説明

通行支援システム

【課題】 地図表示の煩雑化を抑制しつつ、ユーザにとって重要度の高い標識等を表示する。
【解決手段】 道路の通行を規制する情報や、経路を決めるのに有用な案内を提供する道路交通標識、路面に描かれた矢印等の路面標示、道路の中央分離帯、案内板、種々の店舗等の看板などの各標識類に対し、道路ネットワークのリンク、ノードを用いて規制内容を表すデータを用意する。また、ユーザが特定のリンクにいる場合には標識類を表示する旨を表す関連L情報も設定する。通行支援システムは、標識類データを参照して、ユーザの通行を規制する標識類や、関連リンクで指定された標識類を、他の標識類よりも視認性を高めた態様で表示する。こうすることで、重要度等に応じて表示時の視認性を変化させることができ、地図の煩雑化を回避しながら重要度の高い情報をユーザに表示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路を通行するユーザに対して、規制情報を表示することにより、その通行を支援する通行支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路をリンクおよびノードで表したネットワークデータを用いて、指定された出発地から目的地までの経路を探索し、案内するナビゲーションシステムが普及している。ナビゲーションシステムは、案内時には、地図上に経路を表示するだけでなく、標識を表示して、運転者に対して通行規制を知らせる。
【0003】
標識の表示に関する先行技術には、次に掲げるものがある。
特許文献1は、自車位置から所定の範囲内にある文字情報のみを表示する技術を開示している。
特許文献2は、速度規制など、通行中に運転者が認識しておくべき標識を伝達するための技術を開示している。この技術では、それぞれの標識に対して、その標識が有効に作用する距離区間を指定する情報をナビゲーション装置に提供し、自車がこの距離区間内にいる時に、当該標識を表示する。
特許文献3は、運転者が運転中に「止まれ」などの標識を見落とす危険性を抑制するための技術を開示している。この技術では、それぞれの標識が表示されるべき条件を車両の位置および進行方向で表した制御情報を予め用意しておき、自車の位置および進行方向が、この制御情報に該当する場合に、運転者が認識すべき標識を知らせる技術を開示している。
特許文献4は、標識に対して表示の優先順位を設定したデータを用意しておき、例えば、小型車で走行中の場合には、大型車に対する規制を表した標識は表示の優先度を下げるなどして、走行の状態に応じた優先順位で標識を表示する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−303331号公報
【特許文献2】特開平7−105479号公報
【特許文献3】特開2001−34887号公報
【特許文献4】特開2009−110394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地図に標識を表示する場合、あまりに多くの標識が表示されると、地図表示が煩雑となり、運転者は自己にとって重要な情報を見落としてしまうおそれがある。従って、地図を表示する際には、運転者にとって重要な情報を過不足なく表示することが求められる。
特許文献1記載の技術では、自車との位置関係によって文字情報の表示を制御するため、運転者にとって行く先の経路選択の判断に影響を与える情報など、自車位置から遠方にあっても事前に表示しておく必要性が高い情報が欠落してしまうおそれがある。また、自車位置の進行方向とは無関係の情報など、近くにあっても重要とは言えない情報が表示されるという点で、地図表示の煩雑化を十分に抑制できていないという課題もある。
特許文献2、3は、運転者に標識を確実に伝達するための技術であり、運転者が自己に重要な情報を把握しやすい地図表示を行うことは考慮されていない。
特許文献4は、自車の位置および進行方向と無関係に表示を制御するため、地図表示の煩雑化の抑制という点では不十分である。
【0006】
地図表示が煩雑化することで、重要な情報を見落としてしまうという課題は、標識だけに限らず、路面に描かれた矢印等の路面標示(以下、「ペイント」という)や、道路に設けられた分離帯の有無、種々の案内看板なども同様である。また、通行者にとって重要な情報は、通行時の目的等によって異なることもある。
本発明は、こうした課題に鑑み、道路を通行する者が、重要な情報を把握しやすい地図表示を提供することで、その通行を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、地図とともに標識類を表示して道路の通行を支援する通行支援システムとして構成することができる。標識類とは、道路を通行する際に通行を規制する情報や、経路を決めるのに有用な案内を提供する種々の地物を言い、例えば、道路交通標識(以下、単に「標識」ということもある)、路面に描かれた矢印等の路面標示、道路の中央分離帯、案内板、種々の店舗等の看板などが含まれる。中央分離帯が含まれるのは、分離帯の有無によって、ユーザが通行可能な方向が規制されるからである。案内板が含まれるのは、ユーザが経路を決めるための案内情報を提供するからである。看板が含まれるのは、ユーザが店舗の看板を見て、行き先つまり目的地を決めることもあり、広い意味で経路を決めるための情報を提供する物と言えるからである。
通行支援システムは、地図とともに標識類の情報を表示すれば足り、必ずしも目的地に向かうための経路を表示するものである必要はない。もっとも、後述するように、経路探索および経路案内と組み合わせることも可能である。
【0008】
通行支援システムは、地図データベース記憶部、現在位置取得部、案内部とを備える。
地図データベース記憶部は、道路をノードおよびリンクで表したネットワークデータと、道路の通行時にユーザに表示されるべき標識類について、位置および案内内容を記憶する標識類データとを格納する。案内内容には、通行の規制情報だけでなく、案内板によって与えられる情報、つまり交差点を右折した場合、左折した場合、直進した場合のそれぞれの行き先を与える内容が含まれる。また、店舗等の看板に該当する内容、例えば、中華料理、日本食など飲食店の種類や、電気屋、スポーツ店など商店の種類を与える情報、店舗の名称などの情報を記憶してもよい。
標識類の位置は、緯度経度等の座標点で表してもよいし、標識が位置するノード、リンクで表してもよい。ネットワークデータは、通行規制情報も踏まえて自動車の経路探索に使用可能な主ネットワークと、経路探索に使用可能ではあるが通行規制情報の整備が完全とは言えない準ネットワークなどを混在して用意してもよい。
また、標識類データには、それぞれの標識類について、ノードおよびリンクの少なくとも一方と関連づけてその表示態様を制御するために用いられる情報を記憶しておく。表示態様とは、表示可否だけでなく、視認性が高いまたは低い態様で表示などを広く意味する。視認性が高い表示態様とは、該当する標識類を、その他の標識類よりも大きく表示したり、明度や彩度を高めるなどして表示することを言う。その他の標識類を表示しない態様も含まれる。
現在位置取得部は、ユーザの現在位置を取得する。例えば、GPS(Global Positioning System)を利用することができる。
案内部は、現在位置が該当するリンクまたはノードに基づいて、標識類データを参照して決定される表示態様で、標識類を地図上に表示する。現在位置だけでなく、過去の経路を考慮してもよい。つまり、過去に通過したリンクまたはノードに基づいて、標識類データによる表示態様を適用するようにしてもよい。地図の表示は、ネットワークデータのリンクに幅を持たせることで道路を描く方法によることができる。建物等の地物を表示するために、地図データベース記憶部に、これらを描画するためのポリゴンを記憶する地物データを用意してもよい。また、地物データには道路を描くためのポリゴンデータを含めてもよい。
【0009】
こうすることによって、ユーザの現在位置に応じて、標識類の表示態様を制御することができる。
標識類に付されるノード、リンクは、標識類に隣接するものに限られないから、現在位置の遠方にある標識類の制御も可能となる利点がある。ユーザが通行中の道路によっては、行き先および目的が概ね限られる場合がある。例えば、ユーザが通行中の道路が田舎道のように長い一本道であり、その先に集落があるような場合、ユーザの行き先は、この集落であると想定される。このような場合には、集落内の道路に付された一方通行その他の規制情報は、ユーザにとっては重要な情報であり、集落に進入する道を決定するためにも早めに知りたい情報である。上述の態様によれば、集落内の標識類を、この集落に続く一本道のリンクに関連づけておくだけで、ユーザの現在位置が集落から遠い時点でも、標識類を表示することができる。
従来、ユーザの近くにある標識類ほどユーザにとって重要性が高いという考え方に基づき、地図上に表示すべき標識類は、ユーザの近くにある標識類に絞るのが通常であった。しかし、上述の態様は、こうした固定観念を離れ、ユーザにとって重要な情報は、必ずしも近くにある標識類に限られるものではないとの発想の転換によってなされたものである。
別の例として、ユーザが中華街や電気店街に向かう場合には、早くから中華料理店、電気店、および駐車場などの情報を知りたいと考えるものである。上述の態様によれば、これらの中華街、電気店街などへの入り口付近のリンク、ノードに、店舗や駐車場の案内表示を関連づけておくことにより、入り口付近にさしかかったところで、これらの案内表示を行うことができる。入り口付近に到達したユーザが、必ずしも中華街や電気店街を訪れるとは限らないが、少なくとも、中華街等を訪れる目的のユーザに対しては、有用な情報を提供可能である。
【0010】
本発明の通行支援システムは、必ずしも経路探索を行うものに限定されない。ユーザがとるべき経路がわかっていない場合であっても、現在位置が分かれば、ユーザが進行しているリンクまたはノードが特定でき、本発明における表示の制御を適用可能だからである。
【0011】
本発明の通行支援システムは、経路探索と組み合わせて用いることも可能である。
この場合には、出発地および目的地を入力する入力部と、地図データベース記憶部を参照して、出発地から目的地までの経路探索を行う経路探索部とを設ければよい。経路探索は、ダイクストラ法など周知の方法をとることができる。
経路探索を行う場合には、案内部は、探索された経路を表示することができる。また、経路が既知なので、現在位置および経路に基づいて定まるユーザの進行方向に基づいて視認性向上対象となる標識類を決定することが好ましい。こうすることにより、ユーザが既に通過してきた地点の標識類を視認性向上対象から除外することができ、地図表示の煩雑化をより抑制することが可能となる。
【0012】
地図データベースに、道路を含む地物を描画するための地物データを備える場合には、上述の経路探索は、更に、次に示す態様で行ってもよい。
通行支援システムには、上述の経路探索部の他に、到着点取得部を設ける。到着点取得部は、経路探索時には、地図データベースを参照して、上述の主ネットワーク、つまり自動車が通行可能な道路としてネットワークデータが整備された道路上の点であって、目的地に対応する地物からいずれかの道路を通行して到着できる点である到着点を取得する機能を有する。
到着点は、地物データの一部として、建物等の地物ごとに設定されているものとしてもよい。この場合は、到着点取得部は、目的地として指定された地物に対応する到着点のデータを読み込めば済む。目的地が座標値で指定された場合には、到着点取得部は、指定された座標が対応する地物を特定し、その地物に対応する到着点のデータを読み込めばよい。
これに対し、到着点を予め用意しない構成とすることもできる。この場合には、到着点取得部は、目的地を起点とする経路探索によって、到着点を見いだすことになる。この場合の経路探索には、通行規制の整備が完全とは言えない準ネットワークや、ネットワークが一切整備されてはいない道路も用いることができる。ネットワークが整備されていない道路については、地物データに含まれる道路のポリゴンデータの連結具合をネットワークデータとして扱うことにより経路探索の対象とすることができる。目的地となるべき地物データには、当該地物から道路に出るための出入口を表す情報を設定しておくことが好ましい。こうすることで、目的地の出入口に至る経路を適切に探索、案内することが可能となる。
かかる態様で経路探索を行うシステムは、主ネットワークから外れた目的地への案内に利用されることがある。主ネットワークから外れた街路は、一般に細い道路であることが多く、種々の規制が付されていることが多い。従って、こうした多くの標識類の中から視認性向上対象を絞り込む表示態様が特に有用になるのである。
【0013】
標識類データは、道路の通行を規制する標識類について、位置および規制内容を記憶するようにしてもよい。
案内部は、標識類データを参照して、現在位置から所定範囲にある標識類のうち、ユーザの将来の進行方向を規制することになる標識類の視認性を高めて表示するものとしてもよい。
【0014】
この態様によれば、現在位置から所定範囲にある標識類を表示対象とすることで、標識類が過剰に表示されることを抑制でき、地図の煩雑化を抑えることができる。所定範囲は任意に設定可能であるから、所定範囲を十分広く設定しておけば、ユーザが通行する際に必要な情報を十分、事前に提供することも可能である。
そして、道路を通行中のユーザにとっては、進行方向を規制する標識類が最も重要なはずであるから、こうした標識類を視認性が高い表示態様で表示することで、重要な情報を優先的に表示することが可能となる(以下、かかる態様で表示される対象となる標識類を、「視認性向上対象」と称する。)。このように表示対象を抽出することにより、仮に、所定範囲を広く設定したとしても、視認性向上対象となる標識類を絞り込むことができるから、地図の表示の煩雑化を抑制することができる。
【0015】
リンク、ノードと関連づけた情報による表示態様の制御と、進行方向を規制する標識類の視認性を向上させる制御が競合する場合には、一方を優先的に適用するものとしてもよい。また、両者のうち、視認性が高い表示態様となる方を優先して行うものとしてもよい。例えば、2通りの条件によって標識類の表示態様を制御する場合、一方の制御によれば非表示など視認性が低い状態が設定され、他方によれば視認性の高い状態が設定される可能性がある。このように両者の制御が競合する場合、視認性が低くなる側の表示態様を優先してしまうと、ユーザにとって重要な情報を的確に表示できなくなるおそれがある。これに対し、視認性が高い表示多様を優先すれば、制御が競合した場合でも、重要な情報を的確に表示することが可能となるのである。
【0016】
標識類データは、それぞれの標識類に対して、リンクの通行方向を規制する標識類と、ノードの通行方法を規制する標識類とを判別可能な情報を記憶してもよい。リンクの通行方向を規制するものとしては、例えば、一方通行が挙げられる。ノードの通行方向を規制するものとしては、例えば、右左折禁止など指定方向外進行禁止が挙げられる。進入禁止は、該当するリンクに進入することが禁止されているのであるから、リンクに進入する地点のノードの通行方向を規制する情報とすることが好ましい。
このように分類してある場合、案内部は、リンクの通行方向を規制する標識類(以下、「リンク規制」という)と、ノードの通行方法を規制する標識類(以下、「ノード規制」という)とで、異なる条件によって、視認性向上対象となる標識類を決定することができる。ノードには複数のリンクが接続されているから、ノード規制が、ユーザの進行を規制することになるか否かの判断にも、リンク規制よりも、複雑な処理が要求されることがある。上記態様のように、リンク規制とノード規制とを分離し、視認性向上対象とするか否かの判断処理を分けることにより、リンク規制に対する判断を簡略化することができ、処理負荷の軽減を図ることができる。
【0017】
ノード規制の規制内容は、種々の態様で与えることができる。例えば、ノードの通過後に通行可能なリンク(以下「退出リンク」という)を指定する情報と、その退出リンクに進入可能なリンク(以下「進入リンク」という)を規定する情報とを組み合わせて記憶する方法をとることができる。退出リンクと進入リンクの組合せは、1対1である必要はなくm対n(m、nは自然数)でよい。また、一つのノードに対して、複数の組合せを対応づけてもよい。
進入リンクは、退出リンクによってその先の通行が規制されることを意味しているから、案内部は、現在位置が進入リンク上に位置する標識類を視認性向上対象と決定することができる。このように、進入リンクと退出リンクとの組合せで規制情報を記憶すれば、多様な規制を表現することができるとともに、進入リンクと現在位置を比較するだけで、視認性向上対象とすべきか否かの絞り込みができる利点もある。
【0018】
本発明は、その他、コンピュータを用いた通行支援方法として構成してもよいし、かかる経路探索をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして構成してもよい。また、かかるコンピュータプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体として構成してもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】通行支援システムの構成を示す説明図である。
【図2】地図データベースの構造を示す説明図である。
【図3】到着点の設定について示す説明図である。
【図4】標識類データの構造を示す説明図である。
【図5】経路案内処理のフローチャートである。
【図6】標識類表示処理のフローチャートである。
【図7】標識類の表示例(1)を示す説明図である。
【図8】標識類の表示例(2)を示す説明図である。
【図9】標識類の表示例(3)を示す説明図である。
【図10】標識類の表示例(4)を示す説明図である。
【図11】実施例2における標識類の表示例を示す説明図である。
【図12】(a)は実施例2における標識類データの例を示す図であり、(b)は実施例2におけるリンクデータの例を示す図であり、(c)は実施例2におけるノードデータの例を示す図である。
【図13】実施例2における標識類データの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施例について以下の順序で説明する。
A.システム構成:
B.データ構造:
B1.ネットワークデータ:
B2.文字データ:
B3.地物データ:
B4.到着地点の設定:
B5.標識類データ:
C.経路案内処理:
D.標識類表示処理:
D1.処理内容:
D2.標識の表示例:
D3.分離帯の表示例:
D4.分離帯の表示例:
【0021】
<実施例1>
A.システム構成:
図1は、通行支援システムの構成を示す説明図である。通行支援システムは、ナビゲーション装置100として構成される。本実施例では、ナビゲーション装置100は、地図データ等を提供するサーバ200とネットワークNEで接続されており、サーバ200から地図データベースの更新を受けられるものとした。ナビゲーション装置100は、スタンドアロンで稼働する構成としてもよいし、その機能の一部をサーバ200等で実行する構成としてもよい。
【0022】
サーバ200は、地図データベース記憶部210、送受信部201、およびデータベース管理部202を備えている。送受信部201、データベース管理部202は、ハードウェア的に構成してもよいが、本実施例では、これらの機能を実現するコンピュータプログラムをインストールすることによって、ソフトウェア的に構成するものとした。
【0023】
送受信部201は、ナビゲーション装置100とネットワークNEを介した通信を行う。本実施例では、地図データベース記憶部210に格納されたデータや、その提供を求めるためのコマンド等が通信される。
データベース管理部202は、ナビゲーション装置100から要求された地図情報を、地図データベース記憶部210から読み出す。地図データベース記憶部210には、地物データ211、文字データ212、ネットワークデータ213、および標識類データ214が格納されている。
地物データ211は、道路や建物など地図に描画すべき地物のポリゴンデータである。文字データ212は、地図上に表示すべき文字情報である。例えば、建物の名称や地名などの文字情報が含まれる。ネットワークデータ213は、道路をノード、リンクのつながりで表したデータである。標識類データ214は、道路交通標識等について、位置や案内内容を記憶するデータである。これらのデータの内容については後述する。
【0024】
ナビゲーション装置100には、主制御部101の下で稼働する種々の機能ブロックが構成されている。本実施例では、主制御部101および各機能ブロックは、それぞれの機能を実現するソフトウェアをインストールすることによって構成したが、その一部または全部をハードウェア的に構成してもよい。
送受信部102は、サーバ200とのネットワークNEを介した通信を行う。本実施例では、地図データベースおよびその提供を受けるためのコマンドの送受信が主として行われる。
コマンド入力部103は、ナビゲーション装置100に設けられたボタン、レバー、タッチパネル等の操作を通じて、ユーザからの指示を入力する。本実施例における指示としては、経路探索の出発地、目的地の指定などが挙げられる。
GPS入力部104は、GPS(Global
Positioning System)を用いてユーザの現在位置を入力する。
地図データベース記憶部105は、サーバ200から提供された地図データベースを格納する。本実施例では、サーバ200が備える地図データベース記憶部210に記憶された地図データベースの全体をナビゲーション装置100内の地図データベース記憶部105にも格納するものとしたが、経路探索や地図表示に必要となる部分のみを、その都度、サーバ200から取得するものとしてもよい。
経路探索部107は、地図データベースを参照して、経路探索を行う。
表示制御部106は、地図データベース記憶部105を用いてナビゲーション装置100のディスプレイに地図および探索された経路を表示する。
【0025】
B.データ構造:
図2は、地図データベースの構造を示す説明図である。地図データベースに格納されるデータのうち、地物データ、文字データ、ネットワークデータに格納される情報の概要を示した。
【0026】
B1.ネットワークデータ:
ネットワークデータとは、道路をリンク、ノードで表したデータである。本実施例では、ネットワークデータとして主ネットワークデータと、準ネットワークデータの2種類が用意されている。図中に実線で示したリンクL1〜L4およびノードN1、N2が主ネットワークデータであり、破線で示したリンクL11〜L13およびノードN11、N12が準ネットワークデータである。
主ネットワークデータおよび準ネットワークデータともに、それぞれに属するリンクデータおよびノードデータを格納している。リンクデータは、それぞれのリンクを形成する点列の座標、国道・県道等の種別、車線数その他の属性情報や通行規制情報などを記録している。ノードデータは、座標値、通行規制情報などを記録している。
ただし、主ネットワークデータは、現地調査によって通行規制情報が十分に整備されたデータであり、車両の経路探索に支障なく用いることができるデータとなっている。これに対し、準ネットワークデータは、通行規制情報の整備が十分とは言えないデータであり、車両の経路探索では、使用しない方が好ましいデータである。本実施例でも、経路探索は原則として主ネットワークデータを用いて行うものとしている。
【0027】
B2.文字データ:
文字データ212は、地物の名称や地名などを表示する文字を規定するデータである。図中には、建物BLDの名称を表示するためのデータ例を示した。文字データは、内容、位置、地物、フォント、サイズなどの情報を格納する。
内容は、表示すべき文字列であり、図中の例では、「△△(株)」という会社名称である。
位置は、文字を表示する位置である。本実施例では、文字列の左下の点P5を基準点として、この座標値を指定するものとした。
地物は、文字が関連づけられる地物データのポリゴン名称である。
フォント、サイズは、表示する際のフォントおよびサイズの指定である。
この他、色、太字など、種々の属性を指定可能としてもよい。
【0028】
B3.地物データ:
地物データ211について、建物H1を例にとって構造を示す。地物データ211は、建物、道路等の地物を描画するためのポリゴンデータであり、名称、形状、代表点、出入り口線、到着地点、属性などを格納している。
名称は、地物の名称である。ポリゴンに固有のIDを用いてもよい。
形状は、地物のポリゴンの頂点を示す座標の列である。図の例では、建物H1のポリゴンの頂点P1、P2、P3、P4の各座標が格納されている。
代表点は、地物の位置を表す地点Cの座標である。代表点は、地物の図心を用いることが多いが、任意に設定可能である。
出入口線は、地物と道路とを関連づけるための情報である。建物H1の場合、玄関から道路に出るための線分Dが出入口線として登録される。具体的には、線分Dの両端の座標が登録されることになる。出入口線は、線分Dのうち、道路上の端点のみを登録するものとしてもよい。また、出入口線は、建物や駐車場など、出入りを伴う地物に設定されるものであり、地物の全てに設定する必要はない。図の例では、建物BLDに対して正面の出入口線DB1および駐車場BLDP側の出入口線DB2、建物H2〜H4に対してそれぞれ出入口線DH2〜DH4、駐車場PKに対して出入口線DPKが設定されている。
【0029】
到着地点Gは、地物の出入口線の道路上の端点から、いずれかの道路を経てたどりつけるネットワーク上の点である。建物H1の場合、図中に点線で示す通り、出入口線Dが関連づけられている道路R21を経て、リンクL2に至ることができるため、リンクL2上に到着地点Gが設定されている。出入口線Dから道路R21を図中右方向にたどり、ノードN11で右折してノードN2に至る経路をとり、ノードN2を到着地点とすることもできる。本実施例では、建物H1からノードN2に至る道のりよりも、到着地点Gに至る道のりの方が短いから、このように設定した。到着地点は、一つに限定する必要はないから、ノードN2も到着地点に設定してもよい。
図の例では、建物H2〜H4に対する到着地点は点GHと設定されている。建物BLDに対しては、点GHおよび点GBLD2と設定されている。到着地点は、出入口線と同様、駐車場にも設定でき、図の例では、駐車場PKに対して到着地点GPKが設定されている。駐車場PKは、リンクL2に面しているため、出入口線DPKの端点と到着地点GPKが一致した状態となっている。
【0030】
B4.到着地点の設定:
図3は、到着地点の設定について示す説明図である。建物BLD1の出入口線DBを対象とする到着地点について示した。
建物BLD1の周辺の主ネットワークデータとしては、リンクL7、ノードN7およびリンクL5、L6およびノードN5、N6が存在する。準ネットワークデータとしては、破線で示したリンクL14が存在する。
建物BLD1の出入口線DBからいずれかの道路を経て主ネットワークにたどりつく経路としては、図中に点線で示した3通りがあげられる。道路R24を経てリンクL7にたどりつく経路、道路R25を経てリンクL6およびリンクL5にそれぞれたどりつく経路である。これらの各経路がリンクL7、L6、L5にたどりつく点が到着地点G7、G6、G5となる。
【0031】
これらの到着地点は、経路探索によって求めることができる。本実施例では、それぞれの地物は、出入口線によって、いずれかの道路に関連づけられているから、出入口点、つまり出入口線の道路上の端点を始点とする経路探索によって到着地点を求めればよい。
この経路探索は、主ネットワークデータ、準ネットワークデータおよび道路のポリゴンの全てを用いてもよい。道路のポリゴンは、リンク、ノードで構成されている訳ではないが、隣接するポリゴンを指定するデータは持っているから、ポリゴン同士のつながり関係は規定されており、リンク、ノードと同様に、経路探索に使用することが可能である。出入口点を起点とする経路探索の結果、主ネットワークデータにたどり着いた点を到着地点とすればよい。
【0032】
図の例のように、到着地点がG7、G6、G5の3点見いだされる場合、これらの3点を建物BLD1の到着地点として用いてもよいし、例えば、地物からの道のりが最短の地点、地物からの距離が最短の地点、地物から到着地点までの経路と準ネットワークデータとの重複部分が多い点、地物から出発点に向かう方角に近い点などの基準で選択してもよい。
図の例においては、地物からの道のりや距離を基準として選べば、建物BLD1に最も近い点G5が到着地点となる。準ネットワークデータとの重複部分を基準として選べば、点G6が到着地点となる。出発地が図の左端方向にある場合には、出発地の方角を基準として選べば、点G7が到着地点となる。
【0033】
本実施例では、上述の手順で、到着地点を設定し、地物データ211に予め設定しておくものとした。到着地点は、予め設定しておくのではなく、経路探索などの処理の過程で求めるものとしてもよい。
【0034】
B5.標識類データ:
図4は標識類データの構造を示す説明図である。本実施例の標識類には、道路交通標識(以下、単に「標識」ということもある)、路面に描かれた矢印等の路面標示(以下、「ペイント」という)、道路の中央分離帯、案内板、種々の店舗等の看板などが含まれる。標識類データには、位置および案内内容が記憶されている。案内内容には、通行の規制情報だけでなく、案内板によって与えられる情報、つまり交差点を右折した場合、左折した場合、直進した場合のそれぞれの行き先を与える内容が含まれる。また、店舗等の看板に該当する内容、例えば、中華料理、日本食など飲食店の種類や、電気屋、スポーツ店など商店の種類を与える情報、店舗の名称などの情報も記憶されている。すなわち、本実施例の標識類は道路付近の情報提示物である。
また、標識類データは、後述する通り、標識類の表示態様を制御するために用いられる。本実施例では、表示態様は3段階で切り替えるものとした。標準の表示態様は、標識類が一応、表示されてはいるものの、視認性が低い態様、つまり地図上に表示されていても煩雑な印象を与えない程度の大きさ、明度、彩度で表示する態様である。これに対して、ユーザに対して通行規制に関する情報を表示する標識類は、視認性が高い状態で表示される。本実施例では、標準の表示態様に比較して大きく、明度、彩度も向上させ、一目で認識できるように表示させるのである。この表示態様を「視認性向上表示」と呼ぶこともある。第3の態様は、標準と視認性向上表示との中間の表示である。つまり、ユーザに対して標識類を積極的に表示するものの、視認性向上表示された標識類の視認性を損なわない程度に視認性を抑えた表示を行う。具体的には、標識類の大きさ、明度、彩度を、標準と視認性向上表示の間に設定すればよい。この態様を、標準と視認性向上表示の中間という意味で、「中間態様」という。
表示態様は、種々の設定が可能である。例えば、中間態様と視認性向上表示とを同じ態様としてもよい。また、標準の状態を、非表示としてもよい。この場合には、中間態様として、標準の表示態様のように、視認性が低い態様を用いることができる。
【0035】
図4中には、標識S1、S2、S4、S6、およびペイントS3、中央分離帯S5のデータ構造を例示した。中央分離帯S5は、リンクL46、L48と重ねて表示すべきであるが、図中ではこれらのリンクL46,L48を見やすく示すため、あえてずらして表した。標識類データは、種別、位置、進入リンク(L)、退出リンク(L)、該当リンク(L)、該当ノード(N)、関連リンク(L)等のデータを記憶している。
標識類は、リンクに関するものと、ノードに関するもの、双方に関するもの、いずれにも関しないものに分類される。一方通行や最高速度規制など、特定のリンクに対して規制情報を与えるものがリンクに関する標識類に当たる。交差点の右折禁止、左折禁止などノードの通行態様を規制するものがノードに関する標識類に当たる。また、リンクおよびノードの双方に対して規制を与えるものもある。標識類データでは、リンクに関する標識類には、該当リンク(L)が記録され、ノードに関する標識類には、該当ノード(N)が記録される。
案内板や店舗の看板などについては、通行を規制するものではないため、対応する該当リンク、該当ノードには記録されるものの、進入リンク、退出リンクについては記録無しとなる。
【0036】
標識S1を例にとって、その内容について説明する。
種別は、標識類の種類を表している。標識S1の場合は、「一方通行」となる。店舗の看板等に対しては、店舗の名称や種類を用いることができる。
位置は、標識類の位置座標が(緯度、経度)の形で(LAT1,LON1)のように記録されている。標識類が隣接するリンク、ノードによって表すものとしてもよい。
標識S1は、一方通行なので、リンク自体の通行態様を規制する標識である。従って、標識S1に対しては、該当リンク(L)に、規制が付されたリンクL44が記録される。一報、ノードの通行態様を規制するものではないから、該当ノード(N)は「None」、つまり規定無しとされる。
進入リンク(L)、退出リンク(L)は、該当ノード(N)が規定されている時に、その通行態様を規制する情報である。標識S1は、該当ノード(N)が規定されていないため、進入リンク(L)、退出リンク(L)ともに「None」となる。
関連リンク(L)は、通行の規制情報とは無関係に、標識S1の表示態様を制御するための情報である。本実施例では、ユーザの現在位置が、関連リンク(L)上にある時に、標識S1を、標準と視認性向上態様の間の中間態様で表示することを意味する情報となっている。標識S1の表示が、標準状態で構わない場合には、「None」と記録される。本実施例では、関連リンク(L)のみを設けているが、同様の機能を有する関連ノードを設けても良い。ただし、現在位置が関連ノード上にあるのは、ほんの一瞬に過ぎないから、関連ノードを用いる場合には、例えば、ユーザが、その関連ノードを通過した後に、対応する標識を表示させるなどの態様をとることが好ましい。
【0037】
標識S2は、種別が「指定方向外進行禁止」、いわゆる右折禁止の標識類である。位置は、その緯度経度(LAT2、LON2)が記録されている。右折禁止は、交差点の通行態様を規制するものであるから、標識S2には該当ノード(N)として、この規制が適用されるノードN42が記録されている。これに対し、右折禁止は、リンク自体の通行を規制するものではないから、該当リンク(L)には「None」が記録される。
該当ノード(N)が記録されるため、この通行態様を規定する情報として、進入リンク(L)、退出リンク(L)が記録されている。
退出リンク(L)とは、該当ノード(N)を通過した後に通行可能なリンクを表している。標識S2の場合、該当ノードN42を通過した後は、直進するリンクL44、または左折のリンクL43を通行可能であるから、退出リンクとしてリンクL43、L44が記録される。
進入リンク(L)は、上述の退出リンク(L)に対して通行する場合に、該当ノード(N)に進入可能なリンクを表す。標識S2の場合、リンクL45から退出リンクL43、L44への走行が許容されているから、進入リンク(L)には、リンクL45が記録される。
ただし、進入リンク(L)は、退出リンク(L)に対して通行可能な全てのリンクを規定するものではない。図の例では、退出リンクL43、L44には、リンクL46からノードN42に侵入した場合も通行可能であるが、標識S2はリンクL46からの通行に対して規制を与えるものではないため、進入リンク(L)には、リンクL46が記録されていないだけのことである。進入リンク(L)にリンクL46が入っていないからといって、リンクL46からリンクL43、L44への通行が禁止されることを意味する訳ではない。
ユーザの現在位置が上述した進入リンク、退出リンク、該当ノード以外のリンク上にある時に標識S2に中間態様の表示にする必要性がない場合には、関連リンク(L)は、標識S2についても「None」と記録される。
【0038】
ペイントS3は、直進右折禁止の路面標示である。標識データには、標識S2と同様の内容が記録される。
【0039】
標識S4は、種別が「進入禁止」であり、その位置座標の緯度経度は(LAT4、LON4)である。進入禁止が設置されているリンクL45であっても、図中の右から左側への通行は許容されるため、標識S4は、リンクL45自体の通行を規制するものではなく、ノードN42を通った後、リンクL45に進入する経路はとれないことを規制するものである。従って、標識S4については、該当リンク(L)は「None」と記録されるが、該当ノード(N)はノードN42が記録される。
そして、進入リンク(L)と退出リンク(L)によって、ノードN42の通行態様が規定されている。進入禁止は、該当ノード(N)を通行した後、リンクL45に進入できるリンクが存在しないことを意味する規制である。従って、該当ノード(N)を通過した後の退出リンク(L)としてリンクL45と記録し、このリンクL45に対して通行可能な進入リンク(L)が存在しないことを表す「None」が記録される。
【0040】
分離帯S5は、種別が「分離帯閉」となっている。「閉」とはノードN43の通行を規制する態様で設けられていることを意味する。図の例では、分離帯は、ノードN43をまたいでリンクL46、L48に延びるように設定されているから、リンクL47からリンクL48への右折、リンクL46からリンクL47への右折はできない。このように通行が規制されることを、本実施例では、「閉」と表している。逆に、通行を規制しないものは、「開」と表される。
分離帯の位置は、代表点の緯度経度を記録した。分離帯を表す点列で位置を規定してもよい。
分離帯は、ノードN43での右折を規制すると同時に、一方通行と同じように、リンクL46、L47の通行自体も規制すると考えられる。従って、該当ノード(N)としてノードN43が記録され、該当リンク(L)としてリンクL46、L47が記録されている。
また、該当ノードN43に対する通行規制情報を表す進入リンク(L)、退出リンク(L)は、次の通り規定される。分離帯の場合、単一の標識と異なり、複数方向からの通行を重畳的に規制しているため、進入リンク、退出リンクの組合せも複数設定されている。1組目として、退出リンク[1]がリンクL46の場合、リンクL46への通行が許容されるのは、リンクL47からの左折と、L48からの直進であるから、これらが進入リンク[1]に記録される。2組目として、退出リンク[2]がリンクL47の場合、リンク47への通行が許容されるのは、リンクL48からの左折だけであるから、進入リンク[2]にはリンクL48が記録される。3組目として、退出リンク[3]がリンクL48の場合、リンクL48への通行が許容されるのは、リンクL46からの直進だけであるから、進入リンク[3]にはリンクL46が記録される。
また、リンクL47を走行しているユーザに対しては、ユーザがリンクL47からリンクL48への右折等が可能だろうと誤解することがないよう、ユーザの経路に関わらず分離帯S5の存在を知らせておくことが好ましい。かかる観点から、関連リンク(L)にリンクL47が記録されている。同様の理由で、リンクL46を関連リンクに設定し、ユーザの経路に関わらず分離帯S5の存在を知らせられるようにしてもよい。
【0041】
標識S6は、一方通行であり、標識S1と同様の内容が記録される。この例では、更に、関連リンク(L)としてリンクL42が記録されている例を示した。
関連リンクL42は、図示するように、集落ARに向かう道路である。この道路を通行しているユーザは、集落ARに向かうことが多いと考えられる。このようなユーザに対しては、集落AR内の標識を早くから表示しておくことが好ましい。図示するように、集落AR内の一方通行などの規制情報が早くに表示されていれば、集落ARにどの道路を通って入るか、集落AR内でどの経路を通るか、などの判断の助けとなる。集落AR内のそれぞれの標識に対し、標識S6と同じように、関連リンクとしてリンクL42を記録しておけば、現在位置がリンクL42上にある時に、集落AR内の標識を表示させることが可能となる。
【0042】
C.経路案内処理:
図5は、経路案内処理のフローチャートである。ナビゲーション装置100の経路探索部107および表示制御部106が主として実行する処理であり、ハードウェア的にはナビゲーション装置100のCPU(以下、単に「CPU」という)が実行する処理である。
【0043】
本実施例の通行支援システムは、必ずしも経路探索を行うものには限らず、単に現在位置周辺の地図を表示する態様で活用することもできる。CPUは、経路探索を行うモードが設定されている場合には(ステップS10)、出発地、目的地を入力する(ステップS12)。出発地は、ユーザが指定してもよいし、GPSなどで取得した現在位置を出発地に設定してもよい。
目的地は、地物を指定してもよいし、座標値で指定してもよい。
【0044】
CPUは、指定された目的地に対する到着地点を取得する(ステップS14)。目的地となる地物が指定されている場合は、指定された地物に対応する地物データから到着地点を読み出せばよい。目的地が座標で指定されている場合には、当該座標がいずれのポリゴンに含まれるかを特定し、特定されたポリゴンの地物データに対応する到着地点を読み出せばよい。
到着地点が予め地物データに格納されていない場合には、図3で説明した経路探索を行って到着地点を得ればよい。
到着地点が取得されると、CPUは、出発地から到着地点に対する経路探索を行う(ステップS16)。
経路探索を行わないモードの場合には(ステップS10)、以上の処理(ステップS12〜S16)がスキップされる。
【0045】
次に、CPUは経路案内を行う。
まず、現在位置を入力し(ステップS20)、経路および現在位置を表示する(ステップS22)。CPUは、現在位置に基づいて現在位置が含まれる所定範囲を特定し、これを表示する範囲として決定する。また、CPUは、この所定範囲内に位置する標識を抽出する。経路探索を行っていない場合には、現在位置周辺の地図を表示すればよい。経路探索を行っている場合、経路の表示とともに、音声案内を行っても良い。
そして、CPUは、標識類表示処理を行う(ステップS30)。これは、標識類データを参照して、地図上に表示される標識類の表示態様を制御する処理である。処理の内容は後述する。
ステップS22、S30は、順序を逆にしてもよいし、並行して行ってもよい。
以上の処理をCPUは、目的地に到着するまで(ステップS80)、繰り返し実行する。
【0046】
D.標識類表示処理:
D1.処理内容:
図6は、標識類表示処理のフローチャートである。経路案内処理のステップS30に相当する処理である。
この処理では、CPUは、ユーザの現在位置に基づいて、ユーザが現在いるリンク(現在L)を特定し、次にユーザが通過するノード(次N)を特定する(ステップS32)。経路探索が行われている場合には、ユーザの進行方向が分かっているため、経路に沿って次Nを特定すればよい。経路探索が行われていない場合には、現在Lの両端点のノードを次Nとして扱えばよい。
【0047】
CPUは、現在Lに対応する標識類の表示態様を設定する(ステップS34)。本実施例では、次の4つの条件で表示態様を決定した。条件1〜条件4の順に優先して適用される。
(条件1)
標識データに設定された進入Lが現在Lと一致する場合には、視認性向上表示とする。
例えば、図4における標識S2に対して、現在LがリンクL45である場合には、条件1を満たすことになる。
(条件2)
標識データに設定された該当Nが次Nと一致する場合について、進入Lが「None」であり、かつ退出リンクが現在Lと一致しない場合は、視認性向上表示とする。
例えば、図4における進入禁止の標識S4に対応する。進入Lの「None」は、退出リンクにはいかなるリンクからも進入できないことを意味するため、通行を規制する情報として視認性向上表示とすべき標識である。ただし、現在Lが退出Lに一致する場合には、進入禁止とされているリンクにいるのだから、この規制による影響は受けない。この意味で、退出リンクが現在Lと一致しない場合のみを、視認性向上表示としたのである。
(条件3)
関連Lが現在Lと一致する場合には、中間態様での表示とする。中間態様とは、視認性向上表示と標準表示との中間の視認性を有する態様での表示である。
これは、図4の標識S6に相当する。条件1、2が優先的に適用されるため、これらの条件によって視認性向上表示すべきと判断された標識類については、条件3に該当するとしても中間態様に設定しなおされることはない。このように優先順位を設定することによって、通行規制に関する標識類(条件1、2)をユーザに的確に伝えることができる。
(条件4)
その他の標識類については、標準態様とする。非表示としてもよい。
図4における標識S1は、進入Lが設定されていないため条件1に該当せず、該当Nが設定されていないため条件2に該当せず、関連リンクも設定されていないため条件3にも該当しない。従って、標識S1は、該当Lに対する規制情報ではあるが、標準態様での表示しかされない。これは、一旦、該当リンクL44に進入してしまった後は、当該リンクが一方通行であるという規制情報は、ユーザに知らせるまでない情報となるからである。
【0048】
経路探索が行われている場合には、CPUは経路探索結果を読み込み(ステップS36)、その経路上のリンク(以下、「経路リンク」という)のうち現在L以外のリンクが、該当Lまたは関連Lとなっている標識類を中間態様に設定する(ステップS38)。
ステップS34が、ユーザの現在位置に基づく表示態様の設定であるのに対し、ステップS38は、ユーザがこの先向かう予定の経路に基づく表示態様の設定である。経路探索が行われていない場合には、ステップS38の設定は行われない。
経路リンクが該当Lまたは関連Lとなっている標識類は、ユーザが経路を進行して、それぞれの経路リンク上に到達した時には、ステップS34に示した条件4によって、中間態様等で表示されるべきものである。ステップS38の処理によって、このようにいずれ中間態様等となるべき標識類を、事前に中間態様としておくことができ、ユーザに適切な情報を表示することができる。
【0049】
以上の処理によって表示態様の設定ができると、CPUは設定された態様で、標識類の表示を行う(ステップS40)。
【0050】
D2.標識の表示例:
図7は、標識類の表示例(1)を示す説明図である。
車両が現在位置P71にあり、リンクL71に沿って、図中の右側から左側に向かって移動しているものとする。現在LはリンクL71であり、次Nは、ノードN71である。
進入禁止の標識S71は、ノードN71の通行を規制するものであり(該当N=N71)、リンクL73への進入を禁止するものである(退出リンク=L73、進入リンク=None)。
該当N=次N=ノードN71となっており、進入L=Noneである。また、退出L(=L73)は、現在L(=L71)と異なっている。従って、標識S71は、標識類表示処理(図6)のステップS34の条件2に該当するため、視認性向上態様での表示となる。
図中には、標識S71を視認性向上態様として、大きく、明度、彩度を高めて表示した例を示した。
【0051】
標識S72は、進入L(=L73)が現在L(=L71)と異なるため条件1には該当しない。
該当N(=N71)は、次N(=N71)と一致するが、進入LがNoneとなっていないため、条件2にも該当しない。
関連Lは設定されていないため、条件3にも該当しない。
従って、標識S72は、標準態様での表示となる。本実施例では、大きさを小さく、明度、彩度を抑えて表示される。
【0052】
標識S73は、進入Lが設定されていないため条件1には該当せず、該当Nが設定されていないため条件2には該当せず、関連Lも設定されていないため条件3にも該当しない。
従って、標識S73は、標準態様での表示となる。条件4をさらに分類してもよい。該当Nが次Nに一致している標識類は、ユーザの経路に関連している標識類であり、ユーザに対して情報を表示することが好ましい標識であるのに対し、次Nにも該当しない場合には、このような情報表示も不要と考えることもできるからである。
かかる考え方によれば、条件4を次に示す2段階に分けて設定することができる。
(条件4−1) 該当N=次Nの場合、標準態様での表示とする。
(条件4−2) その他の場合、非表示とする。
条件4−1、4−2を用いる場合、標識S73は、該当Nが設定されていないから、条件4−1に該当せず、条件4−2によって非表示となる。図中に標識S73を点線で示したのは、標識S73が非表示とされることを表している。
【0053】
リンクL71を走行しているユーザにとっては、進入禁止の標識S71は、リンクL73への左折を禁じるものである点で重要であるが、指定方向外進行禁止の標識S72による規制は、リンクL71とは関係ない。
本実施例によれば、標識データに基づいて表示態様を設定することにより、図7に示すように、ユーザにとって重要性の高い標識S71の視認性を向上して表示することができるとともに、他の標識は、視認性が低い態様で表示されるため、地図表示の煩雑化を抑制することもできる。
【0054】
図8は、標識類の表示例(2)を示す説明図である。
車両が現在位置P81にあり、リンクL73に沿って、図中の下側から上側に向かって移動しているものとする。現在LはリンクL73であり、次Nは、ノードN71である。
進入禁止の標識S71aは、ノードN71の通行を規制するものであり(該当N=N71)、リンクL73への進入を禁止するものである(退出リンク=L73、進入リンク=None)。
該当N=次N=ノードN71となっており、進入L=Noneである。しかし、退出L(=L73)は、現在L(=L71)と一致しているため、標識類表示処理(図6)のステップS34の条件2には該当しない。
また関連Lは設定されていないから条件3にも該当しない。
従って、標識S71aは条件4により、標準態様で表示されることになる。上述の条件4−1、条件4−2を適用した場合、該当N=次Nであるから条件4−1に該当し、標準態様で表示されることになる。
図中には、標識S71aを、標準態様、つまり小さく、明度、彩度を抑えて表示した例を示した。
【0055】
一方、標識S72aは、進入L(=L73)が現在L(=L73)と一致するため条件1に該当する。従って、標識S72aは、視認性向上態様での表示となる。
図中には、標識S72aを視認性向上態様として、大きく、明度、彩度を高めて表示した例を示した。
【0056】
標識S73は、進入Lが設定されていないため条件1に該当せず、該当Nが設定されていないため条件2には該当せず、関連Lも設定されていないため条件3にも該当しない。従って、標識S73は、条件4により標準態様での表示となる。
上述の条件4−1、4−2を用いる場合、標識S73は、該当Nが設定されていないから、条件4−1に該当せず、条件4−2によって非表示となる。図中に標識S73を点線で示したのは、標識S73が非表示とされることを表している。
【0057】
同じ交差点であっても、ユーザの現在位置によって重要な標識類は変化する。図8に示すように、リンクL73を通行している場合には、リンクL73への進入禁止は重要ではなく、指定方向外進行禁止の標識S72aが重要となる。
本実施例によれば、図7と同じ標識類データを用いた場合でも、図8に示したように、重要度の高い標識を視認性向上態様で表示させることができる。
【0058】
図9は、標識類の表示例(3)を示す説明図である。交差点を通過する前後での標識の表示態様の変化を示した。
図9(a)はノードN101に進入する前、ユーザが現在位置P101にいる状態を示している。現在LはリンクL101であり、次NはノードN101である。
指定方向外進行禁止の標識S101は、進入L(=L101)は現在L(=L101)と一致するため、条件1(図6のステップS34参照)を満たし、視認性向上態様で表示される。
【0059】
図9(b)はノードN101を通過した後、ユーザが現在位置P102にいる状態を示している。現在LはL102である。次Nは図示を省略したが、リンクL102について、N101とは異なる側の端点ノードとなる。
この状態では、標識S102は、進入L(=L101)が現在L(=L102)と異なるため、条件1には該当しない。
また、該当N(=N101)が次Nとも異なるため、条件2にも該当しない。
関連Lも設定されていないため、条件3にも該当しない。
従って、標識S102は条件4によって標準態様で表示される。
上述の条件4−1、4−2を用いる場合には、該当Nが次Nと一致しないため、条件4−1に該当せず、条件4−2によって非表示とされる。図中には、非表示の例を示した。
【0060】
交差点通過後は、標識S102は、ユーザの通行を規制するものではなくなるため、重要度が低減する。このように、同じ標識であっても、交差点(ノードN101)の通過前後で重要性が異なるが、本実施例では、こうした重要度の変化に応じて、表示態様を変化させることができ、ユーザの走行状態に応じて、標識による情報を的確に表示することが可能となる。
【0061】
D3.分離帯の表示例:
図10は、標識類の表示例(4)を示す説明図である。ユーザが現在位置P91にいる場合に、経路探索によって経路G91が得られているものとする。ユーザの目的地はリンクL94の先にあり、一見すると、リンクL92、L93、L94と直進する経路G92(以下、「直進コース」という)の方が適しているように見える。しかし、ノードN92には分離帯S91が存在するため、直進することはできない。経路G91は、分離帯S91を考慮して得られた迂回経路なのである。
【0062】
このような状態で、仮に分離帯S91を地図上に表示しないでいると、ユーザは、地図を見て、経路G91よりも直進コースの方が好ましいと考え、直進してしまうおそれがある。
しかし、全ての分離帯を常に表示すれば、地図表示が煩雑になってしまうおそれもある。
本実施例では、標識データによって、ユーザの経路に影響を与える分離帯のみを表示している。
【0063】
分離帯S91には、図示するように、種別、位置等に加え、進入L、退出Lが4組、該当L、該当N、関連Lのデータが設定されている。
ユーザが現在位置P81にいる場合を考える。この時は、現在LはリンクL92となる。従って、進入L[1](=L92、L98)と現在L(=L92)が一致するため、条件1(図6のステップS34参照)を満たすことになり、視認性向上態様で表示される。
【0064】
しかし、ユーザが現在位置P81にいる時点では、既に表示された経路G91を外れてしまっている。分離帯は、ノードN91に至る前のリンクL91にいる時点で表示されていることが好ましい。
かかる観点から、分離帯S91には関連LとしてL91を設定した。この結果、ユーザが現在位置P91にいる場合は、現在LがリンクL91となり、条件3を満たすため、中間態様で分離帯が表示される。従って、ユーザは分離帯S91の存在に気づき、経路G91に沿って通行することが好ましいと判断することができる。
【0065】
関連Lを用いると、このようにユーザに対して事前に必要な情報を表示することが可能となる。本実施例では、経路探索がなされている場合には、経路上のいずれかのリンクが関連リンクに該当する標識を中間態様で表示する処理を行っている(図6のステップS38参照)。この処理を適用することにより、分離帯S91は、ユーザがリンクL91に到達する前から中間態様で表示されるため、十分前もってユーザに情報を表示することが可能となる。
【0066】
関連リンクによる表示は、分離帯に限らず有効活用することができる。例えば、図10中のリンクL96に、進入禁止の標識S92が設置されているとする。ユーザは、この標識S92がなければ、ノードN94で経路G91を外れ、リンクL96、L93を通ろうと考えるかも知れない。この意味で、標識S92はユーザに対して事前に表示されることが好ましい。
このような場合に、標識S92の関連リンクとしてリンクL91を与えておけば、ユーザがリンクL91に到達した時点で、標識S92を中間態様で表示させることができる。また、経路探索が行われている場合には、上述した経路リンクと関連リンクとの比較による表示態様の設定(図6のステップS38)によって、さらに事前に標識S92を表示することが可能となる。
【0067】
D4.その他の表示例:
関連リンクは、さらに種々の態様で利用可能である。
一例として図4に示した集落ARに対する例が挙げられる。集落AR内の標識について関連リンクとしてリンクL42を設定しておくことにより、ユーザの現在位置が集落ARから遠方にある場合でも、それらの標識を中間態様で表示させることが可能となる。
【0068】
集落ARを、中華街や電気店街などの区域と考えて利用することもできる。中華街等に向かうユーザは、中華料理店等の店舗の情報や駐車場の情報を欲していると考えられる。従って、これらの店舗や駐車場を表す看板等を標識データとして用意し、関連リンクとして中華街等に入る道路(図4のリンクL42に相当する)を関連リンクと設定しておくことにより、ユーザに店舗や駐車場等の情報を表示することができる。
中華街等に向かうユーザが種々の設定や入力を行って、店舗や駐車場の所在情報を取得する技術は、従来から種々表示されている。これに対し、関連リンクを用いた技術では、ユーザがこのような設定や入力を行うまでもなく情報が表示される利点がある。
実施例では、関連リンクによって、中間態様での表示を行うか否かの切り替えを行う例を示しているが、関連リンクとともに、表示態様の設定を標識データに記録しておくことにより、更に多様な表示を可能としてもよい。
【0069】
以上で説明した本実施例の通行支援システムによれば、標識類データを設定しておくことにより、ユーザにとって必要度の高い情報を視認性向上態様で表示することができる。
また、必要度の低い情報を、視認性が低い態様で表示することにより、地図表示の煩雑化を回避することができる。必要度の低い情報を完全に非標示としても構わない。ただし、視認性を抑えながらも表示を行えば、ユーザは表示された標識類の情報を目印にして通行するなどの態様で活用できる点で好ましい。
更に、関連リンクを用いる場合には、その設定によって、ユーザが種々の設定や入力等を行わなくても、必要性が高いと推測される情報を表示することができる。
【0070】
<実施例2>
実施例1は、表示する所定範囲内に位置する標識を抽出し、抽出した標識のそれぞれについて(条件1)〜(条件4)の判定を実行して表示態様を決定するものであった。これに対し、実施例2では、現在位置に対応するリンクまたはノードに関連づけられている標識について(条件1)〜(条件4)の判定を実行して表示態様を決定する。実施例2については、前述した実施例1と異なる点についてのみ説明し、同様の構成要素については同一の参照符を用いて重複する説明を省略するものとする。
【0071】
図11および図12を用いて実施例2における標識類データおよびリンクデータについて説明する。図11に示す各標識には、図12(a)に示すように固有の標識IDがそれぞれ付与されている。そして、図12(b)に示すように、標識類データにおいて進入リンク(L)、退出リンク(L)、該当リンク(L)、関連リンク(L)のいずれかとして対応付けされているリンクのリンクデータには、関連性のある標識であることを示す関連標識として各標識の標識IDが含まれている。また、図12(c)に示すように、標識類データにおいて該当ノード(N)として対応付けされているノードのノードデータには、関連性のある標識であることを示す関連標識として各標識の標識IDが含まれている。
【0072】
また、実施例2においては、ステップS32のときに、CPUは、現在Lの関連標識として記録されている標識IDを参照して現在Lに対応する標識を抽出するとともに、次Nの関連標識として記録されている標識IDを参照して次Nに対応する標識を抽出する。
【0073】
例えば、図7の表示例について実施例2の処理方法を適用すると、現在LであるリンクL71の関連標識とされている標識は抽出されず、次NであるノードN71の関連標識とされている標識S71,S72が抽出される。なお、実施例2の処理方法によると、標識S73は抽出されない。また、図8の表示例について実施例2の処理方法を適用すると、現在LであるリンクL73の関連標識とされている標識S71a,S72a,S73が抽出される。また、標識S71aは、次NであるノードN71の関連標識とされている標識としても抽出される。なお、実施例2の処理方法によると、標識S73は抽出されない。また、図9(a)の表示例について実施例2の処理方法を適用すると、現在LであるリンクL101の関連標識であり、次NであるノードN101の関連標識である標識S101が抽出される。また、図9(b)の表示例について実施例2の処理方法を適用すると、現在LであるリンクL102の関連標識とされている標識はないので、標識は抽出されない。また、図10の表示例について実施例2の処理方法を適用すると、現在LがリンクL91,L92であるときにはいずれも関連標識とされている標識S91が抽出される。
【0074】
そして、実施例2においては、ステップS34のときに、CPUは、ステップS32で抽出した標識について(条件1)〜(条件4)の判定を実行して表示態様を決定する。なお、実施例2においても、実施例1と同様に現在位置が含まれる所定範囲に位置する標識を抽出するものであるが、この所定範囲に位置する標識のうち、ステップS32で抽出した標識以外のものについては、非表示とする。
【0075】
このように、実施例2によれば、リンクデータ、ノードデータに標識を特定するためのデータを含むようにしておいて、現在位置に対応するリンクまたはノードに関連づけられている標識について所定の条件に応じた表示態様を決定することにしているので、判定する処理の対象となる標識の数が少なくなり、標識類表示処理に要する時間を短縮することができる。
【0076】
また、実施例2においては、図13に示すように、標識類データに各標識を表示するためのデータも追加して含まれる。「向き」は標識を視認可能な方向の情報であり、「位置」は標識の表示位置または実際に設置されている場所の情報であり、「高さ」は標識が設置されている高さの情報であり、「画像情報」は表示に用いる画像のデータである。このようなデータを含むことにより、実施例1と同様に現在位置が含まれる所定範囲内に位置する標識を抽出することもできる。
【0077】
本発明は、必ずしも上述した実施例の全ての機能を備えている必要はなく、一部のみを実現するようにしてもよい。また、上述した内容に追加の機能を設けてもよい。
本発明は上述の実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、実施例においてハードウェア的に構成されている部分は、ソフトウェア的に構成することもでき、その逆も可能である。
また、表示態様も実施例で説明した例に限定されず、種々の設定が可能である。例えば、中間態様を視認性向上態様と共通としてもよい。標準態様は非表示としてもよい。表示態様を更に細分化し、標識、分離帯、案内板や看板などの種別によって変化させてもよい。
【0078】
また、前述した実施例2では、現在Lおよび次Nに関連する標識のみを抽出する仕様を例に説明しているが、これとは別の仕様の例、例えば、経路上の数リンク先のリンクまで現在Lと同様に扱う仕様とすることも可能である。
【0079】
本発明は、以下に示す通行支援方法として構成してもよい。
道路をノードおよびリンクで表したネットワークデータと、道路の通行時にユーザに表示されるべき標識類について、位置および案内内容を記憶する標識類データとを格納する地図データベース記憶部を有するコンピュータによって、地図とともに案内標識類を表示して道路の通行を支援する通行支援方法であって、
前記標識類データは、それぞれの標識類について、前記ノード、リンクと関連づけてその表示態様を制御する情報を記憶しており、
前記通行支援方法は、
ユーザの現在位置を取得する現在位置取得ステップと、
前記現在位置が該当するリンク、ノードに基づいて、前記標識類データを参照して決定される表示態様で、前記標識類を地図上に表示する案内ステップとを備える通行支援方法である。
【0080】
また次に示すコンピュータプログラムとして構成してもよい。
道路をノードおよびリンクで表したネットワークデータと、道路の通行時にユーザに表示されるべき標識類について、位置および案内内容を記憶する標識類データとを格納する地図データベース記憶部を有するコンピュータによって、地図とともに案内標識類を表示して道路の通行を支援するためのコンピュータプログラムであって、
前記標識類データは、それぞれの標識類について、前記ノード、リンクと関連づけてその表示態様を制御する情報を記憶しており、
ユーザの現在位置を取得してメモリに記憶する現在位置取得機能と、
前記現在位置が該当するリンク、ノードに基づいて、前記標識類データを参照して決定される表示態様で、前記標識類を地図上に表示する案内機能とをコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラムである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、道路を通行するユーザに対して、規制情報を表示することにより、その通行を支援するために利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
100…ナビゲーション装置
101…主制御部
102…送受信部
103…コマンド入力部
104…GPS入力部
105…地図データベース記憶部
106…表示制御部
107…経路探索部
200…サーバ
201…送受信部
202…データベース管理部
210…地図データベース記憶部
211…地物データ
212…文字データ
213…ネットワークデータ
214…標識類データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図とともに案内標識類を表示して道路の通行を支援する通行支援システムであって、
道路をノードおよびリンクで表したネットワークデータと、道路の通行時にユーザに表示されるべき標識類について、位置および案内内容を記憶する標識類データとを格納する地図データベース記憶部と、
ユーザの現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記標識類を地図上に表示する案内部とを備え、
前記地図データベース記憶部に格納されている標識類データは、それぞれの標識類について、前記ノードおよびリンクの少なくとも一方と関連づけてその表示態様を制御する情報を記憶しており、
前記案内部は、前記現在位置に対応するリンクまたはノードに基づいて、前記標識類データを参照して決定される表示態様で表示することを特徴とする、通行支援システム。
【請求項2】
請求項1記載の通行支援システムであって、
出発地および目的地を入力する入力部と、
前記地図データベース記憶部を参照して、前記出発地から前記目的地までの経路探索を行う経路探索部とを有し、
前記案内部は、前記探索された経路を表示するとともに、前記現在位置および前記経路に基づいて定まるユーザの進行方向に基づいて前記表示対象となる標識類を決定する通行支援システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の通行支援システムであって、
前記標識類データは、前記道路の通行を規制する標識類の情報を有しており、
前記案内部は、前記現在位置から所定範囲にある標識類のうち、ユーザの将来の進行方向を規制することになる標識類の視認性を高めて表示する通行支援システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−227071(P2011−227071A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74284(P2011−74284)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【Fターム(参考)】