説明

造作材

【課題】予め壁面に配設しておくことで壁面に不要な傷を付けることなく、一種類のもので様々な用途に使用できる汎用性の高い造作材を提供する。
【解決手段】本発明の造作材10は、住居室内の壁面20に略水平にて固定される長尺板状のベース部材12、前記ベース部材12の幅方向上端部側の表面に、幅方向断面形状が略L字状の上側係合片14aを前記ベース部材12の長手方向全長に亘って突設することにより形成された上方に開口する上側係合部14、前記ベース部材12の幅方向下端部側の表面に、幅方向断面形状が略L字状の下側係合片16aを前記ベース部材12の長手方向全長に亘って突設することにより形成された下方に開口する下側係合部16、及び前記ベース部材12表面の上側係合片および下側係合片に係合離脱可能に取付けられ、該ベース部材12の表面を覆うカバー部材18で構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の壁面に配設される造作材に関する。
【背景技術】
【0002】
住居室内の壁面に洋服用ハンガー等を吊るしたり、絵画や写真を飾ったり、棚や手摺りを設置したりすることが日常的に行なわれている。このように、壁面に対して様々な物を固定する際、一般的には釘やビスなどを用いるが、特に賃貸住宅等では、釘やビスなどの使用は壁面を傷つけるために好まれない。そのために、従来より、壁面における様々な物の取付けに関し、特殊な造作材を用いる下記技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
すなわち、例えば特許文献1(特開平5−311861号公報)には、壁と天井の突合せ部に下向きに開放する係合溝を設けた天井廻り縁を設け、移動可能な絵吊具で壁面に絵画を吊るす技術が提案されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2006−144235号公報)には、発泡樹脂からなり、壁面に略水平に固定される長尺のフック本体を備え、該フック本体の上部には長手方向に沿って引掛部が設けられたフック部材を壁面に固定し、これにハンガー等を吊るす技術が提案されている。
【0005】
これらの技術によれば、壁面に不必要に穴を開けることなく、様々なものを壁面に吊るしたり飾ったりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−311861号公報
【特許文献2】特開2006−144235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の各技術では、これらを複合的に組合わせて室内壁に設置することによって、壁面全体に様々な物を取付けることができるようになるが、各造作材は、夫々定められた態様によって壁面の定められた部位にしか設置することができないため、このように壁面全体に様々な物を取付けようとした場合には、準備する造作材の種類が増加し、在庫や施工などの管理が煩雑になると云う問題が生じていた。
【0008】
それゆえに、本発明の主たる課題は、予め壁面に配設しておくことで壁面に不要な傷を付けることなく、一種類のもので様々な用途に使用できる汎用性の高い造作材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における第1の発明は、
(a)住居室内の壁面20に略水平にて固定される長尺板状のベース部材12、
(b)前記ベース部材12の幅方向上端部側の表面に、幅方向断面形状が略L字状の上側係合片14aを前記ベース部材12の長手方向全長に亘って突設することにより形成された上方に開口する上側係合部14、
(c)前記ベース部材12の幅方向下端部側の表面に、幅方向断面形状が略L字状の下側係合片16aを前記ベース部材12の長手方向全長に亘って突設することにより形成された下方に開口する下側係合部16、及び
(d)前記ベース部材12表面の上側係合片および下側係合片に係合離脱可能に取付けられ、該ベース部材12の表面を覆うカバー部材18で構成されている
(e)ことを特徴とする造作材10、である。
【0010】
この発明では、ベース部材12の幅方向上下両端部に上方及び下方にそれぞれ開口する各係合部14,16が設けられているので、見切り縁(10A)として壁面20に固定した造作材10の上側係合部14に手摺Rや棚などを設けたり、同造作材10の下側係合部16に収納家具Fの転倒防止金具Sを取付けたりすることができる。また、(図示しないが)回り縁として壁面20に固定した造作材10の下側係合部16をピクチャーレールにして絵画などを吊るしたり、見切り縁(10A)として壁面20に固定した造作材10の下側係合部16と、幅木(10B)として壁面20に固定した造作材10の上側係合部14との間に、腰壁パネルWを固定する(ケンドン式)こともできる。このように本発明の造作材10では、壁面20に不要な傷を付けることなく1つの造作材10で様々な用途をカバーすることができる。
【0011】
また、ベース部材12の表面には、これを覆うカバー部材18が上側係合片14aおよび下側係合片16aに対して係合離脱可能に取付けられているが、このカバー部材18を室内配色に対応した色の物などに取替えるだけで簡単に意匠性を向上させることができる。
【0012】
本発明における第2の発明は、上記第1の発明の造作材10において、「前記上側係合部14と前記下側係合部16とが、前記ベース部材12の長手方向中心軸線Cを挟んで線対称に形成されている」ことを特徴とするもので、このように上側係合部14と下側係合部16とを同形同大とすることで、見切り縁(10A),幅木(10B)及び回り縁等のそれぞれに専用部材を用いず、本発明の造作材10を共通で使用すれば、多品種の造作材を在庫する必要がなくなり、在庫管理や施工管理の負担を軽減させることができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の造作材によれば、予め壁面に配設しておくことで壁面に不要な傷を付けることなく、一種類のもので様々な用途に使用できる汎用性の高い造作材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の造作材の使用態様の一例を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施例の造作材を幅木として施工する場合の施工手順を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施例の造作材に手摺りを取付ける際の施工手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図示実施例に従って説明する。図1は、本発明の造作材10を見切り縁(10A)及び幅木(10B)として使用する使用態様の一例を示す説明図である。本発明の造作材10は、このように見切り縁(10A)、幅木(10B)或いは回り縁(図示せず)として壁面20に固定される長尺部材で、上側係合部14及び下側係合部16が形成されたベース部材12とカバー部材18とで大略構成されている。
【0016】
ベース部材12は、アルミニウム合金やSUS等の金属材料或いはFRP(繊維強化プラスチック)等の樹脂材料のように高い強度と剛性とを有する材料で形成された幅約40mm前後〜70mm前後程度の長尺板状部材である。このベース部材12の背面は、壁面20に当接し得るよう平坦に形成されている。また、ベース部材12の幅方向略中央部における所定位置には、壁面20への取付けの際にビス26などの固定部材が挿通される貫通孔12aが所定間隔(柱などに一致する間隔)で穿設されており(図2(a)参照)、ベース部材12の前面におけるこの貫通孔12a近傍の位置には、貫通孔12aを両側から挟むように当該ベース部材12を部分的に肉厚にして強度を補強するための突条部12bが長手方向へ延びて(図示実施例の場合は2列)形成されている。
【0017】
そして、このベース部材12の幅方向上端部及び幅方向下端部には、それぞれ上側係合部14及び下側係合部16が一体的に形成されている。
【0018】
上側係合部14は、ベース部材12の幅方向上端部側の表面に、幅方向断面形状が略L字状の上側係合片14aを、前記ベース部材12の長手方向全長に亘って突設することにより形成された、上方に開口する部位である。なお、本実施例の造作材10では、上側係合部14を形成するベース部材12の幅方向上端及び上側係合片14aの先端が、互いに近接する方向に曲折された鉤状にて形成されている。
【0019】
下側係合部16は、ベース部材12の幅方向下端部側の表面に、幅方向断面形状が略L字状の下側係合片16aを、前記ベース部材12の長手方向全長に亘って突設することにより形成された、下方に開口する部位である。なお、本実施例の造作材10では、下側係合部16を形成するベース部材12の幅方向下端及び下側係合片16aの先端が、互いに近接する方向に曲折された鉤状にて形成されている。
【0020】
ここで、本実施例の造作材10では、ベース部材12と上側係合片14a及びベース部材12と下側係合片16aとの接続部分にそれぞれ階段状の段部22a及び22bを設け、ベース部材12のみならず上側係合片14a及び下側係合片16aの基部の強度も補強するようにしている。
【0021】
また、本実施例の造作材10では、上側係合部14と下側係合部16とが、ベース部材12の長手方向中心軸線C(図2(a)参照)を挟んで線対称に形成されている。このため、見切り縁(10A),幅木(10B)及び回り縁等のそれぞれに専用部材を用いず、本発明の造作材10を共通で使用すれば、多品種の造作材を在庫する必要がなくなり、在庫管理や施工管理の負担を軽減させることができるようになる。
【0022】
カバー部材18は、上述したベース部材12と同様の金属材料や樹脂材料の他に、中質繊維板[MDF]、合板又は無垢の木材等のような木質材料などでも形成され、ベース部材12の表面に着脱可能に取付けられる長尺板状の部材であり、ベース部材12の正面(前面)外形と略等しい外形を有するカバー部材本体18aと、該カバー部材本体18aの背面側に突設され、このカバー部材18をベース部材12の正面に取付ける際に、上側係合片14aの基部水平片14a1及び下側係合片16aの基部水平片16a1に弾性的に当接し、上側係合片14a及び下側係合片16aで区画されたベース部材12の表面空間内を密閉する上下一対の爪部材18bとで構成されている。
【0023】
なお、カバー部材本体18aの表面は、必要に応じて、化粧紙,化粧樹脂含浸紙,化粧合成樹脂シート及び化粧単板等からなる化粧材を貼着することによって、或いは着色塗装,柄模様印刷及び透明塗装などを施すことによって装飾・保護するようにしてもよい。
【0024】
次に、図2を参照しつつ、以上のように構成された造作材10を用いて幅木(10B)を施工する方法を説明する。
【0025】
本発明の造作材10を用いて幅木(10B)を施工する際には、先ず始めに、上側係合部14の所定位置に、上側係合部14の外部と、上側係合片14a及び下側係合片16aで区画されカバー部材18で密閉されるベース部材12の表面空間とを連通する切欠部24を設けると共に、切欠部24が設けられたベース部材12を、壁面20下端の床面と接する所定の取付位置に配置する(図2(a)参照)。
【0026】
なお、住居室内に配設される電源コードやケーブルなどの配線Dを、幅木(10B)となる造作材10の中を通して隠す必要がない場合には、上述のような切欠部24を設ける必要はない。
【0027】
続いて、ベース部材12の貫通孔12aにビス26を通して壁面20にベース部材12をビス止めすると共に、電源コードやケーブルなどの配線Dを隠す必要がある場合には、上側係合部14に設けた切欠部24から上側係合片14a及び下側係合片16aで区画された空間内へと配線Dを這わせる(図2(b)参照)。
【0028】
ここで、壁面20にビス26を留め付ける位置は、図1に示すように、間柱28や(見切り縁(10A)として施工する場合にはこれに加えて)横胴縁30などが配設され、下地として十分な強度を有する位置に留め付けるのが好ましい。
【0029】
そして、ベース部材12の正面(前面)にカバー部材10を嵌着することにより、本発明の造作材10を用いた幅木(10B)の施工が完成する(図2(c)参照)。
【0030】
次に、図3を参照しつつ、見切り縁(10A)として施工された造作材10に手摺Rを施工する方法について説明する。
【0031】
先ず初めに、本実施例で使用する手摺Rは、前面の角部が面取りされた幅80mm程度の長尺厚板状の本体r1と、該本体r1の底面奥の長手方向全体に亘って設けられ、上側係合部14の内面形状と略等しい外径形状で形成されて上側係合部14に嵌着可能な係合突条r2とで構成されている(図3(a)参照)。
【0032】
従って、見切り縁(10A)として施工された造作材10に手摺Rを施工する際には、造作材10の上側係合部14に、手摺Rの係合突条r2を上から圧入するだけで簡単に手摺Rの施工が完了する。
【0033】
なお、図1に示すように、この見切り縁(10A)には、上述した手摺Rのみならず、棚板(図示せず)や、壁面20近傍に配置された収納家具Fを左右両側から挟持してその転倒を防止する転倒防止金具Sなども取付けることができる。このうち、転倒防止金具Sも造作材10の下側係合部16に嵌着される係合突起s1が設けられているため、当該係合突起s1を下側係合部16に圧入するだけで簡単に施工が完了する。
【0034】
このように本実施例の造作材10によれば、ベース部材12の幅方向上下両端部に上方及び下方にそれぞれ開口する各係合部14,16が設けられているので、見切り縁(10A)として壁面20に固定した造作材10の上側係合部14に手摺Rや棚などを設けたり、同造作材10の下側係合部16に収納家具Fの転倒防止金具Sを取付けたりすることができる。また、(図示しないが)回り縁として壁面20に固定した造作材10の下側係合部16をピクチャーレールにして絵画などを吊るしたり、図1に示すように、見切り縁(10A)として壁面20に固定した造作材10の下側係合部16と、幅木(10B)として壁面20に固定した造作材10の上側係合部14との間に、腰壁パネルWを固定する(ケンドン式)こともできる。このように、本発明の造作材10では、壁面20に不要な傷を付けることなく1つの造作材10で様々な用途をカバーすることができる。
【0035】
なお、上述の実施例では、ベース部材12の貫通孔12aにビス26を挿通させて該ベース部材12を壁面20にビス留めする場合を示しているが、ベース部材12を壁面20に対して強固に固定できるものであれば、その固定部材はビス26に限定されるものではなく、例えば釘や接着剤など如何なるものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
10…造作材
12…ベース部材
12a…貫通孔
12b…突条部
14…上側係合部
14a…上側係合片
14a1…(上側係合片の)基部水平片
16…下側係合部
16a…下側係合片
16a1…(下側係合片の)基部水平片
18…カバー部材
18a…カバー部材本体
18b…爪部材
20…壁面
24…切欠部
26…ビス
28…間柱
30…横胴縁
C…ベース部材の長手方向中心軸線
D…配線
R…手摺
F…収納家具
S…転倒防止金具
W…腰壁パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住居室内の壁面に略水平にて固定される長尺板状のベース部材、
前記ベース部材の幅方向上端部側の表面に、幅方向断面形状が略L字状の上側係合片を前記ベース部材の長手方向全長に亘って突設することにより形成された上方に開口する上側係合部、
前記ベース部材の幅方向下端部側の表面に、幅方向断面形状が略L字状の下側係合片を前記ベース部材の長手方向全長に亘って突設することにより形成された下方に開口する下側係合部、及び
前記ベース部材表面の上側係合片および下側係合片に係合離脱可能に取付けられ、該ベース部材の表面を覆うカバー部材で構成されていることを特徴とする造作材。
【請求項2】
前記上側係合部と前記下側係合部とが、前記ベース部材の長手方向中心軸線を挟んで線対称に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の造作材。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−76284(P2013−76284A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217236(P2011−217236)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)