説明

造影剤

含ヨウ素化合物を含む診断用組成物を提供する。含ヨウ素化合物は、2つのヨウ素化フェニル基が連結した、式R−CO−N(R1)−X−N(R1)−CO−Rの化合物及びその塩又は光学異性体である。式中、一方のR1は水素原子又は適宜1〜4個の−OH基で置換されたC1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であり、他方のR1は1〜4個の−OH基で置換されたC1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であり、Xは1〜6個のOH基で置換された炭素原子数3〜10のアルキレン基であって、適宜3個以下の炭素原子が酸素原子で置き換えられていてもよく、各Rはトリヨウ素化フェニル基、好ましくは2つのRA基でさらに置換された2,4,6−トリヨウ素化フェニル基であり、各RAは水素原子又は非イオン性親水性基であるが、1以上のRA基が親水性基であることを条件とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一群の化合物並びにかかる化合物を含む診断用組成物に関するものであり、これらの化合物は含ヨウ素化合物である。具体的には、含ヨウ素化合物は、2つのヨウ素化フェニル基が連結した化合物である。
【0002】
本発明は、画像診断法、特にX線撮像における造影剤としてのかかる診断用組成物の使用並びにかかる化合物を含む造影製剤にも関する。
【背景技術】
【0003】
すべての画像診断は体内の様々な構造から異なる信号レベルを得ることに基づいている。例えばX線撮像では、ある身体構造を画像として視覚化するため、その構造によるX線の減衰と周囲の組織での減衰とが異なっていなければならない。身体構造と周囲の信号の差はコントラストと呼ばれ、身体構造とその周囲とのコントラストが大きいほど画像の質が高く、診断を行う医者に有用であるので、画像診断でのコントラストを高める手段について多大な検討がなされてきた。さらに、コントラストが大きいほど、その撮像操作で小さな身体構造を視認できるようになり、換言すれば、コントラストの増強によって空間解像度を高めることができる。
【0004】
診断のための画像の質はその撮像法の固有ノイズレベルによって大きく左右されるので、コントラストレベルとノイズレベルの比が診断用画像についての有効な診断品質係数を表すことが分かる。
【0005】
かかる診断品質係数を向上させることは、古くからのしかも今もって重要な目標である。X線、磁気共鳴イメージング(MRI)及び超音波のような技術において、診断品質係数を向上させる一つの方法は撮像すべき身体領域に造影剤として処方されたコントラスト増強剤を導入することである。
【0006】
例えばX線では、初期の造影剤の例は、造影剤が分配された身体領域のX線の減衰を高める不溶性無機バリウム塩であった。過去50年間、X線造影剤の分野では可溶性含ヨウ素化合物が主流となっている。ヨウ素化造影剤を含む市販の造影製剤は、通常、ジアトリゾ酸(例えば、Gastrografen(商標)という商品名で市販)のようなイオン性単量体、イオキサグレート(例えば、Hexabrix(商標)という商品名で市販)のようなイオン性二量体、イオヘキソール(例えば、Omnipaque(商標)という商品名で市販)、イオパミドール(例えば、Isovue(商標)という商品名で市販)、イオメプロール(例えば、Iomeron(商標)という商品名で市販)のような非イオン性単量体、及び非イオン性二量体のイオジキサノール(Visipaque(商標)という商品名で市販)に分類される。
【0007】
上記に挙げたような広く使用されている市販の非イオン性X線造影剤は安全であると考えられている。ヨウ素化造影剤を含む造影製剤は米国では毎年二千万件を超えるX線検査に使用されているが、副作用の数は許容範囲内であると考えられている。しかし、コントラスト増強X線検査には総投与量で最大約200mlもの造影剤が必要とされるため、改良造影製剤を提供することが絶えず求められている。
【0008】
造影剤の有用性は、その毒性、診断面での有効性、造影剤が投与された患者での副作用、及び保存の容易さと投与の容易さによって大きく支配される。かかる造影剤は直接的な治療効果を達成するためではなく診断用に用いられるので、細胞又は身体の各種の生物学的機構にできるだけ影響を与えない造影剤を提供することが一般に望まれる。毒性が低く、臨床副作用が少ないからである。造影剤の毒性及び生物学的副作用は、製剤の成分(例えば溶媒又は担体並びに造影剤自体及びその成分、例えばイオン性造影剤のイオンなど)及びその代謝物に起因する。
【0009】
造影製剤の毒性の主な寄与因子は、造影剤の化学毒性、造影製剤の浸透圧、及び造影製剤のイオン組成又はその欠乏であると確認されている。
【0010】
ヨウ素化造影剤の望ましい特性は、化合物自体の毒性(化学毒性)が低いこと、化合物が溶解した造影製剤の粘度が低いこと、造影製剤の浸透圧が低いこと、及びヨウ素含有量(投与用の造影製剤1ml当たりのヨウ素g数として測定されることが多い)が高いことである。ヨウ素化造影剤は、さらに、製剤媒体(通常は水性媒体)に完全に溶解し、かつ保存中に溶解した状態を保つものでなければならない。
【0011】
市販品、特に非イオン性化合物の浸透圧は、二量体及び非イオン性単量体を含む大半の製剤については許容範囲内にあるが、依然として改善の余地がある。例えば冠動脈造影では、ボーラス投与量の造影剤を循環系に注入した結果深刻な副作用が起きている。この方法では、血液ではなく造影剤が循環系に短時間流れ、造影剤と置換された血液との化学的及び生理化学的性状の差によって、不整脈、QT延長、心筋収縮力の低下のような望ましくない副作用を起こしかねない。かかる副作用は特にイオン性造影剤で認められ、注入された造影剤の高浸透圧性に浸透圧毒性作用が付随している。体液と等張又は体液よりもわずかに低張の造影剤が特に望ましい。低浸透圧の造影剤は低い腎毒性を有するが、これは特に望ましい。浸透圧は、造影製剤の単位体積当たりの粒子数の関数である。
【0012】
急性腎不全患者において、造影製剤に起因する腎症は、ヨウ素化造影製剤の使用による臨床的に最も重要な合併症の一つである。Aspelin, P et al, The New England Journal of Medicine, Vol.348: 491−499 (2003)では、造影製剤に起因する腎症は、ハイリスク患者では低浸透圧の非イオン性造影製剤よりもイオジキサノールを使用した方が発症の可能性が低いと結論づけられている。
【0013】
ハイリスク患者と考えられる患者の数は増加する傾向にある。患者全体のためのインビボX線診断薬の改良の必要性を満たすため、造影剤起因性腎症(CIN)の点でも、特性の改良されたX線造影剤を見出すことが絶えず求められている。
【0014】
造影剤の注入量をできるだけ低く保つため、ml当たりのヨウ素濃度の高い造影製剤であって、その浸透圧が依然として低いレベル、好ましくは等張以下の造影製剤を処方することが大いに望まれる。非イオン性単量体造影剤、特にイオジキサノール(欧州特許出願公開第108638号)のような非イオン性ビス(トリヨードフェニル)二量体の開発によって、浸透圧毒性が低減し、低張液でコントラスト増強に有効なヨウ素濃度を達成できる造影製剤がもたらされ、さらに、造影製剤Visipaque(商標)を所望の浸透圧に維持しつつ、血漿イオンの配合によってイオンの不均衡を補正することもできる(国際公開第90/01194号及び同第91/13636号)。
【0015】
高ヨウ素濃度の市販X線造影製剤は、室温で約15〜約60mPasの比較的高い粘度を有する。一般に、コントラスト増強剤が二量体である造影製剤は、コントラスト増強剤が上記二量体の対応単量体である造影製剤よりも高い粘度を有する。このような高い粘度は造影製剤の投与に際して問題となりかねず、内径の比較的大きい針又は高い注入圧が必要とされ、特に小児X線撮影並びに血管造影のように急速ボーラス投与が必要とされるX線撮影技術で顕著である。
【0016】
2つのトリヨウ素化フェニル基が連結基で連結された化合物を活性医薬成分として含有するX線造影製剤は、二量体造影剤又は二量体と呼ばれる。過去、多種多様なヨウ素化二量体が提案されている。特許文献としては、欧州特許出願公開第1186305号、同第686046号、同第108638号、同第0049745号、同第0023992号、国際公開第2003/080554号、同第2000/026179号、同第97/000240号、同第92/08691号、米国特許第3804892号、同第4239747号、同第3763226号、同第3763227号及び同第3678152号が挙げられる。現在、ヨウ素化非イオン性二量体を活性医薬成分として有する1つの造影製剤、すまわちイオジキサノールを含有する製剤Visipaque(商標)が上市されている。イオン性二量体化合物であるイオキサグル酸を含有するHexabrix(商標)も上市されている。
【0017】
Dibra及びBraccoの国際公開第92/08691号には、対称又は非対称1,3−ビス−[3−(モノ−又はポリ−ヒドロキシ)アシルアミノ−5−(モノ−又はポリ−ヒドロキシアルキル)アミノカルボニル−2,4,6−トリヨード−ベンゾイル−アミノ]−ヒドロキシ又はヒドロキシアルキル−プロパンが提案されており、そうした化合物として数多くのものが例示されている。表1及び表2には、特許明細書の実施例1及び実施例10の化合物の幾つかの試験結果が記載されている。。しかし、国際公開第92/08691号に記載された化合物で実際に開発され、上市されたものは存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】欧州特許出願公開第108638号明細書
【特許文献2】国際公開第90/01194号
【特許文献3】国際公開第91/13636号
【特許文献4】欧州特許出願公開第1186305号
【特許文献5】欧州特許出願公開第686046号
【特許文献6】欧州特許出願公開第0049745号
【特許文献7】欧州特許出願公開第0023992号
【特許文献8】国際公開第2003/080554号
【特許文献9】国際公開第2000/026179号
【特許文献10】国際公開第97/00240号
【特許文献11】国際公開第92/08691号
【特許文献12】米国特許第3804892号明細書
【特許文献13】米国特許第4239747号明細書
【特許文献14】米国特許第3763226号明細書
【特許文献15】米国特許第3763227号明細書
【特許文献16】米国特許第3678152号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Aspelin, P et al, The New England Journal of Medicine, Vol.348: 491−499 (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
そこで、上述の1以上の問題が解決される造影剤の開発が依然として望まれている。かかる造影剤は、理想的には、腎毒性、浸透圧、粘度、溶解度、注入量/ヨウ素濃度及び減衰/放射線量、さらにはかかるヨウ素化合物で知られているか或いは見出されている副作用の1以上の特性において、市販の可溶性含ヨウ素化合物に比して向上した特性を有しているべきである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、上述の基準の1以上、特に、腎毒性、浸透圧、粘度及び溶解度に関して望ましい特性を有する造影製剤として有用な化合物を提供する。造影製剤は含ヨウ素コントラスト増強化合物を含んでおり、含ヨウ素化合物は、2つのヨウ素化フェニル基が結合した化合物である。含ヨウ素コントラスト増強化合物は、市販の比較的安価な原料から合成できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の新規化合物、それらのX線造影剤としての使用、処方及び製造については、特許請求の範囲及び以下の明細書で説明する。
【0023】
コントラスト増強化合物は、次の式(I)の合成化合物並びにその塩及び光学異性体である。
【0024】
R−CO−N(R1)−X−N(R1)−CO−R (I)
式中、
一方のR1は水素原子又はC1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であって適宜1〜4個の−OH基で置換されていてもよく、他方のR1は1〜4個の−OH基で置換されたC1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であり、
Xは1〜6個のOH基で置換された炭素原子数3〜10のアルキレン基であって、適宜3個以下の炭素原子が酸素原子で置き換えられていてもよく、
各Rは独立に同一又は異なるもので、トリヨウ素化フェニル基、好ましくは、2つのRA基でさらに置換された2,4,6−トリヨウ素化フェニル基であり、各RA基は、式(I)の化合物の1以上のRA基が親水性基であることを条件として、同一又は異なるもので、水素原子又は非イオン性親水性基である。
【0025】
式(I)において、Xは、好ましくは、1〜3個の−OH基で置換された直鎖C3〜C5のアルキレン鎖である。さらに好ましくは、Xは1以上の−OH基を有する直鎖C3〜C5のアルキレン鎖であり、好ましくは、ヒドロキシル基は、架橋窒素原子に隣接していない位置にある。さらに好ましくは、アルキレン鎖は1又は2個のヒドロキシル基で置換されている。特に好ましいX基は、2−ヒドロキシプロピレン、2,3−ジヒドロキシブチレン及び2,4−ジヒドロキシペンチレンである。
【0026】
1置換基は同一でも異なるものでもよいが、1以上のR1が1以上のヒドロキシル置換基を有することを条件とする。一方のR1は、好ましくは、水素原子、C1〜C3非置換直鎖又は枝分れアルキレン基又は1〜3個のヒドロキシル基で置換されたC2〜C4直鎖又は枝分れアルキレン基であり、該分子における他方のR1置換基は1〜3個のヒドロキシル基で置換されたC2〜C4直鎖又は枝分れアルキレン基である。
【0027】
さらに好ましくは、R1置換基の一方は、水素原子、メチル基、2−ヒドロキシエチル基又は2,3−ジヒドロキシプロピル基であり、該分子における他方のR1置換基は、2−ヒドロキシエチル基又は2,3−ジヒドロキシプロピル基である。
【0028】
各ヨウ素化R基は同一でも異なるものでもよいが、好ましくは2,4,6−トリヨウ素化フェニル基であってフェニル基の残りの3位及び5位がさらに2つのRA基で置換されたものであり、RA基のうちの1以上は非イオン性親水性基を含む。
【0029】
非イオン性親水性基は、水溶性を高めるために従来から使用されている非イオン性基のいずれであってもよい。そこで、RA置換基は同一でも異なるものでもよいが、好ましくはすべてがエステル、アミド及びアミン基を含む非イオン性親水性基であり、適宜、直鎖又は枝分れ鎖C1-10アルキル基、好ましくはC1-5アルキル基でさらに置換されていてもよく、該アルキル基は1以上のCH2又はCH基が酸素又は窒素原子で適宜置き換えられていてもよい。RA置換基は、オキソ、ヒドロキシル、アミノ又はカルボキシル誘導体並びにオキソ置換硫黄及びリン原子から選択される1以上の基をさらに含んでいてもよい。直鎖又は枝分れ鎖アルキル基は、好ましくは1〜6個のヒドロキシ基、さらに好ましくは1〜3個のヒドロキシ基を含む。したがって、さらに好ましい態様では、RA置換基は同一又は異なるもので、モノ及びポリヒドロキシC1-5アルキル、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルコキシアルキル及び炭素原子数1〜5のヒドロキシポリアルコキシアルキルであり、アミド又はカルバモイル結合を介してヨウ素化フェニル基と結合している。
【0030】
以下に示す式のRA基が特に好ましい。
−CONH−CH2−CH2−OH、
−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、
−CON(CH3)CH2−CHOH−CH2OH、
−CONH−CH−(CH2−OH)2
−CON−(CH2−CH2−OH)2
−CONH2
−CONHCH3
−NHCOCH2OH、
−N(COCH3)H、
−N(COCH3)C1-3アルキル、
−N(COCH3)−モノ、ビス又はトリス−ヒドロキシC1-4アルキル、
−N(COCH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリス−ヒドロキシC1-4アルキル、
−N(CO−CHOH−CH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリヒドロキシル化C1-4アルキル、
−N(CO−CHOH−CHOH−CH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリヒドロキシル化C1-4アルキル、
−N(COCH2OH)2
−CON(CH2−CHOH−CH2−OH)(CH2−CH2−OH)、
−CONH−C(CH2−OH)3、及び
−CONH−CH(CH2−OH)(CHOH−CH2−OH)。
【0031】
さらに一段と好ましくは、RA基が同一又は異なるものであって、式−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、−CON(CH3)CH2−CHOH−CH2OH、−CONH−CH−(CH2−OH)2、−CON−(CH2−CH2−OH)2、−NHCOCH2OH、−N(COCH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリス−ヒドロキシC1-4アルキル、及び−N(CO−CHOH−CH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリヒドロキシル化C1-4アルキルの1以上の基である。好ましくは、各R基の一方のRA基はアミド基で、他方のRA基はカルボキサミド基である。
【0032】
さらに一段と好ましくは、2つのR基が同一であり、各R基のRA基が異なっていて、−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH及び−NHCOCH2OHである。
【0033】
したがって、本発明の好ましい構造としては、式(II)の化合物及びその塩又は光学異性体が挙げられる。
【0034】
【化1】

式中、
一方のR1は水素原子又はC1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であって適宜1〜4個の−OH基で置換されていてもよく、他方のR1は1〜4個の−OH基で置換されたC1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であり、
各R2は独立に同一又は異なるもので、水素原子又はC1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であり、
各R3は独立に同一又は異なるもので、水素原子又はC1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であって適宜1〜4個の−OH基で置換されていてもよく、
各R4は独立に同一又は異なるもので、C1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であって適宜1〜3個の−OH基で置換されていてもよく、
各R5は独立に同一又は異なるもので、C1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であって適宜1〜3個の−OH基で置換されていてもよく、
Xは1〜6個のOH基で置換された炭素原子数3〜10の直鎖アルキレン基であり、適宜3個以下の炭素原子が酸素原子で置き換えられていてもよい。
【0035】
式(II)において、R1置換基の一方は、好ましくは、水素原子、メチル基、2−ヒドロキシエチル基又は2,3−ジヒドロキシプロピル基であり、該分子における他方のR1置換基は、2−ヒドロキシエチル基又は2,3−ジヒドロキシプロピル基である。
【0036】
2基は、各々好ましくは、水素原子及び/又はメチル基である。さらに、各R2基は好ましくは同一であり、最も好ましくは各R2基は水素原子である。
【0037】
3基は各々好ましくは水素原子又はメチル基である。さらに、各R3基好ましくは同一であり、最も好ましくは、各R3基は水素原子である。
【0038】
置換基R4は、各々好ましくは、モノ−、ジ−及びトリ−ヒドロキシル化C1〜C5直鎖アルキル基であり、該アルキル基はω位にヒドロキシル基を有しており、該アルキル基のα位は置換されていない。さらに好ましくは、R4はモノ−又はジ−ヒドロキシル化プロピル基及び/又はヒドロキシエチル基である。さらに一段と好ましくは、R4基は同一であり、最も好ましくは2,3ジ−ヒドロキシプロピル基である。
【0039】
置換基R5は、好ましくはモノ、ジ−及びトリ−ヒドロキシル化C1〜C5直鎖アルキル基であり、該アルキル基はω位にヒドロキシル基を有する。さらに好ましくは、R5はジ−若しくはトリ−ヒドロキシル化プロピル基、モノ−若しくはジ−ヒドロキシエチル基又はヒドロキシメチルである。
【0040】
リンカー基Xは、好ましくは、1〜3個のOH基で置換された直鎖プロピレン、ブチレン又はペンチレン基であり、好ましくは、ヒドロキシル基は、架橋窒素原子に隣接していない位置にある。さらに好ましくは、アルキレン鎖は1又は2個のヒドロキシル基で置換されている。特に好ましくは、X基は2−ヒドロキシプロピレン、2,3−ジヒドロキシブチレン及び2,4−ジヒドロキシペンチレンであり、最も好ましくは2−ヒドロキシプロピレンである。
【0041】
したがって、本発明の好ましい構造としては、以下の式(IIIa)〜(IIIe)の化合物が挙げられる。
【0042】
【化2】

市販のヨウ素化造影剤の一般的な濃度である320mg/mlのヨウ素濃度では、式(I)の化合物の濃度は約0.42Mである。このヨウ素濃度において本造影剤は低浸透圧でもあり、これは造影剤の腎毒性に関して有益な特性である。国際公開第90/01194号及び同第91/13636号に記載されているように心血管系作用を低下させるため造影剤に電解質を添加してもよい。
【0043】
式(I)の化合物には、光学異性体も包含され、キラル炭素に起因する幾つかの異性体が存在し得る。さらに、本化合物は、嵩高いヨウ素原子が近接しているためアミド結合の回転が制限されることに起因するエキソ/エンド異性を示す。純粋な鏡像異性体も光学異性体の混合物も包含される。
【0044】
本発明の化合物は造影剤として使用でき、慣用の担体及び賦形剤と共に製剤化して診断用造影剤を製造することができる。
【0045】
そこで、別の態様では、本発明は、上述の式(I)の化合物を、生理学的に許容される1種以上の担体又は賦形剤と共に(例えば血漿イオン又は溶存酸素を適宜添加した注射用水溶液中に)含む診断用組成物を提供する。
【0046】
本発明の造影剤組成物は そのまま使用できる濃度のものでも、投与前に希釈される濃縮物であってもよい。一般に、そのまま使用できる形態の組成物のヨウ素濃度は100mg/ml以上、好ましくは150mg/ml以上であるが、300mg/ml以上、例えば320mg/mlが好ましい。ヨウ素濃度が高いほど、造影剤のX線減衰の形で診断的価値は高まる。ただし、ヨウ素濃度が高いほど、組成物の粘度及び浸透圧は高くなる。一般に、所与の造影剤での最大ヨウ素濃度は、コントラスト増強剤(例えばヨウ素化合物)の溶解度、並びに粘度及び浸透圧の認容限度によって決まる。
【0047】
注射又は点滴で投与される造影製剤では、室温(20℃)での溶液の粘度の望ましい上限は約30mPasであるが、最大50〜60mPas、さらには60mPasを超える粘度も許容できる。血管造影法などにおいてボーラス注射で投与される造影製剤では、浸透圧毒性作用を考慮しなければならず、好ましくは浸透圧は1Osm/kgH2O未満、好ましくは850mOsm/kgH2O未満、さらに好ましくは約300mOsm/kgH2O未満とすべきである。
【0048】
本発明の化合物は、かかる粘度、浸透圧及びヨウ素濃度の目標を満たすことができる。実際、低張液で有効なヨウ素濃度を達成することができる。したがって、ボーラス注射後の不均衡作用に起因する毒性寄与を低減するため、血漿陽イオンの添加によって溶液の張度を補うのが望ましいこともある。かかる陽イオンは、望ましくは国際公開第90/01194号及び同第91/13636号で示唆された範囲で配合し得る。
【0049】
特に、すべてのヨウ素濃度で血液と等張な造影製剤を与えるためナトリウム及びカルシウムイオンの添加が望ましい。血漿陽イオンは、生理学的に許容される対イオン(例えば、塩素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭酸水素イオンなど)との塩の形態で与えることができるが、血漿陰イオンを使用するのが好ましい。
【0050】
式(I)の化合物を含む造影製剤は、注射又は点滴(例えば、血管内投与)によって投与できる。別法として、式(I)の化合物を含む造影製剤は経口投与することもできる。経口投与用には、造影製剤はカプセル、錠剤又は液剤の形態を取り得る。
【0051】
別の実施形態では、本発明は、式(I)の化合物を含む診断薬、並びに式(I)の化合物を薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に含む診断用組成物を提供する。これらの診断薬及び診断用組成物は、好ましくはX線診断に使用される。
【0052】
そこで、本発明には、式(I)の化合物を含む診断薬及び診断用組成物のX線造影検査における使用、並びにX線造影剤として使用される診断用組成物の製造のための式(I)の化合物の使用も包含される。
【0053】
式(I)の化合物をヒト又は動物の身体に投与し、身体を診断装置で検査し、検査データをコンパイルすることを含む診断方法も提供する。本診断法において、身体には式(I)の化合物を予め投与しておいてもよい。
【0054】
さらに、撮像、特にX線撮像方法も提供するが、当該方法は、式(I)の化合物をヒト又は動物の身体に投与し、身体を診断装置で検査し、検査データをコンパイルし、適宜データを解析することを含む。本撮像法において、身体には式(I)の化合物を予め投与しておいてもよい。
【0055】
調製
一般式(I)の化合物は、当技術分野で公知又は市販の原料から多段階法で合成することができるし、或いは市販の原料から容易に製造できる。トリヨウ素化フェニル基R及びその前駆体は市販されているし、
式(I)及び(II)の化合物は、以下の一般法で合成することができる。
【0056】
【化3】

Aldrich社から市販の5−アミノ−2,4,6−トリヨード−イソフタル酸を塩化チオニルで処理して、対応5−アミノ−2,4,6−トリヨード−イソフタロイルジクロライドを形成させる。
【0057】
次いで、5−アミノ−2,4,6−トリヨード−イソフタロイルジクロライドを、Aldrich社から市販のアセトキシアセチルクロライドと反応させて、所望のN−アシル誘導体(2)を形成させる。次いで、N−アシル−アミノ−2,4,6−トリヨード−イソフタロイルジクロライドを、3−アミノ−1,2−プロパンジオールのような適当なアミンと反応させ、所望のモノアミド誘導体(3)を形成させる。最後に、1,3−ビス−(2−ヒドロキシ−エチルアミノ)−プロパン−2−オール(調製例A)のような適当なN,N′−二置換ジアミン誘導体を所望のモノアミド(3)と反応させた後、保護基を加水分解することにより、二量体(4)を形成する。
【0058】
中間体の調製:
【0059】
【化4】

調製例A
1,3−ビス−(2−ヒドロキシ−エチルアミノ)−プロパン−2−オール
【0060】
【化5】

1,3−ジクロロプロパン−2−オール(1mL,10.5mmol)とエタノールアミン(3mL,49.7mmol)を80℃で一晩加熱した。反応混合物を室温まで放冷した。混合物にMeOH(100mL)、次いでトリエチルアミン(6.7mL,48mmol)及びジ−tert−ブチルジカーボネート(7.25mL,31.5mmol)を添加した。反応混合物を80℃に1時間加熱し、次いで室温で一晩撹拌した。メタノールを減圧下で除去し、固形物を酢酸エチルと水とに分配させた。有機層を水洗(2×100mL)し、MgSO4で乾燥し、濾過し、蒸発させた。粗製物を、石油エーテル:酢酸エチルで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して、所望の生成物{3−[tert−ブトキシカルボニル−(2−ヒドロキシ−エチル)−アミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−(2−ヒドロキシ−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(670mg,1.77mmol)を得た。構造は以下の通り確認した。質量分析(ESI)m/z:C173427の理論値:[M]+378.470、実測値379.17、1H NMR(CDCl3;300MHz)δ=5.63(br s,1H);4.00−3.00(m,12H)、1.26(s,18H)。
【0061】
{3−[tert−ブトキシカルボニル−(2−ヒドロキシ−エチル)−アミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−(2−ヒドロキシ−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(670mg,1.77mmol)を次いで2M HCl(4mL)中で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去して、所望の1,3−ビス−(2−ヒドロキシ−エチルアミノ)−プロパン−2−オール(255mg,1.43mmol)を得た。構造は以下の通り確認した。質量分析(ESI)m/z:C71823の理論値:[M]+178.233、実測値179.17、1H NMR(メタノール−D3;300MHz)δ=4.38−4.28(m,1H);3.84(t,4H,J=5.19);3.32−3.28(m,2H);3.27−3.18(m,4H);3.16−3.00(m,2H)。
【0062】
この手順で、次の化合物を始めとする式(6)の様々な化合物を調製できる。
【0063】
3−[3−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルアミノ)−2−ヒドロキシ−プロピルアミノ]−プロパン−1,2−ジオール
【0064】
【化6】

構造は以下の通り確認した。質量分析(ESI)m/z:C92225の理論値:[M+H]+239.286、実測値239.14。1H NMR(メタノール−D3;300MHz)δ=4.43−4.30(m,1H);4.04−3.94(m,2H);3.68−3.53(m,4H);3.36−3.24(m,5H);3.19−3.07(m,4H)。
【0065】
【化7】

調製例B
ベンジル−メチル−オキシラニルメチル−アミンは、J. Med. Chem., 2007, 50(17), 4243−4249に記載の通り調製した。
【0066】
【化8】

調製例C
1−(ベンジル−メチル−アミノ)−3−[(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イルメチル)−アミノ]−プロパン−2−オール
【0067】
【化9】

N−ベンジル−N−メチル−1−オキシラン−2イルメタナミン(1.77g,9.99mmol)をマイクロ波管に入れて、無水エタノール(25mL)に溶解した。2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタナミン(1.94mL,14.98mmol)を管に加えて、CEM Discover Microwave Synthesizer Explorer Carousel内に配置した。試料を撹拌しながら140℃で10分間加熱した。エタノールを減圧下で除去し、粗製物を、酢酸エチル:メタノール:アンモニア(9:1:0.1)で溶出するカラムクロマトグラフィーで精製して、所望の1−(ベンジル−メチル−アミノ)−3−[(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イルメチル)−アミノ]−プロパン−2−オール(1.2g,3.89mmol)を得た。構造は以下の通り確認した。質量分析(ESI)m/z:C172823の理論値:[M+H]+308.424、実測値309.07。1H NMR(CDCl3;300MHz)δ=7.34−7.20(m,5H);4.27−4.16(m,1H);4.06−3.99(m,1H);3.90−3.79(m,1H);3.68−3.59 9m,2H);3.47(d,1H,J=12.93Hz);2.80−2.30(m,8H);2.23(s,3H);1.39(s,3H);1.36(s,3H)。13C NMR(CDCl3;300MHz)δ=138.35;128.96;128.27;127.16;109.09;75.33;67.56;66.52;62.52;60.96;52.66;52.59;42.21;26.86;25.40。
【0068】
この手順で、次の化合物を始めとする式(7)の様々な化合物を調製できる。
【0069】
1−(ベンジル−メチル−アミノ)−3−(2−ヒドロキシ−エチルアミノ)−プロパン−2−オール
【0070】
【化10】

構造は以下の通り確認した。質量分析(ESI)m/z:C132222の理論値:[M+H]+238.332、実測値239.05,1H NMR(CDCl3;300MHz)δ=7.34−7.20(m,5H);4.00−3.99(m,1H);3.70−3.30(m,4H);3.0−2.20(m,9H);2.23(s,3H)。13C NMR(CDCl3;300MHz)δ=138.30;129.03;128.32;127.22;66.60;63.39;62.58;61.04;60.73;51.43;51.32;43.66;42.23。
【0071】
調製例D
1−[(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イルメチル)−アミノ]−3−メチルアミノ−プロパン−2−オール
【0072】
【化11】

1−(ベンジル−メチル−アミノ)−3−[(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イルメチル)−アミノ]−プロパン−2−オール(1.2g,3.89mmol)をエタノール(20mL)に溶解した。10mLのエタノールを用いてPd/Cをスラリーとし、反応混合物に添加した。混合物を次いでParr水添装置に配置し、水素を30Psiで加え、室温で2日間攪拌した。反応混合物をセライトで濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、所望の1−[(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イルメチル)−アミノ]−3−メチルアミノ−プロパン−2−オール(739mg,3.38mmol)を得た。構造は以下の通り確認した。1H NMR(CDCl3;300MHz)δ=4.24−4.13(m,1H);4.04−3.96(m,1H);3.78−3.68(m,1H);3.67−3.58(m,1H);2.75−2.44(m,9H);2.39(s,3H);1.37(s,3H);1.30(s,3H)。13C NMR(CDCl3;300MHz)δ=109.12;75.24;67.42;67.35;55.56;53.66;52.47;36.30;26.82;26.79。
【0073】
この手順で、次の化合物を始めとする式(8)の様々な化合物を調製できる。
【0074】
1−(2−ヒドロキシ−エチルアミノ)−3−メチルアミノ−プロパン−2−オール
【0075】
【化12】

構造は以下の通り確認した。質量分析(ESI)m/z:C61622の理論値:[M+H]+148.207、実測値149.04,1H NMR(メタノールD−3;300MHz)δ=4.35−4.25(m,1H);3.83(t,2H,J=6Hz),3.35−3.02(10H),2.76(s,3H)。13C NMR(メタノールD−3;300MHz)δ=63.84;57.57;52.91;50.79;50.55;33.95。
【0076】
調製例E
5−アミノ−2,4,6−トリヨード−イソフタロイルジクロライドをジメチルアセトアミド(DAMc)に溶解し、アセトキシアセチルクロライド(2当量)のDMAc溶液を攪拌しながらゆっくりと添加した。反応混合物を一晩撹拌し、翌日、混合物を、撹拌氷水中にゆっくりと注いだ。沈殿を濾別し、乾燥して、所望の材料を得た。
【0077】
この手順で、以下の化合物を始めとする式(2)の様々な化合物を調製できる。
【0078】
酢酸(3,5−ビス−クロロカルボニル−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル)−メチルエステル
【0079】
【化13】

構造は1H NMR(CDCl3,300MHz)で確認した:10.43(br s,1H);4.71(s,2H);2.11(s,3H)。
【0080】
酢酸2−アセトキシ−1−(3,5−ビス−クロロカルボニル−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル)−エチルエステル
【0081】
【化14】

構造は1H NMR(CDCl3,300MHz)で確認した:10.45(br s,1H);4.49−4.30(m,3H);2.13(s,6H)。
【0082】
酢酸2,3−ジアセトキシ−1−(3,5−ビス−クロロカルボニル−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル)−プロピルエステル
【0083】
【化15】

構造は1H NMR(CDCl3,300MHz)で確認した:8.08(br s,1H);5.75−5.50(m,2H);4.49−4.10(m,2H);2.29(s,3H);2.11(s,3H);2.09(s,3H)。
【0084】
調製例F
前段階で得た二酸塩化物を、窒素雰囲気下の乾燥フラスコ内のDMACに溶解した。トリエチルアミン(2当量)を溶液に添加し、直後に3−メチルアミノ−プロパン−1,2−ジオール(2当量)を添加した。一晩撹拌した後、反応混合物を濃縮乾固し、残渣をシリカゲルを用いたクロマトグラフィーで精製して、所望の生成物を得た。
【0085】
この手順で、以下の化合物を始めとする式(3)の様々な化合物を調製できる。
【0086】
酢酸{3−クロロカルボニル−5−[(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−メチル−カルバモイル]−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル}−メチルエステル
【0087】
【化16】

構造は1H NMR(DMSO−D6,300MHz)で確認した:10.4(br s,1H);4.70(s,2H);3.89−3.83(m,1H);3.75−3.67(m,1H);3.51−3.42(m,2H);3.25−3.15(m,1H);2.85(s,3H);2.15(s,3H)。
【0088】
酢酸2−アセトキシ−1−{3−クロロカルボニル−5−[(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−メチル−カルバモイル]−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル}−エチルエステル
【0089】
【化17】

構造は1H NMR(DMSO−D6,300MHz)で確認した:10.4(br s,1H);4.70−4.65(m,3H);3.89−3.83(m,1H);3.75−3.67(m,1H);3.51−3.42(m,2H);3.25−3.15(m,1H);2.85(s,3H);2.15(s,6H)。
【0090】
酢酸2,3−ジアセトキシ−1−{3−クロロカルボニル−5−[(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−メチル−カルバモイル]−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル}−プロピルエステル
【0091】
【化18】

構造は1H NMR(DMSO−D6,300MHz)で確認した:10.4(br s,1H);5.63−5.60(m,2H);4.40−4.05(m,2H);4.0−2.60(m,2H);3.46(m,2H);3.30−3.05(m,1H);2.85(s,3H);2.26(s,3H);2.08(s,3H);2.02(s,3H)。
【0092】
調製例G
酢酸(3,5−ビス−クロロカルボニル−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル)−メチルエステル(20g,25.5mmol)を、乾燥DMA(100ml)に溶解し、2,2,−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタナミン(6.62ml、51mmol)を添加した。反応は窒素下で室温で24時間攪拌した。反応混合物を、酢酸エチルで希釈し、氷−水(50ml×3)及び食塩水で洗浄した。有機層を回収し、MgSO4で乾燥し、濾過し、蒸発させて、褐色の油を得た。これを、石油:酢酸エチルで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して、酢酸{3−クロロカルボニル−5−[(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イルメチル)−カルバモイル]−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル}−メチルエステル(13.85g,17.5mmol)を桃色固形物として得た。
【0093】
この手順で、次の化合物を始めとする式(3)の様々な化合物を調製できる。
【0094】
酢酸{3−クロロカルボニル−5−[(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イルメチル)−カルバモイル]−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル}−メチルエステル
【0095】
【化19】

構造は以下の通り確認した。質量分析(ESI)m/z:C1818ClN27の理論値:[M+H]+791.520、実測値790.84,1H NMR(DMSO;300MHz)δ=10.35−10.15(m,1H,NH),9.03−8.87(m,1H,NH),4.70(s,2H),4.25(m,1H),4.07(m,1H),3.79(m,1H),3.50−3.10(m,2H),2.15(s,3H),1.36(s,3H),1.23(s,3H)。
【0096】
酢酸2−アセトキシ−1−[3−クロロカルボニル−5−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル]−エチルエステル
【0097】
【化20】

構造は以下の通り確認した。質量分析(ESI)m/z:C2122ClN29の理論値:[M+H]+863.594、実測値862.75,1H NMR(CDCl3;300MHz)δ=6.39(s,br,1H,NH),5.63(s,br,1H,NH),4.64(m,1H),4.50(m,1H),4.35(m,1H),3.78−3.65(m,2H),3.42(m,1H),2.28(d,3H),2.08(s,3H),(s,3H),1.43(s,3H),1.33(s,3H)。
【0098】
調製例H
Aldrich社から入手できる5−アミノ−2,4,6−トリヨードイソフタル酸(50g,89.5mol)を、50℃で濃硫酸(200ml)にゆっくりと溶解した。得られた紫色溶液を、温度を40〜50℃に維持しながら、ホルムアルデヒド(38重量%、100ml)に滴下した。溶液を50℃で2時間攪拌した後、冷却した。混合物を氷水(3L)に注ぎ、固形物を濾過によって回収し、50℃の真空オーブンで7日間乾燥して、2,4,6−トリヨード−5−メチルアミノ−イソフタル酸(55.3g)を得た。質量分析(ESI)m/z:[M+H]+=574.36。13C NMR(DMSO;300MHz)δ=169.84,152.75,149.44,90.49,80.00,35.55。
【0099】
2,4,6−トリヨード−5−メチルアミノ−イソフタル酸(50g,87.3mmol)を、70℃の塩化チオニル(275ml、1.41mol)及びDMF(1ml)中で72時間撹拌した。塩化チオニルを減圧下で除去し、得られた固形物を、酢酸エチル(400ml)と氷水(200ml)とで分配した。有機層を回収して、MgSO4で乾燥し、濾過し、蒸発乾固させた。生成物を、石油:酢酸エチルで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して、2,4,6−トリヨード−5−メチルアミノ−イソフタロイルジクロライド(30.93g,50.7mmol)を得た。
【0100】
この手順で、次の化合物を始めとする式(1)の様々な化合物を調製できる。
【0101】
2,4,6−トリヨード−5−メチルアミノ−イソフタロイルジクロライド
【0102】
【化21】

構造は13C NMR(DMSO;300MHz)で確認した。δ=169.42、154.03、149.85、89.82、75.23、35.58。
【0103】
調製例I
2,4,6−トリヨード−5−メチルアミノ−イソフタロイルジクロライド(20g,32.8mmol)を、DMA(60ml)に溶解し、アセトキシアセチルクロライド(15.32ml、142mmol)を添加した。反応混合物に窒素を吹込みながら反応液を室温で一晩撹拌した。反応混合物を氷−水(300ml)にゆっくりと注ぎ、濾過によって白色固形物を単離した。固形物を酢酸エチルに溶解し、水洗した。酢酸エチル層を回収し、MgSO4で乾燥し、濾過し、蒸発させて、白色固形物を得た。これを、石油:酢酸エチルで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して、酢酸[(3,5−ビス−クロロカルボニル−2,4,6−トリヨード−フェニル)−メチル−カルバモイル]−メチルエステル(16.25g,22.9mmol)を得た。
【0104】
この手順で、次の化合物を始めとする式(1)の様々な化合物を調製できる。
【0105】
酢酸[(3,5−ビス−クロロカルボニル−2,4,6−トリヨード−フェニル)−メチル−カルバモイル]−メチルエステル
【0106】
【化22】

構造は以下の通り確認した。質量分析(ESI)m/z:[M+H]+=710.73。1H NMR(CDCl3;300MHz)δ=4.32(s,2H),3.26(s,3H),2.13(s,3H)13C NMR(CDCl3;300MHz)δ=170.11,165.19,151.89,147.88,95.91,84.21,62.39,34.17,20.47。
【0107】
調製例J
酢酸[(3,5−ビス−クロロカルボニル−2,4,6−トリヨード−フェニル)−メチル−カルバモイル]−メチルエステル(16.25g,22.9mmol)及び3−メチルアミノ−1,2,−プロパンジオール(4.42ml、45.8mmol)を、室温のDMA(80ml)中で72時間撹拌した。混合物を酢酸エチル(150ml)で希釈し、氷水/食塩水(50:50、20ml×3)で洗浄した。有機層を回収し、MgSO4で乾燥し、濾過し、蒸発乾固させた。生成物を、DCM:メタノールで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して、酢酸({3−クロロカルボニル−5−[(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−メチル−カルバモイル]−2,4,6−トリヨード−フェニル}−メチル−カルバモイル)−メチルエステル(5.42g,6.96mmol)を得た。
【0108】
この手順で、次の化合物を始めとする式(3)の様々な化合物を調製できる。
【0109】
酢酸({3−クロロカルボニル−5−[(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−メチル−カルバモイル]−2,4,6−トリヨード−フェニル}−メチル−カルバモイル)−メチルエステル
【0110】
【化23】

構造は質量分析(ESI)で確認した。m/z:[M+H]+=778.72。
【0111】
調製例K
N−(ヒドロキシエチル)−アミノ−2,3−プロパンジオール
【0112】
【化24】

市販のグリシドール(0.17mol、11ml)を、0℃で、撹拌エタノールアミン(1当量、1.4mol、84.3ml)に滴下した。添加が完了したら、一晩撹拌しながら、反応物を室温まで温めた。生成物を蒸留した(最初にエタノールアミンを60℃、1Torrで蒸留し、所望生成物は170℃、1Torrで蒸留した)。生成物は透明油として得られ、冷却すると透明で粘稠なシロップ状となった(0.122mol、収率=72%)。
【0113】
構造は13C NMR(D2O;300MHz)で確認した。δ=50.21,50.86,60.36,64.20,70.63。1H NMR(D2O;300MHz)δ=2.55−2.75(m,4H)3.45−3.7(m,4H)3.75−3.85(m,1H)
調製例L
2−[(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル−メチル)−アミノ]−エタノール
【0114】
【化25】

N−(ヒドロキシエチル)−アミノ−2,3−プロパンジオール(16.5g,122mmol)を、ジオキサン中HCl溶液(33.5ml、134mmol)で処理した。この溶液に、2,2−ジメトキシプロパン(15.3g,147mmol)、DMAC(50mL)及び触媒量のp−トルエンスルホン酸(0.006mol、1.16g)を添加した。混合物を室温で24時間撹拌した。トリエチルアミン(1mL)を加え、ロータリエバポレーターで溶媒を除去した。粘稠な粗混合物を、トリエチルアミン(30mL)及び酢酸エチル(500mL)に溶解し、室温で30分間撹拌した。混合物を濾過し、回収した固形物を酢酸エチルで数回洗浄した。濾液を、40℃で高真空ロータリエバポレーターで蒸発させて、黄色の液体(0.122mol、99%収率)を得た。
【0115】
構造はNMRで確認した。1H NMR(D2O;300MHz)δ=1.40(s,3H)1.46(s,3H)2.75−2.8(m,4H)3.7−3.75(m,3 H)4.17(dd,1H)4.37(dd,1H)。
【0116】
調製例M
酢酸2−アセトキシ−1−{3−クロロカルボニル−5−[(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イルメチル)−(2−ヒドロキシ−エチル)−カルバモイル]−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル}−エチルエステル
【0117】
【化26】

無水DMAC(20ml)中の酢酸2−アセトキシ−1−(3,5−ビス−クロロカルボニル−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル)−エチルエステル(20g,0.026mol)の氷冷溶液に、DMAC(20mL)中の2−[(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル−メチル)−アミノ]−エタノール(4.6g,0.026mol)の溶液、次いでトリエチルアミン(約3g)を滴下した。混合物を室温で24時間撹拌した後、氷水(0.75リットル)に注いだ。白色沈殿が生じた。これを回収し、冷水で洗浄した。濾過ケークを酢酸エチルに溶解し、食塩水で洗浄した。有機層を回収し、MgSO4で乾燥し、濾過し、蒸発乾固させた。生成物を、石油エーテル/酢酸エチルで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーで精製した。80%酢酸エチルで接近して溶出する2つのピークをNMR及び質量分析で分析すると、両方とも所望の材料を含んでいることが判明した。分析後にこれらを一緒にして、所望の生成物(10mmol、収率=38%)を得た。
【0118】
構造は以下の通り確認した。質量分析(ESI)m/z:C2326Cl I3210の理論値:[M+H]+906.64、実測値906.93。1H NMR(CDCl3;300MHz)δ=1.33(2s,3H)1.45(2s,3H)2.02(s,3H)2.26(s,3H)3−3.5(m,4H)3.5−3.9(m,3H)3.9−4.3(m,2H)4.5(m,1H)4.6−4.8(m,2H)5.62(NH 一重線,1H)
この手順で、次の化合物を始めとする式(3)の様々な化合物を調製できる。
【0119】
酢酸{3−クロロカルボニル−5−[(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イルメチル)−(2−ヒドロキシ−エチル)−カルバモイル]−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル}−メチルエステル
【0120】
【化27】

構造は以下の通り確認した。質量分析(ESI)m/z:C2022Cl I328の理論値:[M+H]+834.57、実測値834.93。1H NMR(CDCl3;300MHz)δ=1.33(2s,3H)1.48(2s,3H)2.26(s,3H)3−3.5(m,3H)3.5−4.3(m,5H)4.4(m,1H)4.76(1H NH)
調製例N
(2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチル−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【0121】
【化28】

2−アミノ−1,3−プロパンジオール(5.0g,54.9mmol)を乾燥THF(175ml)に溶解し、トリエチルアミン(7.7ml)を添加した。溶液を氷浴中で冷却し、ジ−tert−ブチルカーボネート(11.98g,54.9mmol)を15分かけて少量ずつ加えた。溶液を室温まで温め、90分間撹拌した。溶媒を蒸発させ、水(250ml)を加え、生成物を酢酸エチル(4×125ml)に抽出した。有機層を一緒にして食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発させた。生成物を、熱酢酸エチル−石油(1:3)から再結晶して単離すると、光沢のあるフレーク5.18g(49%収率)が得られた。
【0122】
構造は1H NMR(300MHz,CDCl3)で確認した:1.44(s,9H),3.08−3.17(m,1H),3.61−3.84(m,4H)。
【0123】
調製例O
酢酸3−アセトキシ−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−プロピルエステル
【0124】
【化29】

(2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチル−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(5.0g,26.1mmol)をピリジン(50ml)に溶解し、無水酢酸(50ml)を添加した。溶液を室温で24時間撹拌したところ、TLCで出発材料が残存してないことが判明した。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチル(120ml)に溶解し、希塩酸(3×50ml)、重炭酸ナトリウム溶液(50ml)、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発させて、無色の油(7.2g,99%収率)を得た。
【0125】
構造は1H NMR(300MHz,CDCl3)で確認した:1.42(s,9H),2.05(s,6H),4.00− 4.20(m,4H),4.76−4.88(m,1H)。
【0126】
調製例P
2−アセトキシ−1−アセトキシメチル−エチル−アンモニウムトリフルオロアセテート
【0127】
【化30】

酢酸3−アセトキシ−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−プロピルエステル(7.2g)をトリフルオロ酢酸(40ml)に溶解し、室温で撹拌した。発泡は最初は速かったが、1時間後には止まり、その時点で揮発性成分を減圧除去すると、生成物が粘稠な油として定量的収率で得られた。
【0128】
構造は1H NMR(300MHz,CDCl3)で確認した:2.12(s,9H),3.83−3.91(m,1H),4.27−4.46(m,4H)。
【0129】
調製例Q
酢酸3−アセトキシ−2−[3−(2−アセトキシ−アセチルアミノ)−クロロカルボニル−2,4,6−トリヨード−ベンゾイルアミノ]−プロピルエステル
【0130】
【化31】

酢酸(3,5−ビス−クロロカルボニル−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル)−メチルエステル(4.82g,6.92mmol)を、トリエチルアミン2ml、15.8mmolと共に、ジメチルアセトアミド(30ml)中の2−アセトキシ−1−アセトキシメチル−エチル−アンモニウムトリフルオロアセテート(2.0g,6.92mmol)溶液に加えた。溶液を40℃で18時間、次いで60℃で4時間加熱した。反応混合物を酢酸エチル(350ml)で希釈し、氷−水(4×50ml)、食塩水(50ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、蒸発させた。粗生成物を、酢酸エチル及び石油溶出液を用いシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、生成物を白色発泡固形物として(1.11g,38%収率)得た。
【0131】
構造は質量分析(ESI)で確認した。m/z:C1918Cl I329の理論値:[M+H]+834.53、実測値834.84。
【0132】
調製例R
(5−アミノ−2,2−ジメチル−[1,3]ジオキサン−5−イル)−メタノール
【0133】
【化32】

Tris塩酸塩(51g,324mmol)を乾燥DMF(100ml)に懸濁し、2,2−ジメトキシプロパン(39g,374mmol)、次いでp−トルエンスルホン酸(2.6g,13.5mmol)を添加した。混合物を、密閉フラスコ中室温で18時間撹拌すると、透明な溶液が生じた。トリエチルアミン(2.5ml)を加え、溶媒を蒸発させた。粘稠な粗生成物をトリエチルアミン(40ml)に溶解し、酢酸エチル(750ml)を加え、30分間撹拌した後でアンモニウム塩の白色沈殿を濾別した。濾液を蒸発させて、約85%収率で無色の液体として生成物を得た。
【0134】
構造は1H NMR(300MHz,CDCl3)で確認した:1.38(s,3H),1,41(s,3H),3.48(s,2H),3.53(d,2H)及び 3.77(d,2H)。
【0135】
調製例S
酢酸[3−クロロカルボニル−5−(5−ヒドロキシメチル−2,2−ジメチル−[1,3]ジオキサン−5−イルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル]−メチルエステル
【0136】
【化33】

(5−アミノ−2,2−ジメチル−[1,3]ジオキサン−5−イル)−メタノール(9.5g,58.9mmol)をジメチルアセトアミド(100ml)に溶解し、トリエチルアミン(2ml)を添加した。酢酸(3,5−ビス−クロロカルボニル−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル)−メチルエステル(21.0g,30.2mmol)を加え、混合物を、60℃で24時間窒素下で加熱した。冷却しながら、酢酸エチル(1.2l)を加え、溶液を氷−水(4×120ml)、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、蒸発させて、粗生成物を得た。純粋な生成物は、シリカゲルクロマトグラフィーによって白色固形物として得られた(8.32g,34%収率)。
【0137】
構造は質量分析(ESI)で確認した。m/z:C1920Cl I328の理論値:[M+H]+820.546、実測値818.89
調製例T
4−ジベンジルアミノ−ブタン−1,2,3−トリオールは、欧州特許第675105号に記載の通り調製した。
【0138】
【化34】

調製例U
2−ジベンジルアミノ−1−(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)−エタノール及び{5−[(ジベンジルアミノ)−メチル]−2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル}−メタノールを、混合物として調製した
【0139】
【化35】

4−ジベンジルアミノ−ブタン−1,2,3−トリオール(10.0g,33.2mmol)を、乾燥DMF(10ml)及びメタノール(30ml)に溶解し、ジオキサン中塩化水素(11ml、4N)を添加した。15分後、メタノール及び過剰の塩化水素を減圧蒸発により除去した。ジメトキシプロパン(4.0g,38.4mmol)及びp−トルエンスルホン酸(触媒量)を加え、混合物を室温で18時間攪拌した。トリエチルアミン(0.5ml)を加え、溶媒を減圧除去した。残渣はトリエチルアミン(4〜5ml)に溶解しなかったので、酢酸エチル(150ml)を加え、固形物を濾別した。濾液を蒸発させて、油状粗生成物を得た。精製した混合生成物は、シリカゲルクロマトグラフィーで8.18g,72%の総収率で得られた。
【0140】
構造は質量分析(ESI)で確認した。m/z:C2127NO3の理論値:[M+H]+341.454、実測値324.08。
【0141】
調製例V
酢酸{3−クロロカルボニル−5−[2−(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)−2−ヒドロキシ−エチルカルバモイル]−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル}−メチルエステル及び酢酸{3−クロロカルボニル−5−[(5−ヒドロキシメチル−2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イルメチル)−カルバモイル]−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル}−メチルエステルを、混合物として調製した
【0142】
【化36】

2−ジベンジルアミノ−1−(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)−エタノールと{5−[(ジベンジルアミノ)−メチル]−2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル}−メタノールの混合物(2.32g,14.4mmol)をジメチルアセトアミドに溶解し、トリエチルアミン(4ml、28.8mmol)、次いで酢酸(3,5−ビス−クロロカルボニル−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル)−メチルエステル(10.0g,14.4mmol)を添加した。混合物を、40℃で24時間撹拌した後、冷却し、酢酸エチル(150ml)で希釈し、氷−水(4×30ml)、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、蒸発させて、発泡固形物として粗生成物を得た。純粋な生成物は、シリカゲルクロマトグラフィーによって白色固形物泡として得た(4.9g,42%収率)。
【0143】
構造は質量分析(ESI)で確認した。m/z:C1920Cl I328の理論値:[M+H]+820.546、実測値818.88。
【実施例】
【0144】
実施例1
N−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−N′−{3−[[3−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−ベンゾイル]−(2−ヒドロキシ−エチル)−アミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−N′−(2−ヒドロキシ−エチル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド
【0145】
【化37】

1,3−ビス−(2−ヒドロキシ−エチルアミノ)−プロパン−2−オール(0.3当量)及びトリエチルアミン(1.2当量)を、DMA(5mL)中の酢酸{3−クロロカルボニル−5−[(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イルメチル)−カルバモイル]−2,4,6−トリヨード−フェニルカルバモイル}−メチルエステル(2.5g,3.27mmol)の溶液に加えた。反応物を、反応がそれ以上進行しなくなるまで室温で撹拌した。反応混合物を酢酸エチルに抽出し、水洗してDMAを除去した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾液を真空下で濃縮して、所望の化合物を得て、それ以上精製せずに次の段階で使用した。次に、粗製物を、メタノール(10mL)及び2M HCl(10mL)に溶解した。反応混合物を1時間還流した。反応混合物を濃縮乾燥し、最小限の水に溶解し、濾過し、分取用HPLCで精製して、所望の最終生成物を得た。
【0146】
構造は質量分析(ESI)で確認した。m/z:C33406615の理論値:[M]+1522.11、実測値1522.72。
【0147】
実施例1の手順によって、以下の実施例2〜4の二量体化合物を調製できる。
【0148】
実施例2
N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−N−(3−{(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−[3−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−ベンゾイル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド
【0149】
【化38】

構造は質量分析(ESI)で確認した。m/z:C35446617の理論値:[M]+1582.16、実測値1582.68。
【0150】
実施例3
N−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−N′−(3−{[3−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−ベンゾイル]−メチル−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル}−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−N′−(2−ヒドロキシ−エチル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド
【0151】
【化39】

構造は質量分析(ESI)で確認した。m/z:C32386614の理論値:[M]+1492.08、実測値1492.76。
【0152】
実施例4
N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−N−(3−{[3−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−ベンゾイル]−メチル−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド。
【0153】
【化40】

構造は質量分析(ESI)で確認した。m/z:C33406615の理論値:[M]+1522.106、実測値1522.71。
【0154】
実施例5
N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−N−(3−{[3−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−ベンゾイル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド
【0155】
【化41】

構造は質量分析(ESI)で確認した。m/z:C332396615の理論値:[M+H]+1508.68、実測値1508.70。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(I)及びその塩又は光学異性体である化合物。
R−CO−N(R1)−X−N(R1)−CO−R (I)
式中、
一方のR1は水素原子又はC1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であって適宜1〜4個の−OH基で置換されていてもよく、他方のR1は1〜4個の−OH基で置換されたC1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であり、
Xは1〜6個のOH基で置換された炭素原子数3〜10のアルキレン基であって、適宜3個以下の炭素原子が酸素原子で置き換えられていてもよく、
各Rは独立に同一又は異なるもので、トリヨウ素化フェニル基、好ましくは、2つのRA基でさらに置換された2,4,6−トリヨウ素化フェニル基であり、各RA基は、式(I)の化合物の1以上のRA基が親水性基であることを条件として、同一又は異なるもので、水素原子又は非イオン性親水性基である。
【請求項2】
Xが、1〜3個の−OH基で置換された直鎖C3〜C5のアルキレン鎖であり、好ましくは1個以上のヒドロキシル基が架橋窒素原子に隣接していない位置にある、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Xが2−ヒドロキシプロピレン、2,3−ジヒドロキシブチレン又は2,4−ジヒドロキシペンチレンである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
一方のR1が、水素原子、C1〜C3非置換直鎖若しくは枝分れ鎖アルキレン基、又は1〜3個のヒドロキシル基で置換されたC2〜C4直鎖若しくは枝分れ鎖アルキレン基であり、他方のR1が、1〜3個のヒドロキシル基で置換されたC2〜C4直鎖又は枝分れアルキレン基である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
1置換基の一方が、水素原子、メチル基、2−ヒドロキシエチル基又は2,3−ジヒドロキシプロピル基であり、他方のR1置換基が、2−ヒドロキシエチル基又は2,3−ジヒドロキシプロピル基である、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
各R基が同一又は異なるもので、フェニル基の残りの3及び5位が2つのRA基でさらに置換された2,4,6−トリヨウ素化フェニル基であり、RA基の1個以上が非イオン性親水性基を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
A置換基が同一又は異なるもので、モノ−若しくはポリ−ヒドロキシC1-5アルキル、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルコキシアルキル又は炭素原子数1〜5のヒドロキシポリアルコキシアルキルであって、アミド又はカルバモイル連結を介してヨウ素化フェニル基に結合している、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
A基が以下の式の基から選択される、請求項7記載の化合物。
−CONH−CH2−CH2−OH、
−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、
−CON(CH3)CH2−CHOH−CH2OH、
−CONH−CH−(CH2−OH)2
−CON−(CH2−CH2−OH)2
−CONH2
−CONHCH3
−NHCOCH2OH、
−N(COCH3)H、
−N(COCH3)C1-3アルキル、
−N(COCH3)−モノ、ビス又はトリス−ヒドロキシC1-4アルキル、
−N(COCH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリス−ヒドロキシC1-4アルキル、
−N(CO−CHOH−CH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリヒドロキシル化C1-4アルキル、
−N(CO−CHOH−CHOH−CH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリヒドロキシル化C1-4アルキル、
−N(COCH2OH)2
−CON(CH2−CHOH−CH2−OH)(CH2−CH2−OH)、
−CONH−C(CH2−OH)3、及び
−CONH−CH(CH2−OH)(CHOH−CH2−OH)。
【請求項9】
A基が、同一又は異なるもので、式−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、−CON(CH3)CH2−CHOH−CH2OH、−CONH−CH−(CH2−OH)2、−CON−(CH2−CH2−OH)2、−NHCOCH2OH、−N(COCH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリス−ヒドロキシC1-4アルキル、及び−N(CO−CHOH−CH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリヒドロキシル化C1-4アルキルの1以上の基である、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
各R基の一方のRA基がアミド基であり、他方のRA基がカルボキシアミド基である、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
2つのR基が同一であって、各R基のRA基が異なっていて−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH及び−NHCOCH2OHである、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の化合物。
【請求項12】
以下の式(II)及びその塩又は光学異性体である、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の化合物。
【化1】

式中、
一方のR1は水素原子又はC1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であって適宜1〜4個の−OH基で置換されていてもよく、他方のR1は1〜4個の−OH基で置換されたC1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であり、
各R2は独立に同一又は異なるもので、水素原子又はC1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であり、
各R3は独立に同一又は異なるもので、水素原子又はC1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であって適宜1〜4個の−OH基で置換されていてもよく、
各R4は独立に同一又は異なるもので、C1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であって適宜1〜3個の−OH基で置換されていてもよく、
各R5は独立に同一又は異なるもので、C1〜C5直鎖又は枝分れアルキル基であって適宜1〜3個の−OH基で置換されていてもよく、
Xは1〜6個のOH基で置換された炭素原子数3〜10の直鎖アルキレン基であり、適宜3個以下の炭素原子が酸素原子で置き換えられていてもよい。
【請求項13】
一方のR1置換基が、水素原子、メチル基、2−ヒドロキシエチル基又は2,3−ジヒドロキシプロピル基であり、他方のR1置換基が、2−ヒドロキシエチル基又は2,3−ジヒドロキシプロピル基であり、R2及びR3基が、各々、水素原子又はメチル基であり、R4置換基が、各々、モノ−又はジ−ヒドロキシル化プロピル基及び/又はヒドロキシエチル基であり、R5置換基が、ジ−若しくはトリ−ヒドロキシル化プロピル基、モノ−若しくはジ−ヒドロキシエチル基又はヒドロキシメチルであり、各R2基、各R3基、各R4基及び各R5基が好ましくは同一であり、Xが2−ヒドロキシプロピレン、2,3−ジヒドロキシブチレン及び2,4−ジヒドロキシペンチレンである、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
以下のいずれかである、請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の化合物。
N−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−N′−{3−[[3−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−ベンゾイル]−(2−ヒドロキシ−エチル)−アミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−N′−(2−ヒドロキシ−エチル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド
【化2】

N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−N−(3−{(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−[3−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−ベンゾイル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド
【化3】

N−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−N′−(3−{[3−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−ベンゾイル]−メチル−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−N′−(2−ヒドロキシ−エチル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド
【化4】

N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−N−(3−{[3−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−ベンゾイル]−メチル−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド
【化5】

N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−N−(3−{[3−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−ベンゾイル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−5−(2−ヒドロキシ−アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド
【化6】

【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の式(I)の化合物を含む診断薬。
【請求項16】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の式(I)の化合物を、薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に含む診断用組成物。
【請求項17】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の式(I)の化合物を、薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に含むX線診断用組成物。
【請求項18】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の式(I)の化合物を含む診断薬及び診断用組成物のX線造影検査における使用。
【請求項19】
X線造影剤として使用される診断用組成物を製造するための、請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項20】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の式(I)の化合物をヒト又は動物の身体に投与し、身体を診断装置で検査し、検査データをコンパイルすることを含む診断方法。
【請求項21】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の式(I)の化合物が予め投与された身体を診断装置で検査し、検査データをコンパイルすることを含む診断方法。
【請求項22】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の式(I)の化合物をヒト又は動物の身体に投与し、身体を診断装置で検査し、検査データをコンパイルし、適宜データを解析することを含んでなる撮像、特にX線撮像方法。

【公表番号】特表2011−506286(P2011−506286A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536446(P2010−536446)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066745
【国際公開番号】WO2009/071605
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(396019387)ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ (82)
【Fターム(参考)】