説明

速度規制標識認識結果の通知方法

【課題】速度規制標識32の認識正解率が100%に達しないシステムにおいても、運転者に適切な制限速度情報の提供が行える速度規制標識認識結果の通知方法を提供する。
【解決手段】撮像部1で車両前方画像30を撮像し、この車両前方画像30内の速度規制標識32を画像処理部2で自動認識し、この自動認識過程の前記車両前方画像30内の速度規制標識32部分の画像を第1画像5として表示すると共に、前記自動認識した結果から導かれたイメージ画像からなる第2画像6を並べて表示する。これにより、運転者が上記ペア画像5、及び6を比較でき、速度規制標識32の内容に関して、正しい判断を行うことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行中の道路に存在する速度規制標識を自動認識し、運転者に自動認識の結果を通知する速度規制標識認識結果の通知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、速度規制標識を正しく認識するための手法は、種々提案されている。特許文献1では、ネットワークを利用した大規模なものが提案されている。これは、道路側から車両に対して道路交通標識、標示情報、事故や工事等による規制情報、及びその他の道路情報を認知しやすい形態で運転者に表示することにより、運転者の安全運転を支援するネットワーク型標識システムに関するものである。
【0003】
この特許文献1の技術においては、道路交通標識及び道路交通標示等の視認性を良くして、時々刻々変化する道路状況や交通状況の配信を可能とし、必要な情報のみを運転者に通知する標識システムを提供するという課題の基に、次のような構成を有している。
【0004】
即ち、センタ装置は、道路交通標識等の道路情報を一括管理し、かつ道路に設けられた有線ネットワークに接続されている。そして、道路に設けられた路側アンテナから、無線で車両に必要な情報が配信されている。車両の車載装置は、車載アンテナを通してセンタ装置からの配信情報を受信し、画像及び音声等の選択されたメディアで、運転者に情報を通知している。
【0005】
また、特許文献2は、高度な画像処理装置を利用したものが提案されている。これは、車両に搭載されるビデオカメラによって撮影された画像より、リアルタイムに道路標識を抽出し認識する方法及びその装置を得るという課題の基に構成されたものである。そしてその構成は、画面に表示されたビデオ画像に、特別なスリットfiを設定し、HSV変換処理部によるスリット上の画素データの色成分から、標識確率計算処理部が、道路標識の有無を検出している。道路標識が、スリット上に存在すると判断されたときは、検出エリア設定処理部が、そのスリット上の道路標識があると判定した範囲に、所定の大きさの検出エリアを設定している。そして、輪郭検出処理部が2値化によって抽出した道路標識の輪郭を抽出し、形状種類決定処理部が道路標識の輪郭から種類を決定し、標識認識処理部が、この決定した種類内で、エリア内での道路標識の絵画像の特徴に最も類似する標識を引当て、これをビデオカメラで検出した道路標識として認識するものである。
【0006】
更に、特許文献3には、カラー画像を用いて道路標識等の対象物の認識性能を向上させる方法が開示されている。この方法は、撮像されたカラー画像から得られる色情報(色相、彩度、及び明度)、形状情報、並びにエッジ情報を用いて、使用色が、予め設定されている標識並びに使用色、形状及び大きさが不定である看板を認識するものである。このため、次のような構成を採用している。
【0007】
この認識方法の実施装置は、カラー画像を取得する撮像部と、カラー画像をHSI(Hue Saturation Intensity)変換により、色相・彩度・明度の色情報に変換する標識・看板識別部を備えている。そして、抽出された標識領域内部を対象として、青、赤、及び白領域とする円形標識情報抽出部を備えている。更に、領域内の構成色数及び構成色の比率を求める円形標識認識部を備え、看板候補領域に対し、判別分析法によりクラス間分散を求める非看板領域棄却部を備えている。更に、看板候補領域に対して2値化処理を行い、4方向のラプラシアンフィルタを用いて、エッジを検出する文字列領域抽出部を備え、ディスプレイ上に表示させている。
【0008】
次に、特許文献4は、複数パターンを認識させるための高速化手法について開示している。これは画像データ及び標示体パターンに基づく形状パターンマッチングにより、短い処理時間で、効率的に標示体の認識を行うと共に、認識率を向上させることが可能な標示体認識方法を提供することを課題としている。このために、標示体認識装置のマッチング手段は、認識率の高い標示体パターンから順に、マッチング領域との形状パターンマッチングを実行している。
【0009】
さらに、標示体認識手段は、形状パターンマッチングの結果に基づいて、マッチング領域内に存在する標示体を認識している。そうして、認識済領域削除手段を備え、認識した標示体の領域を認識済領域としてマッチング領域から削除している。そして、マッチング領域設定手段は、マッチング領域から認識済領域を削除した残余領域を、新たなマッチング領域に設定し、形状パターンマッチングによる標示体の認識処理を繰り返し行うようにしている。
【0010】
また、特許文献5には、ナンバープレートの文字及び数字をパターンマッチングにより時間をずらせて認識し、一回目と2回目のうちマッチング率の高いものを最終画像として採用するナンバープレート自動観測記録システム及び装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−242887号公報
【特許文献2】特開2000−293670号公報
【特許文献3】特開2006−259885号公報
【特許文献4】特開2008−234102号公報
【特許文献5】特開2003−271898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、従来、多くの手法が提案されているが、大規模な処理システムを構築したり、処理負荷の高いものであったりしている。しかしながら、これでも画像認識技術を利用しているため、100%の確実性を速度規制標識の認識に期待することができない。従って、認識正解率が100%に達しないシステムにおいても、運転者の速度違反のリスクを軽減するできる方法が望まれる。
【0013】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、認識率が低い状況でも、運転者に適切な制限速度情報の提供が行えるHMI(ヒューマンインターフェース)を備えた速度規制標識認識結果の通知方法の提供を実現することにある。
【0014】
なお、従来技術として列挙された特許文献の記載内容は、この明細書に記載された技術的要素の説明として、参照によって導入ないし援用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、撮像部(1)で車両前方画像(30)を撮像し、この車両前方画像(30)内の速度規制標識(32)を画像処理部(2)で自動認識し、この自動認識過程の車両前方画像(30)内の速度規制標識(32)部分の画像を第1画像(5)としてディスプレイ(4)に表示すると共に、自動認識した結果から導かれた画像からなる第2画像(6)を表示し、これら第1画像(5)及び第2画像(6)を並べて表示したことを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、撮像部(1)で車両前方画像(30)を撮像し、この車両前方画像(30)内の速度規制標識(32)部分を自動認識し、この自動認識過程の車両前方画像(30)内の速度規制標識(32)部分の画像を第1画像(5)として表示すると共に、自動認識した結果としての第2画像(6)を並べて表示しているから、つまり、ペア画像(5及び6)を表示しているから、運転者が上記ペア画像(5及び6)を比較でき、速度規制標識(32)の内容に関して、正しい判断を行うことが出来る。
【0017】
請求項2に記載の発明では、第2画像(6)は、自動認識結果に対応する速度規制標識モデル画像の少なくとも規制速度の数値を表示したイメージ画像からなることを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、自動認識した速度警告の結果を、単なる数値で表すので無く、イメージ画像で表示している。即ち、丸い円形の中に数値を表示して、現実の速度規制標識(32)と類似の画像を第2画像(6)としているから、隣接する車両前方画像(30)内の速度規制標識(32)部分の画像である第1画像(5)と比較し易く、運転者が、自動認識結果のエラーを判断し易い。
【0019】
請求項3に記載の発明では、第1画像(5)並びに第2画像(6)の背景画像として、速度規制標識(32)が存在した撮像部(1)で撮像された車両前方画像(30)を表示することを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、ペア画像(5及び6)と同時に、実際の車両前方の景色映像である車両前方画像(30)を表示しているから、運転者に速度規制標識(32)が設置された状況を見せることが出来、運転者の判断の参考に供することが出来る。
【0021】
請求項4に記載の発明では、車両前方画像(30)内の速度規制標識(32)の画像処理部(2)での自動認識においては、車両前方画像(30)内の速度規制標識(32)部分の画像を2値化した2値化画像(57)を膨張・収縮処理してパターンマッチングを行う処理を複数回行って、その中で、マッチング率の合計値が最も大きい認識結果が、自動認識された第2画像(6)として採用され、該第2画像(6)が第1画像(5)と並置されて表示されることを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、車両前方画像(30)内の速度規制標識部分の画像を2値化した2値化画像(57)を膨張・収縮処理してパターンマッチングを行うのが、一回のみでなく、複数回行われて、その中で、マッチング率の合計値が最も大きい認識結果が、第2画像(6)として採用されている。しかしながら、複数の標識パターンに対して2値化画像(57)がマッチングした場合、つまり、ある特定の速度規制標識(32)を80と認識したり130と認識したりする場合には、画像処理の誤認識が発生している可能性が高い。そこで、第2画像(6)の表示のみで無く、第1画像(5)をも表示して、運転者に依存した画像認識が行われるから、最終的な誤認識を抑制できる。
【0023】
請求項5に記載の発明では、マッチング率の合計値が、第1所定割合に満たない場合は、自動認識の対象が、速度規制標識(32)以外であると判断することを特徴としている。
【0024】
この発明によれば、マッチング率の合計値が第1所定割合(例えば50%)より低い場合は、速度規制標識(32)ではないとしているから、例えば、看板等により誤認識することが少ない。
【0025】
請求項6に記載の発明では、マッチング率の合計値が、第1所定割合よりも大きい第2所定割合以上でない場合は、第1画像(5)及び第2画像(6)を並べて表示せず、第1画像(5)のみを単独で表示することを特徴としている。
【0026】
この発明によれば、マッチング率の合計値が第2所定割合以上でない(例えば、70%以上で無い場合)は、標識に対する外乱が大きく速度規制標識(32)以外とは判断できないため、ペア表示を行わず、第1画像(5)のみを表示して運転者に判断を一任しているから、運転者の判断で、速度規制標識(32)を正しく認識させることが出来る。
【0027】
請求項7に記載の発明では、マッチング率の合計値が、第2所定割合以上である場合に、第1画像(5)及び第2画像(6)を並べて表示することを特徴としている。
【0028】
この発明によれば、マッチング率の合計値が第1所定割合よりも大きい第2所定割合以上である場合(例えば、70%以上である場合)に、第1画像(5)及び第2画像(6)を並べて表示するペア表示を行っているから、標識が速度規制標識(32)である可能性が高い場合において、自動認識の結果を参考とした運転者の判断による速度規制標識(32)の認識を行うことができる。
【0029】
請求項8に記載の発明では、第1画像(5)は撮像部(1)で撮像した車両前方画像(30)内の円形領域を抽出した画像のコントラスト比をアップした画像(5)、または、該コントラスト比をアップした画像(5)を2値化した画像(57)から成ることを特徴としている。
【0030】
この発明によれば、第1画像(5)は撮像部(1)によって撮像された実際の生データとなる画像に対して少なくともコントラスト比がアップされているから、運転者が正しく速度規制標識(32)を確認することが出来る。
【0031】
なお、特許請求の範囲および上記各手段に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に使用する車両に搭載された速度規制標識認識装置の概要を示すブロック図である。
【図2】上記実施形態で認識する速度規制標識の一例の見え方を説明する説明図である。
【図3】上記実施形態において、撮像した画像から運転者に視認させる第1画像までの画像の変化を説明する説明図である。
【図4】上記実施形態の画像処理部における処理の流れを示し、円形領域抽出までのフローチャートである。
【図5】図4に続く上記処理の流れを示し、パターンマッチングまでのフローチャートである。
【図6】図5に続く上記処理の流れを示し、ペア表示がなされるまでのフローチャートである。
【図7】上記実施形態のディスプレイに実際に表示される上記ペア表示画像の一例を示す画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(一実施形態)
以下、本発明方法の一実施形態について説明する。図1は、本発明方法に使用する車両に搭載された速度規制標識認識装置の概要を示すブロック図である。道路標識には、大きく分けて案内標識、警戒標識、規制標識、指示標識の4種類がある。そして、上記規制標識の中の最高速度を規制するための速度規制標識に書かれた制限速度を認識して、運転者に通知及び警告する装置を図1が示している。この速度規制標識の認識は、基本的に次の3つのステップに分かれる。
【0034】
第1ステップは、撮像した車両前方画像内の速度規制標識を見つけ出す。第2ステップは、見つけ出した速度規制標識に記載されている制限速度を認識する。第3ステップは、認識結果を運転者に通知するというものである。
【0035】
第1ステップにおいては、速度規制標識の存在エリアを限定し、円形を探索する画像処理により速度規制標識を検出する。この認識処理においては、未検出を防ぐよう円形であれば、全てを検出するように処理を実施することで、100%の検出を実現すことが可能である。
【0036】
第2ステップにて、検出した円形内の画像を、パターンマッチングにより、速度規制標識内部に記載された速度制限値を認識するのであるが、この認識においては、誤認識が多く発生する。この誤認識を防ぐために、複数の認識方法を用いて、総合的に100%の認識を目指す方法もあるが、処理コストがかかり、非常に高価なシステムとなってしまう。
【0037】
また、たとえコストをかけても、100%を達成することは非常に困難である。この誤認識によって間違った情報を運転者に伝えてしまい、機能を果たさないことになる。よって、以下の記述では上記問題に対処し得る一実施形態について説明する。
【0038】
撮像部1は、車両前方の道路情報を撮像するビデオカメラ1から成る。このビデオカメラ1の位置は、ドアミラー近く、あるいは車両のフロントに設けられている。また、このビデオカメラ1は、既存のシステム(事故の瞬間を記録するドライブレコーダ、または車両の走行車線を認識して自動運転する車線認識システムを備えた自動走行装置等)のビデオカメラと兼用することが出来る。
【0039】
画像処理部2は、撮像された画像情報を基に速度規制標識を認識する画像処理手順を実行する。そして出力部3は、認識した画像情報を運転者に的確に表示または警告する。上記画像処理部2は、速度規制標識を認識する画像処理手順として、以下の処理を実行する。
【0040】
先ず、詳細な処理はフローチャートを用いて後述し、処理の概要を述べる。第1処理として、円形の検索処理2aを行う。これには、公知の円ハフ(Hough)変換を利用する。第2処理2bとして、検出した円形の抽出を行う。第3処理2cとして、抽出された円形の2値化を行う。第4処理2dとして2値画像の膨張・収縮処理を行う。即ち、公知のように2値画像に対して膨張・収縮処理2dを行ってノイズ除去を行う。第5処理2eとしてパターンマッチング行う。
【0041】
出力部3からの信号でディスプレイ4を介して運転者に視認させる適切な画像としては、上記の処理途中の画像(第1画像5)と共に、自動認識した結果の画像(第2画像6)を並置して表示する(これを本発明ではペア表示と称する)ことが、全体の認識の精度を向上させるために有効である。
【0042】
なお、上記膨張・収縮処理2dとパターンマッチング2eの組み合わせは、複数回(この一実施形態では3回)繰り返す。パターンマッチング2eは、参照するモデルとなる速度規制標識モデルに対して、撮像された速度規制標識画像がマッチングするかどうかの判定を行う。
【0043】
撮像された速度規制標識画像が、汚れ等により鮮明でなく、そのため、一つの速度規制標識画像(例えば80)が、130及び80等の複数種類の速度規制標識モデル(標識パターン)に対してマッチングが取れた場合においては、画像処理による誤認識が発生している可能性が高いといえる。わずかの画像データの差で、間違った判定をしてしまうためである。従って、複数回のパターンマッチングを行って、マッチングが複数取れた場合には、自動認識結果のみを信用せずに、運転者に依存した認識を行うことが必要である。
【0044】
なお、パターンマッチングの具体的アルゴリズムは種々の公知のものを採用でき、パターンが速度規制標識モデルに合致した割合を表すマッチング率の計算方法についても種々の公知の方法を採用できる。
【0045】
そして、各パターンのマッチング率の全てを合計(合算)することで得られる値が、最大値となる上記膨張・収縮処理とパターンマッチングの組み合わせが導いた結果が、自動認識結果として正しいものと判断する。つまり、この組み合わせで得られた最もマッチング率が高い結果を自動認識の結論として採用し、第2画像6を作成する。この自動認識した認識結果となる第2画像6と、画像処理過程の映像表示である第1画像5との両方からなる画像(上記ペア画像)を運転者に目視させる。
【0046】
パターンマッチング率の合計値が50%を割り込んだ場合には、想定している速度規制標識ではなかったと判断し、第1画像5及び第2画像6の表示を実施しない。
【0047】
また、パターンマッチング率の合計値が50%以上であるが70%未満の場合には、コントラスト比をアップさせた撮像映像(第1画像5)のみを表示し、ペア表示は行わない。つまり、撮像画像のような速度規制標識が存在したことを運転者に伝達するのみとする。
【0048】
自動認識の結果が、前回認識した認識結果と同じ結果の場合には、何も新たに表示しないことで、運転者への認識結果の表示を省略し、表示の煩わしさを軽減する。このような、ルールを適用して情報を運転者に伝達するヒューマンインターフェースを実行する。
【0049】
次に、上記構成並びに処理を更に詳しく説明する。図1において、速度規制標識認識のために車載のナビゲーションECU(電子的演算ユニット)10内に画像処理部2を成す速度規制標識認識演算部2が備えられている。出力部3は表示用のディスプレイ4に接続されている。システム価格を下げるために、処理コストを低く抑える必要がある。このため、車載のナビゲーションシステムに本機能を組み込んでいるのである。そして、ビデオカメラ1からのカメラ映像を図示されないメモリに取り込み、画像処理部2による画像処理を実施している。この画像処理は、画像コントラストの調整を実施した上で、周知のようにエッジ抽出し、先鋭化処理を行う。そして、円ハフ変換により円形を見つけ出している。
【0050】
次に、速度規制標識内の数字を自動認識する。数字と認識できない場合には、後述するように、速度規制標識以外の標識と判断し、処理を終了する。数字と認識されたもののみ、運転者に通知するようにしている。
【0051】
図2は、この実施形態で認識する速度規制標識の一例の見え方を説明する説明図である。標識20は80Kmの速度制限を表している綺麗な速度規制標識であり、このような場合は80Kmと認識できるので問題がない。ところが、標識21は、汚れ、または、かすれが存在する場合の速度規制標識の一例あり、このような場合は、自動認識の結果は130と認識されたり、30と認識されたり、正しく80と認識されたりするため、問題が生じる。
【0052】
運転者には、80Kmの速度表示が、注目すれば汚れていても判読できるものの、画像の自動認識の方は、130や30に認識してしまう結果になる。従って、この画像の自動認識による表示、つまり、130や30だけを運転者に伝達したのでは、大きな問題を生じる。なお、130という速度表示は国内では見かけないが、外国の道路では130マイルのように一般的に表示される。
【0053】
図3は、この実施形態において、撮像部1(図1)で撮像した画像から最終的に運転者に第1画像5を視認させるまでの画像の変化を説明する説明図である。30は、車載のビデオカメラで撮像した車両前方画像である。ここで、四角で囲まれた部分31内に速度規制標識32があり、この速度規制標識32を後述のように画像処理して画像認識を行う。そして、図示しない車両運転席内のメータ近傍に、少なくとも後述する画像処理の過程の速度規制標識画像(第1画像5)を表示する。
【0054】
次に、フローチャートについて図4乃至図6を用いて説明する。図4は、この実施形態の画像処理部における処理の流れを示し、円形領域抽出までのフローチャートである。図5は、図4に続く上記処理の流れを示し、パターンマッチングまでのフローチャートである。図6は、図5に続く上記処理の流れを示し、ペア表示がなされるまでのフローチャートである。
【0055】
図4において、演算が開始されると、ステップS41において、図1の車載のビデオカメラ1により車両前方画像30(図3)を画像処理部2(図1)に入力する。そして、ステップS42において、円ハフ(Hough)変換を行う。この円ハフ変換とは、直線や円の検出に用いられる周知の技法であり、P.V.C.Houghによって1962年に米国特許が取得されている。
【0056】
そして、ステップS43で円形検出が成されたかどうかを判定する。円形検出が無い場合は、ステップS41に戻り、これらのステップS41からステップS43を繰り返している。円形検出があった場合は、ステップS44にて円形領域の抽出を行う。
【0057】
次に、図5のステップS51において、円形領域のコントラスト比のアップ処理を行う。図5の5は、コントラスト比がアップされた抽出映像5(第1画像5)を示している。そして、ステップS52で、このコントラスト比がアップされた抽出画像5を2値化する。57は、2値化処理された映像データを示している。そして、ステップS53において2値化処理された映像データに対して、周知の膨張・収縮処理(ノイズ除去処理)を行う。また、この膨張・収縮処理の後でパターンマッチングを行う。
【0058】
なお、このフローチャートによる処理では、2値画像の膨張・収縮処理とパターンマッチングの組み合わせをステップS53、ステップS54及びステップS55のように3回行っている。即ち、膨張・収縮処理を1回行ってパターンマッチングを行う過程を3回繰り返して行っている。
【0059】
図5の53aは、ステップS53の膨張・収縮処理でノイズが除去された画像データである。この実施形態においては、第1回目の膨張・収縮処理及びパターンマッチングにおいては、速度規制標識が80と認識されたマッチング率が80%であり、130と認識されたマッチング率が85%であった場合を示している(合計マッチング率は165%)。
【0060】
また、画像データ54aが得られる第2回目の膨張・収縮処理及びパターンマッチングにおいては、速度規制標識が80と認識されたマッチング率が60%であり、130と認識されたマッチング率が85%であった場合を示している(合計マッチング率は145%)。
【0061】
また、画像データ55aが得られる第3回目の膨張・収縮処理及びパターンマッチングにおいては、速度規制標識が80と認識されたマッチング率が50%であり、130と認識されたマッチング率が90%であった場合を示している(合計マッチング率は140%)。
【0062】
次に、図6のステップS61において、上記合計マッチング率が、50%以上あるかどうかを判定する。50%以上でない場合は、標識が速度規制標識以外の標識(例えば、高さ制限、重量制限及び転回禁止等)であると判断して図4のステップS41に戻る。
【0063】
また、合計マッチング率が50%以上である場合は、ステップS62において、合計マッチング率が70%以上であるか判定し、合計マッチング率が70%以上でない場合は、ステップS65において抽出画像5(第1画像5)のみを単独表示する。即ち、この場合は、速度規制標識への外乱が大きく速度警告以外と判断できないため、運転者に判断を託すために、抽出画像(第1画像5)のみを単独表示するのである。この抽出画像5は、ステップS51(図5)でコントラスト比をアップした画像データ5である。
【0064】
そして、このように抽出画像5(第1画像5)の単独表示を行った場合でも、運転者であれば、この表示を見て、直前の道路上に速度規制標識があって、80Km規制であると判断できる可能性が高い。また、見逃してしまった標識を確認できる。
【0065】
また、ステップS62において、マッチング率が70%以上である場合は、ステップS63において、今回の自動認識結果が、合計マッチング率が最大の165と成っているステップS53(図5)におけるマッチング率85%の130であると確定した上で、前回の自動認識結果と異なるか否かを判断する。前回の認識と異ならない、即ち、前回の認識も130であって、同一である場合は、ステップS63においてNOと判断されて、図4のステップS41にリターンし、再表示の煩わしさを低減する。
【0066】
ステップS63において、前回の認識と異なる場合のみ、ステップS64に進む。このステップS64では、マッチング率の合計が、最大の165と成っているステップS53(図5)におけるマッチング率85%の130という認識結果である第2画像6と、画像処理過程の第1画像5を並べて表示(ペア表示)する。
【0067】
つまり、自動認識の結果として、合計マッチング率が最も高いマッチング過程において認識した結果の中で、高いマッチング率の方の認識結果、即ち130を選択する。この選択された認識結果から、速度規制標識モデル画像を図示されないメモリから読みだして作成した画像をディスプレイ4(図7)にて数秒程度、第2画像6として運転者前方に表示する。同時に、画像認識過程のステップS51(図5)の第1画像5を並置して表示(ペア表示)する。また、これらの背景画像として、実際のビデオカメラ1(図1)で撮像した画像30を表示する。
【0068】
図7は、ディスプレイ4(図1)に実際に表示される画像の一例を示す画面図である。図7において、画面下右側は、画像認識過程の上記第1画像5である。また、画面下左は、自動認識結果から、速度規制標識モデル画像を図示されないメモリから読み出した画像からなる第2画像6である。更に、バックの映像は、ビデオカメラ1(図1)で撮像された背景画像30(図3と同じ)である。
【0069】
この結果、運転者は、130という今回の自動認識結果(第2画像6)が誤りであり、この速度規制標識の正しい認識が80kmの速度表示であることを判断することが出来る。
【0070】
このように、画面左下にはシステムが自動認識した速度警告のイメージ画像である第2画像6を表示すると共に、右下には、マッチング率の最も高かった2値化画像である第1画像5を表示している。この両方を表示することにより、運転者が瞬時に速度規制標識の情報を認識できる。なお、このような表示が無かった場合には、運転者が速度規制標識自体に気付かない、あるいは、自動認識結果の表示のみであると、自動認識がエラーを起こした場合には、誤った結果で運転する状況に陥る可能性がある。しかしながら上述のようなペア表示を行うことにより、運転者が的確に規制速度の認識を行うことが出来る。
【0071】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した一実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、速度違反の警告機能実現の場合には、車速を車両システム(メータECU等)より受信して、自動認識速度と比較し、警告実施の必要の有無を判定する。即ち、車速が自動認識速度を越えている場合は、スピード違反の可能性があるため、これを運転者に警告するようにしても良い。この警告は、車両のヒューマンインターフェース、例えばメータ内の映像やメータからの警告音によって実施することが出来る。
【0072】
次に、車両が上記一実施形態のように、ナビゲーションシステムを搭載している場合には、自車の現時点の走行道路が判断できるために、例えばナビゲーションシステム内の地図データでは、80Kmと記録されている走行道路において、自動認識の結果が130Kmである場合は、自動認識結果に誤りがあるとナビゲーションシステム内で判断することが可能である。
【0073】
速度規制標識に映りこんだ影や、光の反射による速度規制標識の誤認識の影響を避けるためにも、ナビゲーションシステム搭載車であれば、速度規制標識の自動認識結果と、認識ポイントの地図データにおける速度規制情報とが相違していれば、地図データにおける速度規制情報を優先し、自動認識結果を誤検出として、地図データにおける速度規制情報の方に補正して第2画像6(図7)を表示しても良い。
【0074】
また、図1の画像処理部2に学習機能を持ったソフトウエアを使用することにより、自動認識を学習制御することも可能である。
【0075】
更に第1画像5として、ステップS51(図5)のコントラストアップ処理後の画像5を採用したが、ステップS52の2値化後の画像57を第1画像としても良い。また、第2画像6は、単に130または80等の数字のみの表示としても良い。
【0076】
また、ディスプレイはナビゲーションシステムと共用することが出来る。また、表示場所はメータパネル内であっても良い。
【符号の説明】
【0077】
1 撮像部
2 画像処理部
3 出力部
4 ディスプレイ
5または57 第1画像
6 第2画像
30 車両前方画像
32 速度規制標識
S42 円ハフ変換を行うステップS42
S44 円形領域の抽出を行うステップS44
S52 抽出画像5を2値化するステップS52
S53、S54及びS55 膨張・収縮処理とパターンマッチングの組み合わせ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部(1)で車両前方画像(30)を撮像し、この車両前方画像(30)内の速度規制標識(32)を画像処理部(2)で自動認識し、この自動認識過程の前記車両前方画像(30)内の速度規制標識(32)部分の画像を第1画像(5)としてディスプレイ(4)に表示すると共に、前記自動認識した結果から導かれた画像からなる第2画像(6)を表示し、これら第1画像(5)及び第2画像(6)を並べて表示したことを特徴とする速度規制標識認識結果の通知方法。
【請求項2】
前記第2画像(6)は、自動認識結果に対応する速度規制標識モデル画像の少なくとも規制速度の数値を表示したイメージ画像からなることを特徴とする請求項1に記載の速度規制標識認識結果の通知方法。
【請求項3】
前記第1画像(5)並びに前記第2画像(6)の背景画像として、前記速度規制標識(32)が存在した前記撮像部(1)で撮像された前記車両前方画像(30)を表示することを特徴とする請求項1または2に記載の速度規制標識認識結果の通知方法。
【請求項4】
前記車両前方画像(30)内の前記速度規制標識(32)の前記画像処理部(2)での自動認識においては、前記車両前方画像(30)内の前記速度規制標識(32)部分の画像を2値化した2値化画像(57)を膨張・収縮処理してパターンマッチングを行う処理を複数回行って、その中で、マッチング率の合計値が最も大きい認識結果が、自動認識された前記第2画像(6)として採用され、該第2画像(6)が前記第1画像(5)と並置されて表示されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の速度規制標識認識結果の通知方法。
【請求項5】
前記マッチング率の合計値が、第1所定割合に満たない場合は、前記自動認識の対象が、前記速度規制標識(32)以外であると判断することを特徴とする請求項4に記載の速度規制標識認識結果の通知方法。
【請求項6】
前記マッチング率の合計値が、前記第1所定割合よりも大きい第2所定割合以上でない場合は、第1画像(5)及び第2画像(6)を並べて表示せず、前記第1画像(5)のみを単独で表示することを特徴とする請求項5に記載の速度規制標識認識結果の通知方法。
【請求項7】
前記マッチング率の合計値が、前記第2所定割合以上である場合に、第1画像(5)及び第2画像(6)を並べて表示することを特徴とする請求項6に記載の速度規制標識認識結果の通知方法。
【請求項8】
前記第1画像(5)は前記撮像部(1)で撮像した車両前方画像(30)内の円形領域を抽出した画像のコントラスト比をアップした画像(5)、または、該コントラスト比をアップした画像(5)を2値化した画像(57)から成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の速度規制標識認識結果の通知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−205160(P2010−205160A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52454(P2009−52454)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】