説明

通過管理システム

【課題】部屋の入退室管理や商品の在庫管理などに使用され、壁の一方側と他方側とに設置される質問器がLF帯の起動信号を発生し、応答器がそれに応答して内蔵電池を電源としてUHF帯の信号で識別情報(ID)を含む応答信号を返信することで、質問器が壁を隔てて一方側から他方側へ通過する前記応答器を検知するようにしたLF帯、UHF帯併用の通過管理システムにおいて、そのような電波式によっても、壁の両側に設置した質問器間の干渉を無くせるようにする。
【解決手段】質問器31,32は、相反動作で前記起動信号を送信する(一方がONのときに他方はOFF)。したがって、安くて使い勝手の良い電波式を用いても、壁の両側にそれぞれ設置される質問器間での干渉を無くすことができる。これによって、それらを近接配置することができ、配線の引き回しなど、施工上の問題を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(RADIO FREQUENCY IDENTIFICATION)システムに用いられ、応答器(ICタグ)が、質問器から非接触で起動されて情報を受け、自身の識別情報を返信する、バッテリを内蔵するアクティブ型の非接触ICタグシステムまたはICカードシステムなどとして実現される通過管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
前記のような通過管理システムの典型的な従来技術は、特許文献1で示されている。図15は、その従来技術による通過管理システムを説明するための図である。通過管理システムは、壁1を隔てて、一方側から他方側へ通過する物体(図15の例では、ユーザ2が部屋3の外側から内側へ入室している)を検知することで、たとえば、この図15で示すように部屋3の入退室管理に使用される場合、どのユーザが部屋3内に存在し、何時に出入りしたかなどを管理することができ、また物品管理に使用される場合、どの商品が何時出入荷したか、倉庫内にどの商品が幾つ存在するのかなどを管理することができるようになっている。
【0003】
この通過管理システムは、起動装置である赤外線発信器4および認証装置を構成する管理装置5に、ICタグから成る応答器6を備えて構成される。赤外線発信器4は、壁1の内外に配置され、相互に異なるIDを重畳した赤外線を狭小な認証エリア7に向けて照射している。前記赤外線を受信した応答器6は、前記赤外線発信器4の識別情報(ID)に、自身の識別情報を含む応答信号を無線で返信する。前記応答信号はアンテナ8で受信され、管理装置5は、前記識別情報が予め登録されたものであれば、ドア9の解錠を行う。
【0004】
しかしながら、上述の従来技術は、応答器6を起動させるのに赤外線を用いている。赤外線は、前述のように狭小な認証エリア7を形成するのには好都合であるが、たとえば赤外線発信器4が天井設置で、名札型の応答器6が下を向いていたりすると、反応しないようなこともあり、利便性に劣る。そこでこのような問題を解消するために、LF帯を起動に利用する従来技術が、特許文献2で提案されている。
【0005】
図16は、その特許文献2の従来技術による通過管理システムを説明するための図である。この図16において、前述の図1の構成に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。この通過管理システムは、前記起動装置および認証装置を構成する質問器14およびそれらを管理する管理装置10に、前記ICタグから成る応答器16を備えて構成される。
【0006】
図17は、前記質問器14および応答器16の電気的構成を示すブロック図である。質問器14では、制御回路11は、自身に予め設定されている固有の識別情報(ID)を含む起動信号を生成し、LF帯送信回路12において、誘導磁界の信号成分に重畳させ、増幅させてLFアンテナ13から第1の無線通信方式(LF)にて応答器16に向けて送信させる。これによって、応答器16の周囲には認証エリア17が形成され、その認証エリア17内に入った前記ユーザ2などが所持する応答器16では、質問器14からの前記起動信号をLFアンテナ21で受信した後に、LF帯受信回路22が制御回路23を起動し、該制御回路23は、前記質問器14の識別情報に、自身に予め設定されている固有の識別情報(ID)を含む応答信号を生成し、RF送受信回路24からRFアンテナ25を介して、第2の無線通信方式(UHF)にて、質問器14に対して返信させる。
【0007】
前記応答信号は、質問器14のRFアンテナ20からRF送受信回路15で受信され、前記制御回路11に入力されて、応答した応答器16を識別する。識別した応答器16が予め登録された識別情報を有するものであれば、制御回路11は、前記RF送受信回路15からRFアンテナ20を介して、前記第2の無線通信方式(UHF)にて、認証完了した応答器16の識別情報をACK信号として送信する。そのACK信号をRFアンテナ25からRF送受信回路24で受信すると、制御回路23は応答信号の送信を終了する。
【0008】
また、認証を完了した際には、制御回路11は、表示部18とブザー19とで認証完了を示すと同時に、ドア9の解錠を行う。また、管理装置10は、制御回路11の認証結果から、前述のように、どのユーザが部屋3内に存在し、何時に出入りしたかなどを管理しており、またどの商品が何時出入荷したか、倉庫内にどの商品が幾つ存在するのかなどを管理している。
【0009】
このようにLF帯(長波帯:30〜300kHz)の起電力で応答器16を起動させて、制御回路23が、RF送受信回路24に、内蔵電池26を電源として、UHF帯(極超短波帯:300MHz〜3GHz)の応答信号を返信させている。このような構成で、安くて使い勝手(向きを選ばない)が良く、また前記認証エリア17を、1.5〜2mの比較的狭い範囲に正確に規定することができるようになっている。さらにまた、UHF帯のRF送受信回路24の消費電力が10〜20mAと大きいのに対して、LF帯のLF帯受信回路22が数μAの微弱な電力で起動するので、待機状態でそのRF送受信回路24を使用しないことで、前記内蔵電池26の電力消費を抑え、応答器2の長寿命化が図られている。
【特許文献1】特開2006−72706号公報
【特許文献2】特開2003−21679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、電波式は上述のように安くて使い勝手が良いものの、やはり電波の干渉(認証エリア17の重なり)が生じるという問題がある。また、LF帯は、構造物を通過するので、壁面の前後に2つの質問器を設置した場合、どちらの質問器からの起動信号を受信したのか分らず、通過の方向を判別できない。一方で、施工上、質問器14は、壁1に近い所に設置したいという要望がある。
【0011】
本発明の目的は、電波式によっても、壁の両側に設置した質問器間の干渉を無くすことができる通過管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の通過管理システムは、対を成す複数の複数の質問器と、1または複数の応答器とを備え、前記質問器が、自身の識別情報を含む起動信号を第1の無線通信方式にて送信し、前記応答器が、その起動信号に応答して起動し、自身の識別情報を含む応答信号を第2の無線通信方式にて返信することで、前記質問器が、エリアの一方側から他方側へ通過する前記応答器を検知する通過管理システムにおいて、前記対を成す質問器は、相反動作で前記起動信号を送信することを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、対を成す複数の質問器が予め個別に自身に設定された識別情報(ID)を含むLF帯の起動信号をコイルに与えて誘導磁界を発生し、第1の無線通信方式にて応答器へ送信し、応答器がその誘導磁界をコイルで受信してその起電力で起動し、第2の無線通信方式であるUHF帯の信号で、前記質問器の識別情報に、予め自身に個別に設定された識別情報(ID)を含む応答信号を返信し、その応答信号を前記対を成す質問器が受信することで、エリアの一方側から他方側へ通過する前記応答器を検知するようにしたLF帯、UHF帯併用の通過管理システムにおいて、前記対を成す質問器は、相反動作で前記起動信号を送信する。すなわち、各質問器は、前記起動信号の誘導磁界の発生を周期的に行い、たとえば誘導磁界を発生(ON)する第1の動作と、発生しない(OFF)第2の動作とのように、少なくとも2種類の動作を行う。そして、前記対を成す質問器間で、相互に同期して、一方が第1の動作を行っている際に、他方が第2の動作を行う。
【0014】
したがって、安くて使い勝手の良い電波式を用いても、エリアの両側にそれぞれ設置される質問器間での干渉を無くすことができる。また、通過方向を正確に検知することができる。これによって、質問器を近接配置することができ、配線の引き回しなど、施工上の問題を小さくすることができる。
【0015】
なお、幅の広い扉(出入り口)等で、壁の片側に複数組の質問器が設けられていてもよく、その場合、総ての質問器が相反動作してもよく、或いは対角線上等の離れている質問器同士は同相で動作してもよい。また、中間レベルの誘導磁界を発生するような動作を含めて、3つ以上の動作状態が設定されてもよい。
【0016】
また、本発明の通過管理システムでは、前記起動信号の送信パワーには、予め定める第1の送信パワーと、前記第1の送信パワーより小さい予め定める第2の送信パワーとが設定されており、一方の質問器が前記第1の送信パワーで送信する際、他方の質問器が前記第2の送信パワーで送信することで前記相反動作を実現することを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、前記相反動作を実現するにあたって、単純なON/OFF動作の裏返しではなく、たとえばフルパワーと、それからαだけ低いレベルの微弱パワーとの裏返しとする。
【0018】
したがって、壁の一方側に在る応答器に対して、他方側に在る質問器からの起動信号は雑音となり、両側の質問器の間に実質的に非検知のエリアを設けることができ、エリアを分離することができる。そして、エリアが分離されていることで、応答器からの応答信号が、どちらの質問器の識別情報を先に返信したのかによって、通過方向を正確に検知することができる。
【0019】
さらにまた、本発明の通過管理システムは、少なくとも前記第2の送信パワーを調整することができるレベル調整手段を備えることを特徴とする。
【0020】
上記の構成によれば、質問器間の距離、それらの間にせり出す壁の高さなどの設置環境、所望とする前記雑音のレベル、或いは所望とする前記第2の送信パワーのレベルなどに応じて、該第2の送信パワーを調整可能とする。第1の送信パワーも調整可能とされてもよい。
【0021】
したがって、前記設置環境や所望とする応答性に適応させることができる。
【0022】
また、本発明の通過管理システムでは、前記レベル調整手段は、スイッチであることを特徴とする。
【0023】
上記の構成によれば、スイッチによって、前記設置環境に応じて、前記第2の送信パワーを事前設定することができる。
【0024】
さらにまた、本発明の通過管理システムでは、前記レベル調整手段は、前記起動信号を受信するメンテナンス用の受信機と、前記メンテナンス用の受信機で受信された両質問器による起動信号のレベル差を検出し、所望のD/U比を得られるそれぞれの第2の送信パワーを求める演算手段と、前記演算手段で得られた前記第2の送信パワーを前記第2の無線通信方式にて各質問器へ送信し、設定する送信手段とを備えて構成されることを特徴とする。
【0025】
上記の構成によれば、メンテナンス用の受信機によって、実際の設置環境における応答器の位置にて起動信号のレベルを検出し、その結果から、演算手段が適応した第2の送信パワーを求めるので、前記設置環境や所望とする応答性に適応することができる。また、第2の送信パワーを、送信手段が前記第2の無線通信方式にて各質問器へ送信することで設定を行うので、設置後に極めて簡単な調整作業で適応させることができる。
【0026】
また、本発明の通過管理システムでは、前記レベル調整手段は、各質問器に設けられ、他の質問器からの起動信号を受信する受信機と、前記受信機で受信された起動信号のレベルを検出し、所望のD/U比を得られる第2の送信パワーを求める演算手段と、前記演算手段で得られた前記第2の送信パワーを前記他の質問器へ送信し、設定する送信手段とを備えて構成されることを特徴とする。
【0027】
上記の構成によれば、前記レベル調整手段を互いに設けるようにし、レベル調整を、実際に受信機が他の質問器からの起動信号のレベルを検出し、その結果から、演算手段が適応した第2の送信パワーを求め、送信手段がそれを前記他の質問器へ送信することで行う。
【0028】
したがって、前記設置環境や所望とする応答性に適応することができるとともに、設置後に自動調整によって適応させることができる。前記他の質問器への第2の送信パワーの送信は、前記第2の無線通信方式によって行われてもよく、或いは各質問器が接続される上位の管理装置などを介して、他方の質問器へ送信するようにしてもよい。
【0029】
さらにまた、本発明の通過管理システムでは、前記各質問器は有線接続されており、かつ何れか1つがマスターとなり、残余がスレーブとなり、マスター側のタイミングにスレーブ側が同期することで、前記相反動作を実現することを特徴とする。
【0030】
上記の構成によれば、前記ON/OFF等の相反動作を、各質問器間を有線接続することによって行うことができる。
【0031】
また、本発明の通過管理システムでは、前記質問器は、他の質問器からの起動信号を受信し、その受信パワーが予め定めるレベル以下であるときに、自身からの起動信号を送信することで、前記相反動作を実現することを特徴とする。
【0032】
上記の構成によれば、前記ON/OFF等の相反動作を、他の質問器からの起動信号の状態を見て行う。したがって、同期用に信号線を接続する必要は無い。
【0033】
さらにまた、本発明の通過管理システムでは、前記各質問器は、起動信号の末尾に、自身からの起動信号の送信が終了することを表す完了メッセージを含めて送信し、他の質問器は、その完了メッセージを受信すると、自身の起動信号の送信を開始することで、前記相反動作を実現することを特徴とする。
【0034】
上記の構成によれば、前記ON/OFF等の相反動作を、他の質問器からの起動信号の状態を見て行う。
【0035】
したがって、同期用に信号線を接続する必要は無い。また、LF帯の雑音が多い環境においても、誤動作なしに同期を行うことができる。
【0036】
また、本発明の通過管理システムでは、前記各質問器は、自身からの起動信号の送信が終了することを表す完了メッセージを前記第2の無線通信方式にて送信し、他の質問器は、その完了メッセージを受信すると、自身の起動信号の送信を開始することで、前記相反動作を実現することを特徴とする。
【0037】
上記の構成によれば、前記ON/OFF等の相反動作を、他の質問器からの完了メッセージの状態を見て行う。
【0038】
したがって、同期用に信号線を接続する必要は無い。また、UHF帯の雑音が多い環境においても、誤動作なしに同期を行うことができる。
【0039】
さらにまた、本発明の通過管理システムでは、前記各質問器は個別にクロックを有し、前記マスター側の質問器からスレーブ側の質問器へ、予め定める周期毎に、前記クロックをリセットするリセット信号を送信することで、前記同期を実現することを特徴とする。
【0040】
上記の構成によれば、前記相反動作を実現する同期を、各質問器に設けたクロックで取るようにし、そのクロックのずれを、前記有線接続されたマスター側の質問器からスレーブ側の質問器へ予め定める周期毎にリセット信号を送信し、そのリセット信号で較正させる。
【0041】
したがって、マスター側の質問器からスレーブ側の質問器へクロックそのものを送信する場合に比べて、前記同期を取るための信号を簡略化することができる。
【0042】
また、本発明の通過管理システムでは、前記質問器は、起動信号を生成する制御回路と、前記起動信号を誘導磁界の信号成分に重畳して前記第1の無線通信方式にて前記応答器へ送信するLF帯送信回路およびLFアンテナと、前記応答器からの前記応答信号を受信し、前記制御回路へ与えるRFアンテナおよびRF受信回路とを備えて構成され、前記応答器は、前記質問器からの起動信号を受信するLFアンテナおよびLF帯受信回路と、内蔵電池と、受信された前記起動信号で起動され、予め設定されている固有の識別情報を含む応答信号を生成する制御回路と、前記内蔵電池を電源として、前記応答信号を前記第2の無線通信方式にて質問器に対して返信するRF送信回路およびRFアンテナとを含むことを特徴とする。
【0043】
上記の構成によれば、質問器がLF帯(長波帯:30〜300kHz)の起電力で応答器を起動させて、応答器側の制御回路が、RF送信回路に、内蔵電池を電源として、UHF帯(極超短波帯:300MHz〜3GHz)の応答信号を返信させる。こうして、前述のLF帯、UHF帯併用の通過管理システムを実現することができる。また、UHF帯のRF送信回路の消費電力が10〜20mAと大きくても、LF帯のLF帯受信回路が数μAの微弱な電力で起動するので、待機状態でRF送信回路を使用しないことで、比較的長距離の通信を実現しつつも、前記内蔵電池の電力消費を抑え、応答器の長寿命化を図ることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の通過管理システムは、以上のように、質問器が予め個別に自身に設定された識別情報(ID)を含むLF帯の起動信号をコイルに与えて誘導磁界を発生し、第1の無線通信方式にて応答器へ送信し、応答器がその誘導磁界をコイルで受信してその起電力で起動し、第2の無線通信方式であるUHF帯の信号で、前記質問器の識別情報に、予め自身に個別に設定された識別情報(ID)を含む応答信号を返信し、その応答信号を質問器が受信することで、前記質問器が、エリアの一方側から他方側へ通過する前記応答器を検知するようにしたLF帯、UHF帯併用の通過管理システムにおいて、前記質問器は、相反動作で前記起動信号を送信する。
【0045】
それゆえ、安くて使い勝手の良い電波式を用いても、エリアの両側にそれぞれ設置される質問器間での干渉を無くすことができる。また、通過方向を正確に検知することができる。これによって、それらを近接配置することができ、配線の引き回しなど、施工上の問題を小さくすることができる。
【0046】
また、本発明の通過管理システムは、以上のように、前記相反動作を実現するにあたって、単純なON/OFF動作の裏返しではなく、たとえばフルパワーと、それからαだけ低いレベルの微弱パワーとの裏返しとする。
【0047】
それゆえ、エリアの一方側に在る応答器に対して、他方側に在る質問器からの起動信号は雑音となり、両側の質問器の間に実質的に非検知のエリアを設けることができ、エリアを分離することができる。そして、エリアが分離されていることで、応答器からの応答信号が、どちらの質問器の識別情報を先に返信したのかによって、通過方向を正確に検知することができる。
【0048】
さらにまた、本発明の通過管理システムは、以上のように、設置環境、所望とする前記雑音のレベル、或いは所望とする前記第2の送信パワーのレベルなどに応じて、該第2の送信パワーを調整可能とする。
【0049】
それゆえ、前記設置環境や所望とする応答性に適応させることができる。
【0050】
また、本発明の通過管理システムは、以上のように、前記レベル調整手段をスイッチで構成する。
【0051】
それゆえ、前記スイッチによって、前記設置環境に応じて、前記第2の送信パワーを事前設定することができる。
【0052】
さらにまた、本発明の通過管理システムは、以上のように、前記レベル調整手段を、前記起動信号を受信するメンテナンス用の受信機と、そのメンテナンス用の受信機で受信された両質問器による起動信号のレベル差を検出し、所望のD/U比を得られるそれぞれの第2の送信パワーを求める演算手段と、前記演算手段で得られた前記第2の送信パワーを前記第2の無線通信方式にて各質問器へ送信し、設定する送信手段とによって構成する。
【0053】
それゆえ、前記設置環境や所望とする応答性に適応することができる。また、第2の送信パワーを、送信手段が前記第2の無線通信方式にて各質問器へ送信することで設定を行うので、設置後に極めて簡単な調整作業で適応させることができる。
【0054】
また、本発明の通過管理システムは、以上のように、前記レベル調整手段を互いに設けるようにし、レベル調整を、実際に受信機が他の質問器からの起動信号のレベルを検出し、その結果から、演算手段が適応した第2の送信パワーを求め、送信手段がそれを前記他の質問器へ送信することで行う。
【0055】
それゆえ、前記設置環境や所望とする応答性に適応することができるとともに、設置後に自動調整によって適応させることができる。
【0056】
さらにまた、本発明の通過管理システムは、以上のように、各質問器を有線接続し、かつ何れか1つがマスターとなり、残余がスレーブとなり、マスター側のタイミングにスレーブ側が同期することで、前記相反動作を実現する。
【0057】
それゆえ、前記ON/OFF等の相反動作を、各質問器間を有線接続することによって行うことができる。
【0058】
また、本発明の通過管理システムは、以上のように、前記質問器は、他の質問器からの起動信号を受信し、その受信パワーが予め定めるレベル以下であるときに自身からの起動信号を送信することで、前記相反動作を実現する。
【0059】
それゆえ、前記ON/OFF等の相反動作を、他の質問器からの起動信号の状態を見て行い、同期用に信号線を接続する必要は無い。
【0060】
さらにまた、本発明の通過管理システムは、以上のように、前記各質問器は、起動信号の末尾に、自身からの起動信号の送信が終了することを表す完了メッセージを含めて送信し、他の質問器は、その完了メッセージを受信すると、自身の起動信号の送信を開始することで、前記相反動作を実現する。
【0061】
それゆえ、前記ON/OFF等の相反動作を、他の質問器からの起動信号の状態を見て行い、同期用に信号線を接続する必要は無い。また、LF帯の雑音が多い環境においても、誤動作なしに同期を行うことができる。
【0062】
また、本発明の通過管理システムは、以上のように、前記各質問器は、自身からの起動信号の送信が終了することを表す完了メッセージを前記第2の無線通信方式にて送信し、他の質問器は、その完了メッセージを受信すると、自身の起動信号の送信を開始する。
【0063】
それゆえ、前記ON/OFF等の相反動作を、他の質問器からの完了メッセージの状態を見て行い、同期用に信号線を接続する必要は無い。また、UHF帯の雑音が多い環境においても、誤動作なしに同期を行うことができる。
【0064】
さらにまた、本発明の通過管理システムは、以上のように、前記相反動作を実現する同期を各質問器に設けたクロックで取るようにし、そのクロックのずれを、有線接続されたマスター側の質問器からスレーブ側の質問器へ予め定める周期毎にリセット信号を送信し、較正させる。
【0065】
それゆえ、マスター側の質問器からスレーブ側の質問器へクロックそのものを送信する場合に比べて、前記同期を取るための信号を簡略化することができる。
【0066】
また、本発明の通過管理システムは、以上のように、前記質問器は、起動信号を生成する制御回路と、前記起動信号を誘導磁界の信号成分に重畳して前記第1の無線通信方式にて前記応答器へ送信するLF帯送信回路およびLFアンテナと、前記応答器からの前記応答信号を受信し、前記制御回路へ与えるRFアンテナおよびRF受信回路とを備え、前記応答器は、前記質問器からの起動信号を受信するLFアンテナおよびLF帯受信回路と、内蔵電池と、受信された前記起動信号で起動され、予め設定されている固有の識別情報を含む応答信号を生成する制御回路と、前記内蔵電池を電源として、前記応答信号を前記第2の無線通信方式にて質問器に対して返信するRF送信回路およびRFアンテナとを含む。
【0067】
それゆえ、待機状態でRF送信回路を使用しないことで、比較的長距離の通信を実現しつつも、内蔵電池の電力消費を抑え、応答器の長寿命化を図ることができるLF帯、UHF帯併用の通過管理システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の第1の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。この通過管理システムは、前記図16の壁1を挟んで、部屋3の内側と外側とにそれぞれ設置される2台の質問器31,32と、ICタグから成る1または複数(図1の例では1台)の応答器16とを備えて構成され、前記質問器31,32が、自身に予め設定されている固有の識別情報(ID)を含む起動信号を第1の無線通信方式(LF)にて送信し、前記応答器16が、その起動信号に応答して起動し、自身に予め設定されている固有の識別情報(ID)を含む応答信号を第2の無線通信方式(UHF)にて返信することで、前記質問器31,32が、壁1を隔てて一方側から他方側へ通過する前記応答器16を検知するLF帯、UHF帯併用の通過管理システムである。その検知結果は、前記図16で示すような管理装置10などで集計されて、前述のような部屋3の入退室管理や商品の在庫管理などに使用される。応答器16は前述の図17で示す応答器16に同一であり、質問器31,32は前述の図17で示す質問器14に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。
【0069】
注目すべきは、前記質問器31,32において、起動信号を生成し、また応答信号を受付け、ACK信号を生成する制御回路41,42の内、一方(図1の例では質問器31)がマスターとなり、他方(図1の例では質問器32)がスレーブとなり、マスター側のクロック発生器43で作成されたクロック信号を、該マスター側の制御回路41が使用するとともに、インバータ44で反転して、信号線49によって接続されたスレーブ側の制御回路42に同期信号として与え、図2で示すように、制御回路41と制御回路42とが、前記起動信号の送信タイミングが相互に同期し、ON/OFFとOFF/ONとの相反動作を行うことである。たとえば、前記ON/OFFの周期は100msecであり、ON期間は50msecである。
【0070】
したがって、各質問器31,32は前記起動信号の発生を周期的に行い、かつ相互に同期して、相手方の質問器32,31の起動信号が発生されない休止(OFF:第2の動作)期間に、自身の起動信号を発生(ON:第1の動作)することになり、安くて使い勝手の良い電波式を用いても、壁1の両側にそれぞれ設置される質問器31,32間での干渉を無くすことができる。また、通過方向を正確に検知することができる。これによって、それらを近接配置することができ、配線の引き回しなど、施工上の問題を小さくすることができる。
【0071】
なお、ドア9(出入り口)の幅が広い等で、壁1の片側に複数組の質問器が設けられていてもよく、その場合、総ての質問器が相反動作してもよく、或いは対角線上等の離れている質問器同士は同相で動作してもよい。また、中間レベルの誘導磁界を発生するような動作を含めて、3つ以上の動作状態が設定されてもよい。
【0072】
[実施の形態2]
図3は、本発明の実施の第2の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。この通過管理システムは、前述の図1で示す通過管理システムに類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。なお、この図3および以降の他の実施の形態では、図面の簡略化のために、応答器16の図示を省略する。注目すべきは、本実施の形態では、各質問器31a,32aのLF帯送信回路12aは、出力制御部45を備えており、図4で示すように、前記クロック信号(同期信号)に応答して、予め定める第1の送信パワーであるフルパワーPonと、予め定める第2の送信パワーであるそれからα、たとえば12dBだけ低いレベルの微弱パワーとを周期的に繰返し、かつ前記相反動作を行うことである。
【0073】
このため、制御回路41a,42aは、前記クロック信号(同期信号)に応答して(タイミングを取るものの)、連続して起動信号を生成している。また、前記クロック発生器43で作成されたクロック信号およびインバータ44で反転された同期信号は、質問器31a,32aの各出力制御部45にそれぞれ入力される。前記LF帯送信回路12aは、たとえば制御回路41a,42aからの起動信号を前記誘導磁界の信号成分に重畳させる変調回路と、その出力を増幅し、LFアンテナ13に与えるゲイン可変のパワーアンプとを備えて構成され、前記出力制御部45が前記アンプのゲインを切換えることで、図4で示すような送信パワーの切換えを行うことができる。
【0074】
図5〜図7は、前記アンプのゲイン切換えによる効果を説明するための図である。図5は、本件発明者の実験したLFアンテナ13の設置位置に、それによる前記認証エリア17の目標エリアを模式的に示す平面図である。LFアンテナ13は天井設置とし、かつこの図5で示すように、ドア9(壁1)から0.5m離れて、ドア9の幅方向の中央位置上に設置している。そして、前記認証エリア17の目標エリアは、幅2m、該LFアンテナ13からドア9(壁1)とは反対側に1mとなっている。
【0075】
そして、前記ユーザ2となる実験者が、カード状の応答器16を、水平にしてこのドア9を通り抜けた場合のビットエラーレートの分布を図6で示し、垂直にして通り抜けた場合のビットエラーレートの分布を図7で示す。また、図6(a)および図7(a)は、2台の質問器31a,32aの内、一方のみを動作、すなわち前記起動信号を前記フルパワーPonで送信させた場合のビットエラーレートの分布を示し、図6(b)および図7(b)は、2台の質問器31a,32aを、前記フルパワーPonと、それからαだけ低いレベルの微弱パワーとを周期的に繰返えす前記相反動作を行なわせた場合のビットエラーレートの分布を示す。
【0076】
図6(a)および図7(a)から、前記カード状の応答器16を、水平にしても、垂直にしても、質問器31a,32aの一方のみが動作している場合には、ビットエラーレートの分布に大きな差は無く、壁1の反対側まで、認証エリア17が入り込んでいることが理解される。これに対して、2台の質問器31a,32aを、前記フルパワーPonと、それからαだけ低いレベルの微弱パワーとで前記相反動作を行なわせると、LFアンテナ13のドア9(壁1)とは反対側については、図6(a)および図7(a)の単体動作の場合と大差ない分布となっているけれども、ドア9(壁1)側では、ビットエラーレートが高く、特にドア9の両サイドは高くなっていることが理解される。
【0077】
したがって、前記相反動作を実現するにあたって、図2で示すような単純なON/OFF動作の裏返しではなく、図4で示すようなフルパワーPonと、それからαだけ低いレベルの微弱パワーとを切換えることで、壁1の一方側に在る応答器16に対して、他方側に在る質問器(たとえば32a)からの起動信号は雑音となり、両側の質問器31a,32aの間に実質的に非検知のエリアを設けることができ認証エリア17を分離することができる。そして、認証エリア17が分離されていることで、応答器16からの応答信号が、どちらの質問器の識別情報を先に返信したのかによって、通過方向を正確に検知することができる。また、前記第2の送信パワーを、前記干渉が生じない程度で可能な限り大きく、すなわちレベルαを小さくすることで、他方側に在る質問器(32a)は、該他方側に在る応答器16に連続して起動信号を与えることができ、応答性を向上することができる。
【0078】
前記レベルα[dB]は、双方の質問器31a,32aの認証エリア17にて応答器16が充分に受信でき、かつ質問器31a,32a間の中心(ドア9の位置)で前記認証エリア17を分離できるD(希望波)/U(妨害波)比に設定されている。
【0079】
[実施の形態3]
図8は、本発明の実施の第3の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。この通過管理システムは、前述の図3で示す通過管理システムに類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、本実施の形態では、各質問器31b,32bのLF帯送信回路12bにおける出力制御部45bは、レベル調整手段である設定スイッチ46によって、前記レベルαが調整可能となっていることである。
【0080】
したがって、質問器31b,32b間の距離、それらの間にせり出す壁1の高さなどの設置環境、所望とする前記雑音のレベル(D/U比)、或いは所望とする前記第2の送信パワーのレベルなどに応じて、設置工事後に、該第2の送信パワー(Pon−α[dB])を調整することができ、前記設置環境や所望とする応答性に適応させることができる。また、好ましくは前記第1の送信パワー(フルパワーPonのレベル)も調整可能とされてもよい。
【0081】
[実施の形態4]
図9は、本発明の実施の第4の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。この通過管理システムは、前述の図8で示す通過管理システムに類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、本実施の形態では、各質問器31c,32cのLF帯送信回路12cは出力制御部45cによってレベル調整可能となっているとともに、そのレベル調整を、レベル調整手段である施工用端末50によって行うことである。
【0082】
前記施工用端末50は、LFアンテナ51と、LF帯受信回路52と、制御回路53と、RF送信回路54と、RFアンテナ55とを備えて構成される。前記LFアンテナ51およびLF帯受信回路52は、前記起動信号を受信するメンテナンス用の受信機となり、演算手段である制御回路53が、それらで受信された両質問器31c,32cによる起動信号のレベル差を検出し、所望のD/U比を得られるそれぞれの前記レベルαを求め、送信手段となるRF送信回路54およびRFアンテナ55を介して、各質問器31c,32cへ送信する。具体的には、各質問器31c,32cからの起動信号の第2の送信パワー(OFFタイミングでの送信出力(Pon−α[dB]))を測定した結果をPra,Prbとすると、質問器31cへは、
αa=D/U−(Pra−Prb) ・・・(1)
質問器32cへは、
αb=D/U−(Prb−Pra) ・・・(2)
を設定信号にて送信する。
【0083】
各質問器31c,32cでは、そのレベルαa,αbを、前記RFアンテナ20からRF送受信回路15を介して制御回路41c,42cが受信し、前記出力制御部45cにOFFタイミングでの送信出力Pon−α[dB]として設定する。
【0084】
したがって、施工用端末50によって、実際の設置環境における応答器16の位置にて起動信号のレベルを検出し、その結果から、制御回路53が適応した第2の送信パワー或いは前記レベルαを求めるので、前記設置環境や所望とする応答性に適応することができる。また、前記レベルαを、RF送信回路54およびRFアンテナ55を介して、前記第2の無線通信方式(UHF)にて各質問器31c,32cへ送信することで設定を行うので、設置後に極めて簡単な調整作業で適応させることができる。
【0085】
[実施の形態5]
図10は、本発明の実施の第5の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。この通過管理システムは、前述の図9で示す通過管理システムに類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、本実施の形態では、各質問器31d,32dには、他の質問器32d,31dからの起動信号を受信する受信機となるLFアンテナ61およびLF帯受信回路62が設けられており、演算手段となる制御回路41d,42dは、これらを介して、前記起動信号のOFFタイミングでのレベルPra,Prbを相互監視しており、前記式1,2から求めたレベルαa,αbを、送信手段となる前記RFアンテナ20からRF送受信回路15を介して、相手方の質問器32d,31dに設定することである。
【0086】
このように構成することで、前述の施工用端末50を用いること無く、各質問器31d,32dが自立的にOFF時の送信出力を設定することができる。
【0087】
前記レベルαa,αbの送信は、前記RFアンテナ20およびRF送受信回路15を使用するのではなく、上位の前記管理装置10などを介して行われてもよい。また、スレーブ側の質問器32dは、受信レベルPraをマスター側の質問器31dに送信し、このマスター側の制御回路41dが両方の質問器31d,32dのレベルαa,αbを演算し、設定するようにしてもよい。
【0088】
[実施の形態6]
図11は、本発明の実施の第6の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。この通過管理システムは、前述の図1で示す通過管理システムに類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、本実施の形態では、各質問器31e,32eはクロック発生器43を備えており、クロック信号を自走させるとともに、制御回路41e,42eは、前記起動信号のON/OFF動作を、前記LFアンテナ61およびLF帯受信回路62によって受信される相手方の質問器32e,31eからの起動信号を監視し、キャリアOFFとなってから自機の起動信号をONすることである。
【0089】
このように構成することで、同期用の信号線49を不要にすることができる。なお、LF帯送信回路12に代えて、前述の送信パワーが可変のLF帯送信回路12a等を用いることで、OFFタイミングにおける送信パワーを0としないようにしてもよい。
【0090】
[実施の形態7]
図12は、本発明の実施の第7の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。この通過管理システムは、前述の図11で示す通過管理システムに類似しており、特に送受信回路の構成は同様である。注目すべきは、本実施の形態では、各質問器31f,32fの制御回路41f,42fは、自機の起動信号中に、その送信を完了する(ONからOFFへの切換わりの)前に、送信完了メッセージを含めて送信することである。相手方の質問器32f,31fでは、前記LFアンテナ61およびLF帯受信回路62によって、起動信号中の前記送信完了メッセージが受信されると、制御回路42f,41fは、自機の起動信号をONする。
【0091】
このように前記ON/OFF等の相反動作を、他の質問器からの起動信号の状態を見て行うことで、同期用の信号線49を不要にすることができる。また、LF帯の雑音が多い環境においても、誤動作なしに同期を行うことができる。
【0092】
[実施の形態8]
図13は、本発明の実施の第8の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。この通過管理システムは、前述の図12で示す通過管理システムに類似している。注目すべきは、本実施の形態では、各質問器31g,32gの制御回路41g,42gは、自機の起動信号の送信中に、その送信を完了する(ONからOFFへの切換わりの)前に、前記RF送受信回路15からRFアンテナ20を介して、前記第2の無線通信方式(UHF)にて、送信完了メッセージを送信することである。相手方の質問器32g,31gでは、前記RFアンテナ20およびRF送受信回路15によって前記送信完了メッセージが受信されると、制御回路42g,41gは、自機の起動信号をONする。
【0093】
このように前記ON/OFF等の相反動作を、他の質問器からの完了メッセージの状態を見て行うことで、同期用の信号線49を不要にすることができる。また、UHF帯の雑音が多い環境においても、誤動作なしに同期を行うことができる。
【0094】
[実施の形態9]
図14は、本発明の実施の第9の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。この通過管理システムは、前述の図1および図11で示す通過管理システムに類似している。注目すべきは、本実施の形態では、各質問器31h,32hは、個別に自走するクロック発生器43を備えているとともに、マスター側の質問器31hの制御回路41hから信号線49によって接続されたスレーブ側の質問器32hの制御回路42hへ、予め定める周期毎に、前記クロックをリセットするリセット信号を送信することである。すなわち、前記相反動作を実現する同期を、各質問器31h,32hに設けたクロック発生器43で取るようにし、そのクロックのずれを、前記リセット信号で較正させる。
【0095】
したがって、マスター側の質問器31hからスレーブ側の質問器32hへクロックそのものを送信する場合に比べて、前記同期を取るための信号を簡略化することができる。特に、信号線49に前記リセット信号以外の信号が伝送される場合に有利である。また、マスター側の制御回路41hは、スレーブ側の質問器32hからの起動信号をモニタし、その送信タイミングが予め定める時間以上ずれた場合にだけ、前記リセット信号を送信するようにしてもよい。さらにまた、前記リセット信号を、前記信号線49を介してではなく、前記RF送受信回路15およびRFアンテナ20や、前記LF帯送信回路12およびLFアンテナ13などを使用して送信するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施の第1の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図1で示す通過管理システムの動作を説明するための波形図である。
【図3】本発明の実施の第2の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図3で示す通過管理システムの動作を説明するための波形図である。
【図5】図3で示す通過管理システムにおけるアンプのゲイン切換えによる効果を説明するための図であり、LFアンテナの設置位置に、それによる認証エリアの目標エリアを模式的に示す平面図である。
【図6】図3で示す通過管理システムにおけるアンプのゲイン切換えによる効果を説明するための図であり、カード状の応答器を水平にしてドアを通り抜けた場合のビットエラーレートの分布を示す図である。
【図7】図3で示す通過管理システムにおけるアンプのゲイン切換えによる効果を説明するための図であり、前記カード状の応答器を垂直にして通り抜けた場合のビットエラーレートの分布を示す図である。
【図8】本発明の実施の第3の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の第4の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の第5の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施の第6の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施の第7の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の実施の第8の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の実施の第9の形態に係る通過管理システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図15】従来技術による通過管理システムを説明するための図である。
【図16】他の従来技術による通過管理システムを説明するための図である。
【図17】図16で示す従来技術の電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0097】
1 壁
2 ユーザ
3 部屋
9 ドア
10 管理装置
12,12a,12b,12c LF帯送信回路
13,21,51,61 LFアンテナ
16 応答器
17 認証エリア
18 表示部
19 ブザー
20,25,55 RFアンテナ
22,52,62 LF帯受信回路
23,53 制御回路
24,54 RF送受信回路
31,31a〜31h,32,32a〜32h 質問器
41,41a,41c〜41h,42,42a,42c〜42h 制御回路
43 クロック発生器
44 インバータ
45,45b,45c 出力制御部
46 設定スイッチ
49 信号線
50 施工用端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対を成す複数の質問器と、1または複数の応答器とを備え、前記質問器が、自身の識別情報を含む起動信号を第1の無線通信方式にて送信し、前記応答器が、その起動信号に応答して起動し、自身の識別情報を含む応答信号を第2の無線通信方式にて返信することで、前記質問器が、エリアの一方側から他方側へ通過する前記応答器を検知する通過管理システムにおいて、
前記対を成す質問器は、相反動作で前記起動信号を送信することを特徴とする通過管理システム。
【請求項2】
前記起動信号の送信パワーには、予め定める第1の送信パワーと、前記第1の送信パワーより小さい予め定める第2の送信パワーとが設定されており、一方の質問器が前記第1の送信パワーで送信する際、他方の質問器が前記第2の送信パワーで送信することで前記相反動作を実現することを特徴とする請求項1記載の通過管理システム。
【請求項3】
少なくとも前記第2の送信パワーを調整することができるレベル調整手段を備えることを特徴とする請求項2記載の通過管理システム。
【請求項4】
前記レベル調整手段は、スイッチであることを特徴とする請求項3記載の通過管理システム。
【請求項5】
前記レベル調整手段は、
前記起動信号を受信するメンテナンス用の受信機と、
前記メンテナンス用の受信機で受信された両質問器による起動信号のレベル差を検出し、所望のD/U比を得られるそれぞれの第2の送信パワーを求める演算手段と、
前記演算手段で得られた前記第2の送信パワーを前記第2の無線通信方式にて各質問器へ送信し、設定する送信手段とを備えて構成されることを特徴とする請求項3記載の通過管理システム。
【請求項6】
前記レベル調整手段は、各質問器に設けられ、
他の質問器からの起動信号を受信する受信機と、
前記受信機で受信された起動信号のレベルを検出し、所望のD/U比を得られる第2の送信パワーを求める演算手段と、
前記演算手段で得られた前記第2の送信パワーを前記他の質問器へ送信し、設定する送信手段とを備えて構成されることを特徴とする請求項3記載の通過管理システム。
【請求項7】
前記各質問器は有線接続されており、かつ何れか1つがマスターとなり、残余がスレーブとなり、マスター側のタイミングにスレーブ側が同期することで、前記相反動作を実現することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の通過管理システム。
【請求項8】
前記質問器は、他の質問器からの起動信号を受信し、その受信パワーが予め定めるレベル以下であるときに、自身からの起動信号を送信することで、前記相反動作を実現することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の通過管理システム。
【請求項9】
前記各質問器は、起動信号の末尾に、自身からの起動信号の送信が終了することを表す完了メッセージを含めて送信し、他の質問器は、その完了メッセージを受信すると、自身の起動信号の送信を開始することで、前記相反動作を実現することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の通過管理システム。
【請求項10】
前記各質問器は、自身からの起動信号の送信が終了することを表す完了メッセージを前記第2の無線通信方式にて送信し、他の質問器は、その完了メッセージを受信すると、自身の起動信号の送信を開始することで、前記相反動作を実現することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の通過管理システム。
【請求項11】
前記各質問器は個別にクロックを有し、前記マスター側の質問器からスレーブ側の質問器へ、予め定める周期毎に、前記クロックをリセットするリセット信号を送信することで、前記同期を実現することを特徴とする請求項7記載の通過管理システム。
【請求項12】
前記質問器は、
起動信号を生成する制御回路と、
前記起動信号を誘導磁界の信号成分に重畳して前記第1の無線通信方式にて前記応答器へ送信するLF帯送信回路およびLFアンテナと、
前記応答器からの前記応答信号を受信し、前記制御回路へ与えるRFアンテナおよびRF受信回路とを備えて構成され、
前記応答器は、
前記質問器からの起動信号を受信するLFアンテナおよびLF帯受信回路と、
内蔵電池と、
受信された前記起動信号で起動され、予め設定されている固有の識別情報を含む応答信号を生成する制御回路と、
前記内蔵電池を電源として、前記応答信号を前記第2の無線通信方式にて質問器に対して返信するRF送信回路およびRFアンテナとを含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の通過管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−177774(P2008−177774A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8316(P2007−8316)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】