説明

速溶性ニコチン含有フィルム製剤

【課題】口腔内の水分により迅速に溶解又は崩壊し、ニコチン血中濃度を速やかに上昇させて、禁煙中の初期段階での喫煙欲求症状を抑制し得るニコチン含有フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の速溶性ニコチン含有フィルム製剤10は、少なくとも2つのニコチン層2と、該ニコチン層2の間に配置された第1の非ニコチン層1と、最外層に配置された第2の非ニコチン層3とを備え、ニコチン層2はニコチンと可食性水溶性高分子とを含有し、第1の非ニコチン層1及び第2の非ニコチン層3は矯味剤と可食性水溶性高分子とを含有し、かつニコチンを含有しないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、禁煙又は節煙の補助手段として使用するためのニコチン含有フィルム製剤に係わり、更に詳しくは、水なしで服用でき、かつ服用後に口腔内の水分により迅速に溶解又は崩壊し、ニコチン血中濃度を速やかに上昇させることが可能であると共に、ニコチン特有の焼け付くような咽頭への刺激である“咽頭刺激感”を改善し“喉ごし”を向上させた速溶性ニコチン含有フィルム製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内投与によるニコチン含有製剤は、禁煙又は節煙の補助手段として利用されており、例えば、次のような製剤が提案されている。特許文献1には、ニコチン、甘味料、香料、芳香剤及び安定化添加剤等を均一に混合して作製されたチューインガム・コアに、ニコチン、甘味料、香料、芳香剤及び安定化添加剤等を含むコーティング組成物を被覆したチューインガムが開示されている。このチューインガムは、10〜60分間又はそれより長時間にわたって噛むことにより、ニコチンの放出を持続させるもので、徐放性製剤に相当する。
【0003】
また、特許文献2には、ニコチン塩と、水の存在下にニコチン塩と反応してニコチン塩基を形成するアルカリ塩とを含むコンパートメントを囲む半透壁からニコチン塩基を放出させ、口腔中に時間をかけてニコチン塩基を投与する浸透デバイスが開示されている。この浸透デバイスは、約0.5時間よりも長い時間、最も好ましくは約1〜4時間の長時間にわたって口腔中にニコチンを放出させるものである。
【0004】
更に、特許文献3には、特定の可溶性充填剤、特定の不溶性薄膜形成剤、特定の膨潤性ポリマー及び薬学的有効物質を含む緩崩壊性又は緩侵食性トローチ剤が開示されている。このトローチ剤は、有効物質としてニコチン又はその塩を含有することができるが、有効物質を、通常15〜90分以内又はもっと長時間にわたってゆっくりと放出するものである。
【0005】
また更に、特許文献4には、非吸湿性の糖アルコールを含むガラス状マトリックスと、ニコチン・アクティブを含有する単層構造のロゼンジ剤が開示されている。このロゼンジ剤は、当該特許文献の図1のインビトロ溶解プロフィールから明らかなように、ニコチンが20分程度で完全に放出されることから、徐放性の製剤に相当する。
【0006】
上述の如きニコチン徐放性製剤は、一般的には、血液中のニコチン濃度を所定の基準レベルに安定させることを目標とするものである。このように、血液中のニコチンを低レベルに安定させると、ニコチンの幾つかの禁断症状を緩和することは可能であるが、喫煙欲求症状の緩和には不適当であるとの報告がある(非特許文献1)。すなわち、喫煙では初期に血中濃度の急上昇がもたらされるが、上述の如きニコチン徐放性製剤では初期に血中濃度の急上昇がもたらされないからである。そのため、上述の如きニコチン徐放性製剤は、禁煙時の禁断症状を抑えることはできても、喫煙欲求症状まで抑えることは困難であった。
【0007】
かかる喫煙欲求症状を抑えることを目的として、速溶性のニコチン含有製剤が提案されている。例えば、特許文献5には、ニコチンと、特定の吸収性賦形剤と、特定の第1の非栄養性甘味料と、該第1の非栄養性甘味料よりも甘さがより遅く発現するか又はより長く持続する第2の非栄養性甘味料を含むニコチン舐剤が開示されている。このニコチン舐剤は、圧縮機により製造された、単層構造を有する錠剤であるが、口中で3分経過後に60%以上溶解し、5分経過後には80%以上、10分経過後には約100%溶解することから、未だ徐放性の域を出ない製剤である。更に、このニコチン舐剤に使用される第2の非栄養性甘味料は、国によって使用基準が異なるため、実用化には克服すべき課題が多い。
【0008】
また、特許文献6には、ニコチンと、1種又は2種以上の水溶性ポリマーを含むマトリックスを含み、ポリマーマトリックスに空間又は空洞が設けられているニコチン含有製剤が開示されている。この製剤は、口腔内で迅速にニコチンを放出し、口腔内での滞留時間又は崩壊時間が好ましくは1秒〜5分の範囲である旨記載されているが、実施例において単層構造のシート状製剤の製造例が記載されているだけで、その製剤の口腔内での滞留時間又は崩壊時間は何ら実証されていない。
【0009】
更に、特許文献7には急速溶解性口内消耗性フィルムが提案されており、実施例21Eには、医薬物質としてのニコチンと、アセスルファームカリウム塩、アスパルターム、メントール等の矯味剤とを含有する単層構造からなるニコチン含有フィルム製剤が開示されている。しかしながら、このニコチン含有フィルム製剤の溶解性に関するデータは何ら示されていない。
【0010】
また更に、特許文献8には、水に対する溶解性が3〜10分であるニコチン及び可食性水溶性高分子物質から成るニコチン層の両側に、水に対する溶解性が0.5〜3分である水溶性且つ非吸水性の多糖類及び/又は可食性高分子物質と、軟化剤から成るコーティング層を積層した三層構造のフィルム製剤が開示されている。実施例においては、ニコチン層にl-メントール、サッカリンナトリウム及びクエン酸からなる矯味剤が添加された製剤が開示されているが、コーティング層は矯味剤を含まないものである。また、このフィルム製剤は、単位製剤の口腔内溶解時間が10〜30分である。
【0011】
更にまた、特許文献9には、口腔内へのニコチンの即時放出を伝達するための口腔放出成分と、胃又は腸へのニコチンの持続した伝達のための胃腸(GI)管放出成分とを含む経口放出制御剤が開示されている。実施例1には、内側から外側に向けて順に、矯味剤を含まない、GI管(持続性)放出コア、口腔放出層、物理的バリヤー層及びバッファーバリヤ層が形成されたニコチン含有製剤の製造例が記載され、当該製剤のニコチン放出量が当該特許文献の図1に示されている。
【0012】
また、特許文献10には、有効成分と、水溶性の親水性コロイドと、粘膜表面保護フィルムを含む投薬ユニットが開示されており、実施例5には、有効成分としてのニコチンと、味覚調整剤としてのぺパーミント、アスパルテームと、緩衝剤としてのクエン酸と可食性水溶性高分子であるHPMC等とを混合してなる単層構造のフィルム製剤が記載されている。また、このフィルム製剤は、崩壊時間が34.3秒で、溶解時間が64.3秒であることが示されている。
【0013】
【特許文献1】特表2005−500296号公報
【特許文献2】特表平6−502622号公報
【特許文献3】特許第3707798号公報
【特許文献4】特表2004−525928号公報
【特許文献5】特開2005−320342号公報
【特許文献6】特開2005−255694号公報
【特許文献7】特表2002−525306号公報
【特許文献8】特開2003−95947号公報
【特許文献9】特表2005−511588号公報
【特許文献10】特表2002−535269号公報
【非特許文献1】Russell, M.A.H. in Nicotine Replacement : a Critical Evaluation ; Pomerleau, O.F. and Pomerleau, C.S., Eds.; Alan R. Liss, Inc.: New York, 1988; pp 63-94
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
禁煙初期段階での喫煙欲求症状をより完全に抑えるには、ニコチン血中濃度のピークをニコチン含有製剤服用後10分以内にすることが妥当であると考えられるが、そのためには概ね1分以内にニコチンの服用を終えている必要がある。
【0015】
しかしながら、上述の特許文献5〜7では速溶性を裏付けるデータが具体的に開示されておらず、また特許文献8では比較的速やかに溶解するものの、溶解時間の更なる改善が求められている。更に、特許文献9では、当該特許文献の図1のニコチン放出量から明らかな如く、未だ徐放性の域を出ないものである。したがって、これら製剤では、禁煙時の禁断症状を抑えることができても、欲求症状まで抑えることは困難である。
一方、特許文献10によれば、概ね1分以内にニコチンの服用を終えることが可能であるが、このフィルム製剤はニコチンに特有の焼け付くような咽頭への強い刺激が感じられるため、服用時の喉ごしを改善する必要がある。
【0016】
したがって、本発明の課題は、口腔内の水分により迅速に溶解又は崩壊し、ニコチン血中濃度を速やかに上昇させて、禁煙中の初期段階での喫煙欲求症状を抑制すると共に、ニコチン特有の焼け付くような咽頭への刺激である“咽頭刺激感”を改善し“喉ごし”を向上させた速溶性のニコチン含有フィルム製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意研究した結果、ニコチンを含有する層と、ニコチンを含有しない層にそれぞれ特定成分を含有せしめ、これらを特定の順序で積層することで、口腔内の水分により迅速に溶解又は崩壊し、ニコチン血中濃度を速やかに上昇させることが可能であり、しかもニコチン特有の焼け付くような咽頭への強い刺激が緩和されて喉ごしに優れるニコチン含有フィルム製剤が得られることを見出した。
【0018】
すなわち、本発明は、
ニコチン及び可食性水溶性高分子を含有する少なくとも2つのニコチン層と、
前記ニコチン層の間に配置された、矯味剤及び可食性水溶性高分子を含有し、かつニコチンを含有しない第1の非ニコチン層と、
最外層に配置された、矯味剤及び可食性水溶性高分子とを含有し、かつニコチンを含有しない第2の非ニコチン層と
を備える、速溶性ニコチン含有フィルム製剤を提供するものである。
【0019】
本発明においてはニコチン層を2以上有するが、偶数個であることが好ましい。これにより、製剤の中心に第1の非ニコチン層が位置するため、口腔内で溶解又は崩壊させたときのニコチン特有の刺激をより確実に緩和することができる。
【0020】
また、第1及び第2の非ニコチン層に矯味剤を含有するものであれば、ニコチン層は矯味剤を含有しなくてもよいが、本発明で使用する矯味剤としては、酸味剤、高甘度甘味剤及び清涼剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。かかる酸味剤としては、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、また高甘度甘味剤としては、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、グリチルリチン酸、ソーマチン、アセスルファムカリウム、サッカリン及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、更に清涼剤としては、ウイキョウ油、カンフル、ハッカ油、ハッカ水、ミント、ペパーミント及びメントールからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これにより、ニコチン特有の焼け付くような咽頭への強い刺激が緩和され、喉ごしをより確実に改善することができる。
また、本発明で使用する可食性水溶性高分子としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、カルボキシメチルセルロース・カリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びアルギン酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これにより、口腔内の唾液等の水分によって、より一層迅速に溶解又は崩壊させることが可能になる。
【0021】
本発明において、各層に添加すべき矯味剤の好ましい組み合わせは下記のとおりである。これらの組み合わせを採用することにより、ニコチン特有の咽頭への強い刺激を十分に緩和し、喉ごしをより確実に改善することができる。
(1)ニコチン層、第1の非ニコチン層及び第2の非ニコチン層が、酸味剤、高甘度甘味剤及び清涼剤を含有するもの。
(2)ニコチン層が酸味剤を含み、かつ第1及び第2の非ニコチン層が高甘度甘味剤及び清涼剤を含有するもの。
(3)ニコチン層が高甘度甘味剤を含み、かつ第1及び第2の非ニコチン層が酸味剤及び清涼剤を含有するもの。
(4)ニコチン層が清涼剤を含み、かつ第1及び第2の矯味フィルム層が酸味剤及び高甘度甘味剤を含有するもの。
【0022】
また、単位製剤中のニコチンの含有量は0.1〜5mgが好ましく、単位製剤中の矯味剤の含有量はニコチン1mg当たり0.015〜15mgが好ましく、単位製剤中の酸味剤の含有量はニコチン1mg当たり0.005〜5mgが好ましく、単位製剤中の高甘度甘味剤の含有量がニコチン1mg当たり0.005〜5mgが好ましく、単位製剤中の清涼剤の含有量はニコチン1mg当たり0.005〜5mgが好ましい。
【0023】
本発明の速溶性ニコチン含有フィルム製剤は、口腔内で1分以内に溶解又は崩壊することが可能であり、また水に対する溶解時間を3分以内とすることができる。したがって、喫煙欲求抑制用製剤としても有用である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の速溶性ニコチン含有フィルム製剤は、口腔内溶解型粘膜吸収性及び消化管吸収性を有するものである。すなわち、口腔内の水分により迅速に溶解又は崩壊し、放出されたニコチンを口腔粘膜ないし消化管を介して吸収させる性質を有するため、ニコチン血中濃度を速やかに上昇させることが可能である。したがって、禁煙時の禁断症状を抑制できるだけなく、禁煙中の初期段階での喫煙欲求症状を抑制することが可能になる。
また、本発明の速溶性ニコチン含有フィルム製剤は、口腔内の水分だけで服用可能であることからハンドリング性が良好であり、しかも嚥下に際してニコチン特有の焼け付くような咽頭への強い刺激が緩和されており、喉ごしに優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
先ず、本明細書で使用する用語について説明する。
本明細書で使用する「口腔内溶解型粘膜吸収性」なる用語は、口腔内で製剤が溶解又は崩壊し、製剤から放出されたニコチンが口腔内粘膜を介して吸収されることをいう。ここで、口腔内粘膜としては、口腔内において粘液に覆われている粘膜であれば特に限定されないが、例えば、上顎の粘膜、舌下粘膜、頬の粘膜、歯肉粘膜、口蓋の粘膜、唇のラインの粘膜が例示される。
「消化管吸収性」なる用語は、口腔内で製剤が溶解又は崩壊した後に嚥下され、消化管を介して吸収されることをいう。
「速溶性」なる用語は、水なしで製剤を服用しても口腔内で迅速に溶解又は崩壊することをいう。
「単位製剤」なる用語は、服用に供される製剤の最小単位を意味し、例えば、一つひとつ個別包装された製剤においては、その一つの製剤であり、また形状を画定する切断線が設けられた複数個の製剤が行列状に配置されたシート状製剤の場合、その切断線に沿って分離された一つの製剤である。
【0026】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0027】
図1は、本発明の速溶性ニコチン含有フィルム製剤(以下、単に「フィルム製剤」という)の一実施形態を示す図である。
図1(a)はフィルム製剤10の平面図であり、図1(b)はフィルム製剤10のI−I線に沿って取られた断面図である。
図1に示すフィルム製剤10は、2つのニコチン層2と、該ニコチン層の間に設けられた1つの第1の非ニコチン層1と、最外層に配置された2つの第2の非ニコチン層3により構成されており、5層構造を有するものである。
ニコチン層はニコチン及び可食性の水溶性高分子を含有するものであり、第1及び第2の非ニコチン層は矯味剤及び可食性水溶性高分子を含有し、かつニコチンを含有しないものである。
【0028】
ニコチン層に含まれるニコチンとしては、当該技術分野において通常用いられているものを特に限定なく使用することができるが、市販品を使用してもよい。具体的には、ニコチンオイル、ニコチン・二酒石酸塩、ニコチン・クエン酸塩、ニコチン・サリチル酸塩、ニコチンとシクロデキストリン又は高分子樹脂とのニコチン複合体(例えば、ニコチン・ポラクリレックス)等が例示される。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。中でも、ニコチンオイル、ニコチン・二酒石酸塩、ニコチン・クエン酸塩及びニコチン・サリチル酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、特にニコチンオイルが好ましい。
【0029】
ニコチンは、遊離塩基形態及びイオン化形態のいずれの形態でも使用することができる。遊離塩基形態の場合は、有効ニコチン量は100質量%とみることができる。ニコチンオイルは、米国薬局方(USP28)で定められた規格に適合し、99質量%以上のニコチン遊離塩基を含んでなる医薬品グレードであり、下記のニコチンイオン化形態の如く換算する必要はなく、そのまま有効成分量として使用することができる。
【0030】
ニコチンイオン化形態は、薬学的に酸添加が許容される塩又は金属塩である。「薬学的に酸添加が許容される塩」とは、硫酸、硝酸、りん酸等の無機塩や、クエン酸、酒石酸、サリチル酸等の有機塩で形成されるイオン化合物であり、「金属塩」とは、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオンの他、亜鉛イオン等の金属イオンで形成されるイオン化合物である。
イオン化形態の場合は、その分子量から算出される換算係数を用いて使用量を補正しなければならない。例えば、ニコチン・二酒石酸塩を使用する場合、その換算係数はニコチンの分子量/ニコチン・二酒石酸塩の分子量=162.23/498.44=0.325…≒0.325となる。したがって、ニコチン・二酒石酸塩1mgは、ニコチン0.325mgに相当する。
【0031】
単位製剤中のニコチン含有量は、好ましくは0.1〜5mg、更に好ましくは0.3〜4mg、特に好ましくは0.4〜2mgである。これにより、禁煙時の禁断症状や、禁煙初期段階での喫煙欲求症状を抑制することができる。
【0032】
本発明で用いられる可食性水溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、別名:ヒプロメロース)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム(CMC−Na、別名:カルメロース・ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース・カルシウム(CMC−Ca、別名:カルメロース・カルシウム)、カルボキシメチルセルロース・カリウム(CMC−K、別名:カルメロース・カリウム)、カルボキシメチルセルロース(CMC、別名:カルメロース)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アルギン酸ナトリウム等が例示される。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。中でも、口腔内におけるフィルム製剤の溶解性又は崩壊性の観点から、特にHPC、HPMCが好適である。なお、HPC及びHPMCの粘度は特に限定されるものではないが、例えば、HPCの場合、20℃における2%水溶液の動粘度が2.0〜10mPa・s、特に3.0〜10mPa・sであるものが好ましく、HPMCの場合、20℃における2%水溶液の動粘度が3.0〜10mPa・s、特に3.0〜6mPa・sであるものが好ましい。かかる動粘度は、第15改正日本薬局方に記載の試験方法に基づく値である。
【0033】
ニコチン層中の可食性水溶性高分子の含有量は、好ましくは50〜98質量%、更に好ましくは60〜95質量%、特に好ましくは70〜90質量%である。
第1の非ニコチン層中の可食性水溶性高分子の含有量は、第1の非ニコチン層の全質量に対して、好ましくは40〜95質量%、更に好ましくは50〜90質量%、特に好ましくは60〜85質量%である。
第2の非ニコチン層中の可食性水溶性高分子の含有量は、第2の非ニコチン層の全質量に対して、好ましくは40〜95質量%、更に好ましくは50〜90質量%、特に好ましくは60〜85質量%である。
単位製剤中の可食性水溶性高分子の含有量は、好ましくは50〜95質量%、更に好ましくは60〜90質量%、特に好ましくは70〜85質量%である。
【0034】
本発明で用いられる矯味剤としては、例えば、酸味剤、高甘度甘味剤、清涼剤等が例示される。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。
酸味剤としては、例えば、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸又はそれらの塩等が例示される。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。中でも、咽頭への刺激緩和及び喉ごし改善の観点から、酒石酸、クエン酸が特に好ましい。なお、塩の形態としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が例示される。また、酒石酸、クエン酸及びリンゴ酸は酸無水物の形態であってもよい。
高甘度甘味剤とは、ショ糖の甘さを基準として比較される甘味度がショ糖の50倍以上である合成又は天然の砂糖代替物のことであるが、キシリトール、ソルビトール、マンニトール及びマルチトール等の糖アルコール等の甘味度はショ糖よりも小さく、期待する甘味を得るには多量の添加が必要となる。本発明のフィルム製剤は、製剤質量が小さいため、賦形剤や速溶性を得るための崩壊剤として糖アルコールを使用することは可能であっても、甘味を得る目的で糖アルコールを使用することは困難である。そのため、本発明に係る高甘度甘味剤には、糖アルコールは包含されないものとする。
高甘度甘味剤としては、例えば、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、グリチルリチン酸、ソーマチン、アセスルファムカリウム、サッカリン又はそれらの塩が例示される。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。中でも、咽頭への刺激緩和及び喉ごし改善の観点から、サッカリンナトリウム、スクラロースが特に好ましい。なお、塩の形態としては、アルカリ金属塩等が例示される。
清涼剤としては、例えば、ウイキョウ油、カンフル、ハッカ油、ハッカ水、ミント、ペパーミント、メントール等が例示される。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。中でも、咽頭への刺激緩和及び喉ごし改善の観点から、メントールが特に好ましい。なお、メントールは、単一の光学活性体であっても、これらの混合物(例えば、ラセミ体)であってもよいが、単一の光学活性体、特にl−メントールが好ましい。
【0035】
本発明においては、第1及び第2の非ニコチン層にのみ矯味剤を添加することで、喉ごしを改善することが可能であるが(味覚官能試験2及び3参照)、より一層喉ごしを改善する観点から、全ての層に矯味剤を添加することが好ましく(味覚官能試験4、5及び6参照)、特にニコチン層に矯味剤として酸味剤を添加することで、喉ごしを格段に改善することができる(味覚官能試験7及び8参照)。
【0036】
本発明において、各層に添加すべき矯味剤の好ましい組み合わせは下記のとおりである。これら組み合わせを採用することにより、ニコチン特有の咽頭への強い刺激を十分に緩和し、喉ごしをより確実に改善することができる。
(1)ニコチン層、第1の非ニコチン層及び第2の非ニコチン層が酸味剤、高甘度甘味剤及び清涼剤を含有するもの。
(2)ニコチン層が酸味剤を含み、かつ第1及び第2の非ニコチン層が高甘度甘味剤及び清涼剤を含有するもの。
(3)ニコチン層が高甘度甘味剤を含み、かつ第1及び第2の非ニコチン層が酸味剤及び清涼剤を含有するもの。
(4)ニコチン層が清涼剤を含み、かつ第1及び第2の矯味フィルム層が酸味剤及び高甘度甘味剤を含有するもの。
【0037】
ニコチン層中の矯味剤の含有量は、ニコチン層の全質量に対して、好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは3〜25質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。
第1の非ニコチン層中の矯味剤の含有量は、第1の非ニコチン層の全質量に対して、好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは5〜35質量%、特に好ましくは10〜30質量%である。
第2の非ニコチン層中の矯味剤の含有量は、第2の非ニコチン層の全質量に対して、好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは5〜35質量%、特に好ましくは10〜30質量%である。
ニコチン層中のニコチンの含有量は、ニコチン層の全質量に対して、好ましくは1〜20質量%、更に好ましくは3〜18質量%、特に好ましくは5〜15質量%である。
【0038】
単位製剤中の矯味剤の含有量は、ニコチン1mg当たり0.015〜15mgが好ましい。他の成分の配合量及び製剤設計に制限を与えず、かつ矯味剤由来の不快な味を感ずることなく喉ごしを十分に改善するには、ニコチン1mg当たり0.15〜7.5mgが好ましい。また、服用に際して矯味剤由来の好ましい喉ごしを獲得するには、ニコチン1mg当たり0.3〜4.5mgが好ましく、特にニコチン1mg当たり0.6〜3mgが好ましい。
【0039】
単位製剤中の酸味剤の含有量は、ニコチン1mg当たり0.005〜5mgが好ましい。他の成分の配合量及び製剤設計に制限を与えず、かつ酸味剤由来の不快な味を感ずることなく喉ごしを十分に改善するには、ニコチン1mg当たり0.05〜2.5mgが好ましい。また、服用に際して酸味剤由来の好ましい喉ごしを獲得するには、ニコチン1mg当たり0.1〜1.5mgが好ましく、特にニコチン1mg当たり0.2〜1mgが好ましい。
【0040】
単位製剤中の高甘度甘味剤の含有量は、ニコチン1mg当たり0.005〜5mgが好ましい。他の成分の配合量及び製剤設計に制限を与えず高甘度甘味剤由来の不快な味を感ずることなく喉ごしを十分に改善するには、ニコチン1mg当たり0.05〜2.5mgが好ましい。また、服用に際して高甘度甘味剤由来の好ましい喉ごしを得るには、ニコチン1mg当たり0.1〜1.5mgが好ましく、特に好ましい喉ごしを得るには、ニコチン1mg当たり0.2〜1mgである。
【0041】
単位製剤中の清涼剤の含有量は、ニコチン1mg当たり0.005〜5mgが好ましい。他の成分の配合量及び製剤設計に制限を与えず清涼剤由来の不快な味を感ずることなく喉ごしを十分に改善には、ニコチン1mg当たり0.05〜2.5mgが好ましい。また、服用に際して清涼剤由来の好ましい喉ごしを得るには、ニコチン1mg当たり0.1〜1.5mgが好ましく、特に好ましい喉ごしを得るには、ニコチン1mg当たり0.2〜1mgである。
【0042】
本発明に係るニコチン層、第1及び第2の非ニコチン層には、必要により可食性難水溶性高分子、崩壊剤、賦形剤、着色剤、可塑剤、抗酸化剤、精油、香料等の各種添加剤を含有させることができる。
可食性難水溶性高分子としては、水に難溶で、かつ可食性の高分子であれば特に限定されるものではないが、例えば、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP、別名:ヒプロメロースフタル酸エステル)、メチルセルロース(MC)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシビニルポリマー等が例示される。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。中でも、服薬時の使用感改善の観点から、HPMCPが好適である。
【0043】
崩壊剤としては、当該技術分野において常用され、かつ可食性であれば特に限定されるものではないが、例えば、糖類、カルメロース及びその塩、セルロース、デンプン、ショ糖脂肪酸エステル、ゼラチン、炭酸水素ナトリウム、デキストリン、デヒドロ酢酸及びその塩、ポビドン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、ポリソルベート)、ポリエチレングリコール(例えば、マクロゴール)、無水クエン酸等が例示される。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。。中でも、製剤の崩壊性改善及び可塑性付与の観点から、糖類、マクロゴールが好適に用いられる。なお、ここでいう糖類とは、甘味度がショ糖の50倍未満である合成又は天然の砂糖代替物をいい、例えば、マンニトール、マルトース、還元麦芽糖水飴、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、ショ糖、フルクトース、ソルビトール、白糖、乳糖等が例示される。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。中でも、製剤の崩壊性改善の観点から、マンニトール、マルトース、マルチトール、還元麦芽糖水飴が好適に用いられる。
【0044】
賦形剤としては、当該技術分野において常用され、かつ可食性であれば特に限定されるものではないが、例えば、アメ粉、デンプン、果糖、カラメル、カンテン、キシリトール、クエン酸、グリセリン、パラフィン、セルロース、酸化チタン、酒石酸、ソルビトール、乳糖、白糖、ブドウ糖、プルラン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール(例えば、マクロゴール)、マルチトール、マルトース、マンニトール、リンゴ酸等が例示される。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。中でも、製品の外観及び製造時の作業性向上の観点から、酸化チタン、マンニトール、マクロゴールが好適に用いられる。
着色剤としては、当該技術分野において常用され、かつ可食性であれば特に限定されるものではないが、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、カラメル、黒酸化鉄、酸化チタン、三二酸化鉄、タール色素、アルミニウムレーキ色素、銅クロロフィリンナトリウム等が例示される。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。中でも、製品の外観及び製品イメージ向上の観点から、酸化チタンやアルミニウムレーキ色素が好適に用いられる。
【0045】
可塑剤としては、当該技術分野において常用され、かつ可食性であれば特に限定されるものではないが、例えば、グリセリン、ゴマ油、ソルビトール、ヒマシ油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリソルベート80(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO)、ポリエチレングリコール[特に、マクロゴール400(オキシエチレン単位の重合度nが7〜9、以下、同様)、マクロゴール600(nが11〜13)、マクロゴール1500(nが5〜6と、nが28〜36との等量混合物)、マクロゴール4000(nが59〜84)、マクロゴール6000(nが165〜210)]等が例示される。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。中でも、製造時の加圧によるフィルム層同士の密着性向上と製品への柔軟性付与の観点から、グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール400が好適に用いられる。
【0046】
抗酸化剤としては、当該技術分野において常用され、かつ可食性であれば特に限定されるものではないが、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、クエン酸、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、天然ビタミンE、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール等が例示される。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。中でも、薬物の安定性向上の観点から、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、エデト酸ナトリウム、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールが好適に用いられる。
【0047】
精油としては、例えば、上記清涼剤を除いたアニス油、ユーカリ油、オレンジ油、セージ油、タイム油、レモン油等が例示され、必要に応じて適宜添加することができる。なお、これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0048】
香料としては、例えば、バニラフレーバー、オレンジフレーバー、オレンジ皮フレーバー、ストロベリーフレーバー、ラズベリーフレーバー、チョコレートフレーバー、グレープフルーツフレーバー、クランベリーフレーバー、ウメフレーバー、コクトウフレーバー、ハーブフレーバー、コーヒーフレーバー、紅茶フレーバー、シナモンフレーバー、ハチミツレモンフレーバー等が例示される。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。中でも、製剤溶解時の清涼感及び爽快感の向上の観点から、オレンジフレーバー、グレープフルーツフレーバーが好適である。
【0049】
本発明において、各種添加剤の含有量は本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜設定することが可能であるが、例えば、単位製剤中の崩壊剤及び賦形剤の含有量は合計0〜49質量%が好ましく、また単位製剤中の難水溶性高分子の含有量は0〜5質量%が好ましい。更に、単位製剤中の可塑剤の含有量は0〜10質量%が好ましく、また単位製剤中の抗酸化剤の含有量は0〜10質量%が好ましい。
【0050】
本発明のフィルム製剤は5層構造以上の多層構造を採用することができるが、その厚さは好ましくは10〜1000μm、更に好ましくは20〜500μm、特に好ましくは30〜300μmに調整するのがよい。これにより、口腔内において迅速に溶解又は崩壊し、ニコチンの物理化学的性質により消化管吸収や口腔粘膜吸収が促進され、ニコチンの作用が速やかに発現される。なお、フィルム製剤の大きさは、服用しやすいものであれば特に限定されるものではないが、例えば、1〜4cm2程度の大きさにすることが好ましい。また、その形状も服用しやすいものであれば特に限定されるものではないが、例えば、円形、楕円形、方形等を適宜選択することが可能である。
【0051】
本発明のフィルム製剤は、従来公知のニコチン含有フィルム製剤に比して口腔内の水分により迅速に溶解又は崩壊することが可能であり、かつ水への溶解性に優れるものである。例えば、口腔内における溶解又は崩壊時間は1分以内、特に30秒以内であることが好ましく、また水に対する溶解時間は3分以内、特に1分以内であることが好ましい。このような速溶性を具備することで、ニコチン血中濃度を速やかに上昇させることが可能であり、更にニコチン由来の不快な喉ごしをより確実に改善することができる(比較例6参照)。
【0052】
なお、本明細書において、「口腔内における溶解・崩壊時間」とは下記の口腔内溶解試験により測定したものをいい、また「水に対する溶解時間」とは下記の水溶解性試験により測定したものをいう。
【0053】
口腔内溶解試験
円形φ12mmのサイズに裁断した試験片を採取し、それを健康な成人の口腔内に水なしで含ませ、試験片が口腔内の唾液のみで完全に溶解するまでの時間を測定する。試験は6名のパネラーの服用に要した時間を測定し、その平均値を口腔内溶解時間とする。
【0054】
水溶解性試験
円形φ12mmのサイズに裁断した試験片を採取し、それを試験液(精製水900mL)に入れ、第15改正日本薬局方 [B]一般試験法 6.製剤試験法 6.10溶出試験法 パドル法(p.587)にしたがって、シンカーを使用し毎分50回転で試験を行う。目視にて完全溶解を確認し、その経過時間を溶解時間とした。試験は5回行い、その平均値を水溶解時間とする。
【0055】
また、本発明のフィルム製剤の水に対する溶解性及び/又は崩壊性に影響を及ぼす要因として、製剤の厚みや、賦形剤や崩壊剤等の添加が挙げられる。賦形剤や崩壊剤等を添加することなく口腔内で所定時間以内に溶解及び/又は所定時間に水に溶解することが可能なフィルム製剤とするには、製剤全体の厚みを10〜100μmとすることが好ましい。この場合、ニコチン層の厚みは1〜30μm、特に5〜20μmが好ましく、第1及び第2の非ニコチン層の各厚みは1〜30μm、特に5〜20μmが好ましい。
また、賦形剤や崩壊剤等を添加して製剤の溶解性及び崩壊性を向上させる場合には、製剤全体の厚みを30〜1000μmとすることができる。この場合、ニコチン層の厚みは5〜200μm、特に10〜100μmが好ましく、第1及び第2の非ニコチン層の各厚みは5〜200μm、特に10〜100μmが好ましい。
【0056】
本実施形態においては、説明の便宜上、フィルム製剤が5層構造を有する場合について説明したが、本発明のフィルム製剤はこれに限定されず、5層を超える積層構造を有していてもよい。その場合、例えば、ニコチン層を3つ以上の奇数個とすることも可能であるが、咽頭への刺激緩和及び喉ごし改善の観点から、偶数個有することが好ましい。具体的には、上記した5層構造を有する製剤の両側にニコチン層及び第2の非ニコチン層をそれぞれ順次積層した9層構造の製剤や、この9層構造の製剤の両側にニコチン層及び第2の非ニコチン層をそれぞれ順次積層した13層構造の製剤等が挙げられる。このような積層構造を有する製剤は、積層構造の中央に第1の非ニコチン層が配置されているため、フィルム製剤が口腔内で溶解又は崩壊する際に第1の非ニコチン層を最後に溶解させることが可能である。その結果、ニコチン特有の咽頭への刺激をより確実に緩和し喉ごしをより一層改善させることができる。なお、複数個存在するニコチン層、第1及び第2の非ニコチン層の組成は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0057】
また、本発明のフィルム製剤は、第1及び第2の非ニコチン層の存在により、ニコチン由来の不快な喉ごしを改善できるという効果が得られるが、速溶性や咽頭刺激感の緩和に影響を与えなければ、例えば、第2の非ニコチン層の内側及び/又は外側に隣接させて別の機能層を設けてもよい。このような層としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを主体とし、ハンドリング性を向上させるための支持層や、エチルセルロースを主体とし、防湿のための防湿層等が例示される。各層の厚みは本発明に目的を阻害しない範囲内において適宜設定することが可能である。なお、同一種の層を隣接して積層した場合、それらは互いに密着し一体となって同一の機能を奏するため、本発明においては実質的に一層として取り扱うものとする。
【0058】
また、本発明のフィルム製剤は、複数個の製剤が行列状に配置され、該製剤の形状を画定する切断線が設けられたシート状の形態とすることも可能であり、その一方面には樹脂フィルムが設けられていてもよい。このような製剤は、患者が1つの製剤を切断線に沿って分離しながら樹脂フィルムから剥離し服用することが可能である。かかる樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリイミド、ポリプロピレン、セルローストリアセテート、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、トリアセテート、フッ素樹脂(ETFE、PFA、FEP)等の樹脂からなるフィルムから適宜選択して使用することができる。中でも、特にポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0059】
次に、本発明のニコチン含有フィルム製剤の製造方法について説明する。
本発明のフィルム製剤は、公知の方法を採用して製造することが可能であり、例えば、特開2004−196784号公報、特開2004−043450号公報、特開平11−116469号公報等に記載の方法が例示される。
【0060】
本発明においては、下記工程(1)〜(7)を含む製造方法が好ましく採用される。
(1)矯味剤及び可食性水溶性高分子を含有し、かつニコチンを含有しない塗工液を樹脂フィルム上に直接塗布して所定の厚さの第2の非ニコチン層を形成する工程、
(2)工程(1)で形成された第2の非ニコチン層上に、ニコチン及び可食性水溶性高分子を含有する塗工液を塗布して所定の厚さのニコチン層を形成し中間製品Aを得る工程、
(3)矯味剤及び可食性水溶性高分子を含有し、かつニコチンを含有しない塗工液を樹脂フィルム上に直接塗布して所定の厚さの第1の非ニコチン層を形成し中間製品Bを得る工程、
(4)工程(2)で得られた中間製品Aのニコチン層と、工程(3)で得られた中間製品Bの第1の非ニコチン層を互いに対向するように重ね合わせて、樹脂フィルムの裏面から両者を加圧することにより、ニコチン層と第1の非ニコチン層を相互に密着させて中間製品Cを得る工程、
(5)工程(4)で得られた中間製品Cの第1の非ニコチン層側の樹脂フィルムのみを剥離して中間製品Dを得る工程、
(6)工程(5)で得られた中間製品Dの第1の非ニコチン層と、中間製品Aのニコチン層とを互いに対向するように重ね合わせて、樹脂フィルムの裏面から両者を加圧することにより、第1の非ニコチン層とニコチン層を相互に密着させて中間製品Eを得る工程、
(7)工程(7)で得られた中間製品Eの少なくとも一方の樹脂フィルムを剥離する工程。
【0061】
なお、上述した工程(1)〜(3)においては、塗工液を樹脂フィルム上に塗布して乾燥させることにより形成できるが、その場合、例えば、特開2004−196784号公報に記載の塗工装置を使用することができる。また、樹脂フィルムとしては、上記と同様のものを使用することができる。塗工液の調製に使用する溶媒としては、例えば、水、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アミド又はこれらの混合物等を特に制限なく使用できるが、中でも、水、アルコール(特に、エタノール)、エステル(特に、酢酸エチル)又はこれら溶媒を組み合わせたもの(例えば、エタノール−水混合物、エタノール−酢酸エチル混合物)が好ましい。
また、工程(4)及び(5)においては、例えば、特開2004−196784号、特開2005−080838公報に記載の圧着装置を使用することができる。この場合、圧力を0.05〜1.5MPa、圧着させるべき層の温度を30〜70℃に調整し圧着し、その後樹脂フィルムを剥離するまで0℃以下にならないように圧着時よりも10℃以上低い温度に冷却することが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0063】
実施例1〜5、実施例9及び比較例2〜5のニコチン含有フィルム製剤1枚当たりの矯味剤の含有量は、無水クエン酸は0.623mg、サッカリンナトリウムは0.623mg、l−メントールは0.208mgで統一した。
実施例6〜8のニコチン含有フィルム製剤1枚当たりの矯味剤の含有量は、無水クエン酸は0.083mg、サッカリンナトリウムは0.083mg、l−メントールは0.083mgで統一した。
実施例1〜9及び比較例1〜5のニコチン含有フィルム製剤の厚さは、75μmで統一した。
【0064】
[実施例1]
全層に無水クエン酸、サッカリンナトリウム及びl−メントールを含む5層型フィルム製剤
水18gにニコチンオイル2g、無水クエン酸1.2g、サッカリンナトリウム1.2g、D−マンニトール0.6gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール42gにl−メントール0.4gを溶解させた溶液を加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース7.3g、ヒドロキシプロピルセルロース7.3gを加え、ニコチン層調製液を得た。
水18gに無水クエン酸1.2g、サッカリンナトリウム1.2g、D−マンニトール1.2gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール42gにl−メントール0.4gを溶解させた溶液を加えた後、酸化チタン2gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース14gを加え、第2の非ニコチン層調製液を得た。
水30gに無水クエン酸1.2g、サッカリンナトリウム1.2g、D−マンニトール3gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール30gにl-メントール0.4gを溶解させた溶液を加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース14.2gを加え、第1の非ニコチン層調製液を得た。
【0065】
各調製液を用いて、下記の手順により速溶性ニコチン含有フィルム製剤を作製した。
1)可食性中間製品1の製造工程
シリコーン剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を塗工機巻き出し軸にセットし、ダム部に第2の非ニコチン層調製液を供給して、PETフィルムの表面(シリコーン剥離処理していない面)に第2の非ニコチン層調製液を塗布した後、温風にて乾燥し、厚さ15μmの可食性の第2の非ニコチン層を形成した。次いで、第2の非ニコチン層を形成したPETフィルムを再度巻き出し軸にセットし、第2の非ニコチン層上にニコチン層調製液を塗布した後、温風にて乾燥し厚さ30μmの可食性の中間製品1を形成した。
2)可食性の第1の非ニコチン層の製造工程
両面をシリコーン剥離処理したPETフィルムを塗工機巻き出し軸にセットし、ダム部に第1の非ニコチン層調製液を供給して、PETフィルムの表面に第1の非ニコチン層調製液を塗布した後、温風にて乾燥し厚さ15μmの可食性の第1の非ニコチン層を形成した。
3)圧着工程
中間製品1のニコチン層と、第1の非ニコチン層の表面とが対向するように貼り合わせ、圧着温度70℃で両者を圧着し、2つのPETフィルム間に、第2の非ニコチン層と、ニコチン層と、第1の非ニコチン層を有する3層構造の中間製品2を得た。
【0066】
4)樹脂フィルム剥離工程
中間製品2の第1の非ニコチン層側のPETフィルムのみを剥離し、中間製品3を得た。
5)圧着工程
中間製品3の第1の非ニコチン層と、中間製品1のニコチン層とが対向するように貼り合わせ、圧着温度70℃で両者を圧着し、2つのPETフィルム間に、第2の非ニコチン層と、ニコチン層と、第1の非ニコチン層と、ニコチン層と、第2の非ニコチン層を有する5層構造の中間製品4を得た。
6)樹脂フィルム分離工程
中間製品4の一方のPETフィルムのみを剥離し、中間製品5を得た。
7)打ち抜き工程
中間製品5を、円形φ12mmのカッターを用いて、PETフィルムの裏面まで到達しないように打ち抜き、厚さ75μmのニコチン含有フィルム製剤を得た。
【0067】
[実施例2]
ニコチン層に矯味剤を含まず、かつ第1及び第2の非ニコチン層にそれぞれ無水クエン酸、サッカリンナトリウム及びl−メントールを含む5層型フィルム製剤
水18gにニコチンオイル2g、D−マンニトール0.6gを溶解させ、この溶液にエタノール42gを加えた。次いで、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース8.7g、ヒドロキシプロピルセルロース8.7gを加え、ニコチン層調製液を得た。
水18gに無水クエン酸2g、サッカリンナトリウム2g、D−マンニトール1.2gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール42gにl−メントール0.67gを溶解させた溶液を加えた後、酸化チタン2gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース12.13gを加え、第2の非ニコチン層調製液を得た。
水30gに無水クエン酸2g、サッカリンナトリウム2g、D−マンニトール3gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール30gにl−メントール0.67gを溶解させた溶液を加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース12.33gを加え、第1の非ニコチン層調製液を得た。
各調製液を用いて、実施例1と同様の操作によりニコチン含有フィルム製剤を得た。
【0068】
[実施例3]
ニコチン層に無水クエン酸を含み、かつ第1及び第2の非ニコチン層にl−メントール及びサッカリンナトリウムを含む5層型フィルム製剤
水18gにニコチンオイル2g、無水クエン酸3g、D−マンニトール0.6gを溶解させ、この溶液にエタノール42gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース7.2g、ヒドロキシプロピルセルロース7.2gを加え、ニコチン層調製液を得た。
水18gにサッカリンナトリウム2g、D−マンニトール1.2gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール42gにl−メントール0.67gを溶解させた溶液を加えた後、酸化チタン2gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース14.13gを加え、第2の非ニコチン層調製液を得た。
水30gにサッカリンナトリウム2g、D−マンニトール3gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール30gにl−メントール0.67gを溶解させた溶液を加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース14.33gを加え、第1の非ニコチン層調製液を得た。
各調製液を用いて、実施例1と同様の操作によりニコチン含有フィルム製剤を得た。
【0069】
[実施例4]
ニコチン層にl−メントールを含み、かつ第1及び第2の非ニコチン層に無水クエン酸及びサッカリンナトリウムを含む5層型フィルム製剤
水18gにニコチンオイル2g、D−マンニトール0.6gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール42gにl−メントール1gを溶解させた溶液を加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース8.2g、ヒドロキシプロピルセルロース8.2gを加え、ニコチン層調製液を得た。
水18gに無水クエン酸2g、サッカリンナトリウム2g、D−マンニトール1.2gを溶解させた。次いで、この溶液にエタノール42gを加えた後、酸化チタン2gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース12.8gを加え、第2の非ニコチン層調製液を得た。
水30gに無水クエン酸2g、サッカリンナトリウム2g、D−マンニトール3gを溶解させ、この溶液にエタノール30gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース13gを加え、第1の非ニコチン層調製液を得た。
各調製液を用いて、実施例1と同様の操作によりニコチン含有フィルム製剤を得た。
【0070】
[実施例5]
ニコチン層にサッカリンナトリウムを含み、かつ第1及び第2の非ニコチン層に無水クエン酸及びl-メントールを含む5層型フィルム製剤
水18gにニコチンオイル2g、サッカリンナトリウム3g、D−マンニトール0.6gを溶解させ、この溶液にエタノール42gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース7.2g、ヒドロキシプロピルセルロース7.2gを加え、ニコチン層調製液を得た。
水18gに無水クエン酸2g、D−マンニトール1.2gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール42gにl−メントール0.67gを溶解させた溶液を加えた後、酸化チタン2gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース14.13gを加え、第2の非ニコチン層調製液を得た。
水30gに無水クエン酸2g、D−マンニトール3gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール30gにl−メントール0.67gを溶解させた溶液を加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース14.33gを加え、第1の非ニコチン層調製液を得た。
各調製液を用いて、実施例1と同様の操作によりニコチン含有フィルム製剤を得た。
【0071】
[実施例6]
ニコチン層に無水クエン酸を含み、かつ第1及び第2の非ニコチン層にl−メントール及びサッカリンナトリウムを含む5層型フィルム製剤
水18gにニコチンオイル2g、無水クエン酸0.4g、D−マンニトール0.6gを溶解させ、この液にエタノール42gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース8.5g、ヒドロキシプロピルセルロース8.5gを加え、ニコチン層調製液を得た。
水18gにサッカリンナトリウム0.27g、D−マンニトール1.2gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール42gにl−メントール0.27gを溶解させた溶液を加えた後、酸化チタン2gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース16.27gを加え、第2の非ニコチン層調製液を得た。
水30gにサッカリンナトリウム0.27g、D−マンニトール3gを溶解させた。次いで、この液に、エタノール30gにl−メントール0.27gを溶解させた溶液を加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース16.47gを加え、第1の非ニコチン層調製液を得た。
各調製液を用いて、実施例1と同様の操作によりニコチン含有フィルム製剤を得た。
【0072】
[実施例7]
ニコチン層にl−メントールを含み、かつ第1及び第2の非ニコチン層に無水クエン酸及びサッカリンナトリウムを含む5層型フィルム製剤
水18gにニコチンオイル2g、D−マンニトール0.6gを溶解させ、この溶液にエタノール42gにl−メントール0.4gを溶解させた溶液を加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース8.5g、ヒドロキシプロピルセルロース8.5gを加え、ニコチン層調製液を得た。
水18gに無水クエン酸0.27g、サッカリンナトリウム0.27g、D−マンニトール1.2gを溶解させた。次いで、この溶液にエタノール42gを加えた後、酸化チタン2gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース16.27gを加え、第2の非ニコチン層調製液を得た。
水30gに無水クエン酸0.27g、サッカリンナトリウム0.27g、D−マンニトール3gを溶解させ、この溶液にエタノール30gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース16.47gを加え、第1の非ニコチン層調製液を得た。
各調製液を用いて、実施例1と同様の操作によりニコチン含有フィルム製剤を得た。
【0073】
[実施例8]
ニコチン層にサッカリンナトリウムを含み、かつ第1及び第2の非ニコチン層に無水クエン酸及びl−メントールを含む5層型フィルム製剤
水18gにニコチンオイル2g、サッカリンナトリウム0.4g、D−マンニトール0.6gを溶解させ、この溶液にエタノール42gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース8.5g、ヒドロキシプロピルセルロース8.5gを加え、ニコチン層調製液を得た。
水18gに無水クエン酸0.27g、D−マンニトール1.2gを溶解させた。次いで、この液にエタノール42gにl−メントール0.27gを溶解させた溶液を加えた後、酸化チタン2gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース16.27gを加え、第2の非ニコチン層調製液を得た。
水30gに無水クエン酸0.27g、D−マンニトール3gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール30gにl−メントール0.27gを溶解させた溶液を加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース16.47gを加え、第1の非ニコチン層調製液を得た。
各調製液を用いて、実施例1と同様の操作によりニコチン含有フィルム製剤を得た。
【0074】
[実施例9]
ニコチン層に無水クエン酸を含み、かつ第1及び第2の非ニコチン層にl−メントール及びサッカリンナトリウムを含む5層型フィルム製剤
水18gにニコチンオイル2g、無水クエン酸3g、D−マンニトール0.6gを溶解させ、この溶液にエタノール42gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース7.2g、ヒドロキシプロピルセルロース7.2gを加え、ニコチン層調製液を得た。
水18gにサッカリンナトリウム2.0g、D−マンニトール1.2gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール42gにl−メントール0.67gを溶解させた溶液を加えた後、酸化チタン2gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース14.13gを加え、第2の非ニコチン層調製液を得た。
水30gにサッカリンナトリウム2.0g、D−マンニトール3gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール30gにl−メントール0.67gを溶解させた溶液を加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース14.33gを加え、第1の非ニコチン層調製液を得た。
各調製液を用いて、実施例1と同様の操作によりニコチン含有フィルム製剤を得た。
【0075】
実施例群の単位製剤(ニコチン含有フィルム製剤1枚)当たりの組成を表1及び2に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
[比較例1]
無水クエン酸、サッカリンナトリウム及びl−メントールを含まない1層型フィルム製剤
水18gにニコチンオイル0.8g、D−マンニトール0.6gを溶解させた。次いで、この溶液にエタノール42gを加えた後、酸化チタン1gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース8.8g、ヒドロキシプロピルセルロース8.8gを加えニコチン層調製液を得た。
【0079】
この調製液を用いて、下記の手順によりニコチン含有フィルム製剤を作製した。
1)中間製品の製造工程
シリコーン剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を塗工機巻き出し軸にセットし、ダム部にニコチン層調製液を供給して、PETフィルムの表面(シリコーン剥離処理していない面)にニコチン層調製液を塗布した。次いで、温風にて乾燥し厚さ15μmの可食性のニコチン層を形成した。
2)圧着工程
ニコチン層同士が対向するように貼り合わせ、圧着温度70℃で両者を圧着し、中間製品11を得た。
3)樹脂フィルム剥離工程
中間製品11の一方のPETフィルムのみを剥離し、中間製品12を得た。
4)圧着工程
中間製品12のニコチン層と、上記工程1)で得たニコチン層とが対向するように貼り合わせ、圧着温度70℃で両者を圧着し、中間製品13を得た。
5)樹脂フィルム剥離工程
中間製品13の一方のPETフィルムのみを剥離し、中間製品14を得た。
6)圧着工程
中間製品12のニコチン層と中間製品14のニコチン層とが対向するように貼り合わせ、圧着温度70℃で両者を圧着し、中間製品15を得た。
<樹脂フィルム剥離工程>
中間製品15の一方のPETフィルムのみを剥離し、中間製品16を得た。
7)打ち抜き工程
中間製品16を、円形φ12mmのカッターを用いて、PETフィルムの裏面まで到達しないように打ち抜き、厚さ75μmのニコチン含有フィルム製剤を得た。
【0080】
[比較例2]
無水クエン酸、サッカリンナトリウム及びl−メントールを含む1層型フィルム製剤
水18gにニコチンオイル0.8g、無水クエン酸1.2g、サッカリンナトリウム1.2g、D−マンニトール0.6gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール42gにl−メントール0.4gを溶解させた溶液を加えた後、酸化チタン1gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース7.4g、ヒドロキシプロピルセルロース7.4gを加え、ニコチン層調製液を得た。
この調製液を用いて、比較例1と同様の操作によりニコチン含有フィルム製剤を得た。
【0081】
[比較例3]
全層に無水クエン酸、サッカリンナトリウム及びl−メントールを含む3層型フィルム製剤
水18gにニコチンオイル2.4g、無水クエン酸1.2g、サッカリンナトリウム1.2g、D−マンニトール0.6gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール42gにl−メントール0.4gを溶解させた溶液を加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース7.1g、ヒドロキシプロピルセルロース7.1gを加え、ニコチン層調製液を得た。
水18gに無水クエン酸1.2g、サッカリンナトリウム1.2g、D−マンニトール1.2gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール42gにl−メントール0.4gを溶解させた溶液を加えた後、酸化チタン2gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース14gを加え、第2の非ニコチン層調製液を得た。
【0082】
各調製液を用いて、下記の手順によりニコチン含有フィルム製剤を作製した。
1)可食性の中間製品21の製造工程
シリコーン剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を塗工機巻き出し軸にセットし、ダム部に第2の非ニコチン層調製液を供給して、PETフィルムの表面(シリコーン剥離処理していない面)に第2の非ニコチン層調製液を塗布した後、温風にて乾燥し厚さ25μmの可食性の第2の非ニコチン層を形成した。第2の非ニコチン層を形成したPETフィルムを再度巻き出し軸にセットし、第2の非ニコチン層上にニコチン層調製液を塗布した後、温風にて乾燥し厚さ37.5μmの可食性の中間製品21を形成した。
2)圧着工程
中間製品21のニコチン層と、上記工程1)で得た第2の非ニコチン層とが対向するように貼り合わせ、圧着温度70℃で両者を圧着し、2つのPETフィルム間に、第2の非ニコチン層と、ニコチン層と、第2の非ニコチン層を有する3層構造の中間製品22を得た。
<樹脂フィルム剥離工程>
中間製品22の一方のPETフィルムのみを剥離し、中間製品23とした。
3)打ち抜き工程
中間製品23を、円形φ12mmのカッターを用いて、PETフィルムの裏面まで到達しないように打ち抜き、厚さ75μmのニコチン含有フィルム製剤を得た。
【0083】
[比較例4]
ニコチン層に矯味剤を含まず、かつ第2の非ニコチン層に無水クエン酸、サッカリンナトリウム及びl−メントールを含む3層型フィルム製剤
水18gにニコチンオイル2.4g、D−マンニトール0.6gを溶解させ、この溶液にエタノール42gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース8.5g、ヒドロキシプロピルセルロース8.5gを加え、ニコチン層調製液を得た。
水18gに無水クエン酸1.8g、サッカリンナトリウム1.8g、D−マンニトール1.2gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール42gにl−メントール0.6gを溶解させた溶液を加えた後、酸化チタン2gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース12.6gを加え、第2の非ニコチン層調製液を得た。
各調製液を用いて、比較例3と同様の操作によりニコチン含有フィルム製剤を得た。
【0084】
[比較例5]
第2の非ニコチン層に矯味剤を含まず、かつニコチン層及び第2の非ニコチン層にそれぞれ無水クエン酸、サッカリンナトリウム及びl−メントールを含む5層型フィルム製剤
水18gにニコチンオイル2g、無水クエン酸2g、サッカリンナトリウム2g、D−マンニトール0.6gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール42gにl−メントール0.67gを溶解させた溶液を加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース6.37g、ヒドロキシプロピルセルロース6.37gを加え、ニコチン層調製液を得た。
水18gにD−マンニトール1.2gを溶解させた。次いで、この溶液にエタノール42gを加えた後、酸化チタン2gを加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース16.8gを加え、第2の非ニコチン層調製液を得た。
水30gに無水クエン酸2g、サッカリンナトリウム2g、D−マンニトール3gを溶解させた。次いで、この溶液に、エタノール30gにl−メントール0.67gを溶解させた溶液を加えた。そして、この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース12.33gを加え、第1の非ニコチン層調製液を得た。
各調製液を用いて、実施例1と同様の操作によりニコチン含有フィルム製剤を得た。
【0085】
比較例群の単位製剤(ニコチン含有フィルム製剤1枚)当たりの組成を表3に示す。
【0086】
【表3】

【0087】
喉ごしに関する味覚官能試験
各実施例及び比較例で得られた製剤を6人のパネラーが服用し、服用後の喉ごしを下記の基準で評価した。評価は、最も喉に刺激を感じなかった製剤を「1点」、最も喉に刺激を感じた製剤を「3点」とする3段階で行い、6人の評点の平均値をもって判断した。
【0088】
喉ごしに関する味覚官能試験1
実施例1、比較例2及び比較例3を用いて実施した。評価結果を表4に示す。
【0089】
【表4】

【0090】
表4に示すように、服用後の喉ごしの評点が、1層製剤である比較例2では3点であり、また3層製剤である比較例3では1.8点であるのに対し、5層製剤である実施例1では1.2点と積層数の増加とともに評価が良好になり、薬物由来の喉への刺激が緩和される傾向が示された。
したがって、1層製剤や3層製剤よりも、5層製剤の方が薬物由来の喉への刺激を緩和する上では有効であることが確認された。
【0091】
喉ごしに関する味覚官能試験2
実施例2、比較例1及び比較例4を用いて実施した。評価結果を表5に示す。
【0092】
【表5】

【0093】
表5に示すように、服用後の喉ごしの評点が、1層製剤である比較例1では2.7点であり、また3層製剤である比較例4では1.8点であるのに対し、5層製剤である実施例2では1.5点と評価が良好になり、薬物由来の喉への刺激が緩和される傾向が示された。
したがって、ニコチン層に矯味剤を添加してなくても5層製剤にすることで、1層製剤や3層製剤よりも薬物由来の喉への刺激を緩和することが可能になると考えられる。
【0094】
喉ごしに関する味覚官能試験3
実施例2、比較例3及び比較例5を用いて実施した。評価結果を表6に示す。
【0095】
【表6】

【0096】
表6に示すように、服用後の喉ごしの評点が、3層製剤である比較例3では2点であり、また実施例2と同様の5層製剤である比較例5では2.5点であるのに対し、実施例2では1.5点となった。この結果から、同じ5層製剤でも矯味剤を添加する層が変わることで薬物由来の喉への刺激の緩和度合いが変化することが確認された。また、実施例2と比較例5の対比から、支持層としても機能する最外層への矯味剤の添加が重要であると考えられる。
【0097】
喉ごしに関する味覚官能試験4
実施例1、実施例2及び実施例3を用いて実施した。評価結果を表7に示す。
【0098】
【表7】

【0099】
表7に示すように、服用後の喉ごしの評点が、ニコチン層に3種類の矯味剤が含まれている実施例1では1.7点であり、無水クエン酸のみが含まれている実施例3では2点であり、矯味剤が含まれていない実施例2では2.3点となることから、ニコチン層に矯味剤を添加することで評価が良好になり、薬物由来の喉への刺激が緩和される傾向が示された。
また、実施例2と実施例3との対比から、薬物由来の喉への刺激を緩和する上でニコチン層に添加する矯味剤として無水クエン酸は有効であることが示された。
【0100】
喉ごしに関する味覚官能試験5
実施例1、実施例2及び実施例4を用いて実施した。評価結果を表8に示す。
【0101】
【表8】

【0102】
表8に示すように、服用後の喉ごしの評点が、ニコチン層に3種類の矯味剤が含まれている実施例1では1.7点であり、l−メントールのみが含まれている実施例4では2.2点であり、矯味剤が含まれていない実施例2では2.2点であることから、ニコチン層に矯味剤を添加することで評価が良好になり、薬物由来の喉への刺激が緩和される傾向が示された。
また、薬物由来の喉への刺激を緩和する上で、ニコチン層に添加する矯味剤は複数種を組み合わせることが有効であると考えられる。
【0103】
喉ごしに関する味覚官能試験6
実施例1、実施例2及び実施例5を用いて実施した。評価結果を表9に示す。
【0104】
【表9】

【0105】
表9に示すように、服用後の喉ごしの評点が、ニコチン層に3種類の矯味剤が含まれている実施例1では1.8点であり、サッカリンナトリウムのみが含まれている実施例5では2.0点であり、矯味剤が含まれていない実施例2では2.2点であることから、ニコチン層に矯味剤を添加することで評価が良好になり、薬物由来の喉への刺激が緩和される傾向が示された。
また、実施例2と実施例5との対比から、薬物由来の喉への刺激を緩和する上で、ニコチン層に添加する矯味剤としてサッカリンナトリウムが有効であることが示された。
【0106】
喉ごしに関する味覚官能試験7
実施例3、実施例4及び実施例5を用いて実施した。評価結果を表10に示す。
【0107】
【表10】

【0108】
表10に示すように、服用後の喉ごしの評点が、薬物層に無水クエン酸のみが含まれている実施例3では1.8点であり、サッカリンナトリウムのみが含まれている実施例5では2点であり、l−メントールのみが含まれている実施例4では2.2点であることから、薬物由来の喉への刺激が緩和するには無水クエン酸が最も有効であることが確認された。
また、実施例3、4及び5の対比から、l−メントールはニコチン層に添加するよりも、支持層としても機能する第2の非ニコチン層や、第1の非ニコチン層に添加する方が薬物由来の喉への刺激を緩和する上で有効であると考えられる。
【0109】
喉ごしに関する味覚官能試験8
実施例6、実施例7及び実施例8を用いて実施した。評価結果を表11に示す。
【0110】
【表11】

【0111】
表11から、服用後の喉ごしの評点が、薬物層に無水クエン酸のみが含まれている実施例6では1.8点であり、サッカリンナトリウムのみが含まれている実施例8では2点であり、l−メントールのみが含まれている実施例7では2.2点となることから、薬物由来の喉への刺激が緩和するには無水クエン酸が最も有効であることが示された。
また、実施例6、7及び8の対比から、l−メントールはニコチン層に添加するよりも、第2の非ニコチン層や第1の非ニコチン層に添加する方が薬物由来の喉への刺激を緩和する上で有効であると考えられる。
【0112】
喉ごしに関する味覚官能試験9
実施例3、実施例6及び実施例9を用いて実施した。評価結果を表12に示す。
【0113】
【表12】

【0114】
表12に示すように、服用後の喉ごしの評点は、低粘度のHPC−SLを使用した実施例3が1.7点であるのに対して、HPC−SLよりも粘度の高いHPC−Lを使用した実施例9の評点は1.8点であり、両者に大きな差異は見られなかった。また、使用するHPCの粘度の相違により、製剤の溶解時間にも大きな差異は見られなかった。
矯味剤の添加量が実施例3及び実施例9よりも少ない実施例6の評点が2.5点となることから、矯味剤の添加量を低減すると薬物由来の喉への刺激が大きくなることが確認された。グレードを換えても薬物由来の喉への刺激に与える影響は軽微であることも示された。
【0115】
各実施例及び比較例で得られた製剤について、下記の水への溶解性試験及び口腔内溶解試験を行った。その結果を表13に示す。
【0116】
水溶解性試験
円形φ12mmのサイズに裁断した試験片を採取し、それを試験液(精製水900mL)に入れ、第15改正日本薬局方 [B]一般試験法 6.製剤試験法 6.10溶出試験法 パドル法(P587)にしたがって、シンカーを使用し毎分50回転で試験を行った。目視にて完全溶解を確認し、その経過時間を溶解時間とした。試験は5回行い、その平均値を水溶解時間とした。
【0117】
口腔内溶解試験
円形φ12mmのサイズに裁断した試験片を採取し、それを健康な成人の口腔内に水なしで含ませ、試験片が口腔内の唾液のみで完全に溶解するまでの時間を測定した。試験は6名のパネラーの服用に要した時間を測定し、その値を口腔内溶解時間とした。
【0118】
【表13】

【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の速溶性ニコチン含有フィルム製剤の一実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0120】
1 :第1の非ニコチン層
2 :ニコチン層
3 :第2の非ニコチン層
10:速溶性ニコチン含有フィルム製剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチン及び可食性水溶性高分子を含有する少なくとも2つのニコチン層と、
前記ニコチン層の間に配置された、矯味剤及び可食性水溶性高分子を含有し、かつニコチンを含有しない第1の非ニコチン層と、
最外層に配置された、矯味剤及び可食性水溶性高分子とを含有し、かつニコチンを含有しない第2の非ニコチン層と
を備える、速溶性ニコチン含有フィルム製剤。
【請求項2】
前記ニコチン層が偶数個設けられたものである、請求項1記載の速溶性ニコチン含有フィルム製剤。
【請求項3】
前記ニコチン層が矯味剤を含有するものである、請求項1又は2記載の速溶性ニコチン含有フィルム製剤。
【請求項4】
前記矯味剤が酸味剤、高甘度甘味剤及び清涼剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の速溶性ニコチン含有フィルム製剤。
【請求項5】
前記酸味剤がアスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項4記載の速溶性ニコチン含有フィルム製剤。
【請求項6】
前記高甘度甘味剤がアスパルテーム、ステビア、スクラロース、グリチルリチン酸、ソーマチン、アセスルファムカリウム、サッカリン及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項4記載の速溶性ニコチン含有フィルム製剤。
【請求項7】
前記清涼剤がウイキョウ油、カンフル、ハッカ油、ハッカ水、ミント、ペパーミント及びメントールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項4記載の速溶性ニコチン含有フィルム製剤。
【請求項8】
前記可食性水溶性高分子がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、カルボキシメチルセルロース・カリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びアルギン酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の速溶性ニコチン含有フィルム製剤。
【請求項9】
前記ニコチン層が矯味剤を含まないものである、請求項1又は2記載の速溶性ニコチン含有フィルム製剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−138125(P2010−138125A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316734(P2008−316734)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000161714)救急薬品工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】