通貨種目のスペクトル感度に基づく通貨種目(itemofcurrency)の分類及び判別
未知の通貨種目のスペクトル感度を評価することによって、未知の通貨種目を少なくとも1つの既知の通貨種目と比較する。スペクトル感度を未知の通貨種目から取得し、未知の通貨種目のスペクトル感度を第1の成分及び第2の成分に分離する。未知の通貨種目のスペクトル感度の少なくとも1つの成分を、特定の額面を有する少なくとも1つの既知の通貨種目のスペクトル感度の少なくとも1つの成分と比較する。未知の通貨種目が少なくとも1つの既知の通貨種目の等級の一要素であるかどうかに関して判断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年7月29日出願の米国仮特許出願第61/137,386号の優先権の利益を主張し、その出願の内容全体を本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、通貨種目の分類に関し、特に、通貨種目のスペクトル感度に基づく通貨種目の分類に関する。
【背景技術】
【0003】
通貨のある種目を別の種目と区別するため、通貨種目を製造する際に色が使用される場合が多い。例えば、価値のある書類は、印刷された模様又は絵とともに、特定の色インクで構成される他の様々な特徴を含む場合が多い。本開示の目的のため、価値のある書類としては、銀行券、証書、手形、有価証券、小切手、株券、及び利札が挙げられるが、それらに限定されない。所与の通貨は、多数の異なる額面(例えば、5ユーロ、10ユーロ、20ユーロ、及び50ユーロ)の銀行券を有することがある。特定の通貨の各額面は、多種多様な色を使用して印刷された固有の画像(多くの場合、銀行券の各面で異なる)を有する場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/137,386号
【特許文献2】米国特許出願第61/084,358号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動取引デバイス(例えば、自動販売機)では、検証部が設けられ、挿入された銀行券に光(例えば、少なくとも1つの波長の)を照射し、その挿入された銀行券のスペクトル感度を評価するように適応されている。検証部によって取得したスペクトル感度情報は、特定の特徴、インク、又は印刷された模様を識別するのに使用することができる。一般的には、検証部はスペクトル感度情報を使用して真正の銀行券と非真正の銀行券とを判別する。挿入された銀行券の判別は、挿入された銀行券のスペクトル感度情報を、異なる額面及び/又は通貨を示す基準銀行券群のスペクトル感度情報と一致させることによって達成される場合が多い。
【0006】
色に依存するいくつかの判別技術の制約は、莫大な数の異なるスペクトルによって色を表すことが可能であるという事実に起因する。より具体的には、原物の銀行券を製造するのに使用されるもの以外の機器を使用する、原物の銀行券の複製は、標準色の異なる組合せを使用して形成されることがある。したがって、人間の眼によって同じであると知覚される色が異なるスペクトル感度を有する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は通貨種目の判別に関する。本開示の目的のため、通貨種目としては、価値のある書類、銀行券、証書、小切手、硬貨、利札、有価証券、又は物品やサービスと引き換えに使用される他のあらゆる通貨種目(真正もしくは非真正)が挙げられるが、それらに限定されない。本開示は、未知の通貨種目のスペクトル感度と少なくとも1つの既知の通貨種目との比較に基づいて、通貨種目を判別する方法及び装置について記載する。
【0008】
いくつかの実現例では、通貨種目同士を判別する検証部が設けられる。特に、少なくとも1つの基準通貨種目(例えば、第一等級(first class))に関するスペクトル感度情報が検証部内に格納され、挿入された通貨種目との比較に使用される。検証部は、スペクトル感度情報(例えば、少なくとも1つの波長での光の反射又は透過に基づく)を挿入された通貨種目から取得するように適合される。検証部はさらに、通貨種目の測定されたスペクトル感度を使用し、それを検証部内に格納された少なくとも1つの通貨種目のスペクトル感度と比較するように構成することができる。検証部は、挿入された通貨種目の測定された感度を少なくとも1つの成分感度に変換するように構成することができる。いくつかの実現例では、少なくとも1つのスペクトル成分感度は既知の標準色空間内へと投影される。いくつかの実現例では、挿入された通貨種目の測定されたスペクトル感度は、色空間内へと、かつ特定の色空間に直交するさらなる空間内へと投影される。
【0009】
挿入された通貨種目の測定されたスペクトル成分感度は、挿入された通貨種目を分類するための分類技術に対する入力として、少なくとも1つの既知の通貨種目(即ち、ある等級の通貨)のスペクトル成分感度とともに使用することができる。
【0010】
本発明の様々な態様は請求項に記載される。他の特徴及び利点は、詳細な説明及び添付図面から容易に明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】XY色度図である。
【0012】
【図2】L*a*b*空間図である。
【0013】
【図3】様々な色域を示す図である。
【0014】
【図4】スペクトル感度及びそれに関連する成分感度の一例を示す図である。
【0015】
【図5】特定の色空間に直交する空間を示す図である。
【0016】
【図6】色空間及び直交空間の両方における色のスペクトル感度を示す図である。
【0017】
【図7】図6の色と同じであると知覚されるが、直交空間では異なる感度を有する色のスペクトル感度を示す図である。
【0018】
【図8】両方とも色空間において同じであると知覚される印刷色を有する種目である、色空間における真正の通貨種目と非真正の通貨種目との比較を示す図である。
【0019】
【図9】両方とも色空間において同じであると知覚される印刷色を有する種目である、色空間に直交する空間における真正の通貨種目と非真正の通貨種目との比較を示す図である。
【0020】
【図10】本発明による通貨検証部を備えた自動取引機械の一例を示すブロック図である。
【0021】
【図11】未知の通貨種目のスペクトル感度を評価することによって、未知の通貨種目を既知の通貨種目と比較する方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
いくつかの実現例では、通貨種目上に存在する色の差が、1つの通貨種目を別のものと判別するのに使用される。特に、色評価は、未知の通貨種目が既知の通貨種目上に存在する色に類似した色を有するかを判断するのに使用することができる。いくつかの実現例では、未知の通貨種目を既知の種目と分類する方法は、既知の通貨種目のスペクトル感度を未知の通貨種目のスペクトル感度と比較することを含む。他の実現例では、既知の通貨種目を未知の通貨種目と判別する検証部が設けられる。
【0023】
検証部は、メモリ部、処理部(例えば、マイクロプロセッサ)、及び感知部を含む。感知部は、少なくとも1つの光源、及び少なくとも1つの波長における通貨種目のスペクトル感度を感知する少なくとも1つのセンサを使用して、スペクトル感度情報を通貨種目から取得するように適合される。通貨種目は光源によって照射され、少なくとも1つのセンサを使用してスペクトル感度情報(例えば、反射もしくは透過に基づく)が取得される。
【0024】
いくつかの実現例では、色は、三刺激値の理論として知られている人間の目視による色知覚によって説明することができる。三刺激値の理論は、可視範囲における既知のスペクトル感度を有する3つの異なる光受容体タイプの一次結合を含む。国際照明委員会(CIE)は、標準観測者のための等色関数及び定義された色空間を含む、標準的な人間の目視による色知覚を特徴付けている。標準色空間の例としては、CIE XYZ及びCIELAB空間が挙げられるが、それらに限定されない。これらの標準は、測色学ならびに色情報の変換及び共有の基本である。測色を適用することによって、未知の通貨種目と既知の通貨種目とを判別する能力の改善が可能になる。より具体的には、真正の通貨種目と非真正の通貨種目との判別は、様々な測色技術を使用して改善することができる。
【0025】
物体色の測色学的な色再現(色の見えの一致を含む)を追求するカメラ及びスキャナなどの色入力デバイスは、それらを設計する際、及び物理的センサからの出力データを解釈する際に、人間の視覚系の特性を考慮に入れなければならない。
【0026】
光は全スペクトルから成り、したがって、色は光スペクトル全体の関数である。色感覚の三色型色覚は条件等色現象に結び付く。これは、異なるスペクトルが同じ色を生じさせる場合があることを意味する。通貨種目には少なくとも1つの色が含まれる場合が多いので、別のスペクトルによって再現されている色と真正の通貨種目の現在の色とを判別できることが本質的に重要になる。
【0027】
人間の視覚系の性質は3つの錐体型のスペクトル感度によって定義される。L錐体は約570nmにピーク感度を有する。M錐体は約540nmにピーク感度を有する。S錐体は約445nmにピーク感度を有する。
CIE等色関数
【数1】
を使用して、眼のスペクトル感度と等色関数との間の線形関係を次式によって得ることができる。
【数2】
【0028】
光源Eのスペクトルパワーに物体表面のスペクトル反射率Rを掛ける。その結果は観測者が受け取る物体色である。10nm刻みで400nm〜780nmの可視範囲全体にわたって測定を行うものと仮定する。三刺激値空間は、次式によって与えられる大文字X、Y、Zによって定義される。
【数3】
【数4】
式中、kは正規化係数である。
【数5】
Yは色の輝度の明るさを表す。したがって、三刺激値X、Y、Zをその合計によって正規化した場合、図1に示されるようなローカス色空間(locus color space)を定義する空間xyzが取得される。
【数6】
図1に示される色度図から、それが線形ではない(即ち、例えば図の下側部分の、2つの地点間の距離は、図の上側部分(緑色)の他の2つの地点よりも大きい色のばらつきをもたらす)ことが分かる。色のばらつきの知覚をより良好に反映するため、別の図を使用することができる。1つのそのような図は、次式の変換によって与えられるL*a*b*空間(図2に示される)である。
【数7】
Xn、Yn、Znは基準白色の三刺激値である。
【数8】
である場合(式中、Vは三刺激値X、Y、又はZのいずれか)、上記式において、
【数9】
を
【数10】
と置き換える。
【0029】
様々なデバイスが色を作り出す方法には物理的な差があるため、各々のスキャナ、表示装置、及びプリンタは、それが表すことができる領域、即ち色の範囲が異なる。RGB色域は、人間の眼が知覚することができる色の約70%しか表示することができない。プリンタに使用されるCMYK色域ははるかに狭く、再現するのは知覚可能な色の約20%である。パントーン・マッチング・システム(PMS)のような、プレミックス・インク(premixed inks)を用いて実現される色域も、RGB色域よりも狭い。CMYK色域の中に一致するものがないPMS色は多い(図3に示されるように)。人間の眼は数十億色を見ることができるが、RGB系が網羅するのはわずかに約1600万色であり、CMYKが網羅するのは約5〜6千色である。
【0030】
通貨検証部において、挿入された通貨種目からスペクトル感度を取得するのに使用されるセンサは、人間の眼の感度とは異なる(例えば、より高い)感度を有することができる。したがって、実際上、標準色空間におけるスペクトル感度の表現は標準色空間の近似である。センサ系の感度は人間の眼の感度とは異なる場合があるので、標準色空間が定義されるのと類似したやり方で他の色空間を定義することができる。新しい色空間(センサ・セットの感度によって定義される)を、標準色空間と同じやり方で分類に使用することができる。
【0031】
スペクトル・データは、スペクトル・データがすべて三刺激値空間内の同じ色を表す基本メタメリック空間(fundamental metameric space)と、図5に示されるような、測色空間(色空間)に直交するブラック・メタメリック空間(black metameric space)との2つの空間に分割することができる。色再現システムは色の恒常性を保存するので、通常、真正の種目と複製との間の差は色空間においては最小限である。しかし、直交空間においては、真正の通貨種目と非真正の通貨種目との間の差が存在する場合がある。
【0032】
メタメリック反射率R(λ)は、R(λ)=Rx(λ)+R0(λ)という2つの部分に分解することができ、式中、Rx(λ)は特殊解、R0(λ)はメタメリック・ブラックであり、λは所与の波長である。
【0033】
光源は、E(λ)によって示される分光分布によって説明することができる。信号は、異なるスペクトル感度X1、X2、X3の3つのセンサを通してフィルタ処理される。
【数11】
x1、x2、x3は、3つのスペクトル感度X1、X2、X3の応答である。行列を使用する表記は次式によって得ることができる。
x=XtD(E)R
式中、x=[x1,x2,x3]及びX=[X1,X2,X3]、D(E)は光源方向ベクトルを対数行列に変換したもの、Rは反射率である。
Λ=XtD(E)
と示した場合、Λは色形成行列(color formation matrix)と呼ばれる。したがって、x=ΛRである。スペクトル感度(例えば、反射率又は透過率)と色行列Λの行へのその射影との間の距離を最小限に抑える行列は、次式によって与えられる正射影行列Qである。
Q=Λt(ΛΛt)−1Λ
Qは3D空間内への投影を定義する。直交補空間は次式によって与えられる。
Q⊥=I−Q
2つの射影子Q及びQ⊥を使用して、任意の反射率(又は透過率)を2つの部分に分解することができる。
R=QR+Q⊥R
したがって、
Rx=QR
R0=Q⊥R
である。
【0034】
データが10nmごとに410〜780nmの範囲で収集されるとき、反射率Rはp寸法(実施例では39)のベクトルによって表される。基本メタマーRxはp寸法の空間におけるp−3寸法のベクトルである。メタメリック・ブラックR0はp寸法の空間における3寸法のベクトルである。Λは3×p行列であり、正射影Qはp×p行列である。QRは基本と呼ばれ、Q⊥Rは、目で見ることができない反射率の部分(即ち、スペクトル感度)なので黒色成分と呼ばれる。
【0035】
スペクトルQR及びRは同じ三刺激値(例えば、同じ色)を有するので、それらはメタマーである。しかし、Q⊥Rの三刺激値はゼロであり、したがってブラック・メタマーと呼ばれる。換言すれば、
x=ΛR=ΛRx
及び
0=ΛR0
である。図4は、マクベス・カラーチェッカーのマゼンタ・パッチの反射率R(100)、基本メタマーRx(200)、及びブラック・メタマーR0(300)を示す。図6及び7から、100及び200のスペクトルは人間の眼で見て同じ色を作り出すことが分かる。上述の例は、反射率に基づくスペクトル感度を使用するが、通貨種目を通る光の透過も同様に使用することができる。
【0036】
本開示は、人間の眼の視知覚に対応する色空間の例を使用してきたが、他の実現例では、センサ・セットの知覚に基づいて色空間を確立することができる。より具体的には、人間の眼の知覚は人間の眼に存在する3つの錐体の感度に基づいている。同様の方策を、特定の感度をそれぞれ有するセンサ・セットに取り入れて、特定の波長域に感度をそれぞれ有するセンサ・セット(例えば、4つのセンサ)のセンサの感度に基づいて色空間を確立することができる。したがって、波長域は非可視スペクトル内の範囲であることができる。
【0037】
センサ・セットを使用して確立されている色空間を適用することによって、それに対応する直交空間を確立することが可能になり、それによって、非可視色空間及びそれに対応する直交空間を使用して色の判別を行うことができる。
【0038】
いくつかの実現例では、検証部を使用して既知の通貨種目が評価される。検証部は、後で通貨種目を判別するために、基準データ・セットにおいて使用される既知の通貨種目からのスペクトル感度情報を取得する。少なくとも1つの既知の通貨種目のスペクトル感度情報は、検証部に類似した機器から取得することができ、その結果は検証部のメモリ部内に格納することができる。
【0039】
スペクトル感度情報が既知の通貨種目から取得されると、色空間(例えば、CIE XYZもしくはCIE Lab空間又は非可視色空間)を使用してこの情報をさらに評価することができる。上述の空間(例えば、CIE XYZ又はCIE Lab)の1つにおける既知の通貨種目のスペクトル感度情報を解析することによって、少なくとも1つのスペクトル成分感度の判別が可能になる。いくつかの実現例では、CIE空間の1つにおいて解析されたスペクトル感度によって、基本メタマー(即ち、第1の成分スペクトル感度)及びブラック・メタマー(即ち、第2の成分スペクトル感度)の判別が可能になる。複数の既知の通貨種目をこの開示される手法で解析して、通貨の様々な額面に対して基準データ・セット群を作ることができる。このように、未知の通貨種目が群の中に含まれる既知の通貨種目のいずれか1つに属することを判断することができる。
【0040】
いくつかの実現例では、既知の通貨種目群はそれら個々のスペクトル成分感度(例えば、基本メタマー及びブラック・メタマー)によって表される。さらなる実現例では、個々のスペクトル成分感度は検証部内に格納されて、通貨種目を判別するのに使用される。特に、未知の通貨種目は検証部を使用して評価される。検証部は、挿入された未知の通貨種目から個々のスペクトル成分感度を取得するように構成される。検証部はさらに、挿入された未知の通貨種目に関する情報を、メモリ部に格納された既知の通貨種目群中の少なくとも1つの既知の通貨種目に関する情報と比較するように構成される。基本メタマー(即ち、第1の成分スペクトル感度)が既知の通貨種目の予め定められた許容差内にある場合、挿入された通貨種目が、既知の通貨種目によって表されるような所与の額面(又は等級)に属すると判断することができる。いくつかの実現例では、検証部はさらに、未知の通貨種目のブラック・メタマーの比較が既知の通貨種目(特定の額面を有する)のブラック・メタマーの予め定められた許容差内にある場合、挿入された未知の通貨種目が(既に判断された額面の)真正の通貨種目であると判断するように構成される。
【0041】
図8は、色空間(例えば、CIE XYZ又はCIE Lab)内における(特定の額面の)真正の通貨種目及び非真正の通貨種目の第1の成分スペクトル感度(基本メタマー)の比較を示す。(特定の額面の)既知の真正の通貨種目及び未知の通貨種目は両方とも、類似した第1の成分スペクトル感度を呈する。未知の通貨種目の第1の成分スペクトルは、既知の真正の通貨種目と同様の第1の成分スペクトル感度を呈するので、未知の通貨種目は既知の真正の通貨種目の額面の一要素であると判断することができる。図9に示されるように、未知の通貨種目の第2の成分スペクトル感度(ブラック・メタマー)は、既知の真正の通貨種目の第2の成分スペクトル感度とは異なる。したがって、既知の真正の通貨種目及び未知の通貨種目の第2の成分スペクトル感度を使用して、真正の通貨種目を非真正の通貨種目と判別するのが有用である。
【0042】
いくつかの実現例では、未知の通貨種目の分類(又は判別)は両方のスペクトル成分感度を併せて使用して達成することができる。本開示は第1のスペクトル成分感度及び第2のスペクトル成分感度が別個に評価される、又は異なる評価に使用される実現例を提示してきたが、各成分感度の比較を使用して、通貨種目の等級間の判別を独立に、あるいは併せて行うことができる。
【0043】
スペクトル成分感度は分類技術に対する入力として使用することができる。様々な分類技術が存在し、1つのそのような技術の例が、「CURRENCY DISCRIMINATION」という名称の米国特許出願(第61/084,358号)に開示されており、その全体を本明細書に組み込む。その出願に開示されている換算技術に対する入力は、本開示に記載されているスペクトル成分感度であることができる。
【0044】
いくつかの実現例では、未知の通貨種目を分類するのに既知の通貨種目群が使用される。既知の通貨種目それぞれについて、その特定の通貨種目に最適な色空間を使用してスペクトル成分感度を確立することができる。例えば、未知の通貨種目を、10米ドルの銀行券によって表される等級の一要素であると分類するには、CIE XYZ色空間を使用することができる。さらに、未知の通貨種目を、5ユーロの銀行券によって表される等級の一要素であると分類するには、CIE Lab色空間を使用することができる。いくつかの実現例では、個々の既知の通貨種目はそれぞれ、他の既知の通貨種目を評価するのに使用される色空間とは異なる色空間を使用して評価される(例えば10米ドルの紙幣と20米ドルの紙幣)。
【0045】
検証部は、他の既知の通貨種目の少なくとも1つが、少なくとも1つの他の既知の通貨種目とは異なる色空間を分類に使用する、複数の既知の通貨種目に対するスペクトル成分感度を格納するように適合させることができる。
【0046】
図10に示されるように、いくつかの実現例では、自動取引機械50は、未知の通貨種目と少なくとも1つの既知の額面(又は等級)とを判別する検証部52を含む。検証部は、感知部54、メモリ部56、及びマイクロプロセッサなどの処理部58を含むことができる。検証部は、挿入された通貨種目との比較のため、少なくとも1つの成分感度を有する少なくとも1つの既知の通貨種目のスペクトル感度情報60を格納する。
【0047】
図11に示されるように、通貨検証部は、未知の通貨種目からスペクトル感度を取得し(ブロック100)、未知の通貨種目のスペクトル感度を第1の成分(例えば、基本メタマー)及び第2の成分(例えば、ブラック・メタマー)に分離し(ブロック102)、未知の通貨種目のスペクトル感度の少なくとも1つの成分を、特定の額面を有する少なくとも1つの既知の通貨種目のスペクトル感度の少なくとも1つの成分と比較する(ブロック104)ように構成することができる。通貨検証部は、未知の通貨種目が少なくとも1つの既知の通貨種目の等級の一要素であるかを判断する(ブロック106)。例えば、比較に基づいて、未知の通貨種目の少なくとも1つの成分感度が、少なくとも1つの既知の通貨種目の少なくとも1つの成分感度の予め定義された許容差内にある場合、未知の通貨種目は、少なくとも1つの既知の通貨種目の等級の一要素であると判断することができる。
【0048】
他の実現例は請求項の範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年7月29日出願の米国仮特許出願第61/137,386号の優先権の利益を主張し、その出願の内容全体を本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、通貨種目の分類に関し、特に、通貨種目のスペクトル感度に基づく通貨種目の分類に関する。
【背景技術】
【0003】
通貨のある種目を別の種目と区別するため、通貨種目を製造する際に色が使用される場合が多い。例えば、価値のある書類は、印刷された模様又は絵とともに、特定の色インクで構成される他の様々な特徴を含む場合が多い。本開示の目的のため、価値のある書類としては、銀行券、証書、手形、有価証券、小切手、株券、及び利札が挙げられるが、それらに限定されない。所与の通貨は、多数の異なる額面(例えば、5ユーロ、10ユーロ、20ユーロ、及び50ユーロ)の銀行券を有することがある。特定の通貨の各額面は、多種多様な色を使用して印刷された固有の画像(多くの場合、銀行券の各面で異なる)を有する場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/137,386号
【特許文献2】米国特許出願第61/084,358号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動取引デバイス(例えば、自動販売機)では、検証部が設けられ、挿入された銀行券に光(例えば、少なくとも1つの波長の)を照射し、その挿入された銀行券のスペクトル感度を評価するように適応されている。検証部によって取得したスペクトル感度情報は、特定の特徴、インク、又は印刷された模様を識別するのに使用することができる。一般的には、検証部はスペクトル感度情報を使用して真正の銀行券と非真正の銀行券とを判別する。挿入された銀行券の判別は、挿入された銀行券のスペクトル感度情報を、異なる額面及び/又は通貨を示す基準銀行券群のスペクトル感度情報と一致させることによって達成される場合が多い。
【0006】
色に依存するいくつかの判別技術の制約は、莫大な数の異なるスペクトルによって色を表すことが可能であるという事実に起因する。より具体的には、原物の銀行券を製造するのに使用されるもの以外の機器を使用する、原物の銀行券の複製は、標準色の異なる組合せを使用して形成されることがある。したがって、人間の眼によって同じであると知覚される色が異なるスペクトル感度を有する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は通貨種目の判別に関する。本開示の目的のため、通貨種目としては、価値のある書類、銀行券、証書、小切手、硬貨、利札、有価証券、又は物品やサービスと引き換えに使用される他のあらゆる通貨種目(真正もしくは非真正)が挙げられるが、それらに限定されない。本開示は、未知の通貨種目のスペクトル感度と少なくとも1つの既知の通貨種目との比較に基づいて、通貨種目を判別する方法及び装置について記載する。
【0008】
いくつかの実現例では、通貨種目同士を判別する検証部が設けられる。特に、少なくとも1つの基準通貨種目(例えば、第一等級(first class))に関するスペクトル感度情報が検証部内に格納され、挿入された通貨種目との比較に使用される。検証部は、スペクトル感度情報(例えば、少なくとも1つの波長での光の反射又は透過に基づく)を挿入された通貨種目から取得するように適合される。検証部はさらに、通貨種目の測定されたスペクトル感度を使用し、それを検証部内に格納された少なくとも1つの通貨種目のスペクトル感度と比較するように構成することができる。検証部は、挿入された通貨種目の測定された感度を少なくとも1つの成分感度に変換するように構成することができる。いくつかの実現例では、少なくとも1つのスペクトル成分感度は既知の標準色空間内へと投影される。いくつかの実現例では、挿入された通貨種目の測定されたスペクトル感度は、色空間内へと、かつ特定の色空間に直交するさらなる空間内へと投影される。
【0009】
挿入された通貨種目の測定されたスペクトル成分感度は、挿入された通貨種目を分類するための分類技術に対する入力として、少なくとも1つの既知の通貨種目(即ち、ある等級の通貨)のスペクトル成分感度とともに使用することができる。
【0010】
本発明の様々な態様は請求項に記載される。他の特徴及び利点は、詳細な説明及び添付図面から容易に明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】XY色度図である。
【0012】
【図2】L*a*b*空間図である。
【0013】
【図3】様々な色域を示す図である。
【0014】
【図4】スペクトル感度及びそれに関連する成分感度の一例を示す図である。
【0015】
【図5】特定の色空間に直交する空間を示す図である。
【0016】
【図6】色空間及び直交空間の両方における色のスペクトル感度を示す図である。
【0017】
【図7】図6の色と同じであると知覚されるが、直交空間では異なる感度を有する色のスペクトル感度を示す図である。
【0018】
【図8】両方とも色空間において同じであると知覚される印刷色を有する種目である、色空間における真正の通貨種目と非真正の通貨種目との比較を示す図である。
【0019】
【図9】両方とも色空間において同じであると知覚される印刷色を有する種目である、色空間に直交する空間における真正の通貨種目と非真正の通貨種目との比較を示す図である。
【0020】
【図10】本発明による通貨検証部を備えた自動取引機械の一例を示すブロック図である。
【0021】
【図11】未知の通貨種目のスペクトル感度を評価することによって、未知の通貨種目を既知の通貨種目と比較する方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
いくつかの実現例では、通貨種目上に存在する色の差が、1つの通貨種目を別のものと判別するのに使用される。特に、色評価は、未知の通貨種目が既知の通貨種目上に存在する色に類似した色を有するかを判断するのに使用することができる。いくつかの実現例では、未知の通貨種目を既知の種目と分類する方法は、既知の通貨種目のスペクトル感度を未知の通貨種目のスペクトル感度と比較することを含む。他の実現例では、既知の通貨種目を未知の通貨種目と判別する検証部が設けられる。
【0023】
検証部は、メモリ部、処理部(例えば、マイクロプロセッサ)、及び感知部を含む。感知部は、少なくとも1つの光源、及び少なくとも1つの波長における通貨種目のスペクトル感度を感知する少なくとも1つのセンサを使用して、スペクトル感度情報を通貨種目から取得するように適合される。通貨種目は光源によって照射され、少なくとも1つのセンサを使用してスペクトル感度情報(例えば、反射もしくは透過に基づく)が取得される。
【0024】
いくつかの実現例では、色は、三刺激値の理論として知られている人間の目視による色知覚によって説明することができる。三刺激値の理論は、可視範囲における既知のスペクトル感度を有する3つの異なる光受容体タイプの一次結合を含む。国際照明委員会(CIE)は、標準観測者のための等色関数及び定義された色空間を含む、標準的な人間の目視による色知覚を特徴付けている。標準色空間の例としては、CIE XYZ及びCIELAB空間が挙げられるが、それらに限定されない。これらの標準は、測色学ならびに色情報の変換及び共有の基本である。測色を適用することによって、未知の通貨種目と既知の通貨種目とを判別する能力の改善が可能になる。より具体的には、真正の通貨種目と非真正の通貨種目との判別は、様々な測色技術を使用して改善することができる。
【0025】
物体色の測色学的な色再現(色の見えの一致を含む)を追求するカメラ及びスキャナなどの色入力デバイスは、それらを設計する際、及び物理的センサからの出力データを解釈する際に、人間の視覚系の特性を考慮に入れなければならない。
【0026】
光は全スペクトルから成り、したがって、色は光スペクトル全体の関数である。色感覚の三色型色覚は条件等色現象に結び付く。これは、異なるスペクトルが同じ色を生じさせる場合があることを意味する。通貨種目には少なくとも1つの色が含まれる場合が多いので、別のスペクトルによって再現されている色と真正の通貨種目の現在の色とを判別できることが本質的に重要になる。
【0027】
人間の視覚系の性質は3つの錐体型のスペクトル感度によって定義される。L錐体は約570nmにピーク感度を有する。M錐体は約540nmにピーク感度を有する。S錐体は約445nmにピーク感度を有する。
CIE等色関数
【数1】
を使用して、眼のスペクトル感度と等色関数との間の線形関係を次式によって得ることができる。
【数2】
【0028】
光源Eのスペクトルパワーに物体表面のスペクトル反射率Rを掛ける。その結果は観測者が受け取る物体色である。10nm刻みで400nm〜780nmの可視範囲全体にわたって測定を行うものと仮定する。三刺激値空間は、次式によって与えられる大文字X、Y、Zによって定義される。
【数3】
【数4】
式中、kは正規化係数である。
【数5】
Yは色の輝度の明るさを表す。したがって、三刺激値X、Y、Zをその合計によって正規化した場合、図1に示されるようなローカス色空間(locus color space)を定義する空間xyzが取得される。
【数6】
図1に示される色度図から、それが線形ではない(即ち、例えば図の下側部分の、2つの地点間の距離は、図の上側部分(緑色)の他の2つの地点よりも大きい色のばらつきをもたらす)ことが分かる。色のばらつきの知覚をより良好に反映するため、別の図を使用することができる。1つのそのような図は、次式の変換によって与えられるL*a*b*空間(図2に示される)である。
【数7】
Xn、Yn、Znは基準白色の三刺激値である。
【数8】
である場合(式中、Vは三刺激値X、Y、又はZのいずれか)、上記式において、
【数9】
を
【数10】
と置き換える。
【0029】
様々なデバイスが色を作り出す方法には物理的な差があるため、各々のスキャナ、表示装置、及びプリンタは、それが表すことができる領域、即ち色の範囲が異なる。RGB色域は、人間の眼が知覚することができる色の約70%しか表示することができない。プリンタに使用されるCMYK色域ははるかに狭く、再現するのは知覚可能な色の約20%である。パントーン・マッチング・システム(PMS)のような、プレミックス・インク(premixed inks)を用いて実現される色域も、RGB色域よりも狭い。CMYK色域の中に一致するものがないPMS色は多い(図3に示されるように)。人間の眼は数十億色を見ることができるが、RGB系が網羅するのはわずかに約1600万色であり、CMYKが網羅するのは約5〜6千色である。
【0030】
通貨検証部において、挿入された通貨種目からスペクトル感度を取得するのに使用されるセンサは、人間の眼の感度とは異なる(例えば、より高い)感度を有することができる。したがって、実際上、標準色空間におけるスペクトル感度の表現は標準色空間の近似である。センサ系の感度は人間の眼の感度とは異なる場合があるので、標準色空間が定義されるのと類似したやり方で他の色空間を定義することができる。新しい色空間(センサ・セットの感度によって定義される)を、標準色空間と同じやり方で分類に使用することができる。
【0031】
スペクトル・データは、スペクトル・データがすべて三刺激値空間内の同じ色を表す基本メタメリック空間(fundamental metameric space)と、図5に示されるような、測色空間(色空間)に直交するブラック・メタメリック空間(black metameric space)との2つの空間に分割することができる。色再現システムは色の恒常性を保存するので、通常、真正の種目と複製との間の差は色空間においては最小限である。しかし、直交空間においては、真正の通貨種目と非真正の通貨種目との間の差が存在する場合がある。
【0032】
メタメリック反射率R(λ)は、R(λ)=Rx(λ)+R0(λ)という2つの部分に分解することができ、式中、Rx(λ)は特殊解、R0(λ)はメタメリック・ブラックであり、λは所与の波長である。
【0033】
光源は、E(λ)によって示される分光分布によって説明することができる。信号は、異なるスペクトル感度X1、X2、X3の3つのセンサを通してフィルタ処理される。
【数11】
x1、x2、x3は、3つのスペクトル感度X1、X2、X3の応答である。行列を使用する表記は次式によって得ることができる。
x=XtD(E)R
式中、x=[x1,x2,x3]及びX=[X1,X2,X3]、D(E)は光源方向ベクトルを対数行列に変換したもの、Rは反射率である。
Λ=XtD(E)
と示した場合、Λは色形成行列(color formation matrix)と呼ばれる。したがって、x=ΛRである。スペクトル感度(例えば、反射率又は透過率)と色行列Λの行へのその射影との間の距離を最小限に抑える行列は、次式によって与えられる正射影行列Qである。
Q=Λt(ΛΛt)−1Λ
Qは3D空間内への投影を定義する。直交補空間は次式によって与えられる。
Q⊥=I−Q
2つの射影子Q及びQ⊥を使用して、任意の反射率(又は透過率)を2つの部分に分解することができる。
R=QR+Q⊥R
したがって、
Rx=QR
R0=Q⊥R
である。
【0034】
データが10nmごとに410〜780nmの範囲で収集されるとき、反射率Rはp寸法(実施例では39)のベクトルによって表される。基本メタマーRxはp寸法の空間におけるp−3寸法のベクトルである。メタメリック・ブラックR0はp寸法の空間における3寸法のベクトルである。Λは3×p行列であり、正射影Qはp×p行列である。QRは基本と呼ばれ、Q⊥Rは、目で見ることができない反射率の部分(即ち、スペクトル感度)なので黒色成分と呼ばれる。
【0035】
スペクトルQR及びRは同じ三刺激値(例えば、同じ色)を有するので、それらはメタマーである。しかし、Q⊥Rの三刺激値はゼロであり、したがってブラック・メタマーと呼ばれる。換言すれば、
x=ΛR=ΛRx
及び
0=ΛR0
である。図4は、マクベス・カラーチェッカーのマゼンタ・パッチの反射率R(100)、基本メタマーRx(200)、及びブラック・メタマーR0(300)を示す。図6及び7から、100及び200のスペクトルは人間の眼で見て同じ色を作り出すことが分かる。上述の例は、反射率に基づくスペクトル感度を使用するが、通貨種目を通る光の透過も同様に使用することができる。
【0036】
本開示は、人間の眼の視知覚に対応する色空間の例を使用してきたが、他の実現例では、センサ・セットの知覚に基づいて色空間を確立することができる。より具体的には、人間の眼の知覚は人間の眼に存在する3つの錐体の感度に基づいている。同様の方策を、特定の感度をそれぞれ有するセンサ・セットに取り入れて、特定の波長域に感度をそれぞれ有するセンサ・セット(例えば、4つのセンサ)のセンサの感度に基づいて色空間を確立することができる。したがって、波長域は非可視スペクトル内の範囲であることができる。
【0037】
センサ・セットを使用して確立されている色空間を適用することによって、それに対応する直交空間を確立することが可能になり、それによって、非可視色空間及びそれに対応する直交空間を使用して色の判別を行うことができる。
【0038】
いくつかの実現例では、検証部を使用して既知の通貨種目が評価される。検証部は、後で通貨種目を判別するために、基準データ・セットにおいて使用される既知の通貨種目からのスペクトル感度情報を取得する。少なくとも1つの既知の通貨種目のスペクトル感度情報は、検証部に類似した機器から取得することができ、その結果は検証部のメモリ部内に格納することができる。
【0039】
スペクトル感度情報が既知の通貨種目から取得されると、色空間(例えば、CIE XYZもしくはCIE Lab空間又は非可視色空間)を使用してこの情報をさらに評価することができる。上述の空間(例えば、CIE XYZ又はCIE Lab)の1つにおける既知の通貨種目のスペクトル感度情報を解析することによって、少なくとも1つのスペクトル成分感度の判別が可能になる。いくつかの実現例では、CIE空間の1つにおいて解析されたスペクトル感度によって、基本メタマー(即ち、第1の成分スペクトル感度)及びブラック・メタマー(即ち、第2の成分スペクトル感度)の判別が可能になる。複数の既知の通貨種目をこの開示される手法で解析して、通貨の様々な額面に対して基準データ・セット群を作ることができる。このように、未知の通貨種目が群の中に含まれる既知の通貨種目のいずれか1つに属することを判断することができる。
【0040】
いくつかの実現例では、既知の通貨種目群はそれら個々のスペクトル成分感度(例えば、基本メタマー及びブラック・メタマー)によって表される。さらなる実現例では、個々のスペクトル成分感度は検証部内に格納されて、通貨種目を判別するのに使用される。特に、未知の通貨種目は検証部を使用して評価される。検証部は、挿入された未知の通貨種目から個々のスペクトル成分感度を取得するように構成される。検証部はさらに、挿入された未知の通貨種目に関する情報を、メモリ部に格納された既知の通貨種目群中の少なくとも1つの既知の通貨種目に関する情報と比較するように構成される。基本メタマー(即ち、第1の成分スペクトル感度)が既知の通貨種目の予め定められた許容差内にある場合、挿入された通貨種目が、既知の通貨種目によって表されるような所与の額面(又は等級)に属すると判断することができる。いくつかの実現例では、検証部はさらに、未知の通貨種目のブラック・メタマーの比較が既知の通貨種目(特定の額面を有する)のブラック・メタマーの予め定められた許容差内にある場合、挿入された未知の通貨種目が(既に判断された額面の)真正の通貨種目であると判断するように構成される。
【0041】
図8は、色空間(例えば、CIE XYZ又はCIE Lab)内における(特定の額面の)真正の通貨種目及び非真正の通貨種目の第1の成分スペクトル感度(基本メタマー)の比較を示す。(特定の額面の)既知の真正の通貨種目及び未知の通貨種目は両方とも、類似した第1の成分スペクトル感度を呈する。未知の通貨種目の第1の成分スペクトルは、既知の真正の通貨種目と同様の第1の成分スペクトル感度を呈するので、未知の通貨種目は既知の真正の通貨種目の額面の一要素であると判断することができる。図9に示されるように、未知の通貨種目の第2の成分スペクトル感度(ブラック・メタマー)は、既知の真正の通貨種目の第2の成分スペクトル感度とは異なる。したがって、既知の真正の通貨種目及び未知の通貨種目の第2の成分スペクトル感度を使用して、真正の通貨種目を非真正の通貨種目と判別するのが有用である。
【0042】
いくつかの実現例では、未知の通貨種目の分類(又は判別)は両方のスペクトル成分感度を併せて使用して達成することができる。本開示は第1のスペクトル成分感度及び第2のスペクトル成分感度が別個に評価される、又は異なる評価に使用される実現例を提示してきたが、各成分感度の比較を使用して、通貨種目の等級間の判別を独立に、あるいは併せて行うことができる。
【0043】
スペクトル成分感度は分類技術に対する入力として使用することができる。様々な分類技術が存在し、1つのそのような技術の例が、「CURRENCY DISCRIMINATION」という名称の米国特許出願(第61/084,358号)に開示されており、その全体を本明細書に組み込む。その出願に開示されている換算技術に対する入力は、本開示に記載されているスペクトル成分感度であることができる。
【0044】
いくつかの実現例では、未知の通貨種目を分類するのに既知の通貨種目群が使用される。既知の通貨種目それぞれについて、その特定の通貨種目に最適な色空間を使用してスペクトル成分感度を確立することができる。例えば、未知の通貨種目を、10米ドルの銀行券によって表される等級の一要素であると分類するには、CIE XYZ色空間を使用することができる。さらに、未知の通貨種目を、5ユーロの銀行券によって表される等級の一要素であると分類するには、CIE Lab色空間を使用することができる。いくつかの実現例では、個々の既知の通貨種目はそれぞれ、他の既知の通貨種目を評価するのに使用される色空間とは異なる色空間を使用して評価される(例えば10米ドルの紙幣と20米ドルの紙幣)。
【0045】
検証部は、他の既知の通貨種目の少なくとも1つが、少なくとも1つの他の既知の通貨種目とは異なる色空間を分類に使用する、複数の既知の通貨種目に対するスペクトル成分感度を格納するように適合させることができる。
【0046】
図10に示されるように、いくつかの実現例では、自動取引機械50は、未知の通貨種目と少なくとも1つの既知の額面(又は等級)とを判別する検証部52を含む。検証部は、感知部54、メモリ部56、及びマイクロプロセッサなどの処理部58を含むことができる。検証部は、挿入された通貨種目との比較のため、少なくとも1つの成分感度を有する少なくとも1つの既知の通貨種目のスペクトル感度情報60を格納する。
【0047】
図11に示されるように、通貨検証部は、未知の通貨種目からスペクトル感度を取得し(ブロック100)、未知の通貨種目のスペクトル感度を第1の成分(例えば、基本メタマー)及び第2の成分(例えば、ブラック・メタマー)に分離し(ブロック102)、未知の通貨種目のスペクトル感度の少なくとも1つの成分を、特定の額面を有する少なくとも1つの既知の通貨種目のスペクトル感度の少なくとも1つの成分と比較する(ブロック104)ように構成することができる。通貨検証部は、未知の通貨種目が少なくとも1つの既知の通貨種目の等級の一要素であるかを判断する(ブロック106)。例えば、比較に基づいて、未知の通貨種目の少なくとも1つの成分感度が、少なくとも1つの既知の通貨種目の少なくとも1つの成分感度の予め定義された許容差内にある場合、未知の通貨種目は、少なくとも1つの既知の通貨種目の等級の一要素であると判断することができる。
【0048】
他の実現例は請求項の範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未知の通貨種目のスペクトル感度を評価することによって該未知の通貨種目を少なくとも1つの既知の通貨種目と比較する方法であって、
該未知の通貨種目からスペクトル感度を取得するステップと、
該未知の通貨種目の該スペクトル感度を第1の成分及び第2の成分に分離するステップと、
該未知の通貨種目の該スペクトル感度の少なくとも1つの成分を、特定の額面を有する少なくとも1つの既知の通貨種目のスペクトル感度の少なくとも1つの成分と比較するステップと、
該未知の通貨種目が該少なくとも1つの既知の通貨種目の等級の一要素であるかを判断するステップであって、該未知の通貨種目の該少なくとも1つの成分感度が、該少なくとも1つの既知の通貨種目の該少なくとも1つの成分感度と比較したときにその予め定義された許容差内にある場合、該未知の通貨種目が該少なくとも1つの既知の通貨種目の該等級の一要素であると判断するステップとを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、該第1のスペクトル成分が基本メタマーである方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、該第2のスペクトル成分がブラック・メタマーである方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法において、色空間を使用して該スペクトル感度を評価することを含む方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、該色空間に直交する第2の空間が確立される方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法において、該色空間がCIE XYZ空間である方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法において、該色空間がCIE Lab空間である方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法において、通貨検証部によって行われる方法。
【請求項9】
挿入された未知の通貨種目からスペクトル感度情報を取得するように構成された検証部を備える、通貨種目を判別する装置であって、該検証部が、
少なくとも1つの成分感度を有する少なくとも1つの既知の通貨種目のスペクトル感度情報を格納するメモリ部と、
該挿入された未知の通貨種目からスペクトル情報を取得する感知部と、
該挿入された未知の通貨種目の該スペクトル感度情報から該挿入された未知の通貨種目の少なくとも1つのスペクトル成分感度を取得するように構成された処理部とを含み、
該検証部が、挿入された未知の通貨種目の該少なくとも1つの成分感度を該少なくとも1つの既知の通貨種目の少なくとも1つの成分感度と比較し、該挿入された未知の通貨種目の該少なくとも1つの成分感度の比較が該メモリ部に格納された該少なくとも1つの既知の通貨種目の該少なくとも1つの成分感度の予め定められた許容差内にある場合、該挿入された未知の通貨種目が該少なくとも1つの既知の通貨種目の等級の一要素であると判断するように構成された装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置において、該メモリ部が、該少なくとも1つの既知の通貨種目の第2のスペクトル成分感度を格納するように構成された装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の装置において、該検証部がさらに、該挿入された未知の通貨種目の該スペクトル感度情報から、該挿入された未知の通貨種目の第2のスペクトル成分感度を取得するように構成された装置。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか1項に記載の装置において、該第1の成分スペクトル感度が基本メタマーである装置。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか1項に記載の装置において、該第2の成分スペクトル感度がブラック・メタマーである装置。
【請求項14】
請求項9乃至13のいずれか1項に記載の装置において、該検証部がさらに、CIW XYZ空間を使用して該スペクトル感度を判断するように構成された装置。
【請求項15】
請求項9乃至14のいずれか1項に記載の装置において、該検証部がさらに、CIE Lab空間を使用して該スペクトル感度を判断するように構成された装置。
【請求項1】
未知の通貨種目のスペクトル感度を評価することによって該未知の通貨種目を少なくとも1つの既知の通貨種目と比較する方法であって、
該未知の通貨種目からスペクトル感度を取得するステップと、
該未知の通貨種目の該スペクトル感度を第1の成分及び第2の成分に分離するステップと、
該未知の通貨種目の該スペクトル感度の少なくとも1つの成分を、特定の額面を有する少なくとも1つの既知の通貨種目のスペクトル感度の少なくとも1つの成分と比較するステップと、
該未知の通貨種目が該少なくとも1つの既知の通貨種目の等級の一要素であるかを判断するステップであって、該未知の通貨種目の該少なくとも1つの成分感度が、該少なくとも1つの既知の通貨種目の該少なくとも1つの成分感度と比較したときにその予め定義された許容差内にある場合、該未知の通貨種目が該少なくとも1つの既知の通貨種目の該等級の一要素であると判断するステップとを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、該第1のスペクトル成分が基本メタマーである方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、該第2のスペクトル成分がブラック・メタマーである方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法において、色空間を使用して該スペクトル感度を評価することを含む方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、該色空間に直交する第2の空間が確立される方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法において、該色空間がCIE XYZ空間である方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法において、該色空間がCIE Lab空間である方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法において、通貨検証部によって行われる方法。
【請求項9】
挿入された未知の通貨種目からスペクトル感度情報を取得するように構成された検証部を備える、通貨種目を判別する装置であって、該検証部が、
少なくとも1つの成分感度を有する少なくとも1つの既知の通貨種目のスペクトル感度情報を格納するメモリ部と、
該挿入された未知の通貨種目からスペクトル情報を取得する感知部と、
該挿入された未知の通貨種目の該スペクトル感度情報から該挿入された未知の通貨種目の少なくとも1つのスペクトル成分感度を取得するように構成された処理部とを含み、
該検証部が、挿入された未知の通貨種目の該少なくとも1つの成分感度を該少なくとも1つの既知の通貨種目の少なくとも1つの成分感度と比較し、該挿入された未知の通貨種目の該少なくとも1つの成分感度の比較が該メモリ部に格納された該少なくとも1つの既知の通貨種目の該少なくとも1つの成分感度の予め定められた許容差内にある場合、該挿入された未知の通貨種目が該少なくとも1つの既知の通貨種目の等級の一要素であると判断するように構成された装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置において、該メモリ部が、該少なくとも1つの既知の通貨種目の第2のスペクトル成分感度を格納するように構成された装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の装置において、該検証部がさらに、該挿入された未知の通貨種目の該スペクトル感度情報から、該挿入された未知の通貨種目の第2のスペクトル成分感度を取得するように構成された装置。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか1項に記載の装置において、該第1の成分スペクトル感度が基本メタマーである装置。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか1項に記載の装置において、該第2の成分スペクトル感度がブラック・メタマーである装置。
【請求項14】
請求項9乃至13のいずれか1項に記載の装置において、該検証部がさらに、CIW XYZ空間を使用して該スペクトル感度を判断するように構成された装置。
【請求項15】
請求項9乃至14のいずれか1項に記載の装置において、該検証部がさらに、CIE Lab空間を使用して該スペクトル感度を判断するように構成された装置。
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2011−530114(P2011−530114A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521282(P2011−521282)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/052099
【国際公開番号】WO2010/014705
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(506258187)エムイーアイ インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/052099
【国際公開番号】WO2010/014705
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(506258187)エムイーアイ インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】
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