説明

造影剤入り医療用チューブ

【課題】フッ素樹脂製チューブにおけるチューブ色の色調にばらつきを抑えた造影剤入り医療用チューブを提供すること。
【解決手段】本発明の造影剤入りカテーテルチューブ1は、末端基がフッ素化されているフッ素樹脂により形成されている。これにより、本発明の造影剤入りカテーテルチューブ1では、末端基がフッ素化されているためフッ素樹脂自体に反応性はなく、また、フッ素イオンの溶出量も少ないことから、造影剤との反応が起こらず、造影剤入りカテーテルチューブの色調にばらつきを生じることなく、造影剤の色調が保たれるものと推測される。特に、フッ素樹脂として、末端基にCFを有するPFA、造影剤として、酸化ビスマスを用いることにより、チューブ色を淡い黄色にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造影剤が入った医療用チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
造影剤入り医療用チューブの例であるカテーテルチューブは、例えば、人体内に挿入して血管、消化管、気管、尿道等に薬剤を注入したり、体内に溜まった膿等を排出するための管状の器具である。このカテーテルチューブを人体内に挿入する際は、X線で透視しながらチューブ先端を目的部位まで到達させる必要があるため、カテーテルチューブには造影剤が混入されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−192229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のカテーテルチューブは、チューブ材料としてフッ素樹脂が用いられ、造影剤として酸化ビスマスや硫酸バリウム等が混入されている。例えば、酸化ビスマスが混入されたフッ素樹脂でなるカテーテルチューブは、酸化ビスマスの色が黄色であることからチューブ色も淡い黄色となる傾向にある。
【0005】
ところが、チューブの色調にばらつき(変色)が生じるという問題がある。特に、チューブ色が灰色に近い色となった場合は、このカテーテルチューブが汚染されている、或いは劣化が生じているという誤解を与え易い。このため、該カテーテルチューブを人体内に挿入することに対し抵抗があるため、チューブ色の色調のばらつきを抑えたカテーテルチューブが要望されている。
【0006】
この問題を解決するために、本発明者は、鋭意、研究、開発を続けた結果、チューブ色の色調におけるばらつきがフッ素樹脂によるものということを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、チューブ色の色調にばらつきを抑えた造影剤入り医療用チューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、本発明の造影剤入り医療用チューブでは、末端基がフッ素化されているフッ素樹脂により形成されていることを特徴としている。特に、前記フッ素樹脂としては、末端基にCFを有するフッ素化(安定化)されたテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、PFAという)、前記造影剤としては、酸化ビスマスが望ましい。
【0009】
これにより、本発明の造影剤入り医療用チューブでは、末端基がフッ素化(安定化)されているためフッ素樹脂自体に反応性はなく、また、フッ素イオンの溶出量も少ないことから、造影剤との反応が起こらず、従って、造影剤入り医療用チューブの色調にばらつきが生じることなく、造影剤の色調が保たれるものと推測される。
【0010】
特に、フッ素樹脂として、末端基にCFを有するフッ素化(安定化)されたテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、造影剤として、酸化ビスマスを用いることにより、チューブ色を淡い黄色に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(A)および(B)は、本発明の造影剤入り医療用チューブの実施形態の斜視図およびチューブ原料の一例を示す化学式である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の成立に必須であるとは限らない。
【0013】
図1(A)、(B)は、本発明の造影剤入り医療用チューブの実施形態の斜視図およびチューブ原料を示す化学式である。この造影剤入りカテーテルチューブ1は、チューブ原料として末端基がフッ素化(安定化)されている(末端基をフッ素ガス等で処理する、いわゆるフッ化処理が行われている)フッ素樹脂に造影剤を混入して押出し成形することにより形成されている。
【0014】
フッ素樹脂としては、末端基にCFを有するPFA、末端基にCFを有するテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコ共重合体(FEP)が望ましい。また、造影剤としては、酸化ビスマス、硫酸バリウム、次炭酸ビスマスが望ましい。また、末端基がフッ素化(安定化)された末端基のCFは、末端基すべてに存在するものでも、一部に存在しないものでもよいが末端基の多くの部分に存在する方が好ましい。具体的には、本願発明では、使用するフッ素樹脂の全質量の1/3以上が末端基が完全にフッ素化(安定化)されたフッ素樹脂であることが好ましく、より好ましくは全質量の1/2以上が末端基が完全にフッ素化(安定化)されたフッ素樹脂であることが好ましい。更には、全質量の2/3以上が末端基が完全にフッ素化(安定化)されたフッ素樹脂であれば、なお好ましい。
【0015】
末端基がフッ素化されていないフッ素樹脂には、反応性のあるアミド基(−CONH2)やカルビノール基(−CHOH)などが含まれている。また、これらの不安定な末端基からフッ素イオンが生じることがある[例えば、PFA或いはFEPでは、その共重合の際に使用する重合開始剤や分子量調整剤に由来する(−CONH)、(−CHOH)等の熱的に不安定な基が分子末端等に存在し、溶融成形時の熱により分解して(−COF)を生成する。この(−COF)が水と接触すると加水分解してフッ素イオンを溶出することがある]。これらの不安定な末端基もしくはフッ素イオンが、造影剤である酸化ビスマス(Bi)と反応し、Bi(OH)やBiFなどの化合物が生成している可能性がある。酸化ビスマスは黄色であるが、Bi(OH)やBiFの化合物は白色である。このため、フッ素樹脂の不安定な末端基もしくはフッ素イオンが酸化ビスマスのような造影剤と反応しフッ素樹脂チューブにおけるチューブ色の色調が変化すると推測される。
【0016】
これに対し、末端基がフッ素化されているフッ素樹脂は、末端基がフッ素化(安定化)されていないフッ素樹脂と比較して、樹脂自体の反応性は極めて低い。また、末端基が安定しているため、末端基がフッ素化(安定化)されていないフッ素樹脂と比較して、フッ素イオンの溶出量も極めて少ない。よって、造影剤との反応が起こらず、造影剤の色調が保たれる(造影剤自身の色に保たれる)ものと推測される。
【0017】
特に、フッ素樹脂として、末端基にCFを有するPFA、造影剤として、酸化ビスマスを用いることにより、チューブ色を淡い黄色にすることができる。具体的には、末端基にCFを有するPFAとして、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製 420HP−Jや旭硝子株式会社製P−62XPTに酸化ビスマスを混合したカテーテルチューブ1を製作したところ、何れもチューブ色は淡い黄色となり、チューブ色の色調の変化は確認できなかった。
【符号の説明】
【0018】
1 カテーテルチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端基が安定化されているフッ素樹脂により形成されていることを特徴とする造影剤入り医療用チューブ。
【請求項2】
前記フッ素樹脂は、末端基にCFを有するテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体であり、前記造影剤は、酸化ビスマスであることを特徴とする請求項1に記載の造影剤入り医療用チューブ。

【図1】
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