説明

造影及び治療用エマルジョン粒子並びにその使用方法

エマルジョン、好ましくはZ数を有する原子とカップリングした油化合物から形成したナノパーティクルのエマルジョンに関する。前記粒子は、脂質/界面活性剤被膜で覆われている。ナノパーティクルは、標的化細胞又は組織に特異的なリガンドと前記ナノパーティクルをカップリングさせることによって、標的化細胞又は組織に特異的になる。ナノパーティクルは、さらに、生理活性剤、放射性核種及び/又は他の造影剤を含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法119条e項(35 U.S.C.§119(e))により2003年8月8日に提出された仮出願第60/493,492号に対する利益(優先権)を主張するが、当該出願は、参照により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般にイメージング(画像化)用造影剤としての使用及び/又は治療薬の送達を目的とするナノパーティクル含有エマルジョンに関する。特に、高Z数原子とカップリングした油を含む脂質被包性エマルジョン(lipid encapulated emulsion)及びターゲッティングリガンドを更に含むそのようなエマルジョンに関する。イメージング及び/又は治療薬の送達用エマルジョンの製造及び投与にも関する。
【背景技術】
【0003】
分子イメージング(molecular imaging)によれば、部位標的化造影剤(site-targeted contrast agent)を用いて組織における分子マーカーの特異的検出が可能となって、従来の臨床画像診断の有用性が高められうる。(Weissleder(1999)、Radiology 212:609−614)。部位標的化超音波剤(site-targeted ultrasonic agent)に対し三つのアプローチが報告されているが、これらは、リポソームの使用(Alkan−Onyukselら(1996)、J.Pharm.Sci.85:486−490;Demosら(1997)、J.Pharm.Sci.86:167−171;Demosら(1999)、J.Am.Col.Cardiol.33:867−875)、マイクロバブル(microbubble)の使用(Mattreyら(1984)、Am.J.Cardiol.54:206−210;Ungerら(1998)、Am.J.Cardiol.81:58G−61G;Villanuevaら(1998)、Circulation 98:1−5;Klibanovら(1998)、Acad.Radiol.5S243−S246)又はナノエマルジョン(nano-emulsion)の使用(Lanzaら(1996)、Circulation 94:3334−3340;Lanzaら(1998)、J.Acoust.Soc.Am. 104:3665−3672;Lanzaら(1997)、Ultrasound Med.Biol.23:863−870)に基づいている。
【0004】
各種タイプのイメージングのために目的とする成分の結合を容易にすべく界面活性剤層で被覆されたパーフルオロカーボンナノパーティクルからなるナノパーティクル組成物について、その価値は、十分に立証されている。例えば、米国特許第5,690,907号、第5,780,010号、第5,958,371号及び第5,989,520号;PCT公報WO 02/060524号;並びにLanzaら、1998、及びLanzaら、1997を参照すべきである。これらの文献には、各種のターゲッティング剤と、そして磁気共鳴イメージング剤(magnetic resonance imaging agent)、放射性核種及び/又は生理活性剤等の目的とする成分と、カップリングするパーフルオロカーボンナノパーティクルのエマルジョンが記載されている。
【0005】
標的化イメージング(targeted imaging)のために用いられている他の組成物として、PCT公報WO 99/58162号、WO 00/35488号、WO 00/35887号及びWO 00/35492号に記載されている組成物が挙げられる。
【0006】
特異的なホーミング(homing)又はターゲッティングリガンドの含有によって標的とされないにもかかわらず、細網内皮系(reticuloendothelial system)の細胞(RES細胞(RES-cell))によるエマルジョン粒子の取り込みのため、腫瘍等のイメージングにおいてヨウ素含有脂肪エマルジョン(iodine-containing fat emulsion)がX線造影剤として使用されてきた。この受動的なターゲッティングでは、これらのエマルジョンが正常な排除器官(clearance organ)によって吸収されるが、このターゲッティングにより、大量のRES細胞を含む肝臓及び脾臓は、他の組織よりも、X線不透過(陽性造影)(radio-opaque)となる。ヨウ素含有脂肪エマルジョンを吸収する肝臓及び脾臓の細胞は、エマルジョンの大きさ及び組成に依存する。例えば、一般に、1μmを超える平均粒子径をもつエマルジョンは、肺、肝臓及び脾臓の細胞に吸収され、約0.1から0.3μmの平均粒子径をもつエマルジョンは、ディッセ腔(space of Disse)に侵入し、吸収され、RES細胞のほか、肝細胞で保持される。例えば、米国特許第4,917,880号を参照すべきである。同様に、米国特許第5,445,811号には、肝細胞への取り込みの増大を考慮した粒子径の小さいリン脂質界面活性剤を含む親油性ヨード化及び/又はブロム化物質を基剤とするX線造影剤のエマルジョンが記載されている。
【0007】
肝臓癌におけるリピオドール及びエチオドール(ethiodol)の取り込み並びに保持のため、ケシの実油のヨウ素化誘導体が、化学療法薬又は放射線療法薬をこれらの腫瘍へ送達するために使用されてきた。例えば、Yuら(2003)Appl.Radiat.Isot. 58:567−573;Kountourasら(2002)Hepatogastroenterology 49:1109−1112;Al−Muftiら(1999)Br.J.Cancer 79:1665−1671;Bhattacharyaら(1996)Br.J.Cancer 73:877−881;Bretagneら(1988)Radiology 168:547−550;Konnoら(1983)Eur.J.Cancer Clin.Oncol. 19:1053−1065を参照すべきである。肝臓の腫瘍細胞におけるこれらのヨウ素化油の保持(貯留)から、これらの化合物は、肝臓癌の治療及びイメージングの可能性があるため、有用な薬剤送達剤でありX線造影剤として適当であるかもしれないことが示唆される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
個体内の各種及び/又は特定の部位並びに組織に達するのに有用であり、結果として分子イメージング系及び治療薬送達についてのコントラスト(contrast)、特異性並びに感度の程度を高めるアプローチ並びに組成物を開発することが引き続き必要とされている。
【0009】
本願において引用した全ての公報及び特許出願については、その全文が、参照により本願に組み込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、水中油型エマルジョンを使用するイメージング及び/又は治療薬送達のための組成物並びに方法に関する。ここで、前記水中油型エマルジョンは、36以上のZ数を有する原子とカップリングしている油状化合物から形成したナノパーティクルを含み、前記ナノパーティクルは、脂質/界面活性剤層で覆われ、前記ナノパーティクルは、標的と結合するリガンドとカップリングしている。いくつかの形態において、前記エマルジョンは、更に、少なくとも1つの生理活性剤を含む。イメージングと関連したエマルジョンの使用により、イメージ(画像)品質の改善並びに多モードイメージング(multi-modal imaging)及び治療薬送達の機会が得られる。
【0011】
別の視点において、本発明は、前記エマルジョンを用いて標的組織をイメージング(画像化)する方法に関する。別の視点において、本発明は、前記エマルジョンを用いて標的組織に対して生理活性剤を送達する方法に関する。一つの形態として、イメージング及び薬剤送達のための前記標的組織は、心血管関連組織である。
【0012】
別の視点において、本発明は、水中油型エマルジョンを製造する方法に関する。ここで、前記水中油型エマルジョンは、36以上のZ数を有する原子とカップリングした油状化合物から形成したナノパーティクルを含み、前記ナノパーティクルは、脂質/界面活性剤層で覆われ、前記ナノパーティクルは、標的と結合するリガンドとカップリングされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、部位のイメージング及び/又は治療薬の送達に優れた、高Z数原子とカップリングした油を含む標的化エマルジョンを提供する。高Z数原子とカップリングした油を含む標的エマルジョンによれば、非標的化高Z数原子のエマルジョン調節剤(non-targeted high Z number atom emulsion control agent)と比べて、そして高Z数原子を含まない標的化エマルジョンと比べて、コントラスト(造影)対ノイズ比(contrast to noise ratio)が顕著に改善される。単独で用いた場合には、X線イメージング(例えば、コンピュータ断層撮影法(computed tomography)(CT))、超音波イメージング及び/又は治療薬の送達用の造影剤(contrast agent)として有用である。補助試薬(ancillary reagent)も同様に、磁気共鳴映像法(magnetic resonance imaging)(MRI)、核映像法(nuclear imaging)(例えば、シンチグラフィー(scintigraphy)、ポジトロン放射型断層撮影法(positron emission tomography)(PET)及び単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(single photon emission computed tomography)(SPECT))、光学又は光画像法(optical or light imaging)(例えば、共焦点顕微鏡(confocal microscopy)及び蛍光画像法(fluorescence imaging)、磁気断層撮影法(magnetotomography)並びに電気インピーダンス映像法(electrical impedance imaging)のような、イメージングのその他の形態用エマルジョンのナノパーティクルと組み合わされる。ナノパーティクル中又は上における放射性核種の取り込みによって、診断用薬及び治療薬の両方として有用たりうるエマルジョンが得られる。したがって、取り込まれる補助試薬の種類に依存するが、前記エマルジョンを、画像法と組み合わせて使用してもよい。例えば、多モードイメージング(画像法)は、X線とMRI画像法との組み合わせ等のMRIのための補助試薬を含むエマルジョンを用いて行ってもよい。さらに、或いは代わりに、前記エマルジョンは、高Z数原子の油の核(high Z number atom oil core)中及び/又は上に1以上の生理活性剤を含んでもよい。したがって、本発明のナノパーティクルを、診断用薬及び/又は治療薬として使用してもよい。
【0014】
本発明のエマルジョンは、高Z数原子とカップリングした油を基剤とするナノパーティクルを含む。前記液体エマルジョンは、高Z数原子とカップリングした油からなるナノパーティクルを含むが、前記油は、脂質及び/又は界面活性剤からなる被膜によって覆われている。
【0015】
いくつかの形態において、被膜を覆っている脂質及び/又は界面活性剤は、ターゲッティング成分と直接カップリングすることができ又はターゲッティング成分と共有結合する中間成分を、任意にリンカーを介して、捕捉することができ、或いはビオチン等の非特異的なカップリング剤を含んでいてもよい。一方、前記被膜は、ターゲッティング剤が表面に静電気的に吸着されうるため、陽イオン性又は陰イオン性であるかもしれない。例えば、前記被膜は、一般には核酸、又は特にアプタマー等の負電荷をもつターゲッティング剤が、表面に吸着されうるように、陽イオン性であってもよい。
【0016】
いくつかの形態において、前記ナノパーティクルは、その表面で結合した、放射性核種、MRI用若しくはPET画像法用の造影剤、光学画像法用のフルオロフォア若しくは赤外剤、及び/又は生理活性化合物を含むがこれらに限定されないイメージング及び/又は治療において有用な、少なくとも一つの「補助剤(ancillary agent)」を含む。前記ナノパーティクル自体は、X線(例えば、CT)及び超音波イメージング用の造影剤として役立ちうる。
【0017】
いくつかの形態において、前記エマルジョンを、治療薬並びに診断用薬として使用するため、生理活性剤、放射性剤、化学療法剤及び/又は遺伝子剤を含むがこれらに限定されない治療薬を取り込むよう改変してもよい。そのようなエマルジョンの治療薬は、ナノパーティクルの表面上に又はこれに付着して或いはナノパーティクルの高Z数原子の油の核の内部に存在しうる。
【0018】
本発明は、インビボ、エキソビボ、インサイツ及びインビトロの投与を含む各種の投与で前記エマルジョンを使用する方法も提供する。前記方法には、単又は多モードイメージング及び治療方法が含まれる。
【0019】
したがって、少なくとも一つの治療薬を取り込む標的化エマルジョンは、選択した細胞、組織及び/又は器官に特に投与したときに、危険性/受益性特性(risk/benefit profiles)が改善された疾患又は障害の治療にとって、特に有用である。部位特異的な(site-directed)、脂質被包性エマルジョンによって、接触促進送達(contact facilitated delivery)と呼ばれる標的細胞への治療薬の移動形態を通じて、標的化組織への有効性を高めつつ治療薬を送達する機会が与えられる。標的化脂質被包性エマルジョンによる治療薬の接触促進送達によって、標的細胞の脂質二重層を含むリガンド結合、脂質被包性粒子の結合持続及び接触増加が示される。一つの粒子理論に縛られることはないが、一方の脂質表面から他方に対する脂質成分の混合及び交換の増加が、標的細胞に対する治療エマルジョン表面中又は上における治療薬の交換を促進する。したがって、標的化細胞はエマルジョンを吸収する必要はないし、エマルジョンは、治療薬を受け入れるために、標的細胞に対し治療薬を漏出させる必要もない。比較的に、粒子核内部に輸送されるエマルジョンの使用については、前記エマルジョンの細胞取り込み、前記エマルジョンからの薬剤漏出又は前記細胞へ前記薬剤を送達するためのエマルジョン分解に依存する。
【0020】
(本発明の組成物)
一つの形態において、好ましいエマルジョンは、核として高Z数原子の油状化合物を含み、脂質/界面活性剤混合物の外層被膜を含むナノパーティクルである。それ自体では、前記ナノパーティクルは、例えば、X線及び/又は超音波イメージング用の、造影剤として役立ちうる。
【0021】
本願において使用した、本発明のエマルジョンにおいて使用する「高Z数原子とカップリングした油(oil coupled to a high Z number atom)」又は「高Z数原子の油(high Z number atom oil)」或いは「高Z数元素とカップリングした油(oil coupled to a high Z number element)」又は「高Z数元素の油(high Z number elemrnt oil)」には、少なくとも一つのZ数35より大きい原子又は元素(すなわち、クリプトン(Kr)以降)を含有する油又は油状化合物が含まれる。そのような原子は、本願において「高Z数原子(high Z number atom)」と呼ばれる。本願において使用する「Z数(Z number)」は、原子のプロトンの数と同等である。いくつかの形態において、高Z数原子は、油と非共有的にカップリングする。いくつかの形態において、高Z数原子は、油と共有結合する。いくつかの形態において、高Z数元素及び/又は前記高Z数元素の脂肪性塩は、単に懸濁又は溶解させることによって油と結合される。いくつかの形態において、高Z数元素は、高Z数元素を含む化合物の単純懸濁若しくは溶解、高Z数元素を含む巨大分子構造及び/又は高Z数元素を含む複合体として、例えば、マイクロパーティクル又はナノパーティクル形態で油と結合しうる。
【0022】
本発明の高Z数原子(又は元素)は、36以上のZ数をもつ原子(又は元素)、好ましくは39以上のZ数をもつ原子、より好ましくは53以上のZ数をもつ原子である。いくつかの形態において、前記原子のZ数は、36〜85である(36及び85並びに36〜85の全てのZ数を含む)。いくつかの形態において、前記原子のZ数は、39〜85である(39及び85並びに39〜85の全てのZ数を含む)。いくつかの形態において、前記原子のZ数は、53〜85である(53及び85並びに53〜85の全てのZ数を含む)。いくつかの形態において、高Z数をもつ前記原子又は元素には、イットリウム(Y、Z=39)、モリブデン(Mo、Z=42)、銀(Ag、Z=47)、スズ(Sn、Z=50)、ヨード(I、Z=53)及び金(Au、Z=79)が含まれるが、これらに限定されない。さらに、適当な生体適合性及びX線不透過性をもつ他の高Z数原子には、ジルコニウム(Zr、Z=40)、バリウム(Ba、Z=56)、タンタル(Ta、Z=73)、白金(Pt、Z=78)及びビスマス(Bi、Z=83)が含まれる。形態によっては、油と結合した高Z数元素は、ヨウ素(I)ではない。
【0023】
用語「X線不透過性(radiopacity)」とは、X線及び従来の放射線透過方法、並びに任意に磁気共鳴映像法及び超音波イメージングを含むイメージング(映像法)のその他の形式によって検出される放射線(X線)不透過性材料の能力をいう。
【0024】
本発明のエマルジョンの使用に関し、油中の高Z数元素の量は、前記元素のZ数に依存するであろう。高Z数をもつ元素、例えば、Auを、油中に、より低い濃度、例えば、約15%w/vで使用することができるが、より低いZ数をもつ元素、例えば、Brでは、油中に、より高い濃度、例えば、約50%w/vとする必要がある。エマルジョンに関し、油中における高Z数元素の量を、約10%〜約60%w/vの範囲とすることができる。場合によっては、油中における元素の量を、約15%〜約50%w/v、約20%〜約45%w/v、又は約25%〜約40%w/vとすることができる。
【0025】
本願において使用される、用語「油(oil)」は、受け入れる個体の体温又はエマルジョンを受け入れる細胞の培養温度で液体である脂肪油又は脂肪を意味する。したがって、そのような油は、一般に、約40℃以下、好ましくは35℃以下で融解し又は少なくとも融解し始めるであろう。約25℃で液体である油によって、本発明のいくつかの組成物の注射又はその他の投与が容易になりうる。
【0026】
製薬学上許容できる油を、本発明のエマルジョンにおいて高Z数原子とカップリングされる油として使用することができる。そのような油の例として、ビタミンA複合体及び誘導体、ビタミンE複合体及び誘導体、ケシの実油、大豆油、オリーブ油、パーム油、茶の実油、ヒマシ油、ゴマ油、ブドウ種油、ナタネ油、クルミ油、コーン油、カポック油、米ヌカ油、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ベニバナ油、メンヘーデン油(menhaden oil)、サケ油(salmon oil)、ニシン油、その他植物又は動物油、鉱物起源の油或いは合成油(グリセロール又はプロピレングリコールの長鎖脂肪酸を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、油に生来、高Z数元素が十分な量で含まれ、この油を直接エマルジョンに使用することができる。その他の場合には、油を変性又は誘導体化して、高Z数元素を油とカップリングさせる。製薬学上許容できる油は、従来公知の方法によって処方される(例えば、RemingtonのPharmaceutical Sciences、第18版、Mack出版社参照)。
【0027】
本発明のエマルジョンにおいて使用される高Z数原子とカップリングした油の具体例は、ケシの実油の脂肪酸のエチルエステルの有機結合性のヨウ素付加産物であるエチオド化油である。エチオドール及びリピオドール等のエチオド化油は、非イオン、ヨウ素化X線不透過剤(iodinated radiopaque agent)である。リピドオールは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のエチルエステルを38−40%w/vのヨウ素含有量で含むケシの実油のヨウ素化誘導体である(例えば、ABPIデータシート概論(ABPI Data Sheet Compendium)(1991−1992)The Pharmaceutical Industry、pp.1199、Datapharm;ロンドン参照)。エチオドールもケシの実油のヨウ素化誘導体であるが、ヨウ素が、前記油の約37重量%に相当する。
【0028】
乳化剤、例えば、界面活性剤は、エマルジョン形成を促進させ、その安定性を増大させるために用いられる。典型的には、水相界面活性剤(aqueous phase surfactant)は、水中油型エマルジョンの形成を促進させるために使用されてきた。界面活性剤は、親水性部分及び疎水性部分の両方を含む全ての物質である。水又は溶媒に添加したときには、界面活性剤は、表面張力を減少させる。
【0029】
ナノパーティクル(結合リガンド(coupled ligand)を含み、或いは目的とする成分を前記表面に結合させるための試薬を捕捉することができるもの)の外被膜を形成するために使用される脂質/界面活性剤には、天然又は合成のリン脂質、脂肪酸、コレステロール、リゾ脂質(lysolipid)、スフィンゴミエリン、トコフェロール、糖脂質、stearylarnine、カルジオリピン、プラスマロゲン、エーテル又はエステル結合した脂肪酸との脂質、及び重合脂質(polymerized ligand)が含まれる。場合によっては、前記脂質/界面活性剤には、脂質結合(lipid conjugated)ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)(PEG)が含まれうる。Tween系、Span系、及びTriton系等を含む各種市販のアニオン、カチオン、並びに非イオン界面活性剤も使用することができる。いくつかの形態において、好ましい界面活性剤は、リン脂質及びコレステロールである。
【0030】
乳化すべき油に溶解する全フッ素置換界面活性剤も使用することができる。適当なフルオロケミカル界面活性剤には、パーフルオロヘキサン酸及びパーフルオロオクタン酸等の全フッ素置換アルカン酸並びにアミドアミン誘導体が含まれる。これらの界面活性剤は、一般に、0.01から5.0重量%の量で、好ましくは0.1から1.0重量%の量で使用される。他の適当なフルオロケミカル界面活性剤には、全フッ素置換アルコールリン酸エステル及びそれらの塩;全フッ素置換スルホンアミドアルコールリン酸エステル及びそれらの塩;全フッ素置換アルキルスルホンアミド;アルキレン四級アンモニウム塩;N,N(カルボキシル置換低級アルキル)全フッ素置換アルキルスルホンアミド;並びにこれらの混合物が含まれる。本願において使用する用語「全フッ素置換(perfluoriated)」とは、界面活性剤が少なくとも一つの全フッ素置換したアルキル基を含むことを意味する。
【0031】
適当な全フッ素置換アルコールリン酸エステルには、モノ−及びビス(1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキル)リン酸塩のジエタノールアミン塩の遊離酸が含まれる。商品名ZONYL RP(Dupont、ウィルミントン、デラウェア)で入手可能な、前記リン酸塩は、公知の方法によって対応する遊離酸に転換される。適当な全フッ素置換スルホンアミドアルコールリン酸エステルが、米国特許第3,094,547号に記載されている。適当な全フッ素置換スルホンアミドアルコールリン酸エステル及びこれらの塩には、パーフルオロ−n−オクチル−N−エチルスルホンアミドエチルリン酸塩(perfluoro-n-octyl-N-ethylsulfonamidoethyl phosphate)、ビス(パーフルオロ−n−オクチル−N−エチルスルホンアミドエチル)リン酸塩(bis(perfluoro-n-octyl-N-ethylsulfonamidoethyl) phosphate)、ビス(パーフルオロ−n−オクチル−N−エチルスルホンアミドエチル)リン酸塩のアンモニウム塩、ビス(パーフルオロドデシル−N−エチルスルホンアミドエチル)−リン酸塩及びビス(パーフルオロヘキシル−N−エチルスルホンアミドエチル)リン酸塩が含まれる。好ましい製剤では、脂質界面活性剤としてホスファチジルコリン、誘導体化されたホスファチジルエタノールアミン及びコレステロールが使用される。
【0032】
前記エマルジョンを安定化させるために、PLURONIC F−68、HAMPOSYL L30(W.R.Grace社、ナシュア、ニューハンプシャー)、ドデシル硫酸ナトリウム、Aerosol 413(American Cyanamid社、ウェイン、ニュージャージー)、Aerosol 200(American Cyanamid社)、LIPOPROTEOL LCO(Rhodia社、マンモス(Mammoth)、ニュージャージー(NJ))、STANDAPOL SH135(Henkel社、 ティーネック、ニュージャージー)、FIZUL 10−127(Finetex社、エルムウッドパーク 、ニュージャージー)、及びCYCLOPOL SBFA30(Cyclo Chemicals社、マイアミ、フロリダ)等の他の公知の界面活性剤添加物;商品名:DeriphatTM170(Henkel社)、LONZAINE JS(Lonza社)、NIRNOL C2N−SF(Miranol Chemical社、Dayton、ニュージャージー(NJ)、AMPHOTERGE W2(Lonza社)、及びAMPHOTERGE 2WAS(Lonza社)で売られているもの等の両性物(amphoterics);商品名:PLURONIC F−68(BASF Wyandotte、ワイアンドット、ミシガン)、PLURONIC F−127(BASF Wyandotte)、BRIJ 35(ICI Americas;ウィルミントン、デラウェア)、TRITON X−100(Rohm and Haas社、フィラデルフィア、ペンシルヴェニア)、BRIJ 52(ICI Americas)、SPAN 20(ICI Americas)、GENEROL 122 ES(Henkel社)、TRITON N−42(Rohm and Haas社)、TritonTM N−101(Rohm and Haas社)、TRITON X−405(Rohm and Haas社)、TWEEN 80(ICI Americas)、TWEEN 85(ICI Americas)、及びBRIJ 56(ICI Americas)で売られているもの等の非イオン物(non-ionics)等を単独で又は組み合わせて、0.10から5.0重量%で使用してもよい。
【0033】
脂質被包性エマルジョンは、核酸及びアプタマー等のリガンドを粒子表面に捕捉又は付着させることを促進する界面活性剤層におけるカチオン性脂質を用いて製剤化されうる。典型的なカチオン性脂質には、DOTMA、N−[1−(2,3−ジオレオイロキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム−クロリド(N-[1-(2,3-dioleoyloxy)propyl]-N,N,N-trimethylammonium chloride);DOTAP、1,2−ジオレオイロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン(1,2-dioleoyloxy-3-(trimethylammoni)propane);DOTB、1,2−ジオレオイル−3−(4’−トリメチルアンモニオ)ブタノイル−sn−グリセロール(1,2-dioleoyl-3-(4'-trimethyl-ammonio)butanoyl-sn-glycerol)、1,2−ジアシル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(1,2-diacyl-3-trimethylammonium-propane);DAP、1,2−ジアシル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(1,2-diacyl-3-dimethylammonium-propane);TAP、1,2−ジアシル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(1,2-diacyl-3-trimethylammonium-propane);1,2−ジアシル−sn−グリセロール−3−エチル ホスホコリン(1,2-diacyl-sn-glycerol-3-ethyl phosphocholine);3β−[N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモル]コレステロール−HCl(3β-[N',N'-dimethylaminoehane)-carbamol]cholesrterol-HCl)、DC−コレステロール(DC-Cholesterol)(DC−Chol);及びDDAB、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(dimethyldioctadecylammonium bromide)が含まれうる。一般に、カチオン性脂質の非カチオン性脂質に対するモル比は、例えば、1:1000から2:1、好ましくは2:1から1:10、より好ましくは、1:1から1:2.5の範囲、最も好ましくは1:1(モル量カチオン性脂質のモル量非カチオン性脂質、例えばDPPCに対する割合)であってもよい。幅広い種類の脂質があり、これには、先に記載したものの他、前記エマルジョン界面活性剤の非カチオン性脂質成分、特に、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジル−エタノールアミン又はジオレオイルホスファチジルエタノールアミンが含まれうる。前記カチオン性脂質の代わりに、ポリリジン又はポリアルギニン等のカチオン性ポリマーを含有する脂質も、脂質界面活性剤に含めてもよく、遺伝子材料又はその類似物等の負電荷をもつ治療剤をエマルジョン粒子の外部と結合させうる。いくつかの形態において、前記脂質は、生体内での使用のため前記エマルジョンに安定性を付与すべく、架橋結合されうる。架橋結合された脂質を含むエマルジョンは、本願において記載したイメージング法にとって特に有用である。
【0034】
特定の形態において、脂質/界面活性剤被膜には、ターゲティングリガンド又はイメージング若しくは治療にとって有用な補助物質をカップリングさせるために用いられうる反応性基を有する成分が含まれる。いくつかの形態において、ナノパーティクルと1以上の目的とする成分の多数の複製とを結合させる媒体を与える脂質/界面活性剤被膜が好ましい。以下に記載するつもりであるが、前記脂質/界面活性剤成分は、これらの反応性基と、前記脂質/界面活性剤成分に含まれる官能性により、結合することができる。例えば、ホスファチジルエタノールアミンは、そのアミノ基を介して直接目的とする成分とカップリングすることができ、又は以下に記載するカルボキシル基、アミノ基、又はスルフヒドリル基を与えうる短ペプチド(short peptide)等のリンカーとカップリングすることができる。一方、マレイミド等の標準的な結合剤(linking agent)を使用してもよい。各種の方法を用いて、ターゲッティングリガンド及び補助物質を前記ナノパーティクルと結合させてもよい;これらのストラテジーには、例えば、ポリエチレングリコール又はペプチド等のスペーサー(spacer)基の使用が含まれうる。
【0035】
脂質/界面活性剤被覆ナノパーティクルは、典型的には、核を形成する前記高Z数原子の油の混合物と、エマルジョンを形成する水性媒体中の懸濁物の外層を形成する前記脂質/界面活性剤混合物とをマイクロ流動化する(microfluidize)ことによって形成される。この製法において、前記脂質/界面活性剤は、前記ナノパーティクルに乳化されるときに、すでに付加的リガンドとカップリングしていてもよく、又は単にその後のカップリングのための反応性基を含んでいてもよい。一方、前記脂質/界面活性剤層に含まれるべき成分は、補助材料の溶解特性によって前記層に単に溶解するだけでよい。超音波処理又は他の技術が、水性媒体の脂質/界面活性剤の懸濁液を得るために必要とされる場合がある。典型的には、脂質/界面活性剤の外層中の少なくとも一つの材料が、別の目的とする成分を結合するのに有用であるリンカー又は官能基を含むか、又は前記成分が、エマルジョンの調製時に、すでに材料とカップリングしていてもよい。
【0036】
外層の成分にターゲッティングリガンド又は他の有機成分(常磁性金属のキレート化剤等)を共有結合させることによってカップリングさせるため、各種タイプの結合及び結合剤を使用してもよい。そのようなカップリングを形成するための典型的な方法には、カルボジアミドを使用したアミドの形成、又はマレイミド等の不飽和成分の使用によるスルフィド結合の形成が含まれる。他の結合剤には、例えば、グルタルアルデヒド、プロパンジアル(propanedial)又はブタンジアル(butanedial)、2−イミノチオラン塩酸塩、ジスクシンイミジルスベレート、ジスクシンイミジル酒石酸塩、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン等の二官能性N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−(5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシ)スクシンイミド、スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、及びスクシンイミジル 4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート等のヘテロ二官能性試薬、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン、4,4’−ジフルオロ−3,3’−ジニトロジフェニルスルホン、4,4'−ジイソチオシアノ−2,2'−ジスルホン酸スチルベン、p−フェニレンジイソチオシアネート、カルボニルビス(L−メチオニン p−ニトロフェニル エステル)、4,4’−ジチオビスフェニルアジド、エリスリトールビスカーボネート等のホモ二官能性試薬並びに塩酸ジメチルアジピミデート、ジメチルスベリミデート、塩酸ジメチル 3,3’−ジチオビスプロピオンイミデート等の二官能性イミドエステル等が含まれる。結合については、アシル化、スルホン化、及び還元的アミノ化等によって行わせることもできる。外層の1以上の成分と目的とするリガンドとを共有結合させる非常に多数の手段が、技術としてよく知られている。リガンド自体は、その特性が適している場合に、界面活性剤中に含まれうる。例えば、リガンドが親油性部分を多く含む場合には、それ自体、脂質/界面活性剤被膜内に包理されうる。さらに、リガンドが被膜に直接吸着する能力をもつ場合には、そのカップリングも生じるであろう。例えば、核酸は、その負電荷のため、カチオン性界面活性剤に直接吸着する。
【0037】
前記リガンドは前記ナノパーティクルと直接結合しうる、すなわち前記リガンドは前記ナノパーティクル自体と結合される。一方、加水分解性の脂質アンカー等の加水分解性のアンカーを用いると、ターゲッティングリガンド又はその他の有機成分が前記エマルジョンの脂質/界面活性剤被膜とカップリングするよう、間接的な結合も生じうる。ビオチン/アビジンにより生じる間接的な結合等、間接的な結合はリガンドに対しても利用されうる。例えば、ビオチン/アビジン媒介ターゲッティングでは、ターゲッティングリガンドは前記エマルジョンとカップリングするのではなく、むしろ標的組織とビオチン化した形態でカップリングする。
【0038】
被覆層における取り込みにより前記ナノパーティクルとカップリングしうる補助剤には、放射性核種が含まれる。放射性核種は、治療用又は診断用のどちらでもよい;そのような核種を使用する診断用イメージングは公知であるが、目的とする組織に対し放射性核種を標的にすることによって治療上の利益がさらに認識されるかもしれない。診断用イメージングには、多くの場合、ガンマエミッター(例えば、96Tc)が含まれ、治療目的の放射性核種には、多くの場合、アルファエミッター(例えば、225Ac)及びベータエミッター(例えば、90Y)が含まれる。典型的な診断用放射性核種には、99mTc、96Tc、95Tc、111In、62Cu、64Cu、67Ga、68Ga、201Tl、79Kr、及び192Irが含まれ、治療用核種には、225Ac、186Re、188Re、153Sm、166Ho、177Lu、149Pm、90Y、212Bi、103Pd、109Pd、159Gd、140La、198Au、199Au、133Xe、169Yb、175Yb、165Dy、166Dy、123I、131I、67Cu、105Rh、111Ag、及び192Irが含まれる。前記核種については、予備形成したエマルジョンに対して各種の方法で添加することができる。例えば、99Tc−パーテクネート(pertechnate)については、過剰量の塩化スズと混合して、ナノパーティクルの予備形成エマルジョン中に含有させることができる。スズオキシネートを、塩化スズの代わりに使用することができる。さらに、Nycomed AmershamによりCeretek(登録商標)として市販されているHM−PAO(エクサメタジン(exametazine))等の市販のキットを使用することができる。各種の放射性リガンドを本発明のナノパーティクルに付着させる手段は、技術として理解されている。
【0039】
磁気共鳴影像法において使用される金属イオンを含むキレート化剤も補助剤として使用することができる。典型的には、常磁性金属又は超常磁性金属を含むキレート化剤は、前記ナノパーティクルにおける被膜の脂質/界面活性剤と結合され、さらに超音波処理された初期混合物中に取り込まれる。前記キレート化剤は、被覆層の1以上の成分と直接カップリングされうる。適当なキレート化剤は、大環状又は直鎖のキレート化剤であり、これにはEDTA、DPTA、及びDOTA等を含む各種の多座化合物が含まれる。これらのキレート化剤は、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、オレイン酸塩、或いは全ての他の合成天然又は官能性を持たせた脂質又は脂質可溶性化合物に含まれる官能基に直接カップリングされうる。一方、これらのキレート化剤は、結合(リンキング)基を介してカップリングされうる。
【0040】
本発明のMRI造影剤において有用な常磁性及び超常磁性金属には、希土類金属、代表的にはマンガン、イッテルビウム、テルビウム、ガドリニウム、ユーロピウム等が含まれる。鉄イオンを使用してもよい。
【0041】
MRIキレート化剤の特に好ましい組み合わせには、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid)(DOTA)及びその誘導体、特にメトキシベンジル誘導体(MEO−DOTA)、及びホスファチジルエタノールアミンのアミノ基と又はそのペプチド誘導構造とカップリング可能なイソチオシアネート官能基を含むメトキシベンジル誘導体(MEO−DOTA−NCS)が含まれる。この種の誘導体は、米国特許第5,573,752号に記載され、他の適当なキレート化剤は、米国特許第6,056,939号に開示されている。
【0042】
DOTAイソシアネート誘導体も直接又はペプチドスペーサーを介して、前記脂質/界面活性剤とカップリングされうる。スペーサーとしてのgly−gly−glyの使用について、以下の反応スキームに図示する。直接的カップリングに関し、MEO−DOTA−NCSは、ホスホエタノールアミン(phosphoethanolamine)(PE)と簡単に反応して、カップリング生成物が得られる。ペプチド、例えばトリグリシル結合が使用される場合には、PEが先ずt−boc保護トリグリシンとカップリングする。N−ヒドロキシスクシンイミド(N-hydroxy succinimide)(NHS)か又はヒドロキシベンゾトリアゾール(hydroxybenzotriazole)(HBT)と共にジイソプロピルカルボジイミド(又はそれに相当するもの)を用いてt−boc−トリグリシンの遊離酸の活性エステルを形成させるような、標準的なカップリング技術が使用され、t−boc−トリグリシン−PEが精製される。
【0043】
t−boc−トリグリシン−PEをトリフルオロ酢酸で処理することにより、トリグリシン−PEが得られ、その後トリグリシン−PEを過剰のMEO−DOTA−NCSと50℃でDMF/CHCl中で反応させる。最終生成物は、溶媒を除去することによって単離され、次いで固形残滓を過剰の水を用いて濯いで、過剰の溶媒及び全ての未反応又は加水分解MEO−DOTA−NCSが除去される。

【0044】
他の補助剤には、フルオロフォア(フルオレセイン、ダンシル、及び量子ドット(quantum dots)等)が含まれ、赤外染料又は金属を、光学又は光画像法(例えば、共焦点顕微鏡及び蛍光画像法)において使用してもよい。PET画像法等の核映像法に関しては、トシル化又は18Fフッ素化化合物を補助剤(物質)として、前記ナノパーティクルと結合させてもよい。
【0045】
いくつかの形態において、生理活性剤が、高Z数原子とカップリングした油を含むエマルジョンナノパーティクルの核内部に取り込まれる。
【0046】
本発明のいくつかの形態において、前記ナノパーティクルの表面には、生理活性剤が含まれる。これらの生理活性剤は、タンパク質、核酸及び医薬品等を含む幅広いものとすることができる。したがって、適当な医薬品の中には、抗悪性腫瘍薬、ホルモン、鎮痛薬、麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌剤又は駆虫剤、抗ウイルス剤、インターフェロン、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、及び抗凝血薬等が含まれる
【0047】
本発明の標的化エマルジョンを用いて、イメージング剤と組み合わせた治療薬を提供してもよい。そのようなエマルジョンによれば、例えば、部位における治療の進行をモニターし、投与量又はその後部位に誘導される治療薬について目的とする調整をするため、部位がイメージ(画像化)されるようになるであろう。このようにして、本発明により、従来のイメージング法を使用しながらも、例えば、患者において、血栓、感染症、癌及び梗塞の検出並びに治療処置のための非観血的な手段が提供される。
【0048】
前記の場合のすべてにおいては、前記結合成分がターゲッティングリガンドであろうと補助剤であろうと、前記規定された成分が脂質/界面活性剤層と非共有結合的に結合してもよいし、脂質/界面活性剤層の成分と直接カップリングしてもよく、或いはスペーサー成分を介して前記成分と間接的にカップリングしてもよい。
【0049】
本発明において有用な高Z数原子の油エマルジョンの具体例として、エチオドールエマルジョンを挙げることができるが、このエチオドールエマルジョンにおいては、その脂質被膜に、約50〜99.5モル%レシチン、好ましくは約55〜70モル%レシチン、0〜50モル%コレステロール、好ましくは約25〜45モル%コレステロール及び約0.5〜10モル%ビオチン化ホスファチジルエタノールアミン、好ましくは約1〜5モル%ビオチン化ホスファチジルエタノールアミンが含まれる。ホスファチジルセリン等の他のリン脂質をビオチン化してもよく、ステアリルアミン等の脂肪酸アシル基をビオチンに結合させてもよく、或いはコレステロール又は他の脂肪溶解性化学製品(fat soluble chemical)をビオチン化し、脂質被包性粒子の脂質被膜中に混合させてもよい。本発明の実施において使用するための典型的なビオチン化高Z数原子の油エマルジョンの調製は、公知の手順にしたがって、以下に記載される。
【0050】
イメージング及び/又は治療の標的について、この標的は生物材料である必要がないとはいえ、生体内又は生体外標的、好ましくは生物材料でありうる。前記標的は、造影物質(contrast substance)が結合する表面又は造影物質が前記表面より下の前記標的の部分に浸透及び結合する三次元構造から構成される。
【0051】
好ましくは、リガンドを造影エマルジョン中に混合して、イメージング及び/又は治療の標的における、エマルジョンナノパーティクルの半減期を固定化し又は延長する。前記リガンドは、活性ターゲッティング(active targeting)を可能とすべく、目的とする標的に特異的であってもよい。前記活性ターゲッティングとは、細胞の表面膜上又は細胞外若しくは細胞内マトリックスの内部に生じた、分子エピトープ、すなわちレセプター、ペプチド、細胞付着分子(cell adhesion molecule)、多糖類、及び生体高分子等への局在及び結合による薬剤の細胞、組織又は器官へのリガンド指向性(ligand-directed)、部位特異的蓄積をいう。幅広い種類のリガンドを使用することができ、これには抗体、抗体フラグメント、小オリゴペプチド、大オリゴペプチド又は三次元構造を有するタンパク質等のポリペプチド、ペプチドミメティック(peptidomimetic)、多糖、アプタマー、脂質、核酸、レクチン或いはこれらの組み合わせが含まれる。一般に、前記リガンドは、細胞のエピトープ又はレセプターと特異的に結合する。
【0052】
本願において使用する用語「リガンド(ligand)」は、前記エマルジョン粒子自体から別個独立した生物標的の別の分子と特異的に結合するターゲッティング分子をいうことを意図している。反応については、配位化合物の金属原子と配位共有結合を形成すべく電子対を示し又は受け取る分子は必要とされないが、排除されることもない。したがって、リガンドは、前記ナノパーティクル表面の表面に対して、直接結合するため共有結合的に又は間接結合するため非共有結合的に付着されうる。
【0053】
いくつかの形態において、例えば生体内での使用のため、前記リガンドのその特異的な標的への結合親和力は、約10−7M以上である。いくつかの形態において、例えば、生体外での使用において、前記リガンドのその特異的な標的への結合親和力については、10−7未満とすることができる。
【0054】
アビジン−ビオチン相互作用は極めて有用な、多くの生物学及び分析系に取り入れられ、生体内投与において選択されている、非共有結合性のターゲッティング系である。アビジンは、ビオチンに対する親和力が高く(10−15M)、生理学的条件のもと、急速かつ安定な結合を促進する。このアプローチを利用するいくつかの標的化系は、処方に依存するが、2又は3段階で投与される。典型的にはこれらの系において、モノクローナル抗体等のビオチン化リガンドがまず投与されて、特有の分子エピトープが「予め標的化される(pretargeted)」。次いで、アビジンが投与されるが、これが「予め標的化された」リガンドのビオチン成分と結合する。最後に、ビオチン化エマルジョンが添加され、これがアビジン上に残っている非占有ビオチン結合部位と結合して、リガンド−アビジン−エマルジョン「サンドイッチ(sandwich)」が完成する。アビジン−ビオチンアプローチによれば、表面抗体の存在に二次的である細網内皮系によって、標的化剤(targeted abent)の促進的、早発的クリアランスの発生を防止することができる。さらに、4つの非依存性ビオチン結合部位を含むアビジンによれば、シグナル増幅がもたらされ、検出感度が改善される。
【0055】
ビオチンエマルジョン又はビオチン剤(biotin agent)との結合に関して、本願において使用する用語「ビオチンエマルジョン(biotin emulsion)」又は「ビオチン化(biotinylated)」は、ビオチン、ビオサイチン並びに、ビオチンアミドカプロエート N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチン 4−アミド安息香酸、ビオチンアミドカプロイルヒドラジド及び他のビオチン誘導体及び複合体等の他のビオチン誘導体及び類似物を含むことを意図する。他の誘導体には、ビオチン−デキストラン、ビオチン−ジスルフィド N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチン−6 アミドキノリン、ビオチンヒドラジド、d−ビオチン−N ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチンマレイミド、d−ビオチン p−ニトロフェニルエステル、ビオチン化ヌクレオチド及びN,イプシロン−ビオチニル−l−リジン等のビオチン化アミノ酸が含まれる。アビジンエマルジョン又はアビジン剤との結合に関して、用語「アビジンエマルジョン(avidin emulsion)」又は「アビジン化(avidinized)」は、アビジン、ストレプトアビジン、並びにストレプトアビジン若しくはアビジン複合体、ストレプトアビジン若しくはアビジンの高精製(purified)及び分画(fractionated)種、並びに非アミノ酸又は部分アミノ酸変異体、組換え又は化学合成アビジン等の他のアビジン類似物を含むことを意図する。
【0056】
粒子表面の特性に依存するが、ターゲッティングリガンドを、各種の方法によって、前記エマルジョンのナノパーティクルの表面に化学的に付着させてもよい。使用するリガンドに依存するが、結合は、エマルジョン粒子を作成する前又は後に行ってよい。リガンドのタンパク質剤(proteinaceous agent)への直接の化学結合は、多くの場合、その表面内に本質的に存在する多数のアミノ基(例えば、リジン)を利用する。一方、ピリジルジチオプロピオネート、マレイミド又はアルデヒド等の機能的に活性がある化学基を、粒子が形成された後に、リガンド結合のための化学的な「フック(hooks)」として表面に組み込んでもよい。別の通常の後処理のアプローチは、リガンドの付加より前に、カルボジイミドを有する表面カルボキシレートを活性化することである。選択した共有結合ストラテジーは、主としてリガンドの化学的性質によって決定される。抗体及びその他の巨大なタンパク質は、苛酷な処理条件下で変性されうる;ところが炭水化物、短ペプチド、アプタマー、薬剤又はペプチドミメティックの生理活性は、多くの場合、保護されうる。高いリガンドの結合力(ligand binding integrity)を保証し、標的化粒子結合活性(targeted particle avidity)を最大にするため、フレキシブルポリマースペーサーアーム(flexible polymer spacer arms)、例えばポリグリセリングリコール又は単純なカプロン酸塩ブリッジを、活性化表面官能基(activated surface functional group)とターゲッティングリガンドとの間に挿入することができる。これらの長さは10nm以上とすることができ、粒子表面相互作用によるリガンド結合の干渉を最小にすることができる。
【0057】
抗体、特にモノクローナル抗体を、病理的分子エピトープ(pathologic molecular epitope)を含む分子エピトープの広範なスペクトルの全てに対して作られる部位−ターゲッティングリガンドとして使用してもよい。免疫グロブリン−γ(Immunoglobin-γ)(IgG)クラスのモノクローナル抗体はリポソーム、エマルジョン及び他のマイクロバブル粒子(microbubble particle)と結合して、活性、部位特異的ターゲッティングを与える。一般にこれらのタンパク質は、重鎖及び軽鎖の同一対(identical pairs)からなる対称性の糖タンパク質(分子量約150,000ダルトン)である。二つのアームのそれぞれの末端の高頻度可変領域から同一の抗原結合ドメインが得られる。大きさが可変の分岐炭水化物ドメインを、補体活性化領域(complement-activation resion)に付着させることができ、ヒンジ領域には、還元されて、より小さいフラグメントを生成しうる接触可能な分子内S−S結合が特に含まれる。
【0058】
好ましくは、モノクローナル抗体は、本発明の抗体組成物において使用される。細胞の表面上で選択した抗原に特異的なモノクローナル抗体は、従来技術を用いて容易に作成されうる(例えば、米国特許第RE 32,011号、第4,902,614号、第4,543,439号、及び第4,411,993号参照)。ハイブリドーマ細胞を、抗原と特異的に反応する抗体の製造のために、免疫化学的にスクリーニングすることができ、モノクローナル抗体を単離することができる。他の技術を利用してモノクローナル抗体を構築してもよい(例えば、Huseら(1989)Science 246:1275−1281;Sastryら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5728−5732;Alting−Meesら(1990)Strategies in Molecular Biology 3:1−9)。
【0059】
本発明の状況の中で、抗体については、天然の抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗原結合特異性を保有する抗体フラグメント(例えば、Fab、及びF(ab’))及び組換えで生成した結合パートナー、単ドメイン抗体、ハイブリッド抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、ヒト抗体、及びヒト化抗体等であるが、これらに必ずしも限定されない各種の抗体が含まれると理解される。一般に、抗体が10−1と同等か又はそれ以上の親和力(結合定数)で結合する場合には、抗体は、細胞の選択した抗原に対して反応性であると理解される。エマルジョンと共に使用するため、選択した抗原に対する抗体は、市場から入手すればよい。
【0060】
本願において部位ターゲッティングリガンドとして用いる各種の抗体については、本願において、特に以下の「本発明の組成物」の節において、さらに記載される。
【0061】
本発明のエマルジョンは、抗体又はそのフラグメント以外のリガンドであるターゲッティング剤を用いる。例えば、ポリペプチド様抗体は、標的化造影剤用ベクター分子として使用するため高特異性及びエピトープ親和性を有するかもしれない。これらは、例えば、5〜10アミノ酸を有し、特有のレセプターシーケンス(例えば、血小板GIIbIIIaレセプターのRGDエピトープ)に特異的な小オリゴペプチド、又はコレシストキニン等の、より大きい生理活性ホルモンであってもよい。より小さいペプチドは、非ヒト化マウス抗体よりも潜在的に小さい固有免疫原性を有する。細胞接着分子、サイトカイン、セレクチン、カドヘリン(cadhedrin)、Igスーパーファミリー及びインテグリン等のペプチド又はペプチド(非ペプチド)類似物を、標的化イメージング及び/又は治療送達のために利用してもよい。
【0062】
場合によっては、前記リガンドは、米国特許第6,130,231号(例えば、式1に示される);第6,153,628号;6,322,770号;及びPCT公報WO 01/97848号に記載されているような、非ペプチド有機分子である。一般に「非ペプチド(non-peptide)」成分は、アミノ酸、コード化した遺伝子又はコード化した非遺伝子の単純ポリマーである化合物以外の成分である。したがって、「非ペプチドリガンド(non-peptide ligands)」とは、ポリマーの特性を欠如しかつアミノ酸ポリマー以外の中心構造の必要性によって特徴付けられる「小分子(small molecules)」と一般に称される成分をいう。本発明において有用な非ペプチドリガンドは、ペプチド類とカップリングされていてもよく、或いは標的部位の親和力の原因であるリガンド部分とカップリングするペプチド類を含んでいてもよいが、その結合能力の原因となるのはリガンドの非ペプチド領域である。例えば、αβインテグリンに特異的な非ペプチドリガンドが、米国特許第6,130,231号及び6,153,628号に記載されている。
【0063】
炭水化物含有脂質を、例えば、米国特許第4,310,505号に記載されている、前記エマルジョンのターゲッティングのために使用してもよい。
【0064】
アシアロ糖タンパク質は、肝臓においてのみ確認されるアシアロ糖タンパク質レセプターに対するその高い親和性により、肝臓特定投与(licer-specific application)のために使用されてきた。アシアロ糖タンパク質指向性薬剤(asialoglycoproteins directed agents)(酸化鉄と結合した一次磁気共鳴剤(primarily magnetic resonance agent))は、原発性及び続発性の肝腫瘍、並びに肝炎等の良性、び漫性肝臓病を検出するために使用されてきた。アシアロ糖タンパク質レセプターは、肝臓細胞にかなり豊富に存在し、細胞当たり約500,000が急速に内部移行し、その後細胞表面へ再循環される。アラビノガラクタン等の多糖体を利用して、肝臓標的にエマルジョンを局在化させてもよい。アラビノガラクタンは、アシアロ糖タンパク質肝臓レセプターに対して高い親和性を示す多数の末端アラビノース基を有する。
【0065】
アプタマーは、生体内選択試験(SELEX:試験管内進化法(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)によって生成した、高親和力、高特異性RNA又はDNAベースリガンドである。アプタマーは、20から30のヌクレオチドのランダム配列から作られ、分子抗原又は細胞への吸収によって選択的にスクリーニングされ、特定の親和性の高い結合リガンドを精製すべく濃縮される。生体内安定性及び利用性を高めるため、アプタマーは、一般に、化学的に修飾されて、ヌクレアーゼ消化を低下させ、薬剤、標識又は粒子との結合を促進する。その他、より単純な化学的ブリッジでは、多くの場合、リガンド相互作用に本質的に含まれない核酸が代用される。溶液中でアプタマーは、構造化されていないが、特定の認識を与える標的エピトープを折り、包むことができる。エピトープの周りの核酸の特有の折り畳み構造によって、水素結合、静電気的な相互作用、スタッキング(stacking)、及び形状相補性(shape complementarity)により識別される分子間接触をもたらす。タンパク質ベースのリガンドに比べて、アプタマーは、一般に安定であり、加熱殺菌に対する伝導性がより大きく、免疫原性がより低い。アプタマーは、現在、血管新生、活性化血小板(activated platelet)、及び固形腫瘍等の多数の関連病態をターゲットとすべく用いられ、それらの使用は増加しつつある。イメージング及び/又は治療エマルジョン粒子のターゲッティングリガンドとしてのアプタマーの臨床上の有効性は、クリアランス速度で核酸リン酸基によって与えられる負の表面電荷の影響に依存しうる。脂質ベースの粒子に関する先の研究から、負のゼータ電位によりリポソームの循環半減期が著しく減少されるのに対して、中性又はカチオン粒子では同様の全身持続性(systemic persistence)がより長くなることが示唆される。
【0066】
ある投与用のエマルジョンに、特異的結合種をカップリングさせる「プライマー材料(primer material)」と呼ばれているものを使用することもできる。本願において使用する、「プライマー材料(primer material)」とは、粒子とターゲッティングリガンド又はそのサブユニット等のターゲッティングリガンドの構成成分との間の共有結合を形成するために化学的に利用されうるエマルジョン脂質表面層内に取り込まれる全ての成分或いは誘導体化された成分をいう。
【0067】
したがって、特異的結合種(例えば、ターゲッティングリガンド)は、油/水界面へ直接吸着することによって或いはプライマー材料を用いることによって、被包性脂質単層(encapulated lipid monolayer)上に固定化されうる。プライマー材料は、特異的結合又はターゲッティング種と化学的にカップリングするため或いはこれを吸収するため粒子中に取り込まれるいくつかの界面活性剤互換性化合物(surfactant compatible compound)でありうる。水性の連続相と、連続及び不連続相の界面でプライマー材料に吸着又は結合する生理活性リガンドとを用いてエマルジョンを形成することによって好結果が得られる。アミン、カルボキシル、メルカプト又は、カップリング剤及び高荷電ポリマーと特異的に反応する能力があるその他の官能基を含む天然に産出する又は合成のポリマーが、カップリングプロセスにおいて利用されうる。特異的結合種(例えは、抗体)は、直接の吸着によって又は化学結合(カップリング)によって高Z数原子のエマルジョン粒子表面とカップリングした油上に固定化されうる。直接の吸着によって固定化されうる特異的結合種の例として、小ペプチド、ペプチドミメティック、多糖ベースの剤が挙げられる。そのようなエマルジョンを作成するため、特異的結合種をエマルジョン形成より前に、水相に懸濁又は溶解させてもよい。一方、特異的結合種を、エマルジョン形成後に添加し、室温(約25℃)、pH7.0で1.2から18時間、静かに撹拌しながらインキュベートしてもよい。
【0068】
前記特異的結合種がプライマー材料とカップリングするようなものである場合には、従来のカップリング技術を用いてもよい。前記特異的結合種を、技術として公知の方法を用いて、カップリング剤でプライマー材料と共有結合させてもよい。プライマー材料には、ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanolamine)(PE)、N−カプロイルアミン−PE、n−ドデカニルアミン、ホスファチジルチオエタノール、N−1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[4−(p−マレイミドフェニル)ブチラミド、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[4−(p−マレイミドメチル)シクロヘキサン−カルボキシレート]、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート]、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N[PDP(ポリエチレングリコール)2000]、N−スクシニル−PE、N−グルタリル−PE、N−ドデカニル−PE、N−ビオチニル−PE、又はN−カプロイル−PEが含まれうる。その他のカップリング剤には、例えば、カルボジイミド、或いはエチレン不飽和を有するか又は複数のアルデヒド基を有するアルデヒドの使用が含まれる。使用するのに適したその他のカップリング剤については、本願において、特にこの本発明の組成物の後段において、さらに記載される。
【0069】
特異的結合種のプライマー材料との共有結合については、本願において提供した試薬を用いて、従来公知の方法によって、例えば、1時間から一晩、25℃未満の温度で、中性のpHの水溶液中で、行うことができる。非ペプチドリガンド等のリガンドをカップリングするためのリンカーの例は、技術として公知である。
【0070】
エマルジョンとの結合において、乳化及び/又は可溶化剤を用いてもよい。そのような剤には、アラビアゴム(acacia)、コレステロール、ジエタノールアミン、モノステアリン酸グリセリル、ラノリンアルコール、レシチン、モノ及びジグリセリド、モノエタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロキサマー(poloxamer)、落花生油、パルミチン酸、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポリエチレングリコールジアセテート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ステアリン酸、トロラミン、及び乳化ろうが含まれるが、これらに限定されない。植物若しくは動物起源の脂質中に認められる飽和又は不飽和炭化水素脂肪酸の代わりに、脂質の成分としてパーフルオロ脂肪酸(perfluoro fatty acid)を含む全ての脂質を使用してもよい。エマルジョンと共に使用してもよい懸濁及び粘度上昇(増粘)剤には、アラビアゴム、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム(alminum mono-stearate)、ベントナイト、マグマ(magma)、カーボマー934P、カルボキシメチルセルロース、カルシウム及びナトリウム及びナトリウム12、、カラギーナン、セルロース、デキストリン、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム(magnesium aluminium silicate)、メチルセルロース、ペクチン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコール、二酸化ケイ素、アルギン酸ナトリウム、トラガカントガム、並びにキサンタンガムが含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
本願において記載したように、本発明のエマルジョンには、ナノパーティクルへの取り込み又は吸着を高めるために、生理活性剤(例えば、薬剤、プロドラッグ、遺伝子材料、放射性同位元素、又はこれらの組み合わせ)を、その天然の形態で、又は疎水性若しくは荷電成分を用いて誘導体化して、混合させてもよい。特に、生理活性物質は、本発明の標的エマルジョン中に混合されうる。生理活性剤は、例えば、Sinkylaら(1975)J.Pharm.Sci. 64:181−210、Koningら(1999)Br.J.Cancer 80:1718−1725、米国特許第6,090,800号及び米国特許第6,028,066号に記載されたプロドラッグ等のプロドラッグであってもよい。
【0072】
そのような治療用エマルジョンには、抗悪性腫瘍薬、放射性医薬品、ホルモン等のタンパク質及び非タンパク質自然産物又はその類似物/模倣物(ミメティック)、鎮痛薬、筋弛緩剤、麻薬作用薬、麻薬作用−拮抗薬(narcotic agonist-antagonists)、麻薬拮抗薬、非ステロイド系抗炎症薬、麻酔及び鎮静薬、神経筋遮断薬、抗菌剤、抗駆虫薬(anti-helmintics)、抗マラリア薬、駆虫薬、抗ウイルス剤、抗ヘルペス剤、血圧降下薬、抗糖尿病薬、痛風関連薬(gout related medicants)、抗ヒスタミン薬、抗潰瘍薬、抗凝血剤並びに血液製剤が含まれうるが、これらに限定されない。
【0073】
遺伝子材料には、例えば、組換えRNA及びDNA並びにアンチセンスRNA及びDNA;ハンマーヘッド(hammerhead)RNA、リボザイム、ハンマーヘッドリボザイム、アンチジーン核酸、一本鎖及び二本鎖RNA及びDNA並びにその類似物、免疫賦活性核酸、リボオリゴヌクレオチド、アンチセンスリボオリゴヌクレオチド、デオキシリボオリゴヌクレオチド、並びにアンチセンスデオキシリボオリゴヌクレオチド等、天然又は合成起源の核酸、RNA並びにDNAが含まれる。用いられうるその他のタイプの遺伝子材料には、例えば、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体、及び欠陥又は「ヘルパー(helper)」ウイルス等の発現ベクターに運ばれる遺伝子、アンチジーン核酸、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートオリゴデオキシヌクレオチド等の一本鎖及び二本鎖RNA及びDNA並びにその類似物が含まれる。さらに、前記遺伝子材料を、例えば、タンパク質又はその他のポリマーと組み合わせてもよい。
【0074】
使用するのに適したその他の治療薬については、本願において、特にこの本発明の組成物の後段において、さらに記載される。
【0075】
本願において記載したように、エマルジョンナノパーティクルには、その粒子上に、ガドリニウム、マグネシウム、鉄、マンガン等であるがこれらに限定されない常磁性金属又は超常磁性元素が、その天然又は化学的複合形態で、混合されうる。同様に、ポシトロンエミッター、ガンマエミッター、ベータエミッター、アルファエミッター等の放射性核種が、その天然又は化学的複合形態で、前記粒子上又はその中に含有されうる。これら成分の添加により、磁気共鳴映像法、ポジトロン放射型断層撮影法、並びにX線及び超音波イメージングと組み合わせた核医学イメージング技術等の臨床イメージングモダリティー(clinical imaging modalities)の別の使用が可能となる。
【0076】
さらに、紫外から赤外スペクトルの範囲内で電磁気エネルギーを患者の組織又は領域に照射し、そして照射の結果として生じた反射、散乱、吸収及び/又は蛍光エネルギーを分析することによって、患者の組織又は領域の可視表示をすることをいう光学画像法を、標的化エマルジョンのX線イメージングと組み合わせてもよい。光学画像法の例として、可視写真法(visible photography)及びそのバリエーション、紫外線画像、赤外線画像、蛍光定量法、ホログラフィ、可視顕微鏡観察法(visible microscopy)、蛍光顕微鏡観察法、分光光度法、分光法、及び蛍光極性化(fluorescence polarization)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
光活性剤、すなわち光についての活性がある若しくは光に反応する化合物又は材料には、例えば、診断用又は治療用の投与において使用されうる、発色団(例えば、与えられた波長で光を吸収する材料)、蛍光体(例えば、与えられた波長で光を放射する材料)、光増感剤(例えば、生体外及び/又は生体内で組織の壊死並びに/或いは細胞死を引き起こすことを可能とする材料)、蛍光材料、及びリン光材料等が含まれる。「光(light)」とは、スペクトルの紫外(ultraviolet)(UV)領域、可視領域及び/又は赤外(infrared)領域を含む全ての光源をいう。本発明において使用されうる適当な光活性剤は、これ以外にも記載されている(例えば、米国特許第6,123,923号)。使用するのに適したその他の光活性剤については、本願において、特にこの本発明の組成物の後段において、さらに記載される。
【0078】
さらに、例えば、抗体、ペプチドフラグメント、又は生理活性リガンドのミメティック等、ある一定のリガンドは、特定のエピトープと結合したときに、拮抗薬又は作用薬の何れかとして、特有の治療効果に寄与しうる。例えば、新生血管内皮細胞におけるαβインテグリンに対する抗体は、固形腫瘍の増殖及び転移を過渡的に阻害することが示されている。αβインテグリンに対して指向性の治療用エマルジョン粒子の有効性は、粒子自体によって取り込まれて送達された治療薬の効果に加えて、ターゲッティングリガンドの拮抗作用が改善したことに起因している可能性がある。
【0079】
有用なエマルジョンは、広範な公称粒径(nominal particle diameter)、例えば、約0.01μmという小ささから約10μmという大きさまで、好ましくは約50nmから1000nm、より好ましくは50nmから500nm、場合によっては約50nmから約300nm、場合によっては約100nmから300nm、場合によっては約200nmから250nm、場合によっては約200nm、場合によっては約200nm未満、を有しうる。一般に、小さい径の粒子、例えば、サブミクロン粒子は、より長く循環し、より大きい粒子よりも安定である傾向がある。
【0080】
本願において他で記載したことに加えて、本発明のエマルジョン中に及び/又はこれと共に部位ターゲッティングリガンドとして使用するのに適した各種の抗体については、以下に、さらに記載される。
【0081】
二価F(ab’)及び一価F(ab)フラグメントをリガンドとして使用することができ、これらは、それぞれ、ペプシン又はパパイン消化による全抗体の選択的切断から誘導される。抗体を、従来技術を用いて断片化することができ、フラグメント(「Fab」フラグメントを含む)を、全抗体のための前記記載と同様の方法で有用性についてスクリーニングすることができる。「Fab」領域とは、重鎖又は軽鎖の分岐部分を含むシーケンスとおおよそ同等、或いは類似であり、特定の抗原への免疫学的結合を示すことが明らかになっているが、エフェクターFc部分を欠如している重鎖及び軽鎖部分をいう。「Fab」には、一つの重鎖及び一つの軽鎖(Fab’として一般に知られている)の集合体、並びに2H鎖及び2L鎖を含むテトラマー(F(ab)と称する)が含まれるが、この「Fab」には、指定した抗原又は抗原ファミリーと選択的に反応する能力がある。抗体のFabフラグメントを製造する方法は、その技術の範囲内で公知であり、これには、例えば、タンパク質分解、及び組換え技術による合成が含まれる。例えば、F(ab’)フラグメントを、ペプシンで抗体を処理することによって生成することができる。生じたF(ab’)フラグメントを処理してジスルフィドブリッジを還元し、Fab’フラグメントを生成することができる。「Fab」抗体は、本願において記載したものと類似のサブセット、すなわち、「ハイブリッドFab(hybrid Fab)」、「キメラFab(chimeric Fab)」、及び「変質Fab(altered Fab)」に分類されうる。Fc領域の除去により、分子の免疫原性が大きく減少し、結合した炭水化物に二次的な非特異的肝臓取り込み(nonspecific liver uptake)が減少し、さらに補体活性化(complement activation)及び結果として生じた抗体依存性細胞毒性が減少する。補体固定化(complement fixation)及び結合した細胞の細胞毒性は、標的化部位が保護されなければならない場合に有害で、ホストキラー細胞(host killer cell)の補充及び標的細胞の破壊が望まれる(例えば、抗腫瘍剤)場合に有益でありうる。
【0082】
モノクローナル抗体の大部分は、マウス起源のものであり、他の種で変動する範囲まで本質的に免疫原性である。遺伝子操作によるマウス抗体のヒト化が、生体適合性の改善及び循環半減期のさらなる延長と共にキメラリガンドの開発につながった。本発明において使用される抗体には、ヒト化したもの、又はこれらの抗体を投与するであろう個体に適合させたものが含まれる。いくつかの場合では、標的化分子エピトープに対する組換え抗体の結合親和力は、結合イディオタイプ(binding idiotype)の選択的な部位特異的突然変異(site-directed mutagenesis)と共に改善されうる。抗体分子のそのような遺伝子操作の方法及び技術は、技術として公知である。「ヒト化した(humanized)」とは、抗体のアミノ酸シーケンスを変化させて、その結果、それがヒトに投与される場合には、ヒト化した抗体に対して示される抗体及び/又は免疫反応がより少なくなるという意味である。ヒト以外の哺乳動物の抗体の使用に関し、抗体は、その種の形式に転換されてもよい。
【0083】
ファージディスプレイ技術を用いて、抗体産生動物(antibody-producing animal)を必要としないで、より広い範囲の種々な抗原に対する組換え型ヒトモノクローナル抗体フラグメントを生成することができる。一般に、クローニングによって、ヒトBリンパ球の全メッセンジャーRNA(mRNA)から酵素「逆転写酵素(reverse transcriptase)」により除去及び合成された対応するDNA(cDNA)鎖の膨大な遺伝子ライブラリーが作成される。一例として、免疫グロブリンcDNA鎖がポリメラーゼ連鎖反応法(polymerase chain reaction)(PCR)によって増幅され、与えられる抗原に対して特異的な軽鎖及び重鎖がファージミドベクターに導入される。このファージミドベクターの適当な細菌への形質移入により、バクテリオファージの表面においてscFv免疫グロブリン分子の発現が生ずる。特定の免疫グロブリンを発現させるバクテリオファージは、目的の抗原(例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、及び糖)に対する免疫吸着/ファージ増殖サイクルの反復によって選択される。標的抗原に専ら特異的なバクテリオファージが適当なベクター(例えば、大腸菌、酵母、細胞)に導入され、発酵により増幅されて、一般に天然の抗体と極めて類似した構造を有する、大量のヒト抗体フラグメントが生成される。ファージディスプレイ技術は技術として公知であり、これによって、ターゲッティング及び治療用投与のため、特有のリガンドの製造が可能となった。
【0084】
選択した抗原に対するヒトポリクローナル抗体は、ウマ、ウシ、各種のトリ、ウサギ、マウス、又はラット等の各種の温血動物からその技術における通常の知識を有するものによって容易に生成されうる。いくつかの場合において、選択した抗原に対するヒトポリクローナル抗体を、ヒト源から精製してもよい。
【0085】
本願において使用する「シングルドメイン抗体(single domain antibody)」(dAb)は、Vドメインからなる抗体であるが、これは指定した抗原と免疫学的に反応する。dAbは、Vドメインを含まないが、抗体中に存在することが知られている他の抗原結合ドメイン、例えば、カッパ及びラムダドメインを含みうる。dAbを調製する方法は技術として公知である。例えば、Wardら(1989)Nature 341:541−546を参照すべきである。抗体は、Vドメイン及びVドメイン、並びにその他の公知の抗原結合ドメインから構成されていてもよい。これらのタイプの抗体の例及びそれらの調製方法は技術として公知である(例えば、米国特許第4,816,467号参照)。
【0086】
抗体の具体例として、さらに、第二重鎖のFc(すなわち、定常)領域と結合した重鎖/軽鎖ダイマーからなる集合体である、「一価抗体(univalent antibody)」が挙げられる。このタイプの抗体は、一般に、抗原変調を免れる。例えば、Glennieら(1982)Nature 295:712−714を参照すべきである。
【0087】
「ハイブリッド抗体(hybrid antibodies)」は、重鎖及び軽鎖の一方の対が第一の抗体のものと類似しているが、重鎖及び軽鎖の他方の対が別の第二の抗体のものと類似している抗体である。典型的には、これら二つの対のそれぞれは、特に種々の抗原において、異なるエピトープを結合するであろう。これにより、「二価(divalence)」の特性、すなわち二つの抗原を同時に結合する能力が生ずる。そのようなハイブリッドを、本願において示したキメラ鎖を用いて形成してもよい。
【0088】
本発明には、脊椎動物抗体の天然に産出するアミノ酸シーケンスが変化した抗体を意味する、「変質抗体(altered antibodies)」も含まれる。組換えDNA技術を利用すると、抗体を再設計して目的とする特性を得ることができる。可能性のあるバリエーションは数多くあり、1以上のアミノ酸を変化させることから領域、例えば定常部の完全な再設計までの範囲に及ぶ。可変部の変化が、抗原結合特性を変化させるようになされてもよい。抗体を、エマルジョンの特定の細胞又は組織部位への特定の送達を手助けするよう、操作してもよい。目的とする変化は、分子生物学、例えば、組換え技術、部位特異的突然変異、及びその他の技術として公知の技術によってなされうる。
【0089】
「キメラ抗体(chimeric antibodies)」は、重鎖及び/又は軽鎖が融合タンパク質である抗体である。典型的には、これらの鎖の定常ドメインは、ある特定の種及び/又はクラスからのものであり、可変ドメインは、異なる種及び/又はクラスからのものである。本発明には、キメラ抗体誘導体、すなわち非ヒト動物可変部とヒト定常部とを組み合わせる抗体分子が含まれる。キメラ抗体分子には、例えば、ヒト定常部を含むマウス、ラット、又はその他の種の抗体からの抗原結合ドメインが含まれうる。キメラ抗体を作成するための各種アプローチが記載されており、このようなアプローチを用いて、標的化細胞及び/又は組織の表面において選択した抗原を認識する免疫グロブリン可変部を含むキメラ抗体を作成することができる。例えば、Morrisonら(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851;Takedaら(1985)Nature 314:452;米国特許第4,816,567号及び第4,816,397号;欧州特許第171496号公報及び第173494号;英国特許第2177096B号を参照すべきである。
【0090】
二重特異性抗体(bispecific antibody)には、抗標的部位抗体の可変部及び脂質被包性エマルジョンの表面上の少なくとも一つの抗原に対して特異的な可変部が含まれうる。その他の場合、二重特異性抗体には、抗標的部位抗体の可変部及びリンカー分子に対して特異的な可変部が含まれうる。二重特異性抗体は、例えば体細胞雑種(ハイブリダイゼーション)によってハイブリッドハイブリドーマを形成して、得られうる。ハイブリッドハイブリドーマは、Staerzら(1986、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83:1453)及びStaerzら(1986、Immunology Today 7:241)に開示された処置等の技術として公知の処置を用いて調製されうる。体細胞雑種には、クアドローマを産生する二つの株化ハイブリドーマの融合(Milsteinら(1983)Nature 305:537−540)又はトリオーマ(trioma)を産生する第二抗原で免疫されたマウスに由来するリンパ球と一つの株化ハイブリドーマの融合が含まれる(Nolanら(1990)Biochem.Biophys.Acta 1040:1−11)。ハイブリッドハイブリドーマは、特定の薬剤耐性マーカー(drug resistance marker)に抵抗性である各ハイブリドーマ株化細胞を作成することによって(De Lauら(1989)J.Immunol.Methods 117:1−8)、又は各ハイブリドーマを異なる蛍光色素で標識し、かつヘテロ蛍光細胞(heterofluorescent cell)を選別することによって(Karawajewら(1987)J.Immunol.Methods 96:265−270)選択される。
【0091】
二重特異性抗体を、Staerzら(1985)Nature 314:628及びPerezら(1985)Nature 316:354に記載された処置等の処置を用いる化学的手段によって作成してもよい。化学結合は、例えば、E−アミノ基又はヒンジ部チオール基を含むホモ及びヘテロ二官能試薬の使用によるものであってもよい。5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(5,5'-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)(DNTB)等のホモ二官能試薬により、二つのFab間にジスルフィド結合が生成し、O−フェニレンジマレイミド(O-phenylenedimaleimide)(O−PDM)等により、二つのFab間にチオエーテル結合が生成する(Brennerら(1985)Cell 40:183−190、Glennieら(1987)J.Immunol.139:2367−2375)。N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(N-succinimidyl-3-(2-pyridylditio)propionate)(SPDP)等のヘテロ二官能試薬により、クラス又はアイソタイプに関わらず、抗体の接触したアミノ基とFabフラグメントとが結合される(Van Dijkら(1989)Int.J.Cancer 44:738−743)。
【0092】
二官能抗体を、遺伝子操作技術によって調製してもよい。遺伝子操作には、抗体の特定のフラグメントをコードするDNAシーケンスをプラスミド中に連結させるべく組換えDNAを使った技術を使用すること、及び組換えタンパク質を発現させることが含まれる。二重特異性抗体を、リンカーを用いて二つの単鎖Fv(scFv)フラグメントを組み合わせることによって単一の共有構造として(Winterら(1991)Nature 349:293−299);転写因子fos及びjunから誘導したシーケンスを共発現するロイシンジッパーとして(Kostelnyら(1992)J.Immunol.148:1547−1553);p53の相互作用ドメインを共発現するヘリックス・ターン・ヘリックスとして(Rheinneckerら(1996)157:2989−2997)或いは二重特異性抗体(diabodies)として(Holligerら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6444−6448)作成することもできる。
【0093】
本願において他で記載したことに加えて、プライマー材料を、例えば、特異的結合又はターゲッティングリガンドとカップリングさせる際に使用するのに適したカップリング剤については、以下に、さらに記載される。別途カップリング剤については、1−エチル−3−(3−N,N ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩又は1−シクロヘキシル−3−(2−モルフォリノエチル)カルボジアミドメチル−p−トルエンスルホネート等のカルボジイミドが使用される。その他の適当なカップリング剤には、アクロレイン、メタクロレイン、若しくは2−ブテナール等のエチレン不飽和を有するか又はグルタルアルデヒド、プロパンジアル若しくはブタンジアル等の複数のアルデヒド基を有するアルデヒドカップリング剤が含まれる。その他のカップリング剤には、塩酸2−イミノチオラン(2-iminothiolane hydrochloride);ジスクシンイミジル基質、酒石酸ジイミジル、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、プロピオン酸ジスクシンイミジル、エチレングリコールビス(コハク酸スクシンイミジル)等の二官能N−ヒドロキシスクシンイミドエステル;N−(5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシ)スクシンイミド、臭化p−アジドフェニル、p−アジドフェニルグリオキサール、4−フルオロ−3−ニトロフェニルアジド、N−ヒドロキシスクシンイミジル−4−アジドベンゾエート、m−マレイミドベンゾイル N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、メチル−4−アジドフェニルグリオキサール、4−フルオロ−3−ニトロフェニルアジド、N−ヒドロキシスクシンイミジル−4−アジドベンゾエート塩酸塩、p−ニトロフェニル 2−ジアゾ−3,3,3−トリフルオロプロピオネート、N−スクシンイミジル−6−(4’−アジド−2’−ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、スクシンイミジル 4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート、N−スクシンイミジル(4−アジドフェニルジチオ)プロピオネート、N−スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート、N−(4−アジドフェニルチオ)フタルアミド等のヘテロ二官能性試薬;1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン、4,4’−ジフルオロ−3,3’−ジニトロジフェニルスルホン、4,4’−ジイソチオシアノ−2,2'−ジスルホン酸スチルベン、p−フェニレンジイソチオシアネート、カルボニルビス(L−メチオニン p−ニトロフェニルエステル)、4,4’−ジチオビスフェニルアジド、エリスリトールビスカーボネート等のホモ二官能性試薬、並びに塩酸ジメチルアジピミデート、ジメチルスベリミデート、塩酸ジメチル 3,3’−ジチオビスプロピオンイミデート等の二官能性イミドエステル等が含まれる。
【0094】
本願において他で記載したことに加えて、本発明のナノパーティクル上に又はその内部に取り込まれうる治療薬については、以下に、さらに記載される。一般に、治療薬を、脂質アンカーを用いて誘導体化して、薬剤を脂質可溶性にすることや、脂質における溶解性を増大させること、そのためにエマルジョンの脂質層中及び/又は標的細胞の脂質膜中の保持時間を増大させることができる。そのような治療用エマルジョンには、白金化合物(例えば、スピロプラチン、シスプラチン、及びカルボプラチン)、メトトレキセート、フルオロウラシル、アドリアマイシン、マイトマイシン、アンサミトシン(ansamitocin)、ブレオマイシン、シトシンアラビノシド、アラビノシルアデニン、メルカプトポリリジン(mercaptopolylysine)、ビンクリスチン、ブスルファン、クロランブシル、メルファラン(例えば、PAM、L−PAM又はフェニルアラニンマスタード(phenylalanine mustard))、メルカプトプリン(mercaptopurine)、ミトタン、塩酸プロカルバジン ダクチノマイシン(アクチノマイシン D)、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、タキソール、プリカマイシン(ミトラマイシン)、アミノグルテチミド、リン酸エストラムスチンナトリウム、フルタミド、酢酸ロイプロリド、酢酸メゲストロール、クエン酸タモキシフェン、テストラクトン、トリロスタン、アムサクリン(m−AMSA)、アスパラギナーゼ(L−アスパラギナーゼ)Erwinaアスパラギナーゼ、インターフェロン α−2a、インターフェロン α−2b、テニポシド(VM−26)、硫酸ビンブラスチン(VLB)、硫酸ビンクリスチン、ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、メトトレキセート、アドリアマイシン、アラビノシル、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ダカーバジン 、並びにエトポシド及びその他のビンカアルカロイド等の有糸分裂阻害剤等の抗悪性腫瘍薬;放射性ヨウ素、サマリウム、ストロンチウム コバルト、イットリウム等であるがこれらに限定されない放射性医薬品;成長ホルモン、ソマトスタチン、プロラクチン、甲状腺ホルモン(thyroid)、ステロイド、アンドロゲン、プロゲスチン、エストロゲン及び抗エストロゲン剤等であるがこれらに限定されないホルモン等のタンパク質及び非タンパク質自然産物又はその類似物/模倣物(ミメティック);オーラノフィン、メトトレキセート、アザチオプリン、スルファサラジン(sulfazalazine)、レフルノミド、ヒドロキシクロロキン(hydrochloroquine)及びエタネルセプト等の抗リウマチ薬等であるがこれらに限定されない鎮痛薬;バクロフェン、ダントロレン、カリソプロドール、ジアゼパム、メタキサロン、シクロベンザプリン、クロルゾキサゾン、チザニジン等の筋弛緩剤;コデイン、フェンタニル、ヒドロモルフォン、レボルファノール(lleavorphanol)、メペリジン、メサドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルフォン、プロポキシフェン等の麻薬作用薬;ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィン、ペンタゾシン等の麻薬作用−拮抗薬;ナルメフェン及びナロキソン等の麻薬拮抗薬、ASA、アセトアミノフェン(acetominophen)、トラマドール、又はこれらの組み合わせ等のその他の鎮痛薬;セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ナプロキセン、オキサプロキセン(oxaproxen)、ロフェコキシブ、サリサル酸塩(salisalate)、スリンダク、トルメチン等であるがこれらに限定されない非ステロイド系抗炎症薬;エトミデート、フェンタニル、ケタミン、メトヘキシタール、プロポフォール、スフェンタニル、及びチオペンタール等の麻酔及び鎮静薬;パンクロニウム、アトラクリウム、シスアトラクリウム、ロクロニウム、スクシニルコリン、ベクロニウム等であるがこれらに限定されない神経筋遮断薬;アミノグリコシド等の抗菌剤、アンホテリシン B、クロトリマゾール、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ニスタチン、及びテルビナフィン等の抗真菌剤;抗駆虫薬(anti-helmintics);クロロキン、ドキシサイクリン、メフロキン、プリマキン、キニーネ等の抗マラリア薬;ダプソン、エタンブトール、エチオナミド、イソニアジド、ピラチナミド、リファブチン、リファンピン、リファペンチン等の抗マイコバクテリア薬;アルベンダゾール、アトバコン、ヨードキノール、イベルメクチン、メベンダゾール、メトロニダゾール、ペンタミジン、プラジカンテル、ピランテル、ピリメタミン、チアベンダゾール等の駆虫薬;アバカビル、ジダノシン、ラミブジン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン並びにインジナビル及び関連化合物等のプロテアーゼ阻害剤、シドフォビル、フォスカーネット、及びガンシクロビル等であるがこれらに限定されない抗CMV剤等の抗ウイルス剤;アマタジン、、リマンタジン、ザナミビル等の抗ヘルペス剤;インターフェロン、リバビリン、レベトロン;カルバペネム、セファロスポリン、フルオロキノン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、及びアズトレオナム、クロラムフェニコール、ホスホマイシン、フラゾリドン、ナリジクス酸、ニトロフラントイン、バンコマイシン等のその他の抗菌剤;硝酸塩、及び利尿薬、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、抗アドレナリン作動(作用)薬、抗リズム障害薬、抗高脂血症薬(antihyperlipidemic agents)、抗血小板化合物、昇圧薬、血栓溶解薬、座瘡製剤(acne preparations)、抗乾癬薬(antipsoriatics)等の血圧降下薬;コルチコステロイド;アンドロゲン、同化ステロイドホルモン、ビスフォスフォネート;スルフォノ尿素(sulfonoureas)及びその他の抗糖尿病薬;痛風関連薬;抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、鬱血除去薬、及び去痰薬;制酸薬、5−HT受容体拮抗薬、H2拮抗薬、ビスマス化合物、プロトンポンプ阻害剤、下剤、オクトレオチド、及びその類似物/模倣物等の抗潰瘍薬;抗凝血剤;免疫化抗原(immunizaton antigens)、免疫グロブリン(immunoglobins)、免疫抑制剤;抗痙攣薬、5−HT受容体作用薬、その他の偏頭痛療法;抗コリン薬、及びドーパミン作動薬等のパーキンソン病薬;エストロゲン、GnRH作用薬、プロゲスチン、エストロゲン受容体修飾因子(estrogen receptor modulators)、子宮収縮抑制剤、子宮収縮薬、ヨード製品等の甲状腺剤及び抗甲状腺剤;非経口鉄、ヘミン、ヘマトポルフィリン及びこれらの誘導体等の血液製剤も含まれうるが、これらに限定されない。
【0095】
本願において他で記載したことに加えて、本発明のナノパーティクルの光学画像法において使用するのに適した別途光活性剤については、以下に、さらに記載される。適当な光活性剤には、例えば、フルオレセイン、インドシアニングリーン、ローダミン、トリフェニルメチン(triphenylmethine)、ポリメチン(polymethine)、シアニン、フラーレン、オキサテルラゾール(oxatellurazole)、verdins、ロジン、パーフィセン(perphycene)、サフィリン、ルビリン(rubyrin)、コレステリル 4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インドアセン−3−ドデカノエート、コレステリル 12−(N−メチル−N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ドデカネート、シス−パリナル酸コレステリル(cholesteryl cis-parinarate)、コレステリル 3−((6−フェニル)−1,3,5−ヘキサトリエニル)フェニル−プロピオネート、コレステリル 1−ピレンブチレート、コレステリル−1−ピレンドデカノエート、コレステリル 1−ピレンヘキサノエート、22−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ−23,24−ビスノル−5−コレン−3β−オール、22−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ−23,24−ビスノル−5−コレン−3β−イル シス−9−オクタデセノエート、1−ピレンメチル3−ヒドロキシ−22,23−ビスノル−5−コレネート、1−ピレン−メチル 3β−(シス−9−オクタデセノイロキシ)−22,23−ビスノル−5−コレネート、アクリジンオレンジ 10−ドデシルブロマイド、アクリジンオレンジ 10−ノニルブロマイド、4−(N,N−ジメチル−N−テトラデシルアンモニウム)−メチル−7−ヒドロキシクマリン)クロライド、5−ドデカノイルアミノフルオレセイン、5−ドデカノイルアミノフルオレセイン−ビス−4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルエーテル、2−ドデシルレゾルフィン、フルオレセインオクタデシルエステル、4−ヘプタデシル−7−ヒドロキシクマリン、5−ヘキサデカノイルアミノエオシン、5−ヘキサデカノイルアミノフルオレセイン、5−オクタデカノイルアミノフルオレセイン、N−オクタデシル−N’−(5−(フルオレセイニル))チオ尿素、オクタデシルローダミン B クロライド、2−(3−(ジフェニルヘキサトリエニル)−プロパノイル)−1−ヘキサデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、6−N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサン酸、1−ヘキサデカノイル−2−(1−ピレンデカノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,1’−ジオクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチル−インドカルボシアニンパークロレート、12−(9−アントロイロキシ)オレイン酸、5−ブチル−4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インドアセン−3−ノナン酸、N−(LissaminTMローダミン B スルホニル)−1,2−ジヘキサデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、トリエチルアンモニウム塩、フェニルグリオキサル一水和物、ナフタレン−2,3−カルボキサルデヒド、8−ブロモメチル−4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インドアセン、o−フタルジアルデヒド、LissaminTMローダミン B スルホニルクロライド、2’,7’−ジフルオロフルオレセイン、9−アントロニトリル、1−ピレンスルホニルクロライド、4−(4−(ジヘキサデシルアミノ)−スチリル)−N−メチルピリジニウムヨード、クロリン、クロリンe6、ボネリン、モノ−L−アスパルチル クロリンe6、メソクロリン、メソテトラフェニルイソバクテリオクロリン、及びメソテトラフェニルバクテリオクロリン等のクロリン類、hypocrellin B、オクタエチルプルプリン、エチオプルプリン亜鉛(II)、エチオプルプリンスズ(IV)及びエチルエチオプルプリンスズ等のプルプリン類、ルテチウム テキサフィリン、フォトフリン、メタロポルフィリン、光ポルフィリンIX、スズ光ポルフィリン、ベンゾポルフィリン、ヘマトポルフィリン、フタロシアニン、ナフトシアニン、メロシアニン、ランタニド複合体、ケイ素フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、Geオクタブチオキシフタロシアニン、、メチルフェオホルビド−α−(ヘキシル−エーテル)、ポルフィセン、ケトクロリン(ketochlorin)、スルホン化テトラフェニルポルフィリン、δ−アミノレブリン酸、例えば、1,2−ジニトロ−4−ヒドロキシ−5−メトキシベンゼン、1,2−ジニトロ−4−(1−ヒドロキシヘキシル)オキシ−5−メトキシベンゼン、4−(1−ヒドロキシヘキシル)オキシ−5−メトキシ−1,2−フェニレンジアミン等のテキサフィリン類、並びに金属Y(III)、Mn(II)、Mn(III)、Fe(II)、Fe(III)及びランタニド金属Gd(III)、Dy(III)、Eu(III)、La(III)、Lu(III)及びTb(III)を含むテキサフィリン金属錯体、クロロフィル、カロテノイド、フラボノイド、ビリン、フィトクロム、フィコビリン、フィコエリトリン、フィコシアニン、レチノイン酸、レチノイン、レチネート、或いは前記全ての組み合わせが含まれるが、これらには限定されない。
【0096】
上記化合物が、例えば、蛍光材料及び/又は光増感剤であることを、当業者は容易に理解するであろうし、或いは容易に判断することができる。LISSAMINEは、N−エチル−N-[4−[[4−[エチル[(3−スルホフェニル)メチル]アミノ]フェニル](4−スルホフェニル−1)−メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−3−スルホベンゼン−メタナミニウム水酸化物、内部塩(inner salt)、二ナトリウム塩及び/又はエチル[4[p[エチル(m−スルホベンジル)アミノ]−α−(p−スルホフェニル)ベンジリデン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン](m−スルホベンジル)アンモニウム水酸化物 内部塩 二ナトリウム塩(Molecular Probes社、ユージーン、オレゴンから市販されている)に対する登録商標である。本発明において使用するためのその他の適当な光活性剤として、4,5,9,24−テトラエチル−16−(1−ヒドロキシヘキシル)オキシ−17 メトキシペンタアザペンタシクロ−(20.2.1.1,6.1,11.014,19)−ヘプタコサ−1,3,5,7,9,11(27),12,14,16,18,20,22(25),23−トリデカエンのジスプロシウム複合体及び2−シアノエチル−N,N−ジイソピロピル−6−(4,5,9,24−テトラエチル−17−メトキシペンタアザペント アシクロ−(20.2.1.1,6.1,11.014,19)−ヘプタコサ−1,3,5,7,9,11(27),12,14,16,18,20,22(25),23−トリデカエン−16−(1−オキシ)ヘキシルホスホラミダイト等の米国特許第4,935,498号に記載されているものが挙げられる。
【0097】
(組成物の調製方法)
本発明のエマルジョンは、各種技術によって調製されうる。本発明のエマルジョンを調製する典型的な手順では、高Z数原子とカップリングした油及び脂質/界面活性剤被膜の成分を水性媒体中で流動化させて、エマルジョンを形成する。表面層の官能成分が、もとのエマルジョンに含まれてもよく、或いはナノパーティクルエマルジョンの形成後、さらに後に表面層に共有結合されてもよい。例えば、核酸ターゲッティング剤又は薬が含まれるべき特別な一例では、被膜には、カチオン性界面活性剤が使用されてもよく、核酸は、パーティクルが形成された後表面に吸着する。
【0098】
一般に、乳化工程には、水溶液、プライマー材料又は特異的結合種、高Z数原子とカップリングした油、界面活性剤(使用する場合)の混合物の高圧流をつくって、その結果これらを互いに衝突させて狭い粒子径及び分布のエマルジョンを製造させることが含まれる。MICROFLUIDIZER装置(Microfluidics、ニュートン、マサチューセッツ)を用いて、目的とするエマルジョンを作成することができる。当該装置は、超音波処理又はその他の従来法によって作成されるエマルジョンを後処理することにも有用である。MICROFLUIDIZER装置によりエマルジョン液滴の流れを与えることによって、小さい径及び狭い粒子径分布の製剤が作成される。
【0099】
エマルジョンを作成する別の方法には、高Z数原子とカップリングした油の混合物と、適当なプライマー材料及び/又は特異的結合種を含む水溶液の超音波処理が含まれる。一般に、これらの混合物には、界面活性剤が含まれる。乳化されている混合物を冷却し、界面活性剤の濃度を最小限にし、生理食塩水バッファで緩衝させることによって、通常、特異的結合特性の保持時間及びプライマー材料の結合(カップリング)能力が最大になるであろう。これらの技術によって、吸収されるプライマー材料又は特異的結合種の単位当たり活性の高い、優れたエマルジョンが提供される。
【0100】
高濃度のプライマー材料又は特異的結合種を、脂質エマルジョン上に被覆した場合には、混合物を、超音波処理中、加熱し、比較的低いイオン強度とし、低pHに抑えるべきである。イオン強度を低くしすぎる、pHを低くしすぎる又は加熱をしすぎると、特異的結合種の有用な結合特性又はプライマー材料の結合能力の全てが幾分減少又は喪失する可能性がある。乳化条件を注意深く制御及び変化させることによって、プライマー材料又は特異的結合種の特性を最適にし、同時に高濃度の被膜を得ることができる。投与前に、これらの形成物を、公知の技術、例えば定期的蒸気滅菌法(terminal steam sterilization)を用いて滅菌してもよい。
【0101】
エマルジョン粒子径を、乳化技術及び化学成分の変更によって制御及び変化させることができる。粒子径を測定するための技術及び装置は公知であり、これにはレーザー光散乱(laser light scattering)及び粒子によるレーザー光散乱を測定する分析機が含まれるが、これらに限定されない。
【0102】
適当に調製された場合には、補助剤(ancillary agents)を含むナノパーティクルは、その外表面に多数の官能性補助剤を含むが、当該ナノパーティクルは、典型的に100又は1,000の生理活性剤、ターゲッティングリガンド、放射性核種、MRI造影剤及び/又はPET造影剤の分子を含む。MRI造影剤に関し、ナノパーティクルとカップリングすべき成分の複製の数は、典型的に、粒子当たり5,000コピーを超えるが、より好ましくは粒子当たり10,000コピーを超え、さらに好ましくは30,000コピーを超え、さらに好ましくは粒子当たり50,000〜100,000コピー又はそれ以上である。粒子当たりのターゲッティング剤の数は、典型的には、より小さく、数百程度であり、PET造影剤、フルオロフォア、放射性核種,及び生理活性剤の濃度も可変である。
【0103】
前記ナノパーティクルは、補助剤を含む必要がない。一般に、前記粒子は、高Z数原子の油核を有するため、X線イメージング、ある場合には、超音波イメージングを用いて本願に記載したいくつかの付加的官能基と同時に粒子の位置を追跡することができる。さらに、そのような粒子は、それ自体、イメージング造影剤として有用である。さらに、多数の複製中への他の成分の含有によって、それらは、本願において記載したように、他の点で有用となる。例えば、常磁性イオンを含むキレート化剤の含有によって、エマルジョンはMRI造影剤として有用になる。生理活性材料の含有によって、エマルジョンは薬剤送達系として有用になる。放射性核種の含有によって、エマルジョンは放射線治療用の治療薬として又は画像診断用薬として有用になる。他のイメージング剤には、フルオレセイン又はダンシル等のフルオロフォアが含まれる。生理活性剤を含有させてもよい。そのような多数の活性を含有させてもよい;したがって、標的化組織の画像を得ることができ、同時に活性物質が標的化組織に送達される。
【0104】
エマルジョンを、被膜中に含有されるべき成分の性質に左右される方法の範囲内で調製することができる。典型的な方法として、単に実例としての説明を目的とするものであるが、以下の方法が示される:エチオドール(ヨード化油、20%w/v)、界面活性剤共混合物(2.0%、w/v)、グリセリン(1.7%、w/v)及び残余の水を調製する。ここで、前記界面活性剤共混合物は、70mol%レクチン、28mol%コレステロール及びクロロホルムに溶解した2mol%ジパルミトイル−ホスファチジルエタノールアミン(dipalmitoyl-phosphatidylethanolamine)(DPPE)を含有する。薬剤を、2%界面活性剤層につき0.01から50mol%、2%界面活性剤層につき0.01から20mol%、2%界面活性剤層につき0.01から10mol%、2%界面活性剤層につき0.01から5.0mol%、好ましくは2%界面活性剤層につき0.2から2.0mol%の滴定量で、添加する。クロロホルム−脂質混合物を、減圧下蒸発させ、一晩50℃の真空乾燥器中で乾燥し、超音波処理により水中に分散させる。懸濁液を、ヨード化油を含む蒸留水又は脱イオン水が入ったブレンダーカップ(blender cup)(例えば、アメリカのDynamics Corporationから)中に移し、30〜60秒間乳化する。乳化した混合物を、Microfluidics乳化機に移し、次いで4分間20,000PSIで処理する。でき上がったエマルジョンを、ガラス瓶に入れ、窒素で満たし、使用するまでストッパークリンプシール(stopper crimp seal)で密封する。コントロール(対照)のエマルジョンを、界面活性剤共混合物から薬剤を除いて同様に調製することができる。粒子径を、緊密かつ高い再現性のある200nm未満の平均径をもつ径分布を示すレーザー光散乱サブミクロン粒子径分析機(Malvern Zetasizer 4、Malvern Instruments社、サウスボーロー、マサチューセッツ)37℃で3回測定する。取り込まれなかった薬剤を、透析又は限外濾過技術によって除去することができる。ターゲッティングリガンドを与えるよう、例えば、本願に記載した方法で二官能性リンカーを介して抗体若しくは抗体フラグメント又は非ペプチドリガンドが、ホスファチジルエタノールアミンと共有結合される。
【0105】
(キット)
本発明のエマルジョンを、本発明の方法で直接調製及び使用してもよく、或いは、エマルジョンの成分を、キットの形態で提供してもよい。前記キットには、バッファ中に含めた又は凍結乾燥の形態で目的とする補助材料の全てを含む非標的化組成物を含めてもよい。前記キットには、バッファ中に含めた又は凍結乾燥の形態で目的とする補助材料及びターゲッティング材料の全てを含む前調製した標的化組成物を含めてもよい。一方、前記キットには、別々に提供されるターゲッティング剤を欠いた形態のエマルジョンを含めてもよい。これらのような事情では、典型的に、エマルジョンには、当該エマルジョンをターゲッティング剤と混合する場合に、ターゲッティング剤のエマルジョン自体との結合をさせる、マレイミド基等の反応性基が含まれるであろう。別個のコンテナ (容器)によって、カップリング(結合)を引き起こすのに有用な付加的試薬が提供されてもよい。一方、エマルジョンには、それ自体反応性基を含み別々に提供されるべき目的とする成分とカップリングするリンカーと結合する反応性基を含めてもよい。適切なキットを構築するためのアプローチには多種多様のものが考えられる。したがって、最終(完成)エマルジョンを構成する個々の成分は、別々のコンテナで提供されてもよく、或いは、キットには、単に、キット自体とは別に提供される他の材料との結合(組み合わせ)のための試薬を含めてもよい。
【0106】
網羅的に列挙できないが、組合せの例には以下のものが含まれる:脂質−界面活性剤層中に、フルオロフォア又はキレート化剤、及びターゲッティング剤 とカップリングするための反応性成分のような補助成分を含むエマルジョン調製物;逆にエマルジョンがターゲティング剤とカップリングし、補助剤とカップリングするための反応性基を含むもの;ターゲッティング剤とキレート化剤の両方を含むエマルジョンであるが、キレートされるべき金属がキット中に含めて供給されるか又は使用者によって別に用意されるもの;界面活性剤/脂質層を含むナノパーティクルの調製物であって、脂質層中の材料が(複数の)異なる反応性基、すなわちターゲッティングリガンドのための反応性基のあるセットと補助剤のための反応性基の別のセットを含んでいるもの;上記組み合わせの何れかを含むエマルジョンの調製物であって、反応性基が結合剤(linking agent)によって提供されるもの。
【0107】
(組成物の使用方法)
エマルジョン及びそれらの調製用キットは、細胞、組織及び/又は器官のイメージング並びに/或いは細胞、組織及び/又は器官の治療薬の送達を含めた本発明の方法において有用である。いくつかの形態において、エマルジョンは、エマルジョンの表面における細胞及び/又は組織に指向性のリガンドの使用により、特定の細胞型及び/又は組織を標的にする。エマルジョンを、インビボ、エキソビボ、インサイツ及びインビトロで細胞又は組織について使用することができる。
【0108】
ターゲッティングリガンド及び剤(例えば、薬剤)を含むエマルジョンのインビボ又はエキソビボでの使用によって、例えば、標的化細胞が同定され、並びに/或いは標的化細胞へ剤が送達されうる。そのような細胞を、X線イメージング技術を用いて同定することができ、例えば、細胞への剤送達もイメージングプロセスを通じて確認することができる。例えば、標的化エマルジョンを用いて、細胞の埋め込み又はさらなる使用の前に、エキソビボ又はインビボで、細胞、例えば幹細胞、及び/又は標識細胞、例えば幹細胞へ遺伝子材料を送達することができる。粒子エマルジョン中の高Z数原子の存在によって、典型的に水よりも重いエマルジョンが多くの場合得られる。したがって、本発明のエマルジョンを用いて、溶液中の標的化細胞を同定することができ、例えば、沈殿及び/又は勾配遠心分離(gradient centrifugation)によって溶液から標的化細胞を収集又は単離することができる。
【0109】
インビボ及びインビトロでの本発明のナノパーティクルエマルジョンの使用方法は、当業者に十分に知られている。例えば、心血管関連組織(cardiovascular-related tissues)は、本発明のエマルジョンを用いてイメージング及び又は治療されるべき目的組織であるが、これには、心臓組織及び全ての心血管性の血管、血管形成組織、心血管性の血管の全ての部分、心血管性の血管に入る又はこの上をおおう全ての材料又は細胞、例えば血栓、血塊若しくは破裂血塊(ruptured clot)、血小板及び筋細胞等が含まれるが、これらに限定されない。本発明のエマルジョンを用いて画像化(イメージング)又は治療されるべき病状には、脈管構造が病理学上重要な役割を果たす全ての病状、例えば、循環器疾患、癌、関節リウマチを含む種々の疾患を特徴づけうる炎症部位、再狭窄、腫瘍に至る血管形成によって影響を及ぼされるもののような過敏(irritation)部位、及びアテローム硬化症によって影響を受ける部位が含まれるが、これらに限定されない。使用するターゲッティングリガンドに依存するが、本発明のエマルジョンは、血管及び/又は再狭窄のイメージングに特に使用される。例えば、αβインテグリンと結合するリガンドを含むエマルジョンは、αβインテグリンのうち高発現レベルのものを含む組織を標的にする。αβインテグリンのうち高発現レベルのものは、活性化した内皮細胞の典型であり、 新血管新生(neovasculature)の診断薬であると考えられる。イメージング及び又は治療されるべきその他の目的組織には、特定の悪性の組織及び/又は腫瘍が含まれる。
【0110】
望む場合には、標的指向性イメージング(target-directed imaging)と治療薬送達との組み合わせによって、標的の同定及び一回の処理での薬剤送達の両方が可能となる。薬剤を送達するエマルジョンを画像化する能力は、薬剤が送達される細胞又は組織を同定及び/又は確認する手だてとなる。
【0111】
イメージングを治療薬の送達と組み合わせることに加えて、本発明のエマルジョンを、単モード(single-modal)又は多モード(multi-modal)イメージングに使用することができる。例えば、多モードイメージングを、X線とMRIイメージングとの組み合わせ、又は本願において記載したイメージングの型の他の組み合わせのような、イメージングの1以上の組み合わせを考慮した補助試薬を含むエマルジョンを用いて、行うことができる。
【0112】
X線造影剤として使用するために、本発明の組成物は、一般的に、約10%〜約60%w/v、好ましくは約15%〜約50%w/v、より好ましくは約20%〜約40%の高Z数原子とカップリングした油の濃度を有する。一般には、高Z数をもつ元素は、より低いZ数をもつ元素よりも低濃度で使用することが可能である。投与量は、静脈内注入によって投与される際には、典型的に、0.5mmol/kg〜1.5mmol/kg、好ましくは0.8mmol/kg〜1.2mmol/kgの範囲であろう。イメージングは、公知の方法を用いて行われるが、X線コンピュータ断層撮影法が好ましい。
【0113】
本発明の超音波造影剤は、例えば、約3μL/kg/分の速度での輸液(infusion)による静脈内注入によって、投与される。イメージングは、超音波検査法の公知の技術によって行われる。
【0114】
本発明の磁気共鳴映像法用造影剤は、米国特許第5,155,215号及び米国特許第5,087,440号;Margerstadtら(1986)、Magn.Reson.Med. 3:808;Rungeら(1988)、Radiology 166:835;及びBousquetら(1988)、Radiology 166:693に記載されているような他のMRI剤と同様の方法で使用することができる。使用されうる他の剤としては、米国特許第2002/0127182号公報に記載されている、pH感受性で、かつパルスに依存してコントラスト特性が変化する剤もある。一般的に、造影剤の滅菌水溶液は、体重kg当たり0.01から1.0mmolまでの範囲の投与量で患者に静脈内投与される。
【0115】
診断用放射性医薬品は、静脈内注入によって、通常生理食塩水に入れられて、体重70kg当たり1〜100mCiの投与量で、好ましくは5〜50mCiの投与量で投与される。イメージングは、公知の方法を用いて行われる。
【0116】
治療用放射性医薬品は、例えば、静脈内注入によって、通常生理食塩水に入れられて、体重kg当たり0.01〜5mCiの投与量で、好ましくは体重kg当たり0.1〜4mCiの投与量で投与される。比較可能な治療用放射性医薬品に関し、現在の医療実務では、ZevalinTMに対して0.3〜0.4mCi/kgからOctreoTherTM、すなわち標識されたソマトスタチンペプチド(somatostatin peptide)に対して1〜2mCi/kgの範囲の投与量が規定されている。そのような治療用放射性医薬品に対しては、腫瘍細胞破壊と正常器官毒性、特に放射線被爆腎炎との間のバランスが図られている。これらのレベルで、このバランスは、一般に、腫瘍細胞効果に有利である。これらの投与量は、対応するイメージングアイソトープ(同位元素)のものよりも多い。
【0117】
本願において使用する、「個体(individual)」は、脊椎動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。哺乳類には、ヒト、家畜、競技動物(sport animals)、げっ歯類及び愛玩動物が含まれる。
【0118】
本願において使用する、物質の「効果的な量(effective amount)」又は「十分な量(sufficient amount」は、臨床結果を含む有利な又は目的とする結果をもたらすのに十分な量であるが、「効果的な量」自体は、投与されている状況に依存する。効果的な量は、1以上の投薬で投与されうる。
【0119】
本願において使用する、単数形態には、特に他の指示がない限り、複数表示が含まれる。例えば、標的細胞には、1以上の標的細胞が含まれる。
【0120】
下記実施例は、詳述のため提供されるものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0121】
下記実施例によって、ナノパーティクルのターゲッティングがナノパーティクルの表面にホーミングリガンドを直接又は間接的にカップリングさせることにより、結合した粒子と同一の純効果(net effect)をもって、なされうることが詳述される。ホーミングリガンドは、エマルジョン粒子が作成される前又は後に、添加されうる。
【0122】
[実施例1]
ビオチン化標的化X線造影剤の調製
ビオチン化X線造影剤は、ビオチン化されたホスファチジルエタノールアミン(Avanti Polar Lipids、アラバスター、AL)をヨード化油エマルジョンの外脂質単層(outer lipid monolayer)に取り込ませることによって製造した。レシチン(70mol%、Pharmacia社、クレイトン、NC)、コレステロール(28mol%、Sigma Chemical社、セントルイス、ミズーリ)、及びビオチン−カプロエート−ホスファチジルエタノールアミン(2mol%)をクロロホルム中に溶解させ、減圧下で蒸発させ、50℃真空乾燥器中で乾燥させ、さらに超音波処理によって水中に分散させて、2%(w/v)脂質界面活性剤共混合物(co-mixture)を得た。その懸濁液を、ヨード化油(エチオドール、Savage Laboratories、メルヴィル、ニューヨーク)、蒸留、脱イオン水と混ぜ合わせ、次いで、S110 Microfluidics乳化機(Microfluidics、ニュートン、マサチューセッツ)を用いて20,000PSIで4分間、処理した。未修飾ホスファチジルエタノールアミンでそのビオチン化形態を置換して、コントロール(対照)造影剤を製造した。レーザー光散乱サブミクロン粒子径アナライザー(laser light scattering submicron particle size analyzer)(Malvern Instruments、モルヴァン、ウスター、イギリス)を用いて、処理及びコントロール(対照)エマルジョンの粒子径を37℃で3回測定したところ、見かけ上200nm未満であった。
【0123】
[実施例2]
乳化前にカップリングした直接結合リガンド(directly conjugated ligands)を用いる標的化造影剤の調製
ナノパーティクルエマルジョンは、20%(w/v)ヨード化油(エチオドール、Savage Laboratories)、2%(w/v)の界面活性剤共混合物、1.7(w/v)グリセリン及び残余の水で構成される。コントロール(対照)、すなわち非標的化エマルジョンの界面活性剤には、70mol%レシチン(Avanti Polar Lipids社)、28mol%コレステロール(Sigma Chemical社)、2mol%ジパルミトイル−ホスファチジルエタノールアミン(dipalmitoyl-phosphatidylethanolamine)(DPPE)(Avanti Polar Lipids社)が含有される。αβ標的化CTナノパーティクルを、界面活性剤共混合物を用いて前記同様に調製する:界面活性剤共混合物には、70mol%レシチン、αβペプチドミメティックアンタゴニスト(Bristol−Myers Squibb Medical Imaging社、ノースビレリカ、マサチューセッツ)と共有結合した0.05mol%N−[{w−[4−(p−マレイミドフェニル)ブタノイル]アミノ}ポリ(エチレングリコール)2000]1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(N-[{w-[4-(p-maleimidophenyl)butanoyl]amino}poly(ethylene glycol)2000]1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)(MPB−PEG−DSPE)、28mol%コレルテロール、及び1.95mol%DPPEが含有される。各ナノパーティクルの処方の成分を、M110S Microfluidics乳化機(Microfluidics)中で、4分間、20,000PSIで乳化する。でき上がったエマルジョンを、クリンプシールバイアル(crimp sealed vial)に入れ、窒素で満たした。粒子径を、レーザ光散乱サブミクロン粒子径アナライザー(Malvern Instruments社)を用いて、37℃で測定する。

【0124】
使用可能なチオール基を付加して修飾したペプチドミメティック又は小ペプチド、例えばメルカプト酢酸で終結したペプチドスペーサーを、PEG(2000)マレイミドスペーサーを介してホスファチジルエタノールアミンとカップリングさせる(MPB−PEG−DSPE)。MPB−PEG−DSPEを、3mlのNパージした、6mM EDTA中でミメティック又は小ペプチドと、1:1のモル比で組み合わせる。丸底フラスコを、その後、水浴中、30分間、緩やかな流れのNの下、37〜40℃で、静かに超音波処理する。混合物は、脂質膜の全てを再懸濁させるために、時折かきまぜる。この前混合物を、残存界面活性剤成分、PFC及び乳化用の水に添加する。
【0125】
別の方法では、溶液ベースのカップリングプロセスを用いてもよい。当該プロセスには二つのパートがある。ステップAでは、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[マレイミド(ポリエチレングリコール)2000]をDMFに溶解し、不活性ガス(すなわち窒素又はアルゴン)でスパージング(散布)する。この無酸素溶液を、DIEAを用いてpH7〜8に調整し、メルカプト酢酸で処理する。開始材料が完全に消費されたことを示すまで周囲温度で撹拌を続ける。この溶液は、以下の反応(ステップB)で直接利用する。
【0126】
ステップBでは、ステップAの生成物溶液、すなわち上記のものを、HBTUと十分なDIEAを加えることによりpH8〜9に維持しつつ前活性化させる。この溶液に、有用なアミノ基を含むミメティック又は小ペプチドを加え、そして、その溶液を窒素の存在下室温で18時間撹拌する。DMFを減圧下で除去し、粗生成物を調製用HPLCで精製する。
【0127】
[実施例3]
乳化後にカップリングした直接結合リガンド(directly conjugated ligands)を用いる標的化造影剤の調製
ナノパーティクルエマルジョンを、20%(w/v)ヨード化油(エチオドール、Savage Laboratories)、2%(w/v)の界面活性剤共混合物、1.7(w/v)グリセリン及び残余の水で構成する。コントロール、すなわち非標的化エマルジョンの界面活性剤には、70mol%レシチン(Avanti Polar Lipids社)、28mol%コレステロール(Sigma Chemical社)、2mol%ジパルミトイル−ホスファチジルエタノールアミン(dipalmitoyl-phosphatidylethanolamine)(DPPE)(Avanti Polar Lipids社)が含有される。標的化CTナノパーティクルを、界面活性剤共混合物を用いて前記同様に調製する:界面活性剤共混合物には、70mol%レシチン、0.05mol%N−[{w−[4−(p−マレイミドフェニル)ブタノイル]アミノ}ポリ(エチレングリコール)2000]1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(N-[{w-[4-(p-maleimidophenyl)butanoyl]amino}poly(ethylene glycol)2000]1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)(MPB−PEG−DSPE)、28mol%コレルテロール、及び1.95mol%DPPEが含有される。各ナノパーティクルの処方の成分を、M110S Microfluidics乳化機(Microfluidics)中で、4分間、20,000PSIで乳化する。でき上がったエマルジョンを、クリンプシールバイアル(crimp sealed vial)に入れ、カップリングするまで窒素で満たす。粒子径を、レーザ光散乱サブミクロン粒子径アナライザー(Malvern Instruments社)を用いて、37℃で測定する。
【0128】
遊離のチオールを含むリガンド(例えば、抗体又は抗体フラグメント)を、脱酸素化した50mM リン酸ナトリウム、10mM EDTA pH6.65バッファ中に約10mg/mlの濃度で溶解させる。この溶液を、窒素存在下、界面活性剤中に含まれるMPB−PEG(2000)−DSPEの割合をリガンドに対して等モル比で、ナノパーティクル に添加する。バイアルを、窒素(又はその他の不活性ガス)存在下密閉し、周囲温度で4〜16時間にわたって静かに撹拌しつつ反応させる。過剰(すなわち、未結合)のリガンドを、必要ならば、Spectra/Por「Dispodialyzer」、300,000MWCO(Spectrum Laboratories、ランチョドミンゲス、カリフォルニア)を用いてリン酸塩/EDTAバッファに対して透析してもよい。
【0129】
[実施例4]
フィブリン標的化X線造影剤のインビトロでの使用とCTによる画像化
第1部:高フィブリン血塊の調製及びインビトロターゲッティング
高フィブリン血塊を調製するため、クエン酸化血漿(citrated plasma)(375μL)、塩化カルシウム(22μL 500mM)及びトロンビン(3U)を、4−0ポリエステル縫糸(polyester suture)を突き通したプラスチックの管状型(plastic tubular mold)中で組み合わせた。気泡の形成が起こるのを防止した。フィブリン血塊が縫糸の周囲に直ちに生じ、この縫糸に付着した。12×75mmポリエチレン製スナップキャップチューブ(snap cap tube)のキャップと底(下部)を貫通させて穴を開けた。血塊を型から取り外し、チューブ内部に、縫糸と共にチューブの上部と下部の穴を外に通り抜けるようにして置いた。チューブの穴を、熱接着剤(hot glue)を用いて密封し、チューブを、生理食塩水で満たした。
【0130】
8個の血塊を調製し、4℃一晩ビオチン化した1H10 抗フィブリン抗体と共にインキュベートし、リン酸塩緩衝生理食塩水を用いて3回濯ぎ、その後37℃で1時間125ugのアビジンと接触させた。過剰のアビジンを、リン酸塩緩衝生理食塩水を3回交換して濯ぎ落とした。血塊を、37℃で1時間、実施例1に記載したように調製した非標的化(n=4、非ビオチン化)又は標的化(ビオチン化)X線造影剤で処理した。未結合のナノパーティクルを、リン酸塩バッファを3回交換して血塊から洗い流した。
【0131】
第2部: コンピュータ断層撮影法を用いる標的化血塊のイメージング
管内部の血塊を、フィリップスAcQSim−CTスキャナーの穴に配置し、下記仕様でイメージング(画像化)した:
・薄片厚:3.0mm
・KVP[ピーク出力、KV]:80.0
・FOV:480.0mm
・空間解像度:1.0mm
・検出器までの距離源(Distance Source)[mm]:1498.350
・患者までの距離源[mm]:635.35
・曝露時間[ms]:808727348
・X線管電流[mA]:400
・列(Rows):512
・カラム:512
・画素間隔(Pixel Spacing):0.1562500\0.1562500
・画素(Pixel Aspect Ratio):1\1
【0132】
フィブリン血塊の画像の例を、図1に示す。図1には、非標的化(上)及び標的化(下)造影剤に接触させたフィブリン血塊の二つの例が示されている。標的化X線ナノパーティクルをフィブリン血塊の表面に結合させて、血栓境界周囲のコントラスト増強を実現した。これによって、表面形状の輪郭がはっきりと描かれ(断面図)、周囲の生理食塩水のバックグラウンド(背景)と区別される。ナノパーティクルは高密度のフィブリン充填によって立体的に除かれるため、コントラスト増強は血塊の中心の範囲内では認められない。非標的化高フィブリン血塊では周辺のX線のコントラスト増強が示されず、周囲の生理食塩水のバックグラウンドと区別することは困難である。
【0133】
画像化した血塊のコントラスト対ノイズ比(contrast to noise ratio)(CNR)を、血塊表面のシグナルから周囲の生理食塩水媒体のシグナルを引き、その全てを周囲の生理食塩水のシグナルの標準偏差で割るようにして、コンピュータで計算した。CNRが5.0であるベースライン(非標的化)コントロールの血塊と比較して、標的化X線ナノパーティクルでは、CNRが22.1であった。したがって、標的化ナノパーティクルの使用により、CNRにおいて400%の改善がなされた。これらの結果から、標的化X線ナノパーティクルによって、ターゲッティングの方法に関わらず、X線コントラスト増強が高められるということが示される。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】図1は、非標的化(上部)及び標的化(下部)造影剤と接触させたフィブリン血塊(fibrin clot)の二つの例を示す画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
36以上のZ数を有する原子とカップリングした油状化合物から形成したナノパーティクルを含み、前記ナノパーティクルは、脂質/界面活性剤層で覆われ、前記ナノパーティクルは、標的と結合するリガンドとカップリングすることを特徴とする、水中油型エマルジョン。
【請求項2】
前記36以上のZ数を有する原子は、油状化合物と共有結合している、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
前記36以上のZ数を有する原子は、イットリウム、ジルコニウム、銀、スズ、ヨウ素、バリウム、タンタル、白金、金、及びビスマスからなる群から選択される、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項4】
前記ナノパーティクルが、更に、少なくとも1つの磁気共鳴映像法の造影剤を含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項5】
前記磁気共鳴映像法の造影剤が、金属イオンである、請求項4に記載のエマルジョン。
【請求項6】
前記磁気共鳴映像法の造影剤が、キレート化した常磁性イオンである、請求項5に記載のエマルジョン。
【請求項7】
前記キレート化剤が、ME−DOTAであり、前記常磁性イオンが、ガドリニウムイオンである、請求項6に記載のエマルジョン。
【請求項8】
前記ナノパーティクルが、更に、少なくとも1つの生理活性剤を含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項9】
前記生理活性剤が、ホルモン又は医薬品である、請求項8に記載のエマルジョン。
【請求項10】
前記ナノパーティクルが、更に、少なくとも1つの放射性核種を含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項11】
前記放射性核種が、99mTcである、請求項10に記載のエマルジョン。
【請求項12】
前記ナノパーティクルが、更に、少なくとも1つのフルオロフォアを含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項13】
前記フルオロフォアが、フルオレセインである、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項14】
前記リガンドが、ビオチン剤又はアビジン剤を含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項15】
前記リガンドが、前記リガンドは、抗体、抗体フラグメント、非ペプチドリガンド、ポリペプチド、多糖体、アプタマー、脂質、核酸又はレクチンを含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項16】
標的組織に対して生理活性剤を送達する方法であって、前記標的組織を含む個体に請求項8に記載のエマルジョンを投与することを含む、方法。
【請求項17】
更に、前記標的組織の画像を得ることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
標的組織をイメージングする方法であって、前記標的組織に請求項1に記載の組成物を投与すること及び前記標的組織の画像を得ることを含む、方法。
【請求項19】
前記標的組織が、心血管関連組織である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記画像が、X線画像である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
標的組織をイメージングする方法であって、前記標的組織に請求項4に記載の組成物を投与すること及び前記標的組織の磁気共鳴映像を得ることを含む、方法。
【請求項22】
標的組織をイメージングする方法であって、前記標的組織に請求項12に記載の組成物を投与すること及びフルオロフォアと結合した前記標的組織の画像を得ることを含む、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−501797(P2007−501797A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522758(P2006−522758)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/025484
【国際公開番号】WO2005/014051
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(503271970)バーンズ−ジューイッシュ ホスピタル (4)
【Fターム(参考)】