説明

造形用スラリー及び造形方法

【課題】粒体を用いた造形時において粒体の飛散を抑制することが可能な造形用スラリー
を提供するとともに、この造形用スラリーを用いた造形方法を提供する。
【解決手段】
造形物用スラリーは、造形物を構成する疎水性粒体と、造形物を構成するとともに疎水性
粒体と同系であるモノマー及びオリゴマーの少なくとも一方からなる疎水性液状体とを混
合してなる。同系とは、疎水性粒体を構成する繰り返し単位構造の主骨格と、疎水性液状
体の単位構造の主骨格とが同一であること、該単位構造における側鎖官能基や該単位構造
における主骨格の一部が異なるものの、疎水性液状体と疎水性粒体との相互作用が疎水性
粒体間の相互作用と略同じになる程度に、該単位構造の主骨格同士が一部重複することを
意味している。それゆえに、疎水性粒体及び疎水性液状体がそれぞれ共重合体である場合
には、これらに含まれる原子の組成比が一致していないものも同系であるとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、造形に用いられる造形用スラリー、及び該造形用スラリーを用いた造形方
法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、造形物を迅速に試作する方法(ラピッドプロトタイピング)として積層造形
法が多用されている。積層造形法では、三次元CAD等による造形物のモデルを多数の二
次元断面層に分割した後、各二次元断面層に対応する層状構造体を順次作成しつつ積層す
ることによって造形物を形成する。具体的には、例えば特許文献1に記載のように、まず
、セラミックや金属等を含む粒体が層状に形成される。次いで、粒体からなる層の一部で
粒体同士を結着させるための液状の結着液が、例えばインクジェット式液滴吐出装置によ
って粒体からなる層に吐出される。そして粒体間の空隙に浸透した液状の結着液がそれの
硬化とともに粒体同士を結着することによって、上記二次元断面層に対応する層状構造体
が形成される。以後同様に、これら粒体からなる層の形成と液状の結着液の吐出とが交互
に繰り返されることによって造形物が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2729110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、造形物の形成材料として粒体を用いた場合、粒体の層に振動が与えられ
ることや、粒体の層に対して液状の結着液が吐出されること等によって、粒体からなる層
から粒体の一部が飛散することも少なくない。飛散した粒体は、構造体が形成される空間
中に拡散する他、液状結着液を吐出する液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドに付着する。この
ように液滴吐出ヘッドに付着した粒体は、液滴吐出ヘッドを汚染するとともに、液滴吐出
ヘッドに設けられたノズルを塞ぐことで、液滴の吐出を妨げる虞がある。なお、上述した
ような粒体の飛散による問題とは、上記液滴吐出装置を用いた積層造形法に限られたもの
ではなく、粒体を用いて造形する方法に概ね共通した問題である。
【0005】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、粒体を用
いた造形時において粒体の飛散を抑制することが可能な造形用スラリーを提供するととも
に、この造形用スラリーを用いた造形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、造形物を粒体で形成するための造形用スラリーであって、前記造形物を構
成する疎水性の粒体と、前記造形物を構成するとともに、疎水性の粒体と同系であるモノ
マー及びオリゴマーの少なくとも一方からなる疎水性の液状体とを含有する。
【0007】
疎水性の粒体とこれと同系の疎水性の液状体、より正確には、疎水性の粒体を構成する
繰り返し単位構造の主骨格と、疎水性液状体の単位構造の主骨格とが同一である、あるい
は、該単位構造における側鎖官能基や該単位構造における主骨格の一部が異なるものの、
疎水性液状体と疎水性粒体との相互作用が疎水性粒体間の相互作用と略同じになる程度に
、該単位構造の主骨格同士が一部重複する疎水性の液状体とを混合すると、疎水性の粒体
と疎水性の液状体とは、互いに共通する構造を介して相互作用する。そのため、疎水性の
粒体同士は、それぞれの周囲に存在する疎水性の液状体を介して相互作用するようなる。
【0008】
上記発明によれば、造形用のスラリーが疎水性の粒体とこれと同系の疎水性の液状体と
からなるようにしているため、造形物の形成に際してスラリーに振動等が与えられたとし
ても、疎水性の粒体がこれに近接する疎水性の粒体との上記相互作用による構造中に保持
されることで、該粒体の飛散が抑制されるようになる。
【0009】
この発明では、前記疎水性の粒体がアクリル樹脂からなり、前記疎水性の液状体がアク
リレート化合物からなる。
この発明によれば、疎水性の粒体と疎水性の液状体とが共にアクリル骨格を主骨格とし
た化合物であるため、疎水性の粒体同士が、それぞれの周囲に存在する疎水性の液状体を
介して確実に相互作用するようなる。
【0010】
この発明では、前記疎水性の液状体が撥液基を含有する。
この発明によれば、造形用スラリーの構成要素である疎水性の液状体が撥液基を含有す
るため、当該造形用スラリーに撥液性を付与することができる。そのため、造形物の形成
に際して、造形用スラリーを例えば層状に形成した後に、疎水性の粒体を結着する結着液
を該層の所定の領域に浸透させた場合には、該層内において結着液が濡れ広がること、そ
して浸透領域から結着液が滲み出すことを抑制できる。それゆえに、こうした結着液によ
って結着された粒体及び液状体によって形成される造形物の形状に係る精度を向上させる
ことができる。
【0011】
この発明では、造形用スラリーの構成材料として、繊維材料を含有する。
この発明によれば、造形用スラリー中に繊維材料を含有させることによって、その機械
的強度を増大することができ、ひいては造形用スラリーを用いて形成される造形物の機械
的強度を増大することができる。
【0012】
この発明は、結着液を介して粒体同士を結着することにより造形物を形成する造形方法
であって、疎水性の粒体と、該疎水性の粒体と同系のモノマー及びオリゴマーの少なくと
も一方からなる疎水性の液状体とを含むスラリーからなる層を基体に形成する層形成工程
と、液状の結着液を前記層の一部に浸透させた後に該結着液を硬化することによって、前
記粒体及び前記疎水性の液状体を結着する結着工程と、前記硬化された前記結着液を含む
前記層に液体を流すことによって、前記結着液が浸透した領域以外を前記層から取り除く
除去工程とを含む。
【0013】
この発明によれば、造形物の形成に際しては、造形物を形成する疎水性の粒体と、該疎
水性の粒体と同系のモノマー及びオリゴマーの少なくとも一方からなる疎水性の液状体か
ら構成されるスラリーを用いるようにしている。そのため、造形物の形成に際してスラリ
ーに振動等が与えられたとしても、疎水性の粒体に対する親和力が疎水性の液状体から疎
水性の粒体に作用する分、該粒体の飛散が抑制されるようになる。
【0014】
この発明では、前記疎水性の粒体、前記疎水性の液状体、及び前記結着液が同系である

造形物の形成に際し、造形用スラリーを例えば層状に形成した後に、該層の所定領域に
対して、造形用スラリーの構成材料である疎水性の粒体及び疎水性の液状体を結着する結
着液を浸透させるとする。造形用スラリーは上述のように、疎水性の粒体と疎水性の液状
体とからなる。そのため、疎水性の液状体の介在によって疎水性の粒体同士が相互作用す
るとはいえ、結着液と疎水性の粒体とが同系でない場合、つまり、結着液に対して疎水性
の粒体が濡れ難い場合、結着液が造形用スラリー中に浸透するときに、その浸透領域から
弾き出されやすくなる。これにより、結着液の浸透領域、言い換えれば造形物の形成領域
に含まれる疎水性の粒体が減少することから、造形物の機械的強度が低下したり、造形物
の形状が不良となったりする。
【0015】
この点、上記発明によれば、造形用スラリーを構成する疎水性の粒体及び疎水性の液状
体と、結着液とが同系であることから、結着液に対して疎水性の粒体が有する濡れ性によ
り結着液中に疎水性の粒体が取り込まれやすくなる。それゆえに、造形物の機械的強度の
低下や造形物の形状不良が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる造形方法の一実施の形態における手順を示すフローチャート。
【図2】(a)(b)(c)同造形方法の各工程を手順に沿って模式的に示す図。
【図3】(a)(b)(c)同造形方法の各工程を手順に沿って模式的に示す図。
【図4】(a)(b)(c)(d)変形例に係る造形方法の各工程を手順に沿って模式的に示す図。
【図5】(a)(b)(c)変形例に係る造形方法の各工程を手順に沿って模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る造形用スラリー及び該造形用スラリーを用いた造形方法の一実施の
形態について、図1〜図3を参照して説明する。
[造形用スラリーの組成]
まず、造形用スラリーの組成について説明する。
【0018】
本実施の形態の造形用スラリーは、次の3つの材料が混練された懸濁物である。
(A)疎水性粒体
(B)疎水性液状体
上記(A)疎水性粒体は、造形用スラリーを用いて形成される造形物の主要な構成材料
である。疎水性粒体には、疎水性の樹脂の粒体、例えばアクリル樹脂粉末、シリコーン樹
脂粉末、アクリルシリコーン樹脂粉末を用いることができる。なお、本実施の形態におけ
る疎水性粒体とは、100gの水に対して0.1g以上溶解しない粒体のことである。
【0019】
上記(B)疎水性液状体は、疎水性粒体と同系のモノマー及びオリゴマーの少なくとも
一方を含むものである。オリゴマーには、単一種のモノマーを2分子以上100分子以下
重合したもの、及び複数種のモノマーを任意の割合で2分子以上100分子以下共重合し
たものが含まれる。
【0020】
なお、ここでいう同系とは、疎水性粒体を構成する繰り返し単位構造の主骨格と、疎水
性液状体の単位構造の主骨格とが同一であることを意味している。また同系とは、該単位
構造における側鎖官能基や該単位構造における主骨格の一部が異なるものの、疎水性液状
体と疎水性粒体との相互作用が疎水性粒体間の相互作用と略同じになる程度に、該単位構
造の主骨格同士が一部重複することを意味している。それゆえに、疎水性粒体及び疎水性
液状体がそれぞれ共重合体である場合には、これらに含まれる原子の組成比が一致してい
ないものも同系であるとする。また、該疎水性液状体とは、100gの水に対して1g以
上溶解しない液状体のことである。
【0021】
他方、疎水性液状体には、撥液基を有する分子を用いるようにしてもよい。疎水性液状
体として、撥液基を有する分子を選択することによって、造形用スラリーに撥液性を付与
することができる。
【0022】
上記2つの材料が混練されたスラリー中では、疎水性粒体と疎水性液状体とが、互いに
共通する構造によって相互作用することから、疎水性の粒体同士は、各々の周囲に存在す
る疎水性液状体を介して互いに相互作用するようになる。そのため、造形物の形成に際し
て、スラリーに振動等が与えられたとしても、疎水性の粒体に対する親和力が疎水性の液
状体から疎水性の粒体に作用する分、該粒体の飛散が抑制されるようになる。
【0023】
また、疎水性液状体として撥液基を有する分子が採用された場合、造形用スラリーに撥
液性が付与されることになる。これにより、例えば該造形用スラリーによって形成された
層の所定領域に疎水性粒体を結着する結着液を浸透させた場合には、該層内において結着
液が濡れ広がること、そして該所定領域から結着液が滲み出すことが抑制される。そのた
め、造形物の形状に係る精度が向上されるようになる。
【0024】
以下に、(A)疎水性粒体及び(B)疎水性液状体の具体例を記載する。
[(A)疎水性粒体]
疎水性粒体としての粉末樹脂材料は、真球形状の粒体を含有していることが好ましい。
これにより、造形物の形状に係る制御性、特に造形物の外形を規定する辺や角部における
形状の制御性が向上する。
【0025】
また、上記粉末樹脂材料を含有するスラリーを用いて公知の積層造形法により造形物を
形成する際には、粉末樹脂材料の粒径が、スラリーにより形成されるスラリー層当りの厚
さ以下であることが好ましい。さらには、スラリー層の厚さの2分の1以下であることが
より好ましい。これにより、スラリー層における粒体の体積充填率を向上させ、ひいては
、造形物の機械的強度を向上させることができる。
【0026】
加えて、粉末樹脂材料には、上記粒径の範囲内で、互いに異なる粒径の粒体が含まれて
いることが好ましい。なお、造形用スラリー中における粒径の分布としては、ガウス分布
(正規分布)に近い分散であってもよいし、最大径側あるいは最小径側に粒径分布の最大
値を有するような分散(片分散)であってもよい。粉末樹脂材料に含まれる粒体の粒径が
単一の値である場合、スラリーを形成したときの該粒体の体積充填率は、最密充填時の理
論値である69.8%を超えることはなく、実際には50〜60%程度の充填率となる。
上述のように、粉末材料中に互いに異なる粒径の粒体が含まれる、言い換えれば粒径が範
囲を持って分布するようにすれば、例えば相対的に大きな粒径を有した粒体同士によって
形成された空隙に、相対的に粒径の小さい粒体が配置されることによって体積充填率が向
上される。これにより、造形物の機械的強度を向上させることができる。
【0027】
例えば、上記スラリー層の厚さが100μmである場合、粉末樹脂材料に含まれる粒体
の粒径は、100μm以下が好ましく、さらには、平均粒径が20μm〜40μmであっ
て、数μm〜から100μm以下の分散を有しているとより好ましい。
【0028】
上記条件を満たす粉末樹脂を以下に列挙する。
シリコーン樹脂粉末材料としては、例えば、トスパール1110(粒径11μm)、ト
スパール120(粒径2μm)、トスパール130(粒径3μm)、トスパール145(
粒径4.5μm)、トスパール2000B(粒径6μm)、トスパール3120(粒径1
2μm)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)(トスパール:登録商標
)等が挙げられる。
【0029】
アクリルシリコーン樹脂粉末としては、例えば、シャリーヌR−170S(粒径30μ
m)(日信化学工業(株)製)(シャリーヌ:登録商標)が挙げられる。
アクリル樹脂としては、例えば、エポスターL15(粒径10〜15μm)、エポスタ
ーM05(粒径4〜6μm)、エポスターGPH40〜H110(粒径4〜11μm)(
(株)日本触媒製)(エポスター:登録商標)が挙げられる。
[(B)疎水性液状体]
疎水性液状体としては、上記疎水性粒体と同系のモノマー及びオリゴマーを用いること
ができる。上述のように、同系とは、疎水性粒体を構成する繰り返し単位構造の主骨格と
、疎水性液状体の単位構造の主骨格とが同一であることを意味している。また同系とは、
該単位構造における側鎖官能基や該単位構造における主骨格の一部が異なるものの、疎水
性液状体と疎水性粒体との相互作用が疎水性粒体間の相互作用と略同じになる程度に、該
単位構造の主骨格同士が一部重複することを意味している。また、上述のように、ここで
用いたオリゴマーは上記単位構造が2分子以上100分子以下重合してなるものである。
【0030】
具体的には、疎水性粒体として上記シリコーン樹脂粉末材料を用いる場合には、その単
位構造であるアルコキシケイ素化合物を用いればよく、また、疎水性粒体としてアクリル
樹脂を用いる場合には、その単位構造であるアクリレートを用いればよい。他方、疎水性
粒体としてアクリルシリコーン樹脂粉末材料を用いる場合には、その単位構造として上記
アクリレートとアルコキシケイ素化合物とのいずれもが含まれることから、疎水性液状体
としてはアクリレートのモノマー及びオリゴマーと、アルコキシケイ素化合物のモノマー
及びオリゴマーのいずれも用いることができる。なお、疎水性液状体としては、上記モノ
マー及びオリゴマーのうち、上記疎水性粒体との相互作用を可能とするために、常温常圧
の条件で流動性を有するものが用いられる。
【0031】
上記条件を満たす疎水性液状体を以下に例示する。
アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、単官能性アクリレート(メチルアクリレー
ト、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソ
ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキ
シルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル
アクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエ
チルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリ
レート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、テトラ
ヒドロフルフリルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート)、2官能性アクリレ
ート(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,4−ブタンジオールアクリレ
ート、1,10−デカンジオールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート
、1,9−ノナンジオールアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリ
プロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート)、及
び3以上の多官能性アクリレート(ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチルプロ
パントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)等の各種アクリ
レートが挙げられる。
【0032】
シリコーン系モノマーとしては、単官能性シリケート(トリメチルメトキシシラン、ト
リメチルエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン)、2官能性シリケート(ジメチル
ジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン)、及び3以上の多官能性シリケート(
メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン)等の各種アルコキシケイ素化合物が挙げ
られる。
【0033】
アクリル系オリゴマーとしては、例えば、BYK−350、BYK−355、BYK−
356、BYK-358N、BYK−361N(ビックケミー・ジャパン(株)製)等が挙げ
られる。これに限らず、上記アクリル系モノマーのうち、一種の分子を2分子以上100
分子以下重合させたオリゴマー、及び複数種の分子を任意の割合で2分子以上100分子
以下共重合させたオリゴマーを用いることができる。
【0034】
シリコーン系オリゴマーとしては、例えば、BYK−301、BYK−302、BYK
−307、BYK−322、BYK−323、BYK−331、BYK−333(ビック
ケミー・ジャパン(株)製)、KF−354L、KF−640、KF−6011(日信化
学工業(株)製)等が挙げられる。これに限らず、上記シリコーン系オリゴマーのうち、
一種の分子を2分子以上100分子以下重合させたオリゴマー、及び複数種の分子を任意
の割合で2分子以上100分子以下共重合させたオリゴマーを用いることができる。
【0035】
上記疎水性粒体としてシリコーン樹脂粉末材料、あるいはアクリルシリコーン樹脂粉末
のいずれかを用いる場合には、上記シリコーン系モノマー及びオリゴマーを用いることが
できる。なお、シリコーン系モノマー及びオリゴマーについては、上記モノマーのいずれ
か、あるいは上記オリゴマーのいずれかを用いるようにしてもよい。また、複数のモノマ
ーを用いる、あるいは複数のオリゴマーを用いるようにしてもよい。さらには、上記モノ
マーとオリゴマーとを組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0036】
他方、疎水性粒体としてアクリル樹脂、あるいはアクリルシリコーン樹脂のいずれかを
用いる場合には、上記アクリル系モノマー及びオリゴマーを用いることができる。なお、
アクリル系モノマー及びオリゴマーについては、上記モノマーのいずれか、あるいは上記
オリゴマーのいずれかを用いるようにしてもよい。また、複数のモノマーを用いる、ある
いは複数のオリゴマーを用いるようにしてもよい。さらには、上記モノマーとオリゴマー
とを組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0037】
また、フッ素を含有するアクリル系モノマーとしては、2,2,2−トリフルオロエチ
ルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,
5H−オクタフルオロペンチルアクリレート等が挙げられる。
[配合比]
上記(A)疎水性粒体としてシャリーヌR−170Sを、(B)疎水性液状体としてア
クリル系オリゴマーであるBYK350を用いるとき、これらの材料を以下の割合で配合
すると好ましい。
(A):(B)=5:1(単位g)
これら材料を混練することにより、造形用スラリーを作成することができる。なお、造
形物において疎水性粒体の充填率が高くなるほど、該造形物における機械的な強度が高め
られる。それゆえに、造形物の機械的な強度を高める上では、疎水性粒体が最密に充填さ
れるべく、最密に充填された疎水性粒体の隙間よりも疎水性液状体の体積が小さくなるよ
うな配合比が好ましい。
[造形方法]
次に、上記造形用スラリーを用いた造形方法について、図1〜図3を参照して説明する

【0038】
図1は、造形方法の各工程を手順に沿って示すとともに、図2及び図3は、上記各工程
にて実施される処理を模式的に示している。
本実施の形態における造形方法では、まず、犠牲層形成工程(ステップS11:図2(
a))にて、例えばガラス基板やプラスチックシート等の基板11上に、例えば厚さが2
00μmになるように、上記スラリーを塗布することによって、スラリーからなる層の最
下層としての犠牲層12を形成する。なお、スラリーの塗布には、公知の方法であるスキ
ージ法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、及びスピンコート法等、基板11上に
略均一な厚さを有したスラリーの層を形成可能な方法を用いることができる。
【0039】
次いで、スラリー層形成工程(ステップS12:(b))にて、厚さが100μmにな
るように、上記スラリーを塗布してスラリー層21aを形成する。なお、スラリー層21
aの形成に際しても、犠牲層12の形成時と同様、上記公知の方法を用いることができる

【0040】
そして、紫外線硬化樹脂滴下工程(ステップS13:図2(c))にて、上記スラリー
層21aにおいて造形物20(図3)の一部を形成するための造形部22aに、液滴吐出
装置31から結着液としての紫外線硬化樹脂を含んだUVインクIを吐出する。
【0041】
上述のように、造形用スラリーは疎水性粒体とこれと同系の疎水性液状体とからなるこ
とから、疎水性粒体各々の周囲に存在する疎水性液状体によって、疎水性粒体同士が相互
作用するようになる。つまり、造形用スラリー中においては、疎水性粒体がこうした相互
作用によって形成された構造中に存在することから、造形物の形成時に、例えば上述のよ
うなUVインクIの吐出等に起因して、スラリー層21aに振動が与えられたとしても、
疎水性粒体が上記構造中に保持される。すなわち、造形物の形成時における、疎水性粒体
の飛散を抑制することができる。
【0042】
上記UVインクIには、カチオンを活性種とする重合反応によって硬化するカチオン重
合型の紫外線硬化樹脂を含むものと、ラジカルを活性種とする重合反応によって硬化する
ラジカル重合型の紫外線硬化樹脂を含むものとがある。本実施の形態においては、これら
のいずれに属するUVインクIも用いることができる。
【0043】
ただし、当該UVインクIは、スラリー層21aの造形部22aに滴下された後、造形
部22aに含まれる疎水性粒体と共々、硬化させるものである。そのため、UVインクI
、特に紫外線硬化樹脂と疎水性粒体とには、相溶性を有する材料を選択することが好まし
い。つまり、UVインクIと疎水性粒体には同系の材料を用いること、例えばアクリル系
のUVインクIと、アクリル樹脂粉末とを用いることが好ましい。あるいは、UVインク
Iと、該UVインクIと同系の材料が表面に導入された疎水性粒体とを用いること、例え
ばアクリル系UVインクとアクリルシリコーン樹脂粉末とを用いることが好ましい。なお
、UVインクIと疎水性粒体とにおける同系とは、疎水性粒体と疎水性液状体とにおける
同系と同義である。
【0044】
加えて、スラリー層21aの形成に用いられる造形用スラリーとは、疎水性粒体と疎水
性液状体とによって構成されるものであることから、疎水性粒体同士が疎水性液状体の介
在によって相互作用しているとはいえ、造形部22aにUVインクIが滴下されると、そ
の浸透によって造形部22a中に含まれる疎水性粒体が、造形部22a外に弾き出されや
すい。この点、造形用スラリーを構成する疎水性粒体とUVインクIに含まれる紫外線硬
化樹脂とを同系とすれば、疎水性粒体が紫外線硬化樹脂に対して有する濡れ性によって、
該疎水性粒体がUVインクIの浸透によって上記造形部22a外に弾き出され難くなる。
そのため、スラリー層21aが硬化されて形成される造形物に含まれる疎水性粒体の低減
を抑制できることから、造形物の機械的強度の低下と造形物の形状不良とを抑制すること
ができる。
【0045】
上記ラジカル重合型の紫外線硬化樹脂としては、アクリル系樹脂、不飽和ポリエステル
系樹脂等が挙げられる。なお、アクリル系樹脂としては、例えば、ポリエステルアクリレ
ート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、及びポリエー
テルアクリレート系樹脂が挙げられる。
【0046】
また、カチオン重合型の紫外線硬化樹脂としては、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂
、ビニルエーテル系樹脂、及び、シリコーン系樹脂が挙げられる。なお、シリコーン系樹
脂としては、アクリルシリコーン系樹脂、ポリエステルシリコーン樹脂、エポキシシリコ
ーン樹脂、及びメルカプトシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0047】
なお、上記各種UVインクIは、各色の顔料を含むようにしてもよい。イエローの顔料
として、例えば、ファストイエロー(C.I.Pigment Yellow 74 )、ジスアゾイエロー(C.
I.Pigment Yellow 16 , C.I.Pigment Yellow 128 )、イソインドリノンイエロー(C.I.
Pigment Yellow 109 )が挙げられる。マゼンタの顔料として、キナクリドンマゼンタ(
C.I.Pigment Red 122 )、無置換キナクリドン(C.I.Pigment Violet 19 )が挙げられる
。シアンの顔料として、例えばフタロシアニンブルー(C.I.Pigment Blue 15:3 , C.I.Pi
gment Blue 15:4 )が挙げられる。ブラックの顔料として例えばカーボンブラックが挙げ
られる。ホワイトの顔料として例えば酸化チタンが挙げられる。また、これら顔料に加え
て、艶消シリコーン粉末等の艶消剤や、蛍光顔料が、上記UVインクIに含まれるように
してもよい。
【0048】
その後、紫外線照射工程(ステップS14:図3(a))にて、上記スラリー層21a
全体に紫外線Lが照射されることによって、造形部22aが硬化される。なお、紫外線L
は、スラリー層21aの全体に照射されなくともよく、少なくともスラリー層21aのう
ちの造形部22aに照射されればよい。また、紫外線Lの照射は、例えば上記液滴吐出装
置31に搭載された紫外線照射装置によって、造形部22aへのUVインクIの滴下と交
互に行うことや、該液滴吐出装置31とは別に設けられた紫外線照射装置によって、スラ
リー層毎に行うこと、あるいは複数のスラリー層に対して一度に行うことができる。
【0049】
ちなみに、本実施の形態においては、疎水性粒体、疎水性液状体、及びUVインクIに
含まれる紫外線硬化樹脂の全てを同系としても、紫外線硬化樹脂による、疎水性粒体及び
疎水性液状体の硬化は、紫外線硬化樹脂が滴下された上記造形部22aにおいてのみ進行
する。これは、上記疎水性液状体としてオリゴマーが用いられる場合には、疎水性粒体間
に介在するオリゴマーの末端同士が、それらの重合が進行するような所定距離以内に配置
され難くなるように、疎水性液状体の配合比が設定されるためである。また、疎水性液状
体としてモノマーが用いられる場合には、該モノマー同士の重合に必要とされるエネルギ
ーが紫外線硬化樹脂の重合に必要とされるエネルギーよりも十分に高くなるように、該モ
ノマーと紫外線硬化性樹脂との組み合わせが選択されるためである。
【0050】
なお、撥液基を有するモノマー及びオリゴマーを疎水性液状体として用いるようにすれ
ば、スラリー層21aの造形部22aに滴下されたUVインクIは、滴下位置における疎
水性粒体の表面に沿って鉛直方向に浸透して、スラリー層21aの厚さ方向と平行な方向
には滲み出し難くなる。また、このような撥液性を有する疎水性液状体を介して疎水性粒
体同士が相互作用しているため、鉛直方向に浸透するUVインクIの流動によって疎水性
粒体が動かされることも無い。そのため、造形部22aの形状、ひいては造形物20の形
状に係る精度が向上されるようになる。
【0051】
上述のようなUVインクIの滴下と紫外線Lの照射により硬化された造形部22aは、
造形物20の一部を構成する。他方、スラリー層21aにおける造形部22a以外の領域
は、同一のスラリー層21aに形成された造形部22aや、スラリー層21aの上部のス
ラリー層21b等に形成される造形部22b等を機械的に支持するサポート部23aとし
て機能するようになる。これにより、例えば、図3(b)に示されるように、上層の造形
部22bが下層の造形部22aよりも、積層方向に垂直な方向に張り出している張り出し
部を有する造形物20を形成する場合であっても、張り出し部を支持するサポート部を別
途形成する必要がない。また、張り出し部の下層にスラリー層が存在する状態で造形物2
0の形成が行われることから、造形物20の形成途中において突起部が欠けることを抑制
できる。なお、上記紫外線硬化樹脂滴下工程と紫外線照射工程とから結着工程が構成され
る。
【0052】
上記スラリー層形成工程(ステップS12)から上記紫外線照射工程(ステップS14
)までの3工程は、造形物20を構成する造形部の全てが形成されるまで繰り返し実施さ
れる。例えば、図3(b)に示されるように、造形物20が5層のスラリー層21a,2
1b,21c,21d,21eから構成される場合、上記3工程が順に5回繰り返される
。このように、層形成工程から紫外線照射工程までの4工程を順に繰り返すことにより、
複数の層から構成される積層体を形成することができるため、当該造形方法によって形成
される造形物20の形状に係る自由度が高くなる。
【0053】
造形物20を構成する造形部22a,22b,22c,22d,22eが全て形成され
ると、サポート部除去工程(ステップS15:図3(c))にて、スラリー層21a,2
1b,21c,21d,21eの積層体から、サポート部23a,23c,23d,23
eが除去される。サポート部23a,23c,23d,23eの除去は、上記基板11と
ともに積層体を液体中、例えば有機溶媒中に浸すこと、積層体に有機溶媒を所定の圧力で
吹き付けること等によって行うことができる。なお、スラリー層21a,21b,21c
,21d,21eを構成する造形用スラリーは、疎水性粒体及び疎水性液状体からなると
はいえ、造形用スラリー中においては、これらが相互作用しているのみであることから、
サポート部23a,23c,23d,23eの除去に際しては、上記有機溶媒ではなく、
例えば水等の水系の液体を用いることもできる。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態に係る造形用スラリー、及び該スラリーを用いた造
形方法によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)造形用のスラリーが疎水性粒体とこれと同系の疎水性液状体とからなるようにし
た。これにより、造形物20の形成に際してスラリーに振動等が与えられたとしても、疎
水性粒体液状体の介在による疎水性粒体同士の相互作用によって形成された構造中に保持
されることで、該粒体の飛散が抑制されるようになる。
【0055】
(2)造形用スラリーを構成する疎水性粒体及び疎水性液状体と、UVインクIに含ま
れる紫外線硬化樹脂とを同系とした。これにより、紫外線硬化樹脂に対して疎水性粒体が
有する濡れ性により紫外線硬化樹脂中に疎水性粒体が取り込まれやすくなるため、疎水性
粒体がスラリー層21a,21b,21c,21d,21eの造形部22a,22b,2
2c,22d,22e外に弾き出され難くなる。それゆえに、造形物20の機械的強度の
低下や造形物の形状不良が抑制される。
【0056】
(3)造形用スラリーの構成要素である疎水性液状体がフッ素を含有するようにしても
よい。これにより、当該造形用スラリーに撥液性を付与することができる。そのため、造
形物20の形成に際して、スラリー層の造形部22aにUVインクIを浸透させた場合、
その浸透領域からUVインクIが滲み出すことを抑制できる。それゆえに、こうしたUV
インクIによって結着された粒体及び液状体によって形成される造形物20の形状に係る
精度を向上させることができる。
【0057】
なお、上記実施の形態は、以下のように適宜変更して実施することも可能である。
・上記結着液は、紫外線硬化樹脂を含むUVインクIに限らず、熱硬化樹脂を含む液状
体に具現化することもできる。
【0058】
・スラリー層21a,21b,21c,21d,21eの造形部22a,22b,22
c,22d,22eにUVインクIを滴下した後に、紫外線Lを照射するようにした。こ
れに限らず、例えばスラリー層21bのように、層全体が造形部22bとなる場合には、
スラリー層21bを形成することなく、造形部22bをUVインクIのみによって形成す
るようにしてもよい。
【0059】
・上記犠牲層12は、スラリーのみによって形成するようにした。これに限らず、犠牲
層12の全体に、離散的にUVインクIを滴下して、造形物20の基板への固定強度を高
める固定部12aを形成するようにしてもよい。こうした固定部12aを用いた造形方法
の詳細について、図4及び図5を参照して以下に説明する。
【0060】
まず、基板11上に例えば200μmとなるようにスラリーを塗布して犠牲層12を形
成する(図4(a))。犠牲層12の全体に、液滴吐出装置31を用いてUVインクIを
離散的に滴下する(図4(b))。UVインクIを、該UVインクIが浸透した領域の疎
水性粒体と共々硬化させて固定部12aを形成する。なお、このUVインクIの硬化は、
図4(b)に示されるUVインクIの離散的な滴下の直後に行ってもよいし、犠牲層12
上に形成されるスラリー層21aの造形部22aの硬化と同時に行ってもよい。また、固
定部12aは、犠牲層12の直上に形成されるスラリー層21aにおける造形部22aの
領域の直下に少なくとも形成されていればよい。
【0061】
次いで、犠牲層12上に、例えば100μmのスラリー層21aを形成した後に(図4
(c))、スラリー層21aの造形部22aに液滴吐出装置31によってUVインクIを
滴下する(図4(d))。そして、スラリー層21aの全体に紫外線Lを照射することに
よって、造形部22aを硬化させる(図5(a))。上記スラリー層の形成、UVインク
Iの滴下、及び造形部の硬化を例えば5回繰り返す(図5(b))。
【0062】
最後に、造形部22a,22b,22c,22d,22eの周囲のサポート部23a,
23c,23d,23eを除去する(図5(c))。このとき、固定部12aも含んで犠
牲層12を基板11から剥離する。なお、犠牲層12に形成された固定部12aのうち、
サポート部23aの直下に形成された固定部12aは、サポート部23aを除去すること
で取り除くことができる。一方、造形部22aの直下に形成された固定部12aについて
は、機械的あるいは化学的に取り除く必要がある。
【0063】
こうして犠牲層12中に固定部12aを設けることにより、造形物20を形成する造形
部22aが、より安定に基板11によって支持されるようになる。
・造形物20を構成するスラリー層21a,21b,21c,21d,21eの形成に
先立ち、基板11上に犠牲層12を形成するようにしたが、該犠牲層12を形成しないよ
うにしてもよい。
【0064】
・造形物20は、5層のスラリー層21a,21b,21c,21d,21eによって
形成されるものを例示した。これに限らず、造形物20を構成する層の数は、一以上の任
意の数とすることができる。また、各スラリー層に形成される構造物の形状も任意である

【0065】
・樹脂粒体は、造形物20の形状制御が可能であれば、真球以外の形状、例えば楕円体
形状等をなしていてもよい。
・スラリーに、例えばアセテート繊維等の繊維材料を含有させてもよい。これにより、
スラリーを用いて形成した造形物の機械的強度を向上させることができる。
【0066】
・上記UVインクIに含まれる紫外線硬化樹脂は、疎水性流体及び疎水性液状体と同系
でなくともよい。
・疎水性粒体は樹脂からなる粒体に限らず、他の疎水性粒体、例えば表面に疎水性を有
したシリコン酸化物等の粒体であってもよい。
【0067】
・UVインクIは、液滴吐出装置31によってスラリー層21a,21b,21c,2
1d,21eに滴下されるようにした。これに限らず、スラリー層21a,21b,21
c,21d,21eにUVインクIを浸透させることの可能な方法であれば、適宜採用可
能である。
【符号の説明】
【0068】
11…基板(基体)、12…犠牲層、12a…固定部、20…造形物、21a,21b
,21c,21d,21e…スラリー層、22a,22b,22c,22d,22e…造
形部、23a,23c,23d,23e…サポート部、31…液滴吐出装置、I…UVイ
ンク、L…紫外線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形物を粒体で形成するための造形用スラリーであって、
前記造形物を構成する疎水性の粒体と、
前記造形物を構成するとともに、疎水性の粒体と同系であるモノマー及びオリゴマーの
少なくとも一方からなる分散媒としての疎水性の液状体と
を含有する造形用スラリー。
【請求項2】
請求項1に記載の造形用スラリーにおいて、
前記疎水性の粒体は、アクリル樹脂からなり、
前記疎水性の液状体は、アクリレート化合物からなる
ことを特徴とする造形用スラリー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の造形用スラリーにおいて、
前記疎水性の液状体は撥液基を有する
ことを特徴とする造形用スラリー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の造形用スラリーにおいて、
繊維材料を含有する
ことを特徴とする造形用スラリー。
【請求項5】
結着液を介して粒体同士を結着することにより造形物を形成する造形方法であって、
疎水性の粒体と、該疎水性の粒体と同系のモノマー及びオリゴマーの少なくとも一方か
らなる疎水性の液状体とを含むスラリーからなる層を基体に形成する層形成工程と、
液状の結着液を前記層の一部に浸透させた後に該結着液を硬化することによって、前記
粒体及び前記疎水性の液状体を結着する結着工程と、
前記硬化された前記結着液を含む前記層に液体を流すことによって、前記結着液が浸透
した領域以外を前記層から取り除く除去工程と
を含むことを特徴とする造形方法。
【請求項6】
請求項5に記載の造形方法において、
前記疎水性の粒体、前記疎水性の液状体、及び前記結着液が同系である
ことを特徴とする造形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−246574(P2011−246574A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120203(P2010−120203)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】