説明

速乾性布帛および繊維製品

【課題】目付けが大きい布帛であるにもかかわわらず極めて速乾性に優れた速乾性布帛、および該速乾性布帛を用いてなる繊維製品を提供すること。
【解決手段】有機繊維糸条を含み、目付けが150g/m以上の布帛であって、前記有機繊維糸条に下記撚係数5000以上の撚糸が施されており、かつ布帛に撥水加工が施されている。
撚係数=T×(D)1/2
Tは撚数(T/m)であり、Dは有機繊維糸条の総繊度(dtex)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目付けが大きい布帛であるにもかかわわらず極めて速乾性に優れた速乾性布帛、および該速乾性布帛を用いてなる繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、学生服や作業衣料などの用途で、保温性や布帛強度を高めるため目付けが大きい布帛が用いられている。そして、目付けの大きい布帛に、家庭洗濯等に代表される水を媒体とした洗濯を施した場合、洗濯、脱水後において布帛に含まれる水分が多いため、乾燥するまでに時間がかかるという問題があった。
【0003】
他方、布帛に速乾性を付与する方法としては、布帛を多層構造とする方法、布帛に撥水性を付与する方法、異型断面繊維で布帛を構成する方法、布帛に赤外線吸収剤を付与する方法などが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
しかしながら、目付けの大きい布帛に従来の方法を適用したものでは、速乾性の点でまだ十分とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−27409号公報
【特許文献2】特開2010−180517号公報
【特許文献3】特開2006−200054号公報
【特許文献4】特開2009−299213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、目付けが大きい布帛であるにもかかわわらず極めて速乾性に優れた速乾性布帛、および該速乾性布帛を用いてなる繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、撚糸を施した有機繊維糸条で布帛を構成し、該布帛に撥水加工を施すことにより極めて優れた速乾性が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「有機繊維糸条を含み、目付けが150g/m以上の布帛であって、前記有機繊維糸条に撚係数5000以上の撚糸が施されており、かつ布帛に撥水加工が施されていることを特徴とする速乾性布帛。」が提供される。
ただし、撚係数は下記式により算出する。
撚係数=T×(D)1/2
ここで、Tは撚数(T/m)であり、Dは有機繊維糸条の総繊度(dtex)である。
その際、下記式で定義する洗濯脱水抱水率が50%以下であることが好ましい。
洗濯脱水抱水率(%)=(W1−W0)/W0×100
ただし、W0は試料(タテ40cm、ヨコ40cm)を乾燥後、温度20℃、相対湿度65%の環境に24時間放置した後の重量(g)であり、W1は当該試料を洗濯脱水した後の重量(g)である。また、洗濯脱水は、試料(タテ40cm、ヨコ40cm)を、JIS−C−9606に規定する遠心式脱水装置付きの家庭用電気洗濯機を用い、JIS−L−0217の103法に記載の試験方法で行う。
【0008】
また、前記有機繊維糸条がポリエステル糸条であることが好ましい。また、前記有機繊維糸条に仮撚捲縮加工が施されていることが好ましい。また、布帛が、下記式で定義するカバーファクターCFが2000〜4500の織物であることが好ましい。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
また、本発明によれば、前記の速乾性布帛を用いてなる、学生服、学生ズボン、作業衣、および制服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、目付けが大きい布帛であるにもかかわわらず極めて速乾性に優れた速乾性布帛、および該速乾性布帛を用いてなる繊維製品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1で用いた織組織図である。
【図2】実施例2、比較例1、比較例2で用いた織組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の速乾性布帛は、有機繊維糸条を含み、目付けが150g/m以上(好ましくは150〜400g/m、特に好ましくは150〜300g/m)の布帛である。該目付けが150g/m未満の場合は、本発明の速乾性布帛を学生服の表地などとして用いた場合、保温性や布帛強度が不十分となるおそれがあり、好ましくない。
【0012】
次に、本発明の速乾性布帛は、撚係数5000以上(好ましくは8000〜40000、特に好ましくは20000〜30000)の撚糸が施された有機繊維糸条を含む。かかる撚係数で撚糸が施された有機繊維糸条が布帛に含まれない場合は、十分な速乾性が得られず好ましくない。ただし、撚係数は下記式により算出する。
撚係数=T×(D)1/2
ここで、Tは撚数(T/m)であり、Dは有機繊維糸条の総繊度(dtex)である。
【0013】
前記有機繊維の種類としては、ポリエステル繊維、アセテート繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、炭素繊維、綿や羊毛などの天然繊維などいずれでもよい。なかでも、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどからなるポリエステル繊維が、速乾性だけでなくリサイクル性にも優れ好ましい。なお、かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0014】
前記有機繊維の繊維形態は、長繊維(マルチフィラメント)、短繊維(紡績糸)いずれでもよいが、長繊維(マルチフィラメント)が好ましい。単繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。また、通常の空気加工、仮撚捲縮加工が施されていてもさしつかえない。特に、有機繊維糸条に仮撚捲縮加工が施されていると布帛が嵩高となるため保温性が向上し好ましい。
【0015】
前記有機繊維において、単糸繊維繊度、総繊度、フィラメント数は特に限定されないが、ソフトな風合いを得る上で、それぞれ単糸繊維繊度4.0dtex以下(好ましくは0.1〜4.0dtex)、総繊度30〜200dtex、フィラメント数30本以上(より好ましくは60本以上、さらに好ましくは60〜200本)の範囲内であることが好ましい。
【0016】
前記布帛の布帛組織は特に限定されず織物、編物、不織布などいずれでもよい。なかでも、引裂き強力の強さの点で織物または編物が好ましい。特に織物が好ましい。織物組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示されるがこれらに限定されない。層数は単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。特に、下記式により定義されるカバーファクターCFが2000〜4500の織物であると、前記のような大きな目付けが得られやすく好ましい。なお、以上のような布帛は常法により製造することが可能である。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【0017】
本発明の速乾性布帛は、前記の布帛に撥水加工を施したものである。かかる布帛は、例えば、以下の製造方法により製造することができる。
まず、前記のような有機繊維糸条を用意し、該有機繊維糸条に撚係数5000以上の撚糸を施した後、該有機繊維糸条を用いて、目付けが150g/m以上の布帛を製編織する。その際、前記有機繊維糸条だけで布帛を構成することが最も好ましいが、布帛重量に対して50重量%以下であれば、他の有機繊維糸条(例えば、撚係数5000未満のポリエステル繊維糸条など)が含まれていてもよい。
【0018】
次いで、該布帛に撥水加工を施す。ここで、撥水加工の際に用いる撥水剤としてはフッ素系(例えば、旭硝子(株)製、アサヒガードLS−317)、シリコン系、パラフィン系、エチレン尿素系、脂肪酸系などの撥水剤を挙げることができるが、洗濯耐久性の点からフッ素系、シリコン系の撥水剤を使用するのが好ましい。
【0019】
また、撥水加工としては通常のものでよいが、特許第3133227号公報や特公平4−5786号公報に記載された方法が好適である。すなわち、撥水剤として前記の撥水剤を使用し、必要に応じてメラミン樹脂、触媒を混合して撥水剤の濃度が2〜15重量%程度の加工剤とし、ピックアップ率50〜100%程度で、該加工剤を用いて布帛の表面を処理する方法である。加工剤で布帛の表面を処理する方法としては、パッド法、スプレー法などが例示され、なかでも、加工剤を布帛内部まで浸透させる上でパッド法が最も好ましい。なお、前記ピックアップ率とは、加工剤の布帛(加工剤付与前)重量に対する重量割合(%)である。
【0020】
また、本発明の目的が損なわれない範囲内であれば、撥水加工の前または後において、常法のアルカリ減量加工、染色仕上げ加工、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0021】
かくして得られた布帛は、目付けが150g/m以上と目付けが大きいにもかかわらず、極めて優れた速乾性を呈する。その理由は、布帛に含まれる有機繊維糸条に撚係数5000以上の撚糸が施されており、かつ布帛に撥水加工が施されているのでこれらの相乗作用によって、水分が布帛内部にはいりにくく、布帛内部にはいった場合においても、脱水時の水切れが良くなっているためでないか、と推定している。
【0022】
ここで、速乾性としては、下記式で定義する洗濯脱水抱水率が50%以下(より好ましくは20%以下、特に好ましくは5〜20%)であることが好ましい。
洗濯脱水抱水率(%)=(W1−W0)/W0×100
ただし、W0は試料(タテ40cm、ヨコ40cm)を乾燥後、温度20℃、相対湿度65%の環境に24時間放置した後の重量(g)であり、W1は当該試料を洗濯脱水した後の重量(g)である。また、洗濯脱水は、試料(タテ40cm、ヨコ40cm)を、JIS−C−9606に規定する遠心式脱水装置付きの家庭用電気洗濯機を用い、JIS−L−0217の103法に記載の試験方法で行う。すなわち、洗液温度は40℃とし、標準使用量となる割合で合成洗剤を溶解し、浴比が1対30になるように試料を投入する。この状態で5分間処理した後に運転を止め、試料を脱水機で脱水し、洗濯液を30℃以下の新しい水に替えて2分間すすぎを行う。次に試料を脱水し、ふたたび2分間のすすぎを行い、脱水を3分間(通電時間)行った後の重量をW1とする。
【0023】
なお、本発明の評価に用いた、遠心式脱水装置付きの家庭用電気洗濯機を使用し、JIS−C−9606の8.12に記載の脱水性試験を行った結果、3分間(通電時間)脱水を行ったときの脱水度は、52(%)であった。その際、脱水度は、以下の式によって算出した。また、脱水性試験に用いる試験布は、JIS−C−9606 付随書1に記載の模擬洗濯物(以下、試験布と記載)を使用した。
脱水度(%)=乾燥試験布の重量(kg)/脱水後の試験布の重量(kg)×100
乾燥試験布の重量(kg)は、試験布を温度20℃、相対湿度65%の環境に24時間放置した後の重量(kg)であり、脱水後の試験布の重量(kg)とは、乾燥試験布を試験に先立ち1時間以上水に付けた後、遠心式脱水装置付きの家庭用電気洗濯機を用い、3分間(通電時間)脱水を行った後の重量(kg)で有る。
【0024】
特に、洗濯20回後の、洗濯脱水抱水率が50%以下(より好ましくは5〜50%)であることが好ましい。ここで、洗濯は、JIS−C−9606に規定する遠心式脱水装置付きの家庭用電気洗濯機を用い、JIS−L−0217の103法に記載の試験方法に準じる洗濯、乾燥を20回繰返す。すなわち、洗液温度は40℃とし、標準使用量となる割合で合成洗剤を溶解し、浴比が1対30になるように試料を投入する。この状態で5分間処理した後に運転を止め、試料を脱水機で脱水し、洗濯液を30℃以下の新しい水に替えて2分間すすぎを行う。次に試料を脱水し、ふたたび2分間のすすぎを行い、脱水し、直射日光の影響を受けない状態で吊干し又は平干しをする。これを20回繰返した後、前記の洗濯脱水抱水率を測定する。
【0025】
次に、本発明によれば、前記の速乾性布帛を用いてなる、学生服、学生ズボン、作業衣、および制服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品が提供される。かかる繊維製品は前記の速乾性布帛を用いているので、目付けが大きいにもかかわわらず極めて優れた速乾性を有する。
【実施例】
【0026】
次に、本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0027】
<目付>
JISL1096 6.4により測定した。
【0028】
<織物のカバーファクターCF>
下記式により、織物のカバーファクターCFを算出した。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【0029】
<撚係数>
下記式により撚係数を算出した。
撚係数=T×(D)1/2
ここで、Tは撚数(T/m)であり、Dは有機繊維糸条の総繊度(dtex)である。
【0030】
<洗濯脱水抱水率>
下記式により洗濯脱水抱水率を求めた。
洗濯脱水抱水率(%)=(W1−W0)/W0×100
ただし、W0は試料(タテ40cm、ヨコ40cm)を乾燥後、温度20℃、相対湿度65%の環境に24時間放置した後の重量(g)であり、W1は当該試料を洗濯脱水した後の重量(g)である。また、洗濯脱水は、試料(タテ40cm、ヨコ40cm)を、JIS−C−9606に規定する遠心式脱水装置付きの家庭用電気洗濯機を用い、JIS−L−0217の103法に記載の試験方法で行う。すなわち、洗液温度は40℃とし、標準使用量となる割合で合成洗剤を溶解し、浴比が1対30になるように試料を投入する。この状態で5分間処理した後に運転を止め、試料を脱水機で脱水し、洗濯液を30℃以下の新しい水に替えて2分間すすぎを行う。次に試料を脱水し、ふたたび2分間のすすぎを行い、脱水を3分間(通電時間)行った後の重量をW1とする。
また、洗濯20回後の洗濯脱水抱水率は、下記の洗濯を20回行った後、前記の洗濯脱水抱水率を求めた。すなわち、洗濯は、JIS−C−9606に規定する遠心式脱水装置付きの家庭用電気洗濯機を用い、JIS−L−0217の103法に記載の試験方法に準じる洗濯、乾燥を20回繰返した。すなわち、洗液温度は40℃とし、標準使用量となる割合で合成洗剤を溶解し、浴比が1対30になるように試料を投入した。この状態で5分間処理した後に運転を止め、試料を脱水機で脱水し、洗濯液を30℃以下の新しい水に替えて2分間すすぎを行った。次に試料を脱水し、ふたたび2分間のすすぎを行い、脱水し、直射日光の影響を受けない状態で吊干し又は平干しをする。これを20回繰返した後、前記の洗濯脱水抱水率を測定した。
【0031】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸 167dtex/48filに、村田機械製のダブルツイスターDT−308を用いて仮撚方向と異方向に600T/m追撚(撚係数=7754)し、70℃で30分のスチームセットした撚糸糸条を経糸および緯糸に配して、通常のウォータージェットルーム織機を使用して、図1に記載の織組織を有する織物を織成した。その時の生機密度は、経密度107本/2.54cm、緯密度82本/2.54cmであった。次いで、U型ソフサーを用いて95℃で拡布精練し、液流染色機にて120℃リラックス処理した。次いで、テンターを用いて190℃で中間セットし、液流染色機にて130℃の分散染料による染色加工(黒色)を行い、撥水加工を施した後、テンターを用い170℃でファイナルセットした。その際、撥水加工は下記の加工剤を使用し、ピックアップ率80%で搾液し、130℃で3分間乾燥後170℃で45秒間熱処理を行った。
<加工剤組成>
・ふっ素系撥水剤 8.0wt%
(旭硝子(株)製、アサヒガードLS−317)
・メラミン樹脂 0.3wt%
(住友化学(株)製、スミテックスレジンM−3)
・触媒 0.3wt%
(住友化学(株)製、スミテックスアクセレレータACX)
・水 91.4wt%
得られた布帛は、経密度117本/2.54cm、緯密度100本/2.54cm、カバーファクターCF=2674で、目付=185g/m、洗濯脱水抱水率は、初期で12.3%、20回洗濯後で、45.7%であり、速乾性に優れるものであった。
次いで、該布帛を表地に用いて学生服を得た。該学生服は極めて速乾性に優れるものであった。
【0032】
[実施例2]
ポリエチレンテレフタレート複合仮撚捲縮加工糸 190dtex/63filに、村田機械製のダブルツイスターDT−308を用いて仮撚方向と異方向に1800T/m追撚(撚係数=24811)し、75℃で45分のスチームセットした撚糸糸条を経糸に配し、一方、ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸110dtex/48fil双糸に、村田機械製のダブルツイスターDT−308を用いて仮撚方向と異方向に600T/m追撚(撚係数=8899)し、70℃で30分のスチームセットした撚糸糸条を緯糸に配して、通常のウォータージェットルーム織機を使用して、図2に記載の織組織を有する織物を織成した。その時の生機密度は、経密度137本/2.54cm、緯密度78本/2.54cmであった。それ以外は、実施例1と同様に実施した。得られた布帛は、経密度162本/2.54cm、緯密度88本/2.54cm、カバーファクターCF=3374で、目付=260g/m、洗濯脱水抱水率は、初期で10.4%、20回洗濯後で、31.7%であり、速乾性に優れるものであった。
次いで、該布帛を表地に用いて学生服を得た。該学生服は極めて速乾性に優れるものであった。
【0033】
[実施例3]
ポリエチレンテレフタレート複合仮撚捲縮加工糸 190dtex/63filに、村田機械製のダブルツイスターDT−308を用いて仮撚方向と異方向に1200T/m追撚(撚係数=16541)し、75℃で45分のスチームセットした撚糸糸条を経糸に配し、一方、ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸110dtex/48fil双糸に、村田機械製のダブルツイスターDT−308を用いて仮撚方向と異方向に150T/m追撚(撚係数=2225)した撚糸糸条を緯糸に配して、通常のウォータージェットルーム織機を使用して、図2に記載の織組織を有する織物を織成した。その時の生機密度は、経密度136本/2.54cm、緯密度78本/2.54cmであった。次いで、U型ソフサーを用いて95℃で拡布精練し、液流染色機にて120℃リラックス処理した。次いで、テンターを用いて190℃で中間セットし、液流染色機にて130℃の分散染料による染色を行い、撥水加工を施した後、テンターを用い170℃でファイナルセットした。その際、撥水加工は下記の加工剤を使用し、ピックアップ率80%で搾液し、130℃で3分間乾燥後170℃で45秒間熱処理を行った。
<加工剤組成>
・ふっ素系撥水剤 2.0wt%
(旭硝子(株)製、アサヒガード AG710)
・水 98.0wt%
得られた布帛は、経密度161本/2.54cm、緯密度94本/2.54cm、カバーファクターCF=3445で、目付=273g/m、洗濯脱水抱水率は、初期で55.1%、20回洗濯後で、82.9%であり、速乾性にやや優れるものであった。
次いで、該布帛を表地に用いて学生服を得た。該学生服は、実施例2で得られたものより劣るものの速乾性にやや優れるものであった。
【0034】
[比較例1]
実施例3において、撥水加工を付与せず処理を行い、それ以外は、実施例3と同様に実施した。
得られた布帛は、経密度161本/2.54cm、緯密度94本/2.54cm、カバーファクターCF=3445で、目付=271g/m、洗濯脱水抱水率は、初期で97.3%、20回洗濯後で、98.4%であり、速乾性に劣るものであった。
次いで、該布帛を表地に用いて学生服を得た。該学生服は、実施例3で得られたものより速乾性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、目付けが大きい布帛であるにもかかわわらず極めて速乾性に優れた速乾性布帛、および該速乾性布帛を用いてなる繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機繊維糸条を含み、目付けが150g/m以上の布帛であって、前記有機繊維糸条に撚係数5000以上の撚糸が施されており、かつ布帛に撥水加工が施されていることを特徴とする速乾性布帛。
ただし、撚係数は下記式により算出する。
撚係数=T×(D)1/2
ここで、Tは撚数(T/m)であり、Dは有機繊維糸条の総繊度(dtex)である。
【請求項2】
下記式で定義する洗濯脱水抱水率が50%以下である、請求項1に記載の速乾性布帛。
洗濯脱水抱水率(%)=(W1−W0)/W0×100
ただし、W0は試料(タテ40cm、ヨコ40cm)を乾燥後、温度20℃、相対湿度65%の環境に24時間放置した後の重量(g)であり、W1は当該試料を洗濯脱水した後の重量(g)である。また、洗濯脱水は、試料(タテ40cm、ヨコ40cm)を、JIS−C−9606に規定する遠心式脱水装置付きの家庭用電気洗濯機を用い、JIS−L−0217の103法に記載の試験方法で行う。
【請求項3】
前記有機繊維糸条がポリエステル糸条である、請求項1または請求項2に記載の速乾性布帛。
【請求項4】
前記有機繊維糸条に仮撚捲縮加工が施されている、請求項1〜3のいずれかに記載の速乾性布帛。
【請求項5】
布帛が、下記式で定義するカバーファクターCFが2000〜4500の織物である、請求項1〜4のいずれかに記載の速乾性布帛。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の速乾性布帛を用いてなる、学生服、学生ズボン、作業衣、および制服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。

【図1】
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【図2】
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