説明

造影剤を注入するためのデバイス

本発明は、少なくとも2つの別体の容器であって、これらの容器の一方および/または両方の内部で中味が混じり合わない容器と、注入器と、前記容器と前記注入器を交互に連通させるように配置された分波器とを含んでなる、造影剤を注入するための医療デバイスであって、0.2〜5Hzの周波数で前記交互の連通を提供するための手段を含むことを特徴とする医療デバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、造影剤を注入することによって得られる医用描写法の技術分野であり、より詳しくは、X線画像処理、CTスキャナまたはMRI画像処理のための多少希釈した造影剤の注入の技術分野である。
【背景技術】
【0002】
造影剤を希釈することを目的として生理食塩水と同時に造影剤を2つのシリンジから一緒に注入することのできるシリンジ駆動式注入器を使用することは現時点で既に知られている。
【0003】
特許文献1、2がこのようなデバイスを記載している。特許文献3が、生理食塩水に放射性化合物を交互に注入するための機構(オン/オフ弁)を記載している。したがって、この機構は、生理食塩水内の放射性化合物を(希釈するというよりもむしろ)溶離する方法を取り扱う。この溶離方法(より詳しくは溶離制御方法)は、放射性化合物の放射能の制御を提供する。この放射能が検出器のところで弱すぎる場合、生理食塩水は放射性化合物を収容しているリザーバに入り、溶離によって放射性化合物を或る量吸収する。検出器によって測定された放射能が目標値に戻るとすぐに弁が閉じて、生理食塩水を「迂回」管路にのみ通す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7267667号
【特許文献2】米国特許第5911252号
【特許文献3】米国特許出願第2007/213848号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては、上記問題に対する解決策は、分析されるべき臓器および/または画像獲得の瞬間に分析されている臓器の領域に、時間の過程と共に造影剤の濃度が変化するように造影剤を注入することにある。
【0006】
本発明は、いくつかの利点を提供する。特に、並列で用いられている2つの注入器に頼ることなく、より低いコストでかつ患者に対するより低いリスク(特にエラーおよび/または汚染のリスク)でもって画像獲得に一致する正確な瞬間に臓器内で上記のような濃度変更を行う能力を提供する。
【0007】
ここで、本発明が、混合(したがって、所望の濃度)が心臓に達する前に行われるように造影剤の濃度が生理食塩水/造影剤の注入を交互に行うことによって変えられるという点で米国特許出願第2007/213848号の教示と異なっていることに注目されたい。
【0008】
本発明は、患者への注入ポイントの下流側に設定した、注入液の性質または濃度の変化の結果としての、たとえば超音波を使用する血管外漏出検出信号の増幅にも適用され得る。したがって、液体が関係のある血管に実際に注入されており、その注入中に注射針が患者の静脈から引き抜かれた場合にいかなる潜在的な血管外漏出も確実に排除することが可能である。血管外漏出検出器が使用されている場合、信号が多少一定であるため、時には信号を確実に正確に測定することがもはや不可能になる(偽陽性になる、または偽陰性にさえなる)。注入の過程で液体の性質を変えること(測定された信号における変化に相当する)によって、そして、この測定された変化と注入シーケンスとの間にあるかもしれない任意の一致を使用することによって、血管外漏出検出器が正確に作動し、そのことから注入流が正常であることを推測し、いかなる血管外漏出をも排除するということを確保することが可能となる。2つの交互の液体の注入周波数の関数として変化するこの信号を測定するのに失敗する事象においては、このことから測定プローブが誤って配置されているか、または、血管外漏出が生じているか、または、この両方を原因として注入が中断していると推測することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
以下の図に示される実施例により本発明を以下により詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】種々の可能性ある組み合わせを特徴とする注入器プログラミング・インターフェースの一例を示し、図1Aには、造影剤、生理食塩水または希釈液(「diluject」)の注入のいずれかを選ぶオプションを示す。
【図1B】種々の可能性ある組み合わせを特徴とする注入器プログラミング・インターフェースの一例を示し、図1Bには、希釈オプション(15%、20%、25%または30%)を示す。
【図1C】種々の可能性ある組み合わせを特徴とする注入器プログラミング・インターフェースの一例を示し、図1Cには、ダイアグラムにおける希釈相を示す。
【図2】AおよびBは15%の希釈および4ml/sの流量で得られた画像を示し(2Aおよび2B)、そして、心臓における最適な希釈を示し、この例における心臓の右側と左側での濃度の差を示す。
【図3】A〜C(Aは一定の希釈、Bは流量および周波数を変えた希釈、Cは異なった流量での2つの希釈例)は、異なった希釈モードを備えた注入サイクルの例を示す。
【図4A】本発明を実施するのに使用し得る注入器を示す。
【図4B】本発明を実施するのに使用し得る注入器を示す。
【0011】
本発明の目的の一つは、関係する臓器においてそれぞれの画像(まず心臓の左側、次に心臓の右側)が獲得されると同時に、または、関係する臓器においてそれぞれの画像が獲得されるそれぞれの瞬間に分析されつつある臓器の解剖および動作に関するデータの獲得を改善することができるようにするために(心臓の場合、中隔、冠状血管を観察し、心臓の駆出率をより良好に計算し、これを行うために心臓の左側が好ましくは造影剤で満たされ、心臓の右側が造影剤希釈液で満たされていることを知るために)、目標臓器(たとえば、患者の心臓の右側)に達する前に(2種類の造影剤を用いるか、または、1種類の造影剤と生理食塩水または検査中に造影剤に何ら影響を与えない任意他の溶液(たとえば、非ヨード化薬剤溶液)とを用いるかのいずれかによって)造影剤希釈を得ることにある。
【0012】
これを行うために、本発明では、好ましくは、造影剤の患者の静脈への注入相と生理食塩水またはより低い濃度の造影剤の注入相とを交互に連続的に行う。これの目的は、分析しようとしている心臓または臓器に達する前に患者の心血管系内で生じる可能性のある種々の相の混ぜ合わせを得ることにある。本発明は、CTスキャンまたはMRIで有利に用いられ得る。効果的な希釈を得るためには、注入周波数が、目標臓器に達する前に患者の心血管系において混ぜあわせが生じ得るのに充分である必要がある。心臓の場合、心臓の周波数に非常に近い周波数を用いることが望ましい。代表的には1Hzのオーダーであるが、5Hz〜0.2Hzも有効であり得る。
【0013】
したがって、複式の注入器で投与を行い、コストをより低くすると共に、無菌状態およびエラーに関して常にリスクを示す接続および操作をより少なくして、2種類の濃度の異なった溶液(または1つの造影剤溶液および1つの生理食塩水)に接続した単一の注入器を用いて患者の身体内で直接希釈を行うことが可能となる。
【0014】
代表的には、心臓で得られるべき所望パーセンテージの希釈が選ばれ得る(たとえば、15%、20%、25%または30%の希釈)。このことは、25%の場合、ちょうど25%の造影剤と75%の生理用食塩水があることを意味する。25%希釈の場合、たとえば、1mlの造影剤の相に続いて3mlの生理食塩水の相を選ぶことが可能になる。これら2つの相は、注入しようとしている全容量に従って繰り返されるサイクルを表す(たとえば、20ml注入の場合、上述の例では5回の連続サイクルが実施されることになる)。この場合の流量は、生理食塩水および造影剤溶液(たとえば、4ml/s)について同じである。あるいは、同じ希釈効果を得るために流量を変化させることも可能であるが、この場合、容量は変わる。したがって、上述の例においては、3ml生理食塩水相の代わりに1.5ml相を用いてもよく、その場合、流量は半分に減らす(上記例では、4ml/sの代わりに2ml/s)。造影剤溶液の流量を変え、目標臓器における造影剤比率を変える効果を有する他の組み合わせを実施するように選ぶことも可能である。任意適当な数学的形態を採用できるアルゴリズム用いて、検査中および/または画像獲得期間中に変化する濃度についての動的画像を得るために、各サイクルにおいて生理食塩水および造影剤のそれぞれの流量および/または容量をたとえば累進的に変化させることを選ぶことも可能である。
【0015】
このようなデバイスを製造するためには、たとえばリザーバの各々と注入デバイス(たとえば、蠕動式カセット)の間に設けたクランプの開閉を指令することによって2つのリザーバを交互に管理できるプロセッサを使用することが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの別体のリザーバであり、それぞれの中味がいずれか一方のリザーバで互いに混じり合うことができないようになっているリザーバ、注入器、および該リザーバを該注入器と交互に連通させるように配置された方向制御弁を含んでなる、造影剤を注入するための医療デバイスであって、最低2回の連続サイクルにつき0.2〜5Hzの周波数で該交互の連通を生じさせる手段を含んでなることを特徴とする、上記医療デバイス。
【請求項2】
周波数が約1Hzである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
周波数が時間と共に変化し得る、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
同じリザーバで0.1〜5mlの連続的な流れを可能にするように設計されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項5】
1つのリザーバが造影剤を収容し、他のリザーバが生理食塩液を収容する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
各リザーバがそれに特有の濃度で造影剤を収容する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項7】
リザーバの注入器との連通が0.2〜5Hzの周波数で交互に行われることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療デバイスの使用。
【請求項8】
前記周波数が約1Hzである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
同じリザーバで0.1〜5mlの連続的な流れが可能にされる、請求項7または8に記載の使用。
【請求項10】
交互の注入毎に5ml未満の容量が1つのリザーバから注入される、請求項7〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
心臓内に造影剤を注入するための請求項7〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
血管外漏出検出信号を増幅するための請求項7〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
特定の瞬間に注入器中の造影剤の濃度を変化させるための請求項7〜12のいずれか1項に記載の使用であって、ただ1つの注入器が使用されることを特徴とする、上記使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2013−505049(P2013−505049A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529382(P2012−529382)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054114
【国際公開番号】WO2011/033440
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512070654)スイス・メディカル・ケア (1)
【Fターム(参考)】