説明

速乾性多成分水性コーティングを製造する方法

【課題】高価でなく貯蔵及び取り扱い過程で不安定化を招きにくい、速乾性多成分水性コーティング組成物の提供。
【解決手段】基体表面に速乾性多成分水性コーティングを調製する方法であって、下記成分A及び成分Bを同時に、又はほぼ同時に基体表面に塗布する工程、
a)該成分Aは少なくとも一つの水不溶性吸収剤を含み;且つ
b)該成分Bは遅乾性水性バインダー組成物を含む;及び
多成分水性コーティングを乾燥させる工程、を含み、
該吸収剤は有機超吸収性ポリマー、イオン交換樹脂、中空球状ポリマー、モレキュラーシーブ、タルク、無機吸収剤、多孔性炭素質物質、非多孔性炭素質物質及びこれらの混合物からなる群から選択される、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許第5,947,632号として発行された出願番号第08/807,858号の分割出願である1999年3月12日に出願された同時継続出願第09/267,328号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、速乾性多成分水性コーティング組成物、特にトラフィックペイント又はロードマーキング塗料を製造する方法に関する。また、本発明は、速乾性多成分水性コーティング組成物、特にトラフィックペイント又はロードマーキング塗料の組成物に関する。ここで使用される用語「多成分」とは、1以上の工程で基体に塗布される2以上の成分を有するトラフィックペイントを云う。
【背景技術】
【0003】
一般的コーティング及び特にロードマーキング塗料又はトラフィックペイントの多くの重要な特性の一つは、塗布後特定の基体表面上でそれらが乾燥する場合のスピードである。例えば、トラフィックペイントの乾燥スピードは、塗料の道路表面への塗布及びその後の乾燥過程での道路交通に対する遮断期間の長さで規定される。傾向としては、交通の流れの遮断が段々短くなるような要求がなされ、この要求を速乾性塗料の使用により満足させようとしている。ここで、「コーティング」及び「ペイント」は互換的に使用され、トラフィックペイント及びロードマーキング塗料を包含する一般的なものを意味する。加えて、用語「トラフィックペイント」及び「ロードマーキング塗料」は、ここでは互換的に使用される。
【0004】
溶剤ベース速乾性コーティングは、比較的低沸点有機溶剤に溶解され、懸濁され、分散される有機高分子樹脂(しばしばバインダーと呼ばれる)をベースとしている。低沸点揮発性有機溶剤は塗料を道路に塗布した後、迅速に蒸発し、新たに塗布されたロードマーキング塗料の望ましい速乾性性能を提供する。しかしながら、環境への揮発性有機溶剤の放出に加えて、塗料配合物の拡散により、作業者は有機溶剤の蒸気に曝されやすい。これらの欠点及び政府及び地域社会からの増大する厳密な環境規制のために、速乾特性及び/又は性能を維持しながら、より環境に優しいコーティング又は塗料を開発することが強く望まれている。
【0005】
より環境的に優しいコーティングは、溶剤ベースのポリマー及び樹脂よりもむしろ水性ベース、水性のものを使用する。溶剤ベース及び水性の双方のコーティング配合物は、バインダーポリマーを含む。ここで用いられる用語バインダーポリマーはコーティング組成物中に含まれ、且つ、フィルム形成中に増加または沈殿し、得られるフィルム組成物中に存在するポリマーを意味する。‐10℃よりも低いTg値を有するものは、不良なダートピックアップ抵抗性を有し、70℃より大きいTg値を有するものは通常減少したフィルム形成能が示されるので、典型的に、バインダーポリマーは、‐10℃から70℃のTg値を有する。しかしながら、ある種の用途においては、Tgの下限値は、‐10℃より低い場合さえあり得る。例えば、ルーフコーティングに使用されるバインダーポリマーは、‐40℃の低さのガラス転移点を有することができる。ここで用いられる「Tg」とは、ガラス転移温度の略語である。ポリマーのガラス転移温度、Tgは、Tgより低い温度における剛性の、ガラス状態からTgより高い温度で液状又はゴム状態に転移する温度である。ポリマーのTgは典型的には、Tg値としての温度転移に対する熱流のミッドポイントを使用して示差走査熱量計(DSC)によって測定される。典型的なDSC測定のための加熱速度は1分当たり20℃である。
【0006】
主として高沸点、高い蒸発潜熱、高い極性及び水の強力な水素結合の組み合わせのために、水性塗料又はコーティングの乾燥時間は、有機溶剤ベースコーティングによって示されるものより一般的に長い。乾燥時間は、コーティングが塗布される雰囲気の相関湿度に強く依存する。水性塗料は、高湿度において乾燥するには数時間以上かかるかもしれない。遅滞した乾燥速度の問題は、厚いフィルム(約500μより大)のトラフィックペイント用の場合には特に深刻である。長い乾燥時間は、より長い交通遮断のために、水性塗料、特にトラフィックペイント及びロードマーキング塗料の使用の妥当性をかなり制限する。
【0007】
より短い乾燥時間を有する水性コーティング組成物、即ち、速乾性コーティングを製造する試みにおいて、pH感受性バインダーシステムのような、凝固を誘発する塩若しくは酸又はそれらの混合物を使用する方法が考案された。
【0008】
ヨーロッパ特許EP‐B‐0,409,459号は、0℃より低くないTgを有するアニオン安定性エマルションポリマー、ポリアミン官能性ポリマー及び揮発性塩基を、組成物が実質的にすべてのポリアミン官能性ポリマーが非イオン状態であるpHを有するような量で含む水性コーティング組成物であり、ポリアミン官能性ポリマーの50重量%が揮発性塩基の蒸発に際して5〜7のpH値において溶解するものを開示する。非イオン状態においては(即ち、脱プロトン化した状態)、アニオン安定性エマルション及び組成物中に存在するであろう他のアニオン成分とポリアミンとの相互作用は、排除される。揮発性塩基は、空気乾燥条件下で放出されるよう十分揮発性でなければならない。揮発性塩基の不存在下では、プロトン化されたアミン部位がアニオン性成分と相互作用してコーティング組成物を不安定にする。米国特許第5,804,627号、米国特許第5,824,734号及び米国特許第5,922,398号のすべてが、pH等のいくつかの特性を調整することによって誘起される潜在的不安定性を有するコーティング組成物を開示する。
【0009】
米国特許第5,947,632号は、タルク、中空球状ポリマー、固体ポリマー(例えば、酸、ナトリウム又はカリウム形のイオン交換樹脂ビーズ)及び無機化合物(例えば、無機超吸収性剤ゲル、スミカゲルなどを含む多くの通常の範疇の物質を含む水性コーティング組成物を開示する。これらの物質は、水性バインダーと同じ第一の工程で又は引き続く第二の工程でのいずれかで塗布されるとき、コーティングの乾燥を速める特性を分担する。また、米国特許第5,947,632号は、水性コーティング組成物へのガラスビーズの導入を開示する。ガラスビーズは、トラフィックペイント及びロードマーキング塗料に逆反射性能を付与し、且つコーティング組成物用のフィラーとしても供されることができる。滑り止め材などの他の添加剤もまた開示される。
【0010】
ここで用いられる場合、「吸収剤」の用語は、中空球状ポリマー、イオン交換樹脂ビーズ(例えば、酸形、塩基形、塩形、一部中和形又は混合塩形)、タルク、モレキュラーシーブ、非多孔性炭素質物質、多孔性炭素質物質を含む無機化合物(例えば、無機超吸収性ゲル、スミカゲル)及び超吸収性ポリマー(ここではSAP又はSAPsと略称される)をはじめとする一般的な物質を意味する。
【0011】
米国特許第5,947,632号のコーティング組成物は、より短い乾燥時間を有する。これらの組成物は、ここでは「速乾性水性バインダー組成物」と定義される水性バインダー組成物をベースとしている。これらの「速乾性水性バインダー組成物」は、特別に変性されたバインダーポリマーを含む。そのようなバインダーポリマーは、ポリマー鎖が基体に塗布された後、コーティング組成物の不安定化を提供するように意図された一種類以上の特殊化された官能性を有する単単独タイプのものでよい。それとは別に、バインダーポリマーは、一つのタイプより多いもので、各タイプが特定の種類の特殊化された官能性を有するものでもよい。これら両方の場合において、斯かる特殊化された官能性を有しないバインダーポリマーもまた存在してよい。例えば、典型的な速乾性水性バインダー組成物は、乾燥速度を加速するように意図された官能性を持たないフィルム形成性バインダーポリマー、組成物の不安定化を引き起こすことができるような官能性を有する1以上のポリマー及び、不安定化をもたらし、それ故基体への塗布後加速された乾燥性を有するような官能性を有するポリマーと相互に作用するよう意図された他の成分を含む。より特殊な例においては、フィルム形成性ポリマーは、アニオン界面活性剤によって水中で安定化されてもよい。その水性ディスパーションは、また、ポリアミン官能性ポリマーである他のポリマー及びポリアミン官能性ポリマーのアミノ基が脱プロトン化されるのに十分な量のアンモニア等の揮発性塩基又は揮発性アミンを含有してもよい。この速乾性水性バインダー組成物を基体に塗布するに際して、揮発性塩基は蒸発し、ポリアミン官能性ポリマーのアミノ基をプロトン化し、正に帯電したアンモニア基を形成する。これらのカチオン性アンモニウム基は、ついでアニオン性界面活性剤分子と会合して、これらのアニオン性界面活性剤分子がフィルム形成性ポリマーの分子を引き続き安定化できないようにする。一旦、このように系が不安定化されると、乾燥が加速される。
【特許文献1】欧州特許第0409459号明細書
【特許文献2】米国特許第5,804,627号明細書
【特許文献3】米国特許第5,824,734号明細書
【特許文献4】米国特許第5,922,398号明細書
【特許文献5】米国特許第5,947,632号明細書
【特許文献6】米国特許第3,494,878号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
吸収剤を添加して又は添加せずに、速乾性水性バインダー組成物が交通標識塗料を塗布する過程で必要とされる乾燥の加速をしばしば提供する一方で、それらは、ある種の市場からそれらを排除する重大な欠点を有している。乾燥を補うために要求される特殊化された官能性を有するポリマーは、単にフィルム形成特性を付与するように意図されたものより高価であるので、遅乾性水性バインダー組成物よりも本来高価である。費用の増大は、特殊化した官能性を導入するために用いられる特殊化されたモノマーのより高いコストからもたらされるばかりでなく、増加した労力及び多成分系ポリマーの調製、貯蔵及びブレンドによって強制される装置コストからも由来している。これらの高い製造コストは、速乾性水性バインダー組成物を含有するロードマーキング塗料が、これらの塗料性能能力の全てではなくいくつかだけを備えたものに大きな需要があるような、いくつかの市場からそれらを排除する価格で提示されることを余儀なくさせている。塗料が排除される市場とは、交通量が非常に少ないので、速乾性水性バインダー組成物及び吸収剤の双方に基づいた塗料の乾燥スピードの全てではなく幾つかを発揮するロードマーキング塗料が受け入れられているような、田園地域であることがしばしばである。
【0013】
また、低価格のロードマーキング塗料を使用するよう制限されている多くの市場においては、装置及び人員双方とも高い価格を支持することができる市場においてよりも洗練されていない場合がそれに該当する。これらの低価格市場においては、もし、貯蔵及び取り扱いの特殊条件が適合されなければ、速乾性水性バインダー組成物の使用は問題となり得る。問題には、速乾性組成物の取り扱い及び貯蔵過程での揮発性塩基(例えば、アンモニア)の逸失に帰し得るものが含まれる。揮発性塩基の時期尚早の損失は、結果的に貯蔵及び塗布容器内での速乾性コーティング組成物表面上のスキンニングをもたらす。また、揮発性塩基の時期尚早の損失は、基体表面(例えば道路)への塗布の前に、コーティング組成物の一部又は全部がゲル化する原因ともなり得る。更に、これらの系の高いpHが、より廉価な貯蔵及び塗布装置に腐食的な損害を与えやすくしている。受け入れ可能ではあるが、より高価である構成材料(例えば、ステンレススチール)をそのような装置に使用することは、低価格市場では、しばしば選択され得ないのである。
【0014】
米国特許第3,494,878号は、遅乾性コーティング組成物に混合されたイオン交換樹脂(IER)を含むコーティング組成物を開示している。IER含有コーティング組成物は貯蔵安定性塗料配合物であり、一度塗布されれば、基礎となる基体において色素による汚れに抵抗する。色素の封鎖は、貯蔵、出荷及び使用以前のコーティング組成物にIERを添加することにより達成される。米国特許第3,494,878号の本質的特徴が、IER粒子が汚れに対し有効である十分高い濃度で存在することであるように、結果として生じる塗料配合物が貯蔵及び出荷中に安定であることもまた本質的である。安定性は塗料の固形分を最小にし、塗料中のIER濃度を最小にし、且つ界面活性剤のような安定化成分の濃度を増加させることにより達成される。不幸なことに、安定性を作り出すすべての重要な要素は、結果として生じるIER含有塗料を速乾性系としては完全に無力なものとする。更に、IER粒子がコーティング組成物の乾燥を促進させるために有するかもしれないすべての潜在能力は、IER粒子をコーティング組成物に混合してから最初の数秒又は数分の間に喪失される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
しかしながら、我々は,予想外にも、遅乾性水性バインダー組成物は吸収剤と混合されて速乾性の多成分水性コーティング組成物を完成させることを見出した。高価でなく貯蔵及び取り扱い過程で不安定化を招きにくい遅乾水性バインダー組成物を使用する新たに見出された能力は、速乾性多成分水性コーティング組成物用のための重要な新たな市場を切り開いた。
【0016】
ここで用いられる、組成物Aは少なくとも一つの水不溶性吸収剤を含み、組成物Bは遅乾性水性バインダー組成物を含む。また、ここで使用されているように、引き続く方法の工程が二つの成分を含むときはいつでも、その中の一つは遅乾性水性バインダー組成物を含み、その成分の一つは成分Bと呼ばれ、他の一つは成分Cと称される。成分B及びCは、組成がお互いに同一でもよいし、異なってもよい。本発明は、基体表面に速乾性多成分水性コーティングを調製する方法であって、
下記成分A及び成分Bを同時に、又はほぼ同時に基体表面に塗布する工程、
a)該成分Aは少なくとも一つの水不溶性吸収剤を含み;且つ
b)該成分Bは遅乾性水性バインダー組成物を含む;及び
多成分水性コーティングを乾燥させる工程、を含み、
該吸収剤は有機超吸収性ポリマー、イオン交換樹脂、中空球状ポリマー、モレキュラーシーブ、タルク、無機吸収剤、多孔性炭素質物質、非多孔性炭素質物質及びこれらの混合物からなる群から選択される、方法に関する。
【0017】
この方法は、遅乾性水性バインダー組成物を含む成分Cを、成分A及び成分Bがすでに塗布されている基体表面に塗布する追加の逐次工程を更に含むことができる。
【0018】
本発明は、また、基体表面上に速乾性多成分水性コーティングを製造する方法であって、下記の逐次工程を含む方法:
a)少なくとも一つの水不溶性吸収剤を含む成分Aを基体表面に塗布する工程;
b)遅乾性水性バインダー組成物を含む成分Bを水不溶性吸収剤が塗布されている基体表面に塗布する工程;及び
c)多成分水性コーティングを乾燥させる工程、
但し、該吸収剤は、有機超吸収性ポリマー、イオン交換樹脂、中空球状ポリマー、モレキュラーシーブ、タルク、無機吸収剤、多孔性炭素質物質、非多孔性炭素質物質及びこれらの混合物からなる群から選択される、に関する。
【0019】
本法は、更に遅乾性水性バインダー組成物を含む成分Cを、成分A水不溶性吸収剤を塗布する前に基体表面に塗布する追加の逐次工程を含むものであってもよいし、遅乾性水性バインダー組成物を含む成分Cを、成分A及び成分Bがすでに塗布されている基体表面に塗布する追加の逐次工程を含むものでもよい。
【0020】
本発明の別の態様は、基体表面に速乾性多成分水性コーティングを調製する方法であって、下記の逐次工程を含む方法:
a)遅乾性水性バインダー組成物を含む成分Bを基体表面に塗布する工程;
b)少なくとも一つの水不溶性吸収剤を含む成分Aを、すでに成分Bが塗布されている基体表面に塗布する工程;及び
c)多成分水性コーティングを乾燥させる工程、
但し、該吸収剤は、有機超吸収性ポリマー、イオン交換樹脂、中空球状ポリマー、モレキュラーシーブ、タルク、無機吸収剤、多孔性炭素質物質、非多孔性炭素質物質及びこれらの混合物からなる群から選択される、に関する。
この方法は、更に遅乾性水性バインダー組成物Cを、成分Aと共に同時に、又は、ほぼ同時に塗布することを含んでもよい。
【0021】
本発明のより更なる態様においては、ガラスビーズが、成分A,B及びCにこれらの成分を塗布する任意の工程において含まれ、または成分A,B及びCを塗布する工程に先立つ、その間の又はその後の別の工程において含まれる。
【0022】
多重被覆システムは、また、本発明の一態様である。ここで使用される「多重被覆システム」は、ここで明確に記載される一連の塗布工程のいずれかの組み合わせを意味する。例えば、成分C、A及びBの逐次塗布工程の後に、成分A,B及びGの逐次工程が加えられうる。
【0023】
また、本発明は、本発明の方法のいずれかによって形成される複合物を含む。本発明の多成分水性コーティングは、特に多成分水性ロードマーキング塗料となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、多くのコーティング、塗装又は標識塗装に使用可能である。例えば、本発明の方法及び組成物は、トラフィックペイント、ロードマーキング塗料、ハウスペイント、ビルディング、壁、屋根及び他の構造物表面の外装又は内装用メンテナンスコーティングとして使用されることができる。基体表面は、木材、金属(アルミニウム及びスチール等)ポリマー、プラスター及びその他のものでよい。他の適用には、表示板、ボート、自動車等の広範囲な製品に存在するコーティング金属基体が含まれる。すべての基体は、新鮮な又は時間の経過したすでに存在するコーティング又は塗料の1以上の層を有するものでもよい。
【0025】
トラフィックペイント又はここで述べられる他のコーティング用の最終配合物を形成するために、コーティング組成物に追加の成分が添加されるのが一般に好ましい。これらの追加成分の例としては、増粘剤;レオロジー変性剤;染料;金属イオン封鎖剤;バイオサイド;分散剤;二酸化チタン、有機顔料、カーボンブラックなどの顔料;炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ及びケイ酸塩等の増量剤;ガラス又はミクロスフェアー、石英及び砂等のフィラー;凍結防止剤;可塑剤;シラン等の接着促進剤;造膜助剤;湿潤剤;界面活性剤;スリップ剤;架橋剤;消泡剤;着色剤;粘着付与剤;ワックス;防腐剤;凍結/融解プロテクター;腐食阻止剤;及び抗凝集剤が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0026】
ここで、用語「道路」とは、一般的な用語として用いられ、歩行者、乗り物、トラクター、又は航空機に連続して、絶えず又は間欠的に曝され又は曝されるかもしれない屋内又は屋外の固体表面を含むものである。「道路」の幾つかの非限定的な例としては、高速道路、通り、車道、歩道、走路、タキシング区域、アスファルト舗装区域、駐車場、屋上及び屋内フロアー等(工場フロアー、ショッピングモール内部等)が含まれる。その表面材料は、メーソンリー、タール、アスファルト、樹脂、コンクリート、セメント、石、スタッコ、タイル、木材、高分子物質及びそれらの混合物であってよい。新たな又は時間の経過したコーティング又はマーキングがすでに塗布されている表面に1以上の他の層の上に斯かる二成分の又は多成分の水性コーティングを塗布することもまた本発明の範囲内である。
【0027】
用語「速乾性」は、吸収剤を含むことなく塗布された、330ミクロンの湿潤塗膜厚さを有するコーティング組成物のフィルムが、23℃で90%の相対湿度において2時間未満のドライスルー(dry‐through)時間を示すことを意味するものとして、ここでは使用される。用語「速乾性水性バインダー組成物」は、基体に塗布されたとき、まさに今与えられた「速乾性」の定義に合致するドライスルー時間を有するフィルムを形成する少なくとも一つのバインダーポリマーの水性ディスパーションを意味する。
【0028】
用語「遅乾性水性バインダー組成物」は、吸収剤を含むことなく330ミクロンのフィルムの厚さで基体に塗布されたとき、23℃で90%の相対湿度において2時間と等しいか又はそれを超えるドライスルー時間を有するフィルムを形成する、少なくとも一つのバインダーポリマーの水性ディスパーションを意味するものとして、ここでは使用される。基体への塗布過程での又は終了後のある時点で「遅乾性水性バインダー組成物」に吸収剤を加えて、「速乾性多成分水性コーティング組成物」を生成することができることも本発明の範囲内である。
【0029】
本発明において、加速された乾燥が、フィルム表面上で、フィルムの深さ方向で部分的に若しくは完全に、またはそれらの組み合わせとして起きるかもしれない。乾燥速度の増大は、表面乾燥時間、指触乾燥時間、又はドライ‐トゥ‐ノーピックアップ(dry‐to‐no‐pickup)時間、ドライスルー時間、耐水性若しくは耐雨性又はその他の新たに塗布された塗料の性能を分析し及び/又は測定することにより観察又は決定されることができる。ASTM試験法は、乾燥速度を決定するために有用である。特に有用なのは「室温における有機コーティングの乾燥、硬化又はフィルム形成試験方法」に関するASTM法D1640である。更に有用なのは、ここの下記の実施例1〜3で定義されるドライスルー時間測定用の試験方法である。
【0030】
本発明のポリマーは、ここではバインダーポリマーと称される。バインダーポリマーが調製される具体的な方法は、本発明にとって特に重要ではない。遅乾性水性バインダー組成物に有用なバインダーポリマーは、バルク及び溶液重合、及び水性ディスパージョン、サスペンション及びエマルション重合により、又は、水若しくは水と水混和性溶媒の混合物に可溶な、部分可溶な又は分散した望ましいポリマー、及び水若しくは水と水混和性溶媒の混合物に溶解され得る、部分溶解され得る又は分散され得る望ましいポリマーを生成するであろういかなる他の方法により調製されてもよい。本発明の遅乾性水性バインダー組成物に使用されるバインダーポリマーを調製する好ましい方法は、水性エマルション重合である。このようにして調製されたポリマーは、通常アニオン性、非イオン性又はカチオン性界面活性剤を添加することによって、又は重合知勇にポリマー自身にアニオン性又はカチオン性部位を導入することにより安定化される。エマルション重合は、ブラックレー、D.C.「エマルション重合」;アプライドサイエンスパブリッシャーズ:1975年、ロンドン;オーディアン、G.「重合の原理」;ジョンワイリーアンドソンズ:1991年、ニューヨーク;「アクリルモノマーのエマルション重合」;ロームアンドハース、1967年に記載された等の多くの方法により遂行され得る。
【0031】
アニオン的に安定化されたポリマー粒子は、例えば、C‐C18(メタ)アクリレートエステル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート異性体、ブチル(メタ)アクリレートの異性体、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、及びマレイン酸等の官能性モノマー;イタコン酸モノメチル;フマル酸モノメチル;フマル酸モノブチル;無水マレイン酸;アクリルアミド又は置換アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル;ビニルスルホン酸ナトリウム;ホスホエチル(メタ)アクリレート;アクリルアミドプロパンスルホネート;ジアセトンアクリルアミド;アセトアセチルエチルメタクリレート;アクロレイン及びメタクロレイン;ジシクロペンタジエニルメタクリレート;ジメチルメタ‐イソプロペニルベンジルイソシアネート;イソシアネートエチルメタクリレート;スチレン又は置換スチレン;ブタジエン;エチレン;酢酸ビニル又は他のビニルエステル;例えば、ビニルハライド、好ましくは塩化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、好ましくは塩化ビニリデン、N‐ビニルピロリドン等のビニルモノマー;例えば、N,N‐ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N‐ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド及びオキサゾリジノエチルメタクリレートのようなアミノモノマーを含む広範囲のアクリル及びメタクリルモノマーから調製されることができる。この明細書を通して、単語断片「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」及び「アクリル」双方を意味する。例えば、(メタ)アクリル酸は、メタクリル酸及びアクリル酸双方を意味し、メチル(メタ)アクリレートは、メチルメタクリレート及びメチルアクリレート双方を意味する。
【0032】
任意に、少量の多エチレン性不飽和モノマー、例えば、乾燥ポリマーの重量を基準にして0〜5重量%のアリル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、1,4‐ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンヂオールジ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが、溶液ポリマーの場合には、取り扱い不能な粘度とならないよう又はエマルションポリマーの場合には、有効なフィルム形成が損なわれないよう充分低架橋度を維持することを条件として使用されてもよい。用語「コ−ティング」、「フィルム」及び「コーティングフィルム」は、ここでは互換的に使用され、基体表面上の層として形成され乾燥されるフィルムを意味する。
【0033】
慣用の界面活性剤は、モノマーの重合前、重合中及び重合後にエマルション重合系を安定化するのに使用される。これらの慣用の界面活性剤は、全モノマーの重量基準にして、通常0.1重量%から6重量%の濃度で存在する。少なくとも一つのアニオン性、非イオン性又は両性界面活性剤が使用されてもよいし、またはそれらの混合物が使用されてもよい。代替的に、全て又は一部の粒子の安定性は、過硫酸塩などの開始剤断片により、その断片がポリマー鎖に導入されたときに、もたらされる。アニオン性乳化剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホスクシネート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム、及び他のジフェニルスルホン酸塩誘導体及びtert‐オクチルフェノキシエトキシポリ(39)エトキシエチルサルフェートのナトリウム塩が挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪族エステル、オレイン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレン脂肪族エステル、ポリオキシエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレングリコールステアレート、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ステアリン酸モノグリセリド、tert‐オクチルフェノキシエチルポリ(39)エトキシエタノール及びノニルフェノキシエチルポリ(40)エトキシエタノールが挙げられる。
【0034】
両性界面活性剤は、また、水性エマルション重合又は他のディスパーション重合の過程又はその後に、ポリマー粒子を安定化させるために単独で又はアニオン性、非イオン性又はそれらの混合物とを組み合わせて利用されてもよい。水性系でポリマー粒子を安定化する目的のためには、全モノマーの重量を基準にして0.1重量パーセントから6重量パーセントの濃度で使用される。有用な種類の両性界面活性剤には、アミノカルボン酸、両性イミダゾリン誘導体、ベタイン及びマクロモレキュラー両性界面活性剤が使用される。これらの両性界面活性剤は、更にフルオロカーボン置換基、シロキサン置換基又はそれらの混合物で置換されてもよい。有用な両性界面活性剤は、両性界面活性剤、B.R.ブルーステイン及びC.L.ヒルトン編集、界面活性剤シリーズ12巻、マーセルデッカーNY、1982年、ニューヨークの記載中に見出される。
【0035】
エマルション重合の開始は、付加重合を開始するために好適なラジカルを発生することができ、ここでは、重合開始剤とも呼ばれるフリーラジカル前駆体の熱分解によって遂行されてもよい。例えば、無機ヒドロペルオキシド、無機ペルオキシド、有機ヒドロペルオキシド及び有機ペルオキシド等の好適な熱重合開始剤は、モノマーの重量を基準にして0.05重量パーセントから5.0重量パーセントの量において有用である。水性エマルション重合の技術として知られているフリーラジカル開始剤には、過酸化水素、tert‐ブチル過酸化物、過硫酸アルカリ金属(ナトリウム、カリウム又はリチウム)塩又は過硫酸アンモニウム;又はそれらの混合物等の水溶性フリーラジカル開始剤が含まれる。また、斯かる開始剤は、還元剤と混合され、レドックス系を形成してもよい。有用な還元剤には、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、又は次亜硫酸塩等の亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム又はホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムが含まれる。フリーラジカル前駆体及び還元剤は、一緒になってここではレドックス系と称され、使用されるモノマーの重量を基準にして約0.01%から5%の量で使用され得る。レドックス系の例としては、t‐ブチルヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム/鉄(II)及び過硫酸アンモニウム/重亜硫酸ナトリウム/ヒドロ亜硫酸ナトリウム/鉄(II)が挙げられる。重合温度は、開始剤分解定数及び反応容器圧力能等に依存して10℃から110℃であることができる。
【0036】
しばしば、少量のメルカプタン等の連鎖移動剤(例えば、モノマーの総重量を基準にして0.05から6重量%のn‐オクチルメルカプタン、n‐ドデシルメルカプタン、ブチル又はメチルメルカプトプロピオネート、メルカプトプロピオン酸)が、有意のゲル画分形成を制限するために又は分子量を制御するために採用される。
【0037】
バインダーポリマーがエマルションポリマー粒子として存在するとき、これらの粒子は、50から2,000ナノメータ(nm)の粒径を有し、より好ましくは50から1000nmの粒径を有し、最も好ましくは50から700nmの粒径を有する。粒径は、顕微鏡で、又はブルックヘブンインストルメンツコーポレーション、ニューヨーク、ホルツビルから供給される、準弾性光散乱技術により粒径を測定する、ブルックヘブンモデル BI‐90パーティクルサイザーを使用して測定し得る。全ての粒径範囲は、両端の値を含み、組み合わせ可能である。
【0038】
本発明の成分Aの使用に好適な吸収剤は、好ましくは水不溶性である。しかしながら、たとえ吸収剤の一部が水系への添加に際して溶解しやすいものであったとしても、その吸収剤が効果的であることは可能である。「水不溶性」とは、20℃において水100グラムに対し吸収剤0.5グラム未満が溶解する溶解度を有するものとして規定される。より好ましくは、溶解度は20℃において水100グラムに対し吸収剤0.1グラム未満であり、最も好ましくは、溶解度は20℃において水100グラムに対し吸収剤0.05グラム未満である。これら全ての溶解度範囲は両端の値を含み、組み合わせ可能である。
【0039】
液体又は気体吸収又は吸着性能を有する多くの吸収剤が、本発明に使用され得る。その吸収剤は、水、アンモニア、C‐Cアルキルアミン、C‐Cアルキルアルコール又はこれらの混合物のような小さな極性分子を吸収及び/又は吸着することが可能であるべきである。吸収剤は、吸収剤のグラム当たり又は表面積の平方メーター当たり実質的に多くの極性部位を有し、これらの極性部位は、水、アンモニア、C‐Cアルキルアミン、C‐Cアルキルアルコール又はこれらの混合物のような小さな極性分子と相互作用又は反応することができることが好ましい。吸収剤の例としては、有機超吸収性ポリマー、イオン交換樹脂、中空球状樹脂、モレキュラーシーブ、無機吸収剤、多孔性炭素質物質、非極性炭素質物質及びこれらの混合物が挙げられる。すべてのそのような物質がすべての用途に使用し得るわけではない。例えば、塗布において淡い色が望まれる場合に、炭素質物質は、それらは黒色なのでこれら全ての事例において好適ではないであろう。
【0040】
吸収剤の粒径は、0.05μから5000μの範囲であり、好ましくは10μから1500μの範囲であり、ここでμはミクロンを表す。一般に吸収剤を含む全ての固体成分の均一な分布が好ましい。
【0041】
本発明において吸収剤又は吸収剤混合物の使用量は、二成分又は多成分コーティング組成物の総重量を基準にして0.01重量%から90重量%の範囲である。好ましい範囲は、0.1重量%から70重量%であり、より好ましくは1重量%から30重量%であり、全ての範囲は両端の値を含み、組み合わせ可能である。吸収剤の使用量を決定するのに鍵となると考慮されるパラメーターには、バインダー組成物の量、バインダー組成物の種類、水分含量、吸収剤の種類、吸収剤の特性、望ましいフィルム厚さ、塗料塗布条件(温度、相対湿度、基体、基体表面処理歴及びそれらの組み合わせ)及びペイント配合物の最終組成に存在する他の成分及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0042】
いかなるイオン交換樹脂(IER)も本発明の吸収剤として使用され得る。「イオン交換樹脂」の用語は、ここでは「IER」と互換的に使用される。特に、IERは、ポリマー鎖に結合した陽又は陰イオン部位、又は陽及び陰イオン部位を組み合わせたものを有するものでよい。酸又は金属イオン形の多くのIERが使用される。本発明のためには、好ましいIERは、強酸性カチオン交換樹脂又は弱酸性カチオン交換樹脂のいずれかを含む。酸官能性基が使用されるモノマー中に存在してもよいし及び/又はそれらは重合又は共重合が完了した後で生成されたものでもよい。架橋したポリマーが好ましい。本発明のためには、好ましいIERは、強酸性カチオン交換樹脂又は弱酸性カチオン交換樹脂のいずれかを含む。IERの混合物もまた使用されてよい。
好適なIERの例としては、スルホン酸基(‐SOH、スルホネート官能性)、カルボン酸基(‐COOH、カルボキシレート官能性)、イミノジアセテート基、ホスホン酸基(‐PO(OH))ホスホネート官能性)、アルキルアミノホスホン酸基(アミノホスホネート官能性、例えば、‐NRCHPO(OH)、ここでRはメチル、エチル等である。)及びこれらの混合物を有する有機IERが挙げられる。これまで述べたポリマーの多くは、ポリスチレン又は架橋ポリスチレン骨格構造に基づいている。架橋ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸ポリマーもまた用いられてよい。それらは、弱酸性である。スルホン酸基は、一般に強酸性基である。カルボン酸基及びスルホン酸基を含むIERが好ましい。
酸官能性基に対する対イオン(カチオン)には、H、Li、Na、K、Rb、Cs、NH、Be++、Mg++、Ca++、Sr++、Ba++、Zn++、Al+++及びこれらの混合物が含まれる。有機アンモニウムカチオンもまた使用され得る。例としては、(CH、(C及びこれらの混合物のようなRが含まれ、Rは、C‐C12アルキル基、フェニル、置換フェニル基、アリール基及び置換アリール基から独立して選択されるものである。
本発明に使用され得る商業的に入手可能なIERの例としては、アンバーリスト(登録商標)15、アンバーリスト131Pドライ、アンバージェット(登録商標)IR‐120H、アンバーライト(登録商標)IRC‐84、アンバーライトIRC‐84SP、アンバーライトIRC‐96K、アンーバーライトIRP‐64、アンーバーライトIRP‐69、アンーバーライトXE‐64W、アンーバージェット1200H、アンーバージェットHP1110Na、ナフィオン(登録商標)NR50及びそれらの混合物が挙げられる。イオン交換樹脂のポリマー又はコポリマー骨格は、モノマーを重合し又はモノマー混合物を共重合することにより調製される。もし酸官能基が存在するモノマーの1つにも存在しなければ、少なくとも一つのモノマーは後重合官能化を受けうるものでなければならない。1以上の存在するモノマーは、また、望ましい物理的/化学的性能を付与する架橋性モノマーとして供される。多くのそのような特性は、重合度、後重合官能化条件、官能化度及びその他のものに依存する。一般に、淡い色の半透明の又は不透明のIERが好ましい。しかしながら、より強く着色されたIERは、例えば、バインダー組成物用の適用工程にIER適用工程を先行させることにより造られる多層、サンドウィッチ構造に導入される場合に使用されてもよい。
【0043】
いくつかのIERは、半透明である。これは望ましい性質なのであろう。例えば、もしこれらの淡い色の半透明のIERの幾つかが仕上げコーティングの表面で認識できれば、光反射性能が向上され得る。従って、半透明IERは、ロードマーキング塗料に使用されるガラスビーズの反射性能を増大させるか又は必要とされるガラスビーズの量を減少させ、その結果塗料の全体の塗装費用を軽減する。
【0044】
「使用された」及び「消費された」イオン交換樹脂は、新規な、又は新鮮なIERと置き換わったとき、新規な又は新鮮なIERと同一又は類似の有用な性質を示すことが発見された。用語「使用された」及び「消費された」は、ここでは以前他の実施に使用された又は他の化学反応に曝された樹脂を意味するものとして互換的に使用される。例えば、エーテル合成反応(メタノール及びイソブテンからメチルt‐ブチルエーテル[MTBE]の合成等)における触媒として以前使用されたアンバーリスト15のような酸性樹脂は、本発明において新鮮なアンバーリスト15と同じく効果的であり又はほぼ同等に効果的であろう。同様に、IERは、他のイオン交換の使用に用いられたものでもよい。一般に、使用されたIERのコストは、新鮮なIERのそれよりもずっと低いと思われる。
【0045】
また、IERは、ここで開示された数量で使用され、且つ開示された粒径を有する事を条件として、滑り止め等の追加の利点を提供する。IERビーズは乾燥形で利用されるか、IERに含まれるIER固体及び水の総合計重量を基準にして95重量%以下の濃度の水を含有してもよい。好ましい水分含量は、0から40%である。
【0046】
同一構造型の(異なるゲル型樹脂又は異なるマクロポーラス型樹脂)又は異なる型(1以上のマクロポーラス型を有する1以上のゲル型)の異なる樹脂の混合物を使用することもまた本発明の範囲内である。ゲル型IERの例としては、アンバーライトIRC‐84SPであり、マクロポーラスIERの例は、アンバーライトIRC‐64である。
【0047】
吸収剤は、また、有機超吸収性ポリマー(SAPs)であり得る。当業界にこれまで知られている種類の水吸収性樹脂の例としては、部分中和され、架橋されたポリアクリル酸(日本特許公開公報昭55‐84,304号、日本特許公開公報昭55‐108,470号、日本特許公開公報昭55‐133,413号、米国特許第4,654,039号、米国特許第4,286,082号)、加水分解された澱粉‐アクリロニトリルグラフトポリマー(日本特許公開公報昭46‐43995号及び米国特許第3,661,815号)、中和澱粉‐アクリル酸グラフトポリマー(日本特許公開公報昭51‐125,468号及び米国特許第4,076,663号)、鹸化酢酸ビニル‐アクリルエステルコポリマー(日本特許公開公報昭52‐14,689号及び米国特許第4,124,748号)、加水分解されたアクリロニトリルコポリマー又はアクリルアミドコポリマー(日本特許公開公報昭53‐15,959号、米国特許第3,935,099号及び米国特許第3,959,569号)、それらの架橋誘導体、架橋カルボキシメチルセルロース(米国特許第4,650,716号及び米国特許第4,689,408号)及びカチオン性モノマーの架橋ポリマー(日本特許公開公報昭58‐154,709号、日本特許公開公報昭58‐154710号、米国特許第4906717号、米国特許第5,075,399号及びヨーロッパ特許B−0304,143号)、架橋イソブチレン‐無水マレイン酸コポリマー(米国特許第4,389,513号)及び2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸との架橋コポリマー(ヨーロッパ特許B−068,189号)が挙げられる。
【0048】
好適な有機超吸収性ポリマー(SAP’s)には、アクリルモノマー、メタクリルモノマー及びそれらの混合物、及び斯かるポリマーの塩のような誘導体からなる群から選択される少なくとも一つのモノマーから調製されたポリマーが含まれる。ここで用いられるように、SAPの用語は超吸収剤ポリマーを表す。例としては、部分的に中和され、架橋されたポリアクリル酸、加水分解された澱粉‐アクリロニトリルグラフトポリマー、中和澱粉‐アクリル酸グラフトポリマー、鹸化酢酸ビニル‐アクリルエステルコポリマー、加水分解されたアクリロニトリルコポリマー又はアクリルアミドコポリマー、それらの架橋誘導体、架橋カルボキシメチルセルロース、カチオン性モノマーの架橋ポリマー、架橋イソブチレン‐無水マレイン酸コポリマー、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸との架橋コポリマー及びそれらの混合物が挙げられる。中和又は部分中和は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム等の塩基と好適なSAPを反応させることにより達成されてもよい。
【0049】
米国特許第5,075,399号は、両性イオン対モノマー、及びアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸塩及びメタクリル酸塩を含むアクリルコモノマーとのコポリマーであるSAPsを開示している。両性イオン対モノマーは、例えば、アンモニウムカチオンの2‐メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムと2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホネート、2‐メタクリロイルオキシエタンスルホネート、ビニルスルホネート、スチレンスルホネート及びそれらの混合物から選ばれるアニオンとの組み合わせである。
【0050】
米国特許第4,654,039号は、ヒドロゲル形成性ポリマー組成物であるSAPsを開示している。これらのSAPsは、不飽和で重合可能な酸基含有モノマー及び架橋剤から調製された実質的に水不溶性で、わずかに架橋した部分的に中和されたポリマーである。
【0051】
米国特許第4,909,717号は、アクリル酸及びジアルキルアミノアルキルアクリレートをベースとした水吸収性樹脂を開示している。SAP樹脂は、その全部又は一部は塩形である、モル基準で40から60%のアクリル酸、及び少なくとも一部が塩形又は第4級塩である、モル基準で60から40%の少なくとも一つのジアルキルアミノアルキルアクリレートを含む。SAP樹脂は、少なくとも一つのフリーラジカル開始剤の存在下で水性溶液又は逆相エマルション中で重合される。
【0052】
アクリル又はメタクリルモノマー、特にアクリル酸及び/又はメタクリル酸から造られた架橋ポリマー及びコポリマーは、好ましいSAP樹脂である。斯かるモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート及びC〜C20アルキル基を有する他のアクリレート及びメタクリレートが挙げられる。ポリマー又はコポリマーは、通常カルボン酸形(‐COOH)であり、又はエステルモノマーが用いられたならば、完全に又は部分的にカルボン酸形に変換される。加えて、ここで上記したように幾つかの又は全てのカルボン酸官能基(‐COOH)は、NH、Li、Na、K、Rb、Cs、NH、Be++、Mg++、Ca++、Sr++、Ba++、Zn++、Al+++及びこれらの混合物等のカチオンを有する金属イオン又は塩基で中和されることができる。有機アンモニウムカチオンもまた用いられる。例としては、(CH、(C及びこれらの混合物のようなRが含まれ、ここでRは、C‐C12アルキル基、フェニル、置換フェニル基、アリール基及び置換アリール基から独立して選択されるものである。商業的に入手可能なSAP物質は、AQUALIC(登録商標)CA(日本触媒化学工業株式会社)である。繊維状及び粒子状双方のSAP樹脂が使用され得る。粒子形状の(粒子として)SAP樹脂が好ましい。好適な粒子径については、この明細書の別な箇所で論じられている。
【0053】
更に、他の種類の吸収剤として、アンバーソーブ(登録商標)、活性炭、カーボンブラック、熱分解されたポリアクリロニトリル又は他の炭素質物質が含まれる。アンバーソーブは、ロームアンドハースカンパニーの登録された商標である。
【0054】
液体又はガス吸収及び/又は吸着性能を有する天然及び合成のゼオライトを含むモレキュラーシーブ又は分子状スポンジ(molecular sponge)が、本発明の吸収剤として使用されてもよい。合成ゼオライトは、一般に白色であり及び天然のゼオライトは白色、オフホワイト又は着色されたものでもよい。オフホワイト又は着色モレキュラーシーブ又はゼオラオトは、コーティングの色が適合する場合又は重要でない場合の用途に限定される。モレキュラーシーブの例としては、3A、4A、5A、10X、13X、Y、ZSM‐5、ZSM‐11、ベータ、ホージャサイト、エリオナイト、SAPO‐5、SAPO‐11、SAPO‐34、ALPO‐5及びこれらの混合物のような金属含有又は酸形ゼオライト又はモレキュラーシーブが挙げられる。より疎水性の種類のシリカライト(silicalite)又は高Si/Al原子比(100より大)ZSM‐5のようなゼオライト又はシリカが用いられてもよいが、それらは本発明に特に好ましいわけではない。
【0055】
アルミナ、シリカ‐アルミナ又はそれら混合物等の他の無機物質もまた単独で又は他の開示された吸収剤と一緒に使用されてもよい。例としては、α‐アルミナ、γ‐アルミナ、θ‐アルミナ、η‐アルミナ、アモルフォスシリカ‐アルミナ、結晶シリカ‐アルミナ、珪藻土(セライト(CERITE(登録商標))、又はキーセルガー)及びこれらの混合物が含まれる。キーセルガー等の物質は塗料の塗布前にバインダー組成物と混合物を形成する増量剤として有用であることが知られている。タルクのような珪酸マグネシウムもまた、吸収剤として使用され得る。
【0056】
モレキュラーシーブ及び他の無機物質はモービル、ユニオンカーバイド、W.R.グレース、アルドリッチ、ジョンソンマティウ等を含む多くの会社から入手できる。
【0057】
中空球状ポリマー粒子もまた、本発明の吸収剤として有用である。中空球状ポリマー粒子はまた、ここでは空隙ラテックス粒子と称される。本発明の方法に有用な空隙ラテックス粒子は、50nmから2,000nmの粒径及び10%から75%の空隙画分を有する。本発明の方法に有用な空隙ラテックス粒子は、好ましくは50nmから1100nmの粒径及、より好ましくは50から700nmの粒径を有する。好ましくは、本発明の方法に有用な空隙ラテックス粒子は単一空隙を有する。すべての粒径は両端の値を含み、組み合わせ可能である。空隙ラテックス粒子の粒径及び空隙画分は、ブルックヘブンインストルメンツコーポレーション、ニューヨーク、ホルツビルから供給される、準弾性性光散乱技術により粒径を測定する、ブルックヘブンモデル BI‐90パーティクルサイザーによって測定し得る。
【0058】
本発明の方法に有用な空隙ラッテクス粒子は、一分当たり20摂氏度の速度で示差走査熱量計により測定された少なくとも20℃の、より好ましくは少なくとも50℃のガラス転移点を有する。これらの範囲は両端の値を含み、組み合わせ可能である。より高いガラス転移点は、これらの粒子が使用前に、貯蔵の間に崩壊しにくい、より硬い粒子となるのに貢献する。本発明に有用な空隙ラテックス粒子は、米国特許第3,784,391号、米国特許第4,798,691号、米国特許第4,908,271号、米国特許第4,972,000号、ヨーロッパ特許B‐0,915,108号及び日本特許出願昭60/223,873号、昭61/62510号、昭61/66710号、昭61/86941号、昭62/127366号、昭62/156387号、平01/185311号、平02/140272号に記載された当業界で知られた慣用の重合技術により調製され得る。好ましくは、空隙ラテックス粒子は、米国特許第4,427,836号、米国特許第4,469,825号、米国特許第4,594,363号、米国特許第4,880,842号及び5,494,971号、及びヨーロッパ特許B‐0,915,108号に従って調製される。好ましくはローペイク(商標)等の空隙ラテックス粒子は、米国特許第4,427,836号、米国特許第4,469,825号、米国特許第4,594,363号、米国特許第4,880,842号、米国特許第5,494,971号及びヨーロッパ特許B‐0915,108号に従って調製される。ローペイクOP‐62は、米国、ペンシルヴェニア州、フィラデルフィアのロームアンドハースカンパニーから入手できる。
【0059】
ガラスビーズ、石英ビーズ、セラミックビーズ及びこれらの混合物は、集約的にここでは、「ガラスビーズ」又は「G」と称される。ガラスビーズは、本発明の成分A、B及びCの1以上の中に含まれる。また、ガラスビーズは本発明の成分Dとして1以上の別個の工程で適用される。ガラスビーズの基本的な機能は、トラフィックペイント又はロードマーキングコーティングに対し反射特性を提供することである。ガラスビーズ(G)の粒径は、50μ(ミクロメータ)から1500μの範囲であり、好ましくは80μから1250μの範囲であり、更に好ましくは100μから1000μの範囲である。ガラスビーズは、ポッターズインダストリーズInc.(PQコーポレーション)、スワルコインダストリーズInc.及びミネソタマイニングアンドマニュファクチャーリング(3M)等の商業的供給源から入手できる。本用途に有用な典型的なガラスビーズは、合衆国ハイウェイ及び運輸局(ワシントンDC)アメリカ協会によって開発されたAASHTO指定M247‐81(1993)に記載されているものである。ビーズは、一般に夜間及び悪天候の視界用のペイントに0.72kg/Lから2.9kg/Lの割合で適用される。
【0060】
また、「補助物質」が追加の利点を提供するために1以上の成分A,B,C及びDと混合されてもよい。その存在が成分又は全体としてのコーティング成分のいずれかの時期尚早な不安定化を引き起こさないことを条件として、補助成分を組成物の1以上の成分に添加することは許容される。一般にトラフィックペイント又はロードマーキングコーティングに反射特性を与えるガラスビーズ、石英ビーズ又はセラミックビーズの一部は、斯かる「補助物質」としてみなされてもよい。有意に入射光と相互作用を起こさない程度まで、乾燥されたトラフィックペイント又はロードマーキング塗料の表面下に完全にうずめ込まれるガラスビーズにとって、このことは本当である。
【0061】
他の補助物質もまた、成分A,B,C及びDのいずれかと混合され得る。これらの他の補助物質には、様々な形態の石英シリカのような滑り止め特性を提供するものとしてしられているものが含まれる。加えて、他の補助物質は、更なる乾燥加速、乾燥の均一性、よりよい流動特性又はそれらの組み合わせ等の特定の物理的/化学的利益を提供するであろう。補助物質は、その望ましい性能特徴及び塗布過程で組成物A,B,C及びDの性能特性を維持することが重要である。この理由により、ある種の成分(A、B,C又はD)と共にある補助物質を包含させることは避けなければならない。例えば、これらの補助物質には、CaCl、酢酸カルシウム、又は酢酸及びクエン酸等の酸などの水吸湿性及び/又は水溶性の塩が含まれる。基体に塗布前に水性成分B又はCに吸湿性物質を混合することは適切でない、何故ならこれらの塩は、塗布に際して水を吸収する能力を喪失し、且つ塗布前に成分B又はCを不安定にするかもしれないからである。もし、塗布前に成分A,B、C又はDのいずれかと補助物質が混合されるならば、それらは、これらの成分と化学的及び物理的に適合性でなければならない。
【0062】
補助物質を含むか、または含まない吸収剤及びバインダー組成物は、異なる成分(パック)内に置かれなくてはならない。コーティング配合物の一部として吸収剤(成分A)を含む成分及びバインダー組成物(成分B及びC)を含む成分は、基体表面に塗布されるときまで分離されていなければならない。基体には、高速道路、通り、道路、走路、駐車場、アスファルト舗装区域、舗道及び屋上、及び表面材料、メーソンリー、アスファルト、コンクリート、セメント、石、アルミニウム、ステンレス鋼、炭素鋼等の金属が含まれる。
【0063】
タルクはそれ自身で吸収剤として用いられてもよいが、改良された流動性及びより淡い色を与えるため他の吸収剤と混合されてもよい。吸収剤が例えば、高い水分含量を有するIERであるとき、タルクは、この点で特に有用である。何故ならタルクは、湿度を含んだIERビーズがお互い接着するのを防ぎ、貯蔵及び塗布過程でのクランピング、コンパクティングおよびブリッジングとして現れる条件を回避するからである。
【0064】
表1は、「G」及び成分A,B,C及びDが一連の逐次工程において基体に塗布される幾つかの方法を記載する。上記したように、ガラスビーズが成分A,B,又はCのいずれも含まない工程において添加されるとき、これらのガラスビーズは、表1に示されるように成分Dに含まれるものと定義される。ガラスビーズが、1以上の成分A、B及びCを有する逐次工程の一つに添加されるとき(例えば、1以上の成分A、B及びCと共に同時に又はほぼ同時に添加されるとき)これらのガラスビーズは表1に示されるように「G」で表される。1より大の「G」及び成分A,B、及びCが単一の逐次工程で添加されるとき、コンマは、同時又はほぼ同時の添加を表すものとして使用される。括弧内のものは更に、予備混合を表す。表1で明確には述べていないが、表1の方法におけるいかなる逐次工程のセットも本発明の範囲内であり、これは1度以上繰り返すことができ、または他の方法における他の工程と組み合わされることができる。言い換えれば、1以上の工程を繰り返して用いられるかもしれない他のバリエーションがあることが理解される。更に、成分Aが、成分B又は成分Cのいずれかと予備混合されないことを条件として、単一法における多工程において成分Aを使用することは可能である。
【0065】
【表1】

【0066】
工程1は、工程2に先行し、工程3が加わり、それから工程4が続く。括弧内の成分は塗布前にあらかじめ混合される。もし、2以上の成分が同一工程枠内にあれば、これらの成分は同時に又は実質的に同時に塗布される。
A:吸収剤を含む成分A;
B:バインダーを含む成分B;
C:バインダーを含む成分C;
D:ガラスビーズを含む成分D;
G:ガラスビーズ
【0067】
塗料又はコーティング、特にバインダー組成物を含む組成物は、当業者に知られている多くの方法で基体表面に塗布されることができる。幾つかの例を挙げれば、ブラッシング、噴霧、押し出し及びこれらを混合したものである。これらの異なる方法は、ここでは集約的に「噴霧」又は「塗布」と呼ばれる。
【0068】
表1に掲示された全ての塗布方法は、本発明の有用な態様である。表1に掲示された塗布方法の中で、成分B又は成分Cのいずれかが塗布される第一工程の過程で又はその後のどちらかで、成分Aが塗布されるものが好ましい(方法1〜14、22〜39及び50〜57)。より好ましくは、成分B又はCのいずれかが塗布される第一工程の後で、成分Aが塗布される(方法6〜14及び22〜39)。最も好ましくは、成分B及び成分C双方を含み、最初に塗布された成分B及びCを含む工程の後で、二番目に塗布された成分B及びCを含む工程前又は工程中に、成分Aが塗布される方法である(方法22〜39)。成分A、B及びCを導入する工程に関するこれら範囲の全ては、包括的であり、組み合わせ可能である。
【0069】
吸収剤の塗布前に又はその過程において、遅乾性水性バインダー組成物で基体表面をコーティングすることは、速乾性能力を潜在的、付随的に喪失させる、表面から吸収剤が追い出される傾向を減少させると信じられている。更に、吸収剤の塗布に引き続く工程で第二の遅乾性水性バインダー組成物を塗布することは、特に遅乾性水性バインダー組成物と緊密に接触して吸収剤を取りこむことにおいて有効であり、その結果乾燥を速める吸収剤の能力が最大に発揮される。
【0070】
ガラスビーズの逆反射能力を最大限にするためには、いかなる方法においても最後の2工程内の一つにこれらのガラスビーズを添加することが好ましく、更に好ましくは最後に塗布される工程にガラスビーズを添加することであり、最も好ましくは、成分Dとしての(即ち、成分B及びCを排除した工程において)ガラスビーズの添加である。成分A、B及びCの導入の工程と共にガラスビーズの導入の工程に関するこれらの全ての範囲は、包括的であり且つ組み合わせ可能である。
【0071】
吸収剤は、ヨーロッパ特許B‐0,200,249号で開示され、上記で述べられた酸又は塩溶液処理と一緒に塗布されることができる。もし、化学的に及び物理的に適合性であるならば、吸収剤粒子は塗布前に塩または酸と混合することができる。吸収剤粒子は、分離状態にされ、別個に塗布され得る。
【0072】
加えて、吸収剤は塗料の塗布が終了した後塗布されてもよい。このオプションの実施は、特にロードマーキング塗料に有用である。この使用は、設計により又は補修工程で行われ得る。用語「補修工程」とは、もしもロードマーキングクルーが通常の手段で水性ロードマーキング塗料を塗布し、彼等が、それが充分早く乾かないと判断した場合には、彼等は本発明に従い吸収剤粒子を塗布して乾燥を促進させることができることを意図する。斯かる事態の一つは、好ましい気候条件下(例えば、20℃及び50%の相対湿度)で始めた水性ロードマーキング塗料塗布作業が、10℃などのより低い温度及びより高い85%の相対湿度などの好ましくない条件下で終了する場合である。より直近に塗布された水性ロードマーキング塗料は、予想したよりもより遅く乾燥することになり、これは交通の流れの遮断を長引かせる原因となる。そのような場合に、ロードマーキング塗装クルーはより直近に塗布されたロードマーキング塗料を吸収性粒子で後処理することができる。これはより直近に塗布された水性ロードマーキング塗料の乾燥速度の増加をもたらし、通常の交通の流れをより早く回復させる。
【0073】
アンバージェット、アンバーリスト、アンバーライト、アンバーソーブ及びローペイクは、ロームアンドハースカンパニーの商標であり、ナフィオンはE.I.デュポンデネモウアアンドカンパニーの商標であり、セライトはジョーンズ‐マンビルコーポレーションの商標であり、アクアリック(登録商標)は日本触媒化学工業株式会社の商標である。
【実施例】
【0074】
実施例1〜3(表2)は、次の方法で遂行された。
ドライスルー試験
各試験塗料は、20ミル(500mμ)のギャップを有するドローダウンブレードを使用して4’’(10.2cm)×12’’(30.5cm)のガラスパネルに塗布し、引き続き直ちにパネルの部分に所定の吸収剤の塗布を施した。500mμのドローダウンブレードギャップは、ガラスパネルの表面に330mμの厚さの湿潤フィルムを与える。各吸収剤は、それが塗布ガラスパネルの約3分の1を覆い、ガラスビーズ種類の一つで覆われた別の3分の1を有し、残りの3分の1は未処理のままであるような仕様で塗布された。吸収剤は、吸収剤の被覆範囲が表面を横断して等しく分配され、塗料表面積のm当たり約100gの量で塗布されるようにハンドシェイカーで塗布された。ガラスビーズは、塗料表面積のm当たり約250gのガラスビーズに相当する同様の適用密度で塗布された。
【0075】
コーティングの塗布の後、吸収剤及びガラスビーズの処理を施して又は無処理のまま、パネルは、それからビクターアソシエイツ、Inc(米国、ペンシルベニア州、ハトボロ)から供給される高湿度試験チャンバー内に直ちに置かれ、90%±3%の相対湿度が維持された。試験チャンバーは認証された温度計を装備し、双方とも均衡の取れた測定を確保するため試験チャンバーの背壁の中央に固定された。90%±3%の相対湿度は、完全に密閉された試験チャンバーの底にあるパンを1インチ層の水で満し、試験前にチャンバーを(約16時間)平衡にし(チャンバー内の相対湿度を100%にする)、それからチャンバー内の90%±3%の相対湿度を達成するために側面出口の開口部の大きさを調整することにより得られた。試験チャンバー内部の温度は、23℃(74°F)であった。
【0076】
試験チャンバーのドアは、三つの試験領域(吸収剤、ガラス及び未処理)のそれぞれについて塗料試験パネルのドライスルー時間を評価するために5分間隔で暫時開けられた。ドライスルー時間は、親指で圧力はかけないで塗料表面に接触し、90°サムツイスト(thumb twist)により塗料が歪みを生じ得ないような状態に湿潤塗膜が達するに要する時間として定義される。乾燥の初期状態の間は、ドライスルーはフィルム表面をアプリケータースティックで基体方向に押して評価され、それから約0.5インチ(〜1.27cm)の長さに基体に沿ってアプリケータースティックをドラッグして下層のコーティングの乾燥度を計量する。コーティングがドライスルー状態に近づいていることは明らかになったら、パネルは適当な時間に箱から除去され、上記の90°サムツイスト試験が実施される。表2の乾燥速度は90°サムツイスト試験により測定されたドライスルー時間である。
【0077】
【表2】

【0078】
(a)バインダーは、米国、ペンシルヴェニア州、フィラデルフィアのロームアンドハースカンパニーから入手できるロープレックスAC‐630である。500mμ(20ミル)のギャップを有するドローイングシュウを使用する塗料の塗布は330mμの厚さの湿潤フィルムを与える。
(b)ガラスビーズは、ポッターズインダストリーズ、Inc.から入手できるP‐35ビーズである。
(c)アンバーライト(商標)IRC‐84SPは、米国、ペンシルヴェニア州、フィラデルフィアのロームアンドハースカンパニーから入手できるIERである。
【0079】
実施例は、開示された条件下で選択された吸収剤の添加が、もしそうでなければ遅乾性水性バインダー組成物であるものについての乾燥を改善し(加速し)、速乾性多成分水性コーティング組成物が得られることを示している。
【0080】
ここでの全ての実施例は、例示の目的のためにのみ使用されるのを意図されている。それらは、請求の範囲で定義された本発明の精神又は範囲を限定するものとは意図されていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体表面に速乾性多成分水性コーティング(該速乾性多成分水性コーティングは、330ミクロンの湿潤塗膜厚さを有するコーティング組成物のフィルムとして塗布した場合に、23℃で90%の相対湿度において2時間未満のドライスルー時間を示す、多成分水性コーティングである)を調製する方法であって、
i)下記成分A及び成分Bを同時に、又はほぼ同時に基体表面に塗布する工程、
a)該成分Aは、水、アンモニア、C‐Cアルキルアミン、C‐Cアルキルアルコール又はこれらの混合物を吸収及び/又は吸着することが可能である少なくとも一つの水不溶性吸収剤を含み;且つ
b)該成分Bは遅乾性水性バインダー組成物(該遅乾性水性バインダー組成物は、330ミクロンのフィルムの厚さで基体に塗布されたとき、23℃で90%の相対湿度において2時間と等しいか又はそれを超えるドライスルー時間を有するフィルムを形成する水性バインダー組成物である)を含む;
ii)該成分A及び該成分Bが塗布されている基体の表面に、遅乾性水性バインダー組成物を含む成分Cを塗布する工程;及び
iii)多成分水性コーティングを乾燥させる工程;
を含み、該吸収剤はモレキュラーシーブ、無機吸収剤、多孔性炭素質物質、非多孔性炭素質物質及びこれらの混合物からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
基体表面上に速乾性多成分水性コーティング(該速乾性多成分水性コーティングは、330ミクロンの湿潤塗膜厚さを有するコーティング組成物のフィルムとして塗布した場合に、23℃で90%の相対湿度において2時間未満のドライスルー時間を示す、多成分水性コーティングである)を調製する方法であって:
a)水、アンモニア、C‐Cアルキルアミン、C‐Cアルキルアルコール又はこれらの混合物を吸収及び/又は吸着することが可能である少なくとも一つの水不溶性吸収剤を含む成分Aを基体表面に塗布する工程;
b)遅乾性水性バインダー組成物(該遅乾性水性バインダー組成物は、330ミクロンのフィルムの厚さで基体に塗布されたとき、23℃で90%の相対湿度において2時間と等しいか又はそれを超えるドライスルー時間を有するフィルムを形成する水性バインダー組成物である)を含む成分Bを水不溶性吸収剤が塗布されている基体表面に塗布する工程;および、
c)多成分水性コーティングを乾燥させる工程;
の逐次工程を含み、
該成分A水不溶性吸収剤を塗布する前に、基体表面に遅乾性水性バインダー組成物を含む成分Cを塗布する追加の逐次工程、又は該成分A及び該成分Bが塗布されている基体表面に、遅乾性水性バインダー組成物を含む成分Cを塗布する追加の逐次工程を更に含む方法:但し、該吸収剤は、モレキュラーシーブ、無機吸収剤、多孔性炭素質物質、非多孔性炭素質物質及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【請求項3】
基体表面に速乾性多成分水性コーティング(該速乾性多成分水性コーティングは、330ミクロンの湿潤塗膜厚さを有するコーティング組成物のフィルムとして塗布した場合に、23℃で90%の相対湿度において2時間未満のドライスルー時間を示す、多成分水性コーティングである)を調製する方法であって、下記の逐次工程を含む方法:
a)遅乾性水性バインダー組成物(該遅乾性水性バインダー組成物は、330ミクロンのフィルムの厚さで基体に塗布されたとき、23℃で90%の相対湿度において2時間と等しいか又はそれを超えるドライスルー時間を有するフィルムを形成する水性バインダー組成物である)を含む成分Bを基体表面に塗布する工程;
b)水、アンモニア、C‐Cアルキルアミン、C‐Cアルキルアルコール又はこれらの混合物を吸収及び/又は吸着することが可能である少なくとも一つの水不溶性吸収剤を含む成分Aを、すでに前記成分Bが塗布されている基体表面に、遅乾性水性バインダー組成物を含む成分Cと同時に、又は、ほぼ同時に塗布する工程;及び
c)多成分水性コーティングを乾燥させる工程、但し、該吸収剤は、モレキュラーシーブ、無機吸収剤、多孔性炭素質物質、非多孔性炭素質物質及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【請求項4】
該成分Aが、更にガラスビーズを含むものである請求項1乃至3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
該成分Bが、更にガラスビーズを含むものである請求項1乃至3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
A、B及びCの内、最後に塗布される成分を塗布した後に、ガラスビーズを含む成分Dを塗布する工程を更に含む請求項1乃至3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の方法によって形成される複合物。

【公開番号】特開2008−284550(P2008−284550A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154113(P2008−154113)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【分割の表示】特願2001−158381(P2001−158381)の分割
【原出願日】平成13年5月28日(2001.5.28)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】