる。また何度も繰り返して通線作業を行うことなく確実に通線することができるので、作業効率を大幅に向上させることができる。また障害点を回避しながら通線を行うので、少ない抵抗でケーブル等を押し込むことができ、従来の通線装置に比べて通線距離を延長することができる。さらに、少ない抵抗でケーブル等を押し込むことができるので、既設のケーブルに無理な力をかけることなく新たなケーブル等の通線が可能となり、ケーブルに対する安全性を向上させることができる。また、観察装置を備えた管路内観察装置に適用した場合には、観察画面を見ながら障害を回避できるため、作業効率を一層向上させることができる。また、同じく管路内観察装置に適用した場合には、その挿入進路が変更でき、観察装置を適宜な位置に移動できるので、従来は十分に観察できなかったケーブルの陰の部位の観察が可能となり、管路内をより詳細に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例を示す通線装置の正面図である。
【図2】 本発明の通線装置の作動原理を説明する概要図である。
【図3】 図1の通線装置の要部の断面図である。
【図4】 本発明の第2実施例を示す通線装置の概要図である。
【図5】 本発明の第3実施例を示す通線装置の要部断面図である。
【図6】 本発明の第4実施例を示す通線装置の正面図である。
【図7】 図6の通線装置の要部断面図である。
【図8】 図6の通線装置の作動原理を説明するために正面図である。
【図9】 従来の通線装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
10,30,40,50……通線装置、11……ケーブル、12……駆動部(可動手段)、13,31……先端部(可動部)、14,52……突出板(突出部材)、15……カメラ部、23……既設管路、24……既設ケーブル、32……ケージ状突出体(突出部材)、43……円筒状モータ(可動手段)、44……回転体(可動部)、51……回転部(可動部)53……螺旋溝付きロッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 管路内に通線するべきケーブル等の先端に設けられ、外周面から突出する複数の突出部材を有する可動部と、該可動部を回転させ或いは振動させる可動手段とを備えたことを特徴とする通線装置。
【請求項2】 請求項1の通線装置において、先端部に前方を撮影するカメラ部を設けたことを特徴とする通線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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