説明

通話装置

【課題】通話中に自身の位置情報を入力することなく、通話相手のいる方向から相手の音声を出力し、かつ通話相手との距離に応じて相手の音声の音量が変化する通話装置を提供する。
【解決手段】通話装置のユーザの位置及びユーザの向いている方向を自動的に取得し、これらの情報と、通話相手から送られてきた通話相手の位置情報と、に基づいて通話相手のいる方向を特定して、この通話相手のいる方向から通話相手の音声が聞こえるように音声処理して、左右別系統のスピーカや、左右別系統のスピーカ(イヤホン)を備えたヘッドホン音声を再生する。また、通話相手との距離を特定して、距離に応じて相手の音声の音量を変化させるように音声処理を行う。この通話装置を使用することで、待ち合わせ場所などで通話相手の居場所がわからない時などに、相手と会話しながら容易に相手を見つけ出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通話相手のいる方向から音声を再生する通話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通話相手の相対方向を検出して、通話音声を3次元音場における通話相手の相対方向に定位させて再生する通話装置があった(例えば、特許文献1参照。)。この通話装置は、相手から通知される電話番号(市外局番等)の情報や、ユーザが通話機を操作して入力した自身の位置などに基づいて、通話相手の相対方向を計算により決定する。そして、この通話装置は、決定した相対方向の情報に基づいて、通話相手の音声を3次元音場に定位して、相手の音声を再生する。ユーザは、特許文献1に記載の通話装置を使用することで、LCDなどの表示装置に表示された地図情報などを確認することなく、通話相手の相対方向を把握できる。
【特許文献1】特開2000−184017号公報(第4−7頁、第1−6図)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の通話装置では、前記のように相手から通知される市外局番等の電話番号情報に基づいて相手の位置を特定するため、固定電話を使用する相手と通話する場合は問題ないが、携帯電話を使用する相手と通話する際には、通話相手の相対方向を決定できないという問題があった。これは、周知のように携帯電話が移動可能な端末であるため、電話番号だけでは相手の位置が特定できないからであった。
【0004】
また、特許文献1に記載の通話装置では、前記のように通話相手のいる方向を確認するために、その都度立ち止まって地図を確認する必要はないが、その代わりにユーザが自身の位置を入力しないといけない。また、ユーザが相手先と通話しながら移動していた場合、相手との相対位置が変化するため、所定の間隔で自身の位置情報を変更する入力を行わなければならない。そのため、ユーザは、自身の位置を入力する度に、立ち止まって通話装置を操作しなければならないという問題があった。さらに、ユーザが不案内な場所で相手と通話する場合、ユーザは通話装置にユーザの位置情報を入力することができないため、通話相手の相対方向を決定できないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みて成されたものであり、通話中に自身の位置情報を入力することなく、通話相手のいる方向から相手の音声を出力し、かつ通話相手との距離に応じて相手の音声の音量が変化する通話装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
【0007】
(1)ユーザの位置情報を取得する位置取得手段と、
前記ユーザの音声、及び前記ユーザの位置情報を通話相手に送信するとともに、前記通話相手から送られてきた音声、及び前記通話相手の位置情報を受信する通信手段と、
前記ユーザの位置情報、及び前記通話相手の位置情報に基づいて前記ユーザに対する前記通話相手の方向を求めて、この方向から聞こえ、かつ、前記通話相手との距離に応じて前記通話相手の音声の音量が変化するように前記通話相手の音声を再生する音声再生手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成においては、通話装置が、ユーザの位置を自動的に取得し、この情報と、通話相手から送られてきた通話相手の位置情報と、に基づいてユーザに対する通話相手の方向を特定する。そして、通話装置は、例えば据え置きタイプのスピーカなどから、この通話相手のいる方向から通話相手の音声が聞こえるように、かつユーザと通話相手との距離に応じて前記通話相手の音声の音量を変化させて通話相手の音声を再生する。したがって、通話装置のユーザは、自分の位置を入力することなく容易に、通話相手のいる方向を特定することができる。また、この通話装置を使用することで、待ち合わせ場所などで通話相手の居場所がわからない時などに、相手と会話しながら容易に相手を見つけ出すことができる。また、通話相手との距離が近くなると通話相手の音声の音量が大きくなり、通話相手との距離が遠くなると通話相手の音声の音量が小さくなるように設定することで、通話しながら相手を探す場合などに、音声の聞こえてくる方向と音声の音量の大小とで通話相手のいる位置を推測できる。
【0009】
(2)前記ユーザが向いている方位の情報を取得する方位取得手段を備え、前記音声再生手段は、前記方位取得手段で取得した方位の情報に基づいて、通話相手のいる方向から前記通話相手の音声を再生することを特徴とする。
【0010】
音声再生手段が、通話装置に設けられたスピーカであったり、ユーザが装着するヘッドホンやイヤホンであったりすると、ユーザの向いている方向に応じて通話相手のいる方向が異なった方向となる。この構成においては、方位取得手段によってユーザが向いている方位の情報を取得できるので、音声再生手段が上記のようにユーザの向きに応じて変化しても、通話相手のいる方向から通話相手の音声が聞こえるように再生することができる。
【0011】
(3)前記位置取得手段は、衛星による汎地球測位システムであるGPSを用いて位置情報を取得することを特徴とする。
【0012】
GPSを用いるとユーザの位置情報の精度を高くすることができるので、通話相手の音声を正確に通話相手のいる方向から聞こえるようにすることができる。
【0013】
(4)前記通信手段は、前記ユーザが向いている方向に応じて、前記ユーザの音声の音量を変化させて送信することを特徴とする。
【0014】
この構成においては、ユーザが向いている方向をユーザの音声の音量の大小で通話相手に伝えることができ、例えば、ユーザが通話相手のいる方向を向いた時に音声の音量が最大になるように設定すると、通話相手はユーザの音声の音量の大小を聞き分けながら、ユーザの進む方向を誘導することができる。また、複数の人数で同時に会話している場合に、他の相手に話を聞かれずに特定の相手とだけひそひそ話をすることが可能になる。
【0015】
(5)前記通信手段は、前記通話相手が指定した上下角度情報を送信し、
前記音声再生手段は、通話相手から送られてきた上下角度情報に基づき、前記通話相手がいる方向であって前記通話相手が指定した上下角度から聞こえるように前記通話相手の音声を再生することを特徴とする。
【0016】
この構成においては、例えば通話相手がユーザにお詫びをするために斜め下の方向(例えば斜め下45度の方向)から音声を再生するように指定していた場合、通話装置からは通話相手のいる方向であって、かつ斜め下の方向から通話相手の音声が聞こえる。したがって、ユーザは通話相手の気持ちを把握することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0018】
(1)通話装置のユーザは、自分の位置を入力することなく容易に、通話相手のいる方向を特定することができる。また、この通話装置を使用することで、待ち合わせ場所などで通話相手の居場所がわからない時などに、相手と会話しながら容易に相手を見つけ出すことができる。また、通話相手との距離が近くなると通話相手の音声の音量が大きくなり、通話相手との距離が遠くなると通話相手の音声の音量が小さくなるように設定することで、通話しながら相手を探す場合などに、音声の聞こえてくる方向と音声の音量の大小とで通話相手のいる位置を推測できる。
【0019】
(2)音声再生手段が、通話装置に設けられたスピーカであったり、ユーザが装着するヘッドホンやイヤホンであったりすると、ユーザの向いている方向に応じて通話相手のいる方向が異なった方向となる。この構成においては、方位取得手段によってユーザが向いている方位の情報を取得できるので、音声再生手段がユーザの装着するヘッドホンやイヤホンの場合、ユーザの向きに応じて音声再生手段の向きが変化しても、通話相手のいる方向から通話相手の音声が聞こえるように再生することができる。
【0020】
(3)GPSを用いるとユーザの位置情報の精度を高くすることができるので、通話相手の音声を正確に通話相手のいる方向から聞こえるようにすることができる。
【0021】
(4)ユーザが向いている方向をユーザの音声の音量の大小で通話相手に伝えることができ、例えば、ユーザが通話相手のいる方向を向いた時に音声の音量が最大になるように設定すると、通話相手はユーザの音声の音量の大小を聞き分けながら、ユーザの進む方向を誘導することができる。また、複数の人数で同時に会話している場合に、他の相手に話を聞かれずに特定の相手とだけひそひそ話をすることができる。
【0022】
(5)通話相手が音声を再生する上下角度を指定できるので、通話相手に気持ちを伝えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
まず、本発明の実施形態に係る通話システムの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る通話システムの概略構成を示したブロック図である。図1に示すように、通話システム1は、通話装置である携帯電話機2・携帯電話機3、携帯電話機4、固定電話機5、インターネット電話機6、無線基地局7a・無線基地局7b、位置管理装置8、及び家電装置9がそれぞれ外部ネットワーク10に接続された構成である。
【0024】
携帯電話機2・携帯電話機3は、ユーザが携帯可能な電話機であり、無線基地局7aまたは無線基地局7bを介して外部ネットワーク10に接続された他の電話機と1対1で通話したり、複数の電話機間で通話したりすることができる。また、携帯電話機2・携帯電話機3は、ユーザの位置情報、ユーザの方位情報、通話相手の位置情報などを取得できる。さらに、携帯電話機2・携帯電話機3は、通話相手のいる方向から呼び出し音や通話相手の音声を再生できる。
【0025】
携帯電話機4は、ユーザが携帯可能な電話機であり、無線基地局7aまたは無線基地局7bを介して外部ネットワーク10に接続された他の電話機と1対1で通話したり、複数の電話機間で通話したりすることができ、呼び出し音や通話相手の音声をモノラルで再生する。また、携帯電話機4は、位置管理装置8が携帯電話機4の最寄りにある無線基地局の位置情報から割り出した携帯電話機4の位置情報を、位置管理装置8から取得することができる。また、位置管理装置8は、上記のようにして割り出した携帯電話機4の位置情報を他の電話機に通知することができる。
【0026】
固定電話機5は、外部ネットワーク10の一部である公衆交換電話網に接続された固定電話であり、自身の電話番号を相手に通知する機能を備えている。
【0027】
インターネット電話機6は、外部ネットワーク10の一部であるインターネットを介して、他の電話機と通話することができる。
【0028】
無線基地局7a・無線基地局7bは、携帯電話機2、携帯電話機3、及び携帯電話機4と、電波で信号やデータのやりとりを行うためのものである。
【0029】
位置管理装置8は、携帯電話機2、携帯電話機3、及び携帯電話機4と、通信可能な無線基地局の位置情報などを管理する。
【0030】
家電装置9は、冷蔵庫や洗濯機のような家庭用の電化製品である。家電装置9は、伝達事項が発生した場合にユーザの電話機に対して発呼して、伝達事項をユーザに伝える機能を備えている。
【0031】
外部ネットワーク10は、接続された各装置間で通話音声データ、情報データ、制御信号などをやりとりするための通信網である。
【0032】
次に、本発明の実施形態に係る通話装置である携帯電話機2・携帯電話機3の構成を説明する。携帯電話機2は、位置情報取得部11、方位情報取得部12、通信部13、音声入出力部14、マイク14a、スピーカ14b、左右別系統のスピーカを有するヘッドホン14c、表示部15、操作部16、記憶部17、及び制御部18を備えている。
【0033】
携帯電話機3は、位置情報取得部21、方位情報取得部22、通信部23、音声入出力部24、マイク24a、スピーカ24b、左右別系統のスピーカを有するヘッドホン24c、表示部25、操作部26、記憶部27、及び制御部28を備えている。
【0034】
ここで、携帯電話機2及び携帯電話機3は同じ構成であるため、携帯電話機2の各部についてのみ説明する。
【0035】
位置情報取得部11は、携帯電話機2の位置を特定するための情報を取得するためのものである。位置情報取得部11には、GPS(Global Positioning System )アンテナ11aが接続されており、複数のGPS衛星31から発信された電波を受信して携帯電話機2の位置を特定する。位置情報取得部11は、位置情報として経度及び緯度のデータを制御部18へ出力する。なお、GPSは、周知のように、複数のGPS衛星から発信された電波を受信して位置を特定する汎地球測位システムである。
【0036】
なお、位置情報取得部11には、GPSを利用して位置情報を取得する構成に限らず、別の周知技術を用いた構成であっても良い。例えば、位置情報取得部11が、携帯電話機2と通信する無線基地局7aや無線基地局7bの位置情報に基づいて、携帯電話機2の位置情報を特定するようにしても良い。この場合、携帯電話機2では、最寄りの無線基地局の位置情報を自身の位置とすることもできるし、複数の無線基地局との位置関係から自身の位置を特定することもできる。また、GPS及び無線基地局の位置情報を組み合わせるようにしても良い。もちろん、位置情報取得部11が、別の位置情報特定技術を利用して携帯電話機2の位置を特定するように構成しても良い。
【0037】
方位情報取得部12は、地磁気センサまたはジャイロセンサを備えており、携帯電話機2を使用するユーザの向いている方向を特定することができる。方位情報取得部12は、基準方向として設定された方向(例えば、北)とユーザの向いている方向との差を示す角度データを制御部18へ出力する。方位情報取得部12は、携帯電話機2に内蔵された構成でも良いし、ヘッドホン14cの上部などに設けた構成でも良い。また、方位情報取得部12は、特に携帯電話機3に内蔵される場合、携帯電話機2の向きに応じてユーザとの位置関係を補正できるように構成すると良い。例えば、電話機の操作部16を操作することで、ユーザの向き(正面)と携帯電話機2の向きとの位置関係を設定することができる正面位置設定スイッチを、携帯電話機2に設けておくと良い。これにより、ユーザは、携帯電話機2をシャツの胸ポケットなどに収納してから携帯電話機2の操作部16を操作することで、自身の向く方向を携帯電話機2に正しく検出させることができる。
【0038】
通信部13は、無線基地局7aや無線基地局7bと電波による通信を行い、外部ネットワーク10に接続された他の装置と通信する。
【0039】
音声入出力部14は、マイク14aから入力された音声の処理、及び外部ネットワーク10や制御部18から送られてきた音声データを処理してスピーカ14bまたはヘッドホン14cに出力する。
【0040】
マイク14aは、ユーザの声などの音声を入力するためのものである。
【0041】
スピーカ14bは、複数のスピーカを備えており、左右別系統のスピーカから構成され、外部ネットワーク10に接続された機器から送られてきた音声データや呼び出し音などを立体的に再生する。なお、スピーカ14bは、携帯電話機2に内蔵されたタイプであっても良いし、据え置きタイプのスピーカと有線伝送方式や無線伝送方式で音声入出力部14と音声データをやりとりする構成であっても良い。
【0042】
ヘッドホン14cは、左右別系統のスピーカ(イヤホン)を有しており、スピーカ14bと同様に、外部ネットワーク10に接続された機器から送られてきた音声データや呼び出し音などを立体的に再生する。
【0043】
表示部15は、ユーザに伝達する事項や通話相手などから送られてきた電話番号などを表示する。
【0044】
操作部16は、ユーザが携帯電話機2に対して様々な操作を行うためのものである。ユーザは、例えば、相手の電話番号を入力したり、ユーザの向き(正面)と携帯電話機2の向きとの位置関係を設定したりすることができる。
【0045】
記憶部17は、携帯電話機2の制御部18で動作させる音声処理や各部の制御などのプログラム、位置情報取得部11が取得した位置情報、方位情報取得部12が取得した方位情報、通信部を介して送られてきた通話相手の位置情報などを記憶する。また、記憶部17は、複数のユーザの電話番号と、各ユーザの名前・住所・住所の緯度及び経度、IPアドレスなどと、を関連づけて登録した電話番号データベースを記憶している。
【0046】
制御部18は、携帯電話機2の各部の動作を制御する。また、制御部18は、位置情報取得部11が取得した位置情報、方位情報取得部12が取得した方位情報、通信部13を介して送られてきた通話相手の位置情報に基づいて携帯電話機2に対する通話相手の方向を求める。また、制御部18は、この通話相手の方向情報に基づいてスピーカ14bやヘッドホン14cから出力する音声のバランスや音量などを制御する。
【0047】
なお、携帯電話機2に対して、特開平9−200897号公報の音場効果装置に開示されている技術を適用すると良い。これにより、ユーザは、携帯電話機2に設けた2個のスピーカを備えたヘッドホンを使用してマルチスピーカシステムと同様の音場効果を得ることができる。また、携帯電話機2に対して、特開平10−23600号公報の音像定位装置に開示されている技術を適用するようにしても良い。これにより、ユーザは、左右別系統のスピーカを備えたヘッドホンを使用して、周囲の任意の方向(仮想発音位置)から音声が聞こえるような音場効果を得ることができる。
【0048】
ここで、携帯電話機4は、本発明の実施形態に係る通話装置とは異なる電話機であるが、携帯電話機2と通話する動作について後述するので、その構成を説明しておく。携帯電話機4は、表示部31、通信部33、音声入出力部34、マイク35、スピーカ36、操作部38、記憶部39、及び制御部40を備えている。
【0049】
表示部31は、ユーザに伝達する事項や通話相手などから送られてきた電話番号などを表示する。
【0050】
通信部33は、無線基地局7aや無線基地局7bと電波による通信を行い、外部ネットワーク10に接続された他の装置と通信する。
【0051】
音声入出力部34は、マイク35から入力された音声の処理、及び外部ネットワーク10から送られてきた音声データを処理してスピーカ36に出力する。
【0052】
マイク35は、ユーザの声などの音声を入力するためのものである。スピーカ36は、通話相手の音声や呼び出し音などを再生するモノラルスピーカを備えている。
【0053】
操作部38は、ユーザが携帯電話機4に対して様々な操作を行うためのものである。ユーザは、例えば、相手の電話番号を入力したり、別の操作を行ったりすることができる。
【0054】
記憶部39は、携帯電話機4の制御部40用制御プログラムや、通信部を介して送られてきた通話相手の電話番号情報などを記憶する。制御部40は、携帯電話機4の各部の動作を制御する。
【0055】
次に、本発明の実施形態に係る通話装置の機能及び動作について説明する。なお、以下の説明では主に携帯電話機2について説明するが、携帯電話機3はもちろん携帯電話機2と同様の機能を有しているので、携帯電話機2と同様に動作する。
【0056】
携帯電話機2は、通話相手の位置情報と、自身の位置情報と、自身の方位情報(ユーザの向いている方向)と、に基づいて、自身に対する相手の相対位置を求める。携帯電話機2は、通信部13を介して通話相手の位置情報を取得する。すなわち、
a.通話相手の電話機が自身の位置を特定して位置情報を送信する機能を備えている場合は、通話相手が発呼時や通話中などに送信した位置情報に基づいて、相手の位置を特定する。
【0057】
b.相手の電話機が自分の電話番号を送信する機能を備えている固定電話の場合は、通話相手が送信してきた電話番号情報を取得する。携帯電話機2は、電話番号の市外局番や市内局番と場所とを関連づけた局番データベースや、電話番号と、ユーザの名前・住所・住所の緯度及び経度などと、を関連づけて登録した電話番号データベースを記憶部17で記憶しているので、これらのデータベースを利用(検索)して通話相手の位置を特定する。
【0058】
c.通話相手の電話機が自身のIPアドレスを送信する機能を備えているインターネット電話の場合は、通話相手が送信してきたIPアドレスを取得する。携帯電話機2は、電話番号データベースを検索して、IPアドレスの情報に関連づけられたユーザの位置情報から相手の位置を特定する。
【0059】
d.相手の電話機が位置情報を送信する機能のない携帯電話の場合は、位置管理装置8から通話相手の電話機における最寄りの無線基地局の情報を取得して、通話相手のおよその位置を特定する。周知のように携帯電話は最寄りの無線基地局と所定の間隔で通信しており、電話会社は各携帯電話と通信可能な無線基地局の位置を把握しているので、この情報を利用する。
【0060】
e.相手の電話機が自分の電話番号及び位置情報を非通知の場合は、相手の位置は特定できない。但し、相手が電話番号は非通知であるが位置情報の通知を了承している場合には、通話相手の位置情報を位置管理装置8などから取得して、相手のおよその位置を特定する。
【0061】
携帯電話機2は、上記のようにして取得した相手の電話機の位置情報と、位置情報取得部11及び方位情報取得部12で取得した携帯電話機2のユーザの位置情報及び方位(向き)情報と、に基づいて、相手の方向や相手との距離を求める。そして、これらの情報に基づいて相手側の音声や自身の音声を処理して、スピーカ14bやヘッドホン14cから再生させる。
【0062】
携帯電話機2は、以下の音声処理機能を備えている。
【0063】
[機能1]
携帯電話機2は、電話をかけてきた相手や通話相手のいる方向から呼び出し音や相手の音声が聞こえるように設定できる。すなわち、携帯電話機2は、複数のGPS衛星31からの電波を常時または所定の間隔で、位置情報取得部11のGPSアンテナ11aで受信し、自身の位置を特定する。また、携帯電話機2は、常時または所定の間隔で方位情報取得部12から出力される方位情報に基づいてユーザの向きを取得する。そして、制御部18は、この自身の位置情報及び方位情報を記憶部17で記憶し、常時または所定の間隔で位置情報を更新している。また、携帯電話機3の制御部28は、発信者が携帯電話機2に対して電話をかける場合、位置情報取得部21で取得し、記憶部27に保持している自身の位置情報を携帯電話機2に対して送信する。携帯電話機2は、携帯電話機3の位置情報を受信すると、この携帯電話機3の位置情報、自身の位置情報、及び自身の方位情報に基づいて相手の方向を特定する。
【0064】
相手の方向の具体的な求め方は、以下の通りである。図2は、電話機の位置関係を示した図である。図2に示すように、携帯電話機2の制御部18は、まず、携帯電話機2のユーザ(受信者)の位置を原点として設定する。また、制御部18は、携帯電話機3の位置情報に基づいて、携帯電話機3の位置を携帯電話機2に対する相対的な位置に設定する。そして、制御部18は、方位情報取得部12で取得した方位情報を北の方向(基準方向)との角度αに設定する。続いて、制御部18は、携帯電話機3の位置と携帯電話機2の位置とから携帯電話機3の北の方向(基準方向)に対する角度βを求める。そして、角度αと角度βとを合計した角度θを求める。この角度θが受信者に対する発信者の方向である。制御部18は、この角度θに基づいて携帯電話機2の呼び出し音が携帯電話機3の方向から聞こえるように調整した音声データを音声入出力部14に出力する。そして、音声入出力部14は、携帯電話機2に対する携帯電話機3の方向から音声が聞こえるように、携帯電話機2のスピーカ14bやヘッドホン14cから通話相手の音声や呼び出しなどを再生する。
【0065】
この時、携帯電話機2の制御部18は、方位情報取得部12で受信者の向く方向を連続的に検出し、この情報に基づいて呼び出し音が聞こえる位置(方向)を変更する。例えば、受信者の左側から呼び出し音が聞こえている場合に、受信者が左の方向に体を回転させると、制御部18は、この動きを方位情報取得部12で検出して、呼び出し音の聞こえる位置がユーザの左側から正面に移動するように音声処理を行う。なお、携帯電話機2は、機能1のみが設定されている場合、音声が聞こえる位置を変更する音声処理のみを行い、後述する音量を変化させる音声処理は行わない。このように、携帯電話機2は、相手のいる方向から呼び出し音や相手の音声が聞こえるようにすることができるので、携帯電話機2のユーザは相手がいる方向を容易に特定できる。
【0066】
なお、スピーカ14bが据え置きタイプの場合、ユーザの向きにかかわらずスピーカ14bの向きは固定されているので、スピーカ14bの向きを記憶部17に予め記憶させておくことで、通話相手の位置情報と自身の位置情報とを取得することで、携帯電話機2に対する携帯電話機3の相対方向から通話相手の音声や呼び出し音などを再生することができる。
【0067】
[機能2]
携帯電話機2は、電話をかけてきた相手や通話相手との距離に応じて、相手から送信される音量が変化するように設定できる。すなわち、携帯電話機2の制御部18は、相手の携帯電話機3から送信された位置情報と位置情報取得部11で取得した自身の位置情報とに基づいて、携帯電話機3との距離を求める。そして、制御部18は、予め設定した計算式に基づいて音声処理を行い、音声入出力部14を介してスピーカ14bやヘッドホン14cから相手の音声を出力する。例えば、相手との距離に応じて、相手との距離が短くなるほど音量が大きくなるように音声処理を行う。この場合、通話中のユーザ同士が徐々に近づくと、当然通話相手の声が大きくなる。したがって、相手と待ち合わせをした場合に、このモードを設定することで、相手のいる方向から相手の声が聞こえるとともに、相手に近づくほど相手の音声が大きくなるので、ユーザは、簡単に相手を見つけ出すことができる。
【0068】
[機能3]
携帯電話機2は、電話をかけてきた相手や通話相手のいる方向に対する携帯電話機2のユーザの向きに応じて、相手から送信される音量が変化するように設定できる。例えば、携帯電話機2のユーザが、通話中に相手の声が聞こえる方向に向きを変えるのに連れて、相手の声が徐々に大きく聞こえるようになり、相手と対峙する向きの時に音量が最大となるように設定した場合、携帯電話機2のユーザが相手の声が聞こる方向を向くと、制御部18は方向情報取得部12で、ユーザが向きを変えるのを検出する。そして、制御部18は、予め設定した計算式に基づいて音声処理を行い、ユーザの向きに応じて相手の音声の大小を制御する。ユーザは、声の聞こえる方向に体を回転させると、徐々に相手の声が大きく聞こえるようになり、相手の声が聞こえる方向を向いた時に聞こえてくる音声が最大になる。これにより、ユーザは、相手と直接会話しているような感覚を得ることができる。
【0069】
ここで、携帯電話機2に機能1乃至機能3が設定されていた場合、携帯電話機2の制御部18は、例えば以下のような計算式に基づいて音声処理を行う。
【0070】
基本設定された音量をv、相手との距離をD、相手との相対角度をθ(−π<θ<π)とすると、
再生音量Vo=(v/D)・|cos(θ/2)|
という式などに基づいて音量を調整する。
【0071】
また、携帯電話機2では、複数の相手と同時に通話中に、特定の相手の方向を向くことで、別の相手には携帯電話機2のユーザの声が聞こえにくくなるので、特定の相手とだけひそひそ話をすることができる。
【0072】
[機能4]
携帯電話機2は、電話をかけてきた相手や通話相手のいる方向に対する携帯電話機2のユーザの向きに応じて、相手に対して送信する音声データの音量が変化するように設定することができる。
【0073】
例えば、携帯電話機4のユーザ(以下、発信者と称する。)から携帯電話機2のユーザ(以下、受信者と称する。)へ電話をかけて通話する場合、まず、携帯電話機2は、位置管理装置8から携帯電話機4に最も近い基地局の情報を取得して携帯電話機4の位置を特定する。そして、携帯電話機2の制御部18では、通話中に受信者が携帯電話機4の方向を向くと、携帯電話機4に対して送信する音声データの音量が最大になるよう音声処理を行う。また、制御部18は、受信者が携帯電話機4と異なる方向を向くのに連れて、携帯電話機4へ送信する音声データの音量が小さくなるように音声処理を行う。このような処理を行うように設定することで、受信者が向いている方向を受信者の音声における音量の大小で通話相手である発信者に伝えることができ、発信者は受信者の音声における音量の大小を聞き分けながら、受信者の進む方向を誘導することができる。また、携帯電話機2のユーザは、複数の相手と同時通話している場合、この機能を使用することで、特定の人に対して呼びかけを行っているように体感させることができる。
【0074】
また、携帯電話機2(受信側)は、携帯電話機3(送信側)と通話する場合には、携帯電話機3から送られてきた通話相手の位置情報や方位情報に基づいて、携帯電話機2(受信側)が音量調整処理を行うように設定することもできる。すなわち、送信者が向いている方向などの情報を送信側から受信側へ送信し、受信側で音量調整を行うようにすることもできる。この場合、受信側だけで音量調整機能のオン/オフの切替が可能となる。
【0075】
さらに、固定電話機5のユーザが携帯電話機2のユーザへ電話をかけて通話する場合は、携帯電話機2は、市外局番及び市内局番に基づいた固定電話機5の位置情報を位置管理装置8から取得するように設定することにより、携帯電話機4の場合と同様の処理を行うことができる。
【0076】
[機能5]
携帯電話機2,3は、電話をかけてきた相手や通話相手に対して送信する音声を、上下の所定の方向から聞こえるように音声を再生する角度を指定することができる。また、相手の携帯電話機から指定された方向から音声が聞こえるように再生することができる。例えば、携帯電話機3のユーザが携帯電話機2のユーザに対して電話をかけてきた場合に、携帯電話機2のユーザが自身の音声が相手には斜め下45度の方向から聞こえるように、携帯電話機2の操作部16の方向指定スイッチを操作する。携帯電話機2の制御部18は、この操作を検出すると、携帯電話機3では音声が斜め下45度の方向から聞こえるように再生を指示する所定の信号を送信する。携帯電話機3の制御部28は、この信号を受信すると、送られてきた音声データを斜め下45度の方向から聞こえるように音声処理して音声入出力部24に出力する。したがって、携帯電話機3のユーザは、スピーカ24bまたはヘッドホン24cから相手の音声が、相手のいる方向であって、かつ斜め下45度の方向から聞こえるように体感することができる。
【0077】
図3は、方向指定スイッチの構成例を示した図である。方向指定スイッチとしては、図3(A)に示すように、音声が聞こえる方向を上方向に移動させるための上方向スイッチ116a、及び音声が聞こえる方向を下方向に移動させるための下方向スイッチ116bから成る方向指定スイッチ116を設けて、音声データが聞こえる上下方向の角度を指定できるように構成すると良い。また、図3
(B)に示すように、方向指定スイッチとして電話番号などを入力するテンキーを代用するように構成しても良い。例えば、テンキー117のキー2を上方向スイッチとして、テンキー117のキー8を下方向スイッチとして設定し、音声データが聞こえる上下方向の角度を設定できるように構成すると良い。さらに、方向指定スイッチは、タッチパネルやジョグダイヤルなどによって構成しても良い。
【0078】
ユーザは自分の声を相手の斜め下45度から聞こえるように設定したい場合、携帯電話機2の操作部16における方向指定スイッチ116の下方向スイッチ116bを操作すると、こちら側の位置情報とともに、この音声を相手の斜め下45度の方向から聞こえるように設定する信号が送信される。通話相手も本発明の電話機を使用していて、相手が発信者と異なる方向を向いていた場合、相手の携帯電話機3からは、発信者のいる方向であって、受信者の斜め下45度の方向から発信者の声が聞こえるようになる。ユーザは、この機能を利用することで、相手に対してお詫びをする時や相手に命令する時などに相手に対してこちらの気持ちを伝えることが可能になる。
【0079】
以上のように、本発明の電話機は複数の機能を備えており、呼び出し音や相手の音声の音量を状況に応じて変化するように設定することができる。
【0080】
次に、本発明の実施形態に係る通話装置の通話を開始する際の動作を説明する。まず、本発明の実施形態に係る通話装置である携帯電話機2と携帯電話機3との間で通話する場合について説明する。なお、以下の説明では、携帯電話機3のユーザBから携帯電話機2のユーザAに対して電話をかける場合について説明する。また、ユーザA、ユーザBはそれぞれヘッドホン14c、ヘッドホン24cを装着しているものとする。さらに、携帯電話機2及び携帯電話機3はユーザの位置情報及び方位情報を随時通話相手の電話機に送信している。
【0081】
図4は、本発明の実施形態に係る通話装置同士で通話する場合の動作を説明するためのフローチャートであり、携帯電話機3のユーザBが携帯電話機2のユーザAに電話をかけた場合について示している。図4のフローチャートに基づいた説明では、送信側の携帯電話機が、そのユーザの向く方向と通話相手との相対位置情報に応じて送信音量を調整して音声を送信し、受信側の携帯電話機がそのユーザと通話相手との相対位置情報とユーザが向く方向の情報(方位情報)と、に基づいて音声の聞こえる方向を調整する場合について説明する。
【0082】
なお、携帯電話機2から携帯電話機3へ電話をかける場合も同様の処理が行われる。また、図では、一方のみが発話する(半二重通話)ように記載しているが、双方が同時に発話する(全二重通話)ことは当然可能である。さらに、音量調整は、双方の携帯電話機で行っているものとする。加えて、図に示したタイミング以外でも、通話中は常にユーザの位置と向き(方位)を測定しており、また、通話相手の電話機にユーザの位置情報を伝達している。また、図に示したタイミング以外でも、通話中は常に機能1〜5のオンまたはオフについて確認して、通話相手の電話機にこの情報を伝達している。また、以下の説明では、ユーザの方位情報という場合には、そのユーザの向いている方位(方向)の情報のことを指す。
【0083】
ユーザBは、ユーザAと通話するために携帯電話機3の操作部26を操作してユーザAの電話番号を入力する。制御部28は、操作部26の操作を検出すると(s1)、携帯電話機3において前記の機能1〜5がオンであるか否かを確認する(s2)。制御部28は、機能1〜5がオフである場合には、その旨の装置情報を携帯電話機2に対して送信する(s4)。一方、制御部28は、ステップs2において機能1〜5がオンである場合には、ユーザB(携帯電話機3)の位置情報及びユーザBの方位情報を取得する(s3)。また、制御部28は相手のいる方向から相手の音声を再生する機能を備えており、この機能がオンになっているなどの装置情報を、前記の位置情報とともに携帯電話機2に対して送信して、携帯電話機2を発呼する(s4)。
【0084】
携帯電話機2の制御部18は、携帯電話機3から送信されてきた情報を受信すると(s10)、携帯電話機2において機能1〜5がオンであるか否かを確認して、これらの機能がオフである場合には(s11)、音声処理を行わずにそのまま着信音をユーザAが電話に出るまで再生する(s12)。
【0085】
一方、制御部18は、ステップs11において機能1〜5がオンである場合には、ユーザAの位置情報を位置情報取得部11から取得し、ユーザAの方位情報を方位情報取得部12から取得する。また、制御部18は、相手のいる方向から相手の音声を再生する機能などを含む機能1〜5を備えており、これらの機能がオンになっているなどの装置情報を取得する(s13)。そして、制御部18は、ユーザBの位置情報とユーザAの位置情報及び方位情報とから携帯電話機2
(ユーザA)に対する携帯電話機3(ユーザB)の相対方向、距離及びユーザAの携帯電話機3に対する向きを求める。そして、制御部18は、携帯電話機3の相対方向から着信音が聞こえるように音量及び左右バランスを調整して(s14)、音声入出力部14を介して着信音をヘッドホン14cに再生させる(s15)。また、制御部18は、ユーザAの位置情報及び装置情報を、通信部13を介して携帯電話機3へ送信する(s16)。
【0086】
携帯電話機3の制御部28は、通信部23を介してユーザAの位置情報及び装置情報を受信すると、記憶部27でこれらの情報を記憶する(s5)。
【0087】
携帯電話機2のユーザは、電話に出ると発話を開始する(s17)。このとき、制御部18は、機能1〜5がオンになっているか否かを確認して、機能1〜5がオフになっている場合には(s18)、ユーザAの音声を音声処理せずに通信部13を介してそのまま携帯電話機3へ送信する(s20)。
【0088】
一方、ステップs18において機能1〜5がオンである場合には、制御部18は、携帯電話機2(ユーザA)に対する携帯電話機3(ユーザB)の相対方向、距離及びユーザAの携帯電話機3(ユーザB)に対する向きの情報に基づいてユーザAの音声の音量及び左右バランスを調整して(s19)、ユーザAの音声を携帯電話機3へ通信部13を介して送信する(s20)。
【0089】
携帯電話機3の制御部28は、通信部23を介してユーザAの音声を受信すると(s6)、機能1〜5がオンになっているか否かを確認して、機能1〜5がオフになっている場合には(s7)、音声処理を行わずに音声入出力部24を介してユーザAの音声をヘッドホン24cに再生させる(s9)。一方、制御部28は、ステップs7において機能1〜5がオンになっている場合には、ユーザBの位置情報とユーザAの位置情報とから得られるユーザAとユーザBとの相対位置及び距離の情報と、ユーザBの方位情報と、に基づいてユーザAの音声の音量及び左右バランスを調整する(s8)。そして、制御部28は、音声入出力部24を介してユーザAの音声を音ヘッドホン24cに再生させる(s9)。
【0090】
以上のように、携帯電話機2及び携帯電話機3では、ユーザの操作に応じて、相手との距離や方向によって音声の聞こえる方向や音量を変化させて音声を出力する。
【0091】
次に、送信側の携帯電話機が音声の音量調整を行わずに、そのユーザの位置情報及び方位情報を送信し、受信側の携帯電話機がそのユーザの位置情報・方位情報と、通話相手の位置情報・方位情報と、に基づいて音声の聞こえる方向や音量を調整する場合について説明する。図5は、本発明の実施形態に係る通話装置同士で通話する場合の図4とは異なる動作を説明するためのフローチャートであり、携帯電話機3のユーザBが携帯電話機2のユーザAに電話をかけた場合について示している。
【0092】
なお、図4と同様に、携帯電話機2から携帯電話機3へ電話をかける場合も同様の処理が行われる。また、図では、一方のみが発話する(半二重通話)ように記載しているが、双方が同時に発話する(全二重通話)ことは当然可能である。さらに、音量調整は、双方の携帯電話機で行っているものとする。加えて、図に示したタイミング以外でも、通話中は常にユーザの位置と向き(方位)を測定しており、また、通話相手の電話機にユーザの位置情報を伝達している。また、図に示したタイミング以外でも、通話中は常に機能1〜5のオンまたはオフについて確認して、通話相手の電話機にこの情報を伝達している。
【0093】
ユーザBは、ユーザAと通話するために携帯電話機3の操作部26を操作してユーザAの電話番号を入力する。制御部28は、操作部26の操作を検出すると(s21)、携帯電話機3において前記の機能1〜5がオンであるか否かを確認する(s22)。制御部28は、機能1〜5がオフである場合には、その旨の装置情報を携帯電話機2に対して送信する(s24)。一方、制御部28は、ステップs2において機能1〜5がオンである場合には、ユーザB(携帯電話機3)の位置情報及び方位情報を取得する(s23)。また、制御部28は相手のいる方向から相手の音声を再生する機能を備えており、この機能がオンになっているなどの装置情報を、前記の位置情報及び方位情報とともに携帯電話機2に対して送信して、携帯電話機2を発呼する(s24)。
【0094】
携帯電話機2は、携帯電話機3から送信されてきた情報を受信すると(s30)、携帯電話機2において機能1〜5がオンであるか否かを確認して、これらの機能がオフである場合には(s31)、音声処理を行わずにそのまま着信音をユーザAが電話に出るまで再生する(s32)。
【0095】
一方、制御部18は、ステップs31において機能1〜5がオンである場合には、ユーザAの位置情報を位置情報取得部11から取得し、方位情報を方位情報取得部12から取得する。また、制御部18は、相手のいる方向から相手の音声を再生する機能など機能1〜5を備えており、これらの機能がオンになっているなどの装置情報を取得する(s33)。そして、制御部18は、ユーザBの位置情報・方位情報とユーザAの位置情報・方位情報とから携帯電話機2(ユーザA)に対する携帯電話機3(ユーザB)の相対方向、距離、並びにユーザA及びユーザBの相対的な向きを求める。そして、制御部18は、携帯電話機3の相対方向からユーザBの向きに応じた音量の着信音が聞こえるように、音量及び左右バランスを調整して(s34)、音声入出力部14を介して着信音をヘッドホン14cに再生させる(s35)。また、制御部18は、ユーザAの位置情報、方位情報及び装置情報を、通信部13を介して携帯電話機3へ送信する(s36)。
【0096】
携帯電話機3の制御部28は、通信部23を介してユーザAの位置情報、方位情報及び装置情報を受信すると、記憶部27でこれらの情報を記憶する(s25)。
【0097】
携帯電話機2のユーザは、電話に出ると発話を開始する(s37)。制御部18は、ユーザAの音声を音声処理せずに通信部13を介してそのまま携帯電話機3へ送信する(s38)。
【0098】
携帯電話機3の制御部28は、通信部23を介してユーザAの音声を受信すると(s26)、機能1〜5がオンになっているか否かを確認して、機能1〜5がオフになっている場合には(s27)、音声処理を行わずにユーザAの音声を、音声入出力部24を介してヘッドホン24cに再生させる(s29)。一方、制御部28は、ステップs27において機能1〜5がオンになっている場合には、ユーザBの位置情報・方位情報とユーザAの位置情報・方位情報とに基づいてユーザAの音声の音量及び左右バランスを調整する(s28)。そして、制御部28は、ユーザAの音声を、音声入出力部24を介してヘッドホン24cに再生させる(s29)。
【0099】
以上のように、携帯電話機2及び携帯電話機3では、ユーザの操作に応じて、相手との距離や方向によって音声の聞こえる方向や音量を変化させて音声を出力し、この場合、携帯電話機の受信側だけで音量や左右バランスの調整が可能となる。
【0100】
次に、本発明の実施形態に係る通話装置である携帯電話機2と、この通話装置の機能を備えていない携帯電話機4との間で通話する場合について説明する。図6及び図7は、本発明の実施形態に係る通話装置と、この通話装置の機能を備えていない電話機との間で通話する場合の動作を説明するためのフローチャートである。
【0101】
なお、図4、5と同様に、携帯電話機2から携帯電話機4へ電話をかける場合も同様の処理が行われる。また、図では、一方のみが発話する(半二重通話)ように記載しているが、双方が同時に発話する(全二重通話)ことは当然可能である。さらに、音声の音量及び左右バランスの調整は、携帯電話機2でのみ行うことができる。加えて、図に示したタイミング以外でも、通話中は常にユーザの位置と向き(方位)を測定しており、通話相手の電話機に伝達する音声の音声処理を行っている。また、図に示したタイミング以外でも、通話中は常に機能1〜5のオンまたはオフについて確認している。
【0102】
なお、以下の説明では、携帯電話機4のユーザCから携帯電話機2のユーザAに対して電話をかける場合について説明し、携帯電話機4のユーザCを発信者、携帯電話機2のユーザAを受信者と称する。また、ユーザAはヘッドホン14cを装着しているものとする。また、携帯電話機4は、モノラルマイク35とモノラルスピーカ36で音声の入出力を行うものとする。さらに、携帯電話機4は、自身の位置情報を直接取得することができないが、携帯電話機4に最も近い無線基地局の位置情報に基づいた位置情報を位置管理装置8から取得して間接的に自己の位置情報を取得する。また、位置管理装置8は、携帯電話機4の通話相手に対して、携帯電話機4に最も近い無線基地局の位置情報を、携帯電話機4の位置情報として送信されるように設定されている。
【0103】
ユーザCは、ユーザAと通話するために携帯電話機4の操作部38からユーザAの電話番号を入力して携帯電話機2に対して電話をかける。携帯電話機4の制御部40は、この操作を検出すると通信部33を介して携帯電話機2と通話するための処理を行い、携帯電話機2に対して呼び出し信号を送信する(s41)。このとき、位置管理装置8は、携帯電話機4の位置情報として携帯電話機4が通信を行っている最も近い無線基地局7bの位置情報を取得して、この情報を携帯電話機2へ送信する(s51)。なお、位置管理装置8は、携帯電話機2に対して携帯電話機4との通話が終了するまで、携帯電話機4が通信を行っている最も近い無線基地局の位置情報を随時送信し、携帯電話機4のユーザCが移動中などで最寄りの無線基地局が変更になった場合は、その無線基地局の位置情報を送信する。
【0104】
携帯電話機2の制御部18は、携帯電話機4が送信してきた呼び出し信号、及び位置管理装置8が送信してきた携帯電話機4の位置情報を通信部13で受信すると(s61)、携帯電話機2において機能1〜5がオンであるか否かを確認して、これらの機能がオフである場合には(s62)、音声処理を行わずにそのまま着信音を、音声入出力部14を介してヘッドホン14cに、ユーザAが電話に出るまで再生する(s65)。
【0105】
一方、制御部18は、ステップs62において機能1〜5がオンである場合には、ユーザAの位置情報を位置情報取得部11から取得し、方位情報を方位情報取得部12から取得する。また、制御部18は、相手のいる方向から相手の音声を再生する機能などを含む機能1〜5を備えており、これらの機能がオンになっているなどの装置情報を取得する(s63)。そして、制御部18は、ユーザCの位置情報とユーザAの位置情報及び方位情報とから携帯電話機2(ユーザA)に対する携帯電話機3(ユーザB)の相対方向及び距離を求める。そして、制御部18は、携帯電話機3の相対方向から距離に応じた音量の着信音が聞こえるように音量及び左右バランスを調整して(s64)、音声入出力部14を介して着信音をヘッドホン14cに再生させる(s65)。
【0106】
図7に示すように、携帯電話機2のユーザは、電話に出ると発話を開始する
(s66)。このとき、制御部18は、機能1〜5がオンになっているか否かを確認して、機能1〜5がオフになっている場合には(s67)、ユーザAの音声を音声処理せずに通信部13を介してそのまま携帯電話機3へ送信する(s69)。
【0107】
一方、ステップs67において機能1〜5がオンである場合には、制御部18は、ユーザCの位置情報とユーザAの位置情報・方位情報とに基づいてユーザAの音声の音量及び左右バランスを調整して(s68)、ユーザAの音声を携帯電話機4へ通信部13を介して送信する(s69)。
【0108】
携帯電話機4の制御部40は、通信部33を介してユーザAの音声を受信すると(s42)、音声入出力部34を介してユーザAの音声をスピーカ36に再生させる(s43)。ユーザCは、マイク35に向かって発話を開始し(s44)、制御部40は、通信部33を介してユーザCの音声を送信する(s45)。
【0109】
このとき、位置管理装置8は、携帯電話機4の位置情報として携帯電話機4が通信を行っている最も近い無線基地局7bの位置情報を取得して、この情報を携帯電話機2へ送信する(s52)。
【0110】
携帯電話機2の制御部18は、携帯電話機4が送信してきたユーザCの音声データ、及び位置管理装置8が送信してきた携帯電話機4の位置情報を通信部13で受信すると(s70)、携帯電話機2において機能1〜5がオンであるか否かを確認する。そして、これらの機能がオフである場合には(s71)、音声処理を行わずに音声入出力部14を介してユーザCの音声をヘッドホン14cに再生させる(s74)。
【0111】
一方、制御部18は、ステップs71において機能1〜5がオンになっている場合には、ユーザAの位置情報を位置情報取得部11から取得し、方位情報を方位情報取得部12から取得する。また、制御部18は、相手のいる方向から相手の音声を再生する機能などを含む機能1〜5を備えており、これらの機能がオンになっているなどの装置情報を取得する(s72)。そして、制御部18は、ユーザCの位置情報とユーザAの位置情報・方位情報とに基づいてユーザAの音声の音量及び左右バランスを調整する(s73)。そして、制御部28は、音声入出力部24を介してユーザAの音声をヘッドホン24cに再生させる(s74)。
【0112】
以上のように、携帯電話機2は、相手のいる方向から相手の音声を再生する機能を備えていない電話機と通話する場合でも、ユーザの操作に応じて、相手との距離や方向によって音声の聞こえる方向や音量を変化させて音声を出力する。また、携帯電話機2のユーザAの向く方向に応じた音量の音声を、通話相手の電話機に送信する。
【0113】
なお、図6,7に基づいた説明では、携帯電話機2と携帯電話機4とで通話する場合を例に挙げて説明したが、固定電話機5やインターネット電話機6と携帯電話機2とで通話する場合も同様の作用、効果が得られる。
【0114】
以上の説明では、電話機を使用するユーザ同士が通話する場合について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば家電装置からユーザに対して警告や処理終了などを伝える呼び出し音を、ユーザの電話機に対して送信する場合などにも、本発明を適用することができる。家電装置には、ブザーなどの音声で、処理が終了したり問題が発生したりしたことユーザに伝えるものがある。しかし、このような家電装置は、大きな音が鳴るように設定されているため、特に夜間などに近隣騒音の原因となる場合がある。そこで、このような場合に本発明を適用することで、騒音問題を解決することができる。また、電話機の呼び出し音は、家電装置の方向から聞こえるように設定されているので、ユーザは呼び出し音の聞こえる方向からどの家電装置からのものかを容易に判断できる。
【0115】
家電装置9は、通信部41及び制御部42を備えており、ユーザに伝達事項がある場合には、制御部42が通信部41を用いてユーザの携帯電話機2に対して電話をかけるように設定されている。また、この時、家電装置9には予め位置情報を発信するように設定されている。
【0116】
家電装置9の制御部42は、処理に問題が発生したことを検出すると、ユーザの携帯電話機2に対して通信部41から電話をかける。ユーザは、家電装置9からの電話を受信すると、呼び出し音が家電装置9の設置場所の方向から聞こえるので、発呼元の家電装置を特定できる。なお、携帯電話機2及び家電装置9には、Bluetooth など無線通信機能を有する通信部を設けておき、外部ネットワーク40を介さずに、この無線通信機能を用いて直接通信するようにしても良い。
【0117】
また、携帯電話機2に発呼元の家電装置に近づくほど音量が大きくなるように設定しておくことで、ユーザは、複数の家電装置が隣接していた場合でも、呼び出し音の聞こえる方向に進むことで、容易に発呼元の家電装置を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施形態に係る通話システムの概略構成を示したブロック図である。
【図2】電話機の位置関係を示した図である。
【図3】方向指定スイッチの構成例を示した図である。
【図4】本発明の実施形態に係る通話装置同士で通話する場合の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る通話装置同士で通話する場合の図4とは別の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る通話装置と、この通話装置の機能を備えていない電話機との間で通話する場合の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る通話装置と、この通話装置の機能を備えていない電話機との間で通話する場合の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0119】
1−通話システム、2,3−携帯電話機、4−携帯電話機、5−固定電話機、6−インターネット電話機、7a,7b−無線基地局、8−位置管理装置、9−家電装置、10−外部ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの位置情報を取得する位置取得手段と、
前記ユーザの音声、及び前記ユーザの位置情報を通話相手に送信するとともに、前記通話相手から送られてきた音声、及び前記通話相手の位置情報を受信する通信手段と、
前記ユーザの位置情報、及び前記通話相手の位置情報に基づいて前記ユーザに対する前記通話相手の方向を求めて、この方向から聞こえ、かつ、前記通話相手との距離に応じて前記通話相手の音声の音量が変化するように前記通話相手の音声を再生する音声再生手段と、
を備えたことを特徴とする通話装置。
【請求項2】
前記ユーザが向いている方位の情報を取得する方位取得手段を備え、前記音声再生手段は、前記方位取得手段で取得した方位の情報に基づいて、通話相手のいる方向から前記通話相手の音声を再生する請求項1に記載の通話装置。
【請求項3】
前記位置取得手段は、衛星による汎地球測位システムであるGPSを用いて位置情報を取得する請求項1または2に記載の通話装置。
【請求項4】
前記通信手段は、前記ユーザが向いている方向に応じて、前記ユーザの音声の音量を変化させて送信する請求項1乃至3のいずれかに記載の通話装置。
【請求項5】
前記通信手段は、前記通話者相手が指定した上下角度情報を送受信し、
前記音声再生手段は、通話相手から送られてきた上下角度情報に基づき、前記通話相手がいる方向であって前記通話相手が指定した上下角度から聞こえるように前記通話相手の音声を再生する請求項1乃至4のいずれかに記載の通話装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−193676(P2008−193676A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10888(P2008−10888)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【分割の表示】特願2003−424683(P2003−424683)の分割
【原出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】