説明

速度検出装置

【課題】従来とは異なる方式の速度検出装置を提供することを課題とする。
【解決手段】速度検出装置は、回転軸と、前記回転軸に固定された永久磁石と、前記回転軸に固定され、前記永久磁石により互いに異なる極性に励磁され、形状が同一である第1及び第2回転鉄芯と、前記第1及び第2回転鉄芯を包囲する筒部、前記筒部の内側から突出した支持部、前記支持部の先端に設けられ前記第1及び第2回転鉄芯と対向する対向部、を含む固定鉄芯と、前記支持部の周囲に巻回されたコイルと、を備え、前記対向部は、複数の固定歯を有し、前記第1回転鉄芯は、複数の第1回転歯を有し、前記第2回転鉄芯は、複数の第2回転歯を有し、前記固定歯、第1回転歯、及び第2回転歯のピッチは同じであり、前記第1及び第2回転歯は、2分の1ピッチずれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転体の回転速度を検出する速度検出装置として、種々の方式が提案されている。例えば、レゾルバ方式、パターン発電(フリケンシージェネレーター)方式、光学式、磁石とMRセンサ(磁気抵抗素子)とを用いた方式等がある。特許文献1、2には、このような速度検出装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59-079808号公報
【特許文献2】特開平10-132504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レゾルバ方式の場合、検出分解能を上げるためには、交流電流を検出するために専用のICが必要となりコストが増大する。パターン発電方式の場合、検出分解能を上げるためには、コイルと磁石との対向面積を確保しなければならず、装置が大型化するおそれがある。光学式の場合、受光素子と発光素子との間に配置される回転板に形成されたスリットの間隔には限界がある。また、スリットの間隔のばらつきにより、ピッチ誤差が生じる。このため、検出分解能を上げるには一定の制約がある。磁石とMRセンサとを用いた方式の場合、磁石に着磁可能な極の数には限界がある。また、着磁ピッチのばらつきにより、ピッチ誤差が生じる。このため、検出分解能には一定の限界がある。このように、上記の方式の速度検出装置では、検出分解能を上げるためには種々の制約がある。
【0005】
そこで本発明は、従来とは異なる方式の速度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、回転軸と、前記回転軸に固定された永久磁石と、前記回転軸に固定され、前記永久磁石により互いに異なる極性に励磁され、形状が同一である第1及び第2回転鉄芯と、前記第1及び第2回転鉄芯を包囲する筒部、前記筒部の内側から突出した支持部、前記支持部の先端に設けられ前記第1及び第2回転鉄芯と対向する対向部、を含む固定鉄芯と、前記支持部の周囲に巻回されたコイルと、を備え、前記対向部は、複数の固定歯を有し、前記第1回転鉄芯は、複数の第1回転歯を有し、前記第2回転鉄芯は、複数の第2回転歯を有し、前記固定歯、第1回転歯、及び第2回転歯のピッチは同じであり、前記第1及び第2回転歯は、2分の1ピッチずれている、速度検出装置によって達成できる。
【0007】
互いに対向しうる固定歯と、第1及び第2回転歯との各ピッチは同じである。これにより、第1及び第2回転鉄芯が回転することにより、複数の固定歯はそれぞれ複数の第1回転歯に対向し、次に、複数の固定歯はそれぞれ複数の第2回転歯と対向する。例えば、第1及び第2回転鉄芯がそれぞれS極、N極に励磁されている場合を想定する。この場合に複数の固定歯と複数の第1回転歯とが対向すると、複数の固定歯はS極に励磁される。これにより、支持部はS極に励磁されコイルにはS極の磁束が通過する。また、複数の固定歯と複数の第2回転歯とが対向すると、複数の固定歯はN極に励磁される。これにより、支持部はN極に励磁されコイルにはN極の磁束が通過する。
【0008】
このように、第1及び第2回転鉄芯が回転することにより、コイルを通過する磁束が変化し、これによりコイルには逆起電力が発生する。これに伴ってコイルに生じる電圧の変化を検出することにより、回転軸の回転速度を算出することができる。
【0009】
上記構成において、前記支持部は、第1及び第2支持部を含み、前記対向部は、前記第1及び第2支持部のそれぞれの先端に形成された第1及び第2対向部を含み、前記複数の固定歯は、前記第1及び第2対向部にそれぞれ設けられた複数の第1及び第2固定歯を含み、前記コイルは、前記第1及び第2支持部にそれぞれ互いに異なる方向に巻回され互いに接続されてない第1及び第2コイルを含み、前記第1固定歯が前記第1回又は第2回転歯と対向しているときは、前記第2固定歯は前記第1及び第2回転歯の双方と対向し、前記第1固定歯が前記第1及び第2回転歯の双方と対向しているときは、前記第2固定歯は、前記第1又は第2回転歯と対向している、構成を採用してもよい。
【0010】
第1固定歯が第1又は第2回転歯と対向している間は、第1コイルには磁束が通過して電圧が生じる。このとき、第2固定歯は第1及び第2回転歯の双方が対向しているのでS極とN極とが相殺され、第2コイルには磁束は通過せずに電圧が生じない。また、第1固定歯が第1及び第2回転歯の双方と対向しているときには第1コイルに電圧が生じない。このとき、第2固定歯は第1又は第2回転歯と対向しているので第2コイルには電圧が生じる。
【0011】
ここで、第1及び第2回転歯は2分の1ピッチずれている。このため、第1固定歯が第1回転歯に対向し第2固定歯が第1及び第2回転歯に対向した状態から、第1固定歯が第2回転歯に対向し第2固定歯が第2回転歯に対向した状態に移行するのに必要な、第1及び第2回転鉄芯の移動距離は、歯の4分の1ピッチである。このため、第1及び第2回転鉄芯が4分の1ピッチ分回転する毎に、第1及び第2コイルの何れか一方に電圧が生じない状態、または、第1及び第2コイルの何れか一方に生じる電圧の絶対値が最大値をとる状態となる。従って、4分の1ピッチで第1及び第2コイルに生じる電圧の変化を検出することにより、回転軸の回転速度を検出することができる。このように、検出分解能が向上している。従って、回転軸の回転速度が遅い場合にも回転速度を精度よく検出することができる。
【0012】
上記構成において、前記回転軸は、画像形成装置の感光体ドラムを駆動する軸に連結される、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来とは異なる方式の速度検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施例の速度検出装置が採用された画像形成装置の構成図である。
【図2】図2は、速度検出装置の説明図である。
【図3】図3は、回転軸、永久磁石、回転鉄芯の説明図である。
【図4】図4は、固定鉄芯の正面図である。
【図5】図5は、回転軸、回転鉄芯の正面図である。
【図6】図6は、回転鉄芯の歯列部の拡大図である。
【図7】図7は、固定鉄芯の歯列部の拡大図である。
【図8】図8A〜8Cは、歯列部の位置関係の説明図である。
【図9】図9A〜9Cは、歯列部の位置関係の説明図である。
【図10】図10A、10Bは、第1及び第2コイルに生じる電圧を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施例の速度検出装置6が採用された画像形成装置Aの構成図である。画像形成装置Aは、感光体ドラム2、感光体ドラム2を駆動するためのモータ4、モータ4の動力を感光体ドラム2のドラム軸2aに伝達する減速機5、感光体ドラム2のドラム軸2aの回転速度を検出する速度検出装置6、画像形成装置Aの動作全体を制御する制御部1、を有している。制御部1は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアから構成される。制御部1は、モータ4を駆動させることにより感光体ドラム2を駆動する。速度検出装置6は、感光体ドラム2のドラム軸2aの回転速度に応じた検出信号を制御部1へ送信する。制御部1は、速度検出装置6から送信された検出信号に基づいて、ドラム軸2aの回転速度を算出する。制御部1は、速度検出装置6からの検出信号に基づいて、モータ4の駆動をフィードバック制御する。
【0016】
尚、図1では、速度検出装置6はドラム軸2aの端部で連結されているが、ドラム軸2a上であればどの部分で連結されていてもよい。また、図1では、制御部1は、モータ4の駆動を制御するための専用のICであってもよい。また、モータ4の駆動を制御するための専用のICと、速度検出装置6からの検出信号を受信する専用のICとを個別に設けて、両者のIC間で通信可能に設けてもよい。また、制御部1、モータ4、減速機5、速度検出装置6の全てを一体化したものであってもよい。制御部1、モータ4、減速機5、速度検出装置6のうちの少なくとも2以上をユニット化したものであってもよい。例えば、速度検出装置6を、モータ4又は減速機5と一体化したものであってもよいし、モータ4、減速機5、速度検出装置6を一体化してものであってもよい。
【0017】
図2は、速度検出装置6の説明図である。図2において、速度検出装置6の一部分を断面で示している。速度検出装置6は、ケースC、回転軸10、永久磁石20、回転鉄芯30、40、固定鉄芯50を含む。回転軸10、永久磁石20、回転鉄芯30、40、固定鉄芯50は、ケースC内に配置されている。回転軸10は、ケースC内に設けられた軸受B1、B2により回転可能に支持されている。回転軸10は、感光体ドラム2のドラム軸2aと直接、又は歯車、又はカップリングなどを介して間接的に接続されている。従って、回転軸10は感光体ドラム2のドラム軸2aと共に回転する。
【0018】
永久磁石20、回転鉄芯30、40は、回転軸10に固定されている。永久磁石20は、回転鉄芯30、40に挟まれている。永久磁石20は、回転軸10の軸方向に異なる極性に着磁されている。従って、回転鉄芯30、40は、永久磁石20により互いに異なる極性に励磁される。回転鉄芯30、40は磁性材料により形成され、例えば薄い電磁鋼板を積層して形成されている。回転軸10、永久磁石20、回転鉄芯30、40は、一体に回転する回転子である。回転鉄芯30、40は、それぞれ第1及び第2回転鉄芯の一例である。
【0019】
固定鉄芯50は、ケースC内に固定されている。固定鉄芯50は、円筒部52、円筒部52の内側から突出した支持部54a等を含む。固定鉄芯50については詳しくは後述する。固定鉄芯50は、磁性材料により形成されている。
【0020】
図3は、回転軸10、永久磁石20、回転鉄芯30、40の説明図である。図3において、永久磁石20、回転鉄芯30、40の一部を断面にして示している。回転鉄芯30、40の外周面には、それぞれ歯列部38、48が形成されている。歯列部38、48は、それぞれ複数の第1及び第2回転歯の一例である。回転鉄芯30、40は、同一の形状である。
【0021】
図4は、固定鉄芯50の正面図である。尚、図4において、回転軸10、回転鉄芯30等については破線で示している。固定鉄芯50の円筒部52には、円筒部52の内側面から円筒部52の中心に向かって突出した支持部54a〜54hが形成されている。支持部54a〜54hは、等角度間隔で設けられている。支持部54a、54c、54e、54gは、第1支持部の一例であり、支持部54b、54d、54f、54hは、第2支持部の一例である。
【0022】
支持部54a〜54hの先端のそれぞれには、対向部56a〜56hが形成されている。対向部56a〜56hは、回転鉄芯30、40と対向する。対向部56a、56c、56e、56gは、第1対向部の一例であり、対向部56b、56d、56f、56hは、第2対向部の一例である。
【0023】
対向部56a〜56hのそれぞれには、歯列部58a〜58hが形成されている。歯列部58a〜58hは、複数の固定歯の一例である。また、歯列部58a、58c、58e、58gは、複数の第1固定歯の一例であり、歯列部58b、58d、58f、58hは、複数の第2固定歯の一例である。回転鉄芯30の歯列部38、回転鉄芯40の歯列部48が歯列部58a〜58hと対向しながら、回転鉄芯30、40は回転する。
【0024】
支持部54a〜54hの周りには、それぞれコイル60a〜60hが巻回されている。ここで、コイル60a、60c、60e、60gは、一本のコイル線から構成される。即ち、コイル60a、60c、60e、60gは連結されている。以下、コイル60a、60c、60e、60gから構成される一本のコイル線を第1コイルと称する。同様に、コイル60b、60d、60f、60hも一本のコイル線から構成される。以下、コイル60b、60d、60f、60hから構成される一本のコイル線を第2コイルと称する。第1及び第2コイルは、互いに接触しないようにして支持部54a〜54hに巻回されている。
【0025】
ここで、図4に示した、コイル60aの「◎」で紙面の垂直上方に電流が流れる場合には、コイル60aの「×」の箇所で紙面の垂直下方に電流が流れる。コイル60aの「◎」で紙面の垂直下方に電流が流れる場合には、コイル60aの「×」で紙面の垂直上方に電流が流れる。
【0026】
従って、コイル60a、60eは同一方向に巻かれている。コイル60c、60gは、コイル60a、60eとは逆方向に巻かれている。同様に、コイル60b、60fは同一方向に巻かれている。コイル60d、60hは、コイル60b、60fとは逆方向に巻かれている。コイル60a、60bは互いに逆方向に巻かれている。固定鉄芯50の中心を介して互いに対向するコイル60a、60eは、同一方向に巻かれている。同様に、コイル60b、60fは、同一方向に巻かれている。コイル60c、60gは、同一方向に巻かれている。コイル60d、60hは、同一方向に巻かれている。速度検出装置6は、いわゆるハイブリッド型のステッピングモータと同様の構造を有している。
【0027】
図5は、回転軸10、回転鉄芯30、40の正面図である。図6は、回転鉄芯30、40の歯列部38、48の拡大図である。歯列部38の歯39のピッチP3と、歯列部48の歯49のピッチP4とは同じである。また、ピッチP3とピッチP4とは、2分の1ピッチだけずれている。このような状態で回転鉄芯30、40は回転軸10に固定されている。上述したように永久磁石20により回転鉄芯30、40は互いに異なる極性に励磁されている。従って、例えば歯39がS極に励磁されている場合には、歯49はN極に励磁される。
【0028】
図7は、固定鉄芯50の歯列部58aの拡大図である。歯列部58aの歯59aのピッチP5は、ピッチP3、P4のそれぞれと同じである。尚、歯列部58b〜58hのピッチも、歯列部58aのピッチP5と同じである。このため、詳しくは後述するが回転軸10の回転速度の検出精度が向上する。
【0029】
図8A〜8Cは、歯列部38、48、58aの位置関係の説明図である。尚、図8A〜8Cにおいては、理解を容易にするためにこれら歯列部38、48、58aを展開して示しており、歯の形状も簡単に記載している。図8Aでは、歯39は歯59aに対向し、歯49は歯59aの間の部分に対向している。ここで、例えば歯39、49がそれぞれS極、N極に励磁されている場合には、歯59aは歯39と対向しているため、歯59a、歯列部58a、対向部56a、支持部54aはS極に励磁される。このため、支持部54aに巻回されたコイル60aにS極の磁束が通過する。図8Aに示した状態から回転軸10が回転すると、図8Bに示すように、歯59aは歯39、49の双方と対向する。これにより、歯59aではS極とN極とが相殺されて極性がない状態になる。図8Bに示した状態から更に回転軸10が回転すると、歯59aは歯49と対向する。これにより、対向部56aはN極に励磁され、コイル60aにN極の磁束が通過する。
【0030】
このように、回転軸10が回転することによって、歯59aに対向する歯が変化し、これにより、コイル60aを通過する磁束の極性が変化する。この結果、コイル60aには逆起電力が発生して電流が流れ電圧が生じる。尚、歯59aが歯39、49の双方と対向して対向部56a、支持部54aは極性がない状態になっている場合には、コイル60aには電流は流れず、電圧は生じない。
【0031】
歯列部58c、58e、58gの歯が対向する歯も、回転軸10の回転により変化するため、コイル60c、60e、60gにおいても、通過する磁束の変化に基づいて逆起電力が発生し電圧が生じる。
【0032】
ここで、歯59aが歯39に対向しているときには、歯列部58eの歯は歯39に対向し、歯列部58c、58gの歯は歯49に対向する。歯59aの歯が歯49に対向しているときには、歯列部58eの歯は歯49に対向し、歯列部58c、58gの歯は歯39に対向する。歯59eの歯が歯39、49の双方に対向しているときには、歯列部58c、58e、58gの歯も歯39、49の双方に対向している。従って、歯列部58a、58eの歯は、歯列部58c、58gの歯に対して、2分の1ピッチずれている。
【0033】
従って、コイル60aにS極の磁束が通過している場合には、コイル60eにはS極の磁束が通過し、コイル60c、60gにはN極の磁束が通過する。即ち、コイル60a、60eを通過する磁束の極性は、コイル60c、60gを通過する磁束の極性とは逆である。また、コイル60a、60eが巻かれている方向は、コイル60c、60gが巻かれている方向と逆である。このため、コイル60a、60c、60e、60gのそれぞれで逆起電力によって生じる電流の流れる方向は、第1コイル上では一致している。このため、コイル60a、60c、60e、60gのそれぞれで逆起電力によって生じる電流が互いに相殺することはない。
【0034】
図9A〜9Cは、歯列部38、48、58bの位置関係の説明図である。図9A〜9Cに示すように、回転鉄芯30、40が回転することによって、歯列部58b、58d、58f、58hの歯に対向する歯が変化する。これにより第2コイルには逆起電力に基づく電流が流れ、電圧が生じる。
【0035】
ここで、歯59bが歯39に対向しているときには、歯列部58fの歯は歯39に対向し、歯列部58d、58hの歯は歯49に対向する。歯59bが歯49に対向しているときには、歯列部58fの歯は歯49に対向し、歯列部58d、58hの歯は歯39と対向している。歯59bが歯39、49の双方に対向しているときには、歯列部58d、58f、58hの歯も歯39、49の双方に対向している。従って、歯列部58b、58fの歯は、歯列部58d、58hの歯に対して、2分の1ピッチずれている。
【0036】
従って、コイル60b、60fを通過する磁束の極性は、コイル60d、60hを通過する磁束の極性とは逆である。また、コイル60b、60fが巻かれている方向は、コイル60d、60hが巻かれている方向と逆である。このため、コイル60b、60d、60f、60hのそれぞれで逆起電力によって生じる電流の流れる方向は、第2コイル上では一致している。このため、コイル60b、60d、60f、60hのそれぞれで逆起電力によって生じる電流が互いに相殺することはない。
【0037】
ここで、図8Aに示した歯59aが歯39と対向しているときには、図9Aに示すように歯59bは歯39、49の双方と対向する。図8Bに示した歯59aが歯39、49の双方と対向しているときには、図9Bに示すように歯59bは歯39と対向する。図8Cに示した歯59aが歯49と対向する場合には、図9Cに示すように歯59bは再び歯39、49の双方と対向する。従って、歯59aと59bとは、4分の1ピッチだけずれている。このように、歯59aの位置、歯59bの位置が設定されている。同様に、歯列部58c、58d、歯列部58e、58f、歯列部58g、58hも、互いに4分の1ピッチずれている。
【0038】
図10A、10Bは、第1及び第2コイルに生じる電圧を示している。回転軸10が回転することにより、第1及び第2コイルに逆起電力に伴う電流が流れ、電圧が生じる。図10A、10Bに示した曲線L1、L2は、それぞれ第1及び第2コイルに流れる電流を示している。曲線L1、L2は正弦波となる。曲線L1、L2は、位相が4分の1周期ずれている。この理由は、上述したように、歯列部58a、58b、歯列部58c、58d、歯列部58e、58f、歯列部58g、58hは、互いに4分の1ピッチずれているからである。
【0039】
図10Aは、回転軸10が低速で回転した場合、図10Bは、回転軸10が高速で回転した場合を示している。回転軸10が高速で回転する場合の方が、周期が短くなり、電圧の振幅は大きくなる。
【0040】
図10A、10Bで示す点A〜Cでの電圧の値は、図8A〜8Cの状態での第1コイルに生じる電圧の値を示している。ここで、歯列部58a、58c、58e、58gの歯のそれぞれが、歯39、49の双方に対向している場合には、電圧の値はゼロになる。従って、図8Bの状態では、電圧は図10A、10Bに示す点Bの値となる。図10A、10Bで示す点A´〜C´での電圧の値は、図9A〜9Cの状態での第2コイルに生じる電圧の値を示している。
【0041】
制御部1は、例えば、所定期間内で、第1又は第2コイルに生じる電圧の値がゼロになる回数をカウントすることにより、回転軸10の回転速度を算出する。又は、例えば、制御部1は、第1又は第2コイルに生じる電圧の値がゼロになってから次に再びゼロになるまでの区間をカウントすることにより、回転軸10の回転速度を算出できる。これにより感光体ドラム2のドラム軸2aの回転速度を算出できる。尚、制御部1は、第1又は第2コイルに生じる電圧の値の振幅を検出することにより、回転軸10の回転速度を算出できる。回転軸10の回転速度が速いほど第1及び第2コイルに生じる電圧の振幅が大きくなるからである。
【0042】
また、回転軸10の回転速度を検出するにあたり、第1及び第2コイルに生じた電圧値の正弦波信号を電気的に処理して分割能を向上させるための、A/D変換方式を用いた内挿分割方式を採用してもよい。この内挿分割方式は、例えば特開昭49−106744号に開示されている。また、制御部1は、第1及び第2コイルの電圧値のうち、どちらが位相が進んでいるかを判定することにより、回転軸10の回転方向を判定することもできる。
【0043】
上述したように、コイル60a、60c、60e、60gのそれぞれで逆起電力によって生じる電流の流れる方向は、第1コイル上では一致している。従って、図10A、10Bに示した曲線L1は、コイル60a、60c、60e、60gのそれぞれで逆起電力によって生じる電圧値の積算値を示す。電圧値が積算されることにより、第1コイル全体に流れる電圧値の振幅を確保することができる。このように、一本のコイルを複数の箇所で巻回させることにより、電圧値の振幅の大きさを確保している。これにより、電圧値の振幅が小さいことに起因する誤検出を防止できる。
【0044】
また、制御部1は、第1及び第2コイルの双方に生じる電圧の変化を考慮して回転軸10の回転速度を算出することもできる。例えば、第1及び第2コイルの一方での電圧値がゼロになってから、第1及び第2コイルの他方での電圧値がゼロになるまでの期間をカウントすることによっても、制御部1は回転軸10の回転速度を算出できる。具体的には、制御部1は、図10A、10Bのそれぞれに示した点A´と点Bとの期間をカウントし、このカウント値に基づいて回転軸10の回転速度を算出することもできる。
【0045】
ここで、第1及び第2コイルの一方の電圧値がゼロになってから、第1及び第2コイルの他方の電圧値がゼロになるまでの期間での回転鉄芯30、40の回転量は、歯の4分の1ピッチ分の回転量に相当する。図9Aに示した状態から図8Bに示した状態に移行するまでの回転鉄芯30、40の回転量は、歯の4分の1ピッチ分の回転量に相当するからである。従って、歯の4分の1ピッチ分回転軸10が回転する毎に、第1及び第2コイルの何れか一方に電圧が生じない状態となる。従って、制御部1は、歯の4分の1ピッチ毎に回転軸10の回転速度を検出することができる。このように、検出分解能が向上している。特に回転軸10が低速で回転する場合に、回転軸10の回転速度を精度よく検出することができる。
【0046】
同様に、歯の4分の1ピッチ分回転軸10が回転する毎に、第1及び第2コイルの何れか一方に流れる電圧の絶対値が最大値をとる。従って、制御部1は、第1及び第2コイルの一方の電圧値の絶対値が最大値となってから、第1及び第2コイルの他方の電圧値の絶対値が最大値となるまでの期間に基づいて、回転軸10の回転速度を検出してもよい。
【0047】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0048】
上記実施例においては、速度検出装置6を画像形成装置Aに採用した場合を説明したが、速度検出装置6はそれ以外の装置に作用してもよい。
【0049】
8つの支持部54a〜54hが設けられているが8つ以外であってもよい。第1及び第2コイルが設けられているが、少なくとも一つのコイルがあればよい。
【符号の説明】
【0050】
A 画像形成装置
6 速度検出装置
10 回転軸
20 永久磁石
30、40 回転鉄芯
38、48、58a〜58h 歯列部
39、49、59a、59b 歯
50 固定鉄芯
52 円筒部
54a〜54h 支持部
56a〜56h 対向部
60a〜60h コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に固定された永久磁石と、
前記回転軸に固定され、前記永久磁石により互いに異なる極性に励磁され、形状が同一である第1及び第2回転鉄芯と、
前記第1及び第2回転鉄芯を包囲する筒部、前記筒部の内側から突出した支持部、前記支持部の先端に設けられ前記第1及び第2回転鉄芯と対向する対向部、を含む固定鉄芯と、
前記支持部の周囲に巻回されたコイルと、を備え、
前記対向部は、複数の固定歯を有し、
前記第1回転鉄芯は、複数の第1回転歯を有し、
前記第2回転鉄芯は、複数の第2回転歯を有し、
前記固定歯、第1回転歯、及び第2回転歯のピッチは同じであり、
前記第1及び第2回転歯は、2分の1ピッチずれている、速度検出装置。
【請求項2】
前記支持部は、第1及び第2支持部を含み、
前記対向部は、前記第1及び第2支持部のそれぞれの先端に形成された第1及び第2対向部を含み、
前記複数の固定歯は、前記第1及び第2対向部にそれぞれ設けられた複数の第1及び第2固定歯を含み、
前記コイルは、前記第1及び第2支持部にそれぞれ互いに異なる方向に巻回され互いに接続されてない第1及び第2コイルを含み、
前記第1固定歯が前記第1回又は第2回転歯と対向しているときは、前記第2固定歯は前記第1及び第2回転歯の双方と対向し、
前記第1固定歯が前記第1及び第2回転歯の双方と対向しているときは、前記第2固定歯は、前記第1又は第2回転歯と対向している、請求項1の速度検出装置。
【請求項3】
前記回転軸は、画像形成装置の感光体ドラムを駆動する軸に連結される、請求項1又は2の速度検出装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−7682(P2013−7682A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141130(P2011−141130)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】